(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】軸流ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/64 20060101AFI20221121BHJP
F04D 29/52 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
F04D29/64 C
F04D29/52 E
F04D29/52 B
(21)【出願番号】P 2018245314
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 貴文
(72)【発明者】
【氏名】玉井 功一
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 晴臣
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125476(JP,A)
【文献】特開2007-124801(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102297162(CN,A)
【文献】特開2000-303998(JP,A)
【文献】特開2007-321625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/64
F04D 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラを回転自在に支持し、かつ切欠部が形成されたケーシングと、
前記ケーシングに収容され、前記インペラを回転させるモータに少なくとも電力を供給するリード線と、
前記切欠部に挿入される押え部材と、
を備え、
前記切欠部は、
前記ケーシングの軸方向の一端から、
前記ケーシングの中央に形成される風洞を囲む側壁を周方向に所定の幅で前記風洞側から前記側壁の外側に貫通して、軸方向に他端の手前まで延在し、
前記延在が止む端部に底部が形成されており、
前記押え部材と前記底部との間にリード線用空間部が形成され、
前記リード線は、前記ケーシングの内部より前記リード線用空間部から前記ケーシングの外部に引き出され、
前記押え部材は、前記切欠部の前記底部から軸方向に連なる側壁部と対向する一対の面の両方に軸方向に延在するキーが形成され、
前記側壁部は、前記キーに対応し、かつ前記キーが挿入される溝部が形成されている、
軸流ファン。
【請求項2】
インペラを回転自在に支持し、かつ切欠部が形成されたケーシングと、
前記ケーシングに収容され、前記インペラを回転させるモータに少なくとも電力を供給するリード線と、
前記切欠部に挿入される押え部材と、
を備え、
前記切欠部は、
前記ケーシングの軸方向の一端から、
前記ケーシングの中央に形成される風洞を囲む側壁を周方向に所定の幅で前記風洞側から前記側壁の外側に貫通して、軸方向に他端の手前まで延在し、
前記延在が止む端部に底部が形成されており、
前記押え部材と前記底部との間にリード線用空間部が形成され、
前記リード線は、前記ケーシングの内部より前記リード線用空間部から前記ケーシングの外部に引き出され、
前記押え部材は、前記切欠部の前記底部から軸方向に連なる側壁部と対向する一対の面の両方に軸方向に延在する溝部が形成され、
前記側壁部は、前記溝部に対応し、かつ前記溝部に挿入されるキーが形成されている、
軸流ファン。
【請求項3】
前記キーは、突出するにつれて幅が広く形成されている、
請求項1または2に記載の軸流ファン。
【請求項4】
前記ケーシングは、前記インペラと対向する内周面が形成され、
前記切欠部は、前記内周面の一部を分断し、
前記押え部材は、前記切欠部に挿入された状態において、前記内周面とともに連続面を形成する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の軸流ファン。
【請求項5】
前記押え部材は、前記切欠部に挿入された状態において、前記底部に対して、前記リード線を押圧する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の軸流ファン。
【請求項6】
前記押え部材は、前記切欠部の前記底部から軸方向に連なる側壁部と対向する一対の面のうち少なくとも一方に、弾性により変位可能な係止爪が形成され、
前記ケーシングは、前記係止爪に対応し、かつ前記係止爪が挿入される凹部が形成され、
