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特許7179663プラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】プラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20221121BHJP
   G21C 17/00 20060101ALI20221121BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20221121BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
G05B23/02 302T
G21C17/00 100
F01D25/00 W
F02C7/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019063575
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020166330
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】永野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】江口 慶治
(72)【発明者】
【氏名】青山 邦明
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215864(JP,A)
【文献】特開平08-313685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G21C 17/00
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の評価項目があるプラントの運転状態を監視するプラント監視装置であって、
前記プラントから複数の前記評価項目ごとの検出値の集まりである検出値の束を取得する検出値取得部と、
複数の前記検出値の束により構成される単位空間を基準とした、前記検出値の束の第1マハラノビス距離を算出する第1マハラノビス距離算出部と、
前記第1マハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、前記プラントの運転状態が正常であるか異常であるかを判定するプラント状態判定部と、
前記プラントの運転状態が異常であると判定された場合、前記検出値の束のうち前記プラントの異常の原因となる検出値である原因検出値を推定する原因検出値推定部と、
前記検出値の束のうち前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも増加又は減少させて、当該検出値の束の第2マハラノビス距離を算出する第2マハラノビス距離算出部と、
前記第1マハラノビス距離と前記第2マハラノビス距離との比較に基づいて、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるか、又は減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるかを特定する特定部と、
を備えるプラント監視装置。
【請求項2】
前記第2マハラノビス距離算出部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて前記第2マハラノビス距離を算出し、
前記特定部は、
前記第1マハラノビス距離よりも前記第2マハラノビス距離が増加した場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができないと特定し、
前記第1マハラノビス距離よりも前記第2マハラノビス距離が減少した場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定する、
請求項1に記載のプラント監視装置。
【請求項3】
前記第2マハラノビス距離算出部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて前記第2マハラノビス距離を算出し、
前記特定部は、
前記第1マハラノビス距離よりも前記第2マハラノビス距離が増加した場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができないと特定し、
前記第1マハラノビス距離よりも前記第2マハラノビス距離が減少した場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定する、
請求項1に記載のプラント監視装置。
【請求項4】
前記第2マハラノビス距離算出部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離、および、所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離を求め、
前記特定部は、
前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離が、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離より大きい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定し、
前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離が、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離より小さい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定する
請求項1に記載のプラント監視装置。
【請求項5】
前記第2マハラノビス距離算出部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離、および、所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離を求め、
前記特定部は、
前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離と、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離との両方が、前記第1マハラノビス距離より増加した場合であって、
前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離と前記第1マハラノビス距離との差である第1増加量が、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離と前記第1マハラノビス距離との差である第2増加量より大きい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定し、
前記第1増加量が、前記第2増加量より小さい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定する、
請求項1に記載のプラント監視装置。
【請求項6】
前記第2マハラノビス距離算出部は、前記単位空間を構成する複数の前記検出値の束に含まれる検出値のうち、前記原因検出値の評価項目と関連付けられた複数の検出値の標準偏差の10000分の1乃至10分の5の値を、前記所定量として設定する、
請求項2から5の何れか一項に記載のプラント監視装置。
【請求項7】
