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特許7179689エラストマー組成物並びにアクチュエータ及びセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】エラストマー組成物並びにアクチュエータ及びセンサ
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20221121BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20221121BHJP
   H01L 41/193 20060101ALI20221121BHJP
   H01L 41/45 20130101ALI20221121BHJP
【FI】
C08G18/40 009
C08G18/80
H01L41/193
H01L41/45
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019116461
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001291
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代人工知能・ロボット中核技術開発/革新的ロボット要素技術分野/スライドリングマテリアルを用いた柔軟センサーおよびアクチュエータの研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505136963
【氏名又は名称】株式会社ASM
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】中井 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝成
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/108514(WO,A1)
【文献】特開2011-241401(JP,A)
【文献】特開2018-145388(JP,A)
【文献】特開2016-194026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08L 71/02
C08L 101/02
C08G 65/08
H01L 41/193
H01L 41/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含み、成分(B)の官能基の少なくとも一部が成分(A)の環状分子と直接又は間接的に結合されてなり、成分(B)の官能基はイソシアネートであり、成分(C)及び(D)の各反応基は水酸基であり、初期弾性率が0.6~2MPaであるエラストマー組成物。
(A)第1線状分子と、第1線状分子が貫通している環状分子と、第1線状分子の両末端に配置された封鎖基とからなるポリロタキサン
(B)分子量1200~7000の第2線状分子と、その両末端に配置された官能基とからなる架橋剤
(C)分子量300~3000の第3線状分子と、その両末端に配置された前記官能基と反応可能な反応基とを有する2反応成分
(D)分子量300~3000の第4線状分子と、その片末端のみに配置された前記官能基と反応可能な反応基とを有する1反応成分
【請求項2】
前記第2線状分子の分子量は2600~6700である請求項1記載のエラストマー組成物。
【請求項3】
前記エラストマー組成物のヒステリシスロスは5%以下である請求項1又は2記載のエラストマー組成物。
【請求項4】
前記第1~第4の線状分子は、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート又はこれらを含むブロック重合体である請求項1、2又は3記載のエラストマー組成物。
【請求項5】
前記官能基はブロック化イソシアネートである請求項1~4のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項6】
前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(B)は150~600重量部である請求項1~のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項7】
