(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
H02K3/04 E
(21)【出願番号】P 2019029037
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永田 稔
(72)【発明者】
【氏名】榎本 裕治
(72)【発明者】
【氏名】日野 徳昭
(72)【発明者】
【氏名】澤畠 公則
(72)【発明者】
【氏名】堀 雅寛
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-158044(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083470(WO,A1)
【文献】特開2015-077040(JP,A)
【文献】特開2017-073924(JP,A)
【文献】特開2004-266967(JP,A)
【文献】特開2017-028890(JP,A)
【文献】特開2017-093224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00-3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線部及び曲線部を有し断面が矩形状に形成された複数のコイルと、
前記複数のコイルのそれぞれを収納する複数のスロットが形成された固定子コアと、
前記固定子コアの内周側に回転可能に配置された回転子コアと、を備えた回転電機であって、
前記複数のコイルのそれぞれが挿入された状態で保持され、第1コイル群を形成する第1端板と、
前記複数のコイルのそれぞれが挿入された状態で保持され、第2コイル群を形成する第2端板と、を備え、
前記第1端板は前記固定子コアの軸方向端面と接することにより前記第1コイル群における複数のコイルを前記複数のスロットに収納し、
前記第2端板は前記第1端板とは反対側の前記固定子コアの軸方向端面と接することにより前記第2コイル群における複数のコイルを前記複数のスロットに収納し、
前記第1コイル群と前記第2コイル群とは前記スロット内で接続され、
前記第1端板と前記第1コイル群における複数のコイル、及び前記第2端板と前記第2コイル群における複数のコイルは、前記コイルの前記曲線部において少なくとも3つの面と接する
ように回転電機を構成し、
さらに前記回転電機は、
前記固定子コアの外周に配置され、軸方向両側が開口した筒状部材と、
前記筒状部材の一方の開口を塞ぐ上蓋部材と、
前記筒状部材の他方の開口を塞ぐ下蓋部材と、備え、
前記上蓋部材には前記固定子コア側に延びた上押さえリブが形成され、
前記下蓋部材には前記固定子コア側に延びた下押さえリブが形成され、
前記上押さえリブは前記上蓋部材が前記一方の開口を塞いだ状態で前記第1端板と接し、
前記下押さえリブは前記下蓋部材が前記他方の開口を塞いだ状態で前記第2端板と接することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1端板と前記第1コイル群における複数のコイル、及び前記第2端板と前記第2コイル群における複数のコイルは、前記コイルの前記直線部において4つの面と接することを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1端板の外周側及び内周側には、前記固定子コアに接する側と反対側に延びた外壁部が形成されたことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1端板と前記外壁部とで囲まれる部分に固定材を設けたことを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記固定子コアには、前記複数のコイルのそれぞれを覆う複数の絶縁紙が配置され、
前記第1端板及び前記第2端板には、前記固定子コアの端面から突出した前記複数の絶縁紙を収納する複数の窪み部が形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記第1端板には、前記スロット側に向かって延び、前記複数
のコイルの個々の周囲を覆うように第1ガイド部が配置され、
前記第2端板には、前記スロット側に向かって延び、前記複数
のコイルの個々の周囲を覆うように第2ガイド部が配置され、
前記第1ガイド部の先端部及び前記第2ガイド部の先端部は重なるように配置したことを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記第1端板には外周から径方向外側に突出した第1締結部を有し、
前記第2端板には外周から径方向外側に突出した第2締結部を有し、
前記固定子コアには外周から径方向外側に突出した第3締結部を有し、
前記第1締結部、前記第2締結部、及び前記第3締結部のそれぞれに形成した締結孔にボルトを通し、前記第1コイル群、前記第2コイル群、及び前記固定子コアを固定したことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な地球環境保護への意識の高まりにより、自動車産業においても従来の内燃機関駆動から駆動時に温暖化ガスを排出しないモータによる電動化へのシフトが進んでいる。モータへ電気を供給するバッテリは高価で車載可能な重量が限られてしまうため、モータの高効率化が求められている。
