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▶ メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】液晶性材料
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/54 20060101AFI20221121BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20221121BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20221121BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
C09K19/54 C
C09K19/60 A
G02F1/13 500
G02F1/13 505
C09K19/60 C
C09K19/60 Z
E06B9/24 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018560880
(86)(22)【出願日】2017-05-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2017061656
(87)【国際公開番号】W WO2017198637
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-13
(31)【優先権主張番号】16170725.2
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ユンゲ
(72)【発明者】
【氏名】ウアズラ パトヴァール
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ ドミニカ プタク-アグエル
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-067587(JP,A)
【文献】国際公開第2015/090506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/54
C09K 19/60
G02F 1/13
E06B 9/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光の通過の調節のための光スイッチング装置であって、色素および式(I)
【化2】
(前記式中、存在する変項には、以下のことが当てはまる:
Uは、それぞれの場合に同一または異なって、-CH2-、-O-、-S-、および-NH-から選択され、
Spは、2個~10個の炭素原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアルキレン基、2個~10個の炭素原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアルケニレン基、2個~10個の炭素原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアルキニレン基、および5個~40個の芳香族環原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいヘテロアリール基から選択され、
1は、メチル基を意味し、
4は、それぞれの場合に同一または異なって、H、D、F、CN、1個~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基、2個~20個の炭素原子を有するアルケニル基またはアルキニル基、6個~40個の芳香族環原子を有するアリール基、および5個~40個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基から選択され、その際、2個以上の基Rは互いに結合されていてよく、かつ環を形成してよく、かつ上述のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、およびアルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、FまたはCNで置換されていてよく、
iは、それぞれの場合に同一または異なって、0または1であり、
pは、2、3、または4であり、そして、式(I)の基は、ラジカルであり、その際、酸素原子上の不対電子は1つの点により表示される。)の立体障害された基を有する化合物(I)を含有する液晶性材料の層を含むことを特徴とする、前記光スイッチング装置。
【請求項2】
前記化合物(I)は、前記液晶性材料中に0.01質量%~1質量%の割合で含まれていることを特徴とする、請求項1記載の光スイッチング装置。
【請求項3】
前記液晶性材料は、以下の基:
【化3】
から選択される少なくとも1個の基を有する少なくとも1種の化合物を含有し、前記式中、*で印された結合は、前記基と前記化合物の残りの部分とを結合している結合であることを特徴とする、請求項1または2記載の光スイッチング装置。
【請求項4】
前記液晶性材料は、立体障害されたヒドロキシフェニル基を有する化合物(II)、
化合物(II)は、式(2)
【化4】
の基を有し、前記式中、
*で印された結合は、前記基と前記化合物の残りの部分とを結合している結合であり、
21は、それぞれの場合に同一または異なって、3個~12個の炭素原子を有する分岐状アルキル基から選択され、F、ClおよびCNから選択される1個以上の基で置換されていてよい、
22は、それぞれの場合に同一または異なって、Hおよび1個~12個の炭素原子を有するアルキル基であって、F、ClおよびCNから選択される1個以上の基により置換されていてよいアルキル基から選択される、をさらに含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の光スイッチング装置。
【請求項5】
前記化合物(II)は、前記液晶性材料中に0.01質量%~1質量%の割合で含まれていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の光スイッチング装置。
【請求項6】
前記色素は、二色性色素であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の光スイッチング装置。
【請求項7】
前記液晶性材料は、少なくとも3種の異なる色素を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の光スイッチング装置。
【請求項8】