前記原因検出値として推定された検出値の評価項目を特定可能な情報と、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるか、又は減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるかを特定した情報と、を含む異常情報を表示する表示部を更に備える、
請求項1から6の何れか一項に記載のプラント監視装置。
【請求項8】
複数の評価項目があるプラントの運転状態を監視するプラント監視方法であって、
前記プラントから複数の前記評価項目ごとの検出値の集まりである検出値の束を取得する検出値取得ステップと、
複数の前記検出値の束により構成される単位空間を基準とした、前記検出値の束の第1マハラノビス距離を算出する第1マハラノビス距離算出ステップと、
前記第1マハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、前記プラントの運転状態が正常であるか異常であるかを判定するプラント状態判定ステップと、
前記プラントの運転状態が異常であると判定された場合、前記検出値の束のうち前記プラントの異常の原因となる検出値である原因検出値を推定する原因検出値推定ステップと、
前記検出値の束のうち前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得ステップにおいて取得された当該検出値の値よりも増加又は減少させて、当該検出値の束の第2マハラノビス距離を算出する第2マハラノビス距離算出ステップと、
前記第1マハラノビス距離と前記第2マハラノビス距離との比較に基づいて、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得ステップにおいて取得された当該検出値の値よりも増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるか、又は減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるかを特定する異常原因特定ステップと、
を有するプラント監視方法。
【請求項9】
複数の評価項目があるプラントの運転状態を監視するプラント監視装置のコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータに、
前記プラントから複数の前記評価項目ごとの検出値の集まりである検出値の束を取得する検出値取得ステップと、
複数の前記検出値の束により構成される単位空間を基準とした、前記検出値の束の第1マハラノビス距離を算出する第1マハラノビス距離算出ステップと、
前記第1マハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、前記プラントの運転状態が正常であるか異常であるかを判定するプラント状態判定ステップと、
前記プラントの運転状態が異常であると判定された場合、前記検出値の束のうち前記プラントの異常の原因となる検出値である原因検出値を推定する原因検出値推定ステップと、
前記検出値の束のうち前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得ステップにおいて取得された当該検出値の値よりも増加又は減少させて、当該検出値の束の第2マハラノビス距離を算出する第2マハラノビス距離算出ステップと、
前記第1マハラノビス距離と前記第2マハラノビス距離との比較に基づいて、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得ステップにおいて取得された当該検出値の値よりも増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるか、又は減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるかを特定する異常原因特定ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項10】
複数の評価項目があるプラントの運転状態を監視するプラント監視装置であって、
前記プラントから複数の前記評価項目ごとの検出値の集まりである検出値の束を取得する検出値取得部と、
複数の前記検出値の束により構成される単位空間を基準とした、前記検出値の束の第1マハラノビス距離を算出する第1マハラノビス距離算出部と、
前記第1マハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、前記プラントの運転状態が正常であるか異常であるかを判定するプラント状態判定部と、
前記プラントの運転状態が異常であると判定された場合、前記検出値の束のうち前記プラントの異常の原因となる検出値である原因検出値を推定する原因検出値推定部と、
前記検出値の束のうち前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した第2マハラノビス距離、および、所定量減少させて算出した第2マハラノビス距離を算出する第2マハラノビス距離算出部と、
前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離と、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離との両方が、前記第1マハラノビス距離より増加した場合であって、
前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離と前記第1マハラノビス距離との差である第1増加量が、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離と前記第1マハラノビス距離との差である第2増加量より大きい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定し、
前記第1増加量が、前記第2増加量より小さい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定する特定部と、
を備えるプラント監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン発電プラント、原子力発電プラント、あるいは化学プラントといった各種のプラントでは、複数の評価項目(温度、圧力等)それぞれの検出値(状態量)の束を取得し、これら検出値の傾向に基づいて、プラントが正常に運転されているか否かを監視している。例えば、特許文献1には、複数の検出値の束により構成される単位空間を基準として、評価時点において取得された検出値の束のマハラノビス距離を算出し、このマハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、プラントの運転状態が正常であるか否かを判断する技術が記載されている。また、特許文献1には、検出値の束のうち、異常の原因となる検出値の項目を、望大SN比の差に基づいて推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-67757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、異常の原因となる検出値を推定することは可能であるが、この検出値を増加させる操作、又は減少させる操作の何れを行うことによりプラントの異常を緩和させることができるかを区別する手段がなかった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、プラントの異常を緩和させるための操作を適切に判断することができるプラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
