(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】弁装置および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 47/02 20060101AFI20221121BHJP
F16K 1/44 20060101ALN20221121BHJP
【FI】
F16K47/02 D
F16K1/44 A
(21)【出願番号】P 2019184317
(22)【出願日】2019-10-07
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2019081706
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮司
(72)【発明者】
【氏名】北見 雄希
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159433(JP,A)
【文献】特開2008-032380(JP,A)
【文献】実開平02-085085(JP,U)
【文献】特開昭51-015232(JP,A)
【文献】特開2012-117584(JP,A)
【文献】特開2017-211034(JP,A)
【文献】特開2002-054522(JP,A)
【文献】特開2013-145041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/44
F16K 31/00 - 31/05
F16K 47/00 - 47/16
F25B 31/325
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁ポートに対して接近または離間する移動方向へと移動する副弁体と、を備えた弁装置であって、
前記主弁体は、前記主弁ポート側から見て前記副弁ポートを覆う有底筒状壁と、前記有底筒状壁の内外の空間を連通する連通流路部と、前記有底筒状壁の内側において、前記移動方向について前記連通流路部の開口よりも前記副弁ポートから遠い位置に形成される滞留空間と、を有し、
前記副弁ポートを通過した流体が、前記滞留空間で一旦滞留してから前記連通流路部を通過して前記主弁ポートに流れ込むように構成されて
おり、
前記連通流路部の開口における少なくとも一部は、前記副弁体が前記副弁ポートから最も離れた位置まで前記移動方向に移動したときの前記副弁体における前記滞留空間側の先端よりも前記副弁ポートに近くなる位置に形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁ポートに対して接近または離間する移動方向へと移動する副弁体と、を備えた弁装置であって、
前記主弁体は、前記主弁ポート側から見て前記副弁ポートを覆う有底筒状壁と、前記有底筒状壁の内外の空間を連通する連通流路部と、前記有底筒状壁の内側において、前記移動方向について前記連通流路部の開口よりも前記副弁ポートから遠い位置に形成される滞留空間と、を有し、
前記副弁ポートを通過した流体が、前記滞留空間で一旦滞留してから前記連通流路部を通過して前記主弁ポートに流れ込むように構成されて
おり、
前記副弁ポートが円形開口であって、
前記有底筒状壁の内径が、前記副弁ポートの内径以下であることを特徴とする弁装置。
【請求項3】
前記連通流路部の開口は、前記副弁体が前記副弁ポートへと最も近づいた位置まで前記移動方向に移動したときの前記副弁体における前記滞留空間側の先端よりも前記副弁ポートから遠い位置に形成されていることを特徴とする請求項
2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記連通流路部は、前記有底筒状壁の周壁を、当該周壁と直交して貫通した横孔であることを特徴とする請求項1~
3のうち何れか一項に記載の弁装置。
【請求項5】
前記連通流路部は、前記有底筒状壁の周壁を、当該周壁に対して斜行しつつ貫通した斜行孔であることを特徴とする請求項1~
4のうち何れか一項に記載の弁装置。
【請求項6】
前記主弁体は、前記有底筒状壁の外周面よりもフランジ状に張り出して、前記主弁ポートが形成された主弁座に着座または離座する主弁部を有していることを特徴とする請求項1~
5のうち何れか一項に記載の弁装置。
【請求項7】
前記滞留空間における前記有底筒状壁の底側には消音部材が配置されていることを特徴とする請求項1~
6のうち何れか一項に記載の弁装置。
【請求項8】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の弁装置が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主弁ポートを開閉するピストン形状の主弁体と、主弁ポートの内部に設けられた副弁ポートを開閉する弁棒状の副弁体と、を備えた二段式の電動膨張弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電動膨張弁では、回転直線移動変換手段が設けられていることで、ロータ回転が弁リフト方向の運動に変換されるようになっている。