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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】燃料貯留装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20221121BHJP
   F02M 37/50 20190101ALI20221121BHJP
【FI】
F02M37/00 301B
F02M37/50
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019160047
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021038696
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武村 盛博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 耕史
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 崇
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 祐一
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172353(JP,A)
【文献】特開2014-177972(JP,A)
【文献】実開平05-071014(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-37/54
F16B 5/00- 5/12
F16B 2/00- 2/26
F16B 21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパ部材とロア部材との間にフィルタ部材が挟持されており、前記アッパ部材と前記フィルタ部材とにより取り囲まれた領域に燃料を貯留可能な燃料貯留部が形成される燃料貯留装置であって、
前記アッパ部材と前記ロア部材とのいずれか一方の部材に設けられた被係合部と、他方の部材に設けられかつ前記被係合部に対して撓み変形を利用して係合される係合部と、からなるスナップフィット機構を備えており、
前記係合部の先端部には、前記係合部の撓み方向と交差する方向に撓み変形可能な延長部が設けられており、
前記一方の部材には、前記被係合部に対する前記係合部の係合解除方向への前記延長部の移動を規制する規制部が設けられている、燃料貯留装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料貯留装置であって、
前記規制部は、前記被係合部に対する係合の際の前記係合部の撓み変形時に前記延長部を摺動により前記係合部の撓み方向と交差する方向に撓ませる摺動案内部を有する、燃料貯留装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料貯留装置であって、
前記延長部と前記規制部とは、前記係合部の撓み方向と交差する方向に2組配置されており、
前記摺動案内部は、各組の前記延長部を対向方向に撓み変形させるようにテーパ状に形成されている、燃料貯留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、燃料貯留装置に関する。詳しくは、燃料タンク内に配置される燃料貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された燃料供給装置がある。その燃料供給装置は、アッパ部材とロア部材との間にフィルタ部材が挟持されており、アッパ部材とフィルタ部材とにより取り囲まれた領域に燃料を貯留可能な燃料貯留部が形成される燃料貯留装置を備える。燃料貯留装置は、例えば、ロア部材に設けられた被係合部と、アッパ部材に設けられかつ被係合部に対して撓み変形を利用して係合される係合部と、からなるスナップフィット機構を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-172353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料貯留装置によると、外力等により係合部が係合解除方向へ撓み変形されることにより、被係合部に対する係合部の係合が外れるおそれがある。例えば、アッパ部材とロア部材との間にフィルタ部材が弾性的に挟持される場合において、アッパ部材とロア部材とが対向方向に押圧されると、被係合部と係合部との係合面同士が離間することにより、被係合部に対する係合部の係合が外れやすくなる。
