(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】電池モジュール及びこれを装備する車両
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20221121BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20221121BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20221121BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221121BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/264
H01M50/209
H01M50/262 M
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2019535052
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2018026898
(87)【国際公開番号】W WO2019031169
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017152372
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】寺内 忍
(72)【発明者】
【氏名】石橋 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】三堀 伸一
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104953059(CN,A)
【文献】国際公開第2016/157267(WO,A1)
【文献】特開平08-250151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角形電池セルを厚さ方向に積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、
前記電池積層体の両側面に配置され、一対の前記エンドプレートを締結するバインドバーと、
前記エンドプレートの側面上で前記バインドバーを固定する複数の固定ピンとを備え、
前記エンドプレートの両側面に対向して固定される一対の前記固定ピンが同軸線上に配置されると共に、前記エンドプレートが、前記固定ピンと同軸線上に延在する横リブを備え
、
前記エンドプレートは、前記電池積層体の端面形状と略等しい外形を有する対向プレート部と、前記対向プレート部の4辺から角形電池セルの積層方向に突出する周壁部とを備え、前記エンドプレートの全体形状を略箱形状としてなる電池モジュール。
【請求項2】
請求項
1に記載される電池モジュールであって、
前記周壁部は、前記対向プレート部の両測縁に連結された側面壁と、上端縁に連結された上面壁と、下端縁に連結された底面壁とを備えており、
前記横リブが、前記対向プレート部から角形電池セルの積層方向に突出すると共に、その両端が前記側面壁に連結されており、
前記側面壁に前記固定ピンを挿入する連結穴を設けてなる電池モジュール。
【請求項3】
複数の角形電池セルを厚さ方向に積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、
前記電池積層体の両側面に配置され、一対の前記エンドプレートを締結するバインドバーと、
前記エンドプレートの側面上で前記バインドバーを固定する複数の固定ピンとを備え、
前記エンドプレートの両側面に対向して固定される一対の前記固定ピンが同軸線上に配置されると共に、前記エンドプレートが、前記固定ピンと同軸線上に延在する横リブを備え
、
前記エンドプレートが、上下方向に延在して前記横リブと交差する縦リブを備え、
前記エンドプレートを当該電池モジュールの底面側に配置されるベースプレートに固定
するための固定ボルトを備えており、
前記縦リブが、軸方向に貫通する挿通穴を備えており、
前記固定ボルトを前記縦リブの挿通穴に挿通して前記エンドプレートをベースプレートに固定するようにしてなる電池モジュール。
【請求項4】
請求項
3に記載される電池モジュールであって、
前記横リブは、両端部に前記固定ピンが挿入される連結穴を有しており、
前記縦リブの挿通穴と、前記横リブの連結穴が同一平面内に位置しており、
前記連結穴が前記挿通穴の位置まで貫通するように形成されてなる電池モジュール。
【請求項5】
請求項1
ないし4のいずれかに記載される電池モジュールであって、
前記横リブは、両端部に前記固定ピンが挿入されるボス部を備えると共に、前記ボス部には、前記固定ピンを挿入する連結穴を有しており、
前記固定ピンが前記バインドバーを貫通して前記連結穴に挿入されて前記バインドバーが前記エンドプレートに連結されてなる電池モジュール。
【請求項6】
請求項1
ないし5のいずれかに記載される電池モジュールであって、
前記エンドプレートは、複数列の前記横リブを互いに平行に備えており、両側面に複数対の前記固定ピンが固定されてなる電池モジュール。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれかに記載される電池モジュールであって、
前記エンドプレートがアルミニウムまたはアルミニウム合金で鋳造されてなる電池モジュール。
【請求項8】
請求項1ないし
8のいずれかに記載の電池モジュールを装備する車両であって、
前記電池モジュールと、該電池モジュールから電力供給される走行用のモータと、前記電池モジュール及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の角形電池セルを積層している電池積層体の両端に配置してなるエンドプレートをバインドバーで連結してなる電池モジュールとこれを装備する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電池モジュールは、複数の角形電池セルからなる電池積層体と、電池積層体の両端面に配置される一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートを連結するバインドバーとを備えている(特許文献1参照)。この電池モジュールは、電池積層体をエンドプレートとバインドバーにより拘束することで、電池積層体を構成する角形電池セルの膨張を抑制することができるようになっている。
