(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】流体システムおよび摩擦溶接による製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20221121BHJP
F16L 13/02 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B23K20/12 G
F16L13/02
(21)【出願番号】P 2018565838
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 US2017040227
(87)【国際公開番号】W WO2018005938
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2019-02-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518100030
【氏名又は名称】レンロック ホールディングズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Lenlok Holdings, LLC
【住所又は居所原語表記】38376 Apollo Parkway, Willoughby, OH 44094, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム エイチ. レノン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ホドソン
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】田々井 正吾
【審判官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-051955(JP,A)
【文献】特開平11-154435(JP,A)
【文献】特開昭59-118293(JP,A)
【文献】特開昭57-052529(JP,A)
【文献】特開昭50-023028(JP,A)
【文献】実開昭48-98712(JP,U)
【文献】特開昭63-060081(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016319(WO,A1)
【文献】特開平01-122679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0180728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00 - 20/26
F16L 13/00 - 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体継手および前記流体継手の少なくとも一部に取り付けられる第1のワークピースを提供し、
前記流体継手は、
少なくとも1つの端部で、内部に管を収容するための孔を画定する内面を有していて、
溶接により前記第1のワークピースに恒久的に接続されているカップリングボディ、
前記管に前記カップリングボディを機械的に取り付けるために、前記カップリングボデ
ィの前記少なくとも1つの端部の上に嵌合されるように構成されたリング、
および
前記管を係合するために前記カップリングボディの前記内面に形成されたメインシールであって、前記リングが、力によって、前記カップリングボディの前記少なくとも1つの端部に取り付けられたときに、前記リングと前記カップリングボディとが、前記リングの半径方向外側への弾性変形を引き起こし、かつ前記カップリングボディと前記管との恒久的な変形を引き起こし、これにより、前記管を前記カップリングボディに漏れのない形で取り付けるのに十分な圧縮力を前記メインシールに付与する、メインシール、を備え、
前記流体継手および前記第1のワークピースを提供するステップは、
前記第1のワークピースの溶接面と第2のワークピースの溶接面の両方に設けられた位置合わせ構造を介して、前記第1のワークピースを前記第2のワークピースと同心円状に整列させること、
前記第1のワークピースの第1のピースの溶接面を、前記第2のワークピースの第2のピースの溶接面に接触するように配置すること、
前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面のうちの一方を、前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面のうちの他方に沿って、所定のパターンで駆動すること、
前記駆動することにより、前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面の温度を溶接温度にまで上昇させるのに十分な時間、摩擦と熱とを発生させるように、前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面の間に、プレス軸線に沿って圧力を加えること、
前記第1のピースの溶接面と前記第2のピースの溶接面が溶接継手を形成するまで前記圧力を加えながら前記駆動を停止すること、および
前記溶接継手が形成された後、前記第1のワークピースが溶接接合により前記流体継手の前記カップリングボディの溶接面に漏れのない形で恒久的にシールされるように、前記第2のワークピースの少なくとも一部を機械加工して前記流体継手の少なくとも一部を形成すること、を備え、
前記位置合わせ構造は、前記第1のワークピースまたは前記第2のワークピースの一方に適用される切欠溝と、前記第1のワークピースまたは前記第2のワークピースの他方に適用される隆起部とから構成される流体システムを製造する方法。
【請求項2】
前記所定のパターンは、前記プレス軸線周りの回転運動である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面のうちの前記一方を、前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面のうちの前記他方に沿って前記所定のパターンで駆動するステップと同時に、前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面のうちの前記他方を、前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面のうちの前記一方に沿って第2の所定のパターンで駆動するステップをさらに有している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面のうちの前記一方の前記駆動を停止する前記ステップは、前記第1のピースの溶接面および前記第2のピースの溶接面のうちの前記他方の前記駆動を停止するステップを含む、請求項
3記載の方法。
【請求項5】
前記所定のパターンは、第1の回転方向での前記プレス軸線周りの回転運動であり、前記第2の所定のパターンは、前記第1の回転方向とは反対方向の第2の回転方向での前記プレス軸線周りの回転運動である、請求項
3記載の方法。
【請求項6】
前記所定のパターンは、第1の回転速度での前記プレス軸線周りの回転運動であり、前記第2の所定のパターンは、前記第1の回転速度とは異なる第2の回転速度での前記プレス軸線周りの回転運動である、請求項
3記載の方法。
【請求項7】
前記溶接継手が形成される前に、前記第2のワークピースを機械加工して、前記流体継手の少なくとも他の一部を形成するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記溶接継手が形成された後に、前記機械加工するステップは、前記第2のワークピースを機械加工して、前記流体継手の別の部分を形成する、請求項
7記載の方法。
【請求項9】
流体継手および前記流体継手の少なくとも一部に取り付けられる第1のワークピースを提供し、
前記流体継手は、
少なくとも1つの端部で、内部に管を収容するための孔を画定する内面を有していて、
溶接により前記第1のワークピースに恒久的に接続されているカップリングボディ、
前記管に前記カップリングボディを機械的に取り付けるために、前記カップリングボディの前記少なくとも1つの端部の上に嵌合されるように構成されたリング、
および
前記管を係合するために前記カップリングボディの前記内面に形成されたメインシールであって、前記リングが、力によって、前記カップリングボディの前記少なくとも1つの端部に取り付けられたときに、前記リングと前記カップリングボディとが、前記リングの半径方向外側への弾性変形を引き起こし、かつ前記カップリングボディと前記管との恒久的な変形を引き起こし、これにより、前記管を前記カップリングボディに漏れのない形で取り付けるのに十分な圧縮力を前記メインシールに付与する、メインシール、を備え、
前記流体継手および前記第1のワークピースを提供するステップは、
前記カップリングボディの流体継手溶接面と前記第1のワークピースの溶接面の両方に設けられた位置合わせ構造を介して、前記流体継手と前記第1のワークピースとの位置合わせをすること、
前記カップリングボディの前記流体継手溶接面を、前記第1のワークピースの第1のピースの溶接面に接触するように配置すること、
