(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】ブロー成形装置及びブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/64 20060101AFI20221121BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2019541040
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2018033323
(87)【国際公開番号】W WO2019050021
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2017173368
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 淳一
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101486(JP,A)
【文献】特開平05-185494(JP,A)
【文献】特開2000-000877(JP,A)
【文献】特開2016-199053(JP,A)
【文献】特開平11-034152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
B29B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネック部と該ネック部から連続する有底の胴部とを備えるプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームが収容される温調金型と、前記プリフォームの内部に挿入される温調ロッドと、を備え、前記プリフォームを前記温調金型内に非接触に収容すると共に、前記温調ロッドを前記プリフォームの内面に接触させて当該プリフォームの温調処理を行う温調部と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂容器を形成するブロー成形部と、を備えるブロー成形装置であって、
前記プリフォームの前記胴部は、上方胴部と、前記上方胴部よりも底部側に設けられた主要胴部と、前記プリフォームの底部を形成する下方胴部と、から構成されており、
前記上方胴部は、前記胴部における前記ネック部との境界部分を含み、
前記温調部は、前記プリフォーム内に前記温調ロッドを挿入して前記境界部分とは非接触の状態で前記胴部の内面に接触させた後、前記温調ロッドを前記胴部の底面部側に所定距離だけ移動させて前記胴部を延伸させることを特徴とするブロー成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブロー成形装置であって、
前記温調部は、前記プリフォームが前記温調金型に接触しない範囲で前記温調ロッドを移動させて前記胴部を延伸させることを特徴とするブロー成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブロー成形装置であって、
前記温調ロッドは、前記温調金型に収容される際の前記プリフォームよりも低い温度に調整されていることを特徴とするブロー成形装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のブロー成形装置であって、
前記温調部は、前記温調ロッドが前記胴部の内面に接触した状態を所定時間保持した後、前記温調ロッドを前記所定距離だけ移動させて前記胴部を延伸させることを特徴とするブロー成形装置。
【請求項5】
前記樹脂容器は、
前記プリフォームの前記ネック部から形成される口部と、
前記プリフォームの前記主要胴部の少なくとも一部から形成される容器胴部と、
前記プリフォームの前記
下方胴部から形成される容器底部と、
前記口部から前記底部側に向かうにつれて直径が大きく形成され、前記口部および前記容器胴部と連続に接続される肩部と、を備え、
前記上方胴部は、前記樹脂容器の前記口部の直下から前記肩部の少なくとも一部を形成する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のブロー成形装置。
【請求項6】
前記プリフォームの前記胴部は前記上方胴部から前記
下方胴部に向けて順次縮径しており、
前記境界部分における直径は、前記温調ロッドの直径よりも大きい、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のブロー成
形装置。
【請求項7】
ネック部と該ネック部から連続する有底の胴部とを備えるプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームを温調金型内に非接触に収容すると共に、温調ロッドを前記プリフォームの内面に接触させて当該プリフォームの温調処理を行う温調工程と、
前記プリフォームをブロー成形するブロー成形工程と、を備えるブロー成形方法であって、
前記プリフォームの前記胴部は、上方胴部と、前記上方胴部よりも底部側に設けられた主要胴部と、前記プリフォームの底部を形成する下方胴部と、から構成されており、
前記上方胴部は、前記胴部における前記ネック部との境界部分を含み、