さらに、この弁リフト方向の運動によって、まず副弁体が移動して副弁ポートが開かれて小流量の流量制御が行われ、さらに副弁体が移動することで主弁体も移動し、主弁ポートが開かれて大流量の流量制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような従来の電動膨張弁では、入口ポートと出口ポートとの圧力差や、副弁ポートの開口度等の条件によっては、副弁ポートを通過する流体の流速が高くなり、騒音の原因となる場合があった。そこで、音の発生部を消音部材によって覆うことで騒音を低減する構成が考えられる。このような消音部材としては金属メッシュのように多数の貫通孔が形成された部材が考えられるが、流体中のゴミ等により目詰まりが発生する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、目詰まりを抑えつつ騒音を低減することができる弁装置および冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁装置は、主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁ポートに対して接近または離間する移動方向へと移動する副弁体と、を備えた弁装置であって、前記主弁体は、前記主弁ポート側から見て前記副弁ポートを覆う有底筒状壁と、前記有底筒状壁の内外の空間を連通する連通流路部と、前記有底筒状壁の内側において、前記移動方向について前記連通流路部の開口よりも前記副弁ポートから遠い位置に形成される滞留空間と、を有し、前記副弁ポートを通過した流体が、前記滞留空間で一旦滞留してから前記連通流路部を通過して前記主弁ポートに流れ込むように構成されており、前記連通流路部の開口における少なくとも一部は、前記副弁体が前記副弁ポートから最も離れた位置まで前記移動方向に移動したときの前記副弁体における前記滞留空間側の先端よりも前記副弁ポートに近くなる位置に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の弁装置によれば、副弁ポートを通過した流体が、滞留空間および連通流路部をこの順に通過した後に主弁ポートに流れ込む。この経路には、上述した金属メッシュの微細孔等が存在しないことから目詰まりを抑えることができる。その上で、流体を滞留空間で滞留させることで、流速を低下させることができ、騒音を低減することができる。このように、本発明の弁装置によれば、目詰まりを抑えつつ騒音を低減することができる。
【0008】
また、本発明の弁装置では、上述のように、前記連通流路部の開口における少なくとも一部は、前記副弁体が前記副弁ポートから最も離れた位置まで前記移動方向に移動したときの前記副弁体における前記滞留空間側の先端よりも前記副弁ポートに近くなる位置に形成されている。
【0009】
このような構成によれば、滞留空間で滞留して連通流路部の開口へと向かう流体を、副弁体の先端により良好に連通流路部の開口へと案内することができる。
【0010】
本発明の他の弁装置は、主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁ポートに対して接近または離間する移動方向へと移動する副弁体と、を備えた弁装置であって、前記主弁体は、前記主弁ポート側から見て前記副弁ポートを覆う有底筒状壁と、前記有底筒状壁の内外の空間を連通する連通流路部と、前記有底筒状壁の内側において、前記移動方向について前記連通流路部の開口よりも前記副弁ポートから遠い位置に形成される滞留空間と、を有し、前記副弁ポートを通過した流体が、前記滞留空間で一旦滞留してから前記連通流路部を通過して前記主弁ポートに流れ込むように構成されており、前記副弁ポートが円形開口であって、前記有底筒状壁の内径が、前記副弁ポートの内径以下であることを特徴とする。
また、上記の他の弁装置においては、前記連通流路部の開口は、前記副弁体が前記副弁ポートへと最も近づいた位置まで前記移動方向に移動したときの前記副弁体における前記滞留空間側の先端よりも前記副弁ポートから遠い位置に形成されていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、副弁体と副弁ポートとの隙間を通り、有底筒状壁の内側空間に流入する流体と、滞留空間から連通流路部へと向かう流体とが副弁体の先端側の位置で衝突することを抑制できる。したがって、このような流体の流れに起因する副弁体の振動が生じにくくなり、振動音等を抑制することができる。
【0012】
また、上記の他の弁装置では、上述のように、前記副弁ポートが円形開口であって、前記有底筒状壁の内径が、前記副弁ポートの内径以下である。
【0013】
このような構成によれば、製造時において、副弁ポートから有底筒状壁の内側空間への空間形成を、例えば副弁ポートの内径に相当する径のドリルによる穴開け加工等により一時に実行することができる。
【0014】
また、前記連通流路部は、前記有底筒状壁の周壁を、当該周壁と直交して貫通した横孔であってもよく、或いは、前記有底筒状壁の周壁を、当該周壁に対して斜行しつつ貫通した斜行孔であってもよい。
【0015】
このような構成によれば、有底筒状壁へのドリルによる穴開け加工等により容易に連通流路部を形成することができる。
【0016】
また、前記主弁体は、前記有底筒状壁の外周面よりもフランジ状に張り出して、前記主弁ポートが形成された主弁座に着座または離座する主弁部を有していることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、有底筒状壁を主弁ポートの内縁から離して配置することができるので、主弁体の弁開時における開口寸法を確保することができる。