前記色素は、アゾ化合物、アントラキノン、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン、テトラジン、リレン、ベンゾチアジアゾール、ピロメテン、およびジケトピロロピロールから選択されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の光スイッチング装置。
【請求項9】
以下の層順序:
- 偏光層、
- 基板層、
- 導電性の透明な層、
- 配向層、
- 前記液晶性材料を含有するスイッチング層、
- 配向層、
- 導電性の透明な層、
- 基板層、
を有し、ここで、前記偏光層は、太陽の方向に向けられていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の光スイッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素およびN-オキシド基を有する化合物を含有する液晶性材料に関する。前記液晶性材料は、その高い光安定性および熱安定性に基づき、太陽光の通過の調節のための光スイッチング装置において使用するために極めて適している。前記液晶性材料は、とりわけ建物の窓または透光性屋根、特に乗り物において使用することができる。
【0002】
そのようなスイッチング装置は、スイッチング可能な窓(スイッチャブル・ウインドウ、スマートウインドウ)という上位概念のもと知られている。これらは、総説に、例えばB.Jelle et al.,Solar Energy Materials & Solar Cells 2012,S.1-28において記載されている。この場合に、スイッチング可能な窓という概念には、スイッチング可能な透光性屋根、例えば天窓または自動車のルーフも含まれている。
【0003】
このスイッチング可能な窓の1つの別形は、色素を含有する液晶性材料を使用する。これらの色素は、該液晶性材料の分子によって、定義された影響可能な様式で空間内で配向されるので、それらの色素は、一方のスイッチング状態でより多くの入射光を吸収し、もう一方のスイッチング状態でより少ない入射光を吸収する。液晶性材料を含有するスイッチング可能な窓のための例は、とりわけ国際公開第2009/141295号パンフレット(WO2009/141295)に記載されている。
【0004】
上述の用途のための新規の液晶性材料がさらに求められている。この場合に、太陽光の通過の調節のための光スイッチング装置は、熱および太陽光による高い負荷に晒されており、それにより該スイッチング装置中に含まれている液晶性材料からの層の変色またはその他の機能障害が引き起こされ得ることが判明した。
【0005】
したがって、高い温度および強い太陽光入射に対する特に大きな安定性を有する新規の液晶性材料に関心が持たれている。
【0006】
これらの特性を実現するための可能なアプローチは、できる限り安定な色素を使用することである。このアプローチは、過去に多岐にわたり追求されてきたが、該色素が、良好な可溶性、高い異方性度、および適切な吸収波長のような一連のさらなる特性を有さねばならないという欠点を有する。しかしながら、これらの特性を高い光安定性および温度安定性と共に最適化することは、使用可能な化合物の範囲を大きく制限する。
【0007】
したがって、光安定性および温度安定性の色素含有の液晶性材料を得ることができる代替的なアプローチに対して高い要求が存在する。
【0008】
驚くべきことに、この関係において、立体障害されたN-オキシド基を有する化合物を色素含有の液晶性材料に添加することで、その光安定性および温度安定性が大幅に高まることが判明した。
【0009】
そのため、本発明の主題は、液晶性材料であって、該液晶材料が、色素および式(1)
【化1】
の立体障害された基を有する化合物(I)を含有し、前記式中、*で印された結合は、前記式(1)の基と前記化合物の残りの部分とを結合している結合であることを特徴とする、液晶材料である。
【0010】
式(1)の基は、ラジカルであり、その際、酸素原子上の不対電子は1つの点により表示されている。
【0011】
本発明による液晶性材料は、高度に光安定性であるという驚くべき特性を有する。特に、該液晶性材料は、70℃の試料の表面温度でサンテストCPS+における光曝露後に、6.0未満の、有利には5.0未満の、特に有利には4.0未満の、さらに特に有利には3.0未満のLab色空間における色差ΔE*を示す。
【0012】
この場合に、Lab色空間のパラメーターおよび色差ΔE*は、実施例に示されるように定義されている。
【0013】
さらに、本発明による材料は、良好な熱安定性、特に100℃での7日間の熱曝露後に、6.0未満の、有利には5.0未満のLab色空間における低い色差ΔE*を示す。
【0014】
本出願の範囲においては、以下の定義が適用される。
【0015】
表記「液晶性材料」とは、少なくとも1つの温度範囲において液晶特性、特にネマティック液晶特性を有する材料を表す。
【0016】
アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基とは、特にメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ネオヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、またはオクチニルの基を表す。
【0017】
アルコキシ基またはチオアルキル基とは、特にメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチルチオ、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオ、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオ、またはオクチニルチオを表す。
【0018】
アリール基またはヘテロアリール基とは、特にベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、トリフェニレン、フルオランテン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントリミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、ベンゾチアジアゾール、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、インデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、およびインデノカルバゾールを表す。
【0019】
【化2】
は、本出願においては、可読性を向上させるために本文において「Ax」、例えば「A11」と省略される。
【0020】
表記
【化3】
とは、本出願においては、1,4-シクロヘキシレンを表す。
【0021】