前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面のうちの一方を、前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面のうちの他方に沿って、所定のパターンで駆動すること、
前記駆動することにより、前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面の温度を溶接温度にまで上昇させるのに十分な時間、摩擦と熱とを発生させるように、前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面の間に、プレス軸線に沿って圧力を加えること、および
前記流体継手溶接面と前記第1のピースの溶接面が溶接継手を形成するまで、前記第1のワークピースが溶接接合により前記カップリングボディの前記流体継手溶接面に漏れのない形で恒久的にシールされるように、前記圧力を加えながら、前記駆動を停止すること、を備え、
前記位置合わせ構造は、前記流体継手と前記第1のワークピースとの同心性を可能にする、
ことを特徴とする流体システムを製造する方法。
【請求項10】
前記所定のパターンは、前記プレス軸線周りの回転運動である、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面のうちの一方を、前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面のうちの他方に沿って前記所定のパターンで駆動するステップと同時に、前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面のうちの前記他方を、前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面のうちの前記一方に沿って第2の所定のパターンで駆動するステップをさらに有している、請求項
9記載の方法。
【請求項12】
前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面のうちの前記一方の前記駆動を停止する前記ステップは、前記流体継手溶接面および前記第1のピースの溶接面のうちの前記他方の前記駆動を停止することを含む、請求項
11記載の方法。
【請求項13】
前記所定のパターンは、第1の回転方向での前記プレス軸線周りの回転運動であり、前記第2の所定のパターンは、前記第1の回転方向とは反対方向の第2の回転方向での前記プレス軸線周りの回転運動である、請求項
11記載の方法。
【請求項14】
前記所定のパターンは、第1の回転速度での前記プレス軸線周りの回転運動であり、前記第2の所定のパターンは、前記第1の回転速度とは異なる第2の回転速度での前記プレス軸線周りの回転運動である、請求項
11記載の方法。
【請求項15】
流体継手であって、
カップリングボディであって、少なくとも該カップリングボディの1つの端部で、内部に管を収容するための孔を画定する内面を有しているカップリングボディ、
前記管に前記カップリングボディを機械的に取り付けるために、前記カップリングボディの前記少なくとも1つの端部の上に嵌合されるように構成されたリング、および
前記管を係合するために前記カップリングボディの前記内面に形成されたメインシールであって、前記リングが、力によって、前記カップリングボディの前記少なくとも1つの端部に取り付けられたときに、前記リングと前記カップリングボディとが、前記リングの半径方向外側への弾性変形を引き起こし、かつ前記カップリングボディと前記管との恒久的な変形を引き起こし、これにより、前記管を前記カップリングボディに漏れのない形で取り付けるのに十分な圧縮力を前記メインシールに付与する、メインシール、を有する流体継手、および
第1のワークピース、を備える恒久的にシールされた流体システムであって、
前記流体継手
の前記カップリングボディは、少なくとも1つの突出部を構成する流体継手溶接面を含み、
前記第1のワークピースは、前記少なくとも1つの突出部を収容するように構成された少なくとも1つの凹部を構成する溶接面を含み、
前記第1のワークピースは、
前記少なくとも1つの突出部及び前記少なくとも1つの凹部を介して前記カップリングボディと同心となるように位置合わせし、前記第1のワークピースと前記カップリングボディとを摩擦溶接
することにより得られる溶接接合により前記流体継手の前記カップリングボディの
流体継手溶接面に漏れのない形で恒久的にシールされる、
恒久的にシールされた流体システム。
【請求項16】
前記第1のワークピースは、前記第1のワークピースを通して前記流体継手からの材料の流れを漏れのない形で可能にするように構成された流体コネクタを有している、請求項
15記載の流体システム。
【請求項17】
少なくとも1つの第2のワークピースが、摩擦溶接により前記第1のワークピースに接続されている、請求項
15記載の流体システム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第2のワークピースが流体継手を有しており、前記第2のワークピースの流体継手は、
カップリングボディであって、少なくとも該カップリングボディの1つの端部で、内部に管を収容するための孔を画定する内面を有しているカップリングボディ、
前記管に前記カップリングボディを機械的に取り付けるために、前記カップリングボディの前記少なくとも1つの端部に嵌合するように構成されたリング、および
前記管を係合するために前記カップリングボディの前記内面上に形成されたメインシールであって、前記リングが、力によって、前記カップリングボディの前記少なくとも1つの端部に取り付けられたときに、前記リングと前記カップリングボディとが、前記リングの弾性変形を引き起こし、かつ前記カップリングボディと前記管の恒久的な変形を引き起こし、これにより、前記管を前記カップリングボディに漏れのない形で取り付けるのに十分な圧縮力をメインシールに付与する、メインシールを、有している、請求項
17に記載の流体システム。
【請求項19】
前記第1のワークピースは、第1のピースの溶接面を含み、前記第1のピースの溶接面は、前記少なくとも1つの突出部を収容するように構成された空間を画定する少なくとも2つの第2の突出部を有している、請求項
15記載の流体システム。
【請求項20】
前記流体継手の前記少なくとも1つの突出部は、内径位置合わせボスを有しており、前記内径位置合わせボスは、前記第1のワークピースの内径に対応する外径を有するように構成されている、請求項
15記載の流体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本願は、2016年7月1日に出願された米国特許仮出願第62/357669号明細書(U.S. Provisional Patent Application Serial No. 62/357,669)および2017年1月27日に出願された米国特許仮出願第62/451206号明細書(U.S. Provisional Patent Application Serial No. 62/451,206)の利益を請求し、その開示は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
1.技術分野
以下の説明は概して、流体エレメントを機械的に取り付け、シールするための流体システムに関し、より具体的には、摩擦溶接プロセスを介して流体システムを製造する方法に関する。
【0003】
2.関連技術および背景
流体システムは通常、複数の流体エレメントを有しており、これら流体エレメントは互いに流体的に連結されて、1つの領域から別の領域へと流体を搬送するシステムを形成する。流体エレメントが恒久的に互いに接続されることがしばしば所望される。流体エレメントを恒久的に接続し、流体エレメント間の漏れを防止するために、通常、流体エレメントは互いに溶接される。
【0004】
発明の簡単な概要
以下に、本発明の例示的な実施形態の簡単な概要を示す。この概要は、本発明の重要な要素を特定しようとする、または請求の範囲を表そうとするものではない。
【0005】
1つの態様によれば、流体エレメントにワークピースを摩擦溶接する方法は、ワークピースの溶接面を、流体エレメントの溶接面に接触するように配置するステップと、ワークピースの溶接面および流体エレメントの溶接面のうちの一方を、ワークピースの溶接面および流体エレメント溶接面のうちの他方に沿って、所定のパターンで駆動するステップと、を有している。本方法はさらに、ワークピースの溶接面および流体エレメントの溶接面の間に、プレス軸線に沿って圧力を加え、これにより、ワークピースの溶接面および流体エレメントの溶接面のうちの前記一方を、ワークピースの溶接面および流体エレメントの溶接面のうちの他方に沿って所定のパターンで駆動する前記ステップにより、ワークピースの溶接面および流体エレメントの溶接面の温度を溶接温度にまで上昇させるのに十分な時間、摩擦と熱とを発生させるステップを有する。本方法はさらに、両溶接面が溶接接合部を形成するまでワークピースと流体エレメントとの間に圧力を加えながら、ワークピースの溶接面および流体エレメントの溶接面のうちの前記一方の前記駆動を停止するステップと、溶接接合部が形成された後、ワークピースの少なくとも一部を機械加工して、流体継手であって、流体継手を通る流体の流れを搬送するために、漏れのない形で管を受け入れると共にこの管にシールされて結合するように構成された流体継手の少なくとも一部を形成するステップと、を有している。