【0003】
高効率化のためにはモータの損失を低減する必要がある。モータの損失は、コア材料の鉄損とコイルの銅損がほとんどを占めている。鉄損は使用する材料によって低減可能であるが、通常使用される電磁鋼板はその厚さやSiの含有量によって損失が変化する。電磁鋼板以外にもアモルファス材やナノ結晶材などの高機能材料を使用することも検討されているが、これらは厚さが0.025mmと非常に薄いだけでなく、硬度が高く脆いため製造上の課題が山積している。
【0004】
一方、コイルの抵抗値と電流によって決まる銅損を低減するためには、固定子のスロット内で可能な限り、コイルの断面積を確保することにより抵抗値を減らすことが有効である。このため、角線であるセグメントコイルが用いられる。モータは小型軽量化が求められることから、固定子コアから突出したセグメントコイルは折り曲げて使用される。特許文献1には、固定子コアとセグメントコイルの間に、セグメントコイルの曲げ起点となるコイル固定部材を設ける技術が開示されている。
【0005】
また、固定子の組み立て方法として特許文献2に記載の技術が提案されている。特許文献2には、固定子コアの両面にステータエンド部を配置し、このステータエンド部とセグメントコイルとを樹脂モールドして一体化した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-93224号公報
【文献】特開2006-158044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術においては、固定子コアとセグメントコイルの間に設けたコイル固定部材は、セグメントコイルを曲げる際の支点となるという点で固定子コアへの負担を低減することができる。しかしながら、セグメントコイルを曲げる方向は1方向だけではなく、径方向に互い違いとなるので、コイル固定部材に開けられる孔がセグメントコイルよりも広くなる。このため、コイル固定部材の孔とセグメントコイルに緩みが生じ、セグメントコイルを安定的に支持することが困難であった。固定子の組み立てにあたり、セグメントコイルを分割し、分割されたセグメントコイル同士をスロット内で接続する技術があるが、特許文献1に記載の技術では、組み合わせるセグメントコイルの同士の位置にばらつきが生じてしまい、組立が困難であった。
【0008】
また、セグメントコイルを分割して組み立てる特許文献2に記載の技術においては、セグメントコイルをステータエンド部と樹脂で一体化することにより、セグメントコイル同士の位置のばらつきを抑えることが可能である。しかしながら、特許文献2に記載の技術においては、セグメントコイルが樹脂で覆われているので、セグメントコイルを十分に冷却できないという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決し、コイルを安定的に支持して分割されたコイル同士の位置をスロット内で精度よく合わせることができると共に、コイルの冷却に有効な回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、直線部及び曲線部を有し断面が矩形状に形成された複数のコイルと、前記複数のコイルのそれぞれを収納する複数のスロットが形成された固定子コアと、前記固定子コアの内周側に回転可能に配置された回転子コアと、を備えた回転電機であって、前記複数のコイルのそれぞれが挿入された状態で保持され、第1コイル群を形成する第1端板と、前記複数のコイルのそれぞれが挿入された状態で保持され、第2コイル群を形成する第2端板と、を備え、前記第1端板は前記固定子コアの軸方向端面と接することにより前記第1コイル群における複数のコイルを前記複数のスロットに収納し、前記第2端板は前記第1端面とは反対側の前記固定子コアの軸方向端面と接することにより前記第2コイル群における複数のコイルを前記複数のスロットに収納し、前記第1コイル群と前記第2コイル群とは前記スロット内で接続され、前記第1端板と前記第1コイル群における複数のコイル、及び前記第2端板と前記第2コイル群における複数のコイルは、前記コイルの前記曲線部において少なくとも3つの面と接するように回転電機を構成し、さらに前記回転電機は、前記固定子コアの外周に配置され、軸方向両側が開口した筒状部材と、前記筒状部材の一方の開口を塞ぐ上蓋部材と、前記筒状部材の他方の開口を塞ぐ下蓋部材と、備え、前記上蓋部材には前記固定子コア側に延びた上押さえリブが形成され、前記下蓋部材には前記固定子コア側に延びた下押さえリブが形成され、前記上押さえリブは前記上蓋部材が前記一方の開口を塞いだ状態で前記第1端板と接し、前記下押さえリブは前記下蓋部材が前記他方の開口を塞いだ状態で前記第2端板と接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイルを安定的に支持して分割されたコイル同士の位置をスロット内で精度よく合わせることができると共に、コイルの冷却に有効な回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の第1実施例に係る固定子コアとセグメントコイルを示す斜視図である。
【
