(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】MCL-1阻害剤及びタキサン化合物の組み合わせ物、その使用及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20221121BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20221121BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221121BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221121BHJP
C07D 495/04 20060101ALN20221121BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K31/337 ZMD
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P43/00 111
C07D495/04 105Z
(21)【出願番号】P 2019536593
(86)(22)【出願日】2018-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2018050298
(87)【国際公開番号】W WO2018127575
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-03
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500287019
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,デール
(72)【発明者】
【氏名】ハリロヴィッチ,エンサー
(72)【発明者】
【氏名】シャンリオン,マイア
(72)【発明者】
【氏名】マラグノ,アナ・レティシア
(72)【発明者】
【氏名】ジェネステ,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】メリノ,デルフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ホイットル,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイヤン,フランソワーズ
(72)【発明者】
【氏名】ビジヴァーダー,ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】レッセン,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】マランゴーニ,エリザベッタ
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-129120(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0352097(US,A1)
【文献】国際公開第2016/207217(WO,A1)
【文献】Oncol.Res.Treat.,2016年,39(suppl 3),p.117 V387
【文献】International Journal of Oncology,2016年,49,pp.402-410
【文献】Basic Science,2016年,Vol.27,Suppl.9,ix4,12P
【文献】European Journal of Pharmaceutical Sciences,NL,2015年,Vol. 70,pp. 64 - 71,http://dx.doi.org/10.1016/j.ejps.2015.01.003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
C07D 495/04
A61P 35/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳癌又は肺癌の処置における、
同時、逐次、又は別々に使用するための、
(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤と
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物と
を含む組み合わせ物。
【請求項2】
前記MCL-1阻害剤が、(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である、請求項1記載の組み合わせ物。
【請求項3】
前記MCL-1阻害剤が、(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である、請求項1記載の組み合わせ物。
【請求項4】
併用処置中のMCL-1阻害剤の用量が、25mg~1500mgである、請求項3記載の組み合わせ物。
【請求項5】
前記MCL-1阻害剤が、併用処置中1週間に1回投与される、請求項3記載の組み合わせ物。
【請求項6】
前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、静脈内投与される、請求項1記載の組み合わせ物。
【請求項7】
前記MCL-1阻害剤が、経口投与され、そして、前記タキサン化合物が、静脈内投与される、請求項1記載の組み合わせ物。
【請求項8】
前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、
乳癌又は肺癌を処置するために共同で処置的に有効な量で提供される、請求項
1記載の、使用するための組み合わせ物。
【請求項9】
前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、
乳癌又は肺癌を処置するために相乗的に有効な量で提供される、請求項
1記載の、使用するための組み合わせ物。
【請求項10】
前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、有効な癌処置を提供すると同時に、
乳癌又は肺癌の処置において各化合物についての必要用量を低減することができ、最終的には副作用が低減される、相乗的に有効な量で提供される、請求項
1記載の、使用するための組み合わせ物。
【請求項11】
前記
乳癌が、
トリプルネガティブ乳癌である、請求項
1記載の、使用するための組み合わせ物。
【請求項12】
前記
肺癌が、
非小細胞肺癌又は小細胞肺癌である、請求項
1記載の、使用するための組み合わせ物。
【請求項13】
1つ以上の賦形剤を更に含む、請求項1記載の組み合わせ物。
【請求項14】
同時、逐次、又は別々に投与するための、
(a)請求項1記載のMCL-1阻害剤、及び
(b)請求項1記載のタキサン化合物、
を別々に又は一緒に含有する医薬であって、前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、
乳癌又は肺癌を処置するために有効な量で提供される医薬。
【請求項15】
乳癌又は肺癌の処置における使用のための医薬組成物であって、
1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤と組み合わせて
(a)(2R)-2-{[(5S
a
)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a
)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤;及び、
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物
を含む、医薬組成物。
【請求項16】
被検体において、
乳癌又は肺癌を処置するための医薬組成物であって、
治療的有効量の、
(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤を含み、
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物と同時、又は逐次被検体に投与される、医薬組成物。
【請求項17】
被検体において、
乳癌又は肺癌を処置するための医薬組成物であって、
治療的有効量の、
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物を含み、
(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤と同時、又は逐次被検体に投与される、医薬組成物。
【請求項18】
(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して不応性であるか、又は(ii)化学療法で処置した後に再発しているか、又は(i)及び(ii)の両方である
乳癌の患者を増感するための医薬組成物であって、
共同で処置的に有効な量の
(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤;及び
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物
を含む、医薬組成物。
【請求項19】
(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して不応性であるか、又は(ii)化学療法で処置した後に再発しているか、又は(i)及び(ii)の両方である
乳癌の患者を増感するための医薬組成物であって、
処置的に有効な量の(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤を含み、
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物と同時、又は逐次患者に投与される、医薬組成物。
【請求項20】
(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して不応性であるか、又は(ii)化学療法で処置した後に再発しているか、又は(i)及び(ii)の両方である
乳癌の患者を増感するための医薬組成物であって、
処置的に有効な量の(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物を含み、
(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤と同時、又は逐次患者に投与される、医薬組成物。
【請求項21】
前記乳癌が、トリプルネガティブ乳癌である、請求項15~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記肺癌が、非小細胞肺癌又は小細胞肺癌である、請求項15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
乳癌又は肺癌を処置するための医薬の製造における、
(a)(2R)-2-{[(5S
a
)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a
)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤;及び
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物
の組み合わせの使用。
【請求項24】
乳癌又は肺癌を処置するための医薬の製造における、
(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤の使用であって;
前記医薬が(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物と同時、又は逐次投与される、使用。
【請求項25】
乳癌又は肺癌を処置するための医薬の製造における、
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物の使用であって、
前記医薬が(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤と同時、又は逐次投与される、使用。
【請求項26】
(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して不応性であるか、又は(ii)化学療法で処置した後に再発しているか、又は(i)及び(ii)の両方である
乳癌の患者を増感するための医薬の製造における、
(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤の使用であって;
前記医薬が(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物と同時、又は逐次投与される、使用。
【請求項27】
(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して不応性であるか、又は(ii)化学療法で処置した後に再発しているか、又は(i)及び(ii)の両方である
乳癌の患者を増感するための医薬の製造における、
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物の使用であって;
前記医薬が(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤と同時、又は逐次投与される、使用。
【請求項28】
(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して不応性であるか、又は(ii)化学療法で処置した後に再発しているか、又は(i)及び(ii)の両方である
乳癌の患者を増感するための医薬の製造における、
(a)(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、又は(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸、
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩である、MCL-1阻害剤;及び
(b)パクリタキセル又はドセタキセルであるタキサン化合物
の組み合わせの使用。
【請求項29】
前記乳癌が、トリプルネガティブ乳癌である、請求項23~28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記肺癌が、非小細胞肺癌又は小細胞肺癌である、請求項23~25のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MCL-1阻害剤及びタキサン化合物の組み合わせ物に関する。また、本発明は、癌、具体的には、乳、肺、卵巣、膀胱、及び前立腺の癌、より具体的には、乳及び肺の癌の処置における該組み合わせ物の使用に関する。また、このような組み合わせ物を投与するのに好適な医薬製剤が提供される。
【0002】
背景技術
癌は、無制御の細胞増殖を特徴とする。抗有糸分裂剤及び抗微小管剤は、細胞分裂において重要な作用を有することから、癌療法のために研究されている。有糸分裂機構を阻害した結果、多様なありとあらゆる結果がもたらされ、主に細胞周期の停止及び細胞死が引き起こされる。例えばタキサン等の抗微小管剤が、現在臨床の場で使用されている。例えば、パクリタキセル及びドセタキセルは、卵巣、肺、乳、膀胱、及び前立腺の癌を含む類似の臨床活性スペクトルを有する。タキサンは、チューブリンに結合し、そして、微小管の脱重合を阻害し、それによって、微小管の構築及び脱構築に関わる正常な平衡状態を破壊し、ひいては、微小管の機能を損なわせる抗有糸分裂剤である。微小管は、細胞分裂に必須であり、そして、タキサンに曝露された細胞は、分裂に失敗することがある。タキサンで処理した後に細胞周期が停止すると、有糸分裂の失敗に起因して最終的には細胞死に至ることがある。抗癌療法の進展にもかかわらず、毒性の限定されたより有効な療法が長年にわたって必要とされている。実際、パクリタキセル及びドセタキセルに関連する毒性は、重篤な末梢性ニューロパチーに加えて、主な用量規定毒性として好中球減少症を含む。実際に、これら毒性の重篤性を軽減するために、大量に前処置された患者では減量が頻繁に行われる。それに加えて、タキサンに対する耐性の発現によっても臨床におけるその使用が制限される。