【0006】
別の態様によれば、流体エレメントに流体継手を摩擦溶接する方法は、流体継手の溶接面を、流体エレメントの溶接面に接触するように配置するステップと、流体継手の溶接面および流体エレメントの溶接面のうちの一方を、流体継手の溶接面および流体エレメント溶接面のうちの他方に沿って、所定のパターンで駆動するステップと、を有している。本方法はさらに、流体継手の溶接面および流体エレメントの溶接面の間に、プレス軸線に沿って圧力を加え、これにより、流体継手の溶接面および流体エレメントの溶接面のうちの前記一方を、流体継手の溶接面および流体エレメントの溶接面のうちの他方に沿って所定のパターンで駆動する前記ステップにより、流体継手の溶接面および流体エレメントの溶接面の温度を溶接温度にまで上昇させるのに十分な時間、摩擦と熱とを発生させるステップを有している。本方法はさらに、溶接面が溶接接合部を形成するまで流体継手と流体エレメントとの間に圧力を加えながら、流体継手の溶接面および流体エレメントの溶接面のうちの前記一方の前記駆動を停止するステップを有していて、流体継手は、流体継手を通る流体の流れを搬送するために、漏れのない形で管を受け入れると共にこの管にシールされて結合するように構成されている。
【0007】
別の態様によれば、恒久的にシールされた流体システムが設けられており、本流体システムには、流体継手が設けられており、この流体継手は、カップリングボディであって、少なくともその1つの端部で、内部に管を収容するための孔を画定する内面を有しているカップリングボディと、孔の接面に少なくとも部分的に配置された流体継手の溶接面と、を有している。管にカップリングボディを機械的に取り付けるために、カップリングボディの少なくとも1つの端部の上に嵌合されるようにリングが位置しており、管に係合するためにカップリングボディの内面上にメインシールが形成されている。リングが、力によって、カップリングボディの少なくとも1つの端部上に設置されたとき、リングとカップリングボディとが、リングの弾性変形を引き起こし、かつカップリングボディと管との恒久的な変形を引き起こし、これにより、管をカップリングボディに漏れの生じない形式で取り付けるのに十分な圧縮力をメインシールに付与する。この恒久的にシールされた流体システムはさらに、第1のワークピースを有しており、第1のワークピースは、溶接接合により流体継手の溶接面に漏れのない形で恒久的にシールされる第1のピース溶接面を有しており、この溶接接合は、流体継手の溶接面と第1のピース溶接面とを互いに摩擦溶接し、シールされた流体接続部を形成することにより得られる。
【0008】
図面の簡単な説明
以下に、本出願の実施形態を添付の図面につきさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】例示的な流体継手を概略的に示す断面図である。
【
図2】第1の素材スラグおよび第2の素材スラグの例を示す図である。
【
図3】第1の素材スラグと、
図1に示した例示的な流体継手を示す図である。
【
図4】第1の素材スラグと、例示的な端部コネクタとを示す図である。
【
図5】
図4に示した例示的な端部コネクタと、
図1に示した例示的な流体継手とを示す図である。
【
図6A】例示的な位置合わせ構造を概略的に示す図である。
【
図6B】例示的な位置合わせ構造を概略的に示す図である。
【
図6C】例示的な位置合わせ構造を概略的に示す図である。
【
図6D】例示的な位置合わせ構造を概略的に示す図である。
【
図7】別の例示的な位置合わせ構造を概略的に示す図である。
【
図8】さらに別の例示的な位置合わせ構造を概略的に示す図である。
【
図9】管区分に摩擦溶接された流体継手を示す図である。
【
図10A】本摩擦溶接製造法により可能な例示的な「受注生産」(MTO)マニホルドを示す図である。
【
図10B】本摩擦溶接製造法により可能な例示的な「受注生産」(MTO)マニホルドを示す図である。
【
図11A】様々な流体エレメントに摩擦溶接された流体継手の例を示す図である。
【
図11B】様々な流体エレメントに摩擦溶接された流体継手の例を示す図である。
【
図11C】様々な流体エレメントに摩擦溶接された流体継手の例を示す図である。
【
図11D】様々な流体エレメントに摩擦溶接された流体継手の例を示す図である。
【0010】
発明の詳細な説明
以下の本発明の説明では、本発明の一部を成す添付の図面が参照される。添付の図面には図によって、本発明の原理を示す例示的な実施形態と、それを実施する方法が示されている。本発明の範囲から離れることなく、本発明を実現するために別の実施形態を行うことができ、構造的機能的変更が行われてよいと理解される。
【0011】
本発明の実施形態は、摩擦溶接された流体システムに関する。本発明を図面につき説明するが、この場合、全体にわたって同じ参照符号は同じ要素を示すために使用されている。図面は、1つの図面と他の図面とにおいて、または同じ図面内において、必ずしも縮尺通りに描かれていなくてもよいと理解される。また、構成要素のサイズは、図面の理解を容易にするために、幾分任意に描かれている。以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が述べられているが、場合によってはそれらの具体的な詳細なしに本発明を実施することも可能である。さらに、説明されている例は、本発明を限定しようとする意図はない。例えば、開示された例の1つ以上の態様は、他の例、さらには他の形式の装置、デバイス、方法で利用することができる。
【0012】
本明細書の開示を参照する際に、便宜上、明瞭にするためだけに、方向を示す用語、例えば、上部、底部、左、右、上へ、下へ、上方へ、下方へ、の上、の上方、の下、の下方、近傍、および前方のような用語を使用することができる。このような方向を示す用語は、いかなる形式においても、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載した実施形態は例示であり、限定するものではないと理解される。以下の詳細な説明の意図は、例示的な実施形態を論じてはいるが、本発明の思想および範囲内にある実施形態のすべての改変形態、代替形態および等価物を網羅すると解釈されるべきである。
【0013】
流体システムは通常、複数の流体エレメントを有しており、これら流体エレメントは互いに流体的に連結されて、1つの領域から別の領域へと流体を搬送するシステムを形成する。本開示については、「流体」の用語は、任意の液体または気体を意味するものであり、特定の種類の流体のみに関連するものではない。さらに、本明細書に記載の流体システムは、流体に加えて、または流体の代わりにバルク状の固体を搬送することもできると考えられる。本開示については、本明細書で使用する「流体エレメント」という用語は、流体を含み、流体を分配し、流体を受け取り、かつ/またはそれを通して流体を搬送するように構成された構造を示す。このような流体エレメントは、例えば、管、パイプ、マニホルド、流体コネクタ、弁、ポンプ、ノズル、リザーバ、センサシステム、これらの任意の組み合わせ、または流体を含む、流体を分配する、流体を受け取る、かつ/またはそれを通して流体を搬送するように構成された任意の別のエレメントを含むことができる。
【0014】
流体エレメントをいくつかの対応する構造に流体的に接続するために使用される端部コネクタに、流体継手を恒久的に接続することがしばしば所望されている。このような端部コネクタは、既製品であっても、顧客特注製造品であってもよい。従来は、流体継手は、端部コネクタに高温溶接される。流体継手は端部コネクタに、例えば手動で、または「機械式」のパルスガスタングステンアーク溶接プロセス(GTAW-P)によって、溶接される。完成した結合された継手は、従来の現場溶接されたものに代わる、独創的で費用対効果の高い管継手を提供する。しかしながら、機械式のGTAW-Pプロセスが、従来の「現場」溶接プロセスより優れた一貫した高品質溶接を提供するとはいえ、これは比較的大きな溶接表面積および熱影響部(HAZ)を生成する。GTAW-Pプロセスは、溶接アークによって発生した熱の結果として、材料が固体状態から溶融状態に移行する「高温作業」プロセスである。このプロセスは、保護ガスと、溶融溶接プールへの溶加材の導入を要し、溶接接合部を汚染されやすくし、結果として気泡(溶接部のエアポケット)が生じる。恒久的な接続部の改善が所望されている。
【0015】
摩擦溶接は低温であり、固体状態の溶接プロセスである。このプロセスは、金属を液化させないが、材料を加熱して塑性状態にする。一方の部品を他方の部品に対して移動させることにより摩擦によって熱が発生し、次いで、互いに対にさせられた部品に鍛接力が加えられる。互いに対となる材料間に形成される接合線は極めて小さい熱影響部(HAZ)と、小さい溶接表面積を形成し、材料のミクロ構造と殆どの材料特性を維持する。摩擦溶接は、非常に高い強度と、気泡のない低応力溶接とを奏する全断面表面鍛造を提供し、多くの場合、特別な接合部設計や臨界的な仮付け溶接作業は必要ない。溶接接合部の強度は一貫して、母材の強度と同等かそれ以上である。
【0016】
