(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】X線管用気泡除去装置
(51)【国際特許分類】
H05G 1/02 20060101AFI20221121BHJP
H01J 35/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
H05G1/02 P
H01J35/00 A
(21)【出願番号】P 2019003521
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野関 直人
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-059801(JP,A)
【文献】特表2002-536804(JP,A)
【文献】特開2008-066248(JP,A)
【文献】特開2014-118884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00 - 1/70
H01J 35/00 -35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管部と、
第2管部と、
前記第1管部及び前記第2管部とともに循環路の一部を形成する第3管部と、
第4管部と、
前記第1管部に連結された一端を有する第5管部と、
前記第1管部及び前記第2管部に連結され、前記第1管部から冷却液を取り込み、前記第2管部へ前記冷却液を吐き出すポンプと、
前記第2管部乃至前記第4管部のそれぞれに連結され、前記第2管部から前記冷却液を取り込み、前記冷却液のうち気泡混入率の低い前記冷却液を前記第3管部へ、前記冷却液のうち気泡混入率の高い前記冷却液を前記第4管部へと分離する気泡分離ユニットと、
前記第4管部に連結された取り込み口と、前記第5管部の他端に連結された排出口と、を有し、前記第4管部から気泡混入率の高い前記冷却液を取り込み、前記冷却液から脱気し、気泡混入率の低い前記冷却液を前記第5管部へ送る容器を有する気泡トラップユニットと、を備えている、
X線管用気泡除去装置。
【請求項2】
前記容器と、ガス透過性をもつ防水フィルムと、を有する気泡トラップユニットをさらに備え、
前記容器は開口部を有し、
前記防水フィルムは、前記開口部を閉塞している、
請求項1に記載のX線管用気泡除去装置。
【請求項3】
前記気泡トラップユニットは、さらに、前記容器に連結され、前記防水フィルムを透過した気泡を吸い込むように構成された真空ポンプを備えている、
請求項2に記載のX線管用気泡除去装置。
【請求項4】
前記第2管部は、前記気泡分離ユニットに送られる前記冷却液の流量を調整する第1調整弁を備えている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線管用気泡除去装置。
【請求項5】
前記第5管部は、前記第1管部に送られる前記冷却液の流量を調整する第2調整弁を備えている、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線管用気泡除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線管用気泡除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、水冷式のX線管装置は、X線管をX線管容器に収容し、X線管容器とX線管用冷却器との間で水等の冷却液を冷却管路内において循環させることで、X線管を冷却している。このようなX線管装置では冷却管路内の冷却液に気泡が混入した場合、冷却液と気泡とではX線吸収率が異なるので、前者のX線と後者のX線とでは強度が異なってしまい、一様なX線束ではなくなってしまうことや、気泡に起因する放電等の不具合が生じてしまう。このため、冷却管路内の冷却液に気泡が混入した場合、X線管装置からX線管及びX線管用冷却器のそれぞれを取り外し、冷却管路内に冷却液を再充填する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-262509号公報
【文献】特開2008-66248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、X線管装置の冷却液が存在する空間から気泡を除去できるX線管用気泡除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、