【0005】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、スナップフィット機構の被係合部に対する係合部の外れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、アッパ部材とロア部材との間にフィルタ部材が挟持されており、前記アッパ部材と前記フィルタ部材とにより取り囲まれた領域に燃料を貯留可能な燃料貯留部が形成される燃料貯留装置であって、前記アッパ部材と前記ロア部材とのいずれか一方の部材に設けられた被係合部と、他方の部材に設けられかつ前記被係合部に対して撓み変形を利用して係合される係合部と、からなるスナップフィット機構を備えており、前記係合部の先端部には、前記係合部の撓み方向と交差する方向に撓み変形可能な延長部が設けられており、前記一方の部材には、前記被係合部に対する前記係合部の係合解除方向への前記延長部の移動を規制する規制部が設けられている、燃料貯留装置である。
【0008】
第1の手段によると、アッパ部材とロア部材とをスナップフィット機構により結合する際、被係合部に対して係合部が撓み変形を利用して係合される。このとき、延長部が撓み変形を利用して規制部の規制側に配置される。したがって、被係合部に対する係合部の係合解除方向への延長部の移動が規制部によって規制されるため、スナップフィット機構の被係合部に対する係合部の外れを抑制することができる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段の燃料貯留装置であって、前記規制部は、前記被係合部に対する係合の際の前記係合部の撓み変形時に前記延長部を摺動により前記係合部の撓み方向と交差する方向に撓ませる摺動案内部を有する、燃料貯留装置である。
【0010】
第2の手段によると、被係合部に対する係合の際の係合部の撓み変形時に、延長部が規制部の摺動案内部により係合部の撓み方向と交差する方向に撓ませられることにより、延長部が規制部の規制側に配置される。よって、延長部を撓ませる手間を省くことで、被係合部と係合部との係合性を向上することができる。
【0011】
第3の手段は、第2の手段の燃料貯留装置であって、前記延長部と前記規制部とは、前記係合部の撓み方向と交差する方向に2組配置されており、前記摺動案内部は、各組の前記延長部を対向方向に撓み変形させるようにテーパ状に形成されている、燃料貯留装置である。
【0012】
第3の手段によると、被係合部に対する係合の際の係合部の撓み変形時に、両延長部が両規制部のテーパ状の摺動案内部により対向方向にバランス良く撓ませられる。よって、被係合部と係合部との係合性を向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に開示の技術によると、スナップフィット機構の被係合部に対する係合部の外れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態1にかかる燃料供給装置を示す斜視図である。
図2】燃料供給装置を示す断面図である。
図3】ポンプユニットを示す断面図である。
図4】サブタンクを分解して示す斜視図である。
図5】サブタンク用スナップフィットを示す正面図である。
図6図5のVI-VI線矢視断面図である。
図7】サブタンク用スナップフィットの係合前の状態を示す正面図である。
図8図7のVIII-VIII線矢視断面図である。
図9図8のIX-IX線矢視断面図である。
図10】非弾性係合部を示す下面図である。
図11】サブタンク用スナップフィットの係合工程1を示す正面図である。
図12図11のXII-XII線矢視断面図である。
図13】サブタンク用スナップフィットの係合工程2を示す正面図である。
図14図13のXIV-XIV線矢視断面図である。
図15】弾性係合片の規制状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本明細書に開示の技術を実施するための一実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
本実施形態にかかる燃料貯留装置としてのサブタンクは燃料供給装置に備えられている。燃料供給装置は、内燃機関であるエンジンを搭載する自動車等の車両に搭載された燃料タンクに設置されており、その燃料タンク内の燃料をエンジンへ供給するものである。また、サブタンクは燃料タンク内に配置されている。図1は燃料供給装置を示す斜視図、図2は同じく断面図である。燃料供給装置に係る方位を各図に矢印で示すとおりに定める。燃料供給装置の上下方向は、車両の燃料タンクに搭載された状態での重力方向いわゆる天地方向に対応する。また、燃料供給装置の前後左右方向は特定するものではない。
【0017】
(燃料タンク)