図1B】本発明の第1実施例に係るセグメントの接続状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施例に係る第1端板とセグメントコイルの関係を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施例に係るコイル群と固定子コアの組み立て状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第3実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第4実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第4実施例に係る固定子コアの部分拡大斜視図である。
【
図9】本発明の第5実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第5実施例に係るガイド部の拡大斜視図である。
【
図11】本発明の第6実施例に係るコイル群と固定子コアの組み立て状態を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第7実施例に係る軸方向に沿った回転電機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る回転電機の実施例を図面に基づいて説明する。本発明は以下の実施例に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例もその範囲に含むものである。
【実施例1】
【0014】
図1Aは本発明の第1実施例に係る固定子コアとセグメントコイルを示す斜視図、
図1Bは本発明の第1実施例に係るセグメントの接続状態を示す斜視図である。
【0015】
図1Aは本発明の第1実施例において、固定子コア101内で軸方向の中間において分割したセグメントコイルを接続する構造を示したものである。
図1Aに示すように、固定子コア101には、複数枚の電磁鋼板が積層されて構成され、径方向内側に向かって開口し、セグメントコイル111,112を収納する複数のスロット102が形成されている。スロット102には、スロット102の軸方向両側からセグメントコイル111,112が挿入されている。セグメントコイル111,112(コイル)は、U字状に形成されており、長手方向と直交する断面形状が矩形となっている。このセグメントコイル111,112は、固定子コア101の中間で接続されるように分割されている。
【0016】
セグメントコイル111,112の分割部は、
図1Bに示されるように、セグメントコイル111の凸部111aとセグメントコイル112の凹部112aを嵌め合わせることで固定される。セグメントコイル111,112の嵌め合い部分の形状は凹凸に限定されるものでは無い。凹凸の組み合わせ以外では、接続面を階段状にして段差が1つだけある形状でもよい。このとき、接続される角セグメントコイル111,112の向き合う面が固定子コア101の軸方向と平行にすることにより、セグメントコイル111,112の長さにばらつきがある場合でも、面同士が触れることで通電することが可能である。セグメントコイル111,112は、固定子コア101のスロット102内で接続できる形状であればよい。
【0017】
また、第1実施例では固定子コア101のスロット102のそれぞれには6本のセグメントコイル111,112が収納され、スロット102が周方向に並んで48個ある場合の図を示しているが、スロット内のコイル数とスロット数はこれに限定されるものでは無い。
【0018】
複数のセグメントコイル111,112は固定子コアに整列されて挿入される必要がある。この手段について
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の第1実施例に係る第1端板とセグメントコイルの関係を示す斜視図である。
【0019】
図2では、セグメントコイル111の例で説明するが、セグメントコイル112でも同様である。
図2において、セグメントコイル111は固定子コア101のスロット102に挿入する前、第1端板201によって整列させられる。第1端板201は、樹脂等の絶縁体で構成される。第1端板201には、セグメントコイル111が挿入され1本ずつ保持するための複数のコイル挿入孔201aが備えられている。コイル挿入孔201aは、第1端板201の径方向に向かって6個形成されている。さらに、6個を群としたコイル挿入孔201aが第1端板201の周方向に並んで複数設けられている。コイル挿入孔201aの1個の形状は、セグメントコイル111の挿入方向から見て矩形となっている。
図2では1スロットあたり6本のセグメントコイルを収納するためのコイル挿入孔201aを6個備えているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
第1端板201はセグメントコイル111の直線部121とコイルエンドとなる曲線部123の接続部分を覆う位置において、セグメントコイル111を保持する。すなわち、固定子コア101の端より、数ミリの位置でセグメントコイル111を保持する。セグメントコイル111のもう一方の直線部122と曲線部124も同様に第1端板201によって保持される。このとき、第1端板201の厚さは、セグメントコイル111が隣り合うセグメントコイルとのモータ軸方向において重ならない高さまでに制限される。
