IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎 勝成の特許一覧

<>
  • 特許-対向部材の連結固定具 図1
  • 特許-対向部材の連結固定具 図2
  • 特許-対向部材の連結固定具 図3
  • 特許-対向部材の連結固定具 図4
  • 特許-対向部材の連結固定具 図5
  • 特許-対向部材の連結固定具 図6
  • 特許-対向部材の連結固定具 図7
  • 特許-対向部材の連結固定具 図8
  • 特許-対向部材の連結固定具 図9
  • 特許-対向部材の連結固定具 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】対向部材の連結固定具
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/04 20060101AFI20221121BHJP
   E01C 11/22 20060101ALI20221121BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20221121BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20221121BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
E03F5/04 C
E01C11/22 B
E21D11/04 A
E02D29/02 304
E02D17/20 103H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019028685
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020133266
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】711006234
【氏名又は名称】川崎 勝成
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】川崎 勝成
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-102530(JP,A)
【文献】特開2002-121811(JP,A)
【文献】特開2018-035607(JP,A)
【文献】特開平10-231694(JP,A)
【文献】実開平2-129486(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
E02B 3/04-3/14
E02D 17/00-17/20
29/02
E03F 1/00-11/00
E21D 11/00-19/06
23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右側の被連結部材を端面対向状態で連結固定する連結固定具であって、
左右側の被連結部材の対向端面部に対向して固定するための左右側連結中子を備え、
左右側連結中子は、
上方開放に形成すると共に互いに対向する対向壁の上下端部に後述する二又アームと基部突出部をそれぞれ突出するための上下切欠部を形成した左右側方型枠体と、
左右側の被連結部材の対向端面部に固定した左右側方型枠体を対向した状態において左右一方側の方型枠体の上方から挿入して一方側の方型枠体内に収納され、その上下部に突出形成した二又アーム及び基部突出部を一方側の方型枠体の上下切欠部から他方側の方型枠体内に突出した二又係合枠体と、
左右側の被連結部材に固定した左右側方型枠体及び二又係合枠体の平面視における略H字状凹部空間に嵌着自在に形成したH字状固定枠体と、より構成し、
左右側連結中子を介して左右側の被連結部材を端面対向状態で連結固定可能に構成したことを特徴とする対向部材の連結固定具。
【請求項2】
左右側方型枠体及び二又係合枠体の平面視における略H字状凹部空間は左右側方型枠体内の左右背面部空間と二又アームの中央部空間とにより形成したことを特徴とする請求項1に記載の対向部材の連結固定具。
【請求項3】
左右側連結中子をH字状固定枠体により一体に連結することにより左右側の被連結部材を左右側連結中子を介して連結固定可能に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の対向部材の連結固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対向部材の連結固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、壁やトンネル、側溝などの各種構造物は、擁壁やセグメント、縁石、側溝ブロックなどの被連結部材同士を対向状態にして連結固定具により連結固定して構成している。