第1管部と、第2管部と、前記第1管部及び前記第2管部とともに循環路の一部を形成する第3管部と、第4管部と、前記第1管部に連結された一端を有する第5管部と、前記第1管部及び前記第2管部に連結され、前記第1管部から冷却液を取り込み、前記第2管部へ前記冷却液を吐き出すポンプと、前記第2管部乃至前記第4管部のそれぞれに連結され、前記第2管部から前記冷却液を取り込み、前記冷却液のうち気泡混入率の低い前記冷却液を前記第3管部へ、前記冷却液のうち気泡混入率の高い前記冷却液を前記第4管部へと分離する気泡分離ユニットと、前記第4管部に連結された取り込み口と、前記第5管部の他端に連結された排出口と、を有し、前記第4管部から気泡混入率の高い前記冷却液を取り込み、前記冷却液から脱気し、気泡混入率の低い前記冷却液を前記第5管部へ送る容器を有する気泡トラップユニットと、を備えているX線管用気泡除去装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るX線CT装置のガントリーの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の線II-IIに沿ったX線CT装置を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管装置、X線管用冷却器及びX線検出装置を示す正面図である。
【
図4】
図4は、上記X線管装置及びX線管用冷却器を示す構成図である。
【
図5】
図5は、上記X線管装置及びX線管用気泡除去装置を示す構成図である。
【
図6】
図6は、上記実施形態の変形例の気泡トラップユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
本実施形態では、X線管用気泡除去装置の一例として、X線コンピュータ断層撮影装置用気泡除去装置について説明する。まず、X線コンピュータ断層撮影装置について詳細に説明する。X線コンピュータ断層撮影装置は、X線CT(computerized tomography)装置である。
図1は、一実施形態に係るX線CT装置のガントリーの外観を示す斜視図である。
図2は、
図1の線II-IIに沿ったX線CT装置を示す断面図である。
図3は、
図2に示した回転架台、並びに回転架台に搭載されたX線管装置、X線管用冷却器及びX線検出器を示す正面図である。
【0009】
図1乃至
図3に示すように、X線CT装置1は、筐体2、土台部4、固定架台5、回転架台6、ベアリング部材8、X線管装置10、X線管用冷却器20、及びX線検出器40を備えている。
【0010】
筐体2は、上記の多くの部材を収容している。筐体2は、X線CT装置1の外観を飾っている。筐体2は、排気口2a、吸気口2b及び導入口2cを含んでいる。
排気口2aは、筐体2の上部に形成されている。排気口2aは、通気性に優れたメッシュ状のカバー3で閉塞されている。なお、図示しないが、X線CT装置1は、筐体2内に設けられカバー3に対向したファンユニットをさらに備えている。これにより、筐体2内の空気を、排気口2aを通して筐体2の外部に排出することができる。
【0011】
吸気口2bは、筐体2の下部に形成されている。ここでは、吸気口2bは、筐体2と土台部4の間の隙間に形成されている。筐体2の外部の空気を、吸気口2bを通して筐体2の内部に取入れることができる。
上記のことから、筐体2の内部の空気を入れ替えることができるため、筐体2の内部の空気の温度の上昇を抑制することができる。
導入口2cは、被検体を導入するものである。図示しないが、X線CT装置1は、被検体を載せる寝台も備えている。
【0012】
固定架台5は、土台部4に固定されている。軸受機構として機能するベアリング(転がり軸受け、ボール/ロールベアリング)部材8は、固定架台5及び回転架台6間に設けられている。
【0013】
回転架台6は、ベアリング部材8を介して固定架台5に回転可能に支持されている。回転架台6は、ガントリーと呼ばれ、回転架台6の回転軸(ガントリー中心)a1を中心に回転可能である。回転架台6を高速回転させるために、X線CT装置は、例えばダイレクトドライブモータを採用している。回転架台6は、最外周に位置したリング状のフレーム部7を有している。
【0014】
X線管装置10、X線管用冷却器20及びX線検出器40は、回転架台6に取付けられている。X線管装置10及びX線管用冷却器20は、フレーム部7の内壁に取付けられている。図示しないが、高電圧発生電源などもフレーム部7の内壁に取付けられていてもよい。X線管装置10及びX線管用冷却器20は、比較的コンパクトでありながら質量が大きく、設置面の圧力が高いため、フレーム部7に強固に固着されている。これにより、回転架台6が高速で回転し、その結果多大な遠心力がX線管装置10及びX線管用冷却器20に加わるような場合でも、これらはフレーム部7に対する強固な固着を維持できるものである。
【0015】
X線管装置10は、X線発生器として機能し、X線を放射する。X線検出器40は、回転軸a1を挟んでX線管装置10(X線管)と対向している。X線検出器40は、例えば円弧状に配列された複数のX線検出素子を有している。X線CT装置1は、X線検出器40を複数備え、配列させていてもよい。X線検出器40は、X線管装置10から放射され被検体を透過したX線を検出し、検出したX線を電気信号に変換する。
【0016】