【0003】
アポトーシスは、発癌性ストレス及び化学療法剤を含む様々な細胞毒性刺激によって開始される高度に制御された細胞死経路である。アポトーシスの回避は癌の顕著な特徴であり、そして、多くの化学療法剤の有効性は、内因性ミトコンドリア経路の活性化に依存することが示されている。BCL-2ファミリータンパク質の3つの異なるサブグループが、内因性アポトーシス経路を制御している:(i)アポトーシス促進性BH3(Bcl-2ホモロジー3)-onlyタンパク質;(ii)生存促進性メンバー、例えば、BCL-2自体、BCL-xL、BCL-W、MCL-1、及びBCL-2A1;並びに(iii)アポトーシス促進性エフェクタータンパク質BAX及びBAK(Czabotar et al., Nature Reviews Molecular Cell Biology 2014, 15, 49-63)。BCL-2ファミリーのアポトーシス促進性メンバーの過剰発現が多くの癌で観察されており(Adams and Cory, Oncogene 2007, 26, 1324-1337)、そして、アポトーシスを誘導し、癌における腫瘍退縮を引き起こすための処置ストラテジーとしてBH3-模倣薬、例えば、ABT-199(ベネトクラクス)、ABT-263(ナビトクラクス)、及びS63845による抗アポトーシスタンパク質の薬理学的阻害が浮上してきている(Zhang et al., Drug Resist. Updat. 2007, 10, 207-217; Kotschy et al., Nature 2016, 538, 477-482)。それにもかかわらず、BH3模倣薬に対する耐性の機序が観察されており(Choudhary et al., Cell Death and Disease 2015, 6, e1593)、そして、併用療法の使用によって、有効性を改善し、そして、耐性の発現を遅らせるか又は更には抑止することができた。
【0004】
乳癌は、不均一な疾患であり、そして、遺伝子発現プロファイリングに基づいて少なくとも5つの主なサブグループに階級化することができる:Luminal A、Luminal B(エストロゲン陽性、ER+)、HER2-amplified、basal-like(主にトリプルネガティブ乳癌又はTNBC)、及びnormal-like(Curtis et al., Nature 2012, 486, 346-352; Perou et al., Nature 2000, 406, 747-752)。これらサブタイプから、一般的に、療法に対する応答及び耐性、転移のパターン、並びに全生存に関する臨床挙動が予測される。BCL2ファミリーの抗アポトーシスメンバーとアポトーシス促進性メンバーとの間のバランスの脱調節に起因する細胞死の回避を含む複数の機序が、腫瘍進行及び癌療法に対する耐性に寄与している(Merino et al., Oncogene 2016, 35, 1877-1887; Beroukim et al., Nature 2010, 463, 899-905; Wertz et al., Nature 2011, 471, 110-114; Goodwin et al., Cell Death Differ. 2015)。トリプルネガティブ乳癌サブグループでは、ネオアジュバント療法後の残存病変が、病理学的完全寛解に達した患者と比べて転移性再発のリスクがより高いことに関連している(Liedtke et al., J. Clin. Oncol. 2008, 26(8), 1275-1281)。TNBC患者の約70%が、ネオアジュバント療法(例えば、パクリタキセル又はドセタキセル)後に完全寛解に達せず、そして、転移性再発の可能性がより高くかつ3年全生存率がわずか60~70%であるという劇的に悪い結果に苦しんでいる。
【0005】
肺癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、及びカルチノイドに分類される。全肺癌の約80%がNSCLCに対応しており、これは、腺癌、扁平上皮癌、及び大細胞癌に更に分類することができる。肺癌は、男性の癌関連死の最も多い原因であり、そして、乳癌後の女性では2番目に多い原因である。肺癌療法は標的療法の出現と共に著しく発展したが、処置有効性を改善し、副作用を低減し、そして、耐性の出現を回避するために、新規療法を開発することが依然として強く必要とされている(Rothschild Cancers 2015, 7(2), 930-949)。
【0006】
本発明は、MCL-1阻害剤及びタキサン化合物の新規組み合わせ物を提供する。結果は、MCL-1を標的とする強力な低分子と抗微小管剤とを関連付けると、乳癌及び肺癌の細胞株において高度に相乗的であることを示す(
図1~7;表1及び4)。本発明者らは、インビボにおいて微小管機能の撹乱とMCL-1のターゲティングとを組み合わせると、乳癌PDX(患者由来異種移植片)モデルにおいて耐量で(
図8及び9)、そして、トリプルネガティブ乳癌のモデルであるMDA-MB-231異種移植片を有する雌ヌードラットにおいて様々な用量で(
図10~14)効果的であることも示す。また、様々な投与スケジュールを用いるTNBCの様々なPDXモデルにおいても陽性の組み合わせが観察された(
図15)。耐量でインビトロ及びインビボにおけるMCL-1のターゲティング及び微小管機能の撹乱の相乗効果は、強力な低分子阻害剤の組み合わせを通して証明されている。最後に、ネオアジュバント処置後の残存腫瘍分析は、化学療法耐性について研究するための主なかつ研究が進んでいない分野であり、したがって、本発明者らは、化学療法に対して耐性を有するPDXモデルにおいて実験を実施して、MCL-1阻害剤とタキサン化合物との組み合わせ物が効果的であることを示す(
図9)。
【0007】
発明の概要
本発明は、
同時、逐次、又は別々に使用するための、
(a)式(I)のMCL-1阻害剤:
【化1】
(式中、
◆Dは、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、
◆Eは、フリル、チエニル、又はピロリルの環を表し、
◆X
1、X
3、X
4、及びX
5は、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子を表し、
◆X
2は、C-R
26基又は窒素原子を表し、
◆
【化2】
は、環が芳香族であることを意味し、
◆Yは、窒素原子又はC-R
3基を表し、
◆Zは、窒素原子又はC-R
4基を表し、
◆R
1は、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-Cy
8、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-NR
11R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表し、
◆R
2、R
3、R
4、及びR
5は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-Cy
1、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
1、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
1、-O-アルキル(C
1-C
6)-NR
11R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表すか、
あるいは対(R
1、R
2)、(R
2、R
3)、(R
3、R
4)、(R
4、R
5)の置換基が、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、ハロゲン、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-NR
13R
13’、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、又はオキソから選択される1~2個の基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
6及びR
7は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-NR
11R
11’、-O-Cy
1、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
1、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
1、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表すか、
あるいは対(R
6、R
7)の置換基が、2個の隣接する炭素原子にグラフトしたとき、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、-NR
13R
13’、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、又はオキソから選択される基によって置換されていてもよいと理解され、
◆Wは、-CH
2-基、-NH-基、又は酸素原子を表し、
◆R
8は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
8)アルキル基、-CHR
aR
b基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル(C
1-C
6)基、又はヘテロアリールアルキル(C
1-C
6)基を表し、
◆R
9は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、-Cy
2、-アルキル(C
1-C
6)-Cy
2、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
2、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
2、-Cy
2-Cy
3、-アルキニル(C
2-C
6)-O-Cy
2、-Cy
2-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
3、ハロゲン原子、シアノ基、-C(O)-R
14、又は-C(O)-NR
14R
14’を表し、
◆R
10は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、アリールアルキル(C
1-C
6)基、シクロアルキルアルキル(C
1-C
6)基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、又は-アルキル(C
1-C
6)-O-Cy
4を表すか、
あるいは、対(R
9、R
10)の置換基が、2個の隣接する炭素原子にグラフトしたとき、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、
◆R
11及びR
11’は、互いに独立して、水素原子、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又は-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1を表すか、
あるいは、対(R
11、R
11’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、対象の窒素は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す1~2個の基によって置換されていてもよいと理解され、そして、可能性のある置換基の炭素原子のうちの1個以上が重水素化されていてもよいと理解され、
◆R
12は、-Cy
5、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-NR
11-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-Cy
6-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
7、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
9、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-Cy
9、-NH-C(O)-NH-R
11、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-NR
11-アルキル(C
0-C
6)-Cy
9、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11R
11’、-OR
11、-NR
11-C(O)-R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-OR
11、-SO
2-R
11、-C(O)-OR
11、
【化3】
を表し、
このように定義されたアンモニウムは、双性イオン形態として存在するか又は一価アニオン性対イオンを有することが可能であり、
◆R
13、R
13’、R
14、及びR
14’は、互いに独立して、水素原子、又は場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
aは、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
bは、-O-C(O)-O-R
c基、-O-C(O)-NR
cR
c’基、又は-O-P(O)(OR
c)
2基を表し、
◆R
c及びR
c’は、互いに独立して、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
8)アルキル基、シクロアルキル基、(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基、又は(C
1-C
6)アルコキシカルボニル(C
1-C
6)アルキル基を表すか、
あるいは、対(R
c、R
c’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される非芳香族環を形成し、対象の窒素は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、
◆Cy
1、Cy
2、Cy
3、Cy
4、Cy
5、Cy
6、Cy
7、Cy
8、及びCy
10は、互いに独立して、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、
◆Cy
9は、
【化4】
を表すか、
又はCy
9は、-O-P(O)(OR
20)
2;-O-P(O)(O
-M
+)
2;-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20;ヒドロキシ;ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル;-(CH
2)
r-U-(CH
2)
s-ヘテロシクロアルキル;若しくは-U-(CH
2)
q-NR
21R
21’から選択される基によって置換されているヘテロアリール基を表し、
◆R
15は、水素原子;-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20基;直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基;-U-(CH
2)
q-NR
21R
21’基;又は-(CH
2)
r-U-(CH
2)
s-ヘテロシクロアルキル基を表し、
◆R
16は、水素原子;ヒドロキシ基;ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基;-(CH
2)
r-U-(CH
2)
s-ヘテロシクロアルキル基;(CH
2)
r-U-V-O-P(O)(OR
20)
2基;-O-P(O)(O
-M
+)
2基;-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20基;-(CH
2)
p-O-C(O)-NR
