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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】ボイルオフガス処理システム及び船舶
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20221121BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
B63B25/16 D
B63B25/16 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019033510
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020139519
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】寺原 貴澄
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩市
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-526595(JP,A)
【文献】国際公開第2017/192136(WO,A1)
【文献】特表2018-536116(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163717(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
B63B 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスが貯留されているタンクで発生したボイルオフガスを燃焼可能であって、蒸気を生成するボイラと、
前記タンクで発生したボイルオフガスに対して液化処理を行う再液化装置と、
前記再液化装置で液化処理が行なわれた気液混合状態のボイルオフガスを気相と液相とに分離する分離部と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを、ボイルオフガスを燃焼可能である主機用内燃機関へ導く第1配管と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを前記ボイラへ導く第2配管と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを前記主機用内燃機関へ導くか、前記ボイラへ導くかを切り換える切換部と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの窒素含有量を計測する窒素含有量計測部と、
前記窒素含有量計測部が計測した窒素含有量に基づいて、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を決定する決定部と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスが、前記決定部が決定した供給先へ供給されるように前記切換部を制御する切換制御部と、を備えたボイルオフガス処理システム。
【請求項2】
液化ガスが貯留されているタンクで発生したボイルオフガスを燃焼可能であって、蒸気を生成するボイラと、
前記タンクで発生したボイルオフガスに対して液化処理を行う再液化装置と、
前記再液化装置で液化処理が行なわれた気液混合状態のボイルオフガスを気相と液相とに分離する分離部と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを、ボイルオフガスを燃焼可能である主機用内燃機関へ導く第1配管と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを前記ボイラへ導く第2配管と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを前記主機用内燃機関へ導くか、前記ボイラへ導くかを切り換える切換部と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの熱量を計測する熱量計測部と、
前記熱量計測部が計測した熱量に基づいて、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を決定する決定部と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスが、前記決定部が決定した供給先へ供給されるように前記切換部を制御する切換制御部と、を備えたボイルオフガス処理システム。
【請求項3】
液化ガスが貯留されているタンクで発生したボイルオフガスを燃焼可能であって、蒸気を生成するボイラと、
前記タンクで発生したボイルオフガスに対して液化処理を行う再液化装置と、
前記再液化装置で液化処理が行なわれた気液混合状態のボイルオフガスを気相と液相とに分離する分離部と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを、ボイルオフガスを燃焼可能である主機用内燃機関へ導く第1配管と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを前記ボイラへ導く第2配管と、
前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを前記主機用内燃機関へ導くか、前記ボイラへ導くかを切り換える切換部と、
前記ボイラの圧力を計測する圧力計測部と、
前記ボイラにおいて火炎を形成する場合に、前記圧力計測部が計測した圧力に基づいて、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を決定する決定部と、