【0018】
また、前記滞留空間における前記有底筒状壁の底側には消音部材が配置されていることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、滞留空間に流れ込んだ流体は一旦消音部材にぶつけられてから連通流路部へと向かう。これにより、連通流路部における流体通過音の一因となる流体中の気泡が細分化されることとなり、騒音を一層低減することができる。また、消音部材が滞留空間における有底筒状壁の底側に配置されているので、仮に消音部材の異物による目詰まりが生じたとしても、副弁ポートから連通流路部への流路の閉塞が生じることがない。このように、上記の構成によれば、流路の閉塞を招くことなく騒音を一層低減することができる。
【0020】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの弁装置が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【0021】
このような冷凍サイクルシステムによれば、上記のように弁装置での目詰まりを抑えつつ騒音を低減することができるとともに、弁装置(膨張弁)に発生する振動が下流側の装置に伝達されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の弁装置および冷凍サイクルシステムによれば、副弁ポートからの流体を滞留させてから連通流路部を通して主弁ポートへと向かわせることで、目詰まりを抑えつつ騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図2】前記電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】弁開度を最大とした際の前記電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図4】本発明の冷凍サイクルシステムを示す概略構成図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図6】弁開度を最大とした際の前記電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図8】弁開度を最大とした際の前記電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。尚、第2実施形態においては、第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材及び同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態と同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0025】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る弁装置としての電動弁を
図1~3に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動弁10は、弁ハウジング1と、主弁体2と、副弁体3と、駆動部4と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。
【0026】
弁ハウジング1は、筒状の弁本体1Aと、弁本体1Aの内部に固定される支持部材1Bと、を有している。弁本体1Aは、その内部に円筒状の主弁室1Cが形成され、弁本体1Aには、側面側から主弁室1Cに連通して流体としての冷媒が流入される一次継手管11が取り付けられ、底面側から主弁室1Cに連通して流体としての冷媒が流出される二次継手管12が取り付けられている。さらに、弁本体1Aには、主弁室1Cと二次継手管12とを連通する位置に主弁座13が形成されるとともに、この主弁座13から二次継手管12側に断面形状が円形の主弁ポート14が形成されている。支持部材1Bは、金属製の固定部15によって弁本体1Aに溶接固定されている。支持部材1Bは、樹脂成形品であって、主弁座13側に設けられた円筒状の主弁ガイド部16と、駆動部4側に設けられて内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部17と、を有して形成されている。弁本体1Aの上端部には、ケース18が溶接等によって気密に固定されている。
【0027】
主弁体2は、
図2、3にも示すように、主弁座13に対して着座または離座する主弁部21を有する弁体主部2Aと、ばね受け部2Bと、副弁座2Cと、有底筒状壁2Dと、を有している。弁体主部2Aは、軸線Lを軸方向とする円筒状の円筒部22と、この円筒部22の内部に形成されて流体が流通する副弁室23と、軸線Lに沿って副弁座2Cを貫通する副弁ポート24と、を有している。円筒部22の周面部には複数の連通孔25が形成され、副弁室23は連通孔25により主弁室1Cに連通されている。弁体主部2Aの円筒部22の内周面には、軸線Lに沿った挿通孔26が形成され、この挿通孔26内には副弁体3の副弁基部3Aが挿通されている。ばね受け部2Bは、円環状に形成されて弁体主部2Aの上端部に固定され、その内部にロータ軸46が挿通されている。ばね受け部2Bの上面と支持部材1Bの天井面との間には、主弁ばね27が配設されており、この主弁ばね27により主弁体2は主弁座13方向(閉方向)に付勢されている。
