(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】スプライシング装置に用いられるスプライシング角柱体
(51)【国際特許分類】
B65H 69/06 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
B65H69/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019012205
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】10 2018 101 925.4
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オットマー ノイビヒ
(72)【発明者】
【氏名】ズィークフリート シャットン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエラ ヴォルフ
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-092654(JP,U)
【文献】特開平07-125932(JP,A)
【文献】特開2013-249170(JP,A)
【文献】特開平03-200675(JP,A)
【文献】特開昭57-027874(JP,A)
【文献】特開昭57-121567(JP,A)
【文献】米国特許第04419858(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 65/00
69/00-73/00
77/00-79/00
D01H 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取りパッケージを製造する繊維機械(1)の作業ユニット(2)において2つの糸端部を結節部なく糸継ぎするスプライシング装置(10)に用いられるスプライシング角柱体(23)であって、
前記スプライシング角柱体(23)は、少なくとも1つのスプライシング通路室(18)を有するスプライシング通路(17)を備え、前記スプライシング通路(17)への空気供給を、前記スプライシング通路室(18)に開口する少なくとも1つのスプライシング空気孔(19)を介して行う、スプライシング装置(10)に用いられるスプライシング角柱体(23)において、
少なくとも1つの前記スプライシング空気孔(19)は、前記スプライシング通路室(18)に開口する出口部(30)と、該出口部(30)に連通する入口部(27)とを有し、該入口部(27)は、円形の横断面を有するとともに、斜部(34)にわたって、前記出口部(30)が半円形の横断面を有するように該出口部(30)に向けて狭窄して
おり、
前記入口部(27)及び前記出口部(30)は、それぞれ所定の長さを有しつつ、前記スプライシング空気孔(19)の中心軸線に沿って延びている
ことを特徴とする、スプライシング装置(10)に用いられるスプライシング角柱体(23)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記スプライシング空気孔(19)は、前記スプライシング通路(17)に通じる糸導入スリット(36)に対して斜めに延在して前記スプライシング通路室(18)に開口するように構成されていることを特徴とする、請求項1記載のスプライシング角柱体(23)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記スプライシング空気孔(19)は、空気分配系(26)を介して、前記スプライシング装置(10)の空気通路(35)に接続可能であり、該空気通路(35)を介して、前記スプライシング通路(17)に必要な場合には圧縮空気を供給可能であることを特徴とする、請求項1記載のスプライシング角柱体(23)。
【請求項4】
スプライシング角柱体(23)を備えるスプライシング装置(10)であって、
前記スプライシング角柱体(23)は、請求項1から3までのいずれか1項記載のスプライシング角柱体(23)により構成されている
ことを特徴とする、スプライシング角柱体(23)を備えるスプライシング装置(10)。
【請求項5】