前記決定部が決定した供給先へボイルオフガスが供給されるように前記切換部を制御する切換制御部と、を備え、
前記決定部は、前記圧力計測部が計測した圧力が、所定の閾値よりも低い場合に、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を前記ボイラに決定するボイルオフガス処理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかの記載のボイルオフガス処理システムを備えた船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイルオフガス処理システム及び船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LNG(Liquefied Natural Gas)やLPG(Liquefied Petroleum Gas)等の液化ガスを運搬する船舶では、液化ガスを貯留しているタンク内で液化ガスが蒸発し、ボイルオフガスが発生する。タンク内でボイルオフガスが発生すると、タンク内の圧力が高まって所定の圧力を超えてしまう可能性がある。このため、液化ガスを運搬する船舶には、タンクから取り出したボイルオフガスに対して再液化処理を施す再液化装置が設けられている。再液化装置で液化処理を施されたボイルオフガスは、すべてが液化せずに気液混合状態となる場合がある。このため、液化処理を施した後の気液混合状態のボイルオフガスに対して気液分離処理を施し、気相と液相とに分離する場合がある(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1には、LNGタンクから発生するBOGが、BOGコンプレッサにより圧縮された後、熱交換器により冷却されて再液化するようになっている装置が記載されている。この装置では、熱交換器の液化部で、BOGが飽和状態まで冷却され、その下流側に設けられた気液分離ドラムで、飽和状態にある液から非凝縮成分が分離される。そして、これにより得られた窒素リッチガスは適宜に抜き出されて、ボイラで処理される。
【0004】
特許文献2には、LNG貯槽から発生するBOGを再液化装置で再液化して窒素分離器で液化メタンと混合ガスとに分離する装置が記載されている。この装置では、窒素ガス含有率が基準範囲外となるときのみ窒素ガスを含む混合ガスを系外に排出され、ボイラ槽で燃焼される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3908881号公報
【文献】特開2000-338093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載の装置では、分離された気相のボイルオフガスを主機用内燃機関で利用することを考慮していない。このような装置において、分離装置で分離された気相のボイルオフガスを主機用内燃機関で利用する場合には、分離された気相のボイルオフガスの全量を主機用内燃機関へ供給することとなる。しかしながら、分離された気相のボイルオフガスの成分や、主機用内燃機関の運転状態によっては、分離された気相のボイルオフガスを主機用内燃機関で好適に燃焼させることができない場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、再液化された気液混合状態のボイルオフガスから分離された気相のボイルオフガスを所望の装置へ供給することで、好適に燃焼させることができるボイルオフガス処理システム及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のボイルオフガス処理システム及び船舶は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係るボイルオフガス処理システムは、液化ガスが貯留されているタンクで発生したボイルオフガスを燃焼可能であって、蒸気を生成するボイラと、前記タンクで発生したボイルオフガスに対して液化処理を行う再液化装置と、前記再液化装置で液化処理が行なわれた気液混合状態のボイルオフガスを気相と液相とに分離する分離部と、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを、ボイルオフガスを燃焼可能である主機用内燃機関とへ導く第1配管と、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを前記ボイラへ導く第2配管と、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスを前記主機用内燃機関へ導くか、前記ボイラへ導くかを切り換える切換部と、を備えている。
【0009】
上記構成では、分離部で分離された気相のボイルオフガス(以下、「分離ガス」という。)を主機用内燃機関へ導く第1配管と、分離ガスをボイラへ導く第2配管とを備えている。これにより、分離ガスを、主機用内燃機関とボイラとの何れにも導くことができる。したがって、分離ガスを、燃焼処理できるとともに、主機用内燃機関及び/またはボイラで燃料として利用することができる。よって、分離ガスを利用しない場合と比較して、システム全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0010】
