(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】地下構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/07 20060101AFI20221121BHJP
E02D 17/08 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
E02D29/07
E02D17/08 A
(21)【出願番号】P 2019096991
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一正
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康晴
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-036338(JP,A)
【文献】特開平03-206299(JP,A)
【文献】特開2012-229590(JP,A)
【文献】特開2004-143742(JP,A)
【文献】特開平02-058691(JP,A)
【文献】特開2014-091946(JP,A)
【文献】特開平03-206300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/07
E02D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の構築方法であって、
地盤を所定深さまで掘削して形成した立坑に地下構造物を構築し、
前記地盤を前記所定深さまで掘削する途中において、防音機構を有する蓋体を立坑
の深さ方向の途中に設けることを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
前記蓋体は、作業員または資機材が出入りするための開口を有し、前記開口が防音機構を有する扉により開閉可能であることを特徴とする請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項3】
前記蓋体は、前記立坑を照明する照明装置を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項4】
前記蓋体は、散水装置または集塵装置を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項5】
前記蓋体は、重機の動きまたは立坑の出来形を計測するためのセンサを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項6】
前記地盤に横坑および前記横坑から上方に延びる掘削ずりの排出用の排出孔を構築した後、前記排出孔を含む範囲の前記地盤を前記所定深さまで掘削し、
前記地盤の掘削時の掘削ずりは、前記排出孔に投入して前記横坑から搬出することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【請求項7】
前記地下構造物は、立坑にコンクリートを打設することで構築され、
前記蓋体が、前記立坑の底部において前記コンクリートに埋設されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の地下構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
深礎杭を構築する際は、重機による削岩や爆薬等の発破を行い地盤を掘削して立坑を形成した後、重機を撤去して立坑内に足場を設け、鉄筋を立坑内で組立てる。地盤を掘削する際に生じる掘削ずりは、クレーンやベッセルにより上方へ揚重して搬出する。
【0003】
鉄筋の組立て後、立坑にコンクリートを打設することで深礎杭が構築される。特許文献1、2には、このような深礎杭の構築方法の例が記載されている。
【0004】
立坑は深礎杭以外の地下構造物を構築する目的で形成されることもあり、特許文献3には石油貯蔵所や放射性廃棄物の貯留所等の地下構造物を構築するために立坑を形成する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-38475号公報
【文献】特開平9-25719号公報
【文献】特開2003-314187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