図2に示すように、燃料タンク10は、上壁部11及び底壁部12を有する中空容器状に形成されている。燃料タンク10は、樹脂製であり、タンク内圧の変化によって変形する。燃料タンク10は、主に上下方向に膨張及び収縮する。上壁部11には、円形孔状の開口部13が形成されている。燃料タンク10内には、例えば液体燃料としてのガソリンが貯留されている。
【0018】
(燃料供給装置の概要)
図1に示すように、燃料供給装置20は、蓋部材22とポンプユニット24とを備えている。
【0019】
(蓋部材22)
蓋部材22の主体をなす蓋板部26は円板状に形成されている。図2に示すように、蓋板部26の下面には、短円筒状の嵌合筒部27が同心状に形成されている。蓋板部26の外周部には、嵌合筒部27よりも径方向外方へ張り出す円環板状のフランジ部28が形成されている。蓋部材22は、例えばポリアセタール樹脂(POM)からなる樹脂製である。
【0020】
蓋板部26には、燃料吐出ポート30及び電気コネクタ部32が設けられている(図1参照)。燃料吐出ポート30は、蓋板部26を上下方向に貫通する管状に形成されている。燃料吐出ポート30は、燃料タンク10内外の燃料配管の接続に用いられる。また、電気コネクタ部32は、燃料タンク10内外の電気配線の接続に用いられる。
【0021】
図1に示すように、蓋板部26の後部の下面には、スタンドオフ部34が形成されている。スタンドオフ部34は、垂下筒部35と両湾曲壁部36(図1では左側の湾曲壁部36のみ示す)とを有する。垂下筒部35は、蓋板部26から下方へ延びる筒状に形成されている(図2参照)。湾曲壁部36は、垂下筒部35の両側部に左右対称状に形成されている。湾曲壁部36は、嵌合筒部27から下方に向かって収束する略三角形状に形成されている。
【0022】
(ポンプユニット24)
図3はポンプユニットを示す断面図、図4はサブタンクを分解して示す斜視図である。図3に示すように、ポンプユニット24は、サブタンク38、燃料ポンプ40、及び、プレッシャレギュレータ42を備えている。
【0023】
サブタンク38は、サブタンク本体46、ロアカバー48及び燃料フィルタ50を備えている。サブタンク本体46は、タンク形成部54、ポンプケース部55、燃料通路部56及び分岐通路部57を有する。サブタンク本体46は、例えばポリアセタール樹脂(POM)からなる樹脂製である。サブタンク38は本明細書でいう「燃料貯留装置」に相当する。
【0024】
タンク形成部54は有天円筒状に形成されている。ポンプケース部55は、タンク形成部54の上面部に有天円筒状に形成されている。ポンプケース部55の上下方向の中間部がタンク形成部54の上面部に接続されている。
【0025】
サブタンク本体46のタンク形成部54は略円筒状の側壁部106を有する。側壁部106は、その主体をなす主壁部107と、主壁部107の下端部から径方向外方へ突出する円環板状の段付部108と、段付部108の外周部から下方へ延びる短円筒状の脚壁部109と、を有する(図4参照)。主壁部107の下端部には、下方へ突出する円筒状の上側挟持壁部122が形成されている。また、図4に示すように、脚壁部109の下端面の内側部には、下方へ向けて突出する位置決め凸部135が形成されている。本実施形態では、位置決め凸部135が脚壁部109の周方向に等間隔で4個配置されている。
【0026】
図3に示すように、燃料通路部56は、ポンプケース部55の上面部に水平状に延在する直管状に形成されている。燃料通路部56は、一端部に入口56aを有し、他端部に出口56bを有する。入口56aは下方に向けて開口されている。燃料通路部56の出口56bと燃料吐出ポート30の下端部とは、フレキシブルチューブ、ゴムホース等の可撓性を有する管部材62を介して接続されている(図1参照)。
【0027】
分岐通路部57は燃料通路部56から下方へ延在する管状に形成されている。分岐通路部57の上下方向の中間部がタンク形成部54の上面部に接続されている。分岐通路部57のタンク形成部54の上面部より下方部分には、下方に開口するレギュレータケース部58が形成されている。
【0028】
ロアカバー48は、格子円板状の底板部66と、底板部66の外周部から上方へ向かって拡開状に延びるテーパ状の斜壁部124と、を有する円形浅皿状に形成されている(図4参照)。底板部66の外周部には、上方へ突出する短円筒状の下側挟持壁部125が形成されている。下側挟持壁部125は、上側挟持壁部122と対向状をなすように配置されている。図4に示すように、斜壁部124の上端部の内側部には、上面を開口する四角形溝状の位置決め凹部132が形成されている。位置決め凹部132は、サブタンク本体46の位置決め凸部135に対応するように4個配置されている。位置決め凹部132は、サブタンク本体46の位置決め凸部135と係合可能に形成されている。ロアカバー48は樹脂製である。