22R
23基;又は-U-(CH
2)
q-NR
21R
21’基を表し、
◆R
17は、水素原子;-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20基;-O-P(O)(OR
20)
2基;-O-P(O)(O
-M
+)
2基;ヒドロキシ基;ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基;-(CH
2)
r-U-(CH
2)
s-ヘテロシクロアルキル基;-U-(CH
2)
q-NR
21R
21’基;又はアルドン酸を表し、
◆M
+は、薬学的に許容し得る一価カチオンを表し、
◆Uは、結合又は酸素原子を表し、
◆Vは、-(CH
2)
s-基又は-C(O)-基を表し、
◆R
18は、水素原子又は(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
19は、水素原子又はヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
20は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
21及びR
21’は、互いに独立して、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又はヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基を表すか、
あるいは、対(R
21、R
21’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
22は、(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基、-(CH
2)
p-NR
24R
24’基、又は-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20基を表し、
◆R
23は、水素原子又は(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基を表すか、
あるいは、対(R
22、R
23)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~5個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~18個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又はヘテロシクロアルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
24及びR
24’は、互いに独立して、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表すか、
あるいは、対(R
24、R
24’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
25は、水素原子、ヒドロキシ基、又はヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
26は、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又はシアノ基を表し、
◆R
27は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
28は、-O-P(O)(O
-)(O
-)基、-O-P(O)(O
-)(OR
30)基、-O-P(O)(OR
30)(OR
30’)基、-O-SO
2-O
-基、-O-SO
2-OR
30基、-Cy
10、-O-C(O)-R
29基、-O-C(O)-OR
29基、又は-O-C(O)-NR
29R
29’基を表し、
◆R
29及びR
29’は、互いに独立して、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又は直鎖若しくは分枝状のアミノ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
30及びR
30’は、互いに独立して、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又はアリールアルキル(C
1-C
6)基を表し、
◆nは、0又は1に等しい整数であり、
◆pは、0、1、又は2に等しい整数であり、
◆qは、1、2、3、又は4に等しい整数であり、
◆r及びsは、独立して、0又は1に等しい整数であり、
以下の通り理解され:
-「アリール」は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インダニル、又はインデニルの基を意味し、
-「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の芳香族部分を有し、そして、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する、5~10個の環員で構成される任意の単環式又は二環式の基を意味し、
-「シクロアルキル」は、3~10個の環員を含有する任意の単環式又は二環式の非芳香族炭素環式の基を意味し、
-「ヘテロシクロアルキル」は、縮合、架橋、又はスピロの環系を含んでいてもよい、3~10個の環員を含有し、そして、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する任意の単環式若しくは二環式の非芳香族炭素環式の基を意味し、
このように定義されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルの基、並びに該アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシを、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ、場合により置換されている(C
1-C
6)アルキル-S-、ヒドロキシ、オキソ(又は適切な場合N-オキシド)、ニトロ、シアノ、-C(O)-OR’、-O-C(O)-R’、-C(O)-NR’R’’、-NR’R’’、-(C=NR’)-OR’’、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、トリフルオロメトキシ、又はハロゲンから選択される1~4個の基によって置換することが可能であり、R’及びR’’は、互いに独立して、水素原子又は場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表すと理解され、そして、前述の可能性のある置換基の炭素原子のうちの1個以上が重水素化されていてもよいと理解される)
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩と、
(b)タキサン化合物と
を含む組み合わせ物に関する。
【0008】
該式(I)の化合物、その合成、癌の処置におけるその使用、及びその医薬製剤については、国際公開公報第2015/097123号、同第2016/207216号、同第2016/207217号、同第2016/207225号、同第2016/207226号、及び同第2017/125224号に記載されており、その内容は参照によって組み入れられる。
【0009】
特定の実施態様では、タキサン化合物は、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、テセタキセル、Opaxio(登録商標)(パクリタキセルポリグルメクス)、Abraxane(登録商標)(nab-パクリタキセル) ラロタキセル、タキソプレキシン、BMS-184476、紅豆杉A、紅豆杉B、及び紅豆杉C、並びにその他から選択される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、同時、逐次、又は別々に使用するための、
(a)式(I)のMCL-1阻害剤の具体的な事例である式(II)のMCL-1阻害剤:
【化5】
(式中、
◆Zは、窒素原子又はC-R
4基を表し、
◆R
1は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、シアノ、-NR
11R
11’、-Cy
8、又はハロゲン原子を表し、
◆R
2、R
3、及びR
4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-Cy
1、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
1、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
1、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表すか、
あるいは対(R
2、R
3)、(R
3、R
4)のうちの一方の置換基が、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、-NR
13R
13’、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、又はオキソから選択される基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
6及びR
7は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-Cy
1、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
1、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
1、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表すか、
あるいは、対(R
6、R
7)の置換基は、2個の隣接する炭素原子にグラフトしたとき、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、-NR
13R
13’、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、又はオキソから選択される基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
8は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
8)アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル(C
1-C
6)基、又はヘテロアリールアルキル(C
1-C
6)基を表し、
◆R
9は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、-Cy
2、-アルキル(C
1-C
6)-Cy
2、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
2、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
2、-Cy
2-Cy
3、-アルキニル(C
2-C
6)-O-Cy
2、-Cy
2-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
3、ハロゲン原子、シアノ基、-C(O)-R
14、又は-C(O)-NR
14R
14’を表し、
◆R
11及びR
11’は、互いに独立して、水素原子、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又は-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1を表すか、
あるいは、対(R
11、R
11’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、対象の窒素は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、そして、可能性のある置換基の炭素原子のうちの1個以上が重水素化されていてもよいと理解され、
◆R
12は、-Cy
5、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-NR
11-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-Cy
6-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
7、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11R
11’、-OR
11、-NR
11-C(O)-R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-OR
11、-SO
2-R
11、-C(O)-OR
11、又は-NH-C(O)-NH-R
11を表し、
◆R
13、R
13’、R
14、及びR
14’は、互いに独立して、水素原子、又は場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
25は、水素原子、ヒドロキシ基、又はヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆Cy
1、Cy
2、Cy
3、Cy
5、Cy
6、Cy
7、及びCy
8は、互いに独立して、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、
◆nは、0又は1に等しい整数であり、
以下の通り理解され:
-「アリール」は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インダニル、又はインデニルの基を意味し、
-「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の芳香族部分を有し、そして、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する、5~10個の環員で構成される任意の単環式又は二環式の基を意味し、
-「シクロアルキル」は、3~10個の環員を含有する任意の単環式又は二環式の非芳香族炭素環式の基を意味し、
-「ヘテロシクロアルキル」は、縮合、架橋、又はスピロの環系を含んでいてもよい、3~10個の環員を含有し、そして、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する任意の単環式若しくは二環式の非芳香族炭素環式の基を意味し、
このように定義されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルの基、並びに該アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシを、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ、場合により置換されている(C
1-C
6)アルキル-S-、ヒドロキシ、オキソ(又は適切な場合N-オキシド)、ニトロ、シアノ、-C(O)-OR’、-O-C(O)-R’、-C(O)-NR’R’’、-NR’R’’、-(C=NR’)-OR’’、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、トリフルオロメトキシ、又はハロゲンから選択される1~4個の基によって置換することが可能であり、R’及びR’’は、互いに独立して、水素原子又は場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表すと理解され、そして、前述の可能性のある置換基の炭素原子のうちの1個以上が重水素化されていてもよいと理解される)
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩と、
(b)タキサン化合物と
を含む組み合わせ物が提供される。
【0011】
別の実施態様では、本発明は、同時、逐次、又は別々に使用するための、