立坑を形成する際は上記のように重機による削岩や爆薬等の発破を行って地盤を掘削するが、このような作業では大きな工事騒音が生じ、周囲に騒音が伝播して近隣の住民に迷惑が掛かる恐れがあった。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、周囲に伝播する騒音を低減できる地下構造物の構築方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための本発明は、地下構造物の構築方法であって、地盤を所定深さまで掘削して形成した立坑に地下構造物を構築し、前記地盤を前記所定深さまで掘削する途中において、防音機構を有する蓋体を立坑の深さ方向の途中に設けることを特徴とする地下構造物の構築方法である。
【0009】
本発明では、防音機構を有する蓋体を立坑に設けることで、重機による削岩や爆薬等の発破などによる地盤の掘削時に、周囲に伝播する騒音を低減できる。
【0010】
前記蓋体は、作業員または資機材が出入りするための開口を有し、前記開口が防音機構を有する扉により開閉可能であることが望ましい。
これにより、掘削用の重機の故障対応や爆薬等の発破時の作業員の退避などを行うことができ、また開口によって蓋体の防音機能が損なわれることもない。
【0011】
前記蓋体は、前記立坑を照明する照明装置を有することも望ましい。また前記蓋体は、散水装置または集塵装置を有することも望ましい。さらに、前記蓋体は、重機の動きまたは立坑の出来形を計測するためのセンサを有することも望ましい。
蓋体に照明装置を設けることで立坑の暗所を照らすことができて掘削作業の助けになり、夜間施工等も可能になる。また蓋体に散水装置や集塵装置を設けることで、地盤の掘削に伴う粉塵対策が可能になる。さらに、蓋体にセンサを設けて重機の動きや立坑の出来形を計測することもでき、それらの計測データによる工事管理を行うことが可能である。
【0012】
前記地盤に横坑および前記横坑から上方に延びる掘削ずりの排出用の排出孔を構築した後、前記排出孔を含む範囲の前記地盤を前記所定深さまで掘削し、前記地盤の掘削時の掘削ずりは、前記排出孔に投入して前記横坑から搬出することも望ましい。
本発明では立坑に蓋体を設けるので、従来のように掘削ずりを上方へ揚重して搬出すると作業効率が悪くなる。そこで、上記のような横坑と排出孔を先行して設けることで、掘削ずりを排出孔を介して下方の横坑へ排出し、横坑から外部に搬出することが可能になり、掘削ずりを容易に搬出できる。
【0013】
前記地下構造物は、立坑にコンクリートを打設することで構築され、前記蓋体が、前記立坑の底部において前記コンクリートに埋設されることが望ましい。前記地下構造物は、例えば深礎杭である。
深礎杭のような大規模な地下構造物では地盤掘削時の工事騒音も大きくなるので、防音機構を有する蓋体により周囲への騒音の伝播を防ぐことが特に有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、周囲に伝播する騒音を低減できる地下構造物の構築方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】グローリーホールの形成について説明する図。
【
図10】コンクリート17の打設について説明する図。
【
図11】照明装置55、散水装置56、集塵装置57、センサ58、通信設備59を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1~
図10は本発明の実施形態に係る深礎杭(地下構造物)の構築方法について説明する図である。本実施形態では、山の斜面に立坑(掘削孔)を形成し、そこに道路橋脚等の基礎として深礎杭を構築する例について説明する。
【0018】
(1.横坑の形成)
本実施形態では、まず
図1に示すように山1の斜面の深礎杭の形成範囲11の下部に当たる深さで横坑2を形成する。また深礎杭の形成範囲11の上方の斜面を整地しておく。
【0019】
横坑2は、平面において深礎杭の形成範囲11まで達するように形成される。横坑2は掘削ずりを外部に搬出するためのものであり、内部に振動フィーダ21やベルトコンベア22が設置される。
【0020】
ただし、掘削ずりの搬出のために横坑2内でバックホウ等の重機を稼働させたり、掘削ずりの搬出にあたって横坑2内でダンプトラックを走行させたり、またベルトコンベア22による搬出とダンプトラックによる搬出を併用することも可能である。このように、横坑2からの掘削ずりの搬出にあたっては様々な手段が考えられる。さらに、横坑2を地下水の排水に利用することも可能である。
【0021】
(2.グローリーホールの形成)
本実施形態では、次に、掘削ずりの排出用のグローリーホール(排出孔)を深礎杭の形成範囲11に形成する。この際、まず
