(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】X線管
(51)【国際特許分類】
H01J 35/06 20060101AFI20221121BHJP
H01J 35/16 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
H01J35/06 E
H01J35/06 H
H01J35/16
(21)【出願番号】P 2019105918
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 準基
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-076213(JP,A)
【文献】実開平5-61951(JP,U)
【文献】特開2011-134498(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0012632(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/00-35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状に形成され第1位置に位置する第1面及び第2位置に位置し前記第1面の反対側の第2面を含む保持部材と、前記保持部材の前記第2面に支持され前記第2位置から第3位置まで中心軸線に沿って延在し電子を放出する電子銃と、を有する陰極と、
前記電子銃を囲み環状に形成され前記第2位置にて前記保持部材の前記第2面に接続され前記第2位置と前記第3位置との間の第4位置まで前記第2位置から延在した内側壁と、前記内側壁を囲み環状に形成され前記第4位置と前記第1位置との間の第5位置まで前記第4位置から延在した外側壁と、環状に形成され前記第4位置にて前記内側壁と前記外側壁とを接続した接続部と、を有する接合部品と、
前記接合部品を囲み筒状に形成され前記第5位置にて前記外側壁に接続され前記第5位置から前記第4位置を越えて第6位置まで延在した第1筒部と、
前記第2位置から向かって前記第1位置を越えた第7位置に位置する環状の接続面及び前記第7位置に位置し前記接続面から連続し前記接続面より内側の環状の接合面を含み筒状に形成された第1部分と、前記第7位置にて前記接続面に接続され前記第1部分と一体に形成され前記第7位置から前記第4位置を越えて第8位置まで延出し筒状に形成された第2部分と、を有する第1外囲器と、
筒状に形成され前記第7位置にて前記接合面に接続され前記第2部分で囲まれた第2筒部と、
筒状に形成され前記中心軸線に直交する方向において前記第1筒部と前記第2筒部との間に位置し前記第2筒部に接続され前記第1位置と前記第4位置との間にて前記第2筒部に囲まれ前記第6位置にて前記第1筒部に接続された第3筒部と、
前記中心軸線に沿った方向に前記電子銃と対向し前記電子銃から放出された電子が衝突することによりX線を放出する焦点が形成される陽極ターゲットと、
前記陽極ターゲットを支持し前記第1外囲器の前記第2部分に接続された第2外囲器と、を備える、
X線管。
【請求項2】
前記第3筒部は、少なくとも前記第6位置から前記第5位置まで延在している、
請求項1に記載のX線管。
【請求項3】
前記第1筒部は、前記第3筒部に接した第1厚肉部と、前記第3筒部に接した第2厚肉部と、前記第1厚肉部と前記第2厚肉部との間に位置し前記第3筒部に隙間を置いて設けられた薄肉部と、を有する、
請求項1に記載のX線管。
【請求項4】
前記第3筒部は、前記第1筒部に接した第1厚肉部と、前記第1筒部に接した第2厚肉部と、前記第1厚肉部と前記第2厚肉部との間に位置し前記第1筒部に隙間を置いて設けられた薄肉部と、を有する、
請求項1に記載のX線管。
【請求項5】
前記接合部品、前記第1筒部、前記第2筒部、及び前記第3筒部は、それぞれ金属で形成され、
前記第1外囲器は、ガラス又は電気絶縁性のセラミックで形成されている、
請求項1に記載のX線管。
【請求項6】
前記前記接合部品、前記第2筒部、及び前記第3筒部は、それぞれコバールで形成され、
前記第1筒部は、純鉄、ステンレス鋼、又は真鍮で形成されている、
請求項5に記載のX線管。
【請求項7】
前記接合部品は、ろう接により前記保持部材に接合され、
前記第2筒部は、ろう接により前記第1外囲器に接合され、
前記第3筒部は、ろう接により前記第2筒部に接合され、
前記第1筒部は、溶接により前記接合部品に接合され、
前記第1筒部は、溶接により前記第3筒部に接合されている、
請求項1又は6に記載のX線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線管に関する。
【背景技術】
【0002】
分析用やその他の用途のX線管の真空外囲器は、金属と、セラミック、ガラスなどの絶縁体で形成されている。X線管の各部材は、組立の工程において、ろう接、溶接、又はガラス封着等によって接合され、真空を保持する構造を持っている。特に、セラミック部材及び金属部材間の接合、並びに金属部材同士の接合は、ろう接又は溶接により接合されている。
【0003】
ところで、各部材には寸法公差が設けられ、特に嵌合部には両部材の公差分のセンターずれが生じる上に、レバー比に応じたガタが生じ、組立部材の数に応じて双方が積みあがり、完成形状でのセンターずれがより大きくなる。これにより、同製品間でも焦点にずれが生じる場合がある。例えば、X線管を使用する装置において、X線管を交換した後、交換前と同じX線強度が得られない場合がある。その場合、X線検出器を調整する工数が発生することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3152717号公報