【0003】
かかる対向状態とした被連結部材(以下、単に対向部材とも言う。)の連結固定具としては、互いに対向状態とした際に連通するボルト挿通孔を連結対向面に形成し、かかるボルト挿通孔に挿通したボルトと、ボルト端部に螺着したナットを介して被連結部材同士を連結固定するもの(例えば、特許文献1参照。)が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-193548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術のように、ボルト及びナットにより被連結部材同士を連結固定して構造物を構成した場合には、該構造物が設置される場所によっては例えば地震や地盤変形による不等沈下、車両通過時の振動などに伴うひずみ応力負荷、雨水の浸水などの環境変異の影響をボルト及びナットが受けて構造物の構造変形を生じさせて構造的な強度や機能を著しく低下させる恐れがあった。
【0006】
すなわち、ボルトとナットは、被連結部材間で生じる連結部分のひずみ応力について、部材同士の前後ズレに伴うボルトの軸方向、すなわち対向部材の連結方向の前後離反応力に対しては引張結合力を生起するものの、部材同士の上下縦ズレや左右横ズレなどに伴う対向部材の連結方向に直交した左右上下離反応力に対しては対応することが困難であった。
【0007】
その結果、ボルトやナットは、対向部材の連結方向に直交した左右上下離反方向の応力負荷をダイレクトに受けて変形劣化してしまい、被連結部材間における連結固定状態を不用意に緩めたり被連結部材同士の位置ズレを生じさせたりして、構造物の構造変形を生じさせて強度や機能を低下させる恐れがあった。
【0008】
また、ナットやボルト頭部が各部材に係合するための係止部位を各被連結部材同士に予め形成したり被連結部材同士の連結固定作業時にボルトにナットを螺着操作するための特殊治具を用いたりするなど、設置構造の複雑化や連結固定操作の煩雑化を招く問題があった。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、連結固定のための特別な設置構造や連結時の連結固定操作を簡略化することができ、被連結部材同士を対向状態で連結緊締して各被連結部材を強固に一体連結した構造物を構築することができ、被連結部材同士の結合部分に負荷されるあらゆる方向からのひずみ応力に対応して構造物の強度を向上させ、構造物の有する構造的機能を長年にわたって保持できる対向部材の連結固定具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明では、左右側の被連結部材を端面対向状態で連結固定する連結固定具であって、左右側の被連結部材の対向端面部に対向して固定するための左右側連結中子を備え、左右側連結中子は、上方開放に形成すると共に互いに対向する対向壁の上下端部に後述する二又アームと基部突出部をそれぞれ突出するための上下切欠部を形成した左右側方型枠体と、左右側の被連結部材の対向端面部に固定した左右側方型枠体を対向した状態において左右一方側の方型枠体の上方から挿入して一方側の方型枠体内に収納され、その上下部に突出形成した二又アーム及び基部突出部を一方側の方型枠体の上下切欠部から他方側の方型枠体内に突出した二又係合枠体と、左右側の被連結部材に固定した左右側方型枠体及び二又係合枠体の平面視における略H字状凹部空間に嵌着自在に形成したH字状固定枠体と、より構成し、左右側連結中子を介して左右側の被連結部材を端面対向状態で連結固定可能に構成したことを特徴とする対向部材の連結固定具を提供する。
【0011】
また、左右側方型枠体及び二又係合枠体の平面視における略H字状凹部空間は左右側方型枠体内の左右背面部空間と二又アームの中央部空間とにより形成したことに特徴を有する。
【0012】