一方で、近年、体積あたりのエネルギー密度や重量あたりのエネルギー密度の高い電池モジュールが求められており、電池モジュールを構成する角形電池セルも、体積あたりのエネルギー密度や重量あたりのエネルギー密度の高い電池を採用することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
角形電池セルは、体積あたりのエネルギー密度や重量あたりのエネルギー密度を高くしようとすると、充放電や劣化に伴う寸法変化が大きくなる傾向がある。充放電や劣化に伴う寸法変化が大きい角形電池セルの膨張を抑制するためには、比較的大きな力で角形電池セルを拘束する必要がある。
しかしながら、特許文献1の電池モジュールは、エンドプレートがプラスチック製の本体部と、アルミニウムなどの金属プレートとで構成されており、大きな力が加わると本体部が破損したり、金属プレートが変形したりするおそれがある。エンドプレートが破損したり、変形したりすると、角形電池セルの膨張を抑制することができなくなる。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一つは、充分な強度を有するエンドプレートを備えることで角形電池セルの膨張を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の電池モジュールは、複数の角形電池セル1を厚さ方向に積層してなる電池積層体2と、電池積層体2の積層方向の両端面に配置してなる一対のエンドプレート3と、電池積層体2の両側面に配置され、一対のエンドプレート3を締結するバインドバー4と、エンドプレート3の側面上でバインドバー4を固定する複数の固定ピン5とを備え、エンドプレート3の両側面に対向して固定される一対の固定ピン5が同軸線上に配置されると共に、エンドプレート3が、固定ピン5と同軸線上に延在する横リブ13を備えている。
【0007】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電池モジュールを装備してなる車両は、電池モジュール10、20と、電池モジュール10、20から電力供給される走行用のモータ93と、電池モジュール10、20及びモータ93を搭載してなる車両本体90と、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
上記の電池モジュールによれば、バインドバーを固定するためにエンドプレートの両側面に対向して固定される固定ピンと同軸線上に延在する横リブをエンドプレートに設けることで、効果的にエンドプレートの強度を向上させることができる。とくに、両側の固定ピンと同軸線上に延在する横リブの剛性で水平方向に対する曲げ強度を高くできる。エンドプレートは、電池積層体から受けるセル反力によりバインドバーを角形電池セルが膨張する方向に引っ張るが、この力の反作用により、エンドプレートには、水平方向の曲げ応力が作用する。この曲げ応力は、エンドプレートの両側面における固定ピンとバインドバーとの連結点を結ぶ線上で最も大きくなる。以上のエンドプレートは、両側に固定される固定ピンと同軸線上に延在する横リブを設けているので、セル反力の反作用によりエンドプレートにはたらく曲げ応力に対して最も効果的に補強でき、エンドプレートの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る電池モジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電池モジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す電池モジュールのエンドプレートの拡大垂直断面図であって、
図4のIII-III線断面に相当する図である。
【
図4】
図1に示す電池モジュールのエンドプレートの拡大水平断面図であって、
図3のIV-IV線断面に相当する図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る電池モジュールを示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す電池モジュールの分解斜視図である。
【
図7】
図5に示す電池モジュールのエンドプレートの拡大垂直断面図であって、
図8のVII-VII線断面に相当する図である。
【
図8】
図5に示す電池モジュールのエンドプレートの拡大水平断面図であって、
図7のVIII-VIII線断面に相当する図である。
【
図9】エンジンとモータで走行するハイブリッド自動車に電池モジュールを搭載する例を示すブロック図である。
【
図10】モータのみで走行する電気自動車に電池モジュールを搭載する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の一つの着目点について説明する。多数の角形電池セルを備える電池モジュールは、複数の角形電池セルを積層している電池積層体の両端面にエンドプレートを配置し、一対のエンドプレートをバインドバーで連結して、電池積層体を積層方向に加圧する状態で固定される。この電池モジュールは、一対のエンドプレートで電池積層体の両端を加圧状態に固定するので、エンドプレートに充分な強度が要求される。エンドプレートは、充放電される角形電池セルが膨張して内面からセル反力を受ける。エンドプレートは、膨張する電池積層体で内面から押圧されるので、電池積層体の面積と、電池積層体が押圧する圧力との積に比例するセル反力を受ける。そのため、充放電等に伴う寸法変化の大きい角形電池は、その膨張量に応じた大きさのセル反力がエンドプレートに作用することになる。エンドプレートに作用するセル反力は、例えば、車両の走行モータを駆動する電源用の電池モジュールにおいては数トンと極めて大きくなる。従って、エネルギー密度の高い電池モジュールを実現するためには、このように極めて大きな力が加わっても変形を抑制することができるような充分な強度を有するエンドプレートを提供する必要がある。