(a)本明細書に記載される式(I)のMCL-1阻害剤、及び
(b)パクリタキセル若しくはドセタキセルから選択されるタキサン化合物、
又は
(a)本明細書に記載される式(II)のMCL-1阻害剤、及び
(b)パクリタキセル若しくはドセタキセルから選択されるタキサン化合物、
を含む組み合わせ物を提供する。
【0012】
別の実施態様では、本発明は、同時、逐次、又は別々に使用するための、
(a)化合物1:(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸又はその薬学的に許容し得る塩、及び
(b)タキサン化合物、
を含む組み合わせ物を提供する。
【0013】
あるいは、本発明は、同時、逐次、又は別々に使用するための
(a)化合物2:(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸又はその薬学的に許容し得る塩、及び
(b)タキサン化合物、
を含む組み合わせ物を提供する。
【0014】
別の実施態様では、本発明は、癌の処置において使用するための、本明細書に記載される組み合わせ物を提供する。
【0015】
別の実施態様では、本発明は、癌を処置するための医薬の製造における、本明細書に記載される組み合わせ物の使用を提供する。
【0016】
別の実施態様では、同時、逐次、又は別々に投与するための、
(a)本明細書に記載される式(I)のMCL-1阻害剤、及び
(b)タキサン化合物、
又は
(a)本明細書に記載される式(II)のMCL-1阻害剤、及び
(b)タキサン化合物、
を別々に又は一緒に含有する医薬であって、該MCL-1阻害剤及び該タキサン化合物が、癌を処置するために有効な量で提供される医薬を提供する。
【0017】
別の実施態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、共同で処置的に有効な量の、
(a)本明細書に記載される式(I)のMCL-1阻害剤、及び
(b)タキサン化合物、
又は
(a)本明細書に記載される式(II)のMCL-1阻害剤、及び
(b)タキサン化合物、
を、それを必要としている被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0018】
別の実施態様では、該MCL-1阻害剤は、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(化合物1)である。
【0019】
別の実施態様では、該MCL-1阻害剤は、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(化合物2)である。
【0020】
別の実施態様では、該タキサン化合物は、パクリタキセルである。
【0021】
別の実施態様では、該タキサン化合物は、ドセタキセルである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】代表的なMDA-MB-453乳癌細胞株における、パクリタキセルと化合物1との組み合わせ物についての阻害、Loewe過剰阻害、及び増殖阻害のマトリクスを示す。
【
図2】代表的なMDA-MB-468乳癌細胞株における、パクリタキセルと化合物1との組み合わせ物についての阻害、Loewe過剰阻害、及び増殖阻害のマトリクスを示す。
【
図3】代表的なH522肺癌細胞株における、パクリタキセルと化合物1との組み合わせ物についての阻害、Loewe過剰阻害、及び増殖阻害のマトリクスを示す。
【
図4】2つの独立した実験における、乳癌細胞株MDA-MB-453においてパクリタキセルと組み合わせた化合物2によって与えられる細胞増殖の阻害(左)及びLoewe過剰阻害(右)についての例示的な細胞増殖阻害効果及び相乗作用の組み合わせマトリクスを示す。効果マトリクスにおける値は、0(阻害なし)から100(全阻害)の範囲である。相乗作用マトリクスにおける値は、試験した濃度における化合物2及びパクリタキセルの単剤活性に基づいて計算された理論的相加性を上回る増殖阻害の程度を表す。
【
図5】2つの独立した実験における、肺癌細胞株H522においてパクリタキセルと組み合わせた化合物2によって与えられる細胞増殖の阻害(左)及びLoewe過剰阻害(右)についての例示的な細胞増殖阻害効果及び相乗作用の組み合わせマトリクスを示す。効果マトリクスにおける値は、0(阻害なし)から100(全阻害)の範囲である。相乗作用マトリクスにおける値は、試験した濃度における化合物2及びパクリタキセルの単剤活性に基づいて計算された理論的相加性を上回る増殖阻害の程度を表す。
【
図6】化合物2とドセタキセルとの相乗効果を示す。ヨウ化プロピジウム(PI)染色を用いた生存率分析の前に72時間QVD(10μM)の有り無しで、SK-BR-3細胞をドセタキセル(2nM)で処理したか又は化合物2(30nM)の存在下で未処理のまま放置した。結果を未処理細胞の百分率として提示し、そして、3~5つの独立した実験を表す。
【
図7】化合物2とドセタキセルとの相乗効果を示す。SK-BR-3細胞を漸増濃度の化合物2及びドセタキセルで72時間処理し、次いで、Cell Titer Gloを用いた生存率アッセイ、続いて、BLISSスコア分析に供した。BLISS相乗作用値は、縦軸において>0.0である。
【
図8】TNBC PDXモデルにおける動物生存の改善における化合物2とドセタキセルとの有効性を示す。ビヒクルのみ(黒線)、ドセタキセル(0及び21日目に10mg/kg 腹腔内)+化合物2用のビヒクル(濃灰色線)、化合物2(6週間にわたって毎週1回25mg/kg 静脈内)+ドセタキセル用のビヒクル(薄灰色線)、又はドセタキセル及び化合物2の併組み合わせ(点線)で処理した110T(アームあたりn=10~12頭のマウス)、838T(アームあたりn=12頭のマウス)、又はPDX OD-BRE-0589(アームあたり8頭のマウス)を有するマウスのKaplan-Meier生存曲線。右パネル:個々の腫瘍体積曲線。PDX 838Tモデルは、療法とは無関係の加齢に関連する病気のため120日間で終わらせた。併用療法対ドセタキセルのみについてログランク(Mantel-Cox)p値が示されている。
【
図9】療法中の正常体重の維持を示す。NOD SCID IL2ガンマ受容体ノックアウトマウスを、ドセタキセル(15mg/kg、1回、腹腔内)及び25又は50mg/kgの化合物2(1群あたり3頭のマウス、静脈内注入、3週間にわたって1週間に1回)で処理した。マウスの体重を3週間にわたって1週間に3回モニタした。単剤としての又はドセタキセルと組み合わせた化合物2療法は、耐容性良好であった。
【
図10】TNBCのモデルであるMDA-MB-231異種移植片を有する雌のヌードラットにおける、パクリタキセル及び化合物1(図中では化合物Aと命名)の単独及び組み合わせでの有効性を示す。ヒトTNBC MDA-MB-231細胞の皮下接種(1×10
7細胞/200μL HBSS/マトリゲル 1:1 v/v)によって、雌のヌードラットにおいて腫瘍を樹立した。適切なサイズの腫瘍を有する動物を群に無作為化し(n=7~8)、平均腫瘍体積は約400mm
3であった。(L×W
2×π/6)に従って2つの最大直径を用いて腫瘍体積を推定し、そして、1週間に2~3回体重を測定した。データを平均±SEMとして又は個々の腫瘍体積として提示する。
*p<0.05、ビヒクル群との比較(事後ダネット検定を伴う一元配置分散分析)。
【
図11】TNBCのモデルであるMDA-MB-231異種移植片を有する雌のヌードラットにおける、パクリタキセル及び化合物1(図中では化合物Aと命名)の単独及び組み合わせでの耐容性を示す。ヒトTNBC MDA-MB-231細胞の皮下接種(1×10
7細胞/200μL HBSS/マトリゲル 1:1 v/v)によって、雌のヌードラットにおいて腫瘍を樹立した。適切なサイズの腫瘍を有する動物を群に無作為化し(n=7~8)、平均腫瘍体積は約400mm
3であった。(L×W
2×π/6)に従って2つの最大直径を用いて腫瘍体積を推定し、そして、1週間に2~3回体重を測定した。
【
図12】TNBCのモデルであるMDA-MB-231異種移植片を有する雌のヌードラットにおける、異なる投与スケジュールのパクリタキセル及び化合物1(図中では化合物Aと命名)の単独及び組み合わせでの有効性を示す。ヒトTNBC MDA-MB-231細胞の皮下接種(1×10
7細胞/200μL HBSS/マトリゲル 1:1 v/v)によって、雌のヌードラットにおいて腫瘍を樹立した。適切なサイズの腫瘍を有する動物を群に無作為化し(n=7~8)、平均腫瘍体積は約400mm
3であった。(L×W
2×π/6)に従って2つの最大直径を用いて腫瘍体積を推定し、そして、1週間に2~3回体重を測定した。データを平均±SEMとして又は個々の腫瘍体積として提示する。
*p<0.05、ビヒクル群との比較(事後ダネット検定を伴う一元配置分散分析)。
【
図13】TNBCのモデルであるMDA-MB-231異種移植片を有する雌のヌードラットにおける、異なる投与スケジュールのパクリタキセル及び化合物1(図中では化合物Aと命名)の単独及び組み合わせでの耐容性を示す。ヒトTNBC MDA-MB-231細胞の皮下接種(1×10
7細胞/200μL HBSS/マトリゲル 1:1 v/v)によって、雌のヌードラットにおいて腫瘍を樹立した。適切なサイズの腫瘍を有する動物を群に無作為化し(n=7~8)、平均腫瘍体積は約400mm
3であった。(L×W
2×π/6)に従って2つの最大直径を用いて腫瘍体積を推定し、そして、1週間に2~3回体重を測定した。
【
図14】化合物1とドセタキセルとの相乗効果を示す。
【
図15】患者由来のTNBCモデルを有する雌SCIDマウスにおける、単独で又は組み合わせて静脈内投与されたドセタキセル及び化合物1の抗腫瘍活性を示す。まずドセタキセルを投与し、30分後又は72時間後に化合物1を投与した。
【0023】
発明を実施するための形態
したがって、本発明は、実施態様E1では、同時、逐次、又は別々に使用するための、
(a)式(I)のMCL-1阻害剤:
【化6】
(式中、
◆Dは、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、
◆Eは、フリル、チエニル、又はピロリルの環を表し、
◆X
1、X
3、X
4、及びX
5は、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子を表し、
◆X
2は、C-R
26基又は窒素原子を表し、
◆
【化7】
は、環が芳香族であることを意味し、
◆Yは、窒素原子又はC-R
3基を表し、
◆Zは、窒素原子又はC-R
4基を表し、
◆R
1は、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-Cy
8、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-NR
11R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表し、
◆R
2、R
3、R
4、及びR
5は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-Cy
1、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
1、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
1、-O-アルキル(C
1-C
6)-NR
11R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表すか、
あるいは対(R
1、R
2)、(R
2、R
3)、(R
3、R
4)、(R
4、R
5)の置換基が、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、ハロゲン、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-NR
13R
13’、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、又はオキソから選択される1~2個の基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
6及びR
7は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-NR
11R
11’、-O-Cy
1、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
1、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
1、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表すか、
あるいは対(R
6、R
7)の置換基が、2個の隣接する炭素原子にグラフトしたとき、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、-NR
13R
13’、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、又はオキソから選択される基によって置換されていてもよいと理解され、
◆Wは、-CH
2-基、-NH-基、又は酸素原子を表し、
◆R
8は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
8)アルキル基、-CHR
aR
b基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル(C
1-C
6)基、又はヘテロアリールアルキル(C
1-C
6)基を表し、
◆R
9は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、-Cy
2、-アルキル(C
1-C
6)-Cy
2、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
2、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
2、-Cy
2-Cy
3、-アルキニル(C
2-C
6)-O-Cy
2、-Cy
2-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
3、ハロゲン原子、シアノ基、-C(O)-R
14、又は-C(O)-NR
14R
14’を表し、
◆R
10は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、アリールアルキル(C
1-C
6)基、シクロアルキルアルキル(C
1-C
6)基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、又は-アルキル(C
1-C
6)-O-Cy
4を表すか、
あるいは、対(R
9、R
10)の置換基が、2個の隣接する炭素原子にグラフトしたとき、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、
◆R
11及びR
11’は、互いに独立して、水素原子、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又は-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1を表すか、
あるいは、対(R
11、R
11’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、対象の窒素は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す1~2個の基によって置換されていてもよいと理解され、そして、可能性のある置換基の炭素原子のうちの1個以上が重水素化されていてもよいと理解され、
◆R
12は、-Cy
5、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-NR
11-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-Cy
6-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