【0028】
副弁体3は、円筒状の副弁基部3Aと、副弁ポート24に一部が進入するように配置される副弁部3Bと、副弁基部3Aの上側に設けられたスラストワッシャ3Cと、副弁基部3Aから軸線Lに沿って下方に突出して下端部に副弁部3Bが形成された軸部3Dと、で構成されている。副弁基部3Aは、主弁体2の挿通孔26に挿通され、軸線Lに沿った上下方向に進退自在かつ軸線L回りに回転自在に支持されている。スラストワッシャ3Cは、副弁基部3Aの上面及びばね受け部2Bの下面に当接可能になっており、その当接面同士の摩擦力が極めて小さくなるようになっている。副弁基部3Aの上部には挿通孔が設けられてロータ軸46が挿通され、ロータ軸46の下端部に形成されたフランジ部(不図示)と副弁基部3Aの底部に接合された軸部3Dの上端部との間に副弁ばねが配設されている。この副弁ばねにより副弁体3はロータ軸46(マグネットロータ44)に対して副弁座2C方向(閉方向)に付勢されている。なお、副弁基部3Aは、ロータ軸46および軸部3Dと一体に形成されてもよく、その場合には、副弁基部3Aが中実状に形成され、副弁ばねが省略されてもよい。
【0029】
駆動部4は、電動モータとしてのステッピングモータ41と、ステッピングモータ41の回転により副弁体3を進退させるねじ送り機構42と、ステッピングモータ41の回転を規制するストッパ機構43と、を備える。ステッピングモータ41は、外周部が多極に着磁されたマグネットロータ44と、ケース18の外周に配設されたステータコイル45と、マグネットロータ44に固定されたロータ軸46と、を備えている。ロータ軸46は、固定部材46aを介してマグネットロータ44に固定されるとともに、軸線Lに沿って延び、その上端部はストッパ機構43のガイド47に挿入されている。ロータ軸46の中間部には雄ねじ部46bが一体に形成され、この雄ねじ部46bが支持部材1Bの雌ねじ部17に螺合し、これによってねじ送り機構42が構成されている。マグネットロータ44が回転すると、ロータ軸46の雄ねじ部46bが雌ねじ部17に案内されることで、マグネットロータ44およびロータ軸46が軸線L方向に進退移動し、これに伴って副弁体3も軸線Lに沿って上昇または下降する。
【0030】
ストッパ機構43は、ケース18の天井部から垂下された円筒状のガイド47と、ガイド47の外周に固定されたガイド線体48と、ガイド線体48にガイドされて回転かつ上下動可能な可動スライダ49と、を備えている。可動スライダ49には、径方向外側に突出した爪部49aが設けられ、マグネットロータ44には、上方に延びて爪部49aと当接する延長部44aが設けられ、マグネットロータ44が回転すると、延長部44aが爪部49aを押すことで、可動スライダ49がガイド線体48に倣って回転かつ上下するようになっている。ガイド線体48には、マグネットロータ44の最上端位置を規定する上端ストッパ48aと、マグネットロータ44の最下端位置を規定する下端ストッパ48bと、が形成されている。これらの上端ストッパ48aおよび下端ストッパ48bに可動スライダ49が当接することで、可動スライダ49の回転が停止され、これによりマグネットロータ44の回転が規制され、副弁体3の上昇または下降も停止される。
【0031】
次に、主弁体2の要部について
図2、3に基づいて説明する。後述するように、主弁ポート14を低圧側ポートとして用いる場合、
図2、3において副弁ポート24を基準としてその上方側が上流側となり、下方側が下流側となることから、以下の説明では、この「上流側」および「下流側」を用いて各部の位置関係を説明する。弁体主部2Aにおける副弁ポート24の下流側に、有底筒状壁2Dが弁体主部2Aと一体に構成されている。有底筒状壁2Dは、その外径が弁体主部2Aの外径よりも小径に形成されている。そして、弁体主部2Aからは、主弁部21が、有底筒状壁2Dの外周面よりもフランジ状に張り出すように形成されている。
【0032】
有底筒状壁2Dは、主弁ポート14側から見て副弁ポート24を覆う、当該副弁ポート24側を開口側として弁体主部2Aと一体に形成された有底円筒状の部位である。本実施形態では、副弁ポート24が円形開口となっている。有底筒状壁2Dの内側空間は、副弁ポート24に対して軸線Lに沿って接近(下降)または離間(上昇)する副弁体3の副弁部3Bの移動方向D11について、その底部以外の内径が、副弁ポート24の内径となるように副弁ポート24と連続して形成された1つの筒状空間となっている。有底筒状壁2Dの内側空間は、ドリルによる穴開け加工で形成されるため、その底部はドリル先端に応じた擂鉢形状となっている。この有底筒状壁2Dには、この有底筒状壁2Dの内外の空間を連通する連通流路部28が形成されている。連通流路部28は、有底筒状壁2Dの周壁を、この周壁と直交して貫通した横孔となっている。また、連通流路部28の開口は、