本発明の第1の態様によれば、複数の評価項目があるプラントの運転状態を監視するプラント監視装置は、前記プラントから複数の前記評価項目ごとの検出値の集まりである検出値の束を取得する検出値取得部と、複数の前記検出値の束により構成される単位空間を基準とした、前記検出値の束の第1マハラノビス距離を算出する第1マハラノビス距離算出部と、前記第1マハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、前記プラントの運転状態が正常であるか異常であるかを判定するプラント状態判定部と、前記プラントの運転状態が異常であると判定された場合、前記検出値の束のうち前記プラントの異常の原因となる検出値である原因検出値を推定する原因検出値推定部と、前記検出値の束のうち前記原因検出値として推定された検出値の値を、前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも増加又は減少させて、当該検出値の束の第2マハラノビス距離を算出する第2マハラノビス距離算出部と、前記第2マハラノビス距離に基づいて、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるか、又は減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるかを特定する特定部と、を備える。
このようにすることで、プラント監視装置は、プラントの異常について、原因検出値として推定された検出値の値を増加させる操作、又は減少させる操作の何れを行うことによりプラントの異常を緩和させることができるかを特定することができる。これにより、プラント監視装置は、プラントの異常を緩和させるための操作を適切に判断することができる。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係るプラント監視装置において、前記第2マハラノビス距離算出部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値より所定量増加させて前記第2マハラノビス距離を算出する。前記特定部は、前記第1マハラノビス距離よりも前記第2マハラノビス距離が増加した場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができないと特定し、前記第1マハラノビス距離よりも前記第2マハラノビス距離が減少した場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定する。
このようにすることで、プラント監視装置は、原因検出値として推定された検出値を取得された値よりも増加させることによってマハラノビス距離が増加した場合は、原因検出値として推定された検出値の値を増加させる操作を行うべきではなく、マハラノビス距離が減少した場合は原因検出値として推定された検出値の値を増加させる操作を行うべきであることを精度よく特定することができる。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様に係るプラント監視装置において、前記第2マハラノビス距離算出部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて前記第2マハラノビス距離を算出する。前記特定部は、前記第1マハラノビス距離よりも前記第2マハラノビス距離が増加した場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができないと特定し、前記第1マハラノビス距離よりも前記第2マハラノビス距離が減少した場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定する。
このようにすることで、プラント監視装置は、原因検出値として推定された検出値の値を増加させる操作を行うことにより、プラントの異常を緩和させることが可能であるか否かを精度よく特定することができる。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様に係るプラント監視装置において、前記第2マハラノビス距離算出部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値より所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離、および、所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離を求める。前記特定部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離が、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離より大きい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定し、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離が、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離より小さい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定する。
このようにすることで、プラント監視装置は、プラントの異常を緩和さるための操作として、原因検出値として推定された検出値の値を増加させる操作と、減少させる操作とのうち何れが適切であるかを精度よく特定することができる。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、第1の態様に係るプラント監視装置において、前記第2マハラノビス距離算出部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離、および、所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離を求める。前記特定部は、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離と、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離との両方が、前記第1マハラノビス距離より増加した場合であって、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させて算出した前記第2マハラノビス距離と前記第1マハラノビス距離との差である第1増加量が、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させて算出した前記第2マハラノビス距離と前記第1マハラノビス距離との差である第2増加量より大きい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定し、前記第1増加量が前記第2増加量より小さい場合、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができると特定する。
このようにすることで、プラント監視装置は、プラントの異常を緩和さるための操作として、原因検出値として推定された検出値の値を増加させる操作と、減少させる操作とのうち何れが適切であるかを精度よく特定することができる。
【0011】