【0029】
図1に示すように、ロアカバー48は、サブタンク本体46に対してその下面開口部を覆うようにサブタンク用スナップフィット220により取り付けられている。これにより、サブタンク本体46の上側挟持壁部122とロアカバー48の下側挟持壁部125との間にフィルタ部材50の外周部が挟持されている(図3参照)。なお、サブタンク用スナップフィット220については後で説明する。
【0030】
図3に示すように、燃料フィルタ50は、フィルタ部材68と接続部材72とを有する。燃料フィルタ50の主体であるフィルタ部材68は、樹脂製の不織布からなる濾材により中空袋状に形成されてなる。フィルタ部材68の外形は略円盤状に形成されている。フィルタ部材68内には、フィルタ部材68の内部容積を確保する内骨部材が配置されている。接続部材72は、フィルタ部材68の上面部に配置されている。接続部材72は、フィルタ部材68内外を連通するように内骨部材と結合されている。接続部材72及び内骨部材は樹脂製である。
【0031】
フィルタ部材68は、タンク形成部54に対するロアカバー48の取り付けに先立って、タンク形成部54の下面を閉鎖するように略水平状に配置されている。接続部材72は、ポンプケース部55の下端部にスナップフィットにより取り付けられている。サブタンク本体46に対するロアカバー48の取り付けによって、フィルタ部材68の外周部がサブタンク本体46の上側挟持壁部122とロアカバー48の下側挟持壁部125との間にシール状態で挟持されている。
【0032】
サブタンク本体46と燃料フィルタ50との間には、両部材46,50によって取り囲まれた空間すなわち領域からなる燃料貯留部74が形成されている。燃料貯留部74は燃料を貯留可能とされている。燃料貯留部74に貯留される燃料は、燃料タンク10内からサブタンク本体46の開口部を介して流入される燃料、及び、プレッシャレギュレータ42から吐出された燃料である。
【0033】
燃料ポンプ40は、略円柱状の電動式燃料ポンプからなる。燃料ポンプ40は、ポンプケース部55に対する燃料フィルタ50の接続部材72の取り付けに先立って、ポンプケース部55内に下方から挿入されている。これにともない、燃料ポンプ40の燃料吐出口40aが燃料通路部56の入口56aに接続されている。また、ポンプケース部55に対する接続部材72の取り付けによって、ポンプケース部55内に燃料ポンプ40が縦置き状に収容されて保持されている。これにより、燃料ポンプ40は、サブタンク本体46の内部に配置されている。また、燃料ポンプ40の燃料吸入口には、接続部材72を介してフィルタ部材68の内部空間が連通されている。
【0034】
燃料ポンプ40は、燃料をフィルタ部材68を介して吸入しかつ加圧した後、燃料吐出口40aから燃料通路部56内に吐出する。フィルタ部材68は、燃料ポンプ40に吸入される燃料を濾過する。燃料ポンプ40の電気コネクタと蓋部材22の電気コネクタ部32とは、電気配線を介して電気的に接続されている。
【0035】
プレッシャレギュレータ42はレギュレータケース部58内に収容されている。レギュレータケース部58には、プレッシャレギュレータ42を抜け止めする樹脂製のキャップ43がスナップフィットにより取り付けられている。プレッシャレギュレータ42は、燃料通路部56内の圧力を所定の圧力に調整し、余剰燃料を余剰燃料排出口42aから吐出する。余剰燃料排出口42aから吐出された加圧燃料は、キャップ43に設けられた開口孔43aを通じて燃料貯留部74へ排出される。
【0036】
図2に示すように、サブタンク本体46のタンク形成部54の上端部の後側部には、支柱取付部59が形成されている。支柱取付部59には連結支柱52が垂立状に取り付けられている。連結支柱52は、中空筒状に形成された筒柱部87を有する。筒柱部87の下端部には、外形を大きくする台座部83が形成されている。台座部83がサブタンク本体46の支柱取付部59に取り付けられることにより、筒柱部87が垂立状に支持されている。連結支柱52は、例えばガラス繊維が混合されたポリアミド樹脂(PA66+GF33)からなる樹脂製である。
【0037】
筒柱部87は、蓋部材22の垂下筒部35内に軸方向すなわち上下方向に移動可能に挿入されている。蓋部材22の垂下筒部35の後側壁には、上下方向に延在する長孔状の開口孔112が形成されている。開口孔112の下端部の左右方向の中央部には、上方へ延びる突片状の係合片114が形成されている。係合片114は、前後方向へ撓み変形可能に形成されている(図2中、二点鎖線114参照)。また、連結支柱52の筒柱部87の後側壁の後面の上端部には係合突起116が突出されている。
【0038】