摩擦溶接プロセスは、溶加材、フラックス、または保護ガスを使用せずに実施することができる。また、エネルギ消費も最小限であり、溶接ヒューム、ガス、煙、または廃材を殆どまたは全く排出しない。このプロセスは高度に制御され、繰り返し再現可能なCNC制御された高品質の溶接接合部を生成する。典型的には、摩擦溶接される構成要素は円形である。しかしながら、今日の技術によれば、接合することのできる適用例、構成要素、材料形式、サイズおよび形状は殆ど無限である。ニアネットシェイプの素材を形成することができることにより、材料消費を低減し、機械加工サイクル時間を短縮することが見込まれる。ステンレス鋼合金と別の金属のように異種金属の接合により、独自の設計柔軟性が提供される。
【0017】
図1に戻るが、流体継手10の1つの実施形態が示されている。例示的な継手は、継手本体12を含み、さらに管16を流体継手10に結合するために一緒に利用される駆動リング14を含んでいてよい。1つの実施形態では、継手本体12、駆動リング14、管16は、中心軸線Xを中心としてほぼ対称的であり、円筒状の接触領域の長さに沿って、これらの間に所定の割合の締め代を有している。流体継手10は、例えば1/4‘‘NPSから4’’NPSのサイズ範囲にあるような肉薄の管または肉厚の管を接続するために利用することができるが、別の管サイズのものも、例示した継手を利用することができる。様々な継手の例が、共同所有の米国特許第8,870,237号、第7,575,257号、第6,692,040号、第6,131,964号、第5,709,418号、第5,305,510号、および第5,110,163号に示されており、これら全ては、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
概して、流体継手10を管16の上に設置することにより、この流体継手が連結される管16に、管16と継手本体12との間の金属対金属のシールを提供する恒久的かつ不可逆的な変形をさせることができると言える。
図1に示した実施形態では、継手本体12は、それぞれ第1の開口22と第2の開口24とを画定する第1の部分18と第2の部分20とを有している。継手本体12は、所望の使用に応じて、任意の数の部分を有することができる。第1の開口22と第2の開口24とは、継手本体12に設けられた通路または孔26によって互いに流体連通されている。
【0019】
1つの実施形態では、継手本体12の第1の部分18は、中心軸線Xを中心としてほぼ対称的なスリーブの形状である。第1の部分18は、内面28と外面30とを有している。内面28は、内側に向けられた1つ以上の隆起部32または歯列を画定していてよく、この隆起部32または歯列は、流体継手10と管16との間のシールを形成することができる。隆起部32は、中心軸線Xを中心として完全に、または部分的に内面28に沿って延在していてよい。隆起部32は、流体継手10が管16に接続されるときに、管16を把持するように構成された歯を形成する。シールは、内側シール、メインシール、外側シール等のいずれを含んでいてもよい。この実施形態の継手本体12の第2の部分20は同様に、中心軸線Xを中心としてほぼ対称的なスリーブの形状である。しかしながら、継手本体12の第1の部分18および第2の部分20は、所望される使用のために任意の形状をとることができる。
【0020】
1つの実施形態では、第1の部分18および第2の部分20は、中心軸線Xに沿ったまっすぐな通路における流路または孔26を通って第1の開口22と第2の開口24との間で流体が連通できるように、位置合わせされている。しかしながら、第1の部分18および第2の部分20は、別の例において選択的な態様で位置合わせされていてよい。例えば、1つの例では、第2の部分20は、中心軸線Xに対して横方向に(例えば、ほぼ垂直に)位置合わせされていてもよく、流路または孔26は、第1の開口22と第2の開口24との間の流体連通を可能にするように屈曲部(例えば、90°の曲がり)を有していてもよい。別の例では、屈曲部は90°未満の曲がりであってよい。さらに、第1の部分18および第2の部分20は上述したようにほぼ対称的な構造であるが、いくつかの例では、第1の部分18および第2の部分20の一方または両方が非対称的であってもよい。
【0021】
第1の部分18は、その内部に管16の部分を収容するように構成されている。駆動リング14は、第1の部分18の上を軸方向に摺動することができ(すなわち、中心軸線Xに沿って)、管16は、管16が第1の部分18に固定されるように、第1の部分18内に収容される。より具体的には、流体継手10は、中心軸線Xを中心として、駆動リング14と、第1の部分18と、管16との間に所定の比の締め代を有するように設計されている。したがって、駆動リング14が第1の部分18の上を沿って軸方向で継手本体12のフランジ34に向かって摺動するとき、駆動リング14は、第1の部分18と締まりばめされて、第1の部分18を半径方向内側に向かって(例えば、中心軸線Xに向かって)圧縮し、第1の部分18が管16と締まりばめされて、管16を変形させることになる。特に、第1の部分18の少なくとも1つの隆起部32は、管16の外面内に(すなわち管16の外周面内に)食い込み、これにより管16を変形させ、管16と第1の部分18との間に液密な金属対金属のシールを形成し、これにより、管16を第1の部分18に固定する。1つの実施形態では、第1の部分18は、管16と締まりばめされるように設計されていて、これにより少なくとも1つの隆起部32は、管16を圧縮し、最初は弾性的に、次いで塑性的に変形させる。これにより管16と第1の部分18との間に、360°の円周状の恒久的な金属対金属のシールが形成される。
【0022】
したがって流体継手10の第1の部分18は、管16の一部を流体継手10の第1の部分18内に挿入し、次いで駆動リング14を軸方向でフランジ34に向かって第1の部分18の上を摺動させることにより、流体継手10が管16に固定され得るように設計されている。さらに、流体継手10の第1の部分18内に挿入された管16の部分は、開口36を有ししていてよく、これにより、流体継手10と管16とがそのように固定されたとき、管16のこの開口36が流体継手10の通路または孔26に流体連通するようになっている。したがって、流体継手10の第1の部分18と駆動リング14とは、管16と流体継手10との間の流体連通を可能にすることができる。
【0023】
シールプロセス中に、駆動リング14を、最終設置位置までスリーブに沿って軸方向で強制的に動かすことができる。最終設置位置では、駆動リング14はフランジ34に当接または係合することができる。選択的に、駆動リング14は、最終設置位置で、フランジ34に接触せずにフランジ34に隣接して位置することもできる。別の選択的な例では、流体継手10は、フランジを有していなくてもよく、駆動リング14は、所望の最終設置位置に達するまで軸方向に強制的に動かされる。第1の部分18の半径方向の動きおよび管16の変形と同時に、駆動リング14の半径方向の動きも外側に向かって生じる。駆動リング14のこの半径方向の動きは通常は弾性的であり、結果として駆動リング14の直径はごく僅かに増加する。しかしながら別の実施形態における駆動リング14の半径方向の動きは、弾性的な半径方向の動きより大きくてもよい。
【0024】
いくつかの実施例では、流体継手10の第2の部分20は、第1の部分18と同様に構成されていてよく、したがって管16を内部に挿入させることができ、駆動リング14は第2の部分20の上を沿って摺動することができ、管16は第2の部分20に流体連通するようになっている。しかしながら、いくつかの用途では、例えば、ねじ接続または押しつぶし可能なフェルール等、異なる種類の接続が所望される場合もある。さらにいくつかの用途では、流体継手10の第2の部分20について、別の流体エレメントに恒久的に取り付けられ、これにより流体継手10の、現場における流体エレメントへの設置が不要となることが所望される場合もある。このような様々な用途のための流体継手10を製造する1つのアプローチとして、複数の流体継手10を、継手本体の第2の部分20と一体的に形成された様々な種類の流体エレメント(例えば、管、コネクタ等)と共に製造することができる。しかしながら、このような一体的なアプローチは、それぞれ異なる流体継手10のために使用される異なるプロセス技術を必要とする(例えば、異なる機械加工技術、および固定、異なる成形等)。さらには、本体12と別の構造のために異なる材料が所望される場合には、従来の製造技術によれば、別の構造と流体継手10の本体12との統合は望ましくないかもしれない。したがって、以下には、各流体継手10の第2の部分20が、摩擦溶接プロセスにより別の非一体構造に恒久的に接続され、これにより、構造と流体継手10の一体化に関連する従来の欠点を排除することができる新規の製造プロセスについて説明する。
【0025】
本出願人は、本明細書に記載した形態の結合された継手を製造するのに適した2つの異なる形態の摩擦溶接を発見した。第1の形態はいわゆる「スピン溶接」であり、この場合、第1のワークピースの少なくとも1つの表面を継続的に第2のワークピースの表面の周りで回転させることにより摩擦を発生させ、このときこれらのワークピースに、2つの表面を互いに押圧させる鍛接力を加える。第2の形態はいわゆる「直線摩擦溶接」であり、この場合、第1のワークピースの少なくとも1つの表面を第2のワークピースの表面にわたって前後に摺動させること(すなわち直線スライド運動)により摩擦を発生させ、このときこれらのワークピースに、2つの表面を互いに押圧させる鍛接力を加える。