太陽光とは、直接的にまたは間接的に、例えば反射を介して太陽に由来する光を表す。有利には、太陽光とは、可視領域、UV-A領域、および近赤外領域の光、特に320nm~2000nmの波長の光を表す。有利には、太陽光とは、可視領域の光を表す。その場合に、可視領域の光とは、380nm~780nmの波長の光を表す。
【0022】
式(1)の基に関する表記「立体障害された」とは、本発明の範囲においては、N-O単位の近くに、N-O単位を立体的に妨げる基が存在することを表す。有利には、その基は、N-O単位の窒素原子に直接的に結合されている第四級炭素原子である。特に有利には、N-O単位の窒素原子の2個の結合に第四級炭素原子が結合されている。この場合に、前記第四級炭素原子は、有利には、それぞれ1個~12個の炭素原子を有する3個のアルキル基を有する炭素原子である。
【0023】
前記化合物(I)は、有利には、式(1-1)または(1-2)
【化4】
の基を有し、前記式中、
*で印された結合は、前記基と前記化合物の残りの部分とを結合している結合であり、かつ
1は、それぞれの場合に同一または異なって、Si(R33および1個~12個の炭素原子を有するアルキル基であって、F、ClおよびCNから選択される1個以上の基により置換されていてよいアルキル基から選択され、かつ
2は、それぞれの場合に同一または異なって、H、F、C(=O)R3、CN、Si(R33、N(R32、P(=O)(R32、OR3、S(=O)R3、S(=O)23、1個~20個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基またはアルコキシ基、3個~20個の炭素原子を有する分枝鎖状または環状のアルキル基またはアルコキシ基、2個~20個の炭素原子を有するアルケニル基またはアルキニル基、6個~40個の芳香族環原子を有するアリール基、および5個~40個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基から選択され、上述のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、およびアルキニル基、ならびに上述のアリール基およびヘテロアリール基は、それぞれ1個以上の基R3により置換されていてよく、かつ上述のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、およびアルキニル基中の1個以上のCH2基は、-R3C=CR3-、-C≡C-、Si(R32、C=O、C=NR3、-C(=O)O-、-C(=O)NR3-、NR3、P(=O)(R3)、-O-、-S-、SO、またはSO2により置き換えられていてよく、かつ
3は、それぞれの場合に同一または異なって、H、D、F、CN、1個~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基、2個~20個の炭素原子を有するアルケニル基またはアルキニル基、6個~40個の芳香族環原子を有するアリール基、および5個~40個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基から選択され、その際、2個以上の基R3は互いに結合されていてよく、かつ環を形成してよく、かつ上述のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、およびアルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、FまたはCNで置換されていてよい。
【0024】
有利には、R1は、1個~8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。特に有利には、R1はメチルである。
【0025】
有利には、R2はHである。
【0026】
基Si(R32中のR3は、有利には、1個~20個の炭素原子を有するアルキル基、および6個~40個の芳香族環原子を有するアリール基から選択される。
【0027】
前記化合物(I)が式(1-1)の基を有することが有利である。
【0028】
特に有利には、前記化合物(I)は、ちょうど1個、ちょうど2個、ちょうど3個、またはちょうど4個の式(1)の基を有する。さらに特に有利には、前記化合物は、ちょうど2個の式(1)の基を有する。前記化合物(I)が複数の式(1)の基を有する場合に、該基が、1個以上のスペーサー基により互いに隔離されていることが有利である。
【0029】
特に有利には、前記化合物(I)は、式(1-1-1)
【化5】
の基を有し、前記式中
*で印された結合は、前記基と前記化合物の残りの部分とを結合している結合であり、かつ
1は、前記のように定義され、かつ有利にはメチルである。
【0030】
有利には、化合物(I)は、式(I)
【化6】
に相当し、前記式中、存在する変項には、以下のことが当てはまる:
Uは、それぞれの場合に同一または異なって、-CH2-、-O-、-S-、および-NH-から選択され、
Spは、2個~10個の炭素原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアルキレン基、2個~10個の炭素原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアルケニレン基、2個~10個の炭素原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアルキニレン基、6個~40個の芳香族環原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアリール基、および5個~40個の芳香族環原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいヘテロアリール基から選択され、
1は、前記のように定義され、
4は、それぞれの場合に同一または異なって、H、D、F、CN、1個~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基、2個~20個の炭素原子を有するアルケニル基またはアルキニル基、6個~40個の芳香族環原子を有するアリール基、および5個~40個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基から選択され、その際、2個以上の基R3は互いに結合されていてよく、かつ環を形成してよく、かつ上述のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、およびアルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、FまたはCNで置換されていてよく、
iは、それぞれの場合に同一または異なって、0または1であり、
pは、2、3、または4である。
【0031】