また、分離ガスを主機用内燃機関へ導くか、ボイラへ導くかを切り換える切換部を備えている。これにより、分離ガスを、主機用内燃機関及びボイラのいずれかの装置のうち、所望の装置へ導くことができる。したがって、例えば、主機用内燃機関及びボイラの運転状態や、分離ガスの成分等に応じた供給先へ分離ガスを導くことができる。よって、主機用内燃機関及びボイラで好適に分離ガスを燃焼させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係るボイルオフガス処理システムは、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの窒素含有量を計測する窒素含有量計測部と、前記窒素含有量計測部が計測した窒素含有量に基づいて、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を決定する決定部と、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスが、前記決定部が決定した供給先へ供給されるように前記切換部を制御する切換制御部と、を備えていてもよい。
【0012】
上記構成では、分離ガスの窒素含有量を計測し、計測した窒素含有量に基づいて供給先を決定している。これにより、分離ガスの供給先を、窒素含有量の観点から適切な供給先とすることができる。したがって、例えば、分離ガスが、窒素含有量の観点から主機用内燃機関で好適に燃焼させることができないガスである場合に、分離ガスをボイラに導くことで、分離ガスを燃焼処理することができるとともに、燃焼処理に伴って生じたエネルギを蒸気の生成に利用することができる。よって、燃焼処理に伴って生じたエネルギを利用しない構成と比較して、エネルギ効率を向上させることができる。このように、上記構成では、分離ガスを窒素含有量に応じた供給先へ導くことができるとともに、エネルギ効率を向上させることができる。
【0013】
また、主機用内燃機関で好適に燃焼させることができない分離ガスを燃焼処理するために、分離ガスを処理するための専用の燃焼装置(以下、「燃焼処理装置」という。)を設けることも考えらえる。このような燃焼処理装置を設けた構成では、蒸気を生成する必要がある場合に、燃焼処理装置及びボイラの両方を設ける必要がある。一方、上記構成では、主機用内燃機関で好適に燃焼させることができない分離ガスをボイラで燃焼させるとともに、蒸気を生成することができる。これにより、燃焼処理装置を設けない構成とすることができる。したがって、燃焼処理装置を設ける場合と比較して、構成を簡素化することができる。
【0014】
なお、決定部が行う窒素含有量に基づく決定は、窒素含有量が所定の閾値を超えているか否かによって行われてもよい。すなわち、決定部は、窒素含有量計測部が計測した窒素含有量が、所定の閾値を超えていた場合に、分離ガス(分離部で分離された気相のボイルオフガス)の供給先をボイラに決定してもよい。このように構成することで、分離ガスの供給先を、窒素含有量の観点からより適切な供給先とすることができる。すなわち、分離ガスの窒素含有量が多く、主機用内燃機関で好適に燃焼させることができない場合に、分離ガスを主機用内燃機関へ導かないようにすることができる。所定の閾値とは、例えば、主機用内燃機関が、好適に燃焼させることができる燃料の窒素含有量の上限値が挙げられる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るボイルオフガス処理システムは、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの熱量を計測する熱量計測部と、前記熱量計測部が計測した熱量に基づいて、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を決定する決定部と、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスが、前記決定部が決定した供給先へ供給されるように前記切換部を制御する切換制御部と、を備えていてもよい。
【0016】
上記構成では、分離ガスの熱量を計測し、計測した熱量に基づいて供給先を決定している。これにより、分離ガスの供給先を、熱量の観点から適切な供給先とすることができる。したがって、例えば、分離ガスが、熱量の観点から主機用内燃機関で好適に燃焼させることができないガスである場合に、分離ガスをボイラに導くことで、分離ガスを燃焼処理することができるとともに、燃焼処理に伴って生じたエネルギを蒸気の生成に利用することができる。よって、燃焼処理に伴って生じたエネルギを利用しない構成と比較して、エネルギ効率を向上させることができる。このように、上記構成では、分離ガスを熱量に応じた供給先へ導くことができるとともに、エネルギ効率を向上させることができる。
【0017】
また、主機用内燃機関で好適に燃焼させることができない分離ガスを燃焼処理するために、燃焼処理装置を設けることも考えらえる。このような燃焼処理装置を設けた構成では、蒸気を生成する必要がある場合に、燃焼処理装置及びボイラの両方を設ける必要がある。一方、上記構成では、主機用内燃機関で好適に燃焼させることができない分離ガスをボイラで燃焼させるとともに、蒸気を生成することができる。これにより、燃焼処理装置を設けない構成とすることができる。したがって、燃焼処理装置を設ける場合と比較して、構成を簡素化することができる。
【0018】
すなわち、決定部は、熱量計測部が計測した熱量が、所定の閾値を超えていた場合に、分離ガス(分離部で分離された気相のボイルオフガス)の供給先を主機用内燃機関に決定してもよい。このように構成することで、分離ガスの供給先を、熱量の観点からより適切な供給先とすることができる。すなわち、分離ガスの熱量が多く、主機用内燃機関で好適に燃焼させることができるガスであった場合に、当該ボイルオフガスを主機用内燃機関へ導くことができる。所定の閾値とは、例えば、主機用内燃機関が、好適に燃焼を行うことができる燃料の熱量の下限値が挙げられる。
【0019】