【0026】
次に様々な製造組み合わせを以下に説明する。上述した摩擦溶接法のどちらかを以下の組み合わせで使用することができ、または別の摩擦溶接法を、ワークピース間の摩擦の発生のために使用することができる。
【0027】
第1の方法では、
図2に示したように、第1の素材スラグ38と第2の素材スラグ40とを設けることができる。第1および第2の素材スラグ38,40のそれぞれはほぼ円筒状の形状であってよいが、様々な別の形状も可能である(例えば、四角形、正方形、三角形、八角形、多角形等)。実際に、摩擦溶接の1つの利点は、互いに溶接したい2つの要素が、同じ形状、プロファイル、または断面積を有している必要はないことにある。さらに、第1および第2の素材スラグ38,40は、実質的に同じ形状および/またはサイズであってよく、または第1および第2の素材スラグ38,40は異なる形状および/またはサイズであってよい。第1および第2の素材スラグ38,40は摩擦溶接プロセスにより互いに溶接することができる。1つの実施形態では、第1の素材スラグ38の表面42は、第2の素材スラグ40の表面44にわたって所定のパターンに沿って駆動され、その間に、両素材スラグ38,40にプレス軸線Yに沿った鍛接力が加えられて、表面42,44が共に圧縮されてこれら表面間に摩擦が発生する。「スピン溶接」技術を使用する場合には、好適にはスラグは回転対称的な形状を有しており、プレス軸線Yはスラグの回転軸線であるが、これは必須要件ではない。
【0028】
第1の実施形態では、第1および第2の素材スラグ38,40を摩擦溶接プロセスにより互いに溶接することができ、この場合、第1の素材スラグ38の表面42は周期的に振動式に第2の素材スラグ40の表面44にわたって前後にスライドさせられ(すなわち、直線スライド/並進移動)、この間にプレス軸線Yに沿って素材スラグ38,40に鍛接力が加えられ、表面42,44が一緒に圧縮される。別の実施形態では、第1および第2の素材スラグ38,40を摩擦溶接プロセスにより互いに溶接させることができ、この場合、第1の素材スラグ38の表面42は、プレス軸線Yを中心として回転させられる。鍛接力がプレス軸線Yに沿って素材スラグ38,40に加えられて、第1の素材スラグ38の回転表面42および第2の素材スラグ40の表面44を共に圧縮する。
【0029】
互いに溶接されると、第1の素材スラグ38は、継手、例えば上述したような流体継手10を形成するように機械加工されてよい。さらに、第2の素材スラグ40は、流体エレメント、例えばフランジ、またはその他の種類の流体コネクタを形成するように機械加工されてよい。しかしながら、第1および第2の素材スラグ38,40の最終的に機械加工される形状は限定されるものではなく、第1および第2の素材スラグ38,40は、所望の使用のために任意の所望の形状となるように機械加工されてよい。第1および第2の素材スラグ38,40のこのような機械加工には例えば、第1および第2の素材スラグ38,40から材料を除去するための、旋盤加工、穿孔加工、および/またはフライス加工プロセスが含まれてよい。さらにこのような機械加工は、コンピュータ数値制御(CNC)により、または機械加工設備の手動操作により実施することができる。
【0030】
上述した第1の方法は、溶接前に機械加工することができない、またはそうすることが望ましくない2つのワークピースを接続するために特に有効であり得る。例えば、2つのワークピースが、摩擦溶接の温度または動きに耐えることができない機械加工部分を有している場合には、最初に第1および第2の素材スラグ38,40を互いに溶接することができ、次いでスラグを機械加工して所望のワークピースを形成することができる。
【0031】
第2の方法では、
図3に示したように、第1の素材スラグ38は、予め製造された継手、例えば上述したような流体継手10と共に設けることができる。第1の素材スラグ38と流体継手10とは摩擦溶接プロセスにより互いに溶接することができる。1つの実施形態では、第1の素材スラグ38の表面42は、流体継手10の表面46にわたって所定のパターンに沿って駆動され、その間に、第1の素材スラグ38と流体継手10の両方に、プレス軸線Yに沿った鍛接力が加えられて、表面42,46が共に圧縮されてこれら表面間に摩擦が発生する。
【0032】
第1の実施形態では、第1の素材スラグ38および流体継手10を摩擦溶接プロセスにより互いに溶接することができ、この場合、第1の素材スラグ38の表面42は周期的に振動式に流体継手10の表面46にわたって前後にスライドさせられ(すなわち、直線スライド/並進移動)、この間にプレス軸線Yに沿って第1の素材スラグ38および流体継手10に鍛接力が加えられ、表面42,46が一緒に圧縮される。別の実施形態では、第1の素材スラグ38および流体継手10を摩擦溶接プロセスにより互いに溶接させることができ、この場合、第1の素材スラグ38の表面42は、プレス軸線Yを中心として回転させられる。鍛接力がプレス軸線Yに沿って第1の素材スラグ38および流体継手10に加えられて、第1の素材スラグ38の回転表面42および流体継手10の表面46を共に圧縮する。
【0033】
互いに溶接されると、第1の素材スラグ38は、流体エレメント、例えばフランジ、または別の形式の流体コネクタのようなエレメントを形成するように機械加工されてよい。しかしながら、第1の素材スラグ38の最終的に機械加工される形状は限定されるものではなく、第1の素材スラグ38は、所望の使用のために任意の所望の形状となるように機械加工されてよい。第1の素材スラグ38のこのような機械加工には例えば、第1の素材スラグ38から材料を除去するための、旋盤加工、穿孔加工、および/またはフライス加工プロセスが含まれてよい。さらにこのような機械加工は、コンピュータ数値制御(CNC)により、または機械加工設備の手動操作により実施することができる。
【0034】
第3の方法では、
図4に示したように、第1の素材スラグ38は、予め製造された流体エレメント、例えば既製品または特注品のコネクタ48のようなエレメントと共に設けることができる。第1の素材スラグ38とコネクタ48とは摩擦溶接プロセスにより互いに溶接することができる。1つの実施形態では、第1の素材スラグ38の表面42は、コネクタ48の表面50にわたって所定のパターンに沿って駆動され、その間に、第1の素材スラグ38とコネクタ48の両方に、プレス軸線Yに沿った鍛接力が加えられて、表面42,50が共に圧縮されてこれら表面間に摩擦が発生する。
【0035】
第1の実施形態では、第1の素材スラグ38およびコネクタ48を摩擦溶接プロセスにより互いに溶接することができ、この場合、第1の素材スラグ38の表面42は周期的に振動式にコネクタ48の表面50にわたって前後にスライドさせられ(すなわち、直線スライド/並進移動)、この間にプレス軸線Yに沿って第1の素材スラグ38およびコネクタ48に鍛接力が加えられ、表面42,50が一緒に圧縮される。別の実施形態では、第1の素材スラグ38およびコネクタ48を摩擦溶接プロセスにより互いに溶接させることができ、この場合、第1の素材スラグ38の表面42は、プレス軸線Yを中心として回転させられる。鍛接力がプレス軸線Yに沿って第1の素材スラグ38およびコネクタ48に加えられて、第1の素材スラグ38の回転表面42およびコネクタ48の表面50を共に圧縮する。
【0036】
互いに溶接されると、第1の素材スラグ38は、継手、例えば上述したような流体継手10を形成するように機械加工されてよい。しかしながら、第1の素材スラグ38の最終的に機械加工される形状は限定されるものではなく、第1の素材スラグ38は、所望の使用のために任意の所望の形状となるように機械加工されてよい。第1の素材スラグ38のこのような機械加工には例えば、第1の素材スラグ38から材料を除去するための、旋盤加工、穿孔加工、および/またはフライス加工プロセスが含まれてよい。さらにこのような機械加工は、コンピュータ数値制御(CNC)により、または機械加工設備の手動操作により実施することができる。
【0037】
上述した第2および第3の方法は、溶接前に一方の構成要素は既に製造されていて、他方の構成要素は溶接前に機械加工することができない、または機械加工されることが望ましくない2つのワークピースを接続するために特に有効であり得る。さらに、上述した第2および第3の方法は、一方の構成要素の機械加工が、溶接後には困難である2つのワークピースを接続するために特に有効であり得る。
【0038】
第4の方法では、
図5に示したように、予め製造された流体エレメント、例えば既製品のコネクタ48のような流体エレメントを設けることができる。さらに、例えば上述した流体継手10のような予め製造された継手も設けることができる。流体継手10とコネクタ48とは摩擦溶接プロセスにより互いに溶接することができる。1つの実施形態では、流体継手10の表面46は、コネクタ48の表面50にわたって所定のパターンに沿って駆動され、その間に、流体継手10とコネクタ48の両方に、プレス軸線Yに沿った鍛接力が加えられて、表面46,50が共に圧縮されてこれら表面間に摩擦が発生する。
【0039】