有利には、式(I)中のR1は、メチルである。さらに有利には、iは1である。さらに有利には、pは2である。一層さらに有利には、Uは-O-である。一層さらに有利には、Spは、2個~10個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。
【0032】
特に有利には、化合物(I)は、式(I-1)
【化7】
に相当し、前記式中、
存在する変項には、以下のことが当てはまる:
Spは、2個~10個の炭素原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアルキレン基、2個~10個の炭素原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアルケニレン基、2個~10個の炭素原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアルキニレン基、6個~40個の芳香族環原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいアリール基、および5個~40個の芳香族環原子を有し、それぞれ1個以上の基R4で置換されていてよいヘテロアリール基から選択され、
4は、前記のように定義される。
【0033】
特に有利には、式(I-1)中のR4は、2個~10個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。
【0034】
有利な具体的な化合物(I)を、以下の表に示す。
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
有利には、前記化合物(I)は、0.01質量%~1質量%の割合で、特に有利には0.02質量%~0.8質量%の割合で前記液晶性材料中に含まれている。
【0039】
前記液晶性材料は、有利には通常の周囲温度でネマティック液晶性である。特に有利には、通常の周囲温度の上下±20℃の幅において、さらに特に有利には通常の周囲温度の上下±30℃の幅においてネマティック液晶性である。さらに有利には、前記液晶性材料は、80℃より高い温度、特に有利には100℃より高い温度、さらに特に有利には120℃より高い温度、最も有利には130℃より高い温度で、透明点、有利にはネマティック液晶性状態から等方性状態への相転移を有する。
【0040】
前記液晶性材料は、有利には90質量%超の割合が、棒状構造を有する有機化合物から構成されている。有利には、前記液晶性材料は、3種より多くて20種より少ない異なる上述の有機化合物を含有する。
【0041】
液晶性材料の成分として使用することができる化合物は当業者に公知であり、基本的に任意に選択され得る。前記液晶性材料が、1,4-フェニレンおよび1,4-シクロヘキシレンを基礎とする構造要素を有する少なくとも1種の化合物を含有することが有利である。前記液晶性材料が、1,4-フェニレンおよび1,4-シクロヘキシレンを基礎とする2個、3個、または4個の、特に有利には3個または4個の構造要素を有する少なくとも1種の化合物を含有することが特に有利である。
【0042】
有利には、前記液晶性材料は、それぞれ-Cyc-、-Phe-、-Cyc-Cyc-、-Cyc-Phe-、-Phe-Cyc-、-Phe-Phe-、-Cyc-Z-Cyc-、-Cyc-Z-Phe-、-Phe-Z-Cyc-、および-Phe-Z-Phe-から選択される1個の基を有する1種以上のメソゲン性化合物を含有し、ここで、
Cycは、トランス-1,4-シクロヘキシレンを意味し、ここでまた、1個以上の隣接していないCH2基は、-O-および/または-S-により置き換えられていてよく、そしてまた1個以上のH原子はFにより置き換えられていてよく、
Pheは、1,3-フェニレンまたは1,4-フェニレン、有利には1,4-フェニレンを意味し、ここでまた、1個または2個の隣接していないCH基は、Nにより置き換えられていてよく、そしてまた1個以上のH原子はLにより置き換えられていてよく、
Zは、-CH2-、-CF2-、-CO-、-O-、-NH-、-NH-(CO)-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C24-、または-CF=CF-を意味し、かつ
Lは、それぞれの場合に同一または異なって、F、Cl、CN、または直鎖状もしくは分枝鎖状の、それぞれ任意にフッ素化された、1個~5個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アリールアルキル、またはアルキルアリールアルキルを意味し、ここでまた、1個以上の隣接していないCH2基は、-O-および/または-S-により置き換えられていてよい。
【0043】
さらに、前記液晶性材料は、以下の基:
【化11】
から選択される少なくとも1個の基を有する少なくとも1種の化合物を含有し、前記式中、*で印された結合は、前記基と前記化合物の残りの部分とを結合している結合であることが有利である。
【0044】
前記液晶性材料は、以下の基:
【化12】
から選択される少なくとも1個の基を有する少なくとも1種の化合物を含有し、前記式中、*で印された結合は、前記基と前記化合物の残りの部分とを結合している結合であることが特に有利である。
【0045】
有利には、前記液晶性材料は、立体障害されたヒドロキシフェニル基を有する化合物(II)をさらに含有する。その化合物は、それにより特に光安定性および温度安定性である液晶性材料を得ることができるという技術的効果を有する。
【0046】
表記「立体障害されたヒドロキシフェニル基」とは、本発明の範囲においては、ヒドロキシフェニル基のヒドロキシル基の近くに、このヒドロキシル基を立体的に妨げる化学的な基が存在することを表す。有利には、これらの化学的な基は、ヒドロキシル基に対してオルト位の位置の一方または両方でベンゼン環に結合されている。特に有利には、これらの化学的な基は、ヒドロキシル基に対してオルト位の位置の両方でベンゼン環に結合されている。有利には、これらの化学的な基は、1個~10個の炭素原子を有するアルキル基、ならびに1個~12個の炭素原子を有するアルキル基および6個~40個の芳香族環原子を有するアリール基から選択される基を有するシリル基から選択され、特に有利には3個~10個の炭素原子を有する分枝鎖状アルキル基から選択され、さらに特に有利にはt-ブチル基またはネオペンチル基から選択される。
【0047】
前記化合物(II)は、有利には、式(2)
【化13】
の基を有し、前記式中、
*で印された結合は、前記基と前記化合物の残りの部分とを結合している結合であり、