また、左右側連結中子をH字状固定枠体により一体に連結することにより左右側の被連結部材を左右側連結中子を介して連結固定可能に構成したことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、左右側の被連結部材を端面対向状態で連結固定する連結固定具であって、左右側の被連結部材の対向端面部に対向して固定するための左右側連結中子を備え、左右側連結中子は、上方開放に形成すると共に互いに対向する対向壁の上下端部に後述する二又アームと基部突出部をそれぞれ突出するための上下切欠部を形成した左右側方型枠体と、左右側の被連結部材の対向端面部に固定した左右側方型枠体を対向した状態状態において左右一方側の方型枠体の上方から挿入して一方側の方型枠体内に収納され、その上下部に突出形成した二又アーム及び基部突出部を一方側の方型枠体の上下切欠部から他方側の方型枠体内に突出した二又係合枠体と、左右側の被連結部材に固定した左右側方型枠体及び二又係合枠体の平面視における略H字状凹部空間に嵌着自在に形成したH字状固定枠体と、より構成し、左右側連結中子を介して左右側の被連結部材を端面対向状態で連結固定可能に構成したため、連結固定のための特別な設置構造や連結時の連結固定操作を簡略化して被連結部材同士を対向状態で連結緊締して各被連結部材を強固に一体連結した構造物を構成することができる効果がある。
【0014】
すなわち、被連結部材同士を対向状態にして、同対向部材間に左右方型枠体により形成される方形枠空間に二又係合枠体、及びH字状固定枠体を嵌着する簡易な嵌着操作をするだけで対向部材同士の緊密な連結固定を実現することができる効果がある。
【0015】
そして、被連結部材間で生じる連結部分のひずみ応力について、対向部材の連結方向の前後離反応力及び対向部材の連結方向に直交した左右離反応力に対しては、左右側方型枠体及び二又係合枠体によりなす略H字状凹部空間に嵌着したH字状固定枠体が左右側方型枠体及び二又係合枠体に前後左右係合して対応することができる。
【0016】
一方で、対向部材の連結方向に直交した上下離反応力に対しては左右側方型枠体の上下切欠部からそれぞれ上下突出した二又係合枠体の二又アームと基部突出部が左右側方型枠体の対向壁の上下端部に上下係合して対応することができる。
【0017】
しかも、被連結部材同士の連結緊締後であってもH字状固定枠体や二又係合枠体の取り外し作業を容易に行うことができ、従って、構造物を構成する一部の被連結部材を交換するなど必要に応じて構造物のメンテナンス作業をする際の作業負担を軽減できる効果がある。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、左右側方型枠体及び二又係合枠体の平面視における略H字状凹部空間は左右側方型枠体内の左右背面部空間と二又アームの中央部空間とにより形成したため、被連結部材同士の間に介在した略H字状凹部空間にH字状固定枠体を嵌着した場合には、H字状固定枠体により略H字状凹部空間を隙間なく埋めるように、H字状固定枠体の外周側面を左右側方型枠体の左右背面及び二又アームの中央部空間を形成するアーム内側面に圧接して被連結部材同士の連結緊締を堅実に行うことができる効果がある。
【0019】
また、請求項3に係る発明によれば、左右側連結中子をH字状固定枠体により一体に連結することにより左右側の被連結部材を左右側連結中子を介して連結固定可能に構成したため、H字状固定枠体を中核に左右側連結中子を介した左右側の被連結部材の締結を確実に行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る連結固定具を設置した被連結部材の構成を示す正面図である。
図2】本発明に係る連結固定具により被連結部材同士を端面対向状態で連結緊締した状態を示す平面図である。
図3】本発明に係る連結固定具により被連結部材同士を端面対向状態で連結緊締した状態を示す縦断面図である。
図4】本発明に係る連結固定具を設置した被連結部材の端面部分を示す模式的拡大斜視図である。
図5】本発明に係る連結固定具の左右側方型枠体の構成を示す説明図である。
図6】本発明に係る連結固定具の二又係合枠体の構成を示す説明図である。
図7】本発明に係る連結固定具のH字状固定枠体の構成を示す説明図である。
図8】本発明に係る連結固定具による被連結部材同士の連結手順を示す模式的説明図である。
図9】本発明に係る連結固定具による被連結部材同士の連結手順を示す模式的説明図である。