7、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
9、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-Cy
9、-NH-C(O)-NH-R
11、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-NR
11-アルキル(C
0-C
6)-Cy
9、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11R
11’、-OR
11、-NR
11-C(O)-R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-OR
11、-SO
2-R
11、-C(O)-OR
11、
【化8】
を表し、
このように定義されたアンモニウムは、双性イオン形態として存在するか又は一価アニオン性対イオンを有することが可能であり、
◆R
13、R
13’、R
14、及びR
14’は、互いに独立して、水素原子、又は場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
aは、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
bは、-O-C(O)-O-R
c基、-O-C(O)-NR
cR
c’基、又は-O-P(O)(OR
c)
2基を表し、
◆R
c及びR
c’は、互いに独立して、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
8)アルキル基、シクロアルキル基、(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基、又は(C
1-C
6)アルコキシカルボニル(C
1-C
6)アルキル基を表すか、
あるいは、対(R
c、R
c’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される非芳香族環を形成し、対象の窒素は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、
◆Cy
1、Cy
2、Cy
3、Cy
4、Cy
5、Cy
6、Cy
7、Cy
8、及びCy
10は、互いに独立して、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、
◆Cy
9は、
【化9】
を表すか、
又はCy
9は、-O-P(O)(OR
20)
2;-O-P(O)(O
-M
+)
2;-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20;ヒドロキシ;ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル;-(CH
2)
r-U-(CH
2)
s-ヘテロシクロアルキル;若しくは-U-(CH
2)
q-NR
21R
21’から選択される基によって置換されているヘテロアリール基を表し、
◆R
15は、水素原子;-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20基;直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基;-U-(CH
2)
q-NR
21R
21’基;又は-(CH
2)
r-U-(CH
2)
s-ヘテロシクロアルキル基を表し、
◆R
16は、水素原子;ヒドロキシ基;ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基;-(CH
2)
r-U-(CH
2)
s-ヘテロシクロアルキル基;(CH
2)
r-U-V-O-P(O)(OR
20)
2基;-O-P(O)(O
-M
+)
2基;-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20基;-(CH
2)
p-O-C(O)-NR
22R
23基;又は-U-(CH
2)
q-NR
21R
21’基を表し、
◆R
17は、水素原子;-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20基;-O-P(O)(OR
20)
2基;-O-P(O)(O
-M
+)
2基;ヒドロキシ基;ヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基;-(CH
2)
r-U-(CH
2)
s-ヘテロシクロアルキル基;-U-(CH
2)
q-NR
21R
21’基;又はアルドン酸を表し、
◆M
+は、薬学的に許容し得る一価カチオンを表し、
◆Uは、結合又は酸素原子を表し、
◆Vは、-(CH
2)
s-基又は-C(O)-基を表し、
◆R
18は、水素原子又は(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
19は、水素原子又はヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
20は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
21及びR
21’は、互いに独立して、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又はヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基を表すか、
あるいは、対(R
21、R
21’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
22は、(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基、-(CH
2)
p-NR
24R
24’基、又は-(CH
2)
p-O-(CHR
18-CHR
19-O)
q-R
20基を表し、
◆R
23は、水素原子又は(C
1-C
6)アルコキシ(C
1-C
6)アルキル基を表すか、
あるいは、対(R
22、R
23)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~5個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~18個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又はヘテロシクロアルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
24及びR
24’は、互いに独立して、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表すか、
あるいは、対(R
24、R
24’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
25は、水素原子、ヒドロキシ基、又はヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
26は、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又はシアノ基を表し、
◆R
27は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
28は、-O-P(O)(O
-)(O
-)基、-O-P(O)(O
-)(OR
30)基、-O-P(O)(OR
30)(OR
30’)基、-O-SO
2-O
-基、-O-SO
2-OR
30基、-Cy
10、-O-C(O)-R
29基、-O-C(O)-OR
29基、又は-O-C(O)-NR
29R
29’基を表し、
◆R
29及びR
29’は、互いに独立して、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又は直鎖若しくは分枝状のアミノ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
30及びR
30’は、互いに独立して、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又はアリールアルキル(C
1-C
6)基を表し、
◆nは、0又は1に等しい整数であり、
◆pは、0、1、又は2に等しい整数であり、
◆qは、1、2、3、又は4に等しい整数であり、
◆r及びsは、独立して、0又は1に等しい整数であり、
以下の通り理解され:
-「アリール」は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インダニル、又はインデニルの基を意味し、
-「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の芳香族部分を有し、そして、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する、5~10個の環員で構成される任意の単環式又は二環式の基を意味し、
-「シクロアルキル」は、3~10個の環員を含有する任意の単環式又は二環式の非芳香族炭素環式の基を意味し、
-「ヘテロシクロアルキル」は、縮合、架橋、又はスピロの環系を含んでいてもよい、3~10個の環員を含有し、そして、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する任意の単環式若しくは二環式の非芳香族炭素環式の基を意味し、
このように定義されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルの基、並びに該アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシを、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ、場合により置換されている(C
1-C
6)アルキル-S-、ヒドロキシ、オキソ(又は適切な場合N-オキシド)、ニトロ、シアノ、-C(O)-OR’、-O-C(O)-R’、-C(O)-NR’R’’、-NR’R’’、-(C=NR’)-OR’’、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、トリフルオロメトキシ、又はハロゲンから選択される1~4個の基によって置換することが可能であり、R’及びR’’は、互いに独立して、水素原子又は場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表すと理解され、そして、前述の可能性のある置換基の炭素原子のうちの1個以上が重水素化されていてもよいと理解される)
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩と、
(b)タキサン化合物と
を含む組み合わせ物を提供する。
【0024】
本発明の更に列挙される実施態様(E)を本明細書に記載する。各実施態様において指定される特徴を他の指定の特徴と組み合わせて本発明の更なる実施態様を提供できることが認識される。
【0025】
E2.同時、逐次、又は別々に使用するための、
(a)式(I)のMCL-1阻害剤の具体的な事例である式(II)のMCL-1阻害剤:
【化10】
(式中、
◆Zは、窒素原子又はC-R
4基を表し、
◆R
1は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、シアノ、-NR
11R
11’、-Cy
8、又はハロゲン原子を表し、
◆R
2、R
3、及びR
4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-Cy
1、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
1、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
1、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表すか、
あるいは対(R
2、R
3)、(R
3、R
4)のうちの一方の置換基が、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、-NR
13R
13’、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、又はオキソから選択される基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
6及びR
7は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、ヒドロキシ基、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ基、-S-(C
1-C
6)アルキル基、シアノ基、ニトロ基、-アルキル(C
0-C
6)-NR
11R
11’、-O-Cy
1、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
1、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
1、-O-アルキル(C
1-C
6)-R
12、-C(O)-OR
11、-O-C(O)-R
11、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11-C(O)-R
11’、-NR
11-C(O)-OR
11’、-アルキル(C
1-C
6)-NR
11-C(O)-R
11’、-SO
2-NR
11R
11’、又は-SO
2-アルキル(C
1-C
6)を表すか、
あるいは、対(R
6、R
7)の置換基は、2個の隣接する炭素原子にグラフトしたとき、これらを保有している炭素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、その結果生じた環は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、-NR
13R
13’、-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1、又はオキソから選択される基によって置換されていてもよいと理解され、
◆R
8は、水素原子、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
8)アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル(C
1-C
6)基、又はヘテロアリールアルキル(C
1-C
6)基を表し、
◆R
9は、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、-Cy
2、-アルキル(C
1-C
6)-Cy
2、-アルケニル(C
2-C
6)-Cy
2、-アルキニル(C
2-C
6)-Cy
2、-Cy
2-Cy
3、-アルキニル(C
2-C
6)-O-Cy
2、-Cy
2-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
3、ハロゲン原子、シアノ基、-C(O)-R
14、又は-C(O)-NR
14R
14’を表し、
◆R
11及びR
11’は、互いに独立して、水素原子、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基、又は-アルキル(C
0-C
6)-Cy
1を表すか、
あるいは、対(R
11、R
11’)の置換基が、これらを保有している窒素原子と共に、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を窒素原子に加えて含有していてもよい5~7個の環員で構成される芳香族又は非芳香族の環を形成し、対象の窒素は、水素原子又は直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表す基によって置換されていてもよいと理解され、そして、可能性のある置換基の炭素原子のうちの1個以上が重水素化されていてもよいと理解され、
◆R