本発明の第6の態様によれば、第2から第5の何れか一の態様に係るプラント監視装置において、前記第2マハラノビス距離算出部は、前記単位空間を構成する複数の前記検出値の束に含まれる検出値のうち、前記原因検出値の評価項目と関連付けられた複数の検出値の標準偏差の10000分の1乃至10分の5の値を、前記所定量として設定する。
このようにすることで、プラント監視装置は、原因検出値の評価項目に応じた適切な増減量を原因検出値に適用することができる。
【0012】
本発明の第7の態様によれば、第1から第6の何れか一の態様に係るプラント監視装置は、前記原因検出値として推定された検出値の評価項目を特定可能な情報と、記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるか、又は減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるかを特定した情報と、を含む異常情報を表示する表示部を更に備える。
このようにすることで、プラント監視装置は、プラントの監視を行う作業者に対し、どの評価項目の検出値が異常であると推定されるかを認識させることができるのみならず、どのような操作を行うことによりプラントの異常を緩和させることができるかを認識させることができる。これにより、作業者は、異常情報を参照することにより、プラントの異常を解消するために実施すべき操作を容易に把握することができる。
【0013】
本発明の第8の態様によれば、複数の評価項目があるプラントの運転状態を監視するプラント監視方法は、前記プラントから複数の前記評価項目ごとの検出値の集まりである検出値の束を取得する検出値取得ステップと、複数の前記検出値の束により構成される単位空間を基準とした、前記検出値の束の第1マハラノビス距離を算出する第1マハラノビス距離算出ステップと、前記第1マハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、前記プラントの運転状態が正常であるか異常であるかを判定するプラント状態判定ステップと、前記プラントの運転状態が異常であると判定された場合、前記検出値の束のうち前記プラントの異常の原因となる検出値である原因検出値を推定する原因検出値推定ステップと、前記検出値の束のうち前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得ステップにおいて取得された当該検出値の値よりも増加又は減少させて、当該検出値の束の第2マハラノビス距離を算出する第2マハラノビス距離算出ステップと、前記第2マハラノビス距離に基づいて、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得ステップにおいて取得された当該検出値の値よりも増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるか、又は減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるかを特定する異常原因特定ステップと、を有する。
【0014】
本発明の第9の態様によれば、複数の評価項目があるプラントの運転状態を監視するプラント監視装置のコンピュータを機能させるプログラムは、前記コンピュータに、前記プラントから複数の前記評価項目ごとの検出値の集まりである検出値の束を取得する検出値取得ステップと、複数の前記検出値の束により構成される単位空間を基準とした、前記検出値の束の第1マハラノビス距離を算出する第1マハラノビス距離算出ステップと、前記第1マハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、前記プラントの運転状態が正常であるか異常であるかを判定するプラント状態判定ステップと、前記プラントの運転状態が異常であると判定された場合、前記検出値の束のうち前記プラントの異常の原因となる検出値である原因検出値を推定する原因検出値推定ステップと、前記検出値の束のうち前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得ステップにおいて取得された当該検出値の値よりも増加又は減少させて、当該検出値の束の第2マハラノビス距離を算出する第2マハラノビス距離算出ステップと、前記第2マハラノビス距離に基づいて、前記原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得ステップにおいて取得された当該検出値の値よりも増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるか、又は減少させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるかを特定する異常原因特定ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプラント監視装置、プラント監視方法、及びプログラムによれば、プラントの異常を緩和させるための操作を適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るプラント監視装置の概要を説明するための図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプラント監視装置の機能構成を示す図である。
図3】マハラノビス距離の概念を示す概念図である。
図4】本発明の一実施形態に係るプラント監視装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る異常情報の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るプラント監視装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係るプラント監視装置20について、図1図6を参照しながら説明する。
【0018】
(全体構成)
本実施形態に係るプラント監視装置20は、図1に示すように、複数の評価項目があるプラント1の運転状態を監視するための装置である。プラント監視装置20は、プラント1の各部に設けられた検出器から評価項目ごとの状態量を示す検出値を取得する。そして、プラント監視装置20は、マハラノビス・タグチ法(以下、MT法とする)を利用し、取得した検出値に基づいてプラント1の運転状態が正常であるか異常であるかを判定する。
【0019】
本実施形態に係るプラント1は、ガスタービン複合発電プラントであり、ガスタービン10と、ガスタービン発電機11と、排熱回収ボイラ12と、蒸気タービン13と、蒸気タービン発電機14と、制御装置40と、を備える。なお、他の実施形態では、プラント1は、ガスタービン発電プラント、原子力発電プラント、化学プラントであってもよい。
【0020】
ガスタービン10は、圧縮機101と、燃焼器102と、タービン103と、を備えている。
【0021】
圧縮機101は、吸気口から取り込んだ空気を圧縮する。圧縮機101には、評価項目の一つである圧縮機101の車室内の温度を検出するための検出器として、温度センサ101A、101Bが設けられている。例えば、温度センサ101Aは圧縮機101の車室入口の温度(入口空気温度)を検出し、温度センサ101Bは車室出口の温度(出口空気温度)を検出するようにしてもよい。
【0022】
燃焼器102は、圧縮機101から導入された圧縮空気に燃料Fを混合して燃焼させ、燃焼ガスを生成する。燃焼器102には、評価項目の一つである燃料Fの圧力を検出するための検出器として、圧力センサ102Aが設けられている。
【0023】
タービン103は、燃焼器102から供給された燃焼ガスにより回転駆動する。タービン103には、評価項目の一つである車室内の温度を検出するための検出器として、温度センサ103A、103Bが設けられている。例えば、温度センサ103Aはタービン103の車室入口の温度(入口燃焼ガス温度)を検出し、温度センサ103Bは車室出口の温度(出口燃焼ガス温度)を検出するようにしてもよい。