第1の実施形態では、流体継手10およびコネクタ48を摩擦溶接プロセスにより互いに溶接することができ、この場合、流体継手10の表面46は周期的に振動式にコネクタ48の表面50にわたって前後にスライドさせられ(すなわち、直線スライド/並進移動)、この間にプレス軸線Yに沿って流体継手10およびコネクタ48に鍛接力が加えられ、表面46,50が一緒に圧縮される。別の実施形態では、流体継手10およびコネクタ48を摩擦溶接プロセスにより互いに溶接することができ、この場合、流体継手10の表面46はコネクタ48の表面50にわたってプレス軸線Yを中心として回転させられ、この間にプレス軸線Yに沿って流体継手10およびコネクタ48に鍛接力が加えられ、表面46,50が一緒に圧縮される。別の実施形態では、流体継手10およびコネクタ48を摩擦溶接プロセスにより共に溶接させることができ、この場合、流体継手10の表面46は、プレス軸線Yを中心として回転させられる。鍛接力がプレス軸線Yに沿って流体継手10およびコネクタ48に加えられて、流体継手10の回転表面46およびコネクタ48の表面50を共に圧縮する。
【0040】
上述した第4の方法は、両方のワークピースが予め製造された2つのワークピースを接続するために特に有効であり得る。さらに、上述した第4の方法は、両方のワークピースの機械加工が、溶接後には困難である2つのワークピースを接続するためにも有効であり得る。
【0041】
「直線摩擦溶接」中は、所望の摩擦を発生させるために、プレス軸線Yに対して垂直に、1つの軸線に沿ってワークピースを摺動させるのが好適となり得る。しかしながら、ワークピースが沿って摺動する軸線の角度は垂直である必要はなく、ワークピースの移動により十分な摩擦が発生するならば、任意の角度であってよい。さらに、ワークピースを、プレス軸線Yに対して様々な角度で、複数の軸線に沿って摺動させて、所望の摩擦を発生させることができることも考えられる。
【0042】
上記の製造方法のいずれにも、部分的な機械加工ステップをさらに加えることができる。例えば、素材スラグを部分的に機械加工して、1つの構成要素を部分的に形成し、次いで別の構成要素に摩擦溶接し、次いで最終的に機械加工して完成部品を提供することもできる。同様に、任意の構成要素を、所望の通り、事前にかつ/または事後に機械加工することができる。
【0043】
一方のエレメントのみが並進または回転されて、他方のエレメントが静止していることが考えられるが、一方のエレメントと他方のエレメントの間に摩擦を発生させるのに十分な相対運動があるならば、両エレメントが並進させられてもよい。例えば、1つの実施形態では、第1のワークピースが、所定の経路に沿って駆動される間、すなわち「スピン溶接」のために回転される、または「直線摩擦溶接」のために直線状に摺動される間、第2のワークピースはまだ保持されている。別の実施形態では、第2のワークピースを、第1のワークピースの所定の経路とは異なる第2の所定の経路に沿って駆動することができる。この実施形態の形式では、第2のワークピースは、「スピン溶接」操作における第1のワークピースの回転方向とは逆の方向で、プッシュ軸線を中心として回転する。別の形式では、第1のワークピースは第1の回転速度でプッシュ軸線を中心として回転し、第2のワークピースは第2の回転速度でプッシュ軸線を中心として回転する。第2の回転速度は、速度および/または方向のいずれにおいても第1の回転速度と類似のもの、または異なるものであってよい。この実施形態の別の形式では、第1のワークピースは第1の軸線に沿って直線状に摺動し、第2のワークピースは第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って直線状に摺動する。この実施形態のさらに別の形式では、第1のワークピースは第1の軸線に沿って直線状に第1の速度で摺動し、第2のワークピースは第1の速度と類似のもの、または異なるものであってよい第2の速度で直線状に摺動する。上述した実施形態のいずれも、単独で、または組み合わせた形式で所望の摩擦を発生させるために使用することができる。さらに、相対移動が、両者の間に摩擦を発生させるのに十分であるならば、所望の使用に合わせて任意の所望のパターンに沿ってエレメントを駆動することができる。
【0044】
互いに対して面を駆動するためのプロセスの2つの例示的な形態は、直接駆動式回転摩擦溶接およびイナーシャ式摩擦溶接であり、以下に説明する。直接駆動法は、サイクルを通して連続的な速度制御を提供し、その部品のために開発されたコンピュータパラメータにしたがって停止する。イナーシャ式摩擦溶接は、フライホイールを使用して、「スピン溶接」操作において、部品保持チャックに回転モーメントを発生させる。フライホイール駆動チャックは、溶接部が加熱されて停止するまで回転する。これら2つの形式のプロセスを使用することができるが、別の形態の摩擦溶接駆動プロセスも使用できることが理解される。
【0045】
さらに、上記いずれの製造法においても第1のワークピースの表面を第2のワークピースの表面に位置合わせするために、第1のワークピースおよび第2のワークピースの一方または両方は位置合わせ構造を有していてよい。1つの実施形態では、位置合わせ構造は、摩擦溶接プロセス中にワークピースの精密な同心性を確実にするために使用される。このことは特に、回転する「スピン溶接」技術のために有効であり得る。
図6~
図7には、例示的な実施形態が、素材スラグ38,40の表面に示されているが、これらの実施形態は、流体継手10、予め製造された管16または流体エレメント、端部コネクタ48等の表面、および/または所望の使用に適合した任意の別の形式のワークピースの表面にも含まれてよい。
【0046】
図6Aに示した1つの実施形態では、第2の素材スラグ40が、第2の素材スラグ40の表面44内に機械加工された切り欠かれた円形溝52を有していてよく、第1の素材スラグ38は、表面42に機械加工された、第2の素材スラグ40の溝52内に嵌合する、対応する隆起部または円形リング54を有していてよい。またはその逆であってよい。さらに別の例では、二重位置合わせ構造を提供するために、第1および第2の素材スラグ38,40の両方が、対向部分の溝内に嵌合する隆起した円形リングを特徴としていてよい。これらの隆起したリングは、同心的であってよく、異なる直径を有していてよく(例えば第1のワークピースの隆起したリングの直径は、第2のワークピースの隆起したリングの直径よりも大きくてよく、またはその逆であってよく)、同じ直径を有していてもよく、同心的でなくてもよく、または所望の使用のための任意の別の所望の構造を有していてよい。位置合わせ構造は、連続的なリングを有していてよく、または不連続の部分であってよい。好適には、位置合わせ構造は、回転軸線を中心として回転対称的であり、部品の偏心振動を回避するために回転的に均衡もとられている。リング・溝の組み合わせにより生じる長さのずれによって、表面42,44の少なくともいくつかの部分が、摩擦溶接のために所望される直接接触を損なわれることがあってはならない。
【0047】
さらに、隆起部54および/または対応する溝52のいずれかが、隆起リングの、対応する溝への位置合わせおよび適切な挿入を容易にする丸み付けされた縁部またはテーパ状の縁部ジオメトリを有することができることが考えられる。例えば
図6B~
図6Dに示したように、様々な実施形態において、テーパ状の縁部が、回転軸線から外側に向かって(すなわち、
図6Bに示した54Bのように、外径/外周に向かって)延在していてよく、または回転軸線から内側に向かって(すなわち、
図6Cに示した54Cのように、回転軸線に向かって)延在していてよく、または三角形状(
図6Dに示した54Dのような)を形成していてよい。鍛接力がこれらの部分に加えられると、傾斜面は、これらの部分間の位置合わせ構造を自動的に整列させるカムとして機能することができ、これにより部品の回転軸線を同心にする。しかしながら、このように説明した形状は限定的なものではなく、隆起部は、所望の使用のために任意の形状であってよい。2つ以上の隆起リングが使用される場合、そのいくつかは内側に向かってテーパしており、その他のものは外側に向かってテーパしていることが考えられるが、リング間の関係はそのように限定されるものではなく、任意の所望の形状をとることができる。1つの実施形態では、第1および/または第2の素材スラグの溶接面が、隆起リング、切欠溝、または円形リングを形成するように機械加工されてよい。別の実施形態では、隆起部、切欠溝、または円形リングが別個に形成されて、第1および/または第2の素材スラグに取り付けられてもよい。
【0048】
図7に示したさらなる実施形態では、隆起部を溝なしで使用することもでき、この場合、第1および第2の素材スラグ38,40の両方が隆起部56A,56Bを有している。1つの実施形態では、第2の素材スラグ40が、表面44に機械加工された一対の隆起部56Aを有しており、第1の素材スラグ38は、一対の隆起部56A間に収容され、中心合わせされる中間直径の隆起部56Bを有している。換言すると、互いに半径方向に間隔を置いて位置している一対の隆起部56Aの間のギャップまたは谷間は、対向する隆起部56Bのためのセンタリング溝として機能することができる。さらに、2つ以上の隆起部を、両ワークピースにおいて使用することができる。さらに、各部分がただ1つの延在する隆起部を、すなわち1つだけの隆起部56Aと1つだけの隆起部56Bとを使用することも考えられる。この方式では、鍛接力の付与下での2つの対向する隆起部56A,56Bの間の接触により、部品が位置合わせされて同心的になる。これらの隆起部の様々な組み合わせおよび変化態様は、スピン溶接プロセス中にワークピースの同心性を維持するために所望のように使用することができる。さらに、隆起部は、隆起リングの、適切なギャップまたは谷間への位置合わせおよび適切な挿入を容易にする丸み付けされた縁部またはテーパ状の縁部ジオメトリを有することができる。例えば、隆起部は、上述したようにテーパ状の縁部を有していてよく、または所望の使用に応じて任意の形状を使用することができる。位置合わせ構造は、連続的なリングを有していてよく、または不連続の部分であってよい。好適には、位置合わせ構造は、回転軸線を中心として回転対称的であり、部品の偏心振動を回避するために回転的に均衡もとられている。さらに、リングの組み合わせにより生じる長さのずれによって、表面42,44の少なくともいくつかの部分が、摩擦溶接のために所望される直接接触を損なわれることがあってはならない。