21は、それぞれの場合に同一または異なって、H、1個~12個の炭素原子を有するアルキル基および6個~40個の芳香族環原子を有するアリール基から選択される基を有するシリル基、ならびに1個~12個の炭素原子を有するアルキル基であって、F、ClおよびCNから選択される1個以上の基で置換されていてよいアルキル基から選択され、その際、少なくとも1個のR21は、1個~12個の炭素原子を有するアルキル基および6個~40個の芳香族環原子を有するアリール基から選択される基を有するシリル基、ならびに1個~12個の炭素原子を有するアルキル基であって、F、ClおよびCNから選択される1個以上の基で置換されていてよいアルキル基から選択され、
22は、それぞれの場合に同一または異なって、Hおよび1個~12個の炭素原子を有するアルキル基であって、F、ClおよびCNから選択される1個以上の基により置換されていてよいアルキル基から選択される。
【0048】
有利には、R21は、それぞれの場合に同一または異なって、立体的に嵩高いアルキル基から選択され、特に有利には3個~12個の炭素原子を有する分枝鎖状アルキル基であって、F、ClおよびCNから選択される1個以上の基により置換されていてよいアルキル基から選択される。さらに特に有利には、R21は、それぞれの場合に同一または異なって、t-ブチルおよびネオペンチルから選択され、最も有利にはR21は、t-ブチルである。
【0049】
有利には、R22はHである。
【0050】
有利には、前記化合物(II)は、ちょうど1個、ちょうど2個、またはちょうど3個の式(2)の基を有し、特に有利には、前記化合物(II)は、ちょうど1個の式(2)の基を有する。
【0051】
有利には、化合物(II)は、式(II)
【化14】
に相当し、前記式中、
存在する変項には、以下のことが当てはまる:
21およびR22は、前記のように定義され、
23は、H、F、Cl、CN、NCS、1個~20個の炭素原子を有するアルキル基、1個~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、1個~10個の炭素原子を有するチオアルキル基、2個~20個の炭素原子を有するアルケニル基、および2個~20個の炭素原子を有するアルケニルオキシ基から選択され、ここで、前記アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルケニル基、およびアルケニルオキシ基中の1個以上の水素原子は、F、Cl、またはCNによって置き換えられていてよく、
21は、それぞれの場合に同一または異なって、
【化15】
【0052】
【化16】
から選択され、かつ
Xは、それぞれの場合に同一または異なって、F、Cl、CN、N3、-NCS、NO2、-C≡C-Rx、1個~12個の炭素原子を有するアルキル基、1個~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、および1個~12個の炭素原子を有するチオアルキル基から選択され、ここで、前記アルキル基、アルコキシ基、およびチオアルキル基中の1個以上の水素原子は、F、Cl、またはCNによって置き換えられていてよく、かつ前記アルキル基、アルコキシ基、およびチオアルキル基中の1個以上のCH2基は、OまたはSによって置き換えられていてよく、
xは、それぞれの場合に同一または異なって、H、CN、および1個~10個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、ここで、前記アルキル基中の1個以上の炭素原子は、F、Cl、またはCNによって置換されていてよく、
21は、それぞれの場合に同一または異なって、1個~12個の炭素原子を有するアルキレン基、2個~12個の炭素原子を有するアルケニレン基、2個~12個の炭素原子を有するアルキニレン基、-O-、-S-、-NH-、-(C=O)-O-、-O-(C=O)-、-CF-O-、-O-CF-、-O-CH-、および-CH-O-から選択され、
kは、それぞれの場合に同一または異なって、0、1、または2であり、
mは、0、1、2、または3であり、
nは、それぞれの場合に同一または異なって、0、1、または2である。
【0053】
有利には、式(II)中のR23は、1個~20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基から選択され、特に有利には1個~12個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。さらに、基R21およびR22に関する有利な実施形態が適用される。
【0054】
さらに、A21は、有利にはそれぞれの場合に同一または異なって、
【化17】
から選択される。
【0055】
一層さらには、k、m、およびnは、それぞれの場合に同一または異なって、0または1から選択される。
【0056】
さらに有利には、kは、1または2であり、かつmは、1、2、または3である。最も有利には、kは、1であり、mは、1であり、かつnは、0であり、こうして有利な式(IIA):
【化18】
の化合物となり、前記式中、存在する変項は、前記のように定義される。有利には、前記変項R21、R22、R23、およびA21は、上述の有利な実施形態に相当する。
【0057】
化合物(II)のための特に有利な実施形態は、以下の式:
【化19】
[式中、n=1、2、3、4、5、6、または7であり、有利には1、4、または7である]
式(II-1)、
【化20】
[式中、n=1、2、3、4、5、6、または7であり、有利には3である]
式(II-2)、
【化21】
[式中、n=1、2、3、4、5、6、または7であり、有利には3である]
式(II-3)、
に相当する。
【0058】
有利な具体的な化合物(II)を、以下の表に示す。
【0059】
【化22】
【0060】
【化23】
【0061】
【化24】
【0062】
【化25】
【0063】
前記液晶性材料が、式(I-1)の化合物(I)と式(II)の化合物(II)との組み合わせを含有することが特に有利である。化合物
【化26】
から選択される化合物(I)と、化合物
【化27】
から選択される式(II)の化合物との組み合わせがさらに特に有利である。
【0064】
有利には、前記化合物(II)は、0.01質量%~1質量%の割合で、特に有利には0.02質量%~0.8質量%の割合で前記液晶性材料中に含まれている。
【0065】
前記液晶性材料中に含まれる色素は、有利には有機化合物、特に有利には少なくとも1個の縮合アリール基またはヘテロアリール基を有する有機化合物である。この場合に、縮合アリール基またはヘテロアリール基とは、少なくとも2個の芳香族単位環または複素芳香族単位環、特に5員環または6員環を有し、それらが少なくとも1つの辺を互いに共有する基を表す。縮合アリール基およびヘテロアリール基のための例は、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、カルバゾリル、アクリジニル、およびキノリニルである。
【0066】
有利には、前記液晶性材料は、少なくとも2種の、特に有利には少なくとも3種の、さらに特に有利には3種または4種の異なる色素を含有する。有利には、前記少なくとも2種の色素は、それぞれ異なる領域の光スペクトルをカバーしている。