【0011】
一方で、エンドプレートは、強度と軽量化の両方の特性が要求されることから、プラスチックを厚いプレート状に成形して、外側にアルミニウムなどの金属プレートを積層する構造とし、あるいは全体をアルミニウム等やプラスチックで成形して製作することがある。これ等のエンドプレートは、プラスチック部分の強度が低く、金属プレートも曲げ変形に対する強度が高くないため、セル反力の小さい電池モジュールにおいて使用できても、セル反力の大きい電池モジュールにおいては充分な強度を実現できない。充分な強度でないエンドプレートは強いセル反力で変形する。変形するエンドプレートは、加圧状態に固定している角形電池セルの相対位置を変化させる原因となる。角形電池セルは、厚い金属板のバスバーを電極端子に固定して、バスバーを介して直列や並列に接続しているので、相対位置にずれが生じると、電極端子とバスバーとの接続部分に無理な歪み力が作用する。歪み力は電極端子とバスバーとの接続部分を損傷し、また、電極端子と角形電池セルの外装ケースとの接続部を損傷する原因となる。角形電池セルの相対位置のずれは、エンドプレートを充分な強度とすることで改善できる。エンドプレートは、全体を鉄合金などの金属ブロックとすることで充分な強度を実現できる。
【0012】
しかしながら、この構造のエンドプレートは極めて重く、結果的に電池モジュールのエネルギー密度の低下を招き実用化できない。エンドプレートは軽量化しながら高い強度が要求されるが、軽量化と強度は互いに相反する特性であって両方を実現することは極めて難しかった。以上の実情に鑑みると、金属ブロックからなるエンドプレートの形状の最適化を図り、効果的にエンドプレートの変形を抑制することができる形状を検討することが重要である。
【0013】
本発明のある態様の電池モジュールは、以下の構成により特定されてもよい。電池モジュールは、複数の角形電池セル1を厚さ方向に積層してなる電池積層体2と、電池積層体2の積層方向の両端面に配置してなる一対のエンドプレート3と、電池積層体2の両側面に配置され、一対のエンドプレート3を締結するバインドバー4と、エンドプレート3の側面上で前記バインドバー4を固定する複数の固定ピン5とを備えている。電池モジュールは、エンドプレート3の両側面に対向して固定される一対の固定ピン5が同軸線上に配置されると共に、エンドプレート3が、固定ピン5と同軸線上に延在する横リブ13を備えている。
【0014】
エンドプレート3は、横リブ13の両端部に固定ピン5が挿入されるボス部13Xを備えると共に、ボス部13Xには、固定ピン5を挿入する連結穴13Aを備えて、固定ピン5がバインドバー4を貫通して連結穴13Aに挿入されてバインドバー4をエンドプレート3に連結することができる。上記構成により、横リブの両端部に設けたボス部の連結穴に固定ピンを挿入することで同軸線上に配置される一対の固定ピンを横リブを介して同一直線状に連結できる。これにより、エンドプレートの両側面に位置する一対のバインドバーを横リブと固定ピンを介して強固に連結できる。
【0015】
また、エンドプレート3は、複数列の横リブ13を互いに平行に備えて、両側面に複数対の固定ピン5を固定することができる。上記構成によれば、エンドプレートに設けた複数列の横リブによって、より強い曲げ強度を実現できる。また、エンドプレートの両側面において上下に離れた位置で固定ピンを介してバインドバーを連結できる。
【0016】
さらに、エンドプレート3は、電池積層体2の端面形状と略等しい外形を有する対向プレート部11と、対向プレート部11の4辺から角形電池セル1の積層方向に突出する周壁部12とを備えて、エンドプレート3の全体形状を略箱形状とすることができる。上記構成によれば、エンドプレートの形状を、対向プレート部の4辺に周壁部を設けた箱形状とすることで、箱形状が有する高い剛性を利用して優れた強度のエンドプレートが実現できる。
【0017】
さらにまた、エンドプレートは、周壁部12が対向プレート部11の両測縁に連結された側面壁12Aと、上端縁に連結された上面壁12Bと、下端縁に連結された底面壁12Cとを備えて、横リブ13が、対向プレート部11から角形電池セル1の積層方向に突出すると共に、その両端を側面壁12Aに連結し、側面壁12Aに固定ピン5を挿入する連結穴13Aを設けることができる。上記構成によれば、対向プレート部の4辺を囲む周壁部の内側において、対向プレート部から突出する横リブの両端を周壁部の側面壁に連結することで、さらに剛性を高めてより効果的にエンドプレートの強度を向上させることができる。
【0018】
さらにまた、エンドプレート3は、上下方向に延在して横リブ13と交差する縦リブ15を備えることができる。上記構成によれば、上下方向に延在して横リブと交差する縦リブを備えることで、幅方向の曲げ強度に加えて上下方向の曲げ強度に対しても優れた強度を実現できる。
【0019】
電池モジュールは、さらに、エンドプレート3を電池モジュールの底面側に配置されるベースプレート9に固定するための固定ボルト6を備えて、縦リブ15が軸方向に貫通する挿通穴15Aを備え、固定ボルト6を縦リブ15の挿通穴15Aに挿通してエンドプレート3をベースプレート9に固定することができる。上記構成によると、縦リブに設けた挿通穴に固定ボルトを挿通して、電池モジュールの底面側に配置されるベースプレートにエンドプレートを固定するので、エンドプレートを補強するために構成される縦リブを、固定ボルトを挿通するための部材に兼用して、専用の挿通部材を設けることなく、製造コストを低減しながら効率よく電池モジュールをベースプレートに連結できる。
【0020】