【文献】特許第5370967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、焦点の位置ずれを低減することが可能なX線管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るX線管は、
円板状に形成され第1位置に位置する第1面及び第2位置に位置し前記第1面の反対側の第2面を含む保持部材と、前記保持部材の前記第2面に支持され前記第2位置から第3位置まで中心軸線に沿って延在し電子を放出する電子銃と、を有する陰極と、前記電子銃を囲み環状に形成され前記第2位置にて前記保持部材の前記第2面に接続され前記第2位置と前記第3位置との間の第4位置まで前記第2位置から延在した内側壁と、前記内側壁を囲み環状に形成され前記第4位置と前記第1位置との間の第5位置まで前記第4位置から延在した外側壁と、環状に形成され前記第4位置にて前記内側壁と前記外側壁とを接続した接続部と、を有する接合部品と、前記接合部品を囲み筒状に形成され前記第5位置にて前記外側壁に接続され前記第5位置から前記第4位置を越えて第6位置まで延在した第1筒部と、前記第2位置から向かって前記第1位置を越えた第7位置に位置する環状の接続面及び前記第7位置に位置し前記接続面から連続し前記接続面より内側の環状の接合面を含み筒状に形成された第1部分と、前記第7位置にて前記接続面に接続され前記第1部分と一体に形成され前記第7位置から前記第4位置を越えて第8位置まで延出し筒状に形成された第2部分と、を有する第1外囲器と、筒状に形成され前記第7位置にて前記接合面に接続され前記第2部分で囲まれた第2筒部と、筒状に形成され前記中心軸線に直交する方向において前記第1筒部と前記第2筒部との間に位置し前記第2筒部に接続され前記第1位置と前記第4位置との間にて前記第2筒部に囲まれ前記第6位置にて前記第1筒部に接続された第3筒部と、前記中心軸線に沿った方向に前記電子銃と対向し前記電子銃から放出された電子が衝突することによりX線を放出する焦点が形成される陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットを支持し前記第1外囲器の前記第2部分に接続された第2外囲器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、比較例に係るX線管を示す断面図である。
【
図2】
図2は、上記比較例に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、陰極及び接合部品を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に続き、上記比較例に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、陰極、接合部品、及び第1筒部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に続き、上記比較例に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、陰極、接合部品、第1筒部、及び第4筒部を示す断面図である。
【
図5】
図5は、上記比較例に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、第1外囲器、第2筒部、及び第3筒部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図4及び
図5に続き、上記比較例に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、陰極、接合部品、第1筒部、第2筒部、第3筒部、第4筒部、及び第1外囲器を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に続き、上記比較例に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、陰極、接合部品、第1筒部、第2筒部、第3筒部、第4筒部、第1外囲器、陽極ターゲット、及び第2外囲器を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るX線管を示す断面図である。
【
図9】
図9は、上記実施形態に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、陰極及び接合部品を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図9に続き、上記実施形態に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、陰極、接合部品、及び第1筒部を示す断面図である。
【
図11】
図11は、上記実施形態に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、第1外囲器、第2筒部、及び第3筒部を示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図10及び
図11に続き、上記実施形態に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、陰極、接合部品、第1筒部、第2筒部、第3筒部、及び第1外囲器を示す断面図である。
【
図13】
図13は、
図12に続き、上記実施形態に係るX線管の製造方法を説明するための図であり、陰極、接合部品、第1筒部、第2筒部、第3筒部、第1外囲器、陽極ターゲット、及び第2外囲器を示す断面図である。
【
図14】
図14は、上記実施形態の変形例1に係るX線管の第1筒部及び第3筒部を示す断面図である。