複数の作業ユニット(2)と少なくとも1つのスプライシング装置(10)とを備える、巻取りパッケージを製造する繊維機械(1)であって、
少なくとも1つの前記スプライシング装置(10)は、請求項4記載のスプライシング装置(10)により構成されている
ことを特徴とする、巻取りパッケージを製造する繊維機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプライシング装置に用いられるスプライシング角柱体と、そのようなスプライシング角柱体を備えるスプライシング装置と、そのようなスプライシング装置を備える、巻取りパッケージを製造する繊維機械とに関する。
【0002】
繊維工業において、スプライシング装置は、以前から従来技術の1つであり、多くの保護権出願において詳しく記載されている。たとえば、2つの糸端部を空気の渦動により交絡させることによって、ほぼ元の糸に等しい糸継ぎ部を形成するスプライシング装置が知られている。この場合、スプライシング装置は、スプライシング角柱体と、圧縮空気を供給可能な孔、いわゆるスプライシング空気孔と、いわゆるスプライシング通路を形成する縦溝とを有する。スプライシング装置において形成されるスプライシング糸継ぎ部は、糸品質にとって決定的な基準である。つまりそのようなスプライシング糸継ぎ部は、元の糸に似た強度を有するのみならず、可能な限り元の糸と同等の外観も有するべきものである。
【0003】
すなわち、巻取りパッケージを製造する繊維機械における製造プロセス中に糸切れが生じたとき、または繊維機械の作業ユニットの1つにおいて、糸欠陥に基づき、所定のクリアリング切断が実施されたとき、切断された糸の糸端部は、まず特殊な空圧装置によりスプライシング装置の領域に戻される。
【0004】
通常、このとき、吸込みノズルが、いわゆる上糸を巻取りパッケージから、引き戻し、この上糸を、場合によっては糸欠陥のクリアリング除去後に、スプライシング装置のスプライシング角柱体のスプライシング通路内に置く。上糸は、吸込みノズルによってさらに、スプライシング通路の上に配置された糸クランプ装置内と、スプライシング通路の下に位置決めされた糸切断装置内とに通される。
【0005】
これに対応して、繰出し箇所に位置決めされた給糸ボビンから延びるいわゆる下糸も、負圧を供給可能なグリッパ管を用いて、スプライシング通路内に挿入され、スプライシング通路の下に配置された糸クランプ装置内と、スプライシング通路の上に配置された糸切断装置内とに通される。次いで、糸端部は、それぞれ糸切断装置によって所定長さに切断され、いわゆる保持兼解撚管内に吸い込まれ、そこで後続のスプライシングプロセスのために準備される。
【0006】
すなわち糸端部は、まず保持兼解撚管内において十分にその糸撚りを解され、その後で糸寄せ器によってスプライシング通路内に引き戻され、これにより両方の糸端部は、スプライシング通路内において、互いに逆向きに方向付けられて、相並んで置かれ、そこで最後に空圧式に交絡させることができる。
【0007】
独国特許発明第3612229号明細書(DE 36 12 229 C2)においてスプライシング装置が開示されており、このスプライジング装置では、カバー要素の使用が省かれ、スプライシング装置のスプライシング角柱体は、2部分から成るスプライシング通路を有する。すなわち、この公知のスプライシング装置では、スプライシング角柱体のスプライシング通路は、半径方向に互いにいくぶんかずらして配置された2つのスプライシング通路室に分割されており、スプライシング通路室は、それぞれ、接線方向に開口する固有のスプライシング空気ノズルを有する。この場合、スプライシング過程中にスプライシング空気ノズルを介して流入するスプライシング空気は、スプライシング通路室内において互いに逆向きに方向付けられた渦流を発生させる。
【0008】
この場合、スプライシング糸継ぎ部の品質にとって、どのようにして空気流が、特にどのような空気速度でスプライシング通路内に進入し、どのような流れ特性がこのようにしてスプライシング通路内に生じるのかが重要である。このことは、とりわけ芯糸または芯が弾性的なフィラメント/ヤーンから成り、短繊維の周りに巻き付けられる、いわゆるコアヤーンの場合に適用される。