また、本発明の一態様に係るボイルオフガス処理システムは、前記ボイラの圧力を計測する圧力計測部と、前記ボイラにおいて火炎を形成する場合に、前記圧力計測部が計測した圧力に基づいて、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を決定する決定部と、前記決定部が決定した供給先へボイルオフガスが供給されるように前記切換部を制御する切換制御部と、を備え、前記決定部は、前記圧力計測部が計測した圧力が、所定の閾値よりも低い場合に、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を前記ボイラに決定してもよい。
【0020】
上記構成では、ボイラの圧力が所定の閾値よりも低い場合に、分離ガスの供給先をボイラに決定している。これにより、ボイラ内において好適に蒸気が生成されていない場合に、分離ガスをボイラへ導くことができる。したがって、ボイラにおいて好適に安定的に蒸気を生成することができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係るボイルオフガス処理システムは、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を決定する決定部と、前記決定部が決定した供給先へボイルオフガスが供給されるように前記切換部を制御する切換制御部と、を備え、前記決定部は、前記ボイラにおいて火炎を形成する場合に、前記分離部で分離された気相のボイルオフガスの供給先を前記ボイラに決定してもよい。
【0022】
上記構成では、ボイラにおいて火炎を形成する場合に、分離ガスの供給先をボイラに決定している。これにより、ボイラにおいて火炎を形成する際に、優先的に分離ガスを燃料とすることができる。したがって、火炎を形成するための他の燃料の使用量を低減することができる。
【0023】
本発明の一態様に係る船舶は、上記いずれかに記載のボイルオフガス処理システムを備えている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、再液化された気液混合状態のボイルオフガスから分離された気相のボイルオフガスを所望の装置へ導くことで、好適に燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る船舶の概略を示した構成図である。
図2図1の船舶に設けられるボイルオフガス処理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係るボイルオフガス処理システム及び船舶の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るボイルオフガス処理システム4は、LNG(Liquefied Natural Gas)を運搬する船舶1に適用されている。なお、船舶1が運搬する対象はLNGに限定されず、例えば、LPG(Liquefied Petroleum Gas)等の他の液化ガスであってもよい。
【0027】
船舶1は、主機用エンジン(主機用内燃機関)2と、LNG(液化ガス)を貯留するタンク3と、タンク3で発生したボイルオフガスを処理するボイルオフガス処理システム4と、船内で使用する電気を発電する発電用ディーゼルエンジン5と、発電用ディーゼルエンジン5から排出される排ガスの熱を利用して蒸気を生成するエコノマイザ6と、を備えている。
【0028】
主機用エンジン2は、燃料油及び燃料ガスの両方を燃料として燃焼させることができる2ストロークのエンジンである。主機用エンジン2は、燃料油(例えば、重油等)または燃焼ガス(例えば、LNG等)を燃焼させることで、駆動部(図示省略)を駆動する。駆動部は、主機用エンジン2からの駆動力によって、船舶1に推進力を与える図示省略の推進器(例えば、スクリュー等)を回転駆動する。
【0029】
タンク3は、複数(本実施形態では、一例として4つ)設けられている。各タンク3は、例えば、アルミニウム製であって、その内部に、LNGを貯留することができるように構成されている。各タンク3の上部には、ボイルオフガスを外部へと排出する排出配管3aが設けられている。
【0030】
ボイルオフガス処理システム4は、タンク3から排出されたボイルオフガスを主機用エンジン2へ供給する供給配管11と、供給配管11を流通するボイルオフガスを圧縮する圧縮部12と、ボイルオフガスに対して液化処理を施す再液化装置13と、液化処理が施された気液混合状態のボイルオフガスを気液分離する気液分離器(分離部)14と、蒸気を生成するボイラ15と、を備えている。
【0031】
供給配管11は、各タンク3に設けられた排出配管3aを介して流入したボイルオフガスを、主機用エンジン2へと供給している。すなわち、供給配管11は、タンク3と主機用エンジン2とを接続している。供給配管11には、上述するように、供給配管11内を流通するボイルオフガスを圧縮する圧縮部12が設けられている。
【0032】
供給配管11は、圧縮部12の下流側から発電用エンジン供給配管16が分岐している。発電用エンジン供給配管16は、供給配管11を流通するボイルオフガスの一部を発電用ディーゼルエンジン5へ供給している。また、供給配管11は、発電用エンジン供給配管16の分岐位置よりも下流側から循環配管17が分岐している。循環配管17には、循環配管弁17aが設けられている。循環配管弁17aは、開度を調整することで、循環配管17内を流通するボイルオフガスの流量を調整することができる。なお、循環配管弁17aは、全閉状態及び全開状態とすることもできる。
【0033】
供給配管11は、圧縮部12の上流側からボイラ供給配管19が分岐している。ボイラ供給配管19は、下流端がボイラ15に設けられたバーナ(図示省略)に接続されている。ボイラ供給配管19は、供給配管11を流通するボイルオフガスの一部をボイラ15(詳細には、バーナ)へ供給可能に構成されている。ボイラ供給配管19には、第1バルブ19aが設けられている。第1バルブ19aは、開度を調整することで、ボイラ供給配管19内を流通するボイルオフガスの流量を調整することができる。なお、第1バルブ19aは、全閉状態及び全開状態とすることもできる。