【0024】
ガスタービン発電機11は、タービン103のロータ104と、圧縮機101を介して連結され、ロータ104の回転により発電する。ガスタービン発電機11には、評価項目の一つである潤滑油の温度を検出するための検出器として、温度計11Aが設けられている。
【0025】
排熱回収ボイラ12は、タービン103から排出された燃焼ガス(排ガス)で水を加熱して、蒸気を生成する。排熱回収ボイラ12には、評価項目の一つであるドラムの水位レベルを検出するための検出器として、レベル計12Aが設けられている。
【0026】
蒸気タービン13は、排熱回収ボイラ12からの蒸気で駆動する。蒸気タービン13には、評価項目の一つである車室内の温度を検出するための検出器として、温度センサ13Aが設けられている。また、蒸気タービン13から排出される蒸気は、復水器132で水に戻されて、給水ポンプを介して排熱回収ボイラ12に送られる。
【0027】
蒸気タービン発電機14は、蒸気タービン13のロータ131と連結され、ロータ131の回転により発電する。蒸気タービン発電機14には、評価項目の一つである潤滑油の温度を検出するための検出器として、温度計14Aが設けられている。
【0028】
なお、上述の評価項目は一例であり、これに限られることはない。プラント1の他の評価項目として、例えばガスタービン発電機11の出力、タービン103の車室内の圧力、ロータ104の回転速度、振動等が設定されていてもよい。この場合、図示は略すが、これら評価項目の状態量を検出する検出器がプラント1の各部に設けられているものとする。
【0029】
制御装置40は、プラント1の動作を制御するための装置である。また、制御装置40は、プラント監視装置20によりプラント1の運転状態が異常であると判定された場合、プラント監視装置20からの制御信号に従って、プラント1各部の動作を制御するようにしてもよい。
【0030】
(プラント監視装置の機能構成)
図2は、本発明の一実施形態に係るプラント監視装置の機能構成を示す図である。
プラント監視装置20は、図2に示すように、CPU21と、入出力インタフェース22と、表示部23と、操作受付部24と、記憶部25と、を備えている。
【0031】
入出力インタフェース22は、プラント1の各部の検出器と接続され、複数の評価項目ごとの検出値の入力を受け付ける。
【0032】
表示部23は、プラント監視装置20によるプラント1の運転状態の判定結果等を表示するためのディスプレイである。例えば、表示部23は、プラント1の異常の原因と推定される評価項目を特定可能な情報と、当該評価項目の検出値の値を増加させることによりプラント1の異常を緩和できるか、又は、減少させることによりプラント1の異常を緩和できるかを特定した情報と、を含む異常情報を表示する。評価項目を特定可能な情報とは、例えば評価項目又は検出器の名称、識別番号等である。
【0033】
操作受付部24は、プラント1の監視を行う作業者による操作を受け付けるためのキーボード、マウス等の装置である。
【0034】
CPU21は、プラント監視装置20全体の動作を司るプロセッサである。CPU21は、予め用意されたプログラムに従って各種演算処理を実行することにより、検出値取得部211、第1マハラノビス距離算出部212、プラント状態判定部213、原因検出値推定部214、第2マハラノビス距離算出部215、特定部216、出力部217、としての機能を発揮する。
【0035】
検出値取得部211は、プラント1から複数の評価項目ごとの検出値の集まりである検出値の束を、入出力インタフェース22を介して取得する。検出値取得部211は、所定時間(例えば1分)ごとに検出値の束を取得して、記憶部25に記憶して蓄積する。
【0036】
第1マハラノビス距離算出部212は、過去の運転データである複数の検出値の束により構成される単位空間を基準として、検出値の束のマハラノビス距離(第1マハラノビス距離)を算出する。
【0037】
プラント状態判定部213は、第1マハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、プラント1の運転状態が正常であるか異常であるかを判定する。
【0038】
原因検出値推定部214は、プラント1の運転状態が異常であると判定された場合、検出値の束のうちプラント1の異常の原因となる検出値である原因検出値を推定する。
【0039】
第2マハラノビス距離算出部215は、検出値の束のうち原因検出値として推定された検出値の値を検出値取得部211により取得された当該検出値の値よりも増加又は減少させて、当該検出値の束のマハラノビス距離(第2マハラノビス距離)を算出する。
【0040】
特定部216は、プラント状態判定部213によりプラント1の運転状態が異常であると判定された場合、その異常を緩和する操作を特定する。本実施形態では、特定部216は、第2マハラノビス距離に基づいて、原因検出値として推定された検出値の値を検出値取得部211により取得された当該検出値の値よりも増加させることによりプラント1の異常を緩和させることができるか、又は減少させることによりプラント1の異常を緩和させることができるかを特定する。
【0041】
出力部217は、プラント状態判定部213によりプラント1の運転状態が異常であると判定された場合、原因検出値として推定された検出値の評価項目を特定可能な情報と、原因検出値として推定された検出値の値を検出値取得部211により取得された当該検出値の値よりも増加させることによりプラント1の異常を緩和させることができるか、又は減少させることによりプラント1の異常を緩和させることができるかを特定した情報と、を含む異常情報を表示部23に表示させる。また、出力部217は、作業者が操作受付部24を介してプラント1を遠隔制御するための操作を行った場合、この操作に応じた制御信号をプラント1の制御装置40に出力するようにしてもよい。
【0042】
記憶部25には、CPU21の各部における処理において取得、生成されたデータ等が記憶される。
【0043】
(プラント監視装置の処理フロー)
図3は、マハラノビス距離の概念を示す概念図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るプラント監視装置の処理の一例を示すフローチャートである。
以下、図3図4を参照しながら本実施形態に係るプラント監視装置20の処理の一例について説明する。
【0044】
本実施形態に係るプラント監視装置20は、上述のようにMT法を利用してプラント1の運転状態が正常であるか異常であるかを判定する。まず、MT法によるプラント監視方法の概要について、図3を用いて説明する。
【0045】
図3に示すように、プラント監視装置20の検出値取得部211が、プラント1の検出値1及び検出値2を検出値の束Bとして取得すると仮定する。例えば、検出値1は「ガスタービン出力」、検出値2は「ボイラ水位」である。MT法では、複数の検出値の束Bの集合体であるデータ群を、基準データ群である単位空間Sとし、ある時点で取得された検出値の束Aのマハラノビス距離Dを算出する。
【0046】
マハラノビス距離Dは、単位空間Sにおける検出値の分散や相関に応じて重み付けがなされた距離であり、単位空間Sにおけるデータ群との類似度が低いほど大きい値となる。ここで、単位空間Sを構成する検出値の束Bのマハラノビス距離の平均は1となり、プラント1の運転状態が正常である場合、検出値の束Aのマハラノビス距離Dは概ね4以下に収まる。しかしながら、プラント1の運転状態が異常となると、異常の程度に応じてマハラノビス距離Dの値は大きくなる。