【0009】
したがって本発明の第1の態様は、巻取りパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットにおいて2つの糸端部を結節部なく糸継ぎするスプライシング装置に用いられるスプライシング角柱体に関し、スプライシング角柱体は、少なくとも1つのスプライシング通路室を有するスプライシング通路を備え、スプライシング通路への空気供給を、スプライシング通路室に開口する少なくとも1つのスプライシング空気孔を介して行う。好適には、スプライシング通路は、2つのスプライシング通路室を有してよく、スプライシング通路への空気供給を、両方のスプライシング通路室の各々に開口する少なくとも1つのスプライシング空気孔を介して行う。
【0010】
提案されたスプライシング角柱体は、少なくとも1つのスプライシング空気孔がスプライシング通路室に開口する出口部と、出口部に連通する入口部とを有し、入口部は、円形の横断面を有するとともに、斜部にわたって、出口部が半円形の横断面を有するように出口部に向けて狭窄していることを特徴とする。半円形の横断面とは、円弧の経過が少なくとも1つのアールと、互いに異なる、互いに移行する少なくとも2つの半径とから構成された横断面と解される。
【0011】
両方のスプライシング通路室内に設けられた、固有の、スプライシング空気用のスプライシング空気孔は、好適な形態によれば、スプライシング通路室内に互いに逆向きの渦流が発生させられるように配置されている。1つまたは複数のスプライシング空気孔の提案された幾何学形状により、スプライシング空気は、確実に方向付けられてスプライシング通路に進入し、そこでスプライシングのための最適な流れ特性をもたらす。空気流は、よりコンパクトになり、最適化された空気流出の分散角度を有する。斜部と出口部の半円形の横断面とにより、渦流を低減する、スプライシング空気孔の輪郭を保証することが可能であり、これにより、スプライシング空気孔を通って達するスプライシング空気のより高い空気速度が得られ、空気流により、改善されたスプライシング糸継ぎ部が形成される。
【0012】
スプライシング空気孔の、連続的に延在する円形の横断面の代わりに、スプライシング空気孔の横断面は、斜部にわたって狭窄していて、半円形の横断面でもって、スプライシング通路内にまたはスプライシング通路室内に開口する。空気は、均一に、ソフトにかつ面状に、スプライシング通路内に挿入された糸端部に衝突しかつ作用することができる。
【0013】
そうしてスプライシング空気の進入時に発生する、スプライシング通路の壁に沿った渦流により、糸継ぎすべき糸の繊維は、緊密に混合されて、撚り合わされる。スプライシング糸継ぎ部は、短く、良好な強度で糸同様の高い弾性率を有する。さらに、そうして形成されたスプライシング糸継ぎ部は、ほぼ元の糸と同じ視覚的印象を有する。
【0014】
スプライシング空気孔の出口部の変化された幾何学形状は、さらにコアヤーンのスプライシング糸継ぎ部に一層格別に有利に作用する。芯の周りに配置された繊維端部は、均一に互いに交絡可能であり、これにより、繊維端部を特に有利に芯の周りに置くことができる。
【0015】
この場合、出口部の長さと入口部または斜部の長さとの特定の比を維持する必要はない。主に、斜部を介してスプライシング通路内に開口する半円形の横断面に移行する入口部の円形の横断面が重要である。スプライシング空気孔の全長に応じて、本発明の範囲内で、入口部、出口部および斜部の各々の区分に対する様々な長さが考えられる。
【0016】
本発明のさらに好適な形態では、スプライシング通路室または複数のスプライシング通路室の各々は、スプライシング通路内への糸端部の供給方向またはスプライシング通路に通じる、スプライシング通路内へ糸端部を供給するための糸導入スリットに対して斜めに延在する、スプライシング通路室に開口する1つのスプライシング空気孔を有する。換言すると、スプライシング空気孔の中心軸線は、好適には、糸導入スリットに対してまたはスプライシング通路内への糸端部の供給方向に対して斜めに設置されている。この斜めの設置は、さらに好適には、スプライシング角柱体内に、中心軸線が供給方向軸線に対して90°よりも小さな角度を成し、さらに好適には、スプライシング通路底の方向に、つまり糸導入スリットを形成する縦長のスプライシング通路開口の方向とは逆向きに方向付けられているように、構成されている。