さらに、エンドプレート3は、横リブ13が、両端部に固定ピン5が挿入される連結穴13Aを備えて、縦リブ15の挿通穴15Aと、横リブ13の連結穴13Aとを同一平面内に位置させて、連結穴13Aを挿通穴15Aの位置まで貫通するように形成することができる。上記構成によれば、縦リブに設けた挿通穴と、横リブに設けた連結穴とを同一平面内に配置することで、角形電池セルの積層方向における挿通穴と連結穴の位置を接近させることができ、これによりエンドプレートを薄くすることができる。また、連結穴を挿通穴の位置まで貫通するように形成することで、挿通穴の位置を連結穴の方向に接近させて、言い換えると挿通穴をエンドプレートの両側方向に配置できる。
【0021】
さらにまた、エンドプレート3は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で鋳造することができる。
【0022】
さらに、一の側面にかかる電池モジュールを装備する車両によれば、上記のいずれかの電池モジュール10、20と、電池モジュール10、20から電力供給される走行用のモータ93と、電池モジュール10、20及びモータ93を搭載してなる車両本体90と、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えることができる。
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0024】
(実施形態1)
図1~
図4は実施形態1に係る電池モジュールを示している。
図1は電池モジュールの斜視図を、
図2は電池モジュールの分解斜視図を、
図3は電池モジュールの端部を垂直面内で切断した垂直縦断面図を、
図4は電池モジュールの端部を水平面内で切断した水平断面図をそれぞれ示している。なお、本明細書において、上下方向とは図における上下方向とし、左右方向は、図における左右方向であって、電池の積層方向と直交する水平方向を意味するものとする。
【0025】
これらの図に示す電池モジュール10は、複数の角形電池セル1を絶縁材のセパレータ18を挟んで積層した電池積層体2と、電池積層体2の両端面にあって、電池積層体2を両端面から挟んで定位置に保持している一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3を連結しているバインドバー4と、エンドプレート3の側面上でバインドバー4を固定する固定ピン5とを備えている。さらに、電池モジュール10は、
図2に示すように、各バインドバー4と電池積層体2との間に絶縁シート16が介在される構成としても良く、また、電池積層体2及びエンドプレート3の底面にも、これらを絶縁する底面プレート17を備える構成としてもよい。
【0026】
以上の電池モジュール10は、
図1に示すように全体形状を細長い箱形とし、角形電池セル1を多数積層して電池積層体2とし、電池積層体2を積層方向の両端面からエンドプレート3で挟み、両端のエンドプレート3をバインドバー4で連結して電池積層体2を加圧状態に固定している。電池積層体2は、積層された角形電池セル1を金属板のバスバー(図示せず)を介して直列に、あるいは並列に、あるいはまた直列と並列に接続している。
【0027】
(角形電池セル1)
角形電池セル1は、図に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形電池で、厚さ方向に積層されて電池積層体2としている。角形電池セル1はリチウムイオン二次電池である。ただし、角形電池セルは、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等、充電できる全ての二次電池とすることもできる。角形電池セル1は、密閉構造の外装缶に正負の電極板を電解液と共に収容している。外装缶は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属板を角形にプレス成形され、開口部を封口板で気密に密閉している。封口板は、外装缶と同じアルミニウムやアルミニウム合金で、両端部に正負の電極端子を固定している。さらに、封口板は、正負の電極端子の間に、ガス排出弁を設けている。
【0028】
複数の角形電池セル1は、各角形電池セル1の厚み方向が積層方向となるように積層されて電池積層体2を構成している。角形電池セル1は、正負の電極端子を設けている端子面を同一平面に配置して、複数の角形電池セル1を積層して電池積層体2としている。
【0029】
(セパレータ18)
電池積層体2は、
図3と
図4に示すように、積層している角形電池セル1の間にセパレータ18を挟着している。図のセパレータ18は、絶縁材で薄いプレート状またはシート状に製作されている。図に示すセパレータ18は、角形電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状としており、このセパレータ18を互いに隣接する角形電池セル1の間に積層して、隣接する角形電池セル1同士を絶縁している。なお、セパレータ18とは別に、隣接する角形電池セル1間に第二スペーサを配置しても良い。角形電池セル1とスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることで、角形電池セル1を冷却することができる。また、角形電池セル1の表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクチューブで角形電池セルの電極部分を除く外装缶の表面を熱溶着させてもよい。
【0030】
(電池積層体2)
電池積層体2は、隣接する角形電池セル1の正負の電極端子に金属製のバスバー(図示せず)が接続されて、バスバーでもって複数の角形電池セル1を直列又は並列に、あるいは直列と並列に接続される。図に示す電池積層体2は、18個の角形電池セル1を直列に接続している。ただ、本発明は、電池積層体を構成する角形電池セルの個数とその接続状態を特定しない。
【0031】
電池積層体2は、両端面に端面スペーサ19を挟んでエンドプレート3を配置している。端面スペーサ19は、
図2に示すように、電池積層体2とエンドプレート3との間に配置されてエンドプレート3を電池積層体2から絶縁する。端面スペーサ19は、上述したセパレータ18と同様の材質で構成することができる。
【0032】
(エンドプレート3)