【
図15】
図15は、上記実施形態の変形例2に係るX線管の第1筒部及び第3筒部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態及び比較例について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(比較例)
まず、比較例に係るX線管1について説明する。
図1は、本比較例に係るX線管1を示す断面図である。
図1に示すように、第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3、第4位置P4、第5位置P5、第6位置P6、第7位置P7、第8位置P8、及び第9位置P9は、それぞれ、X線管1の中心軸線CEに沿った方向の位置を示している。
X線管1は、陰極2、接合部品5、第1筒部11、第4筒部14、第1外囲器30、第2筒部12、第3筒部13、陽極ターゲット20、及び第2外囲器40を備えている。
【0010】
陰極2は、保持部材3と電子銃4とを有している。保持部材3は、円板状に形成されている。保持部材3は、第1位置P1に位置する第1面S1と、第2位置P2に位置し第1面S1の反対側の第2面S2と、を含んでいる。電子銃4は、保持部材3の第2面S2に支持されている。電子銃4は、第2位置P2から第3位置P3まで中心軸線CEに沿って延在している方が望ましい。電子銃4は、第3位置P3側から電子を放出するように構成されている。図示しないが、電子銃4は、電子(熱電子)を放出するフィラメントを有している。
【0011】
保持部材3及び電子銃4は、電気絶縁性のセラミック及び金属で形成されている。本比較例において、保持部材3は、電気絶縁性のセラミックを基材として形成され、保持部材3の第2面S2は、メタライズ層3aで形成されている。言い換えると、メタライズ層3aは、第2面S2の位置において、電気絶縁性のセラミックで構成された基材の上に形成されている。なお、メタライズ層3aは、環状に形成され、電子銃4を囲んでいる。
ここで、陰極2は、基準点Prを有している。本比較例において、基準点Prは、第1面S1の中心(幾何学的な中心)に位置している。基準点Prは、X線管1の中心軸線CE上に位置している方が望ましい。
【0012】
接合部品5は、コバール(KOV)で形成されている。接合部品5は、内側壁5a、外側壁5b、及び接続部5cを有している。
内側壁5aは、電子銃4を囲み、環状に形成されている。内側壁5aは、全周にわたって電子銃4に隙間を空けて位置している。内側壁5aは、第2位置P2にて保持部材3の第2面S2に接続されている。内側壁5a(接合部品5)は、ろう接により保持部材3の第2面S2に全周にわたって接合されている。なお、図中、ろう接部には符号Bを付している。接合部品5は、保持部材3に気密に接合されている。第2面S2は、セラミックではなくメタライズ層3aで形成されている。そのため、内側壁5aをセラミックにろう接した場合と比較し、ろう接不良の発生を抑制することができる。内側壁5aは、第2位置P2と第3位置P3との間の第4位置P4まで、第2位置P2から延在している。
【0013】
外側壁5bは、内側壁5aを囲み、環状に形成されている。外側壁5bは、第4位置P4と第3位置P3との間の第5位置P5まで、内側壁5aと対向する位置から延在している。
接続部5cは、環状に形成され、内側壁5aと外側壁5bとの間に位置している。接続部5cは、内側壁5aと外側壁5bとを接続し、内側壁5a及び外側壁5bと一体に形成されている。
【0014】
第1筒部11は、ステンレス鋼(SUS)で形成されている。第1筒部11は、接合部品5を囲み、筒状に形成されている。上記外側壁5b(接合部品5)は、第1筒部11に嵌合されている。第1筒部11は、第5位置P5から第1位置P1を越えて第9位置P9まで延在している。第1筒部11は、第5位置P5にて外側壁5b(接合部品5)に接続されている。本比較例において、第1筒部11は、溶接としてのTig(Tungsten Inert Gas)溶接により外側壁5b(接合部品5)に全周にわたって接合されている。なお、図中、溶接部には符号Wを付している。第1筒部11は、接合部品5に気密に接合されている。
【0015】
第4筒部14は、ステンレス鋼で形成されている。第4筒部14は、第1筒部11を囲み、筒状に形成されている。第1筒部11は、第4筒部14に嵌合されている。第4筒部14は、第9位置P9から第5位置P5を越えて第6位置P6まで延在している。第4筒部14は、第9位置P9にて第1筒部11に接続されている。本比較例において、第4筒部14は、溶接としてのTig溶接により第1筒部11に全周にわたって接合されている。第4筒部14は、第1筒部11に気密に接合されている。
【0016】
上述した第1筒部11及び第4筒部14を形成する材料は、ステンレス鋼など、コバールより安価な材料である方が望ましい。上記安価な材料としては、ステンレス鋼の他、純鉄などの金属、及び真鍮などの合金を挙げることができる。
【0017】
第1外囲器30は、電気絶縁性のセラミック、又はガラスで形成されている。第1外囲器30は、第1部分31と、第2部分32と、を有している。
第1部分31は、筒状に形成されている。第1部分31は、環状の接続面Sc及び環状の接合面Sbを含んでいる。接続面Sc及び接合面Sbは、それぞれ、第2位置P2から向かって第1位置P1を越えた第7位置P7に位置している。接合面Sbは、接続面Scから連続し、接続面Scより内側に位置している。
【0018】
本比較例において、第1外囲器30は、電気絶縁性のセラミック又はガラスを基材として形成され、第1部分31の接合面Sbは、メタライズ層31aで形成されている。言い換えると、メタライズ層31aは、接合面Sbの位置において、電気絶縁性のセラミック又はガラスで構成された基材の上に形成されている。なお、メタライズ層31aは、環状に形成されている。