【0017】
この場合、スプライシング空気孔は、好適には接線方向で、さらに好適には上からスプライシング通路内に通じる糸導入スリットの直ぐ傍で、スプライシング通路内に開口する。すなわち、スプライシング空気は、スプライシング通路室内への吹込み時に、その都度スプライシング通路室の壁に沿って渦流を発生させ、渦流により、糸継ぎすべき糸端部の繊維は、緊密に混合されて、撚り合わされる。したがって、スプライシング通路室の幾何学形状およびスプライシング空気孔の位置の適合により、スプライシング空気がその吹込み直後にまず糸端部に衝突し、解撚された糸端部を混合することを達成することができる。次いで糸端部/繊維端部は、回転流により渦動され、このとき整然と互いに撚り合わされる。
【0018】
好適には、少なくとも1つのスプライシング空気孔または両方のスプライシング空気孔の各々は、空気分配系を介して、糸スプライシング装置の空気通路に接続可能であり、空気通路を介して、スプライシング通路に必要な場合には圧縮空気を供給可能である。
【0019】
空気通路に接続可能な空気分配系により、両方のスプライシング通路室の各々に配置されたスプライシング空気孔を1つの共通の圧縮空気源に接続するという可能性が簡単に得られる。すなわち、スプライシング角柱体のスプライシング通路が軸方向で2つのスプライシング通路室に分割され、両方のスプライシング通路室が特に半径方向でずらされているにもかかわらず、空気分配系により、スプライシング空気孔の確実な連結が与えられており、ひいてはスプライシング通路室内において互いに逆向きの渦流を発生可能であることが保証されている。
【0020】
したがって本発明の第2の態様は、スプライシング角柱体を備えるスプライシング装置に関する。
【0021】
スプライシング角柱体が前述の複数の形態のうちの1つの形態に基づき構成された、スプライシング装置が提案される。
【0022】
このようなスプライシング装置により、構造的に煩雑でまたは割高なスプライシング糸継ぎ部を用いる必要なく最高品質の要求を満たすスプライシング糸継ぎ部を形成することができる。
【0023】
したがって本発明の第3の態様は、複数の作業ユニットを有する巻取りパッケージを製造する繊維機械に関し、繊維機械は、少なくとも1つのスプライシング装置を備える。この繊維機械は、たとえば、複数の作業ユニットのための共通の1つのスプライシング装置または作業ユニットごとのそれぞれ1つのスプライシング装置が設けられた繊維機械であってよい。
【0024】
巻取りパッケージを製造する繊維機械は、スプライシング装置が前述の複数の形態のうちの1つの形態に基づくスプライシング装置により構成されていることを特徴とする。
【0025】
このようなスプライシング装置を備える繊維機械により、高い品質を有する糸を製造することが可能であり、その糸のスプライシング糸継ぎ部は、視覚的にも強度に関してもほぼ元の糸と同一である。そのような繊維機械により、特に良好の品質のコアヤーンをも製造することが可能である。コアヤーンは、弾性的な芯およびその周りに巻き付く繊維により通常はその製造が、特にスプライシング糸継ぎ部の形成がますます扱いにくくなっている。
【0026】
本発明の別の特徴および利点は、本発明にとって重要な詳細を示す図面や描画に基づく本発明の好適な形態の以下の記述と特許請求の範囲とから明らかである。個々の特徴は、単独でも複数の任意の組み合わせでも本発明の好適な形態において実現することができる。
【0027】
以下、添付の図面に基づき本発明の好適な実施の形態を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】1つの実施の形態に基づく、スプライシング角柱体を有するスプライシング装置を備える巻取り機の作業ユニットの概略側面図を示す。
【
図2】1つの実施の形態に基づく、スプライシング角柱体を有するスプライシング装置の概略図を示す。
【
図3】1つの実施の形態に基づく、2つのスプライシング通路室を有するスプライシング角柱体の概略図を示す。
【0029】