前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(C)と前記成分(D)の合計が30~200重量部であり、前記成分(C)と前記成分(D)の重量比が10/90~90/10である請求項1~のいずれか一項に記載のエラストマー組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のエラストマー組成物で成形された膜の両面にエラストマー製電極層が配置された構造を含むアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のエラストマー組成物で成形された膜の両面にエラストマー製電極層が配置された構造を含むセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー組成物並びにそれを用いたアクチュエータ及びセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリロタキサンは、環状分子に直鎖状分子がスライド可能に貫通し、直鎖状分子の両末端に配された封鎖基により環状分子が脱離しない構造の分子集合体であり、スライドリングマテリアルと呼ばれる。ポリロタキサンは、環状分子が直鎖状分子上でスライドすることに由来する粘弾特性により、種々の応用が期待されている。
【0003】
特に、2つのポリロタキサンの環状分子どうしがその間に有する架橋部により架橋された架橋ポリロタキサン(特許文献1)は、粘弾特性により低変形領域における弾性率が低いエラストマーとなり得るため、(誘電エラストマー)アクチュエータや(誘電エラストマー)センサへの応用が期待されている。
【0004】
特許文献2には、架橋ポリロタキサンが開示されている。環状分子は活性基を有し、架橋部は重合体部の両端に反応基を有し、活性基と反応基が反応して架橋される。環状分子に、活性基の他、ヒドロキシプロピル基、ポリカプロラクトン基等の基を設けることにより、相溶性、機能性等を付与することができる。重合体部は、分子量1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上であるのがよいとしている。この環状分子の基や重合体部の違いにより多くの実施例が記載されているが、そのうちの実施例12は、ヒドロキシプロピル基及びポリカプロラクトン基を導入したポリロタキサンと、ポリエチレングリコールジオール(Mn=1000)と、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn=1100)をジメチルホルムアミドに溶解させた後、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を加えて混合し、60℃で静置し、溶媒フリーの架橋体を得たものである。しかし、初期弾性率は本発明の適度な範囲にない。
【0005】
特許文献3にも、架橋ポリロタキサンが開示されている。そのうちの実施例2は、ヒドロキシプロピル基及びポリカプロラクトン基を導入したポリロタキサンをジメチルホルムアミドに溶解させた後、両末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコール及び片末端イソシアネート変性したポリプロピレングリコールモノブチルエーテルを有する架橋剤とジラウリン酸ジブチルすずを加えて攪拌し、50℃で静置し、該ポリロタキサン間に、Mnが3000であるポリプロピレングリコール、及び/又はMnが2500であるポリプロピレングリコールモノブチルエーテルを有する溶媒フリーの架橋体を得たものである。しかし、初期弾性率は本発明の適度な範囲にない。
【0006】
特許文献4には、ポリロタキサンを含み得るウレタン系樹脂硬化体が開示されている。そのうちの実施例2,9は、側鎖にヒドロキシル基を有するポリロタキサンとポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(Mw=439)とを予め混合した所定のポリ(チ)オール化合物と、所定の第1リン酸エステル化合物と、N,N-ジイソプロピルエチルアミンとを混合し、これを所定のポリイソ(チオ)シアネート化合物と混合し、徐々に昇温し、硬化体を得たものである。これらの硬化体の機械的特性については(Lスケ-ルロックウエル硬度以外)記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-241401号公報
【文献】国際公開第2010/024431号
【文献】国際公開第2011/108514号