【0047】
このため、MT法では、マハラノビス距離Dが、予め定められた閾値Dc以内であるか否かに応じで、プラント1の運転状態が正常であるか異常であるかを判定する。例えば、検出値の束A1のマハラノビス距離D1は、閾値Dc以下であるため、この検出値の束A1を取得した時点におけるプラント1の運転状態は正常であると判定される。また、検出値の束A2のマハラノビス距離D2は、閾値Dcよりも大きいため、この検出値の束A2を取得した時点におけるプラント1の運転状態は異常であると判定される。
【0048】
なお、閾値Dcは、例えば単位空間Sを構成する複数の検出値の束Bそれぞれのマハラノビス距離のうち、最大のマハラノビス距離よりも大きい値に設定することが好ましい。また、このとき、プラント1の固有の特性等を考慮して、閾値Dcを定めることが好ましい。閾値Dcは、作業者によりプラント監視装置20の操作受付部24を介して変更できるようにしてもよい。
【0049】
次に、プラント監視装置20におけるプラント1の運転状態の監視処理について、図4を用いて説明する。ここでは、プラント監視装置20の記憶部25には、プラント1から過去に取得した検出値の束が複数蓄積されており、これら複数の検出値の束に基づいて作成された単位空間と、マハラノビス距離の閾値とが記憶されているものとする。
【0050】
図4に示すように、検出値取得部211は、プラント1の各部に設けられた検出器から、複数の評価項目それぞれの検出値を取得する(ステップS1)。例えば評価項目の数が100個である場合、検出値取得部211は評価項目それぞれに対応する100個の検出値を取得し、これらを一つの束(検出値の束)として記憶部25に記憶する。
【0051】
次に、第1マハラノビス距離算出部212は、記憶部25に記憶されている単位空間を基準として、ステップS1において取得した検出値の第1マハラノビス距離を算出する(ステップS2)。
【0052】
次に、プラント状態判定部213は、ステップS2において算出された第1マハラノビス距離が、記憶部25に予め記憶されている閾値以下であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0053】
第1マハラノビス距離が閾値以下である場合(ステップS3:YES)、プラント状態判定部213は、プラント1の運転状態は正常であると判定して(ステップS4)、処理を終了する。このとき、出力部217は、プラント1の運転状態が正常であるとの判定結果等を表示部23に表示させてもよい。
【0054】
一方、第1マハラノビス距離が閾値を超える場合(ステップS3:NO)、プラント状態判定部213は、プラント1の運転状態は異常であると判定して(ステップS5)、次の処理に進む。
【0055】
プラント1の運転状態の異常の有無は、第1マハラノビス距離から判断することが可能であるが、異常が発生した箇所を第1マハラノビス距離から推定することが出来ない。このため、原因検出値推定部214は、プラント1の運転状態が異常であると判定されると、ステップS1において取得された検出値の束のうち、プラント1が異常と判定された原因となる検出値である原因検出値を推定する(ステップS6)。
【0056】
例えば、原因検出値推定部214は、直交表分析による項目有無の望大SN(Signal/Noise)比の差から、異常である検出値を推定する。直交表分析による項目有無の望大SN比の差は、異常である評価項目の検出値では大きくなるという性質がある。このような性質に基づき、原因検出値推定部214は、望大SN比の差が最も大きい評価項目の検出値が、マハラノビス距離の増大に影響を与える要因、即ち、原因検出値であると推定する。
【0057】
次に、第2マハラノビス距離算出部215は、ステップS1において取得した検出値の束のうち原因検出値として推定された検出値の値を増加又は減少させて、この検出値の束の第2マハラノビス距離を算出する(ステップS7)。
【0058】
具体的には、第2マハラノビス距離算出部215は、原因検出値として推定された検出値の値(以下、単に「原因検出値の値」とも記載する)を所定量増加させて、第2マハラノビス距離を算出する。所定量は、単位空間を構成する複数の検出値の束に基づいて、評価項目別に予め設定されていてもよい。例えば、原因検出値の評価項目が「排熱回収ボイラ12のドラムの水位レベル」である場合、第2マハラノビス距離算出部215は、単位空間を構成する複数の検出値の束に含まれる検出値のうち、「排熱回収ボイラ12のドラムの水位レベル」と関連付けられた複数の検出値の標準偏差を算出する。そして、第2マハラノビス距離算出部215は、この標準偏差の10000分の1乃至10分の5の値(+0.0001σ~+0.5σ)を、所定量として設定する。なお、所定量は、より好ましくは標準偏差の1000分の1乃至10分の1の値(+0.001σ~+0.1σ)であり、最も好ましくは標準偏差の100分の1乃至10分の1の値(+0.01σ~+0.1σ)である。
【0059】
次に、特定部216は、プラント1の異常を緩和させるための操作を特定する(ステップS8)。
【0060】
例えば原因検出値である「排熱回収ボイラ12のドラムの水位レベル」の検出値が平均値よりも高い場合であっても、単にドラムの水位レベルを平均値まで下げる操作を行えば異常が解消されるとは限らず、原因検出値の値と他の検出値の値との関係から、ドラムの水位レベルを上げる操作を行うことにより異常が解消されるケースがある。このように、原因検出値の値と他の検出値の値との関係により異常を解消するための操作方法が異なる可能性があるので、作業者は、原因検出値の値をみただけでは、原因検出値の値を下げる操作が必要であるのか、上げる操作が必要であるのか、容易に把握できない場合がある。
【0061】
したがって、プラント1の異常を緩和するために、原因検出値の値を増加させる操作を行うか、減少させる操作を行うかは、他の複数の検出値の値との関係から見て判断されるべきである。このため、本実施形態に係る特定部216は、第1マハラノビス距離と、第2マハラノビス距離とに基づいて、プラント1の異常を緩和させるための操作を特定する。
【0062】
具体的には、特定部216は、第1マハラノビス距離よりも第2マハラノビス距離が増加した場合、原因検出値の値は他の検出値の値との関係から高い傾向にあり、この原因検出値の値を増加させることによりプラント1の異常を緩和することができないと特定する。即ち、特定部216は、以下の式(1)を満たす場合、原因検出値の値を増加させる操作を行うべきではないと特定する。なお、MDは、ステップS1において取得された検出値の束のマハラノビス距離であり、xは当該検出値の束に含まれる原因検出値を示す。
【0063】
∂(MD)/∂x>0 ・・・(1)
【0064】
また、特定部216は、第1マハラノビス距離よりも2マハラノビス距離が減少した場合、原因検出値の値は他の検出値の値との関係から低い傾向にあり、この原因検出値の値を増加させることによりプラント1の異常を緩和することができると特定する。即ち、特定部216は、以下の式(2)を満たす場合、原因検出値の値を増加させる操作を行うべきであると特定する。
【0065】
∂(MD)/∂x<0 ・・・(2)
【0066】
なお、特定部216は、ステップS1において取得した検出値の束のパターンから、プラント1の故障個所、異常の発生原因(例えば軸曲り、燃料弁の動作不良等)を更に推定してもよい。
【0067】
次に、出力部217は、異常情報T1(図5)を表示部23に表示させる(ステップS9)。
図5は、本発明の一実施形態に係る異常情報の一例を示す図である。