図3に示されているように、軸線Lに沿った移動方向D11に副弁ポート24から最も離れた位置まで上昇したときの副弁部3Bにおける軸部3Dとは反対側の先端3Eよりも、副弁ポート3Bの側の縁が副弁ポート24に近くなる位置に形成されている。具体的には、副弁部3Bが軸線Lに沿って上昇し、最も副弁ポート24から離れたときでもその先端3Eが連通流路部28の開口全体よりも有底筒状壁2Dの内部における底側に位置するように、連通流路部28が形成されている。また、連通流路部28は、有底筒状壁2Dの周壁に複数が形成されている。1つの連通流路部28の開口面積は、副弁ポート24の開口寸法よりも小さい。尚、「副弁ポート24の開口寸法」とは、副弁ポート24の内径によって決まる開口面積を意味する。
【0033】
そして、有底筒状壁2Dの内側において、移動方向D11について連通流路部28の開口よりも副弁ポート24から遠い位置となる底部側の空間が流体の滞留空間29となっている。滞留空間29は、
図2に流体の流れが矢印D12で示されているように、副弁ポート24からの流体を一旦滞留させてから連通流路部28の開口へと向かわせる空間である。流体は、副弁ポート24から流入すると、その流入した時の惰性により連通流路部28の開口の前を一旦通り過ぎて滞留空間29へと向かう。そして、この滞留空間29の中で滞留しつつ向きを変えて連通流路部28の開口へと向かうこととなる。副弁体3における副弁部3Bは、その滞留空間29側の先端3E寄りの一部分が、この先端3E側に向かうにしたがって外径が小さくなるように先細り形状に形成されたテーパ部3Fとなっている。ここで、副弁体3における軸部3Dは、副弁ポート24よりも大径の円柱状の部位であり、副弁部3Bは、この軸部3Dの下端から副弁ポート24よりも若干小径となるまで先細り形状となった根本テーパ部3Hと、その根本テーパ部3Hの下端に形成された短尺円柱部3Gと、を有し、テーパ部3Fは、この短尺円柱部3Gの下端から更に先細り形状となるように形成されている。
【0034】
以上の電動弁10は、以下のように動作する。まず、
図1、2の状態では、主弁体2の主弁部21が主弁座13に着座し、主弁ポート14が閉じられた弁閉状態である。一方、副弁ポート24に最も近接した位置にある副弁体3は、副弁座2Cに着座せず、副弁体3の副弁部3Bの外周面と副弁ポート24の内周面との隙間によって流路が形成されている。従って、冷媒(流体)が一次継手管11から主弁室1Cに流入した場合、
図2に矢印D12で示されているように、この冷媒は、弁体主部2Aの連通孔25を通過し、副弁室23に流入する。副弁室23に流入した冷媒は、副弁部3Bと副弁ポート24との隙間を通り、滞留空間29に流入する。滞留空間29に流入した冷媒は、その内部に滞留しつつ底部で向きを変えて流れて連通流路部28の開口へと向かい、この開口に流入する。その後、流体は、連通流路部28を通過して主弁ポート14に流れ込み、主弁ポート14から二次継手管12に向かって流出する。このように、電動弁10は、弁開度がゼロであっても微少な流量が生じるように構成されているが、副弁部3Bを副弁ポート24に対して着座させ、弁開度がゼロとなった際に流量がゼロとなるように構成してもよい。
【0035】
上記のように滞留空間29に流入した冷媒は、副弁体3の軸線L方向に沿って進行し、滞留空間29の底部に衝突することによって進行方向を変え、連通流路部28の開口へと流れるようになる。このように冷媒が滞留空間29で滞留しつつ進行方向を変えることで、流速が低下する。連通流路部28の開口に達してその開口に流入した冷媒は、連通流路部28を通過して滞留空間29の外側に流出する。尚、
図1、2に示すように主弁体2により主弁ポート14が閉じられた状態において、主弁ポート14を低圧側ポートとして用いる場合には、副弁ポート24から主弁ポート14に向かうように冷媒が流れる。
【0036】
次に、駆動部4のステッピングモータ41を駆動してマグネットロータ44を回転させて副弁体3を上昇させ、副弁体3を副弁ポート24から離間させることで、副弁部3Bと副弁ポート24との隙間による流路が拡大され、流量が徐々に増加する。この際、主弁体2の主弁部21は主弁座13に着座したままであるため、流量の増加は微少である。このように主弁体2を閉じたまま副弁体3の開度を変更する制御域が小流量制御域である。次に、副弁体3をさらに上昇させると、スラストワッシャ3Cがばね受け部2Bに当接し、副弁体3によって主弁体2が引き上げられ、主弁部21が主弁座13から離座する。このように主弁体2を着座位置(閉位置)から弁開位置(開位置)に向かって上昇させる制御域が大流量制御域であって、この大流量制御域における主弁体2の開度(ステッピングモータ41の回転量=弁リフト量)に対する流量の変化は大きなものとなり、
図3に示すような主弁体2の全開状態において、流量は最大となる。このように主弁ポート14が開いた状態においては、主弁ポート14に対して双方向に冷媒が通過可能となっている。
【0037】
以上の本実施形態によれば、副弁ポート24を通過した冷媒が、滞留空間29および連通流路部28をこの順に通過した後に主弁ポート14に流れ込む。この経路には、金属メッシュの微細孔等が存在しないことから目詰まりを抑えることができる。その上で、冷媒を滞留空間29で滞留させることで、流速を低下させることができ、騒音を低減することができる。このように、本実施形態によれば、目詰まりを抑えつつ騒音を低減することができる。
【0038】
また、連通流路部28の開口が、移動方向D11に副弁ポート24から最も離れた位置まで移動したときの副弁体3における副弁部3Bの先端3Eよりも副弁ポート24に近くなる位置に形成されている。これにより、滞留空間29からの冷媒を、副弁部3Bの先端3Eにより良好に連通流路部28の開口へと案内することができる。