【文献】特開2018-21161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、アクチュエータやセンサへ応用するのに好適な、低変形領域における初期弾性率が適度に小さいエラストマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ポリロタキサンの架橋剤として、従来はMn=700程度の架橋剤を用いることが多かったところ、架橋剤をさらに高分子化すると架橋密度を低減できること、さらに、両末端に反応基を有するジオール等と片末端に反応基を有するモノオール等とを用いるとさらに架橋密度を低減できることを見出し、さらに検討を加えて本発明に至った。
【0010】
[1]エラストマー組成物
下記成分(A)~(D)を含み、成分(B)の官能基の少なくとも一部が成分(A)の環状分子と直接又は間接的に結合されてなり、成分(B)の官能基はイソシアネートであり、成分(C)及び(D)の各反応基は水酸基であり、初期弾性率が0.6~2MPaであるエラストマー組成物。
(A)第1線状分子と、第1線状分子が貫通している環状分子と、第1線状分子の両末端に配置された封鎖基とからなるポリロタキサン
(B)分子量1200~7000の第2線状分子と、その両末端に配置された官能基とからなる架橋剤
(C)分子量300~3000の第3線状分子と、その両末端に配置された前記官能基と反応可能な反応基とを有する2反応成分
(D)分子量300~3000の第4線状分子と、その片末端のみに配置された前記官能基と反応可能な反応基とを有する1反応成分
【0011】
(作用)
ポリロタキサンの架橋に従来よりも高分子化した架橋剤(B)を用い、両末端に反応基有する2反応成分(C)と、片末端のみに反応基を有する1反応成分(D)とを加えることにより、図1に模式的に示すような構造のエラストマー組成物が得られ、架橋密度が低減して、初期弾性率0.6~2MPaが得られる。
【0012】
前記第2線状分子の分子量は2600~6700であることが好ましい。
【0013】
前記エラストマー組成物のヒステリシスロスは5%以下であることが好ましい。
【0014】
前記第1~第4の線状分子は、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート又はこれらを含むブロック重合体であることが好ましい。
【0015】
前記官能基はブロック化イソシアネートであることが好ましい。
【0017】
前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(B)は150~600重量部であることが好ましい。
【0018】
前記成分(A)100重量部に対し、前記成分(C)と前記成分(D)の合計が30~200重量部であり、前記成分(C)と前記成分(D)の重量比が10/90~90/10であることが好ましい。
【0019】
[2](誘電エラストマー)アクチュエータ
前記[1]又はその好ましい態様のエラストマー組成物で成形された膜の両面にエラストマー製電極層が配置された構造を含むアクチュエータ。
エラストマー製電極層としては、特に限定されないが、白金、カーボン、銀等の導電性粒子を含む、シリコーン、天然ゴム、ウレタンゴム、架橋されたポリロタキサン等のエラストマーよりなる電極層を例示できる。
【0020】
[3](誘電エラストマー)センサ
前記[1]又はその好ましい態様のエラストマー組成物で成形された膜の両面にエラストマー製電極層が配置された構造を含むセンサ。
エラストマー製電極層としては、特に限定されないが、白金、カーボン、銀等の導電性粒子を含む、シリコーン、天然ゴム、ウレタンゴム、架橋されたポリロタキサン等のエラストマーよりなる電極層を例示できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、アクチュエータやセンサへ応用するのに好適な、低変形領域における初期弾性率が適度に小さいエラストマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本発明のエラストマー組成物の構造を示す模式図である。
図2図2は同エラストマー組成物の絶縁破壊試験方法の説明図である。
図3図3は同エラストマー組成物を用いたアクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.ポリロタキサン(A)