前記係止爪は、前記押え部材が前記切欠部に挿入された状態において、前記凹部に挿入され、前記ケーシングに対して前記押え部材の軸方向への移動を規制する、
請求項1~5のいずれか一つに記載の軸流ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
軸流ファンは、電子機器、家電機器、OA機器、産業機器等々の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などに広く用いられている。軸流ファンでは、一般的に、内部のモータに電力を供給するためのリード線の一端が内部の回路基板に接続されており、リード線の他端はケーシング(ハウジング)の外部に引き出されている(たとえば、特許文献1、2等を参照)。
【0003】
軸流ファンの組立工程として、リード線の一端が接続された回路基板をケーシングに取り付ける際に、リード線の他端をケーシングの風洞部に設けられた複数のスポークの間を通して外部に引き出す手法がある。
【0004】
他の軸流ファンの例として、リード線の一端が接続された回路基板を有するステータ部の外周に放射状に腕部が設けられ、ケーシングの吸気口側からケーシングにステータ部を挿入し、腕部をケーシングに固定するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-199861号公報
【文献】特開2018-115615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したリード線を複数のスポークの間を通す手法においては、ケーシングを持ち上げた状態で作業せざるを得ないため、作業性が悪いという問題がある。また、リード線の他端側にコネクタが設けられる場合、コネクタの大きさによってはスポークの間を通らない場合があり、その場合は、リード線の一端を回路基板には接続しておかず、他端にコネクタが設けられたリード線の一端を外部からスポークの間を通した後に回路基板に半田付け等により接続しなければならない。この場合、半田付けのスペースが狭くなって作業が難しくなり、作業性が悪くなる。
【0007】
ステータ部の腕部をケーシングに固定するものでは、リード線の取り扱いについての不便はなくなるが、ケーシングの中心軸に対してステータ部の中心軸がずれる場合があり、排気口から吹き出される空気の流れに偏りが生じ、風量特性の低下や騒音の増加が生じる虞がある。また、ケーシングの外部に引き出されるリード線がケーシングに固定されない構造であったため、ケーシングの排気口から吹き出された空気がリード線に衝突し、リード線が振動し、騒音が生じる虞がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ケーシングの外部にリード線を引き出す作業の容易な軸流ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る軸流ファンは、ケーシングと、リード線と、押え部材とを備える。前記ケーシングは、インペラを回転自在に支持し、かつ切欠部が形成される。前記リード線は、前記ケーシングに収容され、前記インペラを回転させるモータに少なくとも電力を供給する。前記押え部材は、前記切欠部に挿入される。前記切欠部は、前記ケーシングの軸方向の一端から、前記ケーシングの中央に形成される風洞を囲む側壁を周方向に所定の幅で前記風洞側から前記側壁の外側に貫通して、軸方向に他端の手前まで延在し、前記延在が止む端部に底部が形成されており、前記押え部材と前記底部との間にリード線用空間部が形成される。前記リード線は、前記ケーシングの内部より前記リード線用空間部から前記ケーシングの外部に引き出される。前記押え部材は、前記切欠部の前記底部から軸方向に連なる側壁部と対向する一対の面の両方に軸方向に延在するキーが形成される。前記側壁部は、前記キーに対応し、かつ前記キーが挿入される溝部が形成されている。
【0010】
本発明の一態様に係る軸流ファンは、ケーシングの外部にリード線を引き出す作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る軸流ファンの構成例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る軸流ファンの構成例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、ケーシングの構成例を示す正面図である。
【
図4】
図4は、ケーシングの構成例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、押え部材の構成例を示す斜視図(1)である。