【0039】
また、有底筒状壁2Dの内径が、その底部も含めて副弁ポート24の内径以下であることから、製造時には、副弁ポート24から有底筒状壁2Dの内側に至る空間形成を次のように容易かつ効率的に行なうことができる。即ち、このような空間形成を、例えば副弁ポート24の内径に相当する径のドリルによる穴開け加工等により一時に実行することができる。
【0040】
尚、有底筒状壁2Dの内径を、その底部も含めて副弁ポート24の内径よりも小径としてもよい。この場合には、副弁ポート24側から有底筒状壁2Dの内径に相当する径のドリルによる穴開け加工が行われ、その後、副弁ポート24の内径に相当する径のドリルによる開口部の拡径加工により副弁ポート24が形成されることとなる。
【0041】
また、連通流路部28が、有底筒状壁2Dの周壁を、この周壁と直交して貫通した横孔であることから、有底筒状壁2Dへのドリルによる穴開け加工等により容易に連通流路部28を形成することができる。
【0042】
また、主弁体2が、有底筒状壁2Dの外周面よりもフランジ状に張り出して主弁座13に着座または離座する主弁部21を有している。これにより、有底筒状壁2Dを主弁ポート14の内縁から離して配置することができるので、主弁体2の弁開時における開口寸法を確保することができる。
【0043】
また、副弁体3の副弁部3Bの先端3E寄りの一部分がテーパ部3Fとなっていることから、滞留空間29から連通流路部28の開口へと向かう冷媒を、副弁部3Bにおけるテーパ部3Fの外周面に沿わせて連通流路部28の開口へと良好に案内することができる。
【0044】
次に、
図4に基づいて本発明の冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステム90は、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前記実施形態の電動弁10は、空気調和機の第1室内側熱交換器91(除湿時冷却器(蒸発器)として作動)と第2室内側熱交換器92(除湿時加熱器(凝縮器)として作動)との間に設けられており、圧縮機93、四方弁94、室外側熱交換器95および電子膨張弁96とともに、ヒ-トポンプ式冷凍サイクルを構成している。第1室内側熱交換器91と第2室内側熱交換器92及び電動弁10は室内に設置され、圧縮機93、四方弁94、室外側熱交換器95および電子膨張弁96は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0045】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る弁装置としての電動弁を
図5、6に基づいて説明する。本実施形態の電動弁10Bは、第1実施形態の電動弁10に対し、有底筒状壁2Eの形状が変更されている点で相違している。尚、本実施形態においても、第1実施形態における主弁体2の要部の位置関係についての説明と同様に、主弁体2により主弁ポート14が閉じられて主弁ポート14を低圧側ポートとして用いる場合の「上流側」および「下流側」を用いて位置関係を説明する。また、電動弁10Bの使用方法は、電動弁10の使用方法と同様である。
【0046】
有底筒状壁2Eは、副弁ポート24側から大径部2E1と小径部2E2とを有する2段形状に形成されている。ただし、その内部空間は、第1実施形態と同様に、移動方向D11について、副弁ポート24から底部までが、当該副弁ポート24の内径で連続して形成された1つの筒状空間となっている。
【0047】
この有底筒状壁2Eの周壁を、その周壁に対して斜行しつつ貫通した斜行孔として、連通流路部30が形成されている。この連通流路部30は、有底筒状壁2Eの外側に向かっては、有底筒状壁2Eの大径部2E1と小径部2E2との外径差による段部に開口している。他方、有底筒状壁2Eの内側に向かっては、
図6に示されているように、移動方向D11に副弁ポート24から最も離れた位置まで移動したときの副弁部3Bの先端3Eよりも、副弁ポート24の側の縁が副弁ポート24に近くなる位置に開口している。有底筒状壁2Eには、このような斜行孔としての連通流路部30が複数形成されている。また、1つの連通流路部30の開口面積は、副弁ポート24の開口寸法よりも小さい。尚、「副弁ポート24の開口寸法」とは、副弁ポート24の内径によって決まる開口面積を意味する。
【0048】
そして、有底筒状壁2Eの内側における、副弁ポート24から見て、移動方向D11について連通流路部30の開口よりも副弁ポート24から遠い位置となる底部側の空間であって、当該連通流路部30に連続した空間が滞留空間31となっている。副弁ポート24からの冷媒は、この滞留空間31で一旦滞留してから斜行孔としての連通流路部30の開口へと、副弁部3Bにおける先端3E寄りのテーパ部3Fの外周面に案内されて向かう。
【0049】
本実施形態の電動弁10Bにおいても、第1実施形態の電動弁10と同様に、主弁ポート14が閉じられた弁閉状態においては、
図5に矢印D12で流れが示されているように、一次継手管11から主弁室1Cに流入した冷媒は、副弁室23に流入する。副弁室23に流入した冷媒は、副弁部3Bと副弁ポート24との隙間を通り、滞留空間31に流入する。滞留空間31に流入した冷媒は、ここで滞留しつつ向きを変えて連通流路部30の開口に流入して連通流路部30を通過し、主弁ポート14から二次継手管12に向かって流出する。