【0034】
圧縮部12は、供給配管11を流通するボイルオフガスを圧縮する複数(本実施形態では、一例として5台)の高圧用圧縮機12aを有している。5台の高圧用圧縮機12aは、直列に並んで設けられている。すなわち、圧縮部12では多段圧縮を行っており、これにより、ボイルオフガスの圧力を300kg/cmまで昇圧している。
【0035】
高圧用圧縮機12a同士を接続する配管からは、抽気配管20が分岐している。詳細には、抽気配管20は、上流側から数えて2台目の高圧用圧縮機12aと、3台目の高圧用圧縮機12aとを接続する配管から分岐している。抽気配管20は、高圧用圧縮機12a同士を接続する配管内を流通するボイルオフガスの一部を抽気し、抽気したボイルオフガスを再液化装置13へ供給する。抽気配管20には、抽気配管弁20aが設けられている。抽気配管弁20aは、開度を調整することで、抽気配管20内を流通するボイルオフガスの流量を調整することができる。なお、抽気配管弁20aは、全閉状態及び全開状態とすることもできる。
【0036】
再液化装置13は、抽気配管20からボイルオフガスが供給される複数(本実施形態では、一例として3台)の液化用圧縮機21と、液化用圧縮機21で圧縮したボイルオフガスを冷却する熱交換器22と、熱交換器22で冷却したボイルオフガスの一部を膨張させる膨張タービン23と、液化用圧縮機21及び膨張タービン23を駆動するモータ24と、を有している。
【0037】
液化用圧縮機21同士は、配管21aによって接続されている。また、3台の液化用圧縮機21は、直列に並んで設けられている。すなわち、3台の液化用圧縮機21は、多段圧縮を行い、ボイルオフガスを昇圧している。また、3台の液化用圧縮機21は、1つの駆動軸25で連結されている。この駆動軸25は、膨張タービン23及びモータ24と連結しており、モータ24の駆動力によって回転駆動する。最も下流側の液化用圧縮機21から排出されたボイルオフガスは、第1再液化配管26を介して、熱交換器22へ供給される。
【0038】
熱交換器22は、液化用圧縮機21で圧縮されたボイルオフガスと、膨張タービン23で膨張したボイルオフガス及び気液分離器14で分離された気相のボイルオフガスと、熱交換する。液化用圧縮機21で圧縮されたボイルオフガスは、熱交換により冷却され、一部が凝縮(液化)し、気液混合状態となる。熱交換器22から排出された気液混合状態のボイルオフガス(詳細には、ボイルオフガスと再液化されたLNGとが混合した流体)は、第2再液化配管27を介して、気液分離器14へ供給される。第2再液化配管27には、再液化配管弁27aが設けられている。再液化配管弁27aは、開度を調整することで、第2再液化配管27内を流通するボイルオフガスの流量を調整することができる。なお、再液化配管弁27aは、全閉状態及び全開状態とすることもできる。
【0039】
熱交換器22内では、圧縮されたボイルオフガスが流通する配管から、抽出配管28が分岐している。抽出配管28は、ある程度熱交換を終えて冷却されたボイルオフガスの一部を抽出し、膨張タービン23へ供給する。
【0040】
膨張タービン23は、駆動軸25に連結されていて、駆動軸25を介して伝達されるモータ24の駆動力によって回転する。また、膨張タービン23は、供給されたボイルオフガスを断熱膨張させ、降温させる。膨張タービン23で膨張したボイルオフガス(以下、「冷却源ガス」という。)は、第1冷却源ガス配管29を介して、熱交換器22へ供給される。熱交換器22へ供給された冷却源ガスは、液化用圧縮機21で圧縮されたボイルオフガスと熱交換することで、圧縮されたボイルオフガスを冷却する。熱交換器22から排出された冷却源ガスは、第2冷却源ガス配管30を介して、抽気配管20へ流入する。すなわち、第2冷却源ガス配管30の下流端は、抽気配管20の途中位置に接続している。詳細には、第2冷却源ガス配管30の下流端は、抽気配管20のうち、抽気配管弁20aと再液化装置13との間に接続している。
【0041】
気液分離器14は、ドラム状に構成されており、供給された気液混合状態のボイルオフガスを気相と液相(再液化されたLNG)とに分離する。
【0042】
気液分離器14の下部には、LNG配管31が接続されている。LNG配管31は、各タンク3と接続されており、気液分離器14で分離されたLNGを各タンク3へ供給する。また、LNG配管31には、途中位置にポンプ31aが設けられており、ポンプ31aの駆動力によって、LNGが流通する。また、LNG配管31には、ポンプ31aをバイパスするように、再循環配管32が設けられている。再循環配管32では、ポンプ31aから吐出されたLNGの一部をポンプ31aの上流側のLNG配管31へ循環させることで、ポンプ31a内にLNGが一定の流量以下とならないようにしている。再循環配管32には、再循環配管弁32aが設けられている。再循環配管弁32aは、開度を調整することで、再循環配管32内を流通するLNGの流量を調整することができる。なお、再循環配管弁32aは、全閉状態及び全開状態とすることもできる。
【0043】
気液分離器14の上部には、分離ガス配管33が接続されている。分離ガス配管33は、内部に気液分離器14で分離された気相のボイルオフガス(以下、「分離ガス」という。)が流通しており、分離ガスをボイラ15及び主機用エンジン2へ導くための配管である。分離ガス配管33は、気液分離器14とボイラ供給配管19とを接続している。すなわち、分離ガス配管33の下流端は、ボイラ供給配管19の途中位置に接続している。詳細には、分離ガス配管33の下流端は、第1バルブ19aと、ボイラ15との間に接続している。また、分離ガス配管33の途中位置には、熱交換器22が設けられている。熱交換器22へ供給された分離ガスは、液化用圧縮機21で圧縮されたボイルオフガスと熱交換することで、圧縮されたボイルオフガスを冷却する。分離ガス配管33の熱交換器22よりも上流側には、分離ガス配管弁34が設けられている。分離ガス配管弁34は、開度を調整することで、分離ガス配管33内を流通する分離ガスの流量を調整することができる。なお、分離ガス配管弁34は、全閉状態及び全開状態とすることもできる。