【0067】
前記液晶性材料中に2種以上の色素が存在する場合に、これらの色素の吸収スペクトルは、有利には、ほぼ全可視スペクトルの光を吸収するように補完される。それにより、人間の目には黒色の印象が生じる。有利には、そのことは、3種以上の異なる色素を使用し、そのうち少なくとも1種が青色光を吸収し、少なくとも1種が緑色光ないし黄色光を吸収し、そして少なくとも1種が赤色光を吸収することにより達成される。その場合に、光色は、B.Bahadur,Liquid Crystals - Applications and Uses,Vol.3,1992,World Scientific Publishing,11.2.1節に相応して定義される。
【0068】
前記液晶性材料中の色素の全体割合は、有利には0.01質量%~20質量%、特に有利には0.1質量%~15質量%、さらに特に有利には0.2質量%~12質量%である。前記1種以上の色素のそれぞれ個々の割合は、有利には0.01質量%~15質量%、特に有利には0.05質量%~12質量%、さらに特に有利には0.1質量%~10質量%である。
【0069】
前記液晶性材料中に含まれる色素は、該材料中に有利には溶解されて存在する。該色素は、有利にはその配向において、液晶状態の液晶性材料の分子の配向によって影響される。
【0070】
有利には、前記色素は、二色性色素、特に有利には正の二色性色素である。正の二色性とは、色素が正の異方性度Rを有することを表す。特に有利には、該異方性度Rは、0.4より大きく、さらに特に有利には0.5より大きく、最も有利には0.6より大きい。その場合に、異方性度Rは、出願文書の国際公開第2015/154848号パンフレット(WO2015/154848)の実施例に示されるように測定される。
【0071】
択一的な実施形態においては、前記色素が負の二色性色素であることが有利であることもある。負の二色性とは、色素が負の異方性度Rを有することを表す。
【0072】
有利には、前記液晶性材料中に存在する色素は、すべてが正の二色性であるか、またはすべてが負の二色性であるかのいずれかである。
【0073】
さらに有利には、本出願による色素は、紫外-可視-近赤外領域、すなわち320nm~1500nmの波長領域の光を主として吸収する。特に有利には、前記色素は、可視領域、すなわち380nm~780nmの波長領域の光を主として吸収する。特に有利には、前記色素は、上記定義の紫外-可視-近赤外領域、有利には可視領域、すなわち380nm~780nmの波長に1つ以上の吸収極大を有する。スイッチング可能な窓において使用するためには、前記色素が、近赤外領域、特に780nmから1500nmの間に1つ以上の吸収極大を有することが同様に有利である。
【0074】
さらに有利には、前記色素は、B.Bahadur,Liquid Crystals - Applications and Uses,Vol.3,1992,World Scientific Publishing,11.2.1節に示される色素クラス、特に有利には前記表中に明示された化合物から選択される。
【0075】
有利には、前記色素は、アゾ化合物、アントラキノン、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン、テトラジン、リレン、特にペリレンおよびテリレン、ベンゾチアジアゾール、ピロメテン、およびジケトピロロピロールから選択される。特に有利には、なかでも、特に国際公開第2014/187529号パンフレット(WO2014/187529)に開示されるようなアゾ化合物、アントラキノン、ベンゾチアジアゾールであり、特に国際公開第2015/090497号パンフレット(WO2015/090497)に開示されるようなジケトピロロピロールであり、かつ特に国際公開第2014/090373号パンフレット(WO2014/090373)に開示されるようなリレンである。最も有利には、前記色素は、アゾ色素、アミノ基を有するアントラキノン、およびアミノ基を有さないアントラキノンから選択される。
【0076】
以下の化合物は、上述の色素についての例である。
【0077】
【化28】
【0078】
【化29】
【0079】
【化30】
【0080】
【化31】
【0081】
【化32】
【0082】
【化33】
【0083】
【化34】
【0084】
【化35】
【0085】
【化36】
【0086】
【化37】
【0087】
【化38】
【0088】
【化39】
【0089】
【化40】
【0090】
【化41】
【0091】
【化42】
【0092】
【化43】
【0093】
【化44】
【0094】
【化45】
【0095】
【化46】
【0096】
【化47】
【0097】
【化48】
【0098】
【化49】
【0099】
【化50】
【0100】
【化51】
【0101】
【化52】
【0102】
【化53】
【0103】
前記液晶性材料は、有利にはキラルドーパントを含有する。キラルドーパントは、有利には、0.01質量%~3質量%の、特に有利には0.05質量%~1質量%の全濃度で使用される。前記液晶性材料の分子の捩れについての高い値を得るために、キラルドーパントの全濃度は、3質量%より高く選択することもでき、有利には最高15質量%までで選択することができる。
【0104】
有利なキラルドーパントは、以下の表に示される化合物である。
【0105】
【化54】
【0106】
【化55】
【0107】
前記液晶性材料は、基本的に任意の光スイッチング装置において使用することができる。光スイッチング装置は、表示装置またはスイッチング可能な窓において使用することができる。スイッチング可能な窓における使用が有利であり、特に本発明による液晶性材料を含有するスイッチング可能な層を有するスイッチング可能な窓における使用が有利である。
【0108】
太陽光の通過の調節のための装置における前記液晶性材料の使用が有利である。
【0109】
そのため、本発明のさらなる主題は、液晶性材料の層を有する太陽光の通過の調節のための光スイッチング装置であって、前記液晶性材料が、前記定義の化合物(I)および色素を含有することを特徴とする光スイッチング装置である。有利には、前記光スイッチング装置は、平面要素を通じる光通過を調節する。さらに有利には、前記光通過の調節は、平面要素の面全体にわたり均一に行われる。その場合に、均一な調節とは、平面要素内のすべての箇所での透過が十分に同じ高さであることを表す。
【0110】
その場合に、前記平面要素は、有利には少なくとも0.05m2の、特に有利には少なくとも0.1m2の、特に有利には少なくとも0.5m2の、さらに特に有利には少なくとも0.8m2の面積を有する。
【0111】