筒柱部87が垂下筒部35内にその下方から挿入された際、係合突起116が係合片114をその撓み変形を利用して乗り越える。これにより、係合突起116が係合片114に上下方向に移動可能に係合されている。この状態で、垂下筒部35に対して筒柱部87が懸吊されたときには、係合片114に係合突起116が当接することにより、筒柱部87が抜け止めされる。係合片114と係合突起116とにより懸吊用スナップフィットが構成されている。懸吊用スナップフィットにより、ポンプユニット24が蓋部材22に対して上下方向に移動可能にかつ懸吊可能に連結されている。
【0039】
垂下筒部35と筒柱部87とにより形成される内部空間には、金属製のコイルスプリング85が配置されている。コイルスプリング85は、蓋部材22とサブタンク本体46とを相反方向すなわち離間方向へ付勢している。
【0040】
(燃料供給装置20の設置)
燃料供給装置20は、燃料タンク10への設置に際し、伸長状態すなわち蓋部材22に対してポンプユニット24が懸吊された状態とされる。この状態では、蓋部材22とポンプユニット24とが最離間状態とされる。続いて、ポンプユニット24が燃料タンク10の開口部13から挿入され、燃料タンク10の底壁部12上に載置される。
【0041】
続いて、蓋部材22がコイルスプリング85の付勢力に抗して押し下げられ、フランジ部28が燃料タンク10の上壁部11に固定金具、ボルト等の固定手段を介して固定される。このとき、蓋部材22の嵌合筒部27が開口部13内に嵌合されている。上記のようにして、燃料タンク10の開口部13が蓋部材22により閉鎖されることにより、燃料供給装置20の設置が完了する(図2参照)。
【0042】
燃料供給装置20の設置状態において、ロアカバー48は、コイルスプリング85の付勢力によって燃料タンク10の底壁部12に押し付けられた状態に保持される。また、蓋部材22の燃料吐出ポート30には、エンジンにつながる燃料供給配管が接続される。また、電気コネクタ部32には、電源、ECU等につながる外部コネクタが接続される。
【0043】
(燃料供給装置20の作動)
外部からの駆動電力により燃料ポンプ40が駆動される。すると、燃料タンク10内の燃料及び/又はサブタンク38の燃料貯留部74内の燃料が、燃料フィルタ50を介して燃料ポンプ40に吸入されて加圧される。燃料ポンプ40からサブタンク本体46の燃料通路部56内に吐出された加圧燃料は、燃料通路部56内を流れた後、管部材62を経て蓋部材22の燃料吐出ポート30からエンジンへ供給される。また、燃料通路部56を流れる加圧燃料は、分岐通路部57を介してプレッシャレギュレータ42に流れることにより調圧される。
【0044】
また、燃料タンク10は、気温の変化や燃料量の変化等による内圧の変化によって変形すなわち膨張及び収縮する。これにより、燃料タンク10の上壁部11と底壁部12との間の間隔が変化(増減)する。これにともない、蓋部材22とポンプユニット24とは、相対的に上下方向に移動することにより燃料タンク10の高さの変化に追従する。
【0045】
また、燃料タンク10が過剰に収縮しようとするときは、蓋部材22のスタンドオフ部34が、ポンプユニット24の連結支柱52の台座部83と当接することにより突っ張り棒として作用する。これにより、蓋部材22とポンプユニット24との間の間隔が最小間隔に抑制される。
【0046】
(サブタンク用スナップフィット220)
図1に示すように、サブタンク本体46とロアカバー48とはサブタンク用スナップフィット220により結合されている。サブタンク用スナップフィット220は、周方向に等間隔で複数(例えば4個、図1では3個を示す)配置されている。4個のサブタンク用スナップフィット220は同一構成であるから、そのうちの一つについて説明する。サブタンク本体46は本明細書でいう「アッパ部材」に相当する。また、ロアカバー48は本明細書でいう「ロア部材」に相当する。また、サブタンク用スナップフィット220は本明細書でいう「スナップフィット機構」に相当する。
【0047】
図5はサブタンク用スナップフィットを示す正面図、図6図5のVI-VI線矢視断面図、図7はサブタンク用スナップフィットの係合前の状態を示す正面図、図8図7のVIII-VIII線矢視断面図、図9図8のIX-IX線矢視断面図、図10は非弾性係合部を示す下面図である。図7に示すように、サブタンク用スナップフィット220は、サブタンク本体46に形成された非弾性係合部230と、ロアカバー48に設けられた弾性係合片222と、により構成されている。
【0048】
弾性係合片222は、ロアカバー48の斜壁部124の上端部(外周部)から上方へ立ち上がる帯片状に形成されている(図4及び図8参照)。弾性係合片222は、ロアカバー48に片持ち状に設けられている。弾性係合片222は、板厚方向すなわちロアカバー48の径方向内方に撓み変形可能な弾性を有する(図8中、二点鎖線222参照)。弾性係合片222の上端部の外側面には係合爪223が形成されている。係合爪223の下端面が係合面223aとなっている。弾性係合片222は本明細書でいう「係合部」に相当する。