【0021】
また、第1端板201のコイル挿入孔201aの形状はセグメントコイル111の曲線部123または124の折れ曲がっている内周側は、コイルに沿って曲線形状となっており、外周側はセグメントコイル111をモータ軸方向から挿入するために、直線形状とする。セグメントコイル111は、長手方向と直交する断面形状が矩形となっている。第1端板201とセグメントコイル111とは、直線部121または122では4つの面で接触し、セグメントコイル111の曲線部123または124ではモータ内径側の側面とモータ外形側の側面と曲線部123または124の折れ曲がっている内径側の面の少なくとも3つの面と接触する。これらの接触面により第1端板201はセグメントコイル111を整列し保持する。
【0022】
セグメントコイル111を整列させた状態を
図3に示す。
図3は、本発明の第1実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図である。
【0023】
図3において、第1端板201の複数のコイル挿入孔201aには、複数のコイル挿入孔201aを埋めるように複数のセグメントコイル111が挿入されている。そして、これらのセグメントコイル111は第1端板201によって保持されている。第1端板201のコイル挿入孔201aに複数のセグメントコイル111が挿入された状態において、セグメントコイル111の凸部111aは径方向及び周方向に整列される。このようにして第1コイル群301aが構成される。図示はしないが、セグメントコイル112も同様である。
【0024】
次にコイル群と固定子コアの組み立て方法について、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の第1実施例に係るコイル群と固定子コアの組み立て状態を示す斜視図である。
図4は、固定子コア101のモータ軸方向の両端から第1コイル群301a,第2コイル群301bを差し込む前の様子を示している。
【0025】
図4において、第1端板201には、複数のセグメントコイル111が整列された状態で保持され、第1コイル群301aを形成している。第2端板202には、複数のセグメントコイル112が整列された状態で保持され、第2コイル群301bを形成している。
【0026】
そして、第1コイル群301aを形成するセグメントコイル111の凸部111aを固定子コア101のスロット102に合わせ、第1端板201を固定子コア101に向かって押し込む。第1端板201が固定子コア101の軸方向端面と接することにより、セグメントコイル111の一部は固定子コア101内に収納される。同様に、第2コイル群301bを形成するセグメントコイル112の凹部112aを固定子コア101のスロット102に合わせ、第2端板202を固定子コア101に向かって押し込む。第2端板202が第1端板201とは反対側の固定子コア101の軸方向端面と接することにより、セグメントコイル112の一部は固定子コア101内に収納される。第1端板201,第2端板202が固定子コア101の端面と接触すると、固定子コア101のスロット102内においてセグメントコイル111の凸部111aとセグメントコイル112の凹部112aとが嵌合される。このようにして、第1コイル群301aと第2コイル群301bとがスロット102内で接続される。
【0027】
第1実施例によれば、第1コイル群301a,第2コイル群301bの第1端板201,第2端板202を固定子コア101に押し込むだけで、固定子コイル400を精度よく組み立てることができる。また、第1実施例によれば、第1端板201,第2端板202を押さえることで第1コイル群301a,第2コイル群301bを固定することができ、作業性を向上することができる。
【0028】
第1コイル群301a,第2コイル群301bのコイルエンド部は、第1端板201,第2端板202で固定されている面から露出している。このため、第1実施例では、冷却油をコイルエンドに直接接触させることでコイルを冷却することが可能である。また、第1端板201,第2端板202は各コイルに密着しているため、冷却油の固定子コアへの浸入を抑制することができる。
【0029】
なお、第1実施例では図示していないが、固定子コア101の内周側には、回転軸を備えた回転子コアが配置されて回転電機を構成する。
【実施例2】
【0030】
次に
図5を用いて、本発明の第2実施例について説明する。
図5は、本発明の第2実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図である。第1実施例と共通するところは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0031】
第2実施例において、第1実施例と異なるところは、第1端板501に外壁部501a,501bを設けたことにある。
【0032】