前記液晶性材料は、前記装置中で、有利には1層で存在する。この層は、有利にはスイッチング可能であり、すなわち、その透光性の調整が可能であり、したがってスイッチング層とも呼ばれる。該層は、有利には12μm~40μmの、特に有利には14μm~30μmの、さらに特に有利には15μm~25μmの厚さを有する。
【0112】
本発明による装置は、有利には環境から室内への太陽光の形の光通過の調節のために適している。その場合に、該室は、環境から十分に閉ざされた任意の室、例えば建物、乗り物、またはコンテナであってよい。該装置は一般的に、任意の室のために使用することができるが、それは、特に前記室が、環境との限られた空気交換しか有さず、外部からのエネルギー入力が光エネルギーの形で行われ得る透光性の境界面を有する場合である。透光性の面、例えば窓面を通して強い太陽放射に晒されている室のための前記装置の使用が特に有利である。そのための例は、外部への大きな窓面を有する室、および乗り物、特に自動車の室内である。
【0113】
本発明による装置は、有利にはより大きな平面構造物の開口部に配置されており、その際、該平面構造物自体は、全く光通過を可能にしないか、または僅かのみの光通過しか可能にせず、そして前記開口部は、相対的に見てより透光性である。有利には、前記平面構造物は、壁または外側に向けての室のその他の境界である。
【0114】
本発明による装置は、スイッチング可能である。その際、スイッチングとは、該装置を通じる光通過の変更を表す。本発明による装置は、有利には電気的にスイッチング可能である。この場合に、前記装置は、有利には2つ以上の電極を備え、それらは、前記液晶性材料を含有する層の両側に取り付けられている。該電極は、有利にはITO、または薄い、有利には透明な金属膜および/または金属酸化物膜、例えば銀またはFTO(フッ素ドープ酸化スズ)またはこの使用のために当業者に知られる代替的な材料からなる。ITO電極には、不動態化層、例えばSiO2が設けられていてよい。前記電極は、有利には電気接点を備えていてよい。電圧は、有利には電池、蓄電池、または外部給電によって供給される。
【0115】
そのスイッチング過程は、電気的スイッチングの場合には、電圧の印加による液晶状態の液晶性材料の分子の配向によって行われる。
【0116】
その場合に、有利な実施形態においては、前記装置は、電圧の印加によって、電圧がない場合の高い吸収を有する状態、すなわち低い透光性を有する状態から、より低い吸収を有する状態、すなわちより高い透光性を有する状態へと移行される。有利には、前記液晶性材料は、前記装置中の層内において両方の状態でネマティック液晶性である。電圧がない状態は、有利には、前記液晶性材料の分子が液晶状態で存在し、それにより前記色素の分子がスイッチング層の平面に対して平行に配向されて存在することを特徴とする。それは、有利には相応して選択された配向層によって達成される。有利には、前記分子は、この場合に捩れずに、スイッチング層の平面に対して平行に配向されて存在する。電圧がかかった状態は、有利には、前記液晶性材料の分子と共に前記色素の分子がスイッチング層の平面に対して垂直に存在することを特徴とする。
【0117】
ある特定の条件下で有利な実施形態によれば、前記液晶性材料の分子は、電圧がない状態では捩れネマティックに、かつスイッチング層の平面に対して平行に存在する。電圧がかかった状態では、前記分子は、スイッチング層の平面に対して垂直に存在する。
【0118】
ある特定の条件下で同様に有利な択一的な実施形態によれば、前記液晶性材料の分子は、電圧がない状態ではスイッチング層の平面に対して垂直に存在する。それは、有利には相応して配置された配向層によって達成される。電圧がかかった状態では、前記分子は、この場合にスイッチング層の平面に対して平行に存在する。その場合に、該分子は、捩れて、または捩れずに存在し得る。
【0119】
本発明の有利な実施形態によれば、前記装置は、必要なエネルギーを、該装置と接続されているソーラーセルまたは光および/もしくは熱エネルギーを電気的エネルギーに変換するためのその他の装置によって供給することにより外部給電なく動作させることができる。ソーラーセルによるエネルギーの供給は、直接的にまたは間接的に、すなわち間に接続された電池もしくは蓄電池またはエネルギーの蓄積のためのその他のユニットを介して行われ得る。有利には、前記ソーラーセルは外側で前記装置に取り付けられているか、または該ソーラーセルは、例えば国際公開第2009/141295号パンフレット(WO2009/141295)に開示されるように該装置の内部構成要素である。
【0120】
本発明による装置は、有利には以下の層順序を有し、その際、追加的にさらなる層が存在してもよい。有利には、以下に示される層は、前記装置中で互いに直接的に境を接している。
【0121】
- 基板層、有利にはガラスまたはポリマー製の基板層、
- 導電性の透明な層、有利にはITO製の導電性の透明な層、
- 配向層、
- 本発明による材料を含有するスイッチング層、
- 配向層、
- 導電性の透明な層、有利にはITO製の導電性の透明な層、
- 基板層、有利にはガラスまたはポリマー製の基板層。
【0122】
特に国際公開第2014/180525号パンフレット(WO2014/180525)に開示されるような、上記の層順序の2つの並んで配置されたLCセルを含む実施形態が有利である。
【0123】
個々の層の有利な実施形態を、以下に示す。
【0124】
有利には、本発明による装置は、1つ以上の、特に有利には2つの配向層を有する。前記配向層は、有利には、前記液晶性材料を含有する層の両側に直接的に境を接して存在する。
【0125】
本発明による装置の配向層としては、当業者にこのために知られる任意の層を使用することができる。ポリイミド層が有利であり、ラビングされたポリイミド製の層が特に有利である。当業者に公知のある特定の様式でラビングされたポリイミドは、分子が配向層に対して平行に存在する(プラナー配向)場合に、液晶状態の液晶性材料の分子のラビング方向における配向をもたらす。その場合に、液晶状態の液晶性材料の分子が配向層に対して完全にプラナーに存在せずに、僅かな傾斜角を有する(プレチルト)ことが有利である。前記分子が配向層の表面に対して垂直な配向(ホメオトロピック配向)に至るためには、有利にはある特定の様式で処理されたポリイミドが、配向層のための材料として使用される(非常に高いプレチルト角のためのポリイミド)。さらに、偏光による照光過程によって得られたポリマーは、1つの配向軸に従う分子の配向を達成するための配向層として使用することができる(光配向)。
【0126】
前記液晶性材料の分子の捩れが少なくとも1つのスイッチング状態において存在する場合に、本発明による装置において該液晶性材料を含有するスイッチング層を取り囲む2つの配向層のラビング方向が、30°~270°の角度を成すことが有利である。
【0127】