環状分子としては、特に限定されないが、シクロデキストリン、クラウンエーテル、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリル、環状アミド等を例示できる。環状分子は、シクロデキストリンが好ましく、中でもα‐シクロデキストリン、β‐シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンから選択されるのがよい。シクロデキストリンとともに他の環状分子が含有されていてもよい。シクロデキストリンは、その水酸基の一部を、他の基、例えば-SH、-NH2、-COOH、-SO3H、-PO4H等で置換したものでもよいし、種々の有機溶媒に溶化できるよう、グラフト鎖(例えばラクトンモノマーの開環重合からなるグラフト鎖)を有する置換基で置換したものでもよい。最も好ましい環状分子として、鎖数20以上のグラフト鎖としてのポリカプロラクトンを有するシクロデキストリンを挙げることができる。
【0024】
第1線状分子(直鎖状分子)としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテル等を例示できる。直鎖状分子は、ポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールとともに他の直鎖状分子が含有されていてもよい。
【0025】
封鎖基としては、特に限定されないが、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを例示できる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを例示できる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類等を例示できる。ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類である。
【0026】
2.架橋剤(B)
第2線状分子は、特に限定されないが、前記のとおり脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート又はこれらを含むブロック重合体であることが好ましい。
官能基は、前記のとおりイソシアネートであり、前記のとおりブロック化イソシアネートであることが好ましい。
【0027】
3.2反応成分(C)
第3線状分子は、特に限定されないが、前記のとおり脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート又はこれらを含むブロック重合体であることが好ましい。
反応基は前記のとおり水酸基である
【0028】
4.1反応成分
第4線状分子は、特に限定されないが、前記のとおり脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート又はこれらを含むブロック重合体であることが好ましい。
反応基は前記のとおり水酸基である
【実施例
【0029】
以下、本発明を具体化したエラストマー組成物の実施例について、次の順に説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではない。
<1>ポリロタキサン(A)の作製
<2>架橋剤(B)の作製
<3>2反応成分(C)
<4>1反応成分(D)
<5>エラストマー組成物溶液の作製
<6>エラストマー組成物成形体(架橋ポリロタキサン)の作製
<7>エラストマー組成物成形体の物性の測定
<8>アクチュエータ(又はセンサ)の作製
【0030】
<1>ポリロタキサン(A)の作製
まず、環状分子にシクロデキストリンを含有し、直鎖状分子にポリエチレングリコールを含有し、直鎖状分子の両末端に封鎖基を配置してなるポリロタキサンとして、国際公開第2005/080469号(特許文献1で引用されている)に開示された、ヒドロキシプロピル基で修飾されたポリロタキサン(以下「HAPR」と略記することがある。)を調製した。
【0031】
次に、溶化性や相溶性を得るため、以下の方法で、カプロラクトン基を有するポリロタキサンを作製した。上記HAPR 10gを三口フラスコに入れ、窒素をゆっくり流しながら、ε-カプロラクトン45gを導入した。100℃、30分間メカニカル撹拌機によって均一に撹拌した後、反応温度を130℃まで上げ、予めトルエンで薄めた2-エチルヘキサン酸スズ(50wt%溶液)1.6gを添加し、5時間反応させ、溶媒を除去し、カプロラクトン基を有するポリロタキサン(A)(以下「HAPR-g-PCL」と略記することがある。)55gを得た。環状分子はグラフト鎖としてポリカプロラクトン(鎖数:約35)を有する。また、GPCにより、重量平均分子量Mw:580,000、分子量分布Mw/Mn=1.5を確認した。また、水酸基価は、JIS K0070-1992に準ずる方法で測定した結果、72mgKOH/gだった。
【0032】
<2>架橋剤(B)の作製
次の5種類の架橋剤B’、B1~B4(溶液)を作製した。