図5において、セグメントコイル111は第1端板501によって保持され、第1コイル群301a構成している。第1端板501の外周側及び内周側には、固定子コア101に接する側と反対側に延びた外壁部501a,501bが形成されている。外壁部501a,501bは、第1端板501から突出したセグメントコイル111のコイルエンドの一部を覆うように配置される。コイルエンドは冷却油により冷却される。冷却油はコイルエンドの上方からかけられ、自重によって広がりコイルエンドに接触する。冷却油は自重によって落下し散逸されるので、冷却油の一部はコイルエンドに接触せずに落下してしまう可能性がある。そこで、第2実施例では第1端板501に外壁部501a,501bを設けている。自重によって落下した冷却油は、外壁部501a,501bによって捕捉され、コイルエンド側に寄せられる。第2実施例によれば、第1端板501に外壁部501a,501bを設けているので、冷却油の散逸を抑制し、コイルエンドの冷却性能を向上することができる。また、第2実施例によれば、少ない量の冷却油であっても、有効にコイルエンドに接触させることができる。
【0033】
第2実施例においては、外壁部501bの長さ(高さ)は、外壁部501aより短く(低く)しているが、外壁部501aの長さ(高さ)と同等にしても良い。
【0034】
なお、コイルエンドの冷却には、油以外に空気や不凍液など様々な流体を使用することができる。
【実施例3】
【0035】
次に
図6を用いて、本発明の第3実施例について説明する。
図6は、本発明の第3実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図である。第1実施例と共通するところは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0036】
第3実施例において、第1実施例と異なるところは、第1端板601に外壁部601a,601bを設け、第1端板601と外壁部601a,601bとで囲まれる部分に樹脂(固定材)を流し込んだことにある。第3実施例では、セグメントコイル同士の隙間に樹脂603を流し込み硬化させているので、第1端板601によって保持されたセグメントコイル111を強固に保持することができる。
【0037】
図6において、セグメントコイル111は第1端板601によって保持され、第1コイル群301a構成している。第1端板601の外周側及び内周側には、固定子コア101に接する側と反対側に延びた外壁部601a,601bが形成されている。そして、外壁部601a,601bで囲まれた第1端板601に溶融した樹脂603を流し込み、硬化させる。外壁部601a,601bは樹脂603を受ける受部となっている。
【0038】
溶融した樹脂603は、軸方向に重なり合ったセグメントコイル同士の隙間にも入り込み、第1端板601によって保持されたセグメントコイル111を強固に保持することができる。なお、セグメントコイルを固める材料は、樹脂に限定されるものでは無く、接着剤等の固定材であっても構わない。
【0039】
第3実施例によれば、第1端板601と外壁部601a,601bとで囲まれる部分に固定材を設けているので、第1端板601によって保持されたセグメントコイル111を強固に保持することができる。
【0040】
なお、第3実施例では、一方の第1端板601について説明したが、固定子コア101と挟んで対向する他方の第2端板も同様の構成である。
【実施例4】
【0041】
次に
図7及び
図8を用いて、本発明の第4実施例について説明する。
図7は、本発明の第4実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図であり、
図8は本発明の第4実施例に係る固定子コア101の部分拡大斜視図である。第1実施例と共通するところは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0042】
第4実施例において、第1実施例と異なるところは、第1端板701に窪み部702を設けたことにある。
【0043】
図7において、セグメントコイル111は第1端板701によって保持され、第1コイル群301a構成している。第1端板701の固定子コア側の面には、固定子コア101のスロット102の位置に合わせた窪み部702を設けている。セグメントコイル111は1つのスロット102内において、径方向に並んで配置される。このため、セグメントコイル111同士の絶縁性を確保するために、スロット102内には、
図8に示すように複数のセグメントコイル111のそれぞれを覆う複数の絶縁紙801が配置され、セグメントコイル111同士の絶縁距離を確保している。絶縁紙801は固定子コア101の端面から軸方向に一部が突出するように配置され、突出した部分においてもセグメントコイル111と固定子コア101との間に配置され、絶縁性を確保する。そのため、第1端板701に設ける窪み部702の形状は、絶縁紙801をスロット102内で折り曲げたときに固定子コア101の端面から突出した部分が収まる形状とする。窪み部702は複数設けられ、絶縁紙801と同じ数だけ形成されている。また、窪み部702の深さは、絶縁紙801が固定子コア101よりもモータ軸方向にはみ出る長さよりは深く、第1端板701の厚さよりは浅い値とする。ここで、セグメントコイル111間、セグメントコイル111と固定子コア101との間の絶縁を絶縁紙によって確保しているが、絶縁の方法は絶縁紙に限定されるものではない。例えば、セグメントコイル間にガイドを設けたようなスロットガイドでもよいし、ボビンを用いてもよい。
【0044】