さらに有利には、本発明による装置において、前記液晶性材料を含有する層が、2つの基板層の間に配置されているか、またはこれらの層により取り囲まれている。前記基板層は、例えばガラスまたはポリマー、有利には透光性ポリマーからなり得る。
【0128】
有利には、前記装置は、それがちょうど1つの偏光子を有することを特徴とする。該偏光子は、有利には直線偏光子である。
【0129】
択一的な実施形態によれば、前記装置は、ポリマーベースの偏光子を有さず、特に有利には固体材料相で存在する偏光子を有さず、さらに特に有利には偏光子を全く有さない。
【0130】
さらに有利には、本発明による装置は、ソーラーセルまたは光および/もしくは熱的エネルギーから電気的エネルギーへと変換するためのその他の装置へと導光する導光システム、有利には国際公開第2009/141295号パンフレット(WO2009/141295)に記載される導光システムを備える。
【0131】
有利な実施形態においては、本発明による装置は、その透光性においてスイッチング可能な窓の、特に有利には少なくとも1つのガラス面を有する窓の、さらに特に有利には複層断熱ガラスを有する窓の構成要素である。
【0132】
この場合に、窓とは、特に枠とこの枠により包囲された少なくとも1枚の板ガラスとを有する建物中の構造物を表す。有利には、該構造物は、断熱性の枠と、2枚以上の板ガラス(複層断熱ガラス)とを有する。
【0133】
有利な実施形態によれば、本発明による装置は、窓のガラス面上に直接的に、特に有利には複層断熱ガラスの2枚の板ガラスの間の間隙に設けられている。
【0134】
さらに、前記装置は、有利には部分的に透光性のスイッチング可能な自動車のルーフまたはスイッチング可能な自動車の窓のスイッチング用能動部品として使用される。
【0135】
この場合に、層順序は、有利には
- 偏光層、
- 基板層、有利にはガラスまたはポリマー製の基板層、
- 導電性の透明な層、有利にはITO製の導電性の透明な層、
- 配向層、
- 本発明による材料を含有するスイッチング層、
- 配向層、
- 導電性の透明な層、有利にはITO製の導電性の透明な層、
- 基板層、有利にはガラスまたはポリマー製の基板層、
であり、ここで、前記偏光層は、光源の方向に、特に太陽の方向に外側に向けられている。
【0136】
偏光子と基板層との間に、1つ以上のさらなる層が存在することが有利である。有利には、これらの層は、偏光層および基板層の異なる熱膨張係数を補償する。そのためには、接着剤層および接着フィルム、例えば3M社の光学用透明粘着シートから選択される層が有利である。
【0137】
択一的に、前記偏光層は、2つの基板層の間に、または前記装置の太陽とは反対側に存在してもよい。この場合に、スイッチング層の外側にある層が紫外光を吸収することが有利である。特に、前記基板層が、紫外吸収性添加剤を含有するか、または紫外線フィルターが該基板層上に設けられていることが有利である。
【0138】
有利には、前記基板層は、光学的に異方性である。特に、該基板層は、全く複屈折性ではなくまたは僅かにのみ複屈折性である。有利には、該基板層は、全く応力複屈折を有さないか、または僅かな応力複屈折しか有さない。それは、特にポリマー製の基板層により達成可能である。
【0139】
さらに、前記装置をスイッチング可能な自動車のルーフまたは自動車の窓において使用する場合に、該装置は平坦ではなく、空間的に湾曲していることが有利である。それは、有利には湾曲した基板層の使用により達成される。
【0140】
実施例
1)液晶性混合物の製造
基本混合物として、以下の混合物M1が使用される:
【表1】
【0141】
混合物M1-Fは、混合物M1に色素F1、F2およびF3を示される量割合で添加することにより得られる:
【表2】
【0142】
色素の構造:
【化56】
【0143】
混合物M1-Fから、添加剤A1および/またはA2の添加により以下の液晶性混合物が製造される:
【表3】
【0144】
さらに、以下の液晶性混合物を参照として製造する:
【表4】
【0145】
添加剤A1、A2、A3およびA4は、以下の構造を有する:
【化57】
【0146】
該混合物を、ポリイミド配向層(アンチパラレルにラビングされた、プラナー配向用のポリイミドAL-1054)を有するLCセル中に充填する。該混合物を含む層の層厚は、25μmである。該セルを、紫外線硬化型接着剤(Norland)で封止する。
【0147】
光曝露試験を、前記セルで以下の通りに実施する:
該セルを、分光学的に測定する(初期値)。次いで、MTS AtlasのサンテストCPS+において70℃のブラックスタンダード温度(=試料の表面温度)に調整し、かつ該試料を気密的に短波長紫外光から遮蔽するSchott社のUVエッジフィルタGG400を使用して16週間にわたり光曝露する。
【0148】
熱曝露試験を、前記セルで以下の通りに実施する:
前記試料を、分光学的に測定し(初期値)、次いで100℃の炉内で7日間にわたり貯蔵する。引き続き、改めてそのスペクトルを室温で測定する。
【0149】
色値および色差ΔE*の測定:
それぞれのスペクトルの透過曲線から、値x、yおよびzを、M.Richter,Einfuehrung in die Farbmetrik(Sammlung Goeschen,Band 2608)に従って測定する。M.Richter,Einfuehrung in die Farbmetrikに従って、前記値x、yおよびzから、L*、a*、b*を測定し、次いでこれらから相応の差ΔL*、Δa*、およびΔb*を測定する。使用された分光計は、Perkin Elmer Lambda 1050である。
【0150】
Lab色空間で計算された色の差(色差)ΔE*を、最終的に以下:
ΔE*=[(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*20.5
の通りに計算する。
【0151】
製造されたセルに関して以下の結果が得られる:
【表5】
【0152】
参照混合物を含む装置に関しては以下の結果が得られる:
【表6】
【0153】
得られた結果は、光曝露試験において、添加剤A1を有する混合物(LC1~LC5)を含む装置に関しては、色差ΔE*について良好な値が得られることを示している。
【0154】
熱安定性試験においても、添加剤A1により、色差ΔE*について比較的良好な値が得られる。
【0155】
添加剤A2、A3またはA4を含有する混合物を含む参照装置に関しては、それに対して、光曝露試験において色差ΔE*に関して、許容することができない非常に悪い値が得られる(V-LC1~V-LC4)。安定化添加剤を含まない混合物M1-Fについても同じことが言える。
【0156】
両方の添加剤A1およびA2を含む装置(LC6~LC10)によれば、光安定性試験においても熱安定性試験においても、色差ΔE*について非常に良好な値が得られる。これらの値は、添加剤A1を単独で用いて得られる良好な値をもさらに上回る。