【
図6】
図6は、押え部材の構成例を示す斜視図(2)である。
【
図7】
図7は、押え部材の構成例を示す斜視図(3)である。
【
図8】
図8は、押え部材の構成例を示す斜視図(4)である。
【
図9】
図9は、押え部材の構成例を示す斜視図(5)である。
【
図10】
図10は、押え部材の構成例を示す斜視図(6)である。
【
図11】
図11は、リード線が接続された回路基板をケーシングに組み込む様子を示す斜視図(1)である。
【
図12】
図12は、リード線が接続された回路基板をケーシングに組み込む様子を示す斜視図(2)である。
【
図13】
図13は、ケーシングに押え部材が挿入された状態の部分的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る軸流ファンについて図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0013】
図1は、実施形態に係る軸流ファン1の構成例を示す正面図である。
図1において、軸流ファン1のケーシング30は外形が略矩形のハウジング34を備え、ハウジング34の中央に形成される円筒状の風洞には、ハブ21および羽根22を有するインペラ20が回転可能に支持されている。また、ハウジング34の側壁の一部(図では右側面の上側)には切欠部34bが設けられ、切欠部34bにリード線60の側部が挟み込まれた状態で、切欠部34bに押え部材37が挿入されるようになっている。押え部材37は、たとえば、樹脂等により形成される。切欠部34bおよび押え部材37の詳細については後述する。
【0014】
また、ハウジング34の四隅には、ボルト等により他の装置等への取付が行えるようにした貫通孔34aが設けられている。なお、ハウジング34の外形は、図示のような矩形に限られず、たとえば、円形であってもよい。なお、インペラ20の羽根22の枚数や間隔や形状は図示のものに限られない。
【0015】
図2は、実施形態に係る軸流ファン1の構成例を示す断面図(
図1におけるY-Y断面図)である。
図2において、軸流ファン1は、モータ10と、インペラ20と、ケーシング30と、軸受40と、回路基板50と、リード線60とを備えている。
【0016】
モータ10は、たとえば、アウターロータ型のブラシレスDCモータであり、インペラ20を回転させる。モータ10は、ステータコア11と、コイル12と、ロータ13とを有する。
【0017】
ステータコア11は、ケイ素鋼板などのような軟磁性材料から形成された鋼板がプレス加工され、プレス加工された鋼板が複数枚、軸方向に積層されて構成される。ステータコア11は、円環状の本体部と、かかる本体部の外周側から外方に向かって径方向に延在する複数のティースとを有する。
【0018】
なお、以降においては、軸流ファン1の径方向、軸方向および周方向を次のように規定して説明する。ここで、「径方向」とは、軸流ファン1の内部で回転するインペラ20の回転軸AXと直交する方向であり、「軸方向」とは、インペラ20の回転軸AXの軸方向と一致する方向であり、「周方向」とは、インペラ20の回転方向Rと一致する方向である。
【0019】
コイル12は、ステータコア11を軸方向の両側から覆うインシュレータ(軸方向に2つに分割されたインシュレータ)を介して、複数のティースのそれぞれに巻回される。
【0020】
ロータ13は、回転軸AXを中心としてステータコア11およびコイル12に対して相対的に回転する。ロータ13は、シャフト14と、ロータヨーク15と、ロータマグネット16とを有する。インペラ20は、ハブ21と、複数の羽根22とを有する。
【0021】
シャフト14は、円柱状であり、軸方向に延在し、軸受ホルダー31の内側に装着された一対の軸受40により回転可能に支持される。
【0022】
ハブ21はカップ状であり、中央の軸方向内側に向けて形成された突出部にシャフト14の一方端が圧入されて結合される。複数の羽根22は、ハブ21の外周面に支持される。羽根22は、全て同じ形状で、周方向に均等の間隔で配置され、たとえば、隣接する羽根22との間に平面視で隙間が形成されている。ハブ21と複数の羽根22とは、たとえば、樹脂の一体成形で形成される。
【0023】
ロータヨーク15は、軟磁性材からなり、ハブ21の内側に接着材等により固定されている。なお、ロータヨークをカップ状に形成し、ロータヨークの中央部がシャフト14に直接に取り付けられるものとし、そのロータヨークの外周面にハブが固定されるようにしてもよい。
【0024】