図10】本発明に係る連結固定具による被連結部材同士の連結手順を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の要旨は、左右側の被連結部材を端面対向状態で連結固定する連結固定具であって、左右側の被連結部材の対向端面部に対向して固定するための左右側連結中子を備え、左右側連結中子は、上方開放に形成すると共に互いに対向する対向壁の上下端部に後述する二又アームと基部突出部をそれぞれ突出するための上下切欠部を形成した左右側方型枠体と、左右側の被連結部材の対向端面部に固定した左右側方型枠体を対向した状態において左右一方側の方型枠体の上方から挿入して一方側の方型枠体内に収納され、その上下部に突出形成した二又アーム及び基部突出部を一方側の方型枠体の上下切欠部から他方側の方型枠体内に突出した二又係合枠体と、左右側の被連結部材に固定した左右側方型枠体及び二又係合枠体の平面視における略H字状凹部空間に嵌着自在に形成したH字状固定枠体と、より構成し、左右側連結中子を介して左右側の被連結部材を端面対向状態で連結固定可能に構成したことを特徴とする対向部材の連結固定具を提供することにある。
【0022】
また、左右側方型枠体及び二又係合枠体の平面視における略H字状凹部空間は左右側方型枠体内の左右背面部空間と二又アームの中央部空間とにより形成したことにある。
【0023】
また、左右側連結中子をH字状固定枠体により一体に連結することにより左右側連結部材を左右側連結中子を介して連結固定したことにある。
【0024】
以下、この発明の実施例を図面に基づき詳説する。図1は本発明にかかる連結固定具を設置した被連結部材としての側溝ブロックを示す正面図、図2及び図3は連結固定具により側溝ブロック同士を端面対向状態で連結緊締した状態を示す平面図及び断面図、図4は連結固定具を設置した側溝ブロックの端面部分の模式的拡大斜視図、図5は左右側方型枠体の構成を示す正面図、側面図及び平面図、図6は二又係合枠体の構成を示す正面図、側面図及び平面図、図7はH字状固定枠体の構成を示す正面図、側面図及び平面図、図8図10は連結固定具による側溝ブロック同士の連結手順を示す模式的説明図である。
【0025】
本発明に係る連結固定具Aは、図1及び図2に示すように被連結部材100、100’の対向端面部101、101’に設置され、図3及び図4に示すように被連結部材100、100’同士を端面対向状態で連結固定するために使用されるものである。
【0026】
本実施例において、図1図3に示すように被連結部材100は側溝ブロックであり、連結固定具Aは側溝ブロックの左右側壁の両端に設けられて該側溝ブロック同士を連結緊締することにより構造物としての側溝を強固に構築する。
【0027】
なお、本発明の連結固定具Aを適応できる被連結部材100としては、上述のごとく、例えば、壁を構築するための擁壁部材、トンネルを構築するためのセグメント、柱を構築するための棒状木材、縁石を構築するための縁石ブロックなどでもよく、端面対向状態で連結可能なものであれば素材や形状に限定されることはない。
【0028】
被連結部材100の対向端面部101には、図1図4、及び図8に示すように左右側連結中子10、10’を互いに対向して固定している。
【0029】
本実施例では、被連結部材100、100’としての側溝ブロックの左右側天端における長手方向端部の上方角部を、連結固定具Aにおける左右側連結中子10、10’が設置される対向端面部101、101’とし、該上方角部に後述する左右側方型枠体20、20’を埋設固定している。
【0030】
すなわち、左右側方型枠体20、20’は、連結固定する各被連結部材100、100’において、作業者が連結固定具Aにより被連結部材100、100’同士を連結固定作業する際に後述する二又係合枠体30やH字状固定枠体40を嵌着することが可能な表面、すなわち作業者側から視認可能な対向部材の露出表面104、104’と被連結部材100、100’同士の対向側面103、103’(以下、単に端面とも言う。)とによりなす対向端角部の一部を対向端面部101、101’とし、該対向端面部101、101’に対して一部を露出させた対向状態で埋設固定される。
【0031】
対向端面部101、101’に対向状態で埋設固定された左右側連結中子10、10’は、被連結部材100、100’の端面103、103’同士を対向状態にしてその間で被連結部材100、100’を連結固定している。
【0032】
左右側連結中子10、10’は、図3図4に示すように、被連結部材100、100’の対向端面部101、101’にそれぞれ一体固定される左右側方型枠体20、20’と、該左右側方型枠体20、20’の内方に嵌着する二又係合枠体30と、さらに左右側方型枠体20、20’と左右側方型枠体20に嵌着した二又係合枠体30に嵌着するH字状固定枠体40と、で構成している。かかる左右側連結中子10、10’を構成する左右側方型枠体20、20’や二又係合枠体30、H字状固定枠体40の素材は特に限定されることはなく、例えば金属や硬質樹脂等を採用することができる。