エンドプレート3は、電池積層体2の角形電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサ19の外側に配置されて電池積層体2を両端から挟着している。電池積層体2の両端に配置される一対のエンドプレート3は、電池積層体2の両側面に沿って配置されるバインドバー4が連結されて締結される。エンドプレート3は、
図2と
図4に示すように、両側面上において固定ピン5を介してバインドバー4が連結される。エンドプレート3の両側面に固定される固定ピン5は、対向する固定ピン5同士が同軸線上に位置するように配置される。
図2の例では、エンドプレート3の両側面に沿って2個ずつ、全体で4個の固定ピン5を介してバインドバー4を連結している。
【0033】
電池積層体2の両端に配置される一対のエンドプレート3は、バインドバー4が連結されて電池積層体2を加圧する状態に保持するので、角形電池セル1の膨張によってセル反力を受ける。
図1ないし
図4に示すエンドプレート3は、セル反力に耐える強度を実現するために、全体を金属で一体成形すると共に、その形状の最適化を図ることで軽量化を実現している。図のエンドプレート3Aは、電池積層体2の端面と対向する対向プレート部11を有しており、この対向プレート部11から角形電池セル1の積層方向に突出して水平方向に延在する横リブ13を一体成形して設けている。横リブ13は、エンドプレート3Aの両側面に対向して固定される一対の固定ピン5と同軸線上に延在して形成されている。
【0034】
横リブ13は、両端部に固定ピン5が挿入されるボス部13Xを備えており、ボス部13Xには固定ピン5を挿入する連結穴13Aを設けている。
図4の横リブ13は、両端部に設けられたボス部13Xと、これらのボス部13Xを連結する連結部13Yとで構成しており、全体の長さを対向プレート部11の横幅と略等しくしている。ボス部13Xは、固定ピン5の軸部が挿入される連結穴13Aを軸方向に穿孔して設けている。このため、ボス部13Xは、軸方向に垂直な面内における外形を固定ピン5の軸部よりも大きく、言い換えると太く成形している。連結部13Yは、内部に中空部を設けることなく、対向プレート部11に一体的に連結する構造としている。この連結部13Yは、角形電池セル1の積層方向への突出高さを高くして、厚さを薄くすることで、軽量化を図りつつ、水平面内での曲げ強度を高めている。
【0035】
エンドプレート3Aは、
図3と
図4に示すように、複数列の横リブ13を互いに平行に備えており、両側面に複数対の固定ピン5が固定されてバインドバー4が連結されている。
図4のエンドプレート3Aは、上下に離間して2列の横リブ13を備えており、両側面に対向して配置される2対の固定ピン5がバインドバー4を貫通して連結穴13Aに挿入されて、横リブ13の両端に位置してバインドバー4が連結されている。この構造は、エンドプレート3Aに設けた複数列の横リブ13によって、より強い曲げ強度を実現できる。また、横リブ13の両端においてバインドバー4を固定するので、セル反力の反作用によりバインドバー4からエンドプレート3Aにはたらく曲げ応力に対して最も効果的に補強できる。ここで、図のエンドプレート3Aは2列の横リブ13を備えているが、エンドプレートに設ける横リブの数は2列に限定しない。エンドプレートに設ける横リブの数は、1列とすることも、3列以上とすることもできる。ただし、横リブは、いずれの場合においても、固定ピンと同軸線上の位置に設けられるものとし、固定ピンと同軸線上の位置以外の場所には設けられない。
【0036】
図2~
図4に示すエンドプレート3Aは、電池積層体2の端面形状と略等しい外形を有する四角形状の対向プレート部11と、対向プレート部11の4辺から角形電池セル1の積層方向に突出する周壁部12とを備えている。周壁部12は、対向プレート部11の両測縁に連結された側面壁12Aと、上端縁に連結された上面壁12Bと、下端縁に連結された底面壁12Cとを備えている。左右の側面壁12Aと、上下の上面壁12B及び底面壁12Cで構成される周壁部12は、互いの端縁を連結して四角形の枠形状に形成されている。このエンドプレート3Aは、対向プレート部11と周壁部12とで全体形状を略箱形状として全体の剛性を高めている。
【0037】
図のエンドプレート3Aは、周壁部12の内側において、2列の横リブ13を設けている。2列の横リブは、上下に位置する上面壁12B及び底面壁12Cに対して互いに平行な姿勢であって所定の間隔を設けて形成されている。周壁部12の内側に形成される横リブ13は、その両端部を側面壁12Aに一体的に連結している。
図4に示すエンドプレート3Aは、横リブ13の両端部に形成されるボス部13Xを側面壁12Aに一体的に連結すると共に、ボス部13Xの先端部を側面壁12Aの表面から突出させて突出部14として、その先端面に開口された連結穴13Aをエンドプレート3Aの側面に表出させている。図に示すエンドプレート3Aは、両側面から突出する突出部14の形状を略円柱状とすると共に、これらの突出部14をバインドバー4の内面に固定された補強部7(詳細には後述する)に連結する構造としている。図に示す補強部7は、突出部14を挿入する連結凹部7Aを備えており、この連結凹部7Aに突出部14を挿入してエンドプレート3Aをバインドバー4の定位置に連結している。
【0038】
ここで、
図4に示す電池モジュール10は、バインドバー4の端部の内面であって、エンドプレート3Aの側面との対向面に補強部7を設けているので、エンドプレート3Aの左右方向の幅を角形電池セル1の幅よりも狭く、正確には、両側に配置される補強部7の厚み分だけ狭くしている。したがって、補強部を設けていないバインドバーを使用する電池モジュールにおいては、エンドプレートの左右方向の幅を角形電池セルの幅と等しくしてもよい。この場合、エンドプレートの両側面は、突出部のないフラット面として連結穴を設けることができる。また、エンドプレートの上下方向の高さについては、
図3に示すように、角形電池セル1の高さよりも多少低くしており、角形電池セル1の上端部及び下端部と対向する部分にはエンドプレート3Aが対向しないようにしている。これにより、セル反力により押圧されるエンドプレート3Aの反作用により、角形電池セル1の封口板側の上端部や外装缶の底部と対向する部分が強く押圧されるのを防止している。角形電池セル1の外装缶の開口部を閉塞する封口板と外装缶との接合部や外装缶の底部が損傷するのを防止するためである。