図2(a)に示すように深礎杭の形成範囲11の上方の地表面にレイズボーリングマシン3を設置し、ロッド31の先端32に設けたビットで地盤を下方へと横坑2まで穿孔する。
【0022】
その後、ロッド31の先端32を拡径し、
図2(b)に示すようにロッド31を引き上げながら拡径部の上面に設けたビットで地盤を上方へと掘削することで、上記穿孔した孔を拡径する。
【0023】
これにより、
図3(a)に示すように、横坑2から上方へと略鉛直方向に延びるグローリーホール12が形成される。グローリーホール12の形成時に生じる掘削ずりは、横坑2に落ちて振動フィーダ21からベルトコンベア22により外部へと搬出される。この掘削ずりから、地盤が重金属などを有していないか等の事前の地質調査を原位置の土質により深礎杭の深さ範囲の全体に亘って精度よく行うことも可能である。
【0024】
また本実施形態では、グローリーホール12の孔壁保護のため、
図3(b)に示すようにグローリーホール12の内面に沿って鋼管121を挿入する。当該内面と鋼管121の間には必要に応じてセメントミルク等の充填材を充填する。
【0025】
(3.地盤の掘削)
本実施形態では、次に、
図4(a)に示すようにグローリーホール12を含む深礎杭の形成範囲11で地盤の掘削を開始する。本実施形態では立坑13の上端外縁(坑口)をコンクリート等によるガイドウォール14によって補強し、地盤の掘削は重機4による削岩や爆薬等の発破によって行う。また、掘削作業と並行してコンクリート吹付による立坑13の孔壁保護も行われる。
【0026】
地盤の掘削により生じる掘削ずりは、グローリーホール12に投入することで立坑13から排出し、前記と同様、横坑2から外部へと搬出する。またグローリーホール12の鋼管121は掘削の進行に応じて上部から順に切断して撤去してゆく。
【0027】
このように地盤の掘削を行う途中で、本実施形態では
図4(b)に示すように立坑13の上部に防音蓋5を設置する。防音蓋5は防音機構を有する蓋体であり、立坑13を塞ぐように立坑13の平面位置に配置される。
【0028】
図5は防音蓋5を示す図である。
図5(a)は防音蓋5の平面を示す図であり、
図5(b)は
図5(a)の線a-aに沿った鉛直方向の断面を示す図である。
【0029】
防音蓋5は、支持部51の上に防音パネル52を設けて構成される。
【0030】
支持部51は、水平材511と斜材512を有する。水平材511や斜材512にはH形鋼などの鋼材が用いられる。
【0031】
水平材511は略水平方向に配置され、
図6に例示するように縦横に組み合わせて防音パネル52を支持する平面骨組を形成する。防音蓋5の外周部に位置する水平材511の端部は、立坑13の孔壁のコンクリート内に埋設される。また水平材511による平面骨組の中央部には平面矩形状の開口Aが設けられる。
【0032】
斜材512は水平材511による平面骨組を下方から支持する。斜材512の上端は、開口Aの周囲に位置する水平材511に取付けられる。斜材512は、当該水平材511から外側に向かって斜め下方に延び、その下端が立坑13の孔壁のコンクリートにアンカー等で固定される。
【0033】
防音パネル52は、水平材511による平面骨組の上にチャンネル材等の鋼材を介して設置される。防音パネル52は、前記の開口Aを避けて設けられる。
【0034】
図7は防音パネル52を示す図である。防音パネル52は、骨組材521によって格子状に区画された各平面部分に吸音材522を配置し、これら吸音材522の上下に遮音板523を設けて構成された防音機構である。骨組材521としてはチャンネル材等の鋼材が用いられ、吸音材522としてはグラスウール等が用いられるが、これに限ることはない。遮音板523についても、要求される遮音性を満たすものであれば特に限定されない。
【0035】
骨組材521の上には床材524が設けられる。床材524には例えば縞鋼板やエキスパンドメタルが用いられ、その上面に鉄筋等の資材や掘削作業に必要な機材を載置したり、作業員が移動したりできるようにする。ただし、床材524が上記に限ることはない。
【0036】
図5に示すように、防音パネル52の上にはレール53と防音扉54が設けられる。
【0037】
レール53は防音扉54の移動用のレールである。本実施形態では、一対のレール53が、開口Aの対向する辺のそれぞれに沿って設けられる。これら一対のレール53は、上記辺の方向に沿って開口Aからその両側へと防音蓋5の外周部に向かって延びるように配置される。
【0038】
防音扉54は開口Aを開閉するための扉であり、レール53の上に一対設けられる。防音扉54の構成は
図7で説明したものと同様であり、吸音材522をはじめとする防音機構を防音パネル52と同様に有している。