第4実施例によれば、第1端板701の固定子コア側の面に、固定子コア101のスロット102と同形状の窪み部702を設け、絶縁紙801が収まるようにしているので、第1端板701から露出した部分のセグメントコイル111の絶縁性を確保することができる。
【0045】
なお、第4実施例では、一方の第1端板701について説明したが、固定子コア101と挟んで対向する他方の第2端板も同様の構成である。
【実施例5】
【0046】
次に
図9及び
図10を用いて、本発明の第5実施例について説明する。
図9は、本発明の第5実施例に係る第1端板に保持されたコイル群を示す斜視図であり、
図10は、本発明の第5実施例に係るガイド部の拡大斜視図である。第1実施例と共通するところは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
第5実施例において、第1実施例と異なるところは、第1端板901に第1ガイド部911を設けたことにある。
【0048】
図9において、セグメントコイル111は第1端板901によって保持され、第1コイル群301a構成している。
【0049】
図9において、第1端板901の外周側及び内周側には、固定子コア101のスロット102側に向かって延びた第1ガイド部911が形成されている。第1ガイド部911は、セグメントコイル111の本数と同数配置されており、第1端板901から固定子コア101のスロット102側に向かって延びた複数のセグメントコイル111の個々の周囲を覆うように配置される。すなわち、第1ガイド部911はセグメントコイル111同士の絶縁性を確保するものであり、第4実施例の絶縁紙801と同等の機能を有するものである。
【0050】
また、セグメントコイル112側には、上記と同様に第2ガイド部912が形成され、セグメントコイル112の周囲を一本ずつ覆うように配置される。そして、固定子コア101のスロット102内において、セグメントコイル111の凸部111aとセグメントコイル112の凹部112aが嵌合すると共に、第1ガイド部911,第2ガイド部912が嵌合する。セグメントコイルは、ガイド部によって完全に覆われていないと、絶縁距離が短くなり、絶縁性を確保できない。これを解決するための手段について、
図10を用いて説明する。
【0051】
図10において、第1ガイド部911の先端部(スロット側)には外周面から内周面に向かって一部が切欠かれ、段差状に形成された第1薄肉部911aが形成されている。また、第2ガイド部912の先端部(スロット側)には内周面から外周面に向かって一部が切欠かれ、段差状に形成された第2薄肉部912aが形成されている。
【0052】
そして、固定子コア101のスロット102内でセグメントコイル111とセグメントコイル112を突き合わせると、セグメントコイル111の凸部111aとセグメントコイル112の凹部112aとが嵌合すると共に、第1ガイド部911の第1薄肉部911aと、第2ガイド部912の第2薄肉部912aとが重なり合う。すなわち、第1薄肉部911aが滑りながら第2薄肉部912aの内周側に入り込む。
【0053】
第5実施例では、固定子コア101のスロット102内では、セグメントコイル111とセグメントコイル112とが、第1ガイド部911と第2ガイド部912とによって覆われるので、セグメントコイル間、セグメントコイルと固定子コア間における絶縁性を確保することができる。
【0054】
第5実施例においては、第1ガイド部911,第2ガイド部912の先端部に第1薄肉部911aと第2薄肉部912aを形成して、両者が重なるようにして絶縁性を確保したが、本発明はこれに限定されるものでは無い。例えば、一方のガイド部の先端部の径を広げ、その広げた部分に他方おガイド部が挿入されるようにして、両者が重なるようにしても良い。
【実施例6】
【0055】
次に
図11を用いて、本発明の第6実施例について説明する。
図11は、本発明の第6実施例に係るコイル群と固定子コアの組み立て状態を示す斜視図である。
第1実施例と共通するところは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
第6実施例において、第1実施例と異なるところは、コイル群と固定子コアとをボルトにて締結したことにある。
【0057】
図11は、固定子コア101のモータ軸方向の両端から第1コイル群301a,第2コイル群301bを差し込む前の様子を示している。
【0058】
図11において、第1端板201,第2端板202には、それぞれセグメントコイル111,112が整列され、第1コイル群301a,第2コイル群301bとして保持されている。また、第1端板201には、第1端板201の外周から径方向外側に突出した第1締結部201bが設けられている。第2端板202には、第2端板202の外周から径方向外側に突出した第2締結部202bが設けられている。さらに、固定子コア101には、固定子コア101の外周から径方向外側に突出した第3締結部101aが設けられている。第1締結部201b,第2締結部202b,第3締結部101aには、それぞれスタッドボルト1101(ボルト)を通す締結孔が形成されている。
【0059】