【0044】
また、分離ガス配管33には、熱交換器22の下流側に、熱量計35(熱量計測部)及び第2バルブ33aが設けられている。熱量計35は、第2バルブ33aよりも上流側に設けられている。熱量計35は、分離ガス配管33は、供給配管11の内部を流通するボイルオフガスの熱量を計測する。熱量計35は、計測した熱量を制御装置50へ送信する。第2バルブ33aは、開度を調整することで、分離ガス配管33内を流通する分離ガスの流量を調整することができる。なお、第2バルブ33aは、全閉状態及び全開状態とすることもできる。
【0045】
また、分離ガス配管33の途中位置からは、分岐配管36が分岐している。詳細には、分離ガス配管33の内、熱量計35と第2バルブ33aとの間から、分岐配管36が分岐している。分岐配管36は、内部に分岐ガスが流通し、分離ガス配管33と供給配管11とを接続している。すなわち、分岐配管36の下流端は、供給配管11に接続されている。詳細には、分岐配管36の下流端は、供給配管11のうち、ボイラ供給配管19の分岐位置よりも上流側に接続している。分岐配管36には、第3バルブ36aが設けられている。第3バルブ36aは、開度を調整することで、分岐配管36内を流通するボイルオフガスの流量を調整することができる。なお、第3バルブ36aは、全閉状態及び全開状態とすることもできる。
【0046】
このように、本実施形態のボイルオフガス処理システム4では、分離ガス配管33及びボイラ供給配管19の一部によって、分離ガスをボイラ15へ導くことができる。また、分離ガス配管33の一部、分岐配管36及び供給配管11の一部によって、分離ガスを主機用エンジン2へ導くことができる。また、分離ガス配管33に設けられている第2バルブ33a及び分岐配管36に設けられている第3バルブ36aの開閉を制御することで、分離ガスをボイラ15へ導くか、主機用エンジン2へ導くかを切り換えることができる。
【0047】
ボイラ15は、火炉38と、火炉38内に火炎を形成するバーナ(図示省略)と、上方に配置された蒸気ドラム39と、下方に配置された水ドラム40と、蒸気ドラム39と水ドラム40とを接続する配管(図示省略)と、を有している。バーナは、燃料油及び燃料ガスの両方を燃料可能とされている。バーナには、ボイラ供給配管19を介して、ボイルオフガス又は分離ガスが供給される。また、バーナには、燃料油配管(図示省略)を介して、燃料油が供給される。バーナは、燃料油や燃焼ガス(ボイルオフガス等)もしくはその両方を燃焼させることで、火炉38内に火炎を形成する。バーナによって火炉38内に火炎が形成されると、ボイラ15内の給水が加熱される。給水が加熱されると、加熱された給水が下方の水ドラム40からボイラ配管(図示省略)を介して、上方の蒸気ドラム39へと上昇する。蒸気ドラム39では、気液が分離される。分離された蒸気は、ボイラ蒸気供給管(図示省略)を介して、蒸気を必要とする各機器へ供給される。蒸気ドラム39には、蒸気ドラム39内の蒸気圧力を計測する圧力計(圧力計測部)41が設けられている。圧力計41は、計測した蒸気ドラム39内の蒸気圧力を制御装置50へ送信する。
【0048】
エコノマイザ6は、発電用ディーゼルエンジン5から排出された燃焼排ガスと水とを熱交換させることで蒸気を生成する。エコノマイザ6と蒸気ドラム39とは蒸気配管42によって接続されている。エコノマイザ6で生成された気液混合状態の流体は、蒸気配管42を介して蒸気ドラム39へ供給され、蒸気ドラム39で気液分離される。蒸気ドラム39において、分離された蒸気は、ボイラ蒸気供給管(図示省略)を介して各機器へ供給される。また、水ドラム40とエコノマイザ6とは、給水配管43によって接続されている。水供給管は、途中位置に設けられたポンプ44によって、水ドラム40内の水をエコノマイザ6に供給している。
【0049】
また、船舶1には、制御装置50が設けられている。
制御装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0050】
制御装置50は、ボイルオフガス処理システム4に設けられた各弁(第1バルブ19aから第3バルブ36aを含む)の開度を0%から100%の間で制御可能とされている。制御装置50は、図2に示すように、熱量計35が計測した熱量に基づいて分離ガスの供給先を決定する決定部51と、決定部51が決定した供給先へ分離ガスが供給されるように第2バルブ33a及び第3バルブ36aを制御する切換制御部52と、所定の閾値を記憶している記憶部53と、を有している。記憶部が記憶する所定の閾値とは、例えば、主機用エンジン2が、好適に燃焼を行うことができる燃料の熱量の下限値が挙げられる。
決定部51は、分離ガスの熱量(熱量計35で計測した熱量)が、記憶部53が記憶している所定の閾値以上の場合に、分離ガスの供給先を主機用エンジン2に決定し、所定の閾値よりも少ない場合に、分離ガスの供給先をボイラ15に決定する。
【0051】
切換制御部52は、決定部51が分離ガスの供給先を主機用エンジン2に決定すると、分離ガス配管33に設けられている第2バルブ33aを全閉状態(開度0%の状態)とするとともに、分岐配管36に設けられている第3バルブ36aを全開状態(開度100%の状態)とする。また、このとき、ボイラ供給配管19に設けられた第1バルブ19aを全閉状態とする。
切換制御部52は、決定部51が分離ガスの供給先をボイラ15に決定すると、分離ガス配管33に設けられている第2バルブ33aを全開状態とするとともに、分岐配管36に設けられている第3バルブ36aを全閉状態とする。また、このとき、ボイラ供給配管19に設けられた第1バルブ19aを全閉状態とする。