図1には、本実施の形態では巻取り機として構成された、巻取りパッケージを製造する繊維機械1の作業ユニット2が概略側面図で示されている。
【0030】
そのような巻取り機は、相並んで列を成して配置されていてたいていは同じ形式で形成された複数の作業ユニット2を有する。
【0031】
これらの作業ユニット2において、たとえばリング精紡機において製造された紡績コップ9であって、比較的僅かな糸材料を有する紡績コップ9である繰出しボビンが、大きな体積の巻取りパッケージ15、つまり綾巻きパッケージへと巻き返され、これらの巻取りパッケージ15は、その製造後に、機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置21上に移送され、この綾巻きパッケージ搬送装置21から、機械端部側に配置されたパッケージチャージステーションへ搬送される。
【0032】
本実施の形態では、巻取り機は、さらに紡績コップ・空管搬送システム3として構成された機械固有の補給装置を備え、この補給装置のうち、
図1には、コップ供給区間4、可逆式に駆動可能な貯え区間5、作業ユニット2に通じる横搬送区間6および巻管戻し区間7だけが示されている。
【0033】
巻取り運転中、この紡績コップ・空管搬送システム3において、紡績コップ9または空管は、鉛直方向に方向付けられた状態で搬送皿8上に位置決めされて、循環する。
【0034】
コップ供給区間4を介して供給されかつまずは貯え区間5において中間貯蔵された紡績コップ9は、このとき、それぞれ横搬送区間6の領域において作業ユニット2の位置の繰出し箇所ASにおいて位置決めされ、次いで、大きな体積の巻取りパッケージ15へと巻き返され、このとき、走行する糸は、巻取りプロセス中に同時に糸欠陥を監視され、糸欠陥は、場合によっては直ちにクリアリング除去される。
【0035】
個々の作業ユニット2は、そのために、公知でありゆえに単に略示されているように、これらの作業ユニット2の整然とした運転を保証する様々な装置を有する。
【0036】
このような作業ユニット2は、たとえばそれぞれ糸テンショナ、糸切断装置が接続された糸クリアラ、パラフィン処理装置、糸張力センサおよび下糸センサなどの糸処理もしくは糸取扱い装置を有する。
【0037】
このような巻取り機の作業ユニット2は、さらに、それぞれ吸込みノズル12、グリッパ管25およびスプライシング装置10を有する。さらにこのような巻取り機は、通常、中央制御ユニット11を有することが多く、中央制御ユニット11は、たとえば機械バス16を介して、個々の作業ユニット2の作業ユニット電子計算機29に接続されている。
【0038】
図1から看取されるように、作業ユニット2は、巻取りパッケージ15を巻成するために、さらにそれぞれ巻取り装置24を有し、巻取り装置24は、特にパッケージフレーム28を有し、パッケージフレーム28は、揺動軸線22を中心にして可動に軸支されていて、かつ巻取りパッケージ15の巻管を回転可能に保持するための装置を有する。
【0039】
巻取りプロセス中に、パッケージフレーム28に回転自在に保持された巻取りパッケージ15は、その表面がたとえばいわゆる糸ガイドドラム14に載置されていて、糸ガイドドラム14により摩擦接続に基づいて連行される。
【0040】
そのような糸ガイドドラム14は、公知のようにいわゆる糸ガイド溝を有するので、巻き上げられる糸は、巻取りプロセス中に、さらに、綾振りされた巻成姿勢で巻取りパッケージ上に巻き上げられるようにガイドされる。
【0041】
ただし糸ガイドドラムの代わりに、巻取りプロセス中に綾巻きパッケージを単に摩擦接続により回転させる溝のないパッケージ駆動ローラを使用してもよい。
【0042】
そのような場合、綾巻きパッケージ15上へ巻き上げられる糸の綾振りは、たとえばフィンガ糸ガイドを備える別体の糸綾振り装置を用いて行われる。
【0043】
揺動軸線13を中心に限定的に回動可能に軸支された吸込みノズル12は、巻取り中断後に上糸31の、巻取りパッケージ15の表面上に巻き上げられた糸端部を保持して、スプライシング装置10へ引き渡そうとするときに使用される。
【0044】