【0019】
第2部分32は、筒状に形成されている。第2部分32は、第7位置P7にて接続面Scに接続され、第1部分31と一体に形成されている。第2部分32は、第7位置P7から第5位置P5を越えて第8位置P8まで延出している。本比較例において、上記第6位置P6は、第8位置P8と一致している。
第1部分31及び第2部分32の中心軸は、中心軸線CEと一致している。
【0020】
第2筒部12は、コバールで形成されている。第2筒部12は、筒状に形成され、第2部分32に囲まれている。第2筒部12は、全周にわたって第2部分32に隙間を空けて位置している。第2筒部12は、第7位置P7にて接合面Sbに接続されている。第2筒部12は、ろう接により第1部分31の接合面Sbに全周にわたって接合されている。第2筒部12は、第1外囲器30に気密に接合されている。接合面Sbは、セラミック及びガラスではなく、メタライズ層31aで形成されている。そのため、第2筒部12をセラミック又はガラスにろう接した場合と比較し、ろう接不良の発生を抑制することができる。本比較例において、第2筒部12は、第5位置P5と第6位置P6との間の位置まで、第7位置P7から延在している。
【0021】
第3筒部13は、コバールで形成されている。第3筒部13は、筒状に形成され、中心軸線CEに直交する方向において、第4筒部14と第2筒部12との間に位置している。第3筒部13は、第2筒部12に嵌合されている。また、上記第4筒部14は、第3筒部13に嵌合されている。第3筒部13は、第2筒部12に接続されている。第3筒部13は、ろう接により第2筒部12に全周にわたって接合されている。第3筒部13は、第2筒部12に気密に接合されている。第3筒部13は、第5位置P5と第6位置P6との間にて第2筒部12に囲まれている。第3筒部13は、第2筒部12と対向する位置から第6位置P6まで延在している。第3筒部13は、第6位置P6にて第4筒部14に接続されている。本比較例において、第4筒部14は、溶接としてのTig溶接により第3筒部13に全周にわたって接合されている。第4筒部14は、第3筒部13に気密に接合されている。
【0022】
陽極ターゲット20は、中心軸線CEに沿った方向に電子銃4と対向している。陽極ターゲット20は、電子銃4から放出された電子が衝突することによりX線を放出する焦点Fが形成される。陽極ターゲット20は、モリブデン、銅などの金属で形成されている。但し、陽極ターゲット20の材料は、モリブデン及び銅に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、X線回折法を実施するためのX線管1である場合、陽極ターゲット20は、X線回折法に適した材料で形成されていてもよい。
【0023】
第2外囲器40は、陽極ターゲット20を支持し、第1外囲器30の第2部分32に接続されている。第2外囲器40は、支持部材41、突出部42、接続部43、及びX線透過窓45を有している。
支持部材41は、円板状に形成され、陽極ターゲット20を支持している。なお、陽極ターゲット20は、中心軸線CEに沿った方向にて、陰極2と支持部材41との間に位置している。
【0024】
突出部42は、筒状に形成されている。突出部42は、支持部材41と一体に形成されている。突出部42は、全周にわたって支持部材41に気密に接続されている。突出部42は、支持部材41のうち陽極ターゲット20を支持する側の面に接続されている。突出部42は、支持部材41から第1外囲器30に向かって突出している。突出部42の一部には、X線透過口OPが形成されている。
本比較例において、支持部材41及び突出部42は、それぞれ銅で形成されている。但し、支持部材41及び突出部42は、銅以外の金属、又は合金で形成されていてもよい。
【0025】
接続部43は、筒状に形成されている。接続部43は、突出部42と第1外囲器30との間に位置し、突出部42と第1外囲器30とを気密に接合している。本比較例において、接続部43は、コバールで形成されている。接続部43は、ろう接により突出部42に全周にわたって接合されている。接続部43は、第1外囲器30の第2部分32に、融着又はろう接により全周にわたって接合されている。
【0026】
X線透過窓45は、突出部42のX線透過口OPを気密に閉塞している。X線透過窓45は、X線透過材として、例えばベリリウムで形成されている。X線透過窓45は、薄板で形成され、突出部42より薄肉に形成されている。
【0027】
保持部材3、接合部品5、第1筒部11、第2筒部12、第3筒部13、第4筒部14、第1外囲器30、及び第2外囲器40は、内部に気密な真空空間を保持し、電子銃4及び陽極ターゲット20は、上記真空空間の内部に位置している。
電子銃4(陰極2)にフィラメント電流と負の電圧とが与えられ、陽極ターゲット20の電位は相対的に正に設定される。本比較例において、陽極ターゲット20は接地されている。これにより、電子銃4から放出された電子は、陽極ターゲット20に衝突し、焦点Fから放出されたX線は、X線透過窓45を透過し、X線管1の外部に放出される。
【0028】
次に、本比較例に係るX線管1の製造方法について説明する。
図2は、本比較例に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、陰極2及び接合部品5を示す断面図である。
図2に示すように、X線管1の製造が開始されると、まず、陰極2と、接合部品5と、を用意し、保持部材3のメタライズ層3aと、接合部品5の内側壁5aと、の間にろう材を配置する。続いて、内側壁5aを、メタライズ層3aに、第2位置P2にて、ろう接により接合する。これにより、陰極2と、接合部品5と、を有するアセンブリAa1が形成される。