ロータマグネット16は、リング状であり、ロータヨーク15の内周面に接合される。また、ロータマグネット16は、ステータコア11のティースと向かい合うように配置され、内周面にS極とN極とが周方向に交互に着磁される複数の磁極が形成される。
【0025】
ケーシング30は、軸受ホルダー31と、モータベース32と、複数のスポーク33と、ハウジング34とを有する。軸受ホルダー31は、中空円筒状の金属製であり、円形カップ状のモータベース32の中央に形成された突出部の開口に配置される。軸受ホルダー31はモータベース32の突出部の開口に嵌着してもよく、また軸受ホルダー31をインサートしてモータベース32に一体成形してもよい。軸受ホルダー31は、内周側に一対の軸受40が装着され、外周側にはステータコア11などが装着されている。モータ10が装着されるモータベース32は、ハウジング34の一方端に配置される。
【0026】
複数のスポーク33は、モータベース32の外周側に配置され、径方向に延在してモータベース32とハウジング34とを連結する。ハウジング34は、内側に円孔からなる風洞が形成され、かかる風洞に軸流ファン1の各部材が収容される。モータベース32と、スポーク33と、ハウジング34とは、たとえば、樹脂の一体成形で形成される。
【0027】
また、ケーシング30には、軸方向における一方側(
図2では上側)に吸込口35が形成され、軸方向における他方側(
図2では下側)に吐出口36が形成される。そして、インペラ20が所定の回転方向Rに回転することにより、吸込口35から吐出口36に向けて空気の流れFLが形成される。
【0028】
軸受40は、転がり軸受で構成されており、シャフト14を回転自在に支持する。なお、軸受40は流体軸受であってもよいし、滑り軸受であってもよい。
【0029】
回路基板50は、電子部品を実装し、モータ10を制御する制御回路を有しており、ステータコア11とモータベース32との間に配置される。回路基板50には、インペラ20を回転させるモータ10に少なくとも電力を供給するリード線60の一端が接続されている。リード線60は、電力の供給以外に、たとえば、制御信号の送受信に用いられる。リード線60は、ケーシング30内において一つのスポーク33に沿って配置される。リード線60の他端は、ハウジング34に設けられた切欠部34bの底部と押え部材37との間に形成されたリード線用空間部を通し、内部から外部に引き出されている。なお、押え部材37は、切欠部34bに挿入された状態において、切欠部34bの底部に対して、リード線60を押圧している。
【0030】
図3は、ケーシング30の構成例を示す正面図であり、
図4は、ケーシング30の構成例を示す斜視図である。
図3および
図4において、ケーシング30を構成するハウジング34の一部には切欠部34bが設けられている。切欠部34bは、ハウジング34においてインペラ20の外周部と対向する内周面の一部を分断するように設けられており、切欠部34bに押え部材37が挿入された状態において連続面を形成する。
【0031】
切欠部34bは、切欠方向側端部に底部34cが形成されており、底部34cに続く側壁部34d、34eには、キー溝となる溝部34f、34gが設けられている。溝部34f、34gは、押え部材37側のキーに対応するものであり、側壁部34d、34eの表面から奥に入るにつれて幅が広く形成されている。これにより、押え部材37の挿入により、切欠部34bの両端が強固に連結され、ハウジング34の強度が高められる。
【0032】
また、切欠部34bは、側壁部34dに、押え部材37の後述する係止爪に対応する凹部34hが設けられている。切欠部34bに押え部材37が挿入され、凹部34hに押え部材37の係止爪が挿入された状態で、ハウジング34に対して押え部材37の軸方向の移動が規制される。
【0033】
図5~
図10は、押え部材37の構成例を示す斜視図であり、視点を変えた斜視図である。すなわち、
図5の押え部材37を下方から見たものが
図6である。
図5の押え部材37を右側から見たものが
図7である。
図7の押え部材37を下方から見たものが
図8である。
図5の押え部材37を裏側から見たものが
図9である。
図9の押え部材37を下方から見たものが
図10である。なお、
図5~
図10において、図の上下方向が、押え部材37の挿入時において軸流ファン1の軸方向になる。
【0034】
図5~