【0050】
以上の本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、副弁ポート24を通過した冷媒が、滞留空間31および連通流路部30をこの順に通過した後に主弁ポート14に流れ込む。この経路には、金属メッシュの微細孔等が存在しないことから目詰まりを抑えることができる。その上で、冷媒を滞留空間31で滞留させることで、流速を低下させることができ、騒音を低減することができる。このように、本実施形態によれば、目詰まりを抑えつつ騒音を低減することができる。
【0051】
また、連通流路部30が、有底筒状壁2Eの周壁を斜行しつつ貫通した斜行孔となっているが、このような斜行孔も、ドリルによる穴開け加工等により容易に形成することができる。
【0052】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る弁装置としての電動弁を
図7、8に基づいて説明する。本実施形態の電動弁10Cでは、まず、副弁体6の形状が、上述した第1及び第2実施形態と異なっている。本実施形態の副弁体6は、副弁部6Bにおける先端側のテーパ部6Fが第1及び第2実施形態よりも短くなっている。他方で、軸部6Dと、副弁部6Bにおける根本テーパ部6H及び短尺円柱部6Gについては第1及び第2実施形態と同等である。本実施形態では、副弁部6Bのテーパ部6Fを短くすることで、連通流路部58の開口が有底筒状壁5Fにおける次のような位置に形成されることとなっている。即ち、連通流路部58の開口は、移動方向D11に副弁ポート24へと最も近づいた位置まで移動したときの副弁体6における滞留空間59側の先端よりも副弁ポート24から遠い位置に形成されている。尚、本実施形態の連通流路部58の形状等は、第1実施形態の連通流路部28と同等なものとなっている。
【0053】
そして、滞留空間59における有底筒状壁5Fの底側には消音部材57が配置されている。この消音部材57としては多孔体で形成されたものが好ましい。多孔体で形成された消音部材57は、この消音部材57に向かって冷媒が流れてきたときに、その冷媒が多孔体の内部に侵入し、これによって冷媒中の気泡を細分化させることで消音効果が得られやすい。この点において消音部材57として多孔体で形成されたものが好ましい。多孔体としては、メッシュを複数枚積層したもの、多孔性を有する焼結金属、発泡金属、プラスチック多孔体、等が挙げられる。尚、消音部材の形成材料は多孔体に限るものではなく、例えばゴム等の弾性体で形成することとしてもよい。この場合、消音部材に向かって流れてきた冷媒は、消音部材に弾性的に衝突し、これによって冷媒のエネルギーが吸収され、冷媒中の気泡が細分化されることとなる。
【0054】
ここで、有底筒状壁5Fは、上述した第1及び第2実施形態と同様に、その内径が副弁ポート24の内径となっている。ただし、本実施形態では、有底筒状壁5Fの内側における底部は、第1及び第2実施形態のような擂鉢形状ではなく、後述の消音部材57が配置された際に内面と消音部材57との間に隙間が出来難いように、単純な円筒底部の平坦形状となっている。
【0055】
本実施形態の電動弁10Cにおいても、第1実施形態の電動弁10と同様に、主弁ポート14が閉じられた弁閉状態においては、副弁部6Bと副弁ポート24との間には若干の隙間が開くように構成されている。弁閉状態では、
図7に矢印D32で流れが示されているように、一次継手管11から主弁室1Cに流入した冷媒は、副弁室23に流入し上記の隙間を通って滞留空間59に流入する。滞留空間59に流入した冷媒は、ここで滞留しつつ消音部材57の中を通りながら向きを変えて連通流路部58の開口に流入して連通流路部58を通過し、主弁ポート14から二次継手管12に向かって流出する。その後、主弁ポート14が開けられるまでは、
図8に示されているように、副弁部6Bが副弁ポート24から離れ、両者間の隙間が開いていく。このときの冷媒の流れも、
図7に矢印D32で示されている流れと同じである。
【0056】
以上の本実施形態によれば、前記第1及び第2実施形態と同様に、冷媒を滞留空間59で滞留させて連通流路部58へと向かわせることで、流速を低下させることができ、騒音を低減することができる。また、消音部材57は、上記の冷媒の流路を閉塞させることのない、滞留空間59における有底筒状壁5Fの底側に配置されているので目詰まりを抑えつつ騒音を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態では、連通流路部58の開口は、