【0029】
図3は、
図2に続き、本比較例に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、陰極2、接合部品5、及び第1筒部11を示す断面図である。
図3に示すように、次に、第1筒部11をさらに用意し、第1筒部11に外側壁5b(アセンブリAa1)を嵌合する。次いで、第1筒部11と外側壁5bとを、第5位置P5にてTig溶接により接合する。これにより、アセンブリAa1と、第1筒部11と、を有するアセンブリAa2が形成される。
【0030】
図4は、
図3に続き、本比較例に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、陰極2、接合部品5、第1筒部11、及び第4筒部14を示す断面図である。
図4に示すように、続いて、第4筒部14をさらに用意し、第4筒部14に第1筒部11(アセンブリAa2)を嵌合する。次いで、第4筒部14と第1筒部11とを、第9位置P9にてTig溶接により接合する。これにより、アセンブリAa2と、第4筒部14と、を有するアセンブリAa3が形成される。
【0031】
図5は、本比較例に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、第1外囲器30、第2筒部12、及び第3筒部13を示す断面図である。
図5に示すように、一方、第1外囲器30と、第2筒部12と、第3筒部13と、を用意する。次いで、第2筒部12に第3筒部13を嵌合する。その後、メタライズ層31aと第2筒部12との間にろう材を配置し、また、第2筒部12の端部と第3筒部13の外周面とによって形成される段差部にろう材を配置する。続いて、第2筒部12をメタライズ層31aに、第7位置P7にて、ろう接により接合し、第3筒部13を第2筒部12にろう接により接合する。これにより、第1外囲器30と、第2筒部12と、第3筒部13と、を有するアセンブリAa4が形成される。なお、第2筒部12に対して第3筒部13を挿入する度合いを調整することで、第1外囲器30の公差を吸収することができ、第3筒部13の端と、第1外囲器30の端とを面一にすることができる。
【0032】
図6は、
図4及び
図5に続き、本比較例に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、陰極2、接合部品5、第1筒部11、第2筒部12、第3筒部13、第4筒部14、及び第1外囲器30を示す断面図である。
図6に示すように、アセンブリAa3及びアセンブリAa4をそれぞれ形成した後、第3筒部13に第4筒部14(アセンブリAa3)を嵌合する。次いで、第3筒部13と第4筒部14とを、第6位置P6にてTig溶接により接合する。これにより、アセンブリAa3と、アセンブリAa4と、を有するアセンブリAa5が形成される。
【0033】
図7は、
図6に続き、本比較例に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、陰極2、接合部品5、第1筒部11、第2筒部12、第3筒部13、第4筒部14、第1外囲器30、陽極ターゲット20、及び第2外囲器40を示す断面図である。
図7に示すように、アセンブリAa5の他に、アセンブリAa6を用意する。ここで、アセンブリAa6は、陽極ターゲット20と、第2外囲器40と、を有している。次いで、接続部43を、第2部分32に、融着又はろう接により接合する。
これにより、X線管1が完成する(
図1)。
【0034】
X線管1の製造工程において、ろう接及びTig溶接が用いられるが、X線管1の全ての部材を1回のろう接で組立てることは困難であり、上述したように、各種のアセンブリAaを順に形成している。そのため、溶接やろう接の個所には制約がある。例えば、内部に入り組んだ構造ではTig溶接のトーチを挿入するスペースが必要である。例えば、上記第6位置P6が、第8位置P8より第5位置P5に近接している場合、第3筒部13と第4筒部14との溶接個所までTig溶接のためのトーチを挿入することが困難となる。また、ろう接に関しても、その仕上がり確認のため流れを確認できる構造をとることが好ましい。
【0035】
上記のように構成された比較例に係るX線管1及びその製造方法によれば、焦点Fの位置ずれを抑制するため、基準点Prは、X線管1の中心軸線CE上に位置している方が望ましい。しかしながら、接合部品5、第1筒部11、第2筒部12、第3筒部13、及び第4筒部14は、嵌合により位置合わせされる。そのため、嵌合される双方の部材の公差の他、基準点Prとのレバー比に応じたガタが生じてしまう。例えば、第6位置P6における接合部(溶接部W)は、他の接合部に比べて基準点Prからの距離が遠く、レバー比が比較的大きく、ガタの大きな要因となる。
【0036】
そこで、嵌合される部材間の公差を狭めることが考えられるが、上記公差を狭めると、作業性(例えば、嵌合)に支障をきたすため、部材間にある程度の隙間を設ける必要があるが、上記隙間が存在する限り必ずガタが生じるものである。なお、部材へのメッキ等の処理の観点からも、上記隙間を設ける必要があるものである。
上記のことから、比較例に係るX線管1では、基準点PrをX線管1の中心軸線CE上に位置させることは困難であり、焦点Fの位置ずれを低減することは困難である。
【0037】
(実施形態)
次に、実施形態に係るX線管1について説明する。
図8は、本実施形態に係るX線管1を示す断面図である。
図8に示すように、X線管1は、陰極2、接合部品5、第1筒部11、第1外囲器30、第2筒部12、第3筒部13、陽極ターゲット20、及び第2外囲器40を備えている。
【0038】