【0033】
なお、以下において、左右側方型枠体20、20’は、それぞれ同一の形状及び構成を備えるため、一方側の方型枠体20を例に説明する。方型枠体20は、各中子10の対向壁の上下端部で二又係合枠体30の二又アーム31と基部突出部32をそれぞれ突出するための上下切欠部21、22を形成している。
【0034】
具体的には、方型枠体20は、図5(b)及び(c)に示すように方形筒状であって、図5(a)に示すように方形筒形状の一側壁を被連結部材100同士を対向させた際に面当接する各中子10における対向壁23となし、同対向壁23の上下端部を矩形状に切欠いて上下切欠部21、22を形成している。
【0035】
各上下切欠部21、22の切欠き高さは、それぞれ略同じ高さとし、且つ後述する二又係合枠体30の二又アーム31と基部突出部32の厚みと略同じとなるように形成している。
【0036】
かかる方型枠体20は、図8に示すように被連結部材100の対向端面部101としての角部に対して、対向壁23を被連結部材100の端面103側に露出させて同端面103と面一状態にすると共に、筒状の上部開口縁面を被連結部材100側の露出表面104側に露出させて同露出表面104と面一状態にして埋設固定している。
【0037】
すなわち、方型枠体20の被連結部材100への固定状態において、方型枠体20の内方には二又係合枠体30やH字状固定枠体40を嵌着するための嵌着空間S1が、端面103側に上下切欠部21、22を臨ませるとともに露出表面104側に方型枠体20の筒孔の上部開口を臨ませて形成される。
【0038】
嵌着空間S1は、方型枠体20の4側壁と方型枠体20の下部開口を閉塞する被連結部材100の方型枠体20の埋設底面とで囲まれた略方形状の空間である。なお、被連結部材100の方型枠体20の埋設底面は方型枠体20の下部開口縁によりなす仮想水平面に沿う平坦面に形成している。
【0039】
また、左右側方型枠体20、20’は、被連結部材100、100’同士を端面対向状態にした際に互いの対向壁23、23’同士を面当接対向可能とするように各左右側の被連結部材100、100’に埋設されていればよく、本実施例のように対向壁23、23’や上部開口縁面が被連結部材100、100’の側面103、103’や露出表面104、104’と必ずしも面一状態である必要はない。
【0040】
例えば、一方の方型枠体20はその対向壁23を被連結部材100の端面103より外方に突出させるように一方の被連結部材100に埋設し、これに対応するように他方の方型枠体20’はその対抗壁23’を被連結部材100’の端面103’より内方に凹ませるように他方の被連結部材100’に埋設することもできる。
【0041】
また、方型枠体20を被連結部材100に埋設設置するにあたっては、被連結部材100を形成する際、例えば、被連結部材100の打設形成の際に上述のように方型枠体20を対向端面部101部分に配置する。これにより、予め或いは現場打ちにて方型枠体20が埋設設置された被連結部材100を形成することができる。
【0042】
換言すれば、被連結部材100、100’の対向端面部101、101’にはそれぞれ、左右側方型枠体20、20’の外形に沿う左右側凹部が左右側方型枠体20、20’に嵌着対応するように形成されることとなる。
【0043】
すなわち、基本的には左右側方型枠体20、20’は各被連結部材100、100’の打設成形時にそれぞれ被連結部材100、100’と一体に埋設固定するが、左右側方型枠体20、20’が設けられていない状態の被連結部材100、100’であってもその対向端面部101に左右側連結中子10、10’、すなわち左右側方型枠体20、20’を嵌着固定するための左右側凹部を形成し、かかる左右側方型枠体20、20’を被連結部材100、100’に後付け固定することもできる。
【0044】
また、方型枠体20には被連結部材100への一体的な埋設固定状態を強固にするためのアンカーを設けることとしてもよい。アンカーは、例えばアンカー部材としての異形棒鋼を方型枠体20の外側壁に溶接等により付設固定したり、アンカー溝として方型枠体20の筒軸方向(被連結部材100、100’同士の連結方向に直行した方向)沿う縦溝を方型枠体20の外側壁に複数形成したりして、方型枠体20に設けることができる。
【0045】
なお、アンカーとして異形棒鋼を採用した場合には、、その先端を被連結部材100の内方(例えば、方型枠体20の対向壁23が設けられた側とは逆方向)に向けて方型枠体20の左右外側壁に対して基端で固定することにより方型枠体20に付設する。
【0046】