図示しないが、X線CT装置1は、回転架台6に取付けられ、X線検出器40から出力する電気信号を増幅し、かつAD変換するデータ収集装置をさらに備えていてもよい。また、図示しないが、固定架台5には電力あるいは制御信号などをX線管装置10及びX線管用冷却器20などに与えるための機器が設けられていてもよい。上記機器は、スリップリングを介して回転架台6に取付けられているX線管装置10及びX線管用冷却器20などに電力あるいは制御信号などを与えることができる。
【0017】
X線CT装置1は、動作状態に入ると回転架台6が回転軸a1を中心に回転する。このとき、X線管装置10、X線管用冷却器20及びX線検出器40などは、被検体の周囲を一体になって回転する。これと同時に、X線管装置10からX線が放射される。
【0018】
X線は、被検体を透過し、X線検出器40に入射し、X線検出器40においてX線の強度が検出される。X線検出器40で検出された検出信号は、例えば、上記データ収集装置で増幅され、かつA/D変換によってデジタル検出信号に変換され、図示しないコンピュータに供給される。
【0019】
コンピュータは、デジタル検出信号をもとに、被検体の関心領域におけるX線吸収率を演算し、その演算結果から被検体の断層画像を生成するための画像データを構築する。画像データは、図示しない表示装置などに送られ、画面上に断層画像として表示される。
【0020】
上記のように、X線CT装置1は、X線管装置10及びX線検出器40が被検体を挟んで回転し、被検体の検査断面内のあらゆる点を透過したX線の強弱いわゆる投影データを、いろいろな角度、例えば360°の範囲から獲得する。そして、この投影データをもとに、予めプログラムされたデータ再構成プログラムにより断層画像を生成する。
【0021】
図4は、X線管装置10及びX線管用冷却器20を示す構成図である。
図3及び
図4に示すように、X線管装置10は、ハウジング12と、ハウジング12に収納されたX線管13と、伸縮機構14と、を有している。ハウジング12(X線管装置10)は、独立して回転架台6に直接又は間接的に取付けられ、固定されている。ここでは、ハウジング12は、フレーム部7の内壁に直接取付けられている。ここで、X線CT装置1は、冷却液9を有している。冷却液9には、X線管13が発生する熱の少なくとも一部が伝達される。
【0022】
X線管装置10は、導管11a及び導管11bを有している。導管11aは、一端がハウジング12の冷却液取り込み口12iに気密に取付けられ、他端がソケット72に気密に取付けられている。導管11bは、一端がハウジング12の冷却液排出口12oに気密に取付けられ、他端がソケット82に気密に取付けられている。導管11a及び導管11bは、冷却液9が循環する循環路30の一部を形成している。
【0023】
例えば、冷却液9は、X線管装置10において、少なくともハウジング12とX線管13との間の空間に充填されている。ハウジング12は、導管11a及び導管11bとともに循環路30の一部を形成している。導管11a及び導管11bは、X線管13に連結されていない。但し、X線管13は冷却液9に浸るため、冷却液9は、X線管13の外面の熱伝達面など、X線管13を冷却することができる。
【0024】
また、導管11a及びX線管13を、直接又は連結部材を介して間接的に連結するか、又は、導管11b及びX線管13を、直接又は連結部材を介して間接的に連結してもよい。ハウジング12及びX線管13の内部は、導管11a及び導管11bとともに循環路30の一部を形成している。これにより、X線管13の内部の熱伝達面を冷却液9が循環することで、X線管13、特に陽極ターゲットを冷却することができる。
【0025】
その他、導管11a及び導管11bをともにX線管13に連結した場合、ハウジング12とX線管13との間の空間には他の冷却液が収容されている。上記他の冷却液は、冷却液9と混合しないよう分離され、循環路30を循環しない。この場合、上記他の冷却液を冷却液9とは異なる種類の冷却液とすることもできる。X線管13の内部は、導管11a及び導管11bとともに循環路30の一部を形成している。これにより、X線管13の内部の熱伝達面を冷却液9が循環することで、X線管13、特に陽極ターゲットを冷却することができる。そして、上記他の冷却液は、X線管13の外面の熱伝達面など、X線管13を外側から冷却することができる。
【0026】
X線管用冷却器20は、導管21a、導管21b、導管21c、導管21d、循環ポンプ22、熱交換器23、筐体26、及び伸縮機構60を有している。循環ポンプ22、熱交換器23、及び伸縮機構60は、筐体26内に設けられている。導管21aは、一端がプラグ81に気密に取付けられている。導管21cは、一端がプラグ71に気密に取付けられている。導管21dは、一端が導管21aに気密に取付けられている。導管21a、導管21b、導管21c及び導管21dは、循環路30の一部を形成している。
【0027】
循環ポンプ22は、循環路30に取付けられている。ここでは、循環ポンプ22は、導管21a及び導管21b間に気密に取付けられている。循環ポンプ22は、導管21aから冷却液9を取り込み、導管21bに冷却液9を吐き出す。循環ポンプ22は、循環路30において冷却液9を循環させることができる。