図10において、押え部材37は、ハウジング34の風洞側に対応する曲面状の面37aと、この面37aに対向し、ハウジング34の外側に対応する平坦な面37bとを有している。また、押え部材37は、面37a、37bに連なる平坦な面37cと、この面37cに対向する平坦な面37dとを有している。面37c、37dは、押え部材37の挿入時においてハウジング34の切欠部34bの側壁部34d、34eと対向する。
【0035】
また、面37cには、軸方向に沿ってキー37eが設けられ、面37dには、軸方向に沿ってキー37fが設けられている。キー37eは、面37cの表面から突出するにつれて幅が広く形成されている。同様に、キー37fは、面37dの表面から突出するにつれて幅が広く形成されている。また、面37aに連なる押え部材37の先端部(図における下部)には、突起部37gが設けられている。突起部37gは、押え部材37の挿入時において、リード線60を押圧する。
【0036】
また、面37bは二股に分岐しており、一方の分岐片37hの外側には係止爪37iが形成されている。係止爪37iは、分岐片37hの弾性変形により変位が可能となっており、押え部材37の挿入時に、ハウジング34の切欠部34bの凹部34hに弾性変形して挿入された後に変位が復帰し、ハウジング34に対して押え部材37の軸方向への移動を規制する。
【0037】
なお、ハウジング34の切欠部34b側に溝部34f、34gが設けられ、押え部材37側にキー37e、37fが設けられる例について説明したが、反対に、ハウジング34の切欠部34b側にキーが設けられ、押え部材37側に溝部が設けられるようにしてもよい。
【0038】
図11および
図12は、リード線60が接続された回路基板50をケーシング30に組み込む様子を示す斜視図である。
図11は、押え部材37が挿入されていないケーシング30に対し、モータベース32が設けられた面とは反対側の面から、リード線60の一端が接続された回路基板50を組み込む状態を示している。この場合、回路基板50を軸受ホルダー31を包囲するようにケーシング30内に配置する際に、ハウジング34の切欠部34bの開口に上方からリード線60の側部を差し込む。なお、リード線60の回路基板50とは反対側の端部にはコネクタ61が接続されている。リード線60の周囲はチューブ62により覆われている。なお、リード線60はチューブ62により覆われていなくてもよい。
【0039】
図12は、ケーシング30内に回路基板50が収容され、ハウジング34の切欠部34bに押え部材37が挿入された状態を示している。リード線60は、ハウジング34の切欠部34bの底部と押え部材37の突起部との間に形成されたリード線用空間部により抑え込まれる。すなわち、リード線60は、ケーシング30の内部よりリード線用空間部からケーシング30の外部に引き出される。
図13は、ケーシング30に押え部材37が挿入された状態の部分的な斜視図であり、ケーシング30の風洞側から押え部材37の内面を見た図である。
【0040】
図14は、第1の比較例を示す図である。
図14の左側は、回路基板111に一端が接続されたリード線112の他端に接続されたコネクタ113が、図の奥側から、軸流ファン100のケーシング101の風洞部に設けられた複数のスポーク102、103の間を通され、スポーク103と保持片104の間にリード線112が沿わせられる状態を示している。リード線112が配置された状態を図の右側に示している。
【0041】
このような手法によれば、コネクタ113を通すためにケーシング101を持ち上げた状態で作業せざるを得ないため、作業性が悪いという問題がある。また、リード線112の他端側のコネクタ113が相対的に大きい場合にはスポーク102、103の間を通らない場合があり、その場合は、リード線112を回路基板111には接続しておかず、他端にコネクタ113が設けられたリード線112の一端を図の手前側からスポーク102、103の間を通した後に回路基板111に半田付け等により接続しなければならない。この場合、半田付けのスペースが狭くなって作業が難しくなり、作業性が悪くなる。
【0042】
図15は、第2の比較例を示す図である。
図15において、軸流ファン200のケーシング201の端面の風洞部の外周には取付溝202~205が設けられ、ステータアッシー211の外周には放射状に腕部212~215が設けられている。ステータアッシー211にはリード線216の一端が接続され、リード線216の他端にはコネクタ217が接続されている。そして、ケーシング201に対し図の右側より、ステータアッシー211がケーシング201側に挿入され、腕部212~215がケーシング201の取付溝202~205に係合されることで組立が行われる。
【0043】