二又係合枠体30は、図3及び図8に示すように左右側の被連結部材100、100’の対向端面部101、101'に一体的に固定した左右側方型枠体20、20’を対向した状態において、左右一側の方型枠体20の上方から挿入して一側の方型枠体20内に収納可能に構成している。
【0047】
二又係合枠体30は、上述した方型枠体20の対向壁23の上切欠部21に対応するように、図6(a)~図6(c)に示すように上部で外方突出形成した二又アーム31と、同じく方型枠体20の対向壁23の下切欠部22に対応するように下部で外方突出形成した基部突出部32とを備えて構成している。
【0048】
かかる二又アーム31及び基部突出部32は、図3及び図9に示すように一方側の方型枠体20の上下切欠部21、22と他方側の方型枠体20’の上下切欠部21’、22’とを介して他方側の方型枠体20’内に突出するように形成している。
【0049】
具体的には、二又係合枠体30は、図6(b)に示すように側面視コ字状であって、コ字上辺部分に相当する二又アーム31と、コ字縦辺部分に相当する二又直立部33と、コ字縦下辺部分に相当する基部突出部32と、で構成している。
【0050】
基部突出部32は、図6(c)に示すように平面視扁平板状であって、図6(a)に示すように正面視において所定厚みを有して板面基端の両端で二又直立部33を立設している。
【0051】
換言すれば、二又アーム31は、基部突出部32の板面基端から上方に向けて左右二又状に分かれた二又直立部33に屈曲部を介して連続して形成している。なお、二又直立部33は図6(a)に示すように正面視略U字状に形成しており、後述する二又アーム31へのH字状固定枠体40の挟持嵌着した際の二又アーム31を介して伝達される外方拡張応力の二又直立部33基部への集中を分散可能としている。
【0052】
また、基部突出部32の板面(底面)面積は、図8に示すように方型枠体20内方の嵌着空間S1における平面視面積に収まるように形成しており、一方側の方型枠体20内に二又係合枠体30を収納可能としている。
【0053】
また、二又アーム31と基部突出部32とは、図6(b)に示すように二又直立部33を基準に、二又アーム31の方が基部突出部32よりも長くなる突出長さとなるように形成している。
【0054】
具体的には、基部突出部32の突出長さは、図3に示すように対向させた2つの左右側方型枠体20、20’の下切欠部22、22’に基部突出部32を嵌着挿入した場合に、当接対向状態の左右2つの対向壁23、23’の厚みと略同じとなるように形成している。
【0055】
また、二又アーム31の突出長さは、対向させた左右側方型枠体20、20’の上切欠部21、21’に二又アーム31を嵌着挿入した場合に、当接対向状態の左右2つの対向壁23、23’の厚みと二又直立部33の厚みの総和と略同じとなるように形成している。
【0056】
また、二又アーム31と基部突出部32の厚みは、それぞれ方型枠体20の上下切欠部21、22の高さと略同じとなるように形成している。
【0057】
すなわち、二又係合枠体30は、図3に示すように、左右側方型枠体20、20’への嵌着状態において、コ字状の内側に当接対向状態とした左右側方型枠体20、20’の左右対向壁23、23’を介在させるように形成している。
【0058】
具体的には、二又係合枠体30は、一方側の方型枠体20の対向壁23の内側に二又直立部33の内側を当接させると共に二又アーム31下面と基部突出部32上面とを対向壁23、23’の上下面に当接させ、二又アーム31と基部突出部32との間に当接対向状態の2つの対向壁23、23’を介在可能に構成している。
【0059】
また、二又係合枠体30は、左右一側の方型枠体20の上方から挿入して一側の方型枠体20内に収納した際に、二又アーム31上面を被連結部材100の露出表面104と略面一状態となるように形成している。
【0060】
具体的には、二又係合枠体30は、図3に示すように、その高さ(基部突出部32底面から二又アーム31上面までの長さ)を方型枠体20における嵌着空間S1の高さ(方型枠体20の閉塞下部開口の開口縁から開放上部開口の開口縁までの長さ)と略同じとするように形成している。
【0061】
H字状固定枠体40は、左右側の被連結部材100、100’の対向端面部101、101’に埋設固定した左右側方型枠体20、20’及び二又係合枠体30の平面視における略H字状凹部空間Sに嵌着自在に形成している。
【0062】
左右側方型枠体20、20’及び二又係合枠体30の平面視における略H字状凹部空間Sは、図10に示すように左右側方型枠体20、20’内の左右背面部空間と二又アーム31の中央部空間とにより形成している。