【0049】
1つの実施形態では、第1および/または第2の素材スラグの溶接面が、隆起部または円形リングを形成するように機械加工されてよい。別の実施形態では、隆起部または円形リングが別個に形成されて、第1および/または第2の素材スラグに取り付けられてもよい。最後に、隆起部または溝は、摩擦溶接される端面または面に示されているが、これらの構造または別の位置合わせ構造は、第1のワークピースおよび/または第2のワークピースの外径および/または内径のように、溶接面ではないところに位置していてもよい。回転プロセスによる使用に適した別の形態の位置合わせ構造を使用することができ、この場合、2つの部分は、互いに相対的に回転する間に一緒に動かされる。
【0050】
図8に示したさらに別の実施形態では、内径(「ID」)位置合わせボス58が、第1または第2のワークピースの一方または両方に設けられている。より具体的には、ID位置合わせボス58は、対向するボディのIDに対応する最大外径を有するように設計されている。以下の説明では、流体継手10に位置するID位置合わせボス58が参照されるが、これは限定的なものではなく、ID位置合わせボス58は、所望の使用に応じて任意の所望のワークピースに取り付けることができる。
【0051】
図8に示した実施形態では、ID位置合わせボス58は、流体継手10に設けられていて、ID位置合わせボス58の最大外径は、端部コネクタ48のIDに対応することができる。ID位置合わせボス58の最大外径は、端部コネクタ48のIDと等しい、またはほぼ等しい(意図的に、または製造誤差により、僅かに大きいまたは小さい)ものであってよい。この方式の1つの利点は、この設計により提供される付加的な表面積によりより安定的で一貫した摩擦溶接を提供することができ、位置合わせボスは、溶接アップセットによって消費され、溶融不足の可能性を減じることができることにある。ID位置合わせボス58は、流体継手10の溶接表面46から外側に向かって所定の距離延在している。位置合わせボスが流体継手10と一体に形成されている場合は、ID位置合わせボス58の最も後方の点は、通路または孔26の全長にわたって延在していてもよい。別の実施形態では、最も後方の点は、流体継手10の溶接表面46と一致して位置していてよく、またはID位置合わせボス58は、通路または孔26内へと内側に向かって所定の距離だけ延在していてよい。1つの実施形態では、ID位置合わせボス58は、部分的に通路または孔26の長さに沿って、一点鎖線60によって概略的に示された位置まで延在している。
【0052】
ID位置合わせボス58は、所望の使用に合った任意の形式で形成することができる。1つの実施形態では、ID位置合わせボス58は、(
図8では概略的に異なる斜線パターンで示されてはいるが)流体継手10と一体であってよく、流体継手10を通路または孔26と共に総肉厚Tを有するように形成することにより製造される。次いで、壁の外面の一部(厚さD)を、ID位置合わせボス58を形成するために予め選択された流体継手10の長さに沿って除去する(すなわち、機械加工する)。除去された厚さDにより、位置合わせボス58の外径は、端部コネクタ48の内径よりも小さくなる、またはほぼ同じになる。別の実施形態では、流体継手10は、通路または孔26と共に、総肉厚Dで形成される。次いで、ID位置合わせボス58の所望の形状およびサイズに対応する別個の部分(例えば別の管または挿入体)を、流体継手10に漏れのない形式で、例えば通路または孔26内への部分的な挿入により取り付けることができる。
【0053】
上述した製造法は、「受注生産」(MTO)運用を行う柔軟な製造のためにも有効である。例えば、無数の種類および構造がある流体マニホルドまたは別の特注流体カップラは、本明細書に記載されるような摩擦溶接プロセスを利用して容易に製造することができる。「マニホルド」の用語をここでは例として使用しているが、この説明は、流体を搬送するが、「マニホルド」の従来の定義には当てはまらなくてもよい様々な管区分またはエレメントに同様に適用することができることが理解される。様々な種類の流体継手、コネクタ等を、主要なマニホルドエレメント上の異なる位置に液密な形態で溶接することができる。これらの流体継手とコネクタとは、本明細書で説明された流体継手10を含んでよく、または別の様々な形態の予め製造された流体構成要素を含んでよい。主要なマニホルドエレメントは、比較的平らな側面、湾曲した外面を有する湾曲したジオメトリ(例えば、円形または楕円形の横断面)、または所望の使用に適した任意のジオメトリを有する四角形または長方形のジオメトリを有していてよい。
【0054】
特注のマニホルドまたはその他の「受注生産」部品を製造するために、最初にスルーホールまたは開口を、主要なマニホルドエレメントの外面内に切り込むことができる。次いで、取り付けたい構成要素が、切り込まれた孔の上に位置合わせされて(例えば構成要素の軸線は、切り込まれた孔の軸線と同心である)、本明細書に記載した任意の方法を使用して、摩擦溶接により取り付けられる。任意の溶接前または溶接後の機械加工操作を実施することができる。摩擦溶接のために十分な相対運動を提供するために、マニホルドおよび構成要素の一方または両方を所定の経路に沿って駆動することができると考えられる。
【0055】
互いに溶接すべき表面が明らかに円形である場合、表面を互いに摩擦溶接するために、本明細書で記載されたスピン溶接法のいずれかを使用するのが好ましいだろうが、本明細書で記載された直線的な摩擦溶接法のいずれかを使用することもできる。互いに溶接すべき表面が明らかに円形ではない場合、または一方の構成要素を他方の構成要素に対して相対的に回転させることができない場合、表面を摩擦溶接するために、本明細書で記載された直線的な摩擦溶接法のいずれかを使用するのが好ましい。直線的な摩擦溶接は、エンドユーザ/顧客によって所望される正確な流体継手、コネクタ等を、主要なマニホルドエレメント上に必要に応じて正確に位置決めし、方向付けることができるといった明確な利点を提供する。このようなことは新規のエレメントを古い既存のシステムと交換するまたは改装するときにしばしば求められる。
【0056】
図9には、本明細書に記載の直線的な摩擦溶接を使用して、標準的な管区分に64に取り付けられた、流体継手62を利用する「受注生産の」T字型コネクタの例が示されている。標準的な管区分64がこの例では使用されているが、1つ以上の流体継手を接続するために標準的でない管区分またはマニホルドを含む事実上任意の流体ボディを使用できることが理解される。さらに管区分64は、(予め機械加工された、または後から機械加工される)付加的な流体継手66を含むことができる。流体継手62が管区分64に摩擦溶接されるとき、流体継手62の流体通路68が、管区分64の流体通路70に流体連通される。さらにワークピースを、付加的に、管区分64に摩擦溶接することができる。二点鎖線72,74によって示した区分のように、スルーホールまたは開口を、管区分64の外面に最初に切り込むことができる。次いで、取り付けたいワークピースが、切り込まれた孔の上に位置合わせされて(例えばワークピースの軸線は、切り込まれた孔の軸線と同心である)、本明細書に記載した任意の方法を使用して、摩擦溶接により取り付けられる。
図9に示した例では、回転摩擦溶接を使用することもできるが、直線的な摩擦溶接が使用される。複数のワークピースまたは流体継手が管区分の取り付けられる場合、(製造される組み合わせの回転対称性が低くなる、または均衡性が低くなる場合、および回転スピン溶接に関する有効性が低い場合には特に、)それぞれが別々の直線的な摩擦溶接技術によって取り付けられる可能性が高い。その後、任意の溶接前または溶接後の機械加工操作を実施することができる。
図9に示した例示的な実施形態では、孔または開口がほぼ円形であるが、孔または開口は、所望の使用のために任意の形状またはサイズをとることができる。
【0057】
図10Aおよび
図10Bには、「受注生産」部品の別の例示的な実施形態が示されている。この例示的な実施形態は、本明細書で説明した直線的な摩擦溶接法を使用して取り付けられた複数のワークピースを有するマニホルドを含む。例えば、
図10に示したように、無数の種類および構造がある流体マニホルドまたは別の特注流体カップラは、本明細書に記載されるような直線的な摩擦溶接プロセスを利用して容易に製造することができる。「マニホルド」の用語をここでは例として使用しているが、この説明は、流体を搬送するが、「マニホルド」の従来の定義には当てはまらない様々な管区分またはエレメントに同様に適用することができることが理解される。説明した様々な例に示されたように、様々な形式の流体継手、コネクタ等を、主要なマニホルドエレメント上の異なる位置に液密な形態で溶接することができる。これらの流体継手とコネクタとは、本明細書で説明された継手10を含んでよく、または予め製造された流体構成要素の別の様々な形態を含んでよい。