陰極2は、上述した比較例の陰極2と同様に構成されている。例えば、陰極2は、円板状に形成され第1位置P1に位置する第1面S1及び第2位置P2に位置し第1面S1の反対側の第2面S2を含む保持部材3と、保持部材3の第2面S2に支持され第2位置P2から第3位置P3まで中心軸線CEに沿って延在し電子を放出する電子銃4と、を有している。本実施形態において、電子銃4は、第2位置P2から第8位置P8の手前まで延在している。
【0039】
本実施形態において、保持部材3は、電気絶縁性のセラミックを基材として形成され、保持部材3の第2面S2は、メタライズ層3aで形成されている。また、基準点Prは、第1面S1の中心に位置している。本実施形態では、上述した比較例より、基準点Prを中心軸線CEに近接させたり、基準点Prを中心軸線CE上に位置させたり、することが可能である。
【0040】
接合部品5、第1筒部11、第2筒部12、及び第3筒部13は、それぞれ金属で形成されている。
接合部品5は、コバール(KOV)で形成されている。接合部品5は、内側壁5a、外側壁5b、及び接続部5cを有している。
内側壁5aは、電子銃4を囲み、環状に形成されている。内側壁5aは、全周にわたって電子銃4に隙間を空けて位置している。内側壁5aは、第2位置P2にて保持部材3の第2面S2に接続されている。内側壁5a(接合部品5)は、ろう接により保持部材3の第2面S2に全周にわたって接合されている。接合部品5は、保持部材3に気密に接合されている。第2面S2は、セラミックではなくメタライズ層3aで形成されている。そのため、内側壁5aをセラミックにろう接した場合と比較し、ろう接不良の発生を抑制することができる。内側壁5aは、第2位置P2と第3位置P3との間の第4位置P4まで、第2位置P2から延在している。
【0041】
外側壁5bは、内側壁5aを囲み、環状に形成されている。外側壁5bは、第4位置P4と第1位置P1との間の第5位置P5まで、第4位置P4から延在している。本実施形態において、第5位置P5は、第4位置P4と第2位置P2との間である。
接続部5cは、環状に形成され、内側壁5aと外側壁5bとの間に位置している。接続部5cは、内側壁5aと外側壁5bとを接続し、内側壁5a及び外側壁5bと一体に形成されている。
【0042】
内側壁5a、外側壁5b、及び接続部5cで囲まれた空間に、金属メッシュなどの伝熱部材が設けられていてもよい。これにより、接続部5cだけではなく伝熱部材も伝熱経路となり、内側壁5aから外側壁5b側に熱を伝え易くすることができる。
【0043】
第1筒部11は、ステンレス鋼で形成されている。第1筒部11は、接合部品5を囲み、筒状に形成されている。上記外側壁5b(接合部品5)は、第1筒部11に嵌合されている。第1筒部11は、第5位置P5から第4位置P4を越えて第6位置P6まで延在している。第1筒部11は、第5位置P5にて外側壁5b(接合部品5)に接続されている。本実施形態において、第1筒部11は、溶接としてのTig溶接により外側壁5b(接合部品5)に全周にわたって接合されている。第1筒部11は、接合部品5に気密に接合されている。
上述した第1筒部11を形成する材料は、ステンレス鋼など、コバールより安価な材料である方が望ましい。上記安価な材料は、上述した純鉄、真鍮などである。
【0044】
第1外囲器30は、電気絶縁性のセラミック、又はガラスで形成されている。第1外囲器30は、第1部分31と、第2部分32と、を有している。
第1部分31は、筒状に形成されている。第1部分31は、環状の接続面Sc及び環状の接合面Sbを含んでいる。接続面Sc及び接合面Sbは、それぞれ、第2位置P2から向かって第1位置P1を越えた第7位置P7に位置している。接合面Sbは、接続面Scから連続し、接続面Scより内側に位置している。
【0045】
本実施形態において、第1外囲器30は、電気絶縁性のセラミック又はガラスを基材として形成され、第1部分31の接合面Sbは、メタライズ層31aで形成されている。言い換えると、メタライズ層31aは、接合面Sbの位置において、電気絶縁性のセラミック又はガラスで構成された基材の上に形成されている。なお、メタライズ層31aは、環状に形成されている。
【0046】
第2部分32は、筒状に形成されている。第2部分32は、第7位置P7にて接続面Scに接続され、第1部分31と一体に形成されている。第2部分32は、第7位置P7から第4位置P4を越えて第8位置P8まで延出している。本実施形態において、上記第6位置P6は、第8位置P8と一致している。
【0047】
なお、第6位置P6は、第8位置P8と一致していなくともよい。第6位置P6は、第8位置P8より陽極ターゲット20側であったり、又は、第3位置P3より第4位置P4側であったり、してもよい。但し、中心軸線CEに対する基準点Prの位置ずれを抑制し、かつ、Tig溶接のトーチの挿入を容易にする観点から、第6位置P6は、第8位置P8と第3位置P3との間にある方が望ましい。
第1部分31及び第2部分32の中心軸は、中心軸線CEと一致している。
【0048】
第2筒部12は、コバールで形成されている。第2筒部12は、筒状に形成され、第2部分32に囲まれている。第2筒部12は、全周にわたって第2部分32に隙間を空けて位置している。第2筒部12は、第7位置P7にて接合面Sbに接続されている。第2筒部12は、ろう接により第1部分31の接合面Sbに全周にわたって接合されている。第2筒部12は、第1外囲器30に気密に接合されている。接合面Sbは、セラミック及びガラスではなく、メタライズ層31aで形成されている。そのため、第2筒部12をセラミック又はガラスにろう接した場合と比較し、ろう接不良の発生を抑制することができる。本実施形態において、第2筒部12は、第5位置P5と第6位置P6との間の位置まで、第7位置P7から延在している。