そして、第1コイル群301aを形成するセグメントコイル111の凸部111aを固定子コア101のスロット102に合わせ、第1端板201を固定子コア101に向かって押し込む。セグメントコイル111は固定子コア101内に挿入される。同様に、第2コイル群301bを形成するセグメントコイル112の凹部112aを固定子コア101のスロット102に合わせ、第2端板202を固定子コア101に向かって押し込む。セグメントコイル112は固定子コア101内に挿入される。第1端板201,第2端板202が固定子コア101の端面と接触すると、固定子コア101のスロット102内においてセグメントコイル111の凸部111aとセグメントコイル112の凹部112aとが嵌合される。
【0060】
この状態において、第1端板201に形成された第1締結部201bと、第2端板202に形成された第2締結部202bと、固定子コア101に形成された第3締結部101aとにそれぞれに形成された孔が、軸方向から見て一致し、この孔にスタッドボルト1101を通す。孔にスタッドボルト1101の挿入が完了したところで、スタッドボルト1101の両端からナットを締め付ける。
【0061】
第6実施例によれば、第1コイル群301a,第2コイル群301bの第1端板201,第2端板202を固定子コア101に押し込むだけで、固定子コイル400を精度よく組み立てることができる。また、第1実施例によれば、第1端板201,第2端板202を押さえることで第1コイル群301a,第2コイル群301bを固定することができ、作業性を向上することができる。さらに、第1端板201と第2端板202とで固定子コア101を挟み込み、これらの部品をスタッドボルト1101を用いて締結するようにしているので、第1コイル群301a,第2コイル群301bを固定子コア101に強固に固定することができ、信頼性を向上することができる。
【実施例7】
【0062】
次に
図12を用いて、本発明の第7実施例について説明する。
図12は、本発明の第7実施例に係る軸方向に沿った回転電機の断面図である。第1実施例と共通するところは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0063】
第7実施例において、第6実施例と異なるところは、上蓋部材141と下蓋部材142とで第1端板201,第2端板202を押えるようにしたことにある。
【0064】
図12において、固定子コア101の外周側には、固定子コア101を固定すると共に、回転電機の外郭を構成し、軸方向両側が開口した円筒状の筒状部材140が配置されている。固定子コア101に配置されるセグメントコイル111,112及び第1端板201,第2端板202の構成については、第1実施例と同じである。
【0065】
固定子コア101の内周側には、回転軸131を固定した回転子コア130が配置されている。筒状部材140の両端開口部には、開口部を塞ぐように上蓋部材141と下蓋部材142が配置されている。上蓋部材141には、固定子コア101側に延びた上押さえリブ141aが形成されている。同様に、下蓋部材142には固定子コア101側に延びた下押さえリブ142aが形成されている。また、上蓋部材141には、回転軸131を回転可能に支持する上軸受132aが固定されている。下蓋部材142には、回転軸131を回転可能に支持する下軸受132bが固定されている。回転子コア130は、回転軸131を上軸受132aと下軸受132bによって支持されることにより、固定子コア101の内側で回転可能に支持される。
【0066】
上蓋部材141は筒状部材140の一方の開口部に配置され、ボルト150によって筒状部材140に固定される。上蓋部材141は筒状部材140の一方の開口を塞ぐ。この際、上蓋部材141に形成された上押さえリブ141aは第1端板201と接触し、第1端板201の上方向(固定子コア101から離れる方向)の移動を規制する。
【0067】
下蓋部材142は筒状部材140の他方の開口部に配置され、ボルト151によって筒状部材140に固定される。下蓋部材142は筒状部材140の他方の開口を塞ぐ。この際、下蓋部材142に形成された下押さえリブ142aは第2端板202と接触し、第2端板202の下方向(固定子コア101から離れる方向)の移動を規制する。
【0068】
第7実施例によれば、上蓋部材141に形成された上押さえリブ141a及び下蓋部材142に形成された下押さえリブ142aによって第1端板201,第2端板202を押えるようにしているので、上蓋部材141及び下蓋部材142をボルト150,151を使用して筒状部材140に固定するだけでコイル群を固定子コア101に強固に固定することができ、信頼性を向上することができる。
【0069】
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0070】
101…固定子コア、101a…第3締結部、102…スロット、111,112…セグメントコイル、111a…凸部、112a…凹部、121,122…直線部、123,124…曲線部、141…上蓋部材、141a…上押さえリブ、142…下蓋部材、142a…下押さえリブ、150,151…ボルト、201,501,601,701,901…第1端板、201a…コイル挿入孔、202…第2端板、301a…第1コイル群、301b…第2コイル群、501a,501b,601a,601b…外壁部、603…樹脂、702…窪み部、801…絶縁紙、911…第1ガイド部,912…第2ガイド部、911a…第1薄肉部、912a…第2薄肉部、201b…第1締結部、202b…第2締結部、1101…スタッドボルト