【0052】
次に、本実施形態に係るボイルオフガスの処理方法及びボイルオフガスの流れについて図1を用いて説明する。
各タンク3で発生したボイルオフガスは、各タンク3内の圧力が所定の圧力を超えると、排出配管3aを介して供給配管11に流入する。供給配管11に流入したボイルオフガスは、供給配管11内を流通する。このとき、ボイラ供給配管19の第1バルブ19aが開状態の場合には、ボイルオフガスの一部がボイラ供給配管19へ流入する。ボイラ供給配管19へ流入したボイルオフガスは、ボイラ15へ供給され、燃料として燃焼される。
【0053】
一方、ボイラ供給配管19へ流入しなかったボイルオフガスは、供給配管11内を流通し、圧縮部12で圧縮される。圧縮部12で圧縮されたボイルオフガスは、供給配管11内を流通し、主機用エンジン2へ供給され、燃料として燃焼される。圧縮部12で圧縮されたボイルオフガスの一部は、発電用エンジン供給配管16へ流入し、発電用エンジンへ供給される。また、主機用エンジン2でボイルオフガスを必要としていない場合には、循環配管17に設けられた循環配管弁17aを開状態とし、ボイルオフガスを、循環配管17を介して供給配管11へ戻す。
【0054】
ボイルオフガスを再液化する際には、抽気配管20に設けられた抽気配管弁20aを開状態とする。これにより、圧縮部12で所定の圧力まで圧縮されたボイルオフガスが、抽気配管20を介して再液化装置13へ供給される。再液化装置13では、ボイルオフガスが3台の液化用圧縮機21で圧縮される。圧縮されたボイルオフガスは、第1再液化配管26を介して熱交換器22に供給される。熱交換器22では、ボイルオフガスと、冷却源ガス及び分離ガスとが熱交換する。これにより、ボイルオフガスは、冷却され一部が凝縮(液化)し、気液混合状態となる。熱交換器22から排出された気液混合状態のボイルオフガス(詳細には、ボイルオフガスと再液化されたLNGとが混合した流体)は、第2再液化配管27を介して、気液分離器14へ供給される。
【0055】
気液分離器14では、気液混合状態のボイルオフガスを気相(分離ガス)と液相(再液化されたLNG)とに分離する。なお、ボイルオフガスには窒素が含まれているが、窒素は他の成分(メタン等)と比較して液化し難いため、気液分離された気相(分離ガス)は窒素含有量が多い気体となる。
再液化されたLNGは、LNG配管31を介して、各タンク3へ導かれる。このようにして、ボイルオフガスは再液化され、タンク3へ戻される。一方、分離ガスは、分離ガス配管33を介して熱交換器22へ供給される。熱交換器22で熱交換を終えた分離ガスは、分離ガス配管33内を流通する。分離ガス配管33内を流通する分離ガスは、供給先がボイラ15である場合(すなわち、第2バルブ33aが開状態であって、第3バルブ36aが閉状態の場合)には、ボイラ供給配管19を介して、ボイラ15へ供給され、燃料として燃焼される。供給先が主機用エンジン2である場合(すなわち、第2バルブ33aが閉状態であって、第3バルブ36aが開状態の場合)には、分岐配管36を介して、供給配管11に流入する。供給配管11に流入すると、圧縮部12等を介して主機用エンジン2へ導かれる。
【0056】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、気液分離器14で分離された分離ガスを、主機用エンジン2とボイラ15との何れにも導くことができる。したがって、分離ガスを、燃焼処理できるとともに、主機用エンジン2及び/またはボイラ15で燃料として利用することができる。よって、分離ガスを利用しない構成(分離ガスをGCU(Gas Combustion Unit)等で燃焼処理する構成)と比較して、システム全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0057】
また、第2バルブ33a及び第3バルブ36aによって、分離ガスを主機用エンジン2へ導くか、ボイラ15へ導くかを切り換えることができる。これにより、分離ガスを、主機用エンジン2及びボイラ15のいずれかの装置のうち、所望の装置へ導くことができる。したがって、例えば、主機用エンジン2及びボイラ15の運転状態や、分離ガスの成分等に応じた供給先へ分離ガスを導くことができる。よって、主機用エンジン2及びボイラ15で好適に分離ガスを燃焼させることができる。
【0058】
上述のように、窒素は液化にしにくいため、分離ガスは、窒素含有量が大きくなる傾向にある。したがって、窒素含有量が大きいガスは、熱量が低くなるとともに、主機用エンジン2で好適に燃焼させることができない場合がある。
本実施形態では、熱量計35で分離ガスの熱量を計測し、計測した熱量に基づいて供給先を決定している。これにより、分離ガスの供給先を、熱量の観点から適切な供給先とすることができる。
【0059】
詳細には、本実施形態では、分離ガスの熱量(熱量計35で計測した熱量)が、記憶部53が記憶する所定の閾値よりも多い場合に、分離ガスの供給先を主機用エンジン2に決定している。これにより、分離ガスの熱量が多く、主機用エンジン2で分離ガスを好適に燃焼させることができる場合には、分離ガスを主機用エンジン2へ導いて好適に燃焼させることができる。
一方、分離ガスの熱量が小さく、主機用エンジン2で分離ガスを好適に燃焼させることができない場合(換言すれば、分離ガスの熱量が、記憶部53が記憶する所定の閾値よりも少ない場合)には、分離ガスをボイラ15に導くことで、分離ガスを燃焼処理することができるとともに、燃焼処理に伴って生じたエネルギを蒸気の生成に利用することができる。
このように、本実施形態では、熱量に応じた供給先へ分離ガスを導くことができる。また、何れの供給先へ分離ガスを供給した場合であっても、燃焼で生じるエネルギを利用することができるので、エネルギ効率を向上させることができる。
【0060】