【0049】
第3筒部13は、コバールで形成されている。第3筒部13は、筒状に形成され、中心軸線CEに直交する方向において、第1筒部11と第2筒部12との間に位置している。第3筒部13は、第2筒部12に嵌合されている。また、上記第1筒部11は、第3筒部13に嵌合されている。第3筒部13は、第2筒部12に接続されている。第3筒部13は、ろう接により第2筒部12に全周にわたって接合されている。第3筒部13は、第2筒部12に気密に接合されている。第3筒部13は、第1位置P1と第4位置P4との間にて第2筒部12に囲まれている。本実施形態において、第3筒部13は、第5位置P5と第4位置P4との間にて第2筒部12に囲まれている。
【0050】
第3筒部13は、第6位置P6にて第1筒部11に接続されている。本実施形態において、第1筒部11は、溶接としてのTig溶接により第3筒部13に全周にわたって接合されている。第1筒部11は、第3筒部13に気密に接合されている。第3筒部13は、第6位置P6から第5位置P5まで延在している。なお、第3筒部13が延在する長さは、本実施形態に限定されるものではない。第3筒部13は、第6位置P6から第5位置P5を越えて延在していてもよい。すなわち、第3筒部13は、少なくとも第6位置P6から第5位置P5まで延在していればよい。
【0051】
陽極ターゲット20は、中心軸線CEに沿った方向に電子銃4と対向している。陽極ターゲット20は、電子銃4から放出された電子が衝突することによりX線を放出する焦点Fが形成される。陽極ターゲット20は、モリブデン、銅などの金属で形成されている。但し、陽極ターゲット20の材料は、モリブデン及び銅に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、X線回折法を実施するためのX線管1である場合、陽極ターゲット20は、X線回折法に適した材料で形成されていてもよい。
【0052】
第2外囲器40は、陽極ターゲット20を支持し、第1外囲器30の第2部分32に接続されている。第2外囲器40は、支持部材41、突出部42、接続部43、及びX線透過窓45を有している。
支持部材41は、円板状に形成され、陽極ターゲット20を支持している。なお、陽極ターゲット20は、中心軸線CEに沿った方向にて、陰極2と支持部材41との間に位置している。
【0053】
突出部42は、筒状に形成されている。突出部42は、支持部材41と一体に形成されている。突出部42は、全周にわたって支持部材41に気密に接続されている。突出部42は、支持部材41のうち陽極ターゲット20を支持する側の面に接続されている。突出部42は、支持部材41から第1外囲器30に向かって突出している。突出部42の一部には、X線透過口OPが形成されている。
本実施形態において、支持部材41及び突出部42は、それぞれ銅で形成されている。但し、支持部材41及び突出部42は、銅以外の金属、又は合金で形成されていてもよい。
【0054】
接続部43は、筒状に形成されている。接続部43は、突出部42と第1外囲器30との間に位置し、突出部42と第1外囲器30とを気密に接合している。本比較例において、接続部43は、コバールで形成されている。接続部43は、ろう接により突出部42に全周にわたって接合されている。接続部43は、第1外囲器30の第2部分32に、融着又はろう接により全周にわたって接合されている。
【0055】
X線透過窓45は、突出部42のX線透過口OPを気密に閉塞している。X線透過窓45は、X線透過材として、例えばベリリウムで形成されている。X線透過窓45は、薄板で形成され、突出部42より薄肉に形成されている。
【0056】
保持部材3、接合部品5、第1筒部11、第2筒部12、第3筒部13、第1外囲器30、及び第2外囲器40は、内部に気密な真空空間を保持し、電子銃4及び陽極ターゲット20は、上記真空空間の内部に位置している。
電子銃4(陰極2)にフィラメント電流と負の電圧とが与えられ、陽極ターゲット20の電位は相対的に正に設定される。本実施形態において、陽極ターゲット20は接地されている。これにより、電子銃4から放出された電子は、陽極ターゲット20に衝突し、焦点Fから放出されたX線は、X線透過窓45を透過し、X線管1の外部に放出される。
【0057】
次に、本実施形態に係るX線管1の製造方法について説明する。
図9は、本実施形態に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、陰極2及び接合部品5を示す断面図である。
図9に示すように、X線管1の製造が開始されると、まず、陰極2と、接合部品5と、を用意し、保持部材3のメタライズ層3aと、接合部品5の内側壁5aと、の間にろう材を配置する。続いて、内側壁5aを、メタライズ層3aに、第2位置P2にて、ろう接により接合する。これにより、陰極2と、接合部品5と、を有するアセンブリAb1が形成される。
【0058】
図10は、
図9に続き、本実施形態に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、陰極2、接合部品5、及び第1筒部11を示す断面図である。
図10に示すように、次に、第1筒部11をさらに用意し、第1筒部11に外側壁5b(アセンブリAb1)を嵌合する。次いで、第1筒部11と外側壁5bとを、第5位置P5にてTig溶接により接合する。これにより、アセンブリAb1と、第1筒部11と、を有するアセンブリAb2が形成される。
【0059】
図11は、本実施形態に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、第1外囲器30、第2筒部12、及び第3筒部13を示す断面図である。