12は、-Cy
5、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-アルキル(C
0-C
6)-NR
11-アルキル(C
0-C
6)-Cy
6、-Cy
5-Cy
6-O-アルキル(C
0-C
6)-Cy
7、-C(O)-NR
11R
11’、-NR
11R
11’、-OR
11、-NR
11-C(O)-R
11’、-O-アルキル(C
1-C
6)-OR
11、-SO
2-R
11、-C(O)-OR
11、又は-NH-C(O)-NH-R
11を表し、
◆R
13、R
13’、R
14、及びR
14’は、互いに独立して、水素原子、又は場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆R
25は、水素原子、ヒドロキシ基、又はヒドロキシ(C
1-C
6)アルキル基を表し、
◆Cy
1、Cy
2、Cy
3、Cy
5、Cy
6、Cy
7、及びCy
8は、互いに独立して、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、
◆nは、0又は1に等しい整数であり、
以下の通り理解され:
-「アリール」は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インダニル、又はインデニルの基を意味し、
-「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の芳香族部分を有し、そして、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する、5~10個の環員で構成される任意の単環式又は二環式の基を意味し、
-「シクロアルキル」は、3~10個の環員を含有する任意の単環式又は二環式の非芳香族炭素環式の基を意味し、
-「ヘテロシクロアルキル」は、縮合、架橋、又はスピロの環系を含んでいてもよい、3~10個の環員を含有し、そして、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する任意の単環式若しくは二環式の非芳香族炭素環式の基を意味し、
このように定義されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルの基、並びに該アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシを、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルケニル基、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
2-C
6)アルキニル基、場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルコキシ、場合により置換されている(C
1-C
6)アルキル-S-、ヒドロキシ、オキソ(又は適切な場合N-オキシド)、ニトロ、シアノ、-C(O)-OR’、-O-C(O)-R’、-C(O)-NR’R’’、-NR’R’’、-(C=NR’)-OR’’、直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)ポリハロアルキル、トリフルオロメトキシ、又はハロゲンから選択される1~4個の基によって置換することが可能であり、R’及びR’’は、互いに独立して、水素原子又は場合により置換されている直鎖若しくは分枝状の(C
1-C
6)アルキル基を表すと理解され、そして、前述の可能性のある置換基の炭素原子のうちの1個以上が重水素化されていてもよいと理解される)
あるいはその鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体、又はその薬学的に許容し得る酸若しくは塩基との付加塩と、
(b)タキサン化合物と
を含む、E1記載の組み合わせ物。
【0026】
E3.前記タキサン化合物が、パクリタキセル又はドセタキセルである、E1又はE2記載の組み合わせ物。
【0027】
E4.前記MCL-1阻害剤が、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である、E1又はE2記載の組み合わせ物。
【0028】
E5.前記MCL-1阻害剤が、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である、E1又はE2記載の組み合わせ物。
【0029】
E6.前記タキサン化合物が、パクリタキセルである、E1又はE2記載の組み合わせ物。
【0030】
E7.前記タキサン化合物が、ドセタキセルである、E1又はE2記載の組み合わせ物。
【0031】
E8.MCL-1阻害剤が、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸であり、そして、前記タキサン化合物が、パクリタキセルである、E1又はE2記載の組み合わせ物。
【0032】
E9.MCL-1阻害剤が、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸であり、そして、前記タキサン化合物が、パクリタキセルである、E1又はE2記載の組み合わせ物。
【0033】
E10.MCL-1阻害剤が、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸であり、そして、前記タキサン化合物が、ドセタキセルである、E1又はE2記載の組み合わせ物。
【0034】
E11.MCL-1阻害剤が、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(5-フルオロフラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-5-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸であり、そして、前記タキサン化合物が、ドセタキセルである、E1又はE2記載の組み合わせ物。
【0035】
E12.併用処置中の(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸の用量が、25mg~1500mgである、E5記載の組み合わせ物。
【0036】
E13.(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸が、併用処置中1週間に1回投与される、E5~E12記載の組み合わせ物。
【0037】
E14.前記MCL-1阻害剤が、経口投与され、そして、前記タキサン化合物が、静脈内投与される、E1~E13のいずれか記載の組み合わせ物。
【0038】
E15.前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、静脈内投与される、E1~E13のいずれか記載の組み合わせ物。
【0039】
E16.癌の処置において使用するための、E1~E15のいずれか記載の組み合わせ物。
【0040】
E17.前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、癌を処置するために共同で処置的に有効な量で提供される、E16に従って使用するための組み合わせ物。
【0041】
E18.前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、癌を処置するために相乗的に有効な量で提供される、E16に従って使用するための組み合わせ物。
【0042】
E19.前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、有効な癌処置を提供すると同時に、癌の処置において各化合物についての必要用量を低減することができ、最終的には副作用が低減される、相乗的に有効な量で提供される、E16に従って使用するための組み合わせ物。
【0043】
E20.前記癌が、乳癌である、E16~E19のいずれかに従って使用するための組み合わせ物。
【0044】
E21.前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、具体的には、化学療法耐性トリプルネガティブ乳癌、より具体的には、タキサン療法に対して耐性を有するトリプルネガティブ乳癌である、E20に従って使用するための組み合わせ物。
【0045】
E22.前記癌が、肺癌、具体的には、非小細胞肺癌又は小細胞肺癌である、E16~E19のいずれかに従って使用するための組み合わせ物。
【0046】
E23.1つ以上の賦形剤を更に含む、E1~E15のいずれか記載の組み合わせ物。
【0047】
E24.1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤と組み合わせて、E1~E15のいずれか記載の組み合わせ物を含む医薬組成物。
【0048】
E25.癌の処置において使用するための、E24記載の医薬組成物。
【0049】
E26.前記癌が、乳癌である、E25に従って使用するための医薬組成物。
【0050】
E27.前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、具体的には、化学療法耐性トリプルネガティブ乳癌、より具体的には、タキサン療法に対して耐性を有するトリプルネガティブ乳癌である、E26に従って使用するための医薬組成物。
【0051】
E28.前記癌が、肺癌、具体的には、非小細胞肺癌又は小細胞肺癌である、E25に従って使用するための医薬組成物。
【0052】
E29.癌を処置するための医薬の製造における、E1~E15のいずれか記載の組み合わせ物の使用。
E30.前記癌が、乳癌である、E29記載の使用。
【0053】
E31.前記癌が、トリプルネガティブ乳癌、具体的には、化学療法耐性トリプルネガティブ乳癌、より具体的には、タキサン療法に対して耐性を有するトリプルネガティブ乳癌である、E30記載の使用。
【0054】
E32.前記癌が、肺癌、具体的には、非小細胞肺癌又は小細胞肺癌である、E29記載の使用。
【0055】
E33.同時、逐次、又は別々に投与するための、
(a)E1記載の式(I)のMCL-1阻害剤、及び
(b)タキサン化合物、
を別々に又は一緒に含有する医薬であって、前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、癌を処置するために有効な量で提供される医薬。
【0056】
E34.同時、逐次、又は別々に投与するための、
(a)E2記載の式(II)のMCL-1阻害剤、及び
(b)タキサン化合物、
を別々に又は一緒に含有する医薬であって、前記MCL-1阻害剤及び前記タキサン化合物が、癌を処置するために有効な量で提供される医薬。
【0057】
E35.癌を処置する方法であって、共同で処置的に有効な量の
(a)E1記載の式(I)のMCL-1阻害剤、及び
(b)タキサン化合物、
を、それを必要としている被験体に投与することを含む方法。
【0058】
E36.癌を処置する方法であって、共同で処置的に有効な量の
(a)E2記載の式(II)のMCL-1阻害剤、及び
(b)タキサン化合物、
を、それを必要としている被験体に投与することを含む方法。
【0059】
E37.(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して不応性であるか、又は(ii)化学療法で処置した後に再発しているか、又は(i)及び(ii)の両方である患者を増感する方法であって、本明細書に記載されるタキサン化合物と組み合わせてE1記載の式(I)のMCL-1阻害剤を共同で処置的に有効な量前記患者に投与することを含む方法。
【0060】
E38.(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して不応性であるか、又は(ii)化学療法で処置した後に再発しているか、又は(i)及び(ii)の両方である患者を増感する方法であって、本明細書に記載されるタキサン化合物と組み合わせてE2記載の式(II)のMCL-1阻害剤を共同で処置的に有効な量前記患者に投与することを含む方法。
【0061】
「組み合わせ物」とは、本発明の化合物及び1つ以上の組み合わせパートナー(例えば、以下に説明するような別の薬物、「処置剤」又は「助剤(co-agent)」とも呼ばれる)が同時に又は時間間隔内に別々に、独立して投与され得る、特に、これら時間間隔によって、その組み合わせパートナーが協同的、例えば相乗的な効果を示すことができるようになる、1つの単位剤形における一定用量の組み合わせ物(例えば、カプセル剤、錠剤、又はサシェ剤)、非一定用量の組み合わせ物、又は併用投与用のキットオブパーツのいずれかを指す。
【0062】
用語「共投与」又は「併用投与」等は、本明細書で使用するとき、選択された組み合わせパートナーのそれを必要としている単一の被験体(例えば、患者)への投与を包含することを意味し、そして、剤が必ずしも同じ投与経路によって又は同時に投与されるとは限らない処置レジメンを含むことを意図する。
【0063】
用語「一定用量の組み合わせ物」は、活性成分、例えば、式(I)の化合物及び1つ以上の組み合わせパートナーが、両方とも単一の実体又は投薬の形態で同時に患者に投与されることを意味する。
【0064】
用語「非一定用量の組み合わせ物」は、活性成分、例えば、本発明の化合物及び1つ以上の組み合わせパートナーが、両方とも特定の時間制限なしに同時に又は逐次、別個の実体として患者に投与されることを意味し、このような投与は、患者の体内において処置的に有効な濃度の2つの化合物を提供する。また、後者は、カクテル療法、例えば、3つ以上の活性成分の投与に適用される。
【0065】
「癌」は、細胞の群が無制御の増殖を示す疾患の分類である。癌の種類は、癌腫、肉腫、又は芽細胞腫を含む固形腫瘍を含む。具体的には、「癌」は、乳癌及び肺癌を指す。
【0066】
用語「共同して処置的に有効な」とは、処置剤が温血動物、特にヒトにおいて処置されることが好ましい時間間隔で該処置剤が別々に(経時的にずらして、特に、順序特異的に)与えられ得るが、それでも(好ましくは相乗的)相互作用(共同処置効果)を示すことを意味する。これが当てはまるかどうかは、特に、少なくとも特定の時間間隔中に処置されるヒトの血液中に両化合物が存在することを示す、血液濃度に従うことによって判定することができる。
【0067】
「相乗的に有効」又は「相乗作用」は、2つ以上の剤の投与後に観察される処置効果が、各単剤の投与後に観察される処置効果の合計よりも大きいことを意味する。
【0068】
本明細書で使用するとき、任意の疾患又は障害「を処置する」、「を処置している」、又は「の処置」という用語は、一実施態様では、該疾患又は障害を回復させる(すなわち、疾患又はその臨床症状のうちの少なくとも1つの発現を減速又は抑止又は低減する)ことを指す。別の実施態様では、「処置する」、「処置している」、又は「処置」とは、患者が識別することができない場合があるものを含む少なくとも1つの物理的パラメータを緩和又は回復させることを指す。更に別の実施態様では、「処置する」、「処置している」、又は「処置」とは、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、又は両方で、該疾患又は障害を調節することを指す。
【0069】
本明細書で使用するとき、被験体が、ある処置から生物学的に、医学的に、又は生活の質において恩恵を受ける場合、このような被験体は、このような処置を「必要としている」。
【0070】
別の態様では、(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して不応性であるか、又は(ii)化学療法で処置した後に再発しているか、又は(i)及び(ii)の両方であるヒトを増感する方法であって、本明細書に記載されるタキサン化合物と組み合わせて式(I)又は式(II)のMCL-1阻害剤を患者に投与することを含む方法が提供される。増感された患者は、本明細書に記載されるタキサン化合物と組み合わせて式(I)若しくは式(II)のMCL-1阻害剤を投与することを含む処置に応答するか、又はこのような処置に対して耐性を発現していない患者である。
【0071】
「医薬」は、1つ以上の賦形剤の存在下で1つ以上の活性成分を含有する医薬組成物又はいくつかの医薬組成物の組み合わせを意味する。