【0033】
<2-1>架橋剤(B’):1.0量体
三口ナスフラスコにタケネート600(91.57g、三井化学)を加えた後、80℃のオイルバス中で窒素気流下撹拌した。この溶液にポリプロピレングリコール700、ジオール型(110g)を2時間かけてゆっくりと滴下した後、更に2時間撹拌した。反応後、40℃まで液温を低下させた後、2-ブタノンオキシム(76.58g、東京化成製)を液温が60℃以上にならないようにゆっくりと滴下した。滴下後、40℃で5時間撹拌して末端ブロックイソシアネート基を有するポリプロピレングリコールからなる架橋剤(B’)(Mn=950)が含有された溶液を得た。
【0034】
<2-2>架橋剤(B1):1.0量体(修飾)
三口ナスフラスコにポリプロピレングリコール700、ジオール型(500g、富士フィルム和光純薬社製)、ε-カプロラクトンのモノマーであるプラクセルM(430g、ダイセル社製)を加えた後、110℃のオイルバス中で窒素気流下、2時間撹拌した。オイルバスを130℃に昇温した後、2-エチルヘキサン酸スズ(0.5g、アルドリッチ社製)を加えて10時間撹拌し、両末端にポリカプロラクトンがグラフトされたポリプロピレングリコール(以下「オリゴマー1」という。)(Mn=1710)を得た。
三口ナスフラスコにタケネート600(35.8g、三井化学社製)を加えた後、90℃のオイルバス中で窒素気流下撹拌した。この溶液に上記両末端にポリカプロラクトンをグラフト化したポリプロピレングリコール(80g)をトルエン(80g)に溶解させた溶液を2時間かけてゆっくりと滴下した後、更に2時間撹拌した。反応後、40℃まで液温を低下させた後、2-ブタノンオキシム(23.55g、東京化成社製)を液温が60℃以上にならないようにゆっくりと滴下した。滴下後、40℃で5時間撹拌して、末端ブロックイソシアネート基を有するポリプロピレングリコールからなる架橋剤(B1)(Mn=2719)が含有された溶液を得た。
【0035】
<2-3>架橋剤(B2):2.0量体(修飾)
三口ナスフラスコに上記オリゴマー1(100g)を加えた後、90℃のオイルバス中で窒素気流下撹拌した。この溶液にタケネート600(7.45g)を1時間かけてゆっくりと滴下した後、更に2時間撹拌して、オリゴマー2(Mn=3982)を得た。
三口ナスフラスコにタケネート600(16.66g、三井化学社製)を加えた後、90℃のオイルバス中で窒素気流下撹拌した。この溶液に上記オリゴマー2(80g)をトルエン(80g)に溶解させた溶液を2時間かけてゆっくりと滴下した後、更に2時間撹拌した。反応後、40℃まで液温を低下させた後、2-ブタノンオキシム(10.95g、東京化成社製)を液温が60℃以上にならないようにゆっくりと滴下した。滴下後、40℃で5時間撹拌して、末端ブロックイソシアネート基を有するポリプロピレングリコールからなる架橋剤(B2)(Mn=5422)が含有された溶液を得た。
【0036】
<2-4>架橋剤(B3):2.3量体(修飾)
三口ナスフラスコに上記オリゴマー1(100g)を加えた後、90℃のオイルバス中で窒素気流下撹拌した。この溶液にタケネート600(8.43g)を1時間かけてゆっくりと滴下した後、更に2時間撹拌して、オリゴマー3(Mn=4537)を得た。
三口ナスフラスコにタケネート600(14.36g、三井化学社製)を加えた後、90℃のオイルバス中で窒素気流下撹拌した。この溶液に上記オリゴマー3(80g)をトルエン(80g)に溶解させた溶液を2時間かけてゆっくりと滴下した後、更に2時間撹拌した。反応後、40℃まで液温を低下させた後、2-ブタノンオキシム(9.44g、東京化成社製)を液温が60℃以上にならないようにゆっくりと滴下した。滴下後、40℃で5時間撹拌して、末端ブロックイソシアネート基を有するポリプロピレングリコールからなる架橋剤(B3)(Mn=5977)が含有された溶液を得た。
【0037】
<2-5>架橋剤(B4):2.5量体(修飾)
三口ナスフラスコに上記オリゴマー1(100g)を加えた後、90℃のオイルバス中で窒素気流下撹拌した。この溶液にタケネート600(8.95g)を1時間かけてゆっくりと滴下した後、更に2時間撹拌して、オリゴマー4(Mn=4939)を得た。
三口ナスフラスコにタケネート600(13.14g、三井化学社製)を加えた後、90℃のオイルバス中で窒素気流下撹拌した。この溶液に上記オリゴマー4(80g)をトルエン(80g)に溶解させた溶液を2時間かけてゆっくりと滴下した後、更に2時間撹拌した。反応後、40℃まで液温を低下させた後、2-ブタノンオキシム(8.65g、東京化成社製)を液温が60℃以上にならないようにゆっくりと滴下した。滴下後、40℃で5時間撹拌して、末端ブロックイソシアネート基を有するポリプロピレングリコールからなる架橋剤(B4)(Mn=6496)が含有された溶液を得た。