図10Aに示された例では、マニホルド76は、概して正方形の横断面を有する概して長方形の形状として示されているが、これは単に説明の便宜上のためである。マニホルド76は、所望の使用に適合した様々なジオメトリ、長さ等を有することができることが理解される。さらに、主要なマニホルドエレメントは、比較的平らな側面を有する正方形または長方形のジオメトリを有するものとして概略的に示されているが、主要なマニホルドエレメントは、湾曲した外面を有する(例えば、円形断面を有する)湾曲した管であってもよいことが考えられる。
図10Bに示された例では、複数のワークピースは、様々なサイズの円柱状スラグ78を有している。しかしながら、複数のワークピースは、全てサイズおよび形状が一様であるワークピースを有することができ、またはサイズおよび/または形状が様々なワークピースを有することができる。これにより、複数のワークピースのそれぞれについて、所望の使用に適合した、サイズまたは形状の任意の組み合わせが考えられる。摩擦溶接の利点は、単一のマニホルドに対して様々な向きで複数のワークピースを溶接することができることである。
図10Bに示した例では、特に、マニホルド76が非回転対称的な形状を有しているか、またはマニホルドが非製造場所(すなわち、現場等)に配置されているかまたは予め設置されている状況において、スラグ78が、別のワークピースに対して様々な角度で、マニホルド76の様々な面に直線的に摩擦溶接されている。複数のワークピースは、所望の用途と適合する任意の所望の向きでマニホルドに溶接することができる。
図10Bには、スラグ78として複数のワークピースが示されているが、この例示的な実施形態ではこれらのワークピースのいくつかが、または全てが、流体継手10、予め製造された管16または流体エレメント、端部コネクタ48等、および/または所望の使用に適合した任意の別の形態のワークピースをさらに含んでいてよい。実際に、所望の使用事例に応じて、予め製造された流体継手10または管16、流体エレメント、端部コネクタ48等を利用して、これらをマニホルド76に取り付けることが、製造上の利点をもたらすこともあり得る。
【0058】
特注のマニホルドまたはその他の「受注生産」部品を製造するために、
図9につき説明したのと類似のプロセスを使用することができる。例えば、最初にスルーホールまたは開口を、主要なマニホルドエレメントの外面内に切り込むことができる。次いで、取り付けたい流体エレメントが、切り込まれた孔の上に位置合わせされて(例えば同心とされて)、本明細書に記載した任意の方法(第1、第2、第3、第4)を使用して、直線的な摩擦溶接により取り付けられる。任意の溶接前または溶接後の機械加工操作を実施することができる。マニホルドおよび流体継手の一方または両方を動かして/並進運動させて、摩擦溶接に十分な相対的な直線運動を提供することができると考えられる。
図10A~
図10Bに示した独特かつ非対称的な形状に関して、これによりスピン溶接を越える明らかな利点が提供される。したがって、直線的な摩擦溶接は、エンドユーザ/顧客によって所望される正確な流体継手、コネクタ等を、主要なマニホルドエレメント上に必要に応じて正確に位置決めし、方向付けることができるといった明確な利点を提供する。このようなことは新規のエレメントを古い既存のシステムと交換するまたは改装するときにしばしば求められる。
【0059】
図11A~
図11Dには、多くの可能な「受注生産」部品のさらにいくつかの例示的な実施形態が示されている。例示的な実施形態では、上述した流体継手10が、本明細書で説明された摩擦溶接法により様々な流体エレメントに接続されている。例えば
図11Aには、円形フランジコネクタ80に接続された流体継手10が示されている。さらに、
図11Bには、六角形フランジコネクタ82に接続された流体継手10が示されていて、
図11Cには、六角形フランジコネクタの外側に向いた面84が示されている。
図11A~
図11Cに示されたフランジコネクタは、円形または六角形であるが、フランジコネクタは、所望の用途に適合した任意の形状をとることができる(例えば、三角形、長方形、正方形、楕円形、直角を含む形状、多角形、特注の形状等)。さらに、
図11Dには、一例のT字型コネクタ86の端部に接続された3つの流体継手10が示されている。これらの例示的な実施形態は、本明細書で説明した摩擦溶接法により形成される可能な「受注生産」部品を例示しており、説明される発明の範囲を限定する機能のものではない。実際には、本明細書で説明される摩擦溶接法は、所望される事実上任意の特注の流体搬送部品またはアッセンブリを形成するために使用することができる。これらの、または他の実施形態は、本明細書に記載した回転摩擦溶接法または直線的な摩擦溶接法を使用して、標準的な管区分、端部コネクタ、または(予め機械加工された、または後から機械加工される)付加的な流体継手を含む管区分に取り付けられる、本出願人による流体継手を利用して、形成することができる。
【0060】
本明細書で説明された提案される製造方法のいくつかの利点は以下を含む:構成要素の全ての段階(完成、半完成、未加工材)において複雑な形状または円形状を溶接することができる;鋼と非鉄金属の組み合わせの容易な接合;異種金属の組み合わせを接合することができる;粉末金属構成要素を、別の粉末金属、鍛造品、鋳造品、または展伸材に溶接することができる;HAZ(熱影響部)の低減;溶接品質の改善;構成要素品質の改善;圧力を含む管構成要素に独特に適用される最先端のプロセス;溶接後機械加工によるコストの削減(高価な半製品の損失の解消);「受注生産」(MTO)運用を行うように特有に設計された柔軟な製造;現場では再現できない最先端のプロセス;高価な鍛造品、および機械的要件を満たすために必要な試験の廃止。
【0061】
本出願人はさらに、この装置の開発中に実験的試験を行い、この試験は驚くべき結果を示している。すなわち、本明細書に記載の摩擦溶接法は、従来技術と比較して減じられた製造コストで優れた部品を製造したことが示された。初期試験は、2’’NPS炭素鋼試片で行われた。この試片に使用された材料は、A106およびASTM規格の513 DOM材料であった。試片に使用された接合構造は、四角形の突合わせ接合部であった。NOTおよび破壊試験は、摩擦溶接されたクーポンで行われた。全てのNOTテストには、ASME規格のB31.3の通常サービスによる放射線検査が含まれていた。破壊試験には、引張り試験および誘導曲げ試験、ならびに全プロフィール硬度試験を含むマクロ硬度試験が含まれる。全てのNOT試験および破壊試験は受け入れられた。
【0062】
放射線撮影検査は、溶接部に気泡を含まない溶接接合部の周囲360°に完全に浸透した溶接部を示した。溶接部は、比較的小さい溶接境界面と減じられたHAZのため、母材と区別するのが幾分困難であった。溶接ビードは、主として溶接ビードの均質な構成と、母材と比較して僅かに密度の高い溶接材料により、材料のやや明るい区分としてX線上に現れた。エッチングされた断面はマクロ硬さ試験において、母材を通る完全に一貫した接合線を有する、幅が約1/8インチの狭い一貫した溶接ビードを示した。溶接サイズは、従来のGTAW-P溶接のサイズの約半分であった。
【0063】
硬さ試験の結果はより明らかであり、溶接ビードと接合線にわたって比較的小さい硬さ変化が示された。溶接区分は、HAZおよび母材において僅かに上昇した硬さを示した。これらの結果は、典型的には母材よりも強固であり、母材の機械的特性を維持している均一で均質な溶接部と一致するものである。比較すると、GTAW-P溶接は通常は、HAZにおいては高い硬度を有するが、溶接ビードにおいては著しく減じられた硬度を有している。硬さ試験の結果は以下の通りであった。物理的順序(左から右)で:母材(SA106):198; HAZ:225;WELD:256 HAZ:217; 母材(SAS13):229。ASTM規格A370にしたがって実施された、A513管に摩擦溶接されたA106管の摩擦最終溶接強度の引張り試験結果は以下の通りであった:幅(in):0.25; 厚さ(in):0.168; 面積(sq.in.):0.042; ゲージ長さ(in):1.0; 降伏強さ:54,000; 引張り強度:81,500; 延び(%):27; 破壊位置:A106 母材。
【0064】
本発明を、具体例を用いて本明細書において上述したが、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく様々な選択肢を使用することができ、均等なものを本明細書で説明した要素またはステップの代用とすることができるのは明らかである。本発明の範囲から逸脱することなく、本発明を特定の状況または特定の必要性に適合させるために修正が必要な場合がある。本発明は、本明細書に記載された特定の実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、それによって包含される文言通りのまたは均等なすべての実施態様を網羅する最も広い解釈を与えられることを意図する。