【0039】
図5は開口Aを開とした状態であり、それぞれの防音扉54が開口Aを避けてレール53の両端部に設けられる。開口Aを閉じる際は、それぞれの防音扉54を矢印Bに示すように開口Aに向かってレール53上を移動させ、開口A上に配置する。これにより、
図8で平面を示すように防音蓋5の開口Aが防音扉54によって閉じられる。防音扉54の移動は例えばワイヤーやウインチを用いて防音扉54を引張ることにより行われ、防音扉54の下面にはレール53上を移動するための車輪(不図示)が設けられるが、防音扉54の移動機構はこれに限らない。
【0040】
防音蓋5を立坑13に設置した後、引き続き前記した掘削方法により
図9(a)に示すように地盤を掘り進め、
図9(b)に示すように所定深さまで地盤の掘削を行うと、掘削を完了する。
【0041】
地盤の掘削時は、重機4による削岩や爆薬等の発破によって工事騒音が生じるが、周囲への騒音の伝播は防音蓋5によって防止される。防音蓋5の開口Aも防音扉54によって閉じられ、防音機能が損なわれることはない。一方、鉄筋等の資材の搬入出、重機4等の機材の搬入出、作業員の出入が必要な時は防音蓋5の開口Aが開とされ、重機4の故障対応や爆薬等の発破時の作業員の退避などを行うことができる。爆薬等の発破時には作業員を防音蓋5上に退避させたうえで防音扉54によって開口Aを閉じる。また防音蓋5の防音パネル52や防音扉54は、資機材の設置ヤードとしても機能する。
【0042】
なお、本実施形態では前記した深礎杭の形成範囲11に加えて防音蓋5の厚さ程度の深さの余掘りを行っている。また立坑13と干渉する横坑2の先端部分は掘削途中の適当な時点で解体し、横坑2内に設置した振動フィーダ21やベルトコンベア22も適当な時点で撤去して横坑2から外部に搬出する。
【0043】
(4.コンクリート17の打設)
この後、重機4等を横坑2から外部に搬出し、防音蓋5を坑内の底面の余掘り部分に吊り降して、深礎杭に必要な鉄筋(不図示)を坑内の所定位置にセットした後、
図10に示すように立坑13および横坑2内にコンクリート17を打設することで深礎杭10が構築される。横坑2内のコンクリート17は、立坑13内のコンクリート17よりも貧配合のコンクリートとすることも可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、防音蓋5を立坑13に設けることで、重機4による削岩や爆薬等の発破などによる地盤の掘削時に、周囲に伝播する騒音を低減でき、昼間だけでなく夜間施工も可能になる。
【0045】
また、防音蓋5は、作業員または資機材が出入りするための開口Aを有しており、掘削用の重機4の故障対応や爆薬等の発破時の作業員の退避などを行うことができる。開口Aは防音扉54により開閉可能とされているので、開口Aによって防音蓋5の防音機能が損なわれることもない。
【0046】
また本実施形態では前記の横坑2とグローリーホール12を先行して設けることで、立坑掘削時の掘削ずりをグローリーホール12を介して下方の横坑2へ排出し、横坑2から外部に搬出することが可能になる。そのため、防音蓋5の開口A等を介して掘削ずりを上方に揚重して搬出する必要はほぼ無い。仮にベッセルやバケット等を用いて防音蓋5の開口Aから掘削ずりを上方に揚重して搬出しようとする場合、作業効率が悪くなるが、本実施形態のようにグローリーホール12を介して掘削ずりを下方の横坑2へ排出し、横坑2から外部に搬出する場合、そのような効率面の問題は生じず、掘削ずりを容易に搬出できる。
【0047】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば防音蓋5は防音機構を有していればよく、防音蓋5あるいは防音機構としての防音パネル52の構成は前記に限らない。一例として、本実施形態では防音蓋5を支持部51によって孔壁に支持しているが、防音蓋5の支持方法はこれに限らず、例えばガイドウォール14の上に設けた吊下装置から吊材によって吊り支持することも可能であり、孔壁に設けたブラケットに防音蓋5を支持させてもよい。また防音蓋5の平面サイズを立坑13よりも大きくし、その周縁部をガイドウォール14上に配置してもよい。これらの場合、前記した支持部51を省略することも可能である。その他、開口Aを複数箇所設け、それぞれの開口Aを防音扉54によって開閉可能とすることなども可能である。
【0048】
また
図11に示すように、防音蓋5の下面に、照明装置55、散水装置56、集塵装置57、センサ58等を設けてもよい。防音蓋5に照明装置55を設けることで、防音蓋5の下方の立坑13の暗所を照らすことができて掘削作業の助けになり、夜間施工等も可能になる。また防音蓋5に散水装置56や集塵装置57を設けることで、地盤の掘削に伴う粉塵対策が可能になる。