図7に示されている弁閉状態の副弁体6の先端よりも副弁ポート24から遠い位置に形成されている。これにより、副弁部3Bと副弁ポート24との隙間を通り、有底筒状壁2Dの内側空間に流入する流体と、滞留空間59から連通流路部58へと向かう冷媒とが副弁部3Bの位置で衝突することを抑制できる。したがって、このような流体の流れに起因する副弁体6の振動が生じにくくなり、振動音等を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、滞留空間59に流れ込んだ冷媒は一旦消音部材57にぶつけられてから連通流路部58へと向かう。これにより、連通流路部58における冷媒通過音の一因となる冷媒中の気泡が細分化されることとなり、騒音を一層低減することができる。消音部材57を多孔体とした場合には、冷媒は消音部材57内に侵入し、多孔体を構成する小孔によって気泡が細分化された後に連通流路部58へ向かう。また、消音部材57が滞留空間59における有底筒状壁5Fの底側に配置されているので、仮に消音部材57の異物による目詰まりが生じたとしても、副弁ポート24から連通流路部58への流路の閉塞が生じることがない。このように、上記の構成によれば、流路の閉塞を招くことなく騒音を一層低減することができる。
【0059】
なお、本発明は、上述した第1~第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記第1実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁10を例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0060】
また、上述した第1~第3実施形態では、複数の連通流路部28、31、58が形成されるとともに、1つの連通流路部28、31、58の開口面積が副弁ポート24の開口面積よりも小さいものとしたが、1つの連通流路部のみを形成してもよいし、1つの連通流路部の開口面積を、副弁ポート24の開口面積以上としてもよい。このように、連通流路部の開口面積を大きくして数を少なくすることで、主弁体に連通流路部を形成する際の作業性を向上させることができる。
【0061】
また、前記第1実施形態および前記第2実施形態では、弁開時の副弁部3Bの先端よりも副弁ポート24に近くなる位置に開口が形成される連通流路部28,30が例示されている。しかしながら、連通流路部の開口は、弁開時の副弁体の先端と同位置か、前記第3実施形態のように副弁ポートから遠くなる位置に設けることとしてもよい。ただし、弁開時の副弁部3Bの先端よりも副弁ポート24に近くなる位置に開口が形成されることで、冷媒を、副弁部3Bの先端により良好に連通流路部28,30の開口へと案内することができる点は上述した通りである。また、前記第3実施形態のように連通流路部58の開口を副弁ポート24から遠くなる位置に設けることで、副弁部3Bと副弁ポート24との隙間を通り、有底筒状壁2Dの内側空間に流入する流体と、滞留空間59から連通流路部58へと向かう冷媒とが副弁部3Bの位置で衝突することを抑制でき、その結果、このような流体の流れに起因する副弁体6の振動音等を抑制することができる点も上述した通りである。
【0062】
また、上述した第1~第3実施形態では、有底筒状壁2Dの内径が副弁ポート24の内径となった形態が例示されている。しかしながら、例えば副弁ポートよりも有底筒状壁の内径を大径にしてもよい。この場合、このように大径に形成した有底筒状壁を、副弁ポートを覆うように弁体主部にろう付け等で固定することで主弁部が構成されることとなる。ただし、有底筒状壁2Dの内径を副弁ポート24の内径とすることで、ドリルによる穴開け加工等により、有底筒状壁2Dの内側空間と副弁ポート24を一時に形成することができる点も上述した通りである。
【0063】
また、上述した第1~第3実施形態では、有底筒状壁2Dの周壁を直交又は斜行して貫通した連通流路部28,30が例示されている。しかしながら、連通流路部は有底筒状壁の内外の空間を連通するものであれば、その具体的な流路形状を問うものではない。しかしながら、有底筒状壁2Dの周壁を貫通した連通流路部28,30とすることで、有底筒状壁2Dへのドリルによる穴開け加工等により容易に形成することができる点も上述した通りである。
【0064】
また、上述した第1~第3実施形態では、有底筒状壁2D,2Eの外周面よりもフランジ状に張り出して主弁座13に着座または離座する主弁部21を有する主弁体2が例示されている。しかしながら、主弁体が主弁座に対してどのように着座または離座するかは、その具体的な構成を問うものではない。ただし、主弁体2にフランジ状に張り出した主弁部21を設けることで、有底筒状壁2D,2Eを主弁ポート14の内縁から離して配置することができるので、主弁体2の弁開時における開口寸法を確保することができる点も上述した通りである。
【0065】
また、上述した第1~第3実施形態では、先端3E寄りの一部分が先細り形状に形成されてテーパ部3Fとなった副弁部3Bを備えた副弁体3が例示されている。しかしながら、副弁体は、副弁ポートに対して接近または離間するものであればその具体的な形状を問うものではない。ただし、テーパ部3Fを有している副弁部3Bを備えた副弁体3を構成することで、冷媒を副弁部3Bの外周面に沿わせて連通流路部28,30の開口へと良好に案内することができる点も上述した通りである。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10、10B、10C 電動弁(弁装置)
14 主弁ポート
2 主弁体
21 主弁部
24 副弁ポート
28、30 連通流路部
29 滞留空間
2D、2E 有底筒状部材
3、6 副弁体
3B、6B 副弁部
13 主弁座
14 主弁ポート
90 冷凍サイクルシステム
91 第1室内側熱交換器(蒸発器)
92 第2室内側熱交換器(凝縮器)
93 圧縮機
95 室外側熱交換器