図11に示すように、一方、第1外囲器30と、第2筒部12と、第3筒部13と、を用意する。次いで、第2筒部12に第3筒部13を嵌合する。その後、メタライズ層31aと第2筒部12との間にろう材を配置し、また、第2筒部12の端部と第3筒部13の外周面とによって形成される段差部にろう材を配置する。続いて、第2筒部12をメタライズ層31aに、第7位置P7にて、ろう接により接合し、第3筒部13を第2筒部12にろう接により接合する。これにより、第1外囲器30と、第2筒部12と、第3筒部13と、を有するアセンブリAb3が形成される。
【0060】
図12は、
図10及び
図11に続き、本実施形態に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、陰極2、接合部品5、第1筒部11、第2筒部12、第3筒部13、及び第1外囲器30を示す断面図である。
図12に示すように、アセンブリAb2及びアセンブリAb3をそれぞれ形成した後、第3筒部13に第1筒部11(アセンブリAb2)を嵌合する。次いで、第3筒部13と第1筒部11とを、第6位置P6にてTig溶接により接合する。これにより、アセンブリAb2と、アセンブリAb3と、を有するアセンブリAb4が形成される。
【0061】
図13は、
図12に続き、本実施形態に係るX線管1の製造方法を説明するための図であり、陰極2、接合部品5、第1筒部11、第2筒部12、第3筒部13、第1外囲器30、陽極ターゲット20、及び第2外囲器40を示す断面図である。
図13に示すように、アセンブリAb4の他に、アセンブリAb5を用意する。ここで、アセンブリAb5は、陽極ターゲット20と、第2外囲器40と、を有している。次いで、接続部43を、第2部分32に、融着又はろう接により接合する。
これにより、X線管1が完成する(
図8)。
【0062】
上記のように構成された実施形態に係るX線管1及びその製造方法によれば、第2筒部12と第3筒部13とのろう接部Bは、第4位置P4より第1位置P1側に位置し、上述した比較例より基準点Prに近接している。そのため、アセンブリAb3において、レバー比に由来するガタをより小さくすることができる。
【0063】
接合部品5は、上述した比較例の接合部品5と異なった構造を有している。接合部品5と第1筒部11との溶接部Wは、第4位置P4より第1位置P1側に位置し、上述した比較例より基準点Prに近接している。そのため、アセンブリAb2において、レバー比に由来するガタをより小さくすることができる。
【0064】
第1筒部11と第3筒部13との溶接部Wは、第6位置P6にある。しかしながら、第1筒部11と第3筒部13とは、第4位置P4より第1位置P1側の第5位置P5にて接触している。そのため、アセンブリAb4において、レバー比に由来するガタをより小さくすることができる。
【0065】
上記のことから、焦点Fの位置ずれを低減することが可能なX線管1を得ることができる。また、本実施形態のX線管1は、第4筒部14無しに形成されている。X線管1の部品点数を、上記比較例より1点削減することができる。これにより、上記比較例と比べ、基準点Prを中心軸線CEに近接させたり、基準点Prを中心軸線CE上に位置させたり、することができる。さらに、X線管1の製造コストを低減したり、X線管1の製造時間を短縮したり、することができる。
【0066】
本発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0067】
例えば、上述した実施形態では、第1筒部11の外径、及び第3筒部13の内径は、全長にわたって均一であった。しかしながら、第1筒部11の外径又は第3筒部13の内径は、全長にわたって不均一であってもよい。これにより、第1筒部11と第3筒部13とを嵌合する際、第3筒部13の内側に第1筒部11を容易に圧入することができる。
図14に示すように、第1筒部11は、第3筒部13に接した第1厚肉部11aと、第3筒部13に接した第2厚肉部11bと、第1厚肉部11aと第2厚肉部11bとの間に位置し第3筒部13に隙間を置いて設けられた薄肉部11cと、を有していてもよい。
図14の例では、第1厚肉部11aは第1筒部11の一端部に位置し、第2厚肉部11bは第1筒部11の他端部に位置している。
図15に示すように、第3筒部13は、第1筒部11に接した第1厚肉部13aと、第1筒部11に接した第2厚肉部13bと、第1厚肉部13aと第2厚肉部13bとの間に位置し第1筒部11に隙間を置いて設けられた薄肉部13cと、を有していてもよい。
図15の例では、第1厚肉部13aは第3筒部13の一端部に位置し、第2厚肉部13bは第3筒部13の他端部に位置している。
【0068】
本発明の実施形態は、上述したX線管1に限定されるものではなく、各種のX線管に適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…X線管、2…陰極、3…保持部材、3a…メタライズ層、S1…第1面、
S2…第2面、4…電子銃、5…接合部品、5a…内側壁、5b…外側壁、
5c…接続部、11…第1筒部、11a…第1厚肉部、11b…第2厚肉部、
11c…薄肉部、12…第2筒部、13…第3筒部、13a…第1厚肉部、
13b…第2厚肉部、13c…薄肉部、14…第4筒部、20…陽極ターゲット、
30…第1外囲器、31…第1部分、31a…メタライズ層、Sc…接続面Sc、
Sb…接合面Sb、32…第2部分、40…第2外囲器、41…支持部材、
42…突出部、OP…X線透過口、43…接続部、45…X線透過窓、CE…中心軸線、
F…焦点、P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9…位置、
Pr…基準点、B…ろう接部、W…溶接部。