【0038】
<3>2反応成分(C)
次の2種類の2反応成分を使用した。
<3-1>2反応成分(C1)
和光純薬社製ポリプロピレングリコール700、ジオール型をそのまま使用した。
<3-2>2反応成分(C2)
上記<2-3>で作製したオリゴマー2を使用した。
【0039】
<4>1反応成分(D)
次の2種類の反応成分を使用した。
<4-1>1反応成分(D1)
和光純薬社製ポリプロピレングリコール1K、モノオール型をそのまま使用した。
<4-2>1反応成分(D2)
和光純薬社製ポリプロピレングリコール340、モノオール型をそのまま使用した。
【0040】
<5>エラストマー組成物溶液の作製
上記(A)、(Bx)、(Cx)、(Dx)の作製物を選択的に用い、次の表1に示す配合(配合数値は質量(g))で、実施例及び比較例のエラストマー組成物溶液を作製した。なお、水酸基量とイソシアネート量は、いずれの例においても等量となっている。
【0041】
【表1】
【0042】
・溶媒として、トルエンを用いた。
・酸化防止剤として、Rianlon Corp.製「Thanox1726」を用いた。
・触媒(脱保護用)として、ジラウリル酸ジブチルスズ(溶液)を用いた。
・シリコーン添加剤として、GELEST社製「DBL-C31」(両末端アルコール変性シリコーン:カプロラクトン-ジメチルシロキサン-カプロラクトンブロックコポリマー)(溶液であり、固形分30質量%)を用いた。
・加水分解抑制剤として、日清紡ケミカル社製「カルボジライトV-09GB」(溶液であり、固形分30質量%)を用いた。
【0043】
<5-1>比較例1の調製
ポリロタキサン(A)18.1gと架橋剤(B’)溶液27.2gと2反応成分(C1)10.7gを、溶媒61gに溶解させ、攪拌して均一溶液とした。この溶液に触媒0.8g、シリコーン添加剤0.8gを加え、攪拌し、均一溶液とした。
【0044】
<5-2>比較例2の調製
ポリロタキサン(A)16.1gと架橋剤(B1)溶液38.3gと2反応成分(C1)7.5gを、攪拌して均一溶液とした。この溶液に酸化防止剤1.0g、触媒0.8g、シリコーン添加剤0.9g、加水分解抑制剤1.6gを加え、攪拌し、均一溶液とした。
【0045】
<5-3>比較例3の調製
ポリロタキサン(A)8.9gと架橋剤(B2)溶液25.5gと2反応成分(C2)18.8gを、溶媒55gに溶解させ、攪拌して均一溶液とした。この溶液に触媒0.8g、シリコーン添加剤0.8g、を加え、攪拌し、均一溶液とした。
【0046】
<5-4>実施例1の調製
ポリロタキサン(A)15.3gと架橋剤(B1)溶液36.3gと2反応成分(C1)3.6gと1反応成分(D1)10.2gを溶媒に溶解させ、攪拌して均一溶液とした。この溶液に酸化防止剤1.1g、触媒0.9g、シリコーン添加剤0.9g、加水分解抑制剤1.7gを加え、攪拌し、均一溶液とした。
【0047】
<5-5>実施例2の調製
ポリロタキサン(A)10.9gと架橋剤(B2)溶液27.3gと2反応成分(C1)2.5gと1反応成分(D1)7.2gを溶媒に溶解させ、攪拌して均一溶液とした。この溶液に酸化防止剤1.0g、触媒0.8g、シリコーン添加剤0.8g、加水分解抑制剤1.6gを加え、攪拌し、均一溶液とした。
【0048】
<5-6>実施例3の調製
ポリロタキサン(A)10.9gと架橋剤(B3)溶液54gと2反応成分(C1)2.5gと1反応成分(D1)7.2gを溶媒に溶解させ、攪拌して均一溶液とした。
この溶液に酸化防止剤1.0g、触媒0.9g、シリコーン添加剤0.9g、加水分解抑制剤1.6gを加え、攪拌し、均一溶液とした。
【0049】
<5-7>実施例4の調製
ポリロタキサン(A)12gと架橋剤(B3)溶液54.7gと2反応成分(C1)2.8gと1反応成分(D2)2.7gを溶媒に溶解させ、攪拌して均一溶液とした。
この溶液に酸化防止剤1.1g、触媒0.9g、シリコーン添加剤0.9g、加水分解抑制剤1.8gを加え、攪拌し、均一溶液とした。
【0050】
<5-8>実施例5の調製
ポリロタキサン(A)10.4gと架橋剤(B4)溶液55.9gと2反応成分(C1)2.4gと1反応成分(D1)7.0gを溶媒に溶解させ、攪拌して均一溶液とした。この溶液に酸化防止剤0.9g、触媒0.8g、シリコーン添加剤0.8g、加水分解抑制剤1.5gを加え、攪拌し、均一溶液とした。
【0051】
<5-9>実施例6の調製