【0049】
センサ58は掘削機などの重機4の動きや立坑13の出来形を計測するためのものであり、例えばカメラやレーザースキャナなどが用いられる。防音蓋5の上にはセンサ58の計測データを無線LAN等の無線通信手段により地上のコンピュータ(不図示)へと送信するための通信設備59が設けられ、計測データによる工事管理を地上で行うことも可能である。例えば自動掘削機による自動掘削を行う場合、自動掘削機の動きをGPS(Global Positioning System)によって計測しようとしても防音蓋5で塞がれた立坑13内ではGPSがうまく機能しない恐れがあるので、防音蓋5に別途上記のようなセンサ58を設けて自動掘削機の動きを計測し、計測データをリアルタイムで地上に送信し監視するのは有効である。また、照明装置55、散水装置56、集塵装置57、センサ58、通信設備59等に電力を供給するための発電設備を防音蓋5に設けることも可能である。
【0050】
その他、防音蓋5上と防音蓋5の下方の坑内との間を作業員等が移動するためのエレベータや階段などの昇降設備を、防音蓋5を貫通するように設けてもよい。また防音蓋5を貫通するように風管を設けることもできる。さらに、防音蓋5の防音パネル52と立坑13の孔壁の間には実際には若干の隙間があるが、防音蓋5の外周部にゴム板等の弾性板を設け、弾性板によりこの隙間を塞いで更に高い防音機能を得ることも可能である。
【0051】
また本実施形態ではコンクリート17の打設前に重機4等を横坑2から搬出するが、重機4等を防音蓋5の開口Aを介して上方に搬出することも可能である。また場合によっては地盤の掘削時の掘削ずりを防音蓋5の開口Aを介して上方に搬出することも考えられ、この場合前記の横坑2やグローリーホール12を省略することも可能である。
【0052】
さらに、
図12(a)に示すように横坑2は深礎杭の形成範囲11より低い位置に設けるようにしてもよく、この場合は前記と同様の工程により掘削等を行った後、
図12(b)に示すように立坑13と横坑2およびこれらの間のグローリーホール12にコンクリート17を打設することで深礎杭10aが構築される。この場合、掘削に用いた重機4等は、横坑2からではなく防音蓋5の開口Aを介して上方へと搬出する。
【0053】
さらに、本実施形態ではレイズボーリングマシン3を用いて地盤を横坑2まで下方に穿孔して孔を形成した後、上方への掘削を行い当該孔を拡径することでグローリーホール12を容易に形成できるが、グローリーホール12の形成方法はこれに限らない。例えば地表面から地盤を下方に掘削することで、上記のような穿孔作業を経ずに直接グローリーホール12を形成することも可能である。地盤の掘削には、ハンマーによってビットに打撃を与え当該ビットにより地盤を掘削するダウンザホールハンマーや、ケーシングを全周回転させながら地盤に挿入しつつその内側の地盤の掘削を行う全旋回オールケーシングを用いることができ、施工条件などにもよるが短期間でグローリーホール12を形成できる可能性がある。
【0054】
また、本実施形態ではグローリーホール12に鋼管121を挿入してグローリーホール12の孔壁を鋼管121で保護しているが、これに限らず、グローリーホール12の孔壁が丈夫な場合は鋼管121を省略することも可能である。ただし、グローリーホール12を鋼管121で保護することにより掘削ずりの投入時に孔壁が徐々に崩れるのを確実に防止できる。また孔壁保護をコンクリート吹付により行う場合、爆薬等の発破時の衝撃によって孔壁が崩れる可能性があるが、鋼管121によって保護する場合、そのような心配もない。
【0055】
また本実施形態では地下構造物として深礎杭を構築する例を説明しており、深礎杭のような大規模な地下構造物では工事騒音も大きくなるので本実施形態のように防音蓋5により周囲への騒音の伝播を防ぐことが特に有効である。ただし、地下構造物は深礎杭に限ることはなく、例えばタンクなどの容器構造物等であってもよい。また、本実施形態では防音蓋5が最終的にコンクリート17内に埋設され、解体の手間を省略できるが、防音蓋5を地上に引き上げて解体することも可能である。
【0056】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0057】
1:山
2:横坑
3:レイズボーリングマシン
4:重機
5:防音蓋
10、10a:深礎杭
12:グローリーホール
13:立坑
51:支持部
52:防音パネル
53:レール
54:防音扉
55:照明装置
56:散水装置
57:集塵装置
58:センサ
59:通信設備