また、主機用エンジン2で好適に燃焼させることができない分離ガスを燃焼処理するためだけに用いられるGCU(Gas Combustion Unit)等の燃焼処理装置を設けることも考えらえる。しかしながら、船舶1は、船内で使用する蒸気を生成する必要がある場合には、船内で使用する蒸気を生成するためのボイラを設けることがある。このような場合に、燃焼処理装置を設けた構成では、船舶1に燃焼処理装置及びボイラの両方を設ける必要がある。一方、本実施形態では、主機用エンジン2で好適に燃焼させることができない分離ガスをボイラ15で燃焼させるとともに、蒸気を生成することができる。これにより、燃焼処理装置を設けない構成とすることができる。したがって、燃焼処理装置を設ける構成と比較して、構成を簡素化することができる。
【0061】
〔変形例〕
次に、本実施形態の変形例について説明する。
本変形例では、熱量計35の代わりに、分離ガス配管33に分離ガスの窒素含有量を計測する窒素含有量計測機(窒素含有量計測部)を設けられている点、及び、記憶部53が所定の閾値として、主機用エンジン2が、好適に燃焼させることができる燃料の窒素含有量の上限値を記憶している点で、上記実施形態と異なる。また、分離ガスの窒素含有量が所定の閾値よりも少ない場合に、決定部51が分離ガスの供給先を主機用エンジン2に決定している点で上記実施形態と異なっている。
【0062】
本変形例によれば、分離ガスの供給先を、窒素含有量の観点から適切な供給先とすることができる。詳細には、本変形例では、分離ガスの窒素含有量が、記憶部53が記憶する所定の閾値よりも多い場合に、分離ガスの供給先をボイラ15に決定している。これにより、分離ガスの窒素含有量が多く、主機用エンジン2で分離ガスを好適に燃焼させることができない場合には、分離ガスをボイラ15で好適に燃焼させることができる。また、分離ガスの窒素含有量が、記憶部53が記憶する所定の閾値よりも少ない場合に、分離ガスの供給先を主機用エンジン2に決定している。これにより、分離ガスの窒素含有量が少なく、主機用エンジン2で分離ガスを好適に燃焼させることができる場合には、分離ガスを主機用エンジン2で好適に燃焼させることができる。
【0063】
上述のように、窒素は液化にしにくく、分離ガスは窒素含有量が大きくなる傾向にあるため、窒素含有量の観点から供給先を決定することで、より直接的に分離ガスの成分に応じた供給先へ分離ガスを供給することができる。したがって、分離ガスの供給先を、窒素含有量の観点からより適切な供給先とすることができる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
【0065】
例えば、エコノマイザ6で蒸気を生成するだけではなく、ボイラ15の火炉38で火炎を形成し、ボイラ15でも蒸気を生成する場合(すなわち、ボイラ15で追い焚きを行う場合)に、ボイラ15の蒸気ドラム39内の蒸気圧力を計測する圧力計41の計測結果に基づいて、分離ガスの供給先を決定してもよい。詳細には、決定部51は、圧力計41が計測した圧力が、所定の閾値よりも低い場合に、分離ガスの供給先をボイラ15に決定してもよい。所定の閾値とは、例えば、船内で要求される蒸気量を賄うことができるとされている設定値が挙げられる。また、所定の閾値ではなく、船内で要求されている蒸気量を逐次取得し、要求蒸気量に応じた圧力よりも低い場合に、分離ガスの供給先をボイラ15に決定してもよい。
【0066】
このように構成することで、ボイラ15内において好適に蒸気が生成されていない場合に、分離ガスをボイラ15へ導くことができる。したがって、ボイラ15において好適に安定的に蒸気を生成することができる。
【0067】
また、ボイラ15で追い焚きを行う場合に、分離ガスの供給先をボイラ15に決定してもよい。換言すれば、ボイラ15の追い焚き時には、ボイラ15の燃料として、燃料油配管(図示省略)を介して供給される燃料油及びボイラ供給配管19を介して供給されるボイルオフガスよりも、優先的に分離ガスを用いるようにしてもよい。
このように構成することで、火炎を形成するための他の燃料(燃料油やボイラ供給配管19を介して供給されるボイルオフガス)の使用量を低減することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、制御装置50によって、第1バルブ19aから第3バルブ36aを操作する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、オペレータの操作によって、第1バルブ19aから第3バルブ36aの開閉状態を切り換えてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 :船舶
2 :主機用エンジン
3 :タンク
3a :排出配管
4 :ボイルオフガス処理システム
5 :発電用ディーゼルエンジン
6 :エコノマイザ
11 :供給配管
12 :圧縮部
12a :高圧用圧縮機
13 :再液化装置
14 :気液分離器
15 :ボイラ
16 :発電用エンジン供給配管
17 :循環配管
17a :循環配管弁
19 :ボイラ供給配管
19a :第1バルブ
20 :抽気配管
20a :抽気配管弁
21 :液化用圧縮機
21a :配管
22 :熱交換器
23 :膨張タービン
24 :モータ
25 :駆動軸
26 :第1再液化配管
27 :第2再液化配管
27a :再液化配管弁
28 :抽出配管
29 :第1冷却源ガス配管
30 :第2冷却源ガス配管
31 :LNG配管
31a :ポンプ
32 :再循環配管
32a :再循環配管弁
33 :分離ガス配管
33a :第2バルブ
34 :分離ガス配管弁
35 :熱量計
36 :分岐配管
36a :第3バルブ
38 :火炉
39 :蒸気ドラム
40 :水ドラム
41 :圧力計
42 :蒸気配管
43 :給水配管
44 :ポンプ
50 :制御装置
51 :決定部
52 :切換制御部
図1
図2