【0072】
本発明に係る医薬組成物では、活性成分の重量比率(組成物の総重量に対する活性成分の重量)は、5~50%である。
【0073】
本発明に係る医薬組成物の中でも、経口、非経口、そして、特に静脈内、経皮、鼻腔内、直腸内、舌下、眼内、又は呼吸器の経路によって、より具体的には、錠剤、糖衣錠、舌下錠剤、硬ゼラチンカプセル剤、舌下薬(glossettes)、カプセル剤、ロゼンジ剤、注射用製剤、エアゾール剤、点眼又は点鼻剤、坐剤、クリーム剤、軟膏剤、皮膚用ジェル等による投与に好適なものがとりわけ使用される。
【0074】
本発明に係る医薬組成物は、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、防腐剤、吸収剤、着色剤、甘味剤、着風味剤等から選択される1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤又は担体を含む。
【0075】
非限定的な例として、以下に言及することができる:
◆希釈剤として:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリセロール、
◆滑沢剤として:シリカ、タルク、ステアリン酸並びにそのマグネシウム及びカルシウムの塩、ポリエチレングリコール、
◆結合剤として:ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリビニルピロリドン、
◆崩壊剤として:アガー、アルギン酸及びそのナトリウム塩、発泡性の混合物。
【0076】
組み合わせ物の化合物は、同時に又は逐次投与され得る。投与経路は、好ましくは、静脈内への注入又は注射であり、そして、対応する医薬組成物は、活性成分の即時又は遅延放出を可能にし得る。更に、組み合わせ物の化合物は、それぞれが活性成分のうちの1つを含有する2つの別々の医薬組成物の形態で、又は活性成分が混合されている単一の医薬組成物の形態で投与され得る。
【0077】
有用な投薬レジメンは、患者の性別、年齢、及び体重、投与経路、癌及び任意の関連する処置の性質に従って変動し、そして、1週間あたりMCL-1阻害剤 25mg~1500mg、より好ましくは1週間あたり50mg~1400mgの範囲である。タキサン化合物の用量は、それが単独で投与されるときに使用される用量と同じである。
【0078】
薬理学的データ
実施例1:乳癌及び肺癌の細胞株におけるMCL-1阻害剤(化合物1)とパクリタキセルとを組み合わせることのインビトロにおける増殖に対する効果
19個の乳癌細胞株(BT-20、BT-474、BT-549、Cal-148、HCC1143、HCC1395、HCC1500、HCC1937、HCC1954、HCC38、HCC70、Hs 578T、MCF7、MDA-MB-157、MDA-MB-231、MDA-MB-436、MDA-MB-453、MDA-MB-468、及びSK-BR-3)及び3個の肺癌細胞株(H522、H23、及びA549)のパネルにおいてMCL-1阻害剤(化合物1)とパクリタキセルとを組み合わせることの増殖に対する効果を評価した。
【0079】
材料及び方法
化合物を、10mMの原液濃度で100% DMSO(Sigma、カタログ番号D2438-50ML)に溶解させ、そして、使用するまで-20℃で保存した。3倍連続希釈した化合物を、2mLの深型96ウェルプレート(Greiner bio-one、カタログ番号780271)に配置した。化合物1は、0.0~10.0μMの濃度範囲にわたって使用した。パクリタキセルは、乳癌細胞では0.0~1.0μM、そして、肺癌細胞では0.0~2.0μMの濃度範囲にわたって使用した。
【0080】
全ての細胞株は、American Type Culture Collectionから購入し、そして、供給元の推奨に従って培養した。全ての株に10% FBS(GIBCO、カタログ番号10099-141)を添加した。Idexx Radil(Columbia, MO, USA)で実施したPCR検出アッセイによって全ての細胞株にマイコプラズマが夾雑していないと判定され、そして、SNP分析によって立証された。冷凍ストックから細胞を解凍し、1回以上継代して拡大し、そして、5% CO2中37℃で増殖させた。細胞をT-75フラスコに拡大し、そして、プレーティングする前にBeckman-Coulter ViCellカウンタを使用して生存率について評価した。細胞株を分割及び拡大するために、0.25%Trypsin-EDTA(Corning Costar、カタログ番号25-053-CL)を用いてフラスコから細胞を取り出す。
【0081】
72時間CellTiter-Glo(商標)(CTG)アッセイにおいて細胞増殖を測定し、そして、示される結果は全て、少なくともトリプリケートの測定の結果である。培地の最終体積80μL、そして、密度3000細胞/ウェルで、組織培養処理された96ウェルプレート(Costar、カタログ番号3904)に細胞を分注した。プレーティングの16~24時間後、各化合物の希釈系列 20μLを細胞の入ったプレートに移した結果、化合物濃度は上述の範囲になり、そして、最終DMSO濃度は0.16%になった。更に、以下に記載する通りCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayを使用して、0日目のプレートをこの時点でアッセイした。化合物処理の72時間後、CellTiter-Glo(商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega、カタログ番号G7573)を使用して細胞増殖に対する化合物の効果を判定した。これは、代謝的に活性のある細胞の存在を示唆する、存在するATPの定量に基づいて培養下の生存細胞数を決定するためのホモジニアス法である。この方法については、Technical Bulletin, TB288 Promegaに詳細に記載されている。簡潔に述べると、CTG Reagent 100μLをプレートに添加し、そして、プレートをオービタルシェイカー上で20~30分間インキュベートした。次いで、プレートをPerkin Elmer Victor(商標)X4プレートリーダーで読み取った。
【0082】
2つの薬物が用量相加的に挙動する場合に予測される効果を上回る増殖に対する効果を測定するLoewe相乗作用モデル(Lehar et al., Nature Biotechnology 2009, 27(7), 659-66に記載)を用い、Combo Moduleソフトウェアを用いて、増殖阻害率、過剰阻害、及び増殖阻害を計算した。正の数は、増大する相乗作用の領域を表す。DMSOに対する増殖阻害率を、「阻害」と記されたパネルに提示する。予測量を越える阻害量は、「Loewe過剰阻害」と記されたパネルにある。0日目に対して正規化された阻害量を、「増殖阻害」と記されたパネルに提示する。化合物1の濃度を左から右に最下行に沿って示し、そして、パクリタキセルの漸増濃度を下から上に最左列に沿って示す。格子における全ての残りの点は、2本の軸上に示される単剤濃度に対応する2つの阻害剤の組み合わせから得られた結果を示す。計算された曲線が50%活性マークと交差する化合物濃度を見出すことによって、絶対IC
50を決定した。Lehar et al. 2009に記載の通り、Combo moduleソフトウェアにおいて絶対IC
50及び相乗作用スコアを計算した。
相乗作用スコア
SS~0→用量相加的
SS>2→相乗作用
SS>1→弱い相乗作用
【表1】
【0083】
結果
単剤としての化合物1は、7/19の乳癌細胞株及び2/3の肺癌細胞株の増殖を阻害し、IC50は1000nM未満である(表1)。
【0084】
単剤としてのパクリタキセルは、17/19の乳癌細胞株及び3/3の肺癌細胞株の増殖を阻害し、IC50は1000nM未満である。
【0085】
組み合わせると、化合物1及びパクリタキセル処理によって、16/19の乳癌細胞株及び3/3の肺癌細胞株において相乗的増殖阻害が引き起こされた(すなわち、相乗作用スコアが2を上回る(Lehar et al, 2009))(表1)。11の細胞株では、相乗効果が顕著であり、相乗作用スコアは6を上回っていた。重要なことに、相乗作用は単剤の抗増殖効果に依存しておらず、そして、相乗効果は広い範囲の単剤濃度にわたって生じ(
図1、2、及び3)、これによって、投与の濃度及びスケジュールに関する柔軟性に関してインビボにおいて有用であることが証明されるはずである。
【0086】
実施例2:乳癌及び肺癌の細胞株におけるMCL-1阻害剤(化合物2)とパクリタキセルとを組み合わせることのインビトロにおける増殖に対する効果
【0087】
2つの乳癌細胞株(MDA-MB-453及びMDA-MB-468)及び1つの肺癌細胞株(H522)のパネルにおいてMCL-1阻害剤(化合物2)とパクリタキセルとを組み合わせることの増殖に対する効果を評価した。
【0088】
材料及び方法
細胞株は、表2に示す通りの起源を有しており、そして、ウシ胎児血清を添加した基本培地で維持した。更に、全ての培地は、ペニシリン(100IU/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)、及びL-グルタミン(2mM)を含有していた。
【0089】
細胞株を、5% CO2を含有する湿気を含んだ雰囲気において37℃で培養し、そして、T-150フラスコに拡大した。全ての場合において、冷凍ストックから細胞を解凍し、適切な希釈物を用いて1回以上継代して拡大し、カウントし、そして、CASYセルカウンターを用いて生存率について評価した後、表2に示す密度で96ウェルプレートに150μL/ウェルをプレーティングした。インハウスで、全ての細胞株にマイコプラズマが夾雑していないことが判明した。
【0090】
DMSO中5mMの濃度で化合物の原液を調製し、そして、-20℃で保存した。
【0091】
単剤での又は組み合わせでの化合物の活性を分析するために、細胞を播種し、そして、
図5及び6に示す通り、個々に又は格子状に全ての可能性のある順列で細胞アッセイプレートに直接分注された各化合物の7つ又は8つの3.16倍連続希釈物で処理した。75μL 試薬/ウェルでCellTiterGloを使用して細胞ATP濃度を定量することによって、37℃/5% CO
2で3日間インキュベートした後に、細胞生存率に対する単剤及びその格子状組み合わせ物の効果を評価した。それぞれ1つをデュープリケートで実施する、少なくとも2つの独立した実験を実施した。汎用プレートリーダーにおいて発光を定量した。
【0092】
標準的な4パラメトリック曲線当てはめを用いて単剤IC50を計算した。Loewe相加性モデルに従ってExcess Inhibition 2Dマトリクスを使用して、化合物組み合わせ物間の潜在的相乗相互作用を評価し、そして、相乗作用スコアとして報告する(Lehar et al. 2009)。Horizon websiteで入手可能なClalice(商標)Bioinformatics Softwareを使用して全ての計算を実施した。
【0093】
表2中に示される倍加時間は、細胞の解凍からそれを96ウェルプレートに播種するまで実施された(T-150フラスコにおける)様々な継代で得られた倍加時間の平均である。
相乗作用スコア
SS~0→相加的
SS>1→弱い相乗作用
SS>2→相乗作用
【表2】
【表3】
【0094】
【0095】
結果
単剤としての化合物2は、試験した3つの細胞株のうちの1つの増殖を阻害し、H522細胞株のIC50は140nMであった(表3)。
【0096】
単剤としてのパクリタキセルは、試験した3つの株のうちの2つの増殖を阻害し、IC50は1nM未満であった。
【0097】
組み合わせると、化合物2及びパクリタキセル処理によって、試験した3つの細胞株において相乗的増殖阻害が引き起こされた(すなわち、相乗作用スコアが2を上回る(Lehar et al, 2009))(表4)。2つの細胞株では相乗効果が顕著であり、相乗作用スコアは6.5及び16.9であった。重要なことに、相乗作用は単剤抗増殖効果に依存しておらず、そして、相乗効果は広い範囲の単剤濃度にわたって生じ(
図4及び5)、これによって、投与の濃度及びスケジュールに関する柔軟性に関してインビボにおいて有用であることが証明されるはずである。
【0098】
実施例3:インビトロにおけるMCL-1阻害剤とドセタキセルとの間の相乗作用
MCL-1阻害剤(化合物2)がTNBCの処置において現在使用されている剤との相乗活性を惹起するかどうかについて調べた。SK-BR-3細胞において化合物2をドセタキセルと組み合わせた。
【0099】
材料及び方法
細胞株:10% ウシ胎児血清(FCS)及び10μg/mL インスリンを添加したRPMI-1640+GlutaMAX-1(Gibco)中で乳癌細胞株SK-BR-3を維持した。生存率アッセイについては、96ウェルプレート内の10% ウシ胎児血清(FCS)及び10μg/mL インスリンを添加したRPMI-1640培地(Gibco)に2×105細胞/mLで細胞をプレーティングし、そして、漸増濃度の化合物2で処理した。
【0100】
細胞生存率:Cell Titer Glo Luminescent Assay(Promega)を使用し、製造業者の指示書に従って細胞生存率を評価した。広域スペクトルのカスパーゼ阻害剤であるQVD-OPh水和物(Sigma-Aldrich)を10μMで使用した。ヨウ化プロピジウム排除(exclusion)(5μg/mL)をフローサイトメトリーによって分析した。異なる薬物間の相乗作用に取り組むためのインビトロ細胞アッセイについては、Bliss独立性法(Prichard et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy 1991, 35, 1060-5)を用いて組み合わせ効果を判定した。
【0101】
結果
ドセタキセル及びMCL-1阻害剤は、非常に低濃度の両成分において顕著な相乗作用を示した。具体的には、ドセタキセル及び化合物2は、非常に低濃度のドセタキセル(2nM)及び化合物2(31nM)で顕著な相乗作用を示した(
図6及び7)。汎カスパーゼ阻害剤QVD-OPHによるカスパーゼの阻害は、細胞死を効率的にブロックしたので、細胞死がアポトーシスを介してトリガされることが確認された(
図6)。
【0102】
実施例4:MCL-1阻害は、インビボにおいてタキサン処理に対してPDX腫瘍を増感する
乳癌細胞株が併用療法において化合物2に対して感受性であることがインビトロアッセイから明らかになったので、次に、3つのTNBC(110T、838T、及びPDX OD-BRE-0589)を表す3つのPDXモデルにおいてそのインビボにおける処置効果について調べた。
【0103】
材料及び方法
ヒト乳癌組織は、関連する施設内倫理調査委員会の承認を得て、Royal Melbourne Hospital Tissue Bank、Victorian Cancer Biobank、及びGeorges-Francois Leclerc Centerを通じて同意した患者から入手した。ヒトに関する倫理的承認は、Walter and Eliza Hall Institute (WEHI) Human Research Ethics Committee及びGeorges-Francois Leclerc Center Human Research Ethics Committeeから得た。施設の指針に従って、NOD SCID IL2ガンマ受容体ノックアウトマウス又はSCIDマウスを飼育し、そして、維持した。全ての動物実験は、WEHI and Servier Research Institute (IdRS) Animal Ethics Committeeによって承認された。
【0104】