【0039】
以上のエンドプレート3は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であって、鋳造により製造される。アルミニウム合金としては、Al-Cu-Mg系、Al-Cu-Ni-Mg系、Al-Cu-Si系、Al-Si-Mg系、Al-Si-Cu系、Al-Si-Cu-Mg系、Al-Si-Cu-Ni-Mg系等が利用できる。このアルミニウム合金製のエンドプレート3は、熱処理型合金である。またアルミニウム合金製のエンドプレート3は、ダイキャストで成型される。またアルミニウム合金製のエンドプレート3は、溶体化処理、焼入れ及び時効熱処理等を含む熱処理によって調質されることが好ましい。
【0040】
(固定ピン5)
エンドプレート3は、横リブ13の両端部に形成された連結穴13Aに固定ピン5を挿入してバインドバー4が固定される。
図4の電池モジュール10は、固定ピン5をボルト5Aとするので、横リブ13の両端部には、連結穴13Aとして、ボルト5Aの雄ネジ5bをねじ込む雌ねじ穴13aを設けている。雌ねじ穴13aは端面から軸方向に伸びるように設けられる。ボルト5Aは、バインドバー4を貫通して、雌ねじ穴13aにねじ込まれて、バインドバー4をエンドプレート3に固定する。ただ、固定ピンは、必ずしもボルトによる螺合とする必要はなく、固定ピンを横リブの連結穴に圧入して固定することも、固定ピンを溶接ボルトとすることもできる。
【0041】
(バインドバー4)
電池積層体2の側面は、一対のバインドバー4でそれぞれ被覆されて、電池積層体2の各側面においてエンドプレート3同士をバインドバー4でそれぞれ締結している。各バインドバー4は、電池積層体2の側面をほぼ被覆する大きさに形成したバインドバー主面41を有する。このバインドバー主面41は、電池積層体2の積層方向において端縁まで平板状に形成される。バインドバー4は、その端縁を断面視においてL字状に折曲しない非折曲端縁とすることが好ましい。
【0042】
バインドバー4は、
図1及び
図2に示すように、電池積層体2の積層方向に延長されており、両端が電池積層体2の両端面に配置されたエンドプレート3に固定されて、このエンドプレート3を介して電池積層体2を積層方向に締結している。バインドバー4は、電池積層体2の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属板で、電池積層体2の両側面に対向して配置されている。バインドバー4は、固定ピン5であるボルト5Aを挿通するための貫通穴を設けて止め穴4aとしている。このバインドバー4には、鉄などの金属板、好ましくは、鋼板が使用できる。金属板からなるバインドバー4は、プレス成形等により折曲加工されて所定の形状に形成される。
【0043】
バインドバー4は、バインドバー主面41の両端部を除く中間部分の上端部に沿って、電池積層体2の上面を保持する上面側折曲部44を設けると共に、下面を保持する下面側折曲部45を備えている。バインドバー主面41は、電池積層体2と、その両端に配置されるエンドプレート3のほぼ全体を被覆する大きさの矩形状としている。
図1に示すバインドバー主面41は、電池積層体2の側面のほぼ全面を隙間なく被覆している。ただ、バインドバー主面は、1以上の開口部を設けて、電池積層体の側面の一部を表出させることもできる。バインドバー主面に開口部を形成することで、電池積層体を表出させて空冷したり、冷却気体を供給することができる。なお、冷却気体をバインドバー主面に開口部から供給する必要がない場合であっても、バインドバー主面に開口部を形成してもよい。この構成により、バインドバーの軽量化を図ることができる。
【0044】
また、上面側折曲部44は、電池積層体2を構成する角形電池セル1の上面を保持して、各角形電池セル1の端子面の位置が上下にずれるのを抑制している。さらに、下面側折曲部45は、電池積層体2及びエンドプレート3の底面を保持して、各角形電池セル1及びエンドプレート3の底面を同一平面上に配置している。なお、図の下面側折曲部45は、電池積層体2及びエンドプレート3の底面側に配置される底面プレート17を固定するための固定穴を形成している。
【0045】
バインドバー4は、バインドバー主面41と上面側折曲部44の内面に絶縁シート16を配置して、この絶縁シート16により、電池積層体2の角形電池セル1とバインドバー4とを絶縁している。さらに、
図2に示す電池モジュール10は、電池積層体2及びエンドプレート3の底面に、絶縁性を有する底面プレート17を配置しており、この底面プレート17を下面側折曲部45を介して定位置に配置している。
【0046】
(補強部7)
さらに、
図2と
図4に示すバインドバー4は、両端部の内面であって、エンドプレート3Aと対向する領域に補強部7を固定しており、この補強部7を介してエンドプレート3Aをバインドバー4に連結している。これにより、バインドバー4自体の肉厚を厚くすることなく、その両端部において補強部7を介してエンドプレート3Aを安定して固定できるようにしている。
【0047】
補強部7は、金属製で構成される。好ましくは、バインドバー4と同一の金属製、またはバインドバー4よりも剛性の高い金属で構成できる。また補強部7は、好ましくはバインドバー4と一体に形成される。例えばバインドバー4を異形材厚とするために、テーラードブランク材を利用する。これにより補強部7とバインドバー4を一つの部材として成形することができる。あるいは、個別に用意された補強部7を、バインドバー4に溶接してもよい。これにより、予め補強部7をバインドバー4に溶接して組立工程を簡素化できる。
【0048】
さらに、補強部7は、エンドプレート3Aの両側面から突出する突出部14を挿入して連結するために連結凹部7Aを備えている。