【0028】
熱交換器23は、ラジエータ24及びファン25を有している。ファン25は、ラジエータ24に通風するように構成されている。ラジエータ24は、導管21bから入る冷却液の熱を放出するように構成されている。熱交換器23は、冷却液9を冷却することができる。
そのため、X線管用冷却器20は、冷却液9を冷却し、かつ、冷却液9を循環路30にて循環させることができる。
【0029】
伸縮機構60は、循環路30に取付けられている。伸縮機構60は、貫通孔61a,61bを有したケース61と、弾性隔膜62と、を有している。貫通孔61aは、導管21dに気密に連通されている。貫通孔61bは、通気孔である。弾性隔膜62は、例えば、ゴムを利用したベローズで形成されている。弾性隔膜62は、ケース61内を、貫通孔61aと繋がった第1空間63と、貫通孔61bと繋がった第2空間64と、に区域している。
【0030】
貫通孔61bは空気の出入りを許可するため、第2空間64は大気に開放されている。弾性隔膜62は、ケース61に液密に取付けられている。弾性隔膜62は伸縮自在である。弾性隔膜62は、冷却液9の温度変化による体積変化(体積の膨張及び収縮)を吸収することができる。弾性隔膜62は、ガスに対して不透過性を示す材料で形成することが好ましい。
【0031】
プラグ71及びソケット72は、着脱自在の連結部材としてのカプラ70を形成し、プラグ81及びソケット82は、着脱自在の連結部材としてのカプラ80を形成している。カプラ70、80は、プラグ及びソケットが連結した連結状態(固定状態)と、プラグ及びソケットが分離した分離状態とに切替え可能である。カプラ70、80は、連結状態において、気密、かつ液密に連結されている。カプラ70、80は、シャットオフバルブ付きのカプラである。カプラ70、80の分離状態において、プラグ71、81及びソケット72、82は、それぞれ、外部への液(冷却液9)漏れを防止することができ、内部への空気の混入を防止することができる構造を採っている。カプラ70、80をそれぞれ分離状態に切替えることにより、2系統に分離することができ、X線管装置10及びX線管用冷却器20を分離することができる。
【0032】
次に、本実施形態に係るX線管用気泡除去装置について説明する。
図5は、X線管装置及びX線管用気泡除去装置を示す構成図である。
図5に示すように、X線管用気泡除去装置100は、ポンプPと、気泡分離ユニットADと、気泡トラップユニットATと、管部101と、管部102と、管部103と、管部104と、管部105と、調整弁R1と、調整弁R2と、調整弁R3とを備えている。管部101乃至105は、それぞれ第1管部乃至第5管部として機能し、調整弁R1は第1調整弁として機能し、調整弁R3は第2調整弁として機能する。X線管用気泡除去装置100は冷却液9を有し、X線管装置10との間で冷却液9を循環するように構成されている。
【0033】
管部101は、一端がプラグ106に気密に取り付けられ、他端がポンプPの一次側(取り込み口)に気密に取り付けられている。管部102は、一端がポンプの二次側(排出口)に気密に取り付けられ、他端が気泡分離ユニットADの一次側AD1に気密に取り付けられている。管部102は、調整弁R1を備えている。調整弁R1は、管部102内の冷却液9の流量を調整し、気泡分離ユニットADに送る冷却液9の流量を調整することができる。管部103は、一端が気泡分離ユニットADの二次側AD3に気密に取り付けられ、他端がプラグ107に気密に取り付けられている。管部103は、調整弁R2を備えている。調整弁R2は、管部103内の冷却液9の流量を調整し、X線管装置10に送られる冷却液9の流量を調整することができる。管部101乃至103は、導管11a、X線管装置10及び導管11bとともに冷却液9が循環する循環路50の一部を形成している。
【0034】
管部104は、一端が気泡分離ユニットADの二次側AD2に気密に取り付けられ、他端が気泡トラップユニットATの一次側AT1に気密に取り付けられている。管部105は、一端が気泡トラップユニットATの二次側AT2に気密に取り付けられ、他端が管部101に気密に取り付けられている。管部105は、調整弁R3を備えている。調整弁R3は、管部105内の冷却液9の流量を調整し、管部101に送られる冷却液9の流量を調整することができる。管部104、気泡トラップユニットAT及び管部105は、バイパス路90の一部を形成している。
【0035】
ポンプPは、管部101及び102のそれぞれに連結され、管部101から冷却液9を取り込み、管部102へ冷却液9を吐き出す。ポンプPは、循環路50において冷却液9を循環させることができる。
【0036】
気泡分離ユニットADは、管部102乃至104のそれぞれに連結され、管部102から冷却液9を取り込み、冷却液9のうち気泡混入率の低い冷却液9を管部103へ、冷却液9のうち気泡混入率の高い冷却液9を管部104へ分離させることができる。
【0037】