同様に、揺動軸線20を中心に限定的に回動可能なグリッパ管25により、巻取り中断後に、紡績コップ9に接続された下糸32の糸端部が操作される。すなわち、グリッパ管25は、糸テンショナにおいて固定された下糸32の糸端部を受け取り、下糸32を同様にスプライシング装置10へ引き渡す。
【0045】
スプライシング装置10は、好適には相応の(詳しくは図示されていない)収容装置を介して、作業ユニット2のハウジング33に接続されており、この場合、このとき通常のように、正規の糸走路、つまり巻取りプロセス中に通常の糸走路に対して、いくぶんか後退させて配置されている。
【0046】
公知のように、スプライシング装置10の領域にはさらに(詳しくは図示されていない)保持兼解撚管が配置されており、保持兼解撚管を用いて、糸端部は、スプライシング過程のために準備される。
【0047】
さらにスプライシング装置10の領域には、図面を見やすくする理由から同様に図示されていない、糸クランプ装置、糸切断装置および糸寄せ器などの追加的な糸取扱い装置が配置されている。
【0048】
特にカバー要素なしで機能することができるスプライシング装置10は、以下、
図2および
図3に基づき詳説するように、スプライシング角柱体23を有し、スプライシング角柱体23は、圧縮空気を供給可能なスプライシング通路17を有する。
【0049】
図2は、スプライシング角柱体23が嵌入されたスプライシング装置10を示している。この場合、スプライシング空気孔19は、それ自体、空気分配系26を介して空気通路35に接続されており、空気通路35を介して、スプライシング角柱体23のスプライシング通路17に、必要な場合に圧縮空気を供給可能である。
【0050】
図3から看取されるように、各々のスプライシング通路室18内に、それぞれ図面の斜め上から見てスプライシング空気孔19が開口する。換言すると、各々のスプライシング通路室18は、スプライシング通路17内への糸端部の供給方向またはスプライシング通路17内に通じる、スプライシング通路17内へ糸端部を供給するための糸導入スリット36に対して斜めに延在する、対応するスプライシング通路室18内に開口する1つのスプライシング空気孔19を有する。スプライシング空気孔19の中心軸線は、糸導入スリット36またはスプライシング通路17内への糸端部の供給方向に対して斜めに設置されている。この斜めの設置は、スプライシング角柱体23内に、中心軸線が供給方向軸線に対して90°よりも小さな角度を成し、スプライシング通路底の方向に、つまり糸導入スリット36を形成する縦長のスプライシング通路開口の方向とは逆向きに方向付けられるように、構成されている。スプライシングされるべき糸端部が準備されてスプライシング通路17内に置かれた後で、スプライシング空気孔19に圧縮空気が供給される。
【0051】
スプライシング空気孔19の円形の横断面を有する入口部27を越えて流入するスプライシング空気は、斜部34に沿って、スプライシング空気孔19の出口部30に流れる。出口部30は、半円形の横断面の開口部分でもって、スプライシング通路17内にまたは各々のスプライシング通路室18内に開口する。スプライシング空気孔19の、渦流を低減する構成により、空気流は、より収縮して、より高い速度を有する。出口部30の半円形の横断面の開口部分から、そのようにガイドされたスプライシング空気が面状に流出し、スプライシング通路17に挿入された糸の糸端部を交絡させるので、糸端部の最適なスプライシング糸継ぎ部が生じ、これはほぼ元の糸と同じ特性を有する。
【符号の説明】
【0052】
1 繊維機械
2 作業ユニット
3 紡績コップ・空管搬送システム
4 コップ供給区間
5 貯え区間
6 横搬送区間
7 巻管戻し区間
8 搬送皿
9 紡績コップ
10 スプライシング装置
11 中央制御ユニット
12 吸込みノズル
13 揺動軸線
14 糸ガイドドラム
15 巻取りパッケージ
16 機械バス
17 スプライシング通路
18 スプライシング通路室
19 スプライシング空気孔
20 揺動軸線
21 綾巻きパッケージ搬送装置
22 揺動軸線
23 スプライシング角柱体
24 巻取り装置
25 グリッパ管
26 空気分配系
27 入口部
28 パッケージフレーム
29 作業ユニット電子計算機
30 出口部
31 上糸
32 下糸
33 ハウジング
34 斜部
35 空気通路
36 糸導入スリット