このような手法によれば、リード線216の取り扱いについての不便はなくなるが、ケーシング201の中心軸に対してステータアッシー211の中心軸がずれる場合があり、ステータアッシー211に取り付けられるインペラの羽根の外周端とケーシング201の内周面との間の隙間が円周方向で均一にならず、その結果、排気口から吹き出される空気の流れに偏りが生じ、風量特性の低下や騒音の増加が生じる虞がある。また、ケーシング201の外部に引き出されるリード線216がケーシング201に固定されない構造であるため、ケーシング201の排気口から吹き出された空気がリード線216に衝突し、リード線216が振動し、騒音が生じる虞がある。
【0044】
これらの第1、第2の比較例に対し、
図1~
図13で説明された実施形態では、次のような利点がある。
【0045】
先ず、本実施形態では、
図11に示されたように、たとえば、作業机の上にケーシング30を置いた状態で上方からリード線60の接続された回路基板50を組み込むことができるため、ケーシング30を持ち上げることなく作業が行え、作業性が低下することがない。
【0046】
また、本実施形態では、ハウジング34の切欠部34bの開口にリード線60の側部を差し込むだけであるため、コネクタ61の大きさによって影響を受けず、半田付け等の追加作業が必要となることがなく、作業性が低下することがない。
【0047】
また、本実施形態では、ハウジング34にモータベース32が形成され、モータ10の中心軸の精度が確保されるため、ステータ部の中心軸がずれることによる風量特性の低下や騒音の増加が生じる虞がない。
【0048】
また、本実施形態では、ハウジング34の切欠部34bと押え部材37とによりリード線60が挟まれて固定されるため、吐出口36から吐き出された空気によりリード線60が振動して騒音が生じることも少なくなる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0050】
以上のように、実施形態に係る軸流ファンは、インペラを回転自在に支持し、かつ切欠部が形成されたケーシングと、ケーシングに収容され、インペラを回転させるモータに少なくとも電力を供給するリード線と、切欠部に挿入される押え部材とを備え、切欠部は、切欠方向側端部に底部が形成されており、押え部材と底部との間にリード線用空間部が形成され、リード線は、ケーシングの内部よりリード線用空間部からケーシングの外部に引き出される。これにより、ケーシングの外部にリード線を引き出す作業の容易な軸流ファンを提供することができる。
【0051】
また、押え部材は、切欠部の側壁部と対向する一対の面の両方に軸方向に延在するキーが形成され、側壁部は、キーに対応し、かつキーが挿入される溝部が形成されている。これにより、切欠部の両端が強固に連結され、ハウジングの強度が高められる。
【0052】
また、キーは、突出するにつれて幅が広く形成されている。これにより、切欠部の両端が強固に連結され、ハウジングの強度が高められる。
【0053】
また、押え部材は、切欠部の側壁部と対向する一対の面の両方に軸方向に延在する溝部が形成され、側壁部は、溝部に対応し、かつ溝部に挿入されるキーが形成されている。これにより、切欠部の両端が強固に連結され、ハウジングの強度が高められる。
【0054】
また、ケーシングは、インペラと対向する内周面が形成され、切欠部は、内周面の一部を分断し、押え部材は、切欠部に挿入された状態において、内周面とともに連続面を形成する。これにより、吸込口から吸気された空気の流れが乱れることなく、送風特性に影響を与えることがない。
【0055】
また、押え部材は、切欠部に挿入された状態において、底部に対して、リード線を押圧する。これにより、リード線が固定され、振動や騒音の発生を防止することができる。
【0056】
また、押え部材は、切欠部の側壁部と対向する一対の面のうち少なくとも一方に、弾性により変位可能な係止爪が形成され、ケーシングは、係止爪に対応し、かつ係止爪が挿入される凹部が形成され、係止爪は、押え部材が切欠部に挿入された状態において、凹部に挿入され、ケーシングに対して押え部材の軸方向への移動を規制する。これにより、押え部材が容易に外れることがなくなる。
【0057】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 軸流ファン,10 モータ,20 インペラ,30 ケーシング,34b 切欠部,34c 底部,34d、34e 側壁部,34f、34g 溝部,34h 凹部,37e、37f キー,50 回路基板,60 リード線,61 コネクタ