【0063】
すなわち、左右側連結中子10、10’をH字状固定枠体40により一体に連結することにより左右側の被連結部材100、100’を左右側連結中子10、10’を介して連結固定可能に構成している。
【0064】
H字状固定枠体40は、図7(c)に示すように平面視略H字状であって、H状の中央横辺部に相当し、長尺棒状に形成したウェブ部41と、H状の左右縦辺部に相当し、ウェブ部41の伸延方向に直行するようにウェブ部41左右側で短尺立法形に形成した左右側フランジ部42、42とを備える。
【0065】
ウェブ部41は、二又アーム31の中央部空間(二又アーム31の両アームの間に形成される空間)で、両アームの間で挟持さるように嵌着自在に形成している。
【0066】
具体的には、ウェブ部41は、その幅員を二又アームのアーム間距離よりも幅広とし、H字状固定枠体40を略H字状凹部空間Sに嵌着した際には二又アーム31をやや外方に押し広げて二又アーム31の外側面を左右側方型枠体20、20’の内側面に圧着可能に形成している。
【0067】
また、ウェブ部41の長手方向中央下部、すなわちH字状固定枠体40の長手方向中央下部には、図7(b)に示すように対向状態の左右2つの対向壁23、23’に対応する嵌着凹部41aを切欠き形成しており、H字状固定枠体40を略H字状凹部空間Sに嵌着した際に該嵌着凹部41aが面当接した状態の対向壁23、23’の上方から嵌まり込み、左右側方型枠体20、20’を一体連結することを可能としている。
【0068】
また、ウェブ部41の嵌着凹部41aを除いた下部は、図7(b)に示すようにウェブ部41の幅員を下方にかけて漸次幅狭にして形成している。
【0069】
具体的には、ウェブ部41の嵌着凹部41aを除いた下部両側面は、長手方向に沿ってウェブ部41の軸心に向けて下方傾斜する傾斜面41bとし、略H字状凹部空間Sのうち二又アーム31のアーム間の空間部分にウェブ部41が上方から嵌着しやすいように形成している。
【0070】
また左右側フランジ部42、42’は、方形状であって、略H字状凹部空間Sのうち左右側方型枠体20、20’内の平面視方形状の左右背面部空間、すなわち左右側方型枠体20、20’に二又係合枠体30を嵌着した状態において、同二又係合枠体30の左右側外方に形成される左右側方型枠体20、20’の平面視方形状の嵌着空間に嵌着対応する。
【0071】
左右側フランジ部42、42は、H字状固定枠体40を略H字状凹部空間Sに嵌着した際には該左右側フランジ部42、42が二又アーム31の前後端面と左右側方型枠体20、20’の内側周面によりなす左右背面部空間に嵌合する。
【0072】
なお、左右側フランジ部42、42’の外側中央部には、H字状固定枠体40を略H字状凹部空間Sから取外す際にマイナスドライバー等の先端扁平状工具を挿入可能な挿入凹部42b、42b’を形成している。
【0073】
具体的には、挿入凹部42b、42b’は、左右側フランジ部42、42’の外側中央部で、左右側フランジ部42、42’の内側下方斜めに切削して形成している。
【0074】
このように構成した連結固定具Aは、被連結部材100、100’同士を以下のようにして連結固定する。
【0075】
まず、図8に示すように被連結部材100の対向端面部101に左右側方型枠体20、20’をコンクリートの打設等により被連結部材100と一体的に埋設固定する。
【0076】
次いで、左右側の被連結部材100、100’の対向端面部101、101’を対向させた状態、すなわち左右側方型枠体20、20’を対向させた状態で、二又係合枠体30を左右一方側の方型枠体20の上方から挿入して一方側の方型枠体20内に収納する。
【0077】
次いで、図8に示すように一方側の方型枠体20の対向壁23の内側面に二又直立部33の内側面を面当接するまで左右側方型枠体20、20’の上下切欠部21、22に二又アーム31及び基部突出部32を挿入し、左右側方型枠体20、20’に二又係合枠体30を嵌着した状態とする。
【0078】
このような状態で、一方側の方型枠体20に収納した二又係合枠体30の二又アーム31及び基部突出部32は、図9に示すように左右側方型枠体20の対向壁23の上下方の上下切欠部21、22から外方突出した状態となる。
【0079】
そして、端面対向状態の左右側の被連結部材100、100’には、図10に示すようにその接合部分に左右側方型枠体20、20’及び二又係合枠体30によりなす略H字状凹部空間Sが形成される。
【0080】