異常情報T1には、図5に示すように、例えば原因検出値として推定された検出値の評価項目を特定可能な情報と、原因検出値の値の高低を示す情報と、原因検出値として推定された検出値のSN比の差と、が含まれる。評価項目を特定可能な情報は、例えば原因検出値を検出した検出器の名称である。原因検出値の値の高低は、例えば特定部216により「原因検出値として推定された検出値の値が、他の検出値との関係から高い傾向にある」と特定された場合は「+」、「原因検出値として推定された検出値の値が、他の検出値との関係から低い傾向にある」と特定された場合は「-」で表される。また、特定部216がプラント1の故障個所、異常の発生原因等を特定した場合、異常情報T1には「推定される異常原因」及び「故障可能性」を示す情報が含まれていてもよい。
【0068】
プラント監視装置20は、所定時間(例えば1分)ごとに図4の処理を実行して、プラント1の運転状態の監視を行う。
【0069】
なお、上述の例では、原因検出値推定部214が推定する原因検出値が一つのみである態様について説明したが、これに限られることはない。原因検出値推定部214が推定する原因検出値は複数であってもよい。例えば、原因検出値推定部214は、ステップS6において、望大SN比の差が大きい評価項目のうち、上位五つの評価項目の検出値を、原因検出値であると推定するようにしてもよい。
【0070】
この場合、第2マハラノビス距離算出部215は、ステップS7において、複数の原因検出値それぞれについて第2マハラノビス距離を算出する。
【0071】
また、特定部216は、ステップS8において、複数の原因検出値それぞれについて、原因検出値として推定された検出値の値を、検出値取得部211により取得された当該検出値の値よりも増加させることによりプラント1の異常を緩和させることができるか否かを特定する。即ち、原因検出値が二つある場合、第2マハラノビス距離算出部215は、ステップS7において、一つ目の原因検出値として推定された検出値の値を変動させた第2マハラノビス距離と、二つ目の原因検出値として推定された検出値の値を変動させた第2マハラノビス距離との二つの第2マハラノビス距離を算出する。また、特定部216は、ステップS8において、一つ目の原因検出値として推定された検出値の値を増加又は減少すべきか、及び二つ目の原因検出値として推定された検出値の値を増加又は減少すべきかを、それぞれ特定する。
【0072】
更に、出力部217は、複数の原因検出値として推定された検出値それぞれを検出した検出器の名称、原因検出値として推定された検出値を増加させるべきか否かを特定した情報、SN比の差を異常情報T1に含めて、表示部23に表示させる。
【0073】
(プラント監視装置のハードウェア構成)
図6は、本発明の一実施形態に係るプラント監視装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
以下、図6を参照して、本実施形態に係るプラント監視装置20のハードウェア構成について説明する。
【0074】
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
【0075】
上述のプラント監視装置20は、コンピュータ900に実装される。そして、上述したプラント監視装置20の各部の動作は、プログラムの形式でそれぞれのコンピュータ900が有する補助記憶装置903に記憶されている。CPU901(CPU21)は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理に伴い取得、生成した各種情報を記憶するための記憶領域(記憶部25)を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0076】
なお、コンピュータ900は、インタフェース904を介して、外部記憶装置910と接続されており、上記記憶領域は、外部記憶装置910に確保されてもよい。
【0077】
なお、少なくとも一つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。
【0078】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0079】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係るプラント監視装置20は、複数の評価項目があるプラント1の運転状態を監視するプラント監視装置20であって、プラント1から複数の評価項目ごとの検出値の集まりである検出値の束を取得する検出値取得部211と、複数の検出値の束により構成される単位空間を基準とした、検出値の束の第1マハラノビス距離を算出する第1マハラノビス距離算出部212と、第1マハラノビス距離が予め定められた閾値以内であるか否かに応じて、プラント1の運転状態が正常であるか異常であるかを判定するプラント状態判定部213と、プラント1の運転状態が異常であると判定された場合、検出値の束のうちプラント1の異常の原因となる検出値である原因検出値を推定する原因検出値推定部214と、検出値の束のうち原因検出値として推定された検出値の値を検出値取得部211により取得された当該検出値の値よりも増加させて、当該検出値の束の第2マハラノビス距離を算出する第2マハラノビス距離算出部215と、第2マハラノビス距離に基づいて、原因検出値として推定された検出値の値を前記検出値取得部により取得された当該検出値の値よりも増加させることにより前記プラントの異常を緩和させることができるか否かを特定する特定部216と、を備える。
上述のように、例えば原因検出値の値が平均値よりも高い場合であっても、単にこの原因検出値の値を平均値まで下げる操作を行えば異常が解消されるとは限らず、原因検出値の値と他の検出値の値との関係から、原因検出値の値を上げる操作を行うことにより異常が解消されるケースがある。このため、原因検出値の値を見ただけでは、この原因検出値の値を増加させる操作を行うべきであるか否かを判断することは困難であった。しかしながら、本実施形態に係るプラント監視装置20は、上述の構成を有していることにより、プラント1の異常について、原因検出値の値と他の検出値の値との関係から見て、この原因検出値として推定された検出値の値を増加させる操作を行うことによりプラント1の異常を緩和させることができるか否かを特定することができる。これにより、プラント監視装置20は、プラント1の異常を緩和させるための操作を適切に判断することができる。
【0080】
また、第2マハラノビス距離算出部215は、原因検出値として推定された検出値の値を検出値取得部211により取得された当該検出値の値より所定量増加させて第2マハラノビス距離を算出する。特定部216は、第1マハラノビス距離よりも第2マハラノビス距離が増加した場合、原因検出値として推定された検出値の値を検出値取得部211により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることによりプラント1の異常を緩和させることができないと特定し、第1マハラノビス距離よりも第2マハラノビス距離が減少した場合、原因検出値として推定された検出値の値を検出値取得部211により取得された当該検出値の値よりも所定量増加させることによりプラント1の異常を緩和させることができると特定する。
このようにすることで、プラント監視装置20は、原因検出値として推定された検出値を取得された値よりも増加させることによってマハラノビス距離が増加したか否かに基づいて、原因検出値として推定された検出値の値を増加させる操作を行うべきではなく、マハラノビス距離が減少した場合は原因検出値として推定された検出値の値を増加させる操作を行うべきであることを精度よく特定することができる。
【0081】