【0049】
弾性係合片222の先端部すなわち上端部には、一対(図7において左右一対)の延長部225が形成されている。両延長部225は、弾性係合片222の上端部から上方へ平行状に延びる略棒状に形成されている。両延長部225は、弾性係合片222の対向方向に撓み変形可能な弾性を有する(図7中、二点鎖線225参照)。両延長部225の撓み方向は、弾性係合片222の撓み方向と交差する方向に相当する。
【0050】
弾性係合片222の外側面の下端部には、左右一対のガイド突起227が突出されている(図4及び図8参照)。両ガイド突起227は、上下方向に延在するリブ状で、曲面及び傾斜面等により丸みを帯びた形状に形成されている。両ガイド突起227は、サブタンク用スナップフィット220の係合状態において非弾性係合部230の下方の左右両側近傍に位置する(図5及び図6参照)。
【0051】
図7に示すように、非弾性係合部230は、サブタンク本体46の側壁部106の主壁部107と段付部108とのなす隅角部にボックス状に形成されている(図4及び図8図10参照)。非弾性係合部230は、左右一対の側壁231と、両側壁231の相互間にその正面側を覆うように架設された略U字板状の係合壁232と、を有する(図8図10参照)。係合壁232の中央凹部の上端面が係合面232aとなっている。
【0052】
非弾性係合部230の内部空間は、ロアカバー48の弾性係合片222を受け入れ可能に形成されている(図6参照)。また、側壁部106の段付部108及び脚壁部109には、非弾性係合部230の下方を開放する切欠き部235が形成されている(図4及び図9参照)。切欠き部235は、ロアカバー48の両ガイド突起227を受け入れ可能に形成されている(図5参照)。
【0053】
両側壁231の上端部の外側部(係合壁232側の側部)には、対向方向に突出する張出部237が形成されている(図8図10参照)。両張出部237の相互間の間隔は、弾性係合片222の両延長部225を挿通可能な間隔となっている。両張出部237の前面側は、係合壁232の両側部の上端部と連続している。
【0054】
両側壁231の上端部の内側部(上側挟持壁部122側の側部)には、対向方向に突出する逆台板状の規制部238が形成されている(図8図10参照)。両規制部238の傾斜面は、相互間の間隔を下方から上方に向かって次第に大きくするテーパ状に形成された摺動案内部238aとなっている。摺動案内部238aの下端部は、側壁231の内側面近くに延びている。非弾性係合部230は本明細書でいう「被係合部」に相当する。
【0055】
両延長部225と両規制部238とにより2組の外れ抑制機構が構成されている。すなわち、延長部225と規制部238とからなる外れ抑制機構が、弾性係合片222の撓み方向と交差する方向に2組配置されている。2組の外れ抑制機構は、サブタンク用スナップフィット220の正面視において左右方向の中心線を対称軸として線対称状に配置されている。
【0056】
(サブタンク38の組み付け)
サブタンク本体46の側壁部106の脚壁部109内にフィルタ部材68を全面的に収容するように配置した状態で、サブタンク本体46にその下面開口部を閉鎖するようにロアカバー48が同心状に組み付けられる(図3参照)。
【0057】
このとき、サブタンク本体46の非弾性係合部230内にロアカバー48の弾性係合片222の両延長部225が挿入される。そして、非弾性係合部230の係合壁232に弾性係合片222の係合爪223が当接しかつ摺動することにより、弾性係合片222が撓ませられる。これにともない、両規制部238の両摺動案内部238aの下端部に両延長部225の上端部が当接される(図11及び図12参照)。この工程を、サブタンク用スナップフィット220の係合工程1という。
【0058】
続いて、非弾性係合部230内に弾性係合片222が挿入されていくにしたがい、係合壁232に対して係合爪223が摺動していくことにより、弾性係合片222が撓ませられていく。この弾性係合片222の撓み変形時に、両延長部225の上端部が両規制部238の摺動案内部238aを摺動していくことにより、両延長部225が対向方向へ撓ませられていく(図13及び図14参照)。この工程を、サブタンク用スナップフィット220の係合工程2という。
【0059】
続いて、係合壁232を係合爪223が乗り越えると同時に、弾性係合片222が弾性復元することで、係合壁232に係合爪223が抜け止め状態に係合する。これにより、サブタンク本体46にロアカバー48がサブタンク用スナップフィット220により結合される(図5及び図6参照)。