気泡トラップユニットATは、防水フィルムWFと、容器Cを備えている。防水フィルムWFは、例えば、ガス透過性を有している防水フィルムである。容器Cは、管部104に連結された取り込み口(一次側AT1)と、管部105に連結された排出口(二次側AT2)と、後述する開口部OPと、を有している。容器Cは、管部104から気泡混入率の高い冷却液9を取り込み、気泡混入率の高い冷却液9から脱気し、脱気された気泡混入率の低い冷却液9を管部105へ排出することができる。
【0038】
プラグ106及びソケット82は、着脱自在の連結部材としてのカプラ110を形成し、プラグ107及びソケット72は、着脱自在の連結部材としてのカプラ120を形成している。カプラ110及び120をそれぞれ分離状態に切替えることにより、2系統に分離することができ、X線管装置10及びX線管用気泡除去装置100を分離することができる。
【0039】
ここで、X線管装置10の冷却液9に気泡が混入した場合に、X線管用気泡除去装置100を用いて、X線管装置10の冷却液9から気泡を除去する方法について
図3乃至
図5を参照しながら説明する。
図3に示すX線CT装置1の回転架台6を回転させ、X線管装置10がX線管用冷却器20の上方に位置するようにする。循環ポンプ22を使用して、冷却液9を循環路30内で循環させる。これにより、循環路30に存在する気泡をX線管装置10に溜めることができる。なお、冷却液9を循環させる際、X線管装置10とX線管用気泡除去装置100との位置関係は適宜調整可能である。気泡をX線管装置10に溜めた後、
図4に示すカプラ70及び80をそれぞれ分離状態に切替えることにより、X線管装置10とX線管用冷却器20とを分離する。分離後、X線管装置10は移動させずに、X線管装置10と
図5に示すX線管用気泡除去装置100とを、カプラ110及び120を介して、連結させる。
【0040】
X線管装置10の冷却液9は、X線管用気泡除去装置100にあらかじめ存在する冷却液9とともに、ポンプPによって循環路50を循環する。ポンプPによって送り出された冷却液9は、気泡分離ユニットADに送液される。気泡分離ユニットADによって、冷却液9のうち気泡混入率の高い冷却液9は気泡トラップユニットATに送液され、冷却液9のうち気泡混入率の低い冷却液9はX線管装置10に送液され循環路50を循環する。気泡トラップユニットATの容器Cに送液された気泡混入率の高い冷却液9は、容器C内で、液中から気中に気泡が放出される。容器C内の気中に放出された気泡は、防水フィルムWFを介して、大気中に放出される。一方、液中から気泡が排出され気泡混入率が低い冷却液9は、バイパス路90を通って気泡トラップユニットATの二次側AT2からポンプの一次側に流れる。
この循環を繰り返すことにより、X線管装置10に溜めた気泡を循環路50から除去することができ、X線管装置10内に存在していた気泡が除去される。これにより、X線管用気泡除去装置100によって、X線管装置10が据え付けられている現場で、X線管装置10、導管11a及び11bのそれぞれに存在し得る気泡を除去することができる。さらに、X線管用気泡除去装置100はX線管用冷却器20の代わりにX線管装置10に取り付けることができるため、気泡除去をする際X線管装置10を移動させる必要がない。これにより、X線管装置10をフレーム部7から着脱する手間を省くことができる。
【0041】
図6は、上記実施形態の変形例の気泡トラップユニットを示す断面図である。
図6に示すように、変形例の気泡トラップユニットATは、さらに、真空ポンプAP及び管部108を備えている。容器Cは、防水フィルムWFに閉塞された開口部OPを有している。管部108は、一端が容器Cに気密に取り付けられ開口部OPに連通し、他端が真空ポンプAPの一次側に気密に取り付けられている。真空ポンプAPは、管部108を介して、容器Cに連結されている。真空ポンプAPの二次側は、気泡排出口APEを有している。真空ポンプAPは、管部108を介して、防水フィルムWFを透過した気泡を取り込み、気泡排出口APEから排出することができる。
【0042】
このような構成においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。加えて、気泡トラップユニットATが真空ポンプAPを備えていることにより、気泡トラップユニットATの容器C内の冷却液9から、さらに脱気することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、X線管装置が据え付けられている現場で、X線管装置の冷却液が存在する空間から気泡を除去できるX線管用気泡除去装置を提供することができる。
【0044】
なお、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
100…X線管用気泡除去装置 101、102、103、104、105…管部
P…ポンプ AD…気泡分離ユニット AT…気泡トラップユニット CT…容器
WF…防水フィルム AP…真空ポンプ R1、R2、R3…調整弁 9…冷却液。