換言すれば、左右側方型枠体20、20’が埋設固定された左右側の被連結部材100、100’を対向状態にすることにより、左右側の被連結部材100、100’同士の間には、中央で面当接状態の2つの対向壁23、23’により左右側方型枠体20、20’の嵌着空間S1、S1’とに区画された略方形状の対向方型空間が形成される。
【0081】
かかる対向方型空間を形成する左右側方型枠体20、20’のうち、いずれか一方の方型枠体20の嵌着空間S1に二又係合枠体30を挿入収納することで対向方型空間に略H字状凹部空間Sが形成される。
【0082】
次いで、図10に示すように略H字状凹部空間SにH字状固定枠体40を嵌着することにより被連結部材100、100’同士の間に一体的な左右側連結中子10、10’が形成され、図4に示すうように左右側連結中子10、10’を介した左右側の被連結部材100、100’同士の強固な連結固定が完了する。
【0083】
すなわち、左右側連結中子10、10’を構成する左右側方型枠体20、20’、二又係合枠体30、H字状固定枠体40といった各種部材は、端面103、103’対向状態の被連結部材100、100’同士の間に形成した対向方型空間や略H字状凹部空間S内における各部材間の隙間を相互閉塞して密着圧接した嵌着連結を行うことにより、被連結部材100、100’同士の強固な連結緊締状態を実現する。
【0084】
そして、連結部材間で生じる連結部分のひずみ応力について、対向部材の連結方向の前後離反応力及び対向部材の連結方向に直交した左右離反応力に対しては、左右側方型枠体20、20’及び二又係合枠体30によりなす略H字状凹部空間Sに嵌着したH字状固定枠体40が左右側方型枠体20、20’及び二又係合枠体30に前後左右係合して対応することができる。
【0085】
また、対向部材の連結方向に直交した上下離反応力に対しては左右側方型枠体20、20’の上下切欠部21、22からそれぞれ突出した二又係合枠体30の二又アーム31と基部突出部32が左右側方型枠体20、20’の対向壁23、23’の上下端部に上下係合して対応することができる。
【0086】
また、被連結部材同士の連結緊締後であっても、H字状固定枠体40の挿入凹部42b、42b’にマイナスドライバー等の先端扁平状工具を挿入して、挺子を利用してこじ上げることによりH字状固定枠体40を略H字状凹部空間から簡単に取外すことができるため、構造物を構成する一部の被連結部材100を交換するなど必要に応じて構造物のメンテナンス作業をする際の作業負担を軽減できる。
【0087】
以上、説明してきたように、本発明によれば、左右側の被連結部材を端面対向状態で連結固定する連結固定具であって、左右側の被連結部材の対向端面部に対向して固定するための左右側連結中子を備え、左右側連結中子は、上方開放に形成すると共に互いに対向する対向壁の上下端部に後述する二又アームと基部突出部をそれぞれ突出するための上下切欠部を形成した左右側方型枠体と、左右側の被連結部材の対向端面部に固定した左右側方型枠体を対向した状態において左右一方側の方型枠体の上方から挿入して一方側の方型枠体内に収納され、その上下部に突出形成した二又アーム及び基部突出部を一方側の方型枠体の上下切欠部から他方側の方型枠体内に突出した二又係合枠体と、左右側の被連結部材に固定した左右側方型枠体及び二又係合枠体の平面視における略H字状凹部空間に嵌着自在に形成したH字状固定枠体と、より構成したため、連結固定のための特別な設置構造や連結時の連結固定操作を簡略化して被連結部材同士を対向状態で連結緊締して各被連結部材を強固に一体連結した構造物を構成することができる効果がある。
【0088】
すなわち、連結固定のための特別な設置構造や連結時の連結固定操作を簡略化することができ、被連結部材同士を対向状態で連結緊締して各被連結部材を強固に一体連結した構造物を構成することができ、被連結部材同士の結合部分に負荷されるあらゆる方向からのひずみ応力に対応することができ、構造物の強度を向上させて構造的機能を長年にわたって保持できる効果がある。
【符号の説明】
【0089】
A 連結固定具
10、10’ 左右側連結中子
20、20’ 左右側方型枠体
21 上切欠部
22 下切欠部
23 対向壁
30 二又係合枠体
31 二又アーム
32 基部突出部
40 略H字状固定枠体
41 ウェブ部
42、42’ 左右側フランジ部
S 略H字状凹部空間
100、100’ 被連結部材
101、101’ 対向端面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10