図4に示す補強部7は、連結凹部7Aを貫通穴としており、この貫通穴に突出部14を挿入して、バインドバー4をエンドプレート3Aに連結している。突出部14が挿入される連結凹部7Aは、内径を突出部14の外径にほぼ等しいが僅かに大きくしている。補強部7の厚さは、突出部14の突出量とほぼ等しくし、あるいはやや小さくして、突出部14がバインドバー4を貫通することなく補強部7を貫通するようにしている。固定ピン5のボルト5Aは、ボルト頭5aの外径を連結凹部7Aの内径(突出部14の外径)よりも大きくしており、バインドバー4に固定された補強部7をエンドプレート3Aの側面壁12Aとボルト5Aのボルト頭5aとで挟着してバインドバー4をエンドプレート3Aに固定している。図に示すバインドバー4は、止め穴4aの内形をボルト頭5aの外形よりも大きくしており、エンドプレート3Aにねじ込まれるボルト5Aのボルト頭5aの内面を補強部7の表面に密着させるようにしている。この構造は、バインドバー4から突出するボルト頭の突出量を小さくして電池モジュールの外径を小さくできる。ただ、バインドバーの止め穴は、その内形をボルト頭の外径よりも小さくすることもできる。この構造は、突出部の先端面とボルト頭とでバインドバーを挟着してエンドプレートに固定する。
【0049】
なお、補強部は必ずしも必要ではなく、バインドバーは、バインドバー主面の両端部の内面を直接にエンドプレートの側面に固定することもできる。この場合、エンドプレートは、両側面から突出部を突出させることなく両側面をフラット面としてこの面にバインドバー主面の両端部の内面を当接させて固定する。あるいは、エンドプレートは、両側面から突出部を突出させると共に、バインドバーの両端部には、この突出部を案内する内形の止め穴を開口し、この止め穴に突出部を挿入すると共に、突出部に固定ピンを挿入してバインドバーをエンドプレートに固定する。
【0050】
以上のように、エンドプレート3Aの両側面から突出させた突出部14を、補強部7を介してあるいは直接にバインドバー4に係止する構造は、角形電池セル1の膨張に伴う荷重がバインドバー4に対して直線状に印加される状態とすることができる。すなわち、バインドバー4の引っ張り方向で力を受けるように構成することで、電池積層体2を締結する剛性を高めることが可能となる。
【0051】
(実施形態2)
以上の実施形態1では、エンドプレート3に水平方向に延在する横リブ13を設ける例を示したが、エンドプレートは、横リブに加えて、上下方向に延在する縦リブを設けて、横リブと縦リブとを交差させる構成とすることもできる。このような例を実施形態2として、
図5ないし
図8に基づいて説明する。これらの図において、
図5は電池モジュールの斜視図を、
図6は電池モジュールの分解斜視図を、
図7は電池モジュールの端部を垂直面内で切断した垂直横断面図を、
図8は電池モジュールの端部を水平面内で切断した水平断面図をそれぞれ示している。これらの図に示す電池モジュール20は、エンドプレート3Bの構成、及びエンドプレート3Bの固定構造を除いて、上述した実施形態1の電池モジュールとほぼ同じ構成としている。したがって、上述した電池モジュール10と同じ構成要素については同符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0052】
これらの図に示す電池モジュール20は、複数の角形電池セル1を絶縁材のセパレータ18を挟んで積層した電池積層体2と、電池積層体2の両端面にあって、電池積層体2を両端面から挟んで定位置に保持している一対のエンドプレート3Bと、一対のエンドプレート3Bを連結しているバインドバー4と、エンドプレート3Bの側面上でバインドバー4を固定する固定ピン5と、エンドプレート3Bを電池モジュール20の底面側に配置されるベースプレート9に固定するための固定ボルト6とを備えている。
【0053】
(エンドプレート3B)
図7と
図8に示すエンドプレート3Bは、上下方向に延在する縦リブ15を対向プレート部11に一体成形して設けている。図のエンドプレート3Bは、左右に離間して2列の縦リブ15を互いに平行に設けており、上下方向に延在する縦リブ15と水平方向に延在する横リブ13とを互いに交差させている。この構造のエンドプレート3Bは、縦横に交差する縦リブ15及び横リブ13によって、さらに強い曲げ強度を実現できる。図のエンドプレート3Bは、周壁部12の内側において、2列の縦リブ15を設けている。2列の縦リブ15は、左右に位置する側面壁12Aに対して互いに平行な姿勢であって所定の間隔を設けて成形されている。周壁部12の内側に形成される縦リブ15は、その上端部を上面壁12Bに、下端部を底面壁12Cにそれぞれ一体的に連結している。
図7に示すエンドプレート3Bは、縦リブ15の下端部を底面壁12Cの下面から下方に突出させて突出部24を設けている。このエンドプレート3Bは、
図7に示すように、突出部24の下端を角形電池セル1の下端面と等しく配置する状態で、対向プレート部11の下端を角形電池セル1の下端よりも上方に配置するようにしている。これにより、対向プレート部11の下端部が角形電池セル1の下端部に対向するのを防止している。
【0054】
さらに、縦リブ15は、
図7に示すように、軸方向に貫通する挿通穴15Aを備えている。このエンドプレート3Bは、
図2に示すように、縦リブ15の挿通穴15Aに固定ボルト6を挿通してエンドプレート3Bをベースプレート9に固定するようにしている。この構造は、エンドプレート3Bを補強するために構成される縦リブ15を、固定ボルト6を挿通するための部材に兼用できるので、専用の挿通部材を設けることなく、製造コストを低減できる。また、縦リブ15に挿通穴15Aを開口することで、エンドプレート3B全体の重量を軽くできる。
【0055】
さらに、縦リブ15に挿通穴15Aを備えるエンドプレート3Bは、
図7に示すように、縦リブ15の挿通穴15Aと、横リブ13の連結穴13Aとを同一平面内に位置して設けている。これにより角形電池セル1の積層方向における挿通穴15Aと連結穴13Aの軸間距離縮めて、エンドプレート3Bを薄くすることができる。図に示すエンドプレート3Bは、側面から水平方向に穿孔される連結穴13Aを挿通穴15Aまで貫通させており、連結穴13Aと挿通穴15Aとを内部で連通させている。このように、連結穴13Aを挿通穴15Aの位置まで貫通させることで、挿通穴15Aの位置を連結穴13Aの方向に接近させることができ、これにより、挿通穴15Aをエンドプレート3Bの両側方向に配置できる。この連結穴13Aは、挿通穴15Aまで貫通する下孔を穿孔した後、下孔をねじ切りして雌ねじ穴13aを設けることができる。この雌ねじ穴13aは、挿通穴15Aまで届かない深さとなるように連結穴13Aの途中まで設けられる。