また、第2マハラノビス距離算出部215は、単位空間を構成する複数の検出値の束に含まれる検出値のうち、原因検出値の評価項目と関連付けられた複数の検出値の標準偏差の10000分の1乃至10分の5の値を、所定量として設定する。第2マハラノビス距離算出部215は、より好ましくは当該所定量を標準偏差の1000分の1乃至10分の1に設定し、最も好ましくは当該所定量を標準偏差の100分の1乃至10分の1に設定する。
このようにすることで、プラント監視装置20は、原因検出値の評価項目に応じた適切な増減量を原因検出値に適用することができる。これにより、プラント監視装置20は、プラント1の異常原因を特定する精度を更に向上させることができる。
【0082】
また、プラント監視装置20は、原因検出値として推定された検出値の評価項目を特定可能な情報と、原因検出値として推定された検出値の値を検出値取得部211により取得された当該検出値の値よりも増加させることによりプラント1の異常を緩和させることができるか否かを特定した情報と、を含む異常情報を表示する表示部23を更に備える。
このようにすることで、プラント監視装置20は、プラント1の監視を行う作業者に対し、どの評価項目の検出値が異常であると推定されるかを認識させることができるのみならず、どのような操作を行うことによりプラントの異常を緩和させることができるかを認識させることができる。これにより、作業者は、異常情報を参照することにより、プラント1の異常を解消するために実施すべき操作を容易に把握することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
【0084】
<変形例1>
例えば、上述の実施形態において、第2マハラノビス距離算出部215が、原因検出値を所定量増加させて第2マハラノビス距離を算出する態様について説明したが、これに限られることはない。例えば、変形例1では、第2マハラノビス距離算出部215は、図4のステップS7において、原因検出値の値を所定量減少させて第2マハラノビス距離を算出してもよい。なお、本変形例における所定量は、上述の実施形態と同様に、原因検出値と同じ評価項目に関連付けられた複数の検出値の標準偏差の10000分の1乃至10分の5に設定される。また、当該所定量は、より好ましくはこの標準偏差の1000分の1乃至10分の1に設定され、最も好ましくはこの標準偏差の100分の1乃至10分の1に設定される。
【0085】
この場合、特定部216は、図4のステップS8において、第1マハラノビス距離よりも第2マハラノビス距離が増加した場合、原因検出値の値は他の検出値の値との関係から低い傾向にあり、この原因検出値の値を減少させることによりプラント1の異常を緩和することができないと特定する。一方、特定部216は、第1マハラノビス距離よりも2マハラノビス距離が減少した場合、原因検出値の値は他の検出値の値との関係から高い傾向にあり、この原因検出値の値を減少させることによりプラント1の異常を緩和することができると特定する。
【0086】
このような構成によっても、プラント監視装置20は、上述の実施形態と同様に、原因検出値の値を減少させる操作を行うことにより、プラント1の異常を緩和させることができるか否かを精度よく特定することができる。
【0087】
<変形例2>
また、変形例2では、第2マハラノビス距離算出部215は、図4のステップS7において、原因検出値を所定量増加させて算出した第2マハラノビス距離Aと、原因検出値を所定量減少させて算出した第2マハラノビス距離Bと、の二つの第2マハラノビス距離を求めてもよい。なお、本変形例における所定量は、上述の実施形態および変形例1と同様であってもよいし、異なる値を任意に設定しても良い。
【0088】
この場合、特定部216は、図4のステップS8において、原因検出値の値を増加させて算出した第2マハラノビス距離Aが、原因検出値の値を減少させて算出した第2マハラノビス距離Bより大きい場合、原因検出値の値は他の検出値の値との関係から高い傾向にあり、この原因検出値の値を減少させることによりプラント1の異常を緩和することができると特定する。一方、特定部216は、原因検出値の値を増加させて算出した第2マハラノビス距離Aが、原因検出値の値を減少させて算出した第2マハラノビス距離Bより小さい場合、原因検出値の値は他の検出値の値との関係から低い傾向にあり、この原因検出値の値を増加させることによりプラント1の異常を緩和することができると特定する。
【0089】
このような構成によっても、プラント監視装置20は、上述の実施形態と同様に、原因検出値の値をどのように操作すればプラント1の異常を緩和することができるかを精度よく特定することができる。
【0090】
<変形例3>
また、変形例3では、変形例2と同様に、第2マハラノビス距離算出部215は、図4のステップS7において、原因検出値を所定量増加させて算出した第2マハラノビス距離Aと、原因検出値を所定量減少させて算出した第2マハラノビス距離Bと、の二つの第2マハラノビス距離を求めてもよい。なお、本変形例における所定量は、上述の変形例2と同様、任意に設定しても良い。
【0091】
この場合、特定部216は、図4のステップS8において、原因検出値の値を所定量増加させた第2マハラノビス距離Aと、原因検出値の値を所定量減少させた第2マハラノビス距離Bの両方が、第1マハラノビス距離より増加した場合、次のような処理を実行する。
【0092】
特定部216は、原因検出値の値を所定量増加させて算出した第2マハラノビス距離Aと第1マハラノビス距離との差である第1増加量が、原因検出値の値を所定量減少させて算出した第2マハラノビス距離Bと第1マハラノビス距離との差である第2増加量より大きい場合、原因検出値の値は他の検出値の値との関係から高い傾向にあり、この原因検出値の値を減少させることによりプラント1の異常を緩和することができると特定する。一方、特定部216は、第1増加量が第2増加量より小さい場合、原因検出値の値は他の検出値の値との関係から低い傾向にあり、この原因検出値の値を増加させることによりプラント1の異常を緩和することができると特定する。
【0093】
なお、変形例3では、原因検出値の値を増減させるための所定量は、原因検出値と同じ評価項目に関連付けられた複数の検出値の標準偏差の10分の5以上の値に設定される。このため、本変形例における所定量は、上述の実施形態、変形例1、及び変形例2における所定量よりも大きな値に設定される。このため、第2マハラノビス距離A,Bがともに第1マハラノビス距離より減少する可能性はほぼないと考えられる。このような考察に基づき、変形例3に係る特定部216は、第2マハラノビス距離A,Bの両方が第1マハラノビス距離より増加した場合のみ上述の処理を行うこととしているので、処理が複雑化することを抑制することができる。
【0094】
このような構成によっても、プラント監視装置20は、上述の実施形態と同様に、原因検出値の値を増加させる操作と、減少させる操作のどちらがプラント1の異常を緩和させることができるかを精度よく特定することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 プラント
10 ガスタービン
11 ガスタービン発電機
12 排熱回収ボイラ
13 蒸気タービン
14 蒸気タービン発電機
20 プラント監視装置
21 CPU
22 入出力インタフェース
23 表示部
24 操作受付部
25 記憶部
40 制御装置
211 検出値取得部
212 第1マハラノビス距離算出部
213 プラント状態判定部
214 原因検出値推定部
215 第2マハラノビス距離算出部
216 特定部
217 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6