化合物2(25mg/kg)又はそのビヒクルを6週間にわたって毎週静脈内注入した。化合物2を20% (2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン及び25mM 塩酸に溶解させた。ドセタキセル(10mg/kg 腹腔内)又はそのビヒクルを、既に記載されている通り調製し(Oakes et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 2012, 109, 2766-71)、そして、化合物2の1日前に毎週腹腔内注入した。毎週3回腫瘍の発現についてマウスをモニタし、そして、電気副尺付きカリパスを用いて腫瘍サイズを測定した。以下の式を用いて最小及び最大の腫瘍直径を測定することによって、腫瘍体積を推定した:(最小直径)2(最大直径)/2。腫瘍が生じたら、マウスを処理アームに無作為化した。腫瘍体積が80~120mm3に達したとき、処理を開始した。無作為化及び腫瘍測定は、Study Directorソフトウェア(バージョン3.0、studylog)を用いて管理した。腫瘍体積が600mm3を超えた最初の測定時又は疾患の進行若しくは薬物の毒性に起因したものではない動物の健康状態の悪化時(打ち切りマウス)にマウスを屠殺した。
【0105】
結果
化合物2単独では、腫瘍成長の阻害において不十分であった。しかし、単剤として投与されたドセタキセルと比較して、ドセタキセルと組み合わせると優れた結果が観察され、その結果、3つのPDXモデルにおいて動物の生存が著しく改善された(
図8)。
【0106】
これら結果は、タキサン化合物と組み合わせたMCL-1阻害剤が腫瘍応答及び臨床転帰を著しく改善する可能性があることを示す。
【0107】
実施例5:ドセタキセルと組み合わせたMCL-1阻害剤はインビボにおいて耐容性良好である
NOD SCID IL2ガンマ受容体ノックアウトマウスを、ドセタキセル(15mg/kg、1回、腹腔内)及び25又は50mg/kgの化合物2(1群あたり3頭のマウス、静脈内注入、3週間にわたって1週間に1回)で処理した。マウスの体重を3週間にわたって1週間に3回モニタした。
【0108】
ドセタキセルと組み合わせた化合物2は耐容性良好であり、そして、体重減少をそれほど誘導しなかった(
図9)。
【0109】
実施例6:ヌードラットにおけるMDA-MB-231乳異種移植モデルにおいてパクリタキセルと組み合わせた化合物1の有効性
【0110】
方法
この試験は、雌のNTac:NIH-Whnヌードラット(Taconic)におけるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)モデルMDA-MB-231においてパクリタキセルと組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性及び耐容性を評価した。
【0111】
これら試験では、化合物1(遊離塩基)及びパクリタキセル(Sandoz)を使用した。製造業者の指示書に従ってパクリタキセルを5%(w/v) 滅菌グルコース溶液で1.5mg/mLに希釈して、5mL/kgの用量体積で7.5mg/kg投与した[最終エタノール及びCremophor EL濃度は、5%(w/v) グルコース溶液中それぞれ10及び15%であった]。化合物1を5mg/mLでリポソーム製剤(Novartis)に製剤化して、10mL/kgの用量体積で50mg/kgの用量を投与した。
【0112】
トリプルネガティブ乳癌細胞株であるMDA-MB-231は、ATCC cell bankから入手した。空気中5% CO2の雰囲気において37℃で、10% FCS(BioConcept Ltd. Amimed、# 2-01F36-I)及び4mM L-グルタミン(BioConcept Ltd. Amimed、#5-10K00-H)を添加したDMEM高グルコース培地(BioConcept Ltd. Amimed)中で該細胞を培養した。MDA-MB-231異種移植片を樹立するために、細胞を収集し、そして、HBSS(Gibco、# 14175)に再懸濁させ、そして、Matrigel(BD Bioscience、#354234)と混合(1:1 v/v)した後、1.0×107個の細胞を含有する200μLをイソフルランで麻酔した動物の右側に皮下注射した。細胞を接種する24時間前に、γ線照射機を用いて2分間にわたって全ての動物に5Gyを照射した。
【0113】
細胞接種後定期的に腫瘍成長をモニタし、そして、動物を処理群に無作為化し(n=7~8)、平均腫瘍体積は約400mm3であった。群を以下で処理した:
1)パクリタキセルを製剤化するために使用したビヒクル、静脈内+リポソームビヒクル 静脈内;又は
2)7.5mg/kg 静脈内ボーラス パクリタキセル+リポソームビヒクル 静脈内;又は
3)パクリタキセルを製剤化するために使用したビヒクル 静脈内+50mg/kg 化合物1 静脈内;又は
4)7.5mg/kg 静脈内 パクリタキセル+50mg/k 静脈内 化合物1。
【0114】
リポソーム製剤における化合物1用のビヒクル又は化合物1自体の0.5時間又は16時間前に、尾静脈を介して緩徐なボーラス投与として1週間に1回(QW)パクリタキセル用のビヒクル又はパクリタキセルを投与し、そして、これらは尾静脈に15分間にわたって静脈内注入によって投与した。ボーラス投与及び15分間注入のために、動物をイソフルラン/O2でそれぞれ約5及び25分間麻酔した。
【0115】
1週間あたり2~3回、カリパスを用いて腫瘍体積を測定した。腫瘍サイズ(mm3)を以下から計算した:(L×W2×π/6)(式中、W=腫瘍の幅であり、そして、L=腫瘍の長さである)。また、1週間あたり2~3回動物を計量し、何らかの有害作用の明らかな徴候について頻繁に調べた。
【0116】
GraphPad Prism 7.00(GraphPad Software)を用いて、腫瘍及び体重の変化データを統計的に解析した。データの分散が正規分布していた場合、処理群対対照群を比較するために事後ダネット検定を伴う一元配置分散分析を用いてデータを解析した。群内比較には事後チューキー検定を使用した。そうでない場合、クラスカル・ウォリス順位検定事後ダンを使用した。適用可能な場合、結果を平均±SEMとして提示する。
【0117】
有効性の尺度として、以下に従って実験の最後に%T/C値を計算する:
(Δ腫瘍体積処理/Δ腫瘍体積対照)×100。
【0118】
以下に従って腫瘍退縮を計算した:
-(Δ腫瘍体積処理/Δ腫瘍体積開始時処理)×100。
(式中、Δ腫瘍体積は、評価日における平均腫瘍体積-実験の開始時における平均腫瘍体積を表す)。
【0119】
結果:有効性及び耐容性
パクリタキセル用のビヒクル[エタノール:Cremophor El:5%(w/v) グルコース(10:15:75%)]の0.5時間又は16時間後に投与された50mg/kg 化合物1は、耐容性良好である。
【0120】
リポソーム製剤中の化合物1(50mg/kg QW)は、QWx7 静脈内注入投与後にMDA-MB-231異種移植モデルにおいて有効性を示さなかった(
図10及び12)。
【0121】
7.5mg/kg パクリタキセルは、腫瘍成長の遅延を引き起こし(T/C%=34%)、そして、ビヒクル処理群とは有意に異なっていた(p<0.05)(
図10及び12)。
【0122】
0.5時間又は16時間間隔で投与された7.5mg/kg 静脈内 パクリタキセル+50mg/kg 静脈内 化合物1の組み合わせ物は、生存動物(両群において3/8)において処理開始後28日目にそれぞれ82及び59%の退縮を引き起こした(
図10)。処理開始から46日目には、腫瘍退縮は、それぞれ生存動物の2/8及び3/8において92及び81%であった。これら両組み合わせ群の動物における腫瘍体積は、28及び46日目にパクリタキセル又は化合物1のみで処理された動物における腫瘍体積とは有意に異なっていた(p<0.05)(
図10)。
【0123】
16時間間隔で投与された7.5mg/kg 静脈内 パクリタキセル+25mg/kg 静脈内 化合物1の組み合わせ物は、生存(7/7)動物において腫瘍静止を引き起こした(処理開始後28日目に15%退縮及び49日目にT/C%は2%であった)(
図12)。この投与スケジュールは、体重変化及び臨床徴候に基づいて耐容性良好であった。
【0124】
16時間間隔で投与された3.75mg/kg 静脈内 パクリタキセル+50mg/kg 静脈内 化合物1の組み合わせ物は、生存(7/7)動物において35日目まで腫瘍静止を引き起こした(処理開始後28日目に3%退縮及び49日目にT/C%は20%であった)(
図12)。この投与スケジュールは、体重変化及び臨床徴候に基づいて耐容性良好であった(
図11及び13)。これらデータは、パクリタキセル及び化合物1の組み合わせ物が、いずれかの剤単独に比べて、抗腫瘍活性に対して顕著な正の効果を有することを示す。
【0125】
実施例7:MCL-1阻害は、インビボにおいてタキサン処理に対してPDX腫瘍を増感する
TNBC 110T PDXモデルにおいて、併用療法における化合物1のインビボ処置効果を判定した。
【0126】
材料及び方法
ヒト乳癌組織は、関連する施設内倫理調査委員会の承認を得て、Royal Melbourne Hospital Tissue Bank、Victorian Cancer Biobank、及びGeorges-Francois Leclerc Centerを通じて同意した患者から入手した。ヒトに関する倫理的承認は、Walter and Eliza Hall Institute (WEHI) Human Research Ethics Committee及びGeorges-Francois Leclerc Center Human Research Ethics Committeeから得た。施設の指針に従って、NOD SCID IL2ガンマ受容体ノックアウトマウス又はSCIDマウスを飼育し、そして、維持した。全ての動物実験は、WEHI and Servier Research Institute (IdRS) Animal Ethics Committeeによって承認された。
【0127】
40頭の雌NSGマウスのコホートに、初期継代ヒト乳房腫瘍(TNBC PDX110)の解凍した単一細胞懸濁液を播種した。簡潔に述べると、100,000個の細胞を、3:1の比で移植バッファ(ウシ胎児血清 50%、0.04% トリパンブルー溶液 10%、及びPBS 40%) 10μL及び成長因子低減マトリゲル[BD]に再懸濁させ、そして、3又は4週齢のNOD-SCID-IL2Rγc
-/-雌マウスの切開された乳房の脂肪体に注射した。毎週3回腫瘍の発現についてマウスをモニタし、そして、電気副尺付きカリパスを用いて腫瘍サイズを測定した。以下の式を用いて最小及び最大の腫瘍直径を測定することによって、腫瘍体積を推定した:(最小直径)2(最大直径)/2。腫瘍が60~100mm3の体積に達したら、マウスを処理アームに無作為化し、そして、処理を開始した。原液(20mg/mL)をPBSで溶解させることによってドセタキセル又はそのビヒクルを調製し、そして、2処理サイクルにわたって21日間毎に腹腔内注射した。療法期間をバーによって示す。化合物1を20% (2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン及び25mM 塩酸に溶解させた。化合物1(15mg/kg)又はそのビヒクルを6週間にわたって毎週2回静脈内注入した。腫瘍体積が600mm3を超えた最初の測定時又は疾患の進行若しくは薬物の毒性以外の理由で動物の健康状態が悪化した場合(打ち切り事象)、マウスを屠殺した。処理群あたりn=9~10頭のマウス。
【0128】
結果
化合物1単独では、腫瘍成長の阻害において不十分であった。しかし、単剤として投与されたドセタキセルと比較して、ドセタキセルと組み合わせると優れた結果が観察され、その結果、PDXモデルにおいて動物の生存が著しく改善された(
図14)。
【0129】
これら結果は、タキサン化合物と組み合わせたMCL-1阻害剤が腫瘍応答及び臨床転帰を著しく改善する可能性があることを示す。
【0130】
実施例8:患者由来のTNBCモデルを有する雌SCIDマウスにおけるドセタキセル及び化合物1の抗腫瘍活性
この試験では、雌SCIDマウスにおいてTNBC PDXモデルOD-BRE-00589におけるドセタキセルと組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性を評価した。
【0131】
方法
ドセタキセルは、0.67mg/mLで5% エタノール、5% PS80、及び90% グルコース中で製剤化して、10mg/kg投与した。化合物1は、7.5mg/mLでリポソーム製剤(Novartis)中で製剤化して、70mL/kg投与した。
【0132】
OD-BRE-00589は、IMODIコンソーシアムから得られたトリプルネガティブ乳癌PDXである。同意した患者は、Georges-Francois Leclerc Center Human Research Ethics Committeeから得られた。それを体積27mm3の断片としてSCIDマウスに移植した。
【0133】
断片移植後定期的に腫瘍成長をモニタし、そして、移植の11日間後に動物を処理群に無作為化し(n=8)、平均腫瘍体積は約200mm3であった。対照群は処理せず、そして、他の群は以下で処理した:
1)70mg/kg 化合物1 静脈内、又は
2)10mg/kg ドセタキセル 静脈内、又は
3)10mg/kg ドセタキセル 静脈内、続いて、30分後に70mg/kg 化合物1、又は
4)10mg/kg ドセタキセル 静脈内、続いて、72時間後に70mg/kg 化合物1。
【0134】
尾静脈に1回投与を実施した。
【0135】
1週間あたり2~3回、カリパスを用いて腫瘍体積を測定した。以下の式を使用して腫瘍体積を計算した:長さ×幅2/2。また、1週間あたり2~3回動物を計量し、何らかの有害作用の明らかな徴候について頻繁に調べた。
【0136】
結果
化合物1単独では、腫瘍成長の阻害において不十分であった。しかし、単剤として投与されたドセタキセルと比較して、ドセタキセルと組み合わせると優れた結果が観察され、その結果、PDXモデルにおいて抗腫瘍活性が著しく改善された(
図15)。
【0137】
これら結果は、タキサン化合物と組み合わせたMCL-1阻害剤が腫瘍応答及び臨床転帰を著しく改善する可能性があることを示す。
【0138】
実施例9:ドセタキセルに対して耐性を有するPDXモデルにおけるパクリタキセルと組み合わせた化合物1の有効性試験
【0139】
方法
インビボでドセタキセルに対する耐性が確認されているPDXモデルを試験した。各処理群は、6~8週齢の5頭の雌Swiss Nudeマウスを含んでいた。異種移植片の平均腫瘍体積が~120~150mm3に達したとき、処理を開始した。次いで、マウスの群を無作為に異なる処理に供した。移植した動物数は、腫瘍成長の均一性に依存していた。
【0140】
リポソーム製剤に製剤化し、1週間に1回70mg/kgで化合物1を静脈内投与した。製剤は即座に調製しなければならなかった。0.9%NaClで希釈したパクリタキセルを25mg/kgで腹腔内投与した。化合物1の投与の16時間前に、パクリタキセルをQW投与した。異なる処理の投与スケジュールを以下の通り定義する:
【表5】
【0141】
腫瘍細サイズを1週間に2回測定し、そして、個々のマウスの体重を1週間に1回測定した。最も応答性の高い群の中央腫瘍体積が再成長し始めるまで処理を行った。群間の再発までの時間を比較するために、処理停止後にマウスを追跡した。Statviewソフトウェアを使用して、腫瘍体積及び/又は相対腫瘍体積(RTV、時間tにおける体積を1日目における初期体積で除し、そして、100を乗じた比)、最適成長阻害(処理群におけるRTV(×100)を対照におけるRTVで除した比)、成長遅延(処置群及び対照群において200mm3の初期腫瘍体積が4倍になるのに必要な日数)、及び体重変化を比較した。
【0142】
パクリタキセル処理後に再発が観察された場合、腫瘍を化合物1+パクリタキセルの組み合わせ物に再度曝露した。これは、パクリタキセル処理群に10頭のマウスを含め、次いで、パクリタキセルのみで(5頭の動物)及び組み合わせて(5頭の動物)腫瘍再発マウスを処理することによって、又は有効性試験からの無作為化されていないマウスを使用することによって行った。パクリタキセルに対する初期応答が観察された場合、無作為化後に残った追加の動物をこの試験に含めた。
【0143】
結果
化合物1単独では、腫瘍成長の阻害において不十分であった。しかし、単剤として投与されたパクリタキセルと比較して、パクリタキセルと組み合わせると優れた結果が観察され、その結果、タキサン化合物に対して耐性を有するPDXモデルにおいて抗腫瘍活性が著しく改善された。
【0144】
これら結果は、タキサン化合物と組み合わせたMCL-1阻害剤が腫瘍応答及び臨床転帰を著しく改善する可能性があることを示す。