ポリロタキサン(A)11.5gと架橋剤(B4)溶液61.5gと2反応成分(C1)2.7gと1反応成分(D2)2.6gを溶媒に溶解させ、攪拌して均一溶液とした。この溶液に酸化防止剤1.0g、触媒0.8g、シリコーン添加剤0.8g、加水分解抑制剤1.7gを加え、攪拌し、均一溶液とした。
【0052】
<6>エラストマー組成物成形体(架橋ポリロタキサン)の作製
上記<5>で作製した実施例及び比較例のエラストマー組成物溶液を、よく脱泡してから、PETシートにスリットダイコータ法により塗布した後、130℃のオーブン内に減圧条件下で5時間おいて硬化させ、PETシートより剥離し、膜状のエラストマー組成物成形体(架橋ポリロタキサン)を作製した。エラストマー組成物成形体は、弾性変形する伸縮性を備えていた。
【0053】
<7>エラストマー組成物成形体の物性の測定
実施例及び比較例の各エラストマー組成物成形体の次の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
<7-1>比誘電率
各試料にオートファインコータ(JEC-3000FC 日本電子社製)を用いて白金をφ内径5mmに蒸着し、誘電率測定用プローブを用いてPecision Impedance Analyser(4294A Agilent社製)で静電容量を測定し、算出した。
【0055】
<7-2>初期弾性率と破断強度
エラストマー組成物成形体を架橋体をダンベル型(幅2.04mm、初期試料長10mm)に加工し、測定試料とした。
各試料について、shimazu社製「AGS-X 10N」を用いて、引張速度0.2mm/秒で引張試験を行い、応力-歪曲線を記録して1%~5%伸長時までの応力-歪曲線を線形近似した傾きから初期弾性率を算出するとともに、破断強度を測定した。
【0056】
<7-3>ヒステリシスロス
特許文献1と同様に、ヒステリシスロスとは、JIS K6400に準拠した、変形及び回復の1サイクルにおける機械的エネルギー損失率(ヒステリシスロス)において、材料の変形の代わりに材料の引張試験による歪を用いたものをいう。
具体的には、ダンベル7号形(ダンベル7号形は、JIS K-6251に準拠する)のサンプルを引張試験にかけ、応力-歪曲線を測定する。伸長が有効長さの100%まで伸長した後、伸長と同じ速度で0%まで収縮する。このサイクルを10回行い、特許文献1に記載された面積を測定し計算する方法で1から10回までの平均値をヒステリシスロスとして算出した。
【0057】
<7-4>絶縁破壊電強度
まず、エラストマー組成物成形体1の膜厚を測定した。次に、図2に示すように、設置側の円板電極21にエラストマー組成物成形体1を貼り付け、エラストマー組成物成形体1に円柱電極22を載せ、この際にエラストマー組成物成形体1と各電極21,22との間に空気泡が極力残らないように留意し、さらに真空装置により脱気処理した。これを常温常湿下で絶縁破壊測定器にセットし、電源装置23により電極21,22間に昇圧速度10V/0.1秒で上昇するよう電圧を印加した。そして、電流が実質的に流れない絶縁状態を経て、電流が1.2μA以上となった時点の電圧から絶縁破壊電界強度(V/μm)を求めた。常温とは20±15℃であり、常湿とは65±20%である(JIS-8703)。
【0058】
表1に示すように、比較例1~3は初期弾性率が2.2~3.6MPaであったのに対し、実施例1~6は初期弾性率が0.7~1.9MPaであった。また、比較例3はヒステリシスロスが5.7%であったのに対し、実施例1~6はヒステリシスロスが5%以下であった。
【0059】
<8>アクチュエータ(又はセンサ)の作製
例えば図3に示すように、実施例のエラストマー組成物成形体1と、エラストマー製電極層2とを、交互にそれぞれ複数積層してから、圧着して接合してなるアクチュエータ10を作製することができる。エラストマー製電極層2は、1つおきに左右方向の一方にずらして配したグループと、1つおきに左右方向の他方にずらした配したグループとからなる。一方のグループを正極、他方のグループを負極として、直流電圧を印加すると、エラストマー組成物成形体1は膜厚方向に収縮し、該収縮によるアクチュエータ10の全高の変化を駆動用変位として利用することができる。
同様に、エラストマー組成物成形体1とエラストマー製電極層2とを、交互に積層することにより、センサを作製することもできる。
【0060】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 エラストマー組成物成形体
2 エラストマー製電極層
10 アクチュエータ
21 円板電極
22 円柱電極
23 電源装置
図1
図2
図3