【0056】
以上のエンドプレート3Bは、両側面をフラット面として、この側面に連結穴13Aを設けている。このエンドプレート3Bは、
図7に示すように、バインドバー4を貫通する固定ピン5のボルト5Bが雌ねじ穴13aにねじ込まれて、バインドバー4が連結されている。図に示すボルト5Bは、バインドバー4の内面に固定された補強部7の連結凹部7Aに嵌合される嵌合部5cを雄ネジ5bの後端部に備えている。このボルト5Bは、ボルト頭5aの外径を連結凹部7Aの内径よりも大きくしており、バインドバー4に固定された補強部7をエンドプレート3Aの側面とボルト5Bのボルト頭5aとで挟着してバインドバー4をエンドプレート3Aに固定している。
【0057】
(固定ボルト6)
さらに、
図5と
図6に示す電池モジュール20は、エンドプレート3Bの縦リブ15に設けた挿通穴15Aを上下に貫通する固定ボルト6を介して、電池モジュール20の底面に配置されるベースプレート9に固定される構造としている。固定ボルト6は、ネジ部の先端をベースプレート9の外側に設けたナット部(図示せず)にねじ込んで、あるいは、ベースプレート9に設けた雌ねじ穴にねじ込んで固定される。
【0058】
以上の電池モジュール20は、ベースプレート9の上面に載置されると共に、エンドプレート3を貫通する固定ボルト6がベースプレート9にねじ込まれてベースプレート9の定位置に固定される。このベースプレート9は、電池モジュール20が固定されるプレートであって、電池モジュール20を車両に搭載される使用例においては、車両に固定されるフレーム、例えば、車両のシャーシーとすることができる。車両に搭載される電池モジュール20は、固定ボルト6をエンドプレート3の縦リブ15に設けた挿通穴15Aに挿通し、固定ボルト6の先端をシャーシーの雌ねじ穴(図示せず)にねじ込んで、車両のシャーシーに固定される。固定ボルト6は、エンドプレート3をシャーシーに強固に固定する。この構造は、
図10に示すように、エンドプレート3を貫通する固定ボルト6を、車両のシャーシー92に直接に固定することで、電池モジュール10を極めて強固に車両に固定できる。
【0059】
(電池モジュールを装備する車両)
以上の電池モジュールは、電動車両を走行させるモータに電力を供給する電源に最適である。電池モジュールを搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電池モジュールを直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築して搭載することもできる。
【0060】
図9は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に実施形態1の電池モジュール10を搭載する例を示す。この図に示す電池モジュール10を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電池モジュール10と、電池モジュール10の電池を充電する発電機94と、エンジン96、モータ93、電池モジュール10、及び発電機94を搭載してなる車両本体90と、エンジン96又はモータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。電池モジュール10は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電池モジュール10の角形電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電池モジュール10から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電池モジュール10の電池を充電する。
【0061】
また、
図10は、モータのみで走行する電気自動車に実施形態2の電池モジュール20を搭載する例を示す。この図に示す電池モジュール20を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電池モジュール20と、この電池モジュール20の電池を充電する発電機94と、モータ93、電池モジュール20、及び発電機94を搭載してなる車両本体90と、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。電池モジュール20は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電池モジュール10から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電池モジュール20の角形電池を充電する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明にかかる電池モジュールは、ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1…角形電池セル、2…電池積層体、3、3A、3B…エンドプレート、4…バインドバー、4a…止め穴、5…固定ピン、5A…ボルト、5B…ボルト、5a…ボルト頭、5b…雄ネジ、5c…嵌合部、6…固定ボルト、7…補強部、7A…連結凹部、9…ベースプレート、10、20…電池モジュール、11…対向プレート部、12…周壁部、12A…側面壁、12B…上面壁、12C…底面壁、13…横リブ、13A…連結穴、13a…雌ねじ穴、13X…ボス部、13Y…連結凹部、14…突出部、15…縦リブ、15A…挿通穴、16…絶縁シート、17…底面プレート、18…セパレータ、19…端面スペーサ、24…突出部、41…バインドバー主面、44…上面側折曲部、45…下面側折曲部、90…車両本体、92…シャーシー、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、EV…車両、HV…車両。