【0060】
また、両規制部238の摺動案内部238aから両延長部225の上端部が離脱し、両延長部225が弾性復元することで、両延長部225が両規制部238に対する規制位置(外側位置)に位置する(図5及び図6参照)。すなわち、両延長部225が両規制部238の規制面である正面に対して近接または当接する。これにより、非弾性係合部230に対する弾性係合片222の係合解除方向(図6において右方)への延長部225の移動が規制部238によって規制される(図15参照)。
【0061】
また、両延長部225は、非弾性係合部230の両張出部237に対して近接又は当接される(図5及び図6参照)。また、弾性係合片222の両ガイド突起227は、非弾性係合部230の係合壁232の下面に対して近接又は当接される(図5及び図6参照)。両ガイド突起227は、燃料タンク10へのサブタンク38の挿入途中において、燃料タンク10の開口部13の口縁部に非弾性係合部230が引っ掛かることを抑制する。
【0062】
また、サブタンク本体46の上側挟持壁部122とロアカバー48の下側挟持壁部125との間には、フィルタ部材68の外周部が圧縮状態で弾性的に挟持されている(図3参照)。これにより、フィルタ部材68の外周部がシールされている。また、フィルタ部材68の弾性力により弾性係合片222の係合爪223の係合面223aと非弾性係合部230の係合壁232の係合面232aとが面接触状に当接した状態に保持されている(図5及び図6参照)。また、サブタンク本体46の位置決め凸部135(図4参照)とロアカバー48の位置決め凹部132(同図参照)とが係合されることで、サブタンク本体46とロアカバー48との間に発生する周方向のがたつきが抑制されている。
【0063】
(本実施形態の利点)
前記したサブタンク38によると、サブタンク本体46とロアカバー48とをサブタンク用スナップフィット220により結合する際、非弾性係合部230に対して弾性係合片222が撓み変形を利用して係合される。このとき、延長部225が撓み変形を利用して規制部238の規制側すなわち正面側に配置される。したがって、非弾性係合部230に対する弾性係合片222の係合解除方向への延長部225の移動が規制部238によって規制される。このため、サブタンク用スナップフィット220の非弾性係合部230に対する弾性係合片222の外れを抑制することができる。
【0064】
ちなみに、本実施形態では、サブタンク本体46とロアカバー48との間にフィルタ部材68が弾性的に挟持されている。この場合において、燃料タンク10が過剰に収縮するときは、蓋部材22のスタンドオフ部34が当接する連結支柱52の台座部83と、燃料タンク10の底壁部12との間で、サブタンク本体46とロアカバー48とが対向方向に押圧される。すると、弾性係合片222の係合爪223の係合面223aと非弾性係合部230の係合壁232の係合面232aとが離間することにより、係合壁232に対する係合爪223の係合が外れやすくなる。このような場合でも、本実施形態によれば、非弾性係合部230に対する弾性係合片222の係合解除方向への延長部225の移動が規制部238によって規制されるため、弾性係合片222の外れを抑制することができる(図15参照)。
【0065】
[他の実施形態]
以上、本明細書に開示の技術の実施形態について説明したが、その他各種の形態で実施可能である。例えば、本明細書に開示の技術の燃料貯留装置は、自動車等の車両の燃料供給装置20に限らず、その他の燃料供給装置の燃料貯留装置に適用してもよい。また、サブタンク用スナップフィット220の数は適宜増減してもよい。また、2組の外れ抑制機構のうちの一方の外れ抑制機構は省略してもよい。
【0066】
また、実施形態では、サブタンク本体46に非弾性係合部230を設け、ロアカバー48に弾性係合片222を設けたが、サブタンク本体46に弾性係合片222を設け、ロアカバー48に非弾性係合部230を設けてもよい。
【0067】
また、実施形態では、サブタンク本体46に位置決め凸部135を設け、ロアカバー48に位置決め凹部132を設けたが、サブタンク本体46に位置決め凹部132を設け、ロアカバー48に位置決め凸部135を設けてもよい。また、位置決め凹部132と位置決め凸部135との組数は増減してもよい。
【符号の説明】
【0068】
38 サブタンク(燃料貯留装置)
46 サブタンク本体(アッパ部材)
48 ロアカバー(ロア部材)
68 フィルタ部材
74 燃料貯留部
220 サブタンク用スナップフィット(スナップフィット機構)
222 弾性係合片(係合部)
225 延長部
230 非弾性係合部(被係合部)
238 規制部
238a 摺動案内部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15