前記温調工程では、前記プリフォーム内に挿入された前記温調ロッドを前記境界部分とは非接触の状態で前記胴部の内面に接触させた後、前記温調ロッドを前記胴部の底面部側に所定距離だけ移動させて前記胴部を延伸させることを特徴とするブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂容器を成形するためのブロー成形装置及びブロー成形方法に関し、例えば、成形サイクル時間が非常に短いハイサイクル条件下であっても、良好な肉厚分布・外観の樹脂容器を成形可能なブロー成形装置及びブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂容器のブロー成形装置としては、プリフォームを一旦室温まで冷却して再加熱してブロー成形するコールドパリソン方式の装置と共に、射出成形したプリフォームを室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用してブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式)の装置が存在する。
【0003】
このようなホットパリソン方式のブロー成形装置は、コールドパリソン方式のブロー成形装置に比べてエネルギー消費量や成形可能な容器形状の多様性といった面で優れており、例えば、中小サイズの樹脂容器を成形する際に好適に用いられている。
【0004】
またホットパリソン方式のブロー成形装置では、複数個のプリフォームが一度に射出成形される。しかしながら、射出成形型より離型された時点の複数の各プリフォームの温度は通常均一ではなく、また一つのプリフォーム内でも温度は通常均一にはならない。このようなプリフォームの温度ばらつきに起因して、最終成形品である樹脂容器を所望の肉厚分布や外観に形成することができない場合がある。すなわち、プリフォームの温度ばらつきに起因して、顧客仕様を満足した品質の等しい複数の樹脂容器を同時に成形できない場合がある。
【0005】
このような問題を解消するために、ホットパリソン方式のブロー成形装置において、射出成形したプリフォームの温度を調整する処理(温調処理)を行うための温調部を備えるようにし、各プリフォームの温度状態の適正化を図るようにしたものがある(例えば、特許文献1-3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-39226号公報
【文献】特開平5-131528号公報
【文献】特開平6-305006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ホットパリソン方式のブロー成形装置は、プリフォームや樹脂容器のネック部を保持するリップ型を備え、このリップ型を回転させることで、プリフォームや樹脂容器を各製造工程を実施する複数のセクションに間欠的かつ循環的に搬送するように構成されている。なお複数のセクションとしては、例えば、射出成形部、温調部、ブロー成形部、取出部等が挙げられる。
【0008】
このため、ホットパリソン方式のブロー成形装置では、射出成形部でプリフォームを射出成形する個数と、ブロー成形部でプリフォームをブロー成形する個数とが同数となる。したがって、ホットパリソン方式のブロー成形装置は、コールドパリソン方式のものと比べて生産性が低いという問題があった。
【0009】
しかしながら、近年は、金型や装置自体の構造を改善・改良することで、ホットパリソン式のブロー成形装置の生産性は向上してきている。例えば、装置が備えるリップ型の列数が増加され(例えば、3列以上)、成形サイクル時間もより短縮化されている。この結果、1サイクルあたりの成形品(樹脂容器)の取り数が増加し、1サイクルでかかる時間も短縮化されてきている。
【0010】
そして、成形サイクル時間が著しく短縮化されたハイサイクル条件下では、温調部においてプリフォームを温調処理できる時間が短くなる。例えば、連続運転における成形サイクル時間が5~7秒である場合、装置にある各種機構の動作時間やプリフォームの搬送時間等を考慮すると、プリフォームを温調処理できる時間は3~4秒ほどしか確保できない。
【0011】
なお、連続運転における成形サイクル時間とは、例えば、1バッチ分(射出成形1ショット分)の樹脂容器の取出間隔の時間である。言い換えれば、間欠回転式のホットパリソン式のブロー成形装置での成形サイクル時間とは、およそ、律速段階である射出成形工程にかかる時間であり、具体的には、射出成形時間+射出型開閉時間にリップ型の間欠搬送持間を合計した値になる。
【0012】
この短時間では、温調部においてプリフォーム単体に生ずる射出成形由来の偏温を除去して適正な温度分布を付与させることは非常に難しい。またプリフォームに適正な温度分布を付与できないと、充分な品質を備えた成形品の製造が困難になる。さらに1サイクルあたりの同時成形個数の増加に伴い、各プリフォームの温度ばらつきも生じ易くなり、複数のプリフォームの温度条件を均一化させることも難しくなる。
【0013】
このように、従来の方法では温調部においてプリフォームの適切な温調処理を行うことができない虞がある。
【0014】
またホットパリソン方式のブロー成形装置においては、プリフォーム上部の保有熱がリップ型に徐々に奪われてしまい、当該部位が他の部位より温度低下しやすい傾向がある。またプリフォームは、保有熱(温度)の高い部位がブロー成形時に延伸され易い傾向がある。
【0015】
このため、ブロー成形後の樹脂容器は、ネック下(肩部)が肉厚になり易い(肉溜まりが生じ易い)一方、胴部等は薄肉となり易い。すなわち樹脂容器の各部位において必要な肉厚を確保できず、成形品の強度(剛性度やトップロード(座屈強度、縦圧縮荷重耐性)など)が低くなる傾向にある。特に、小型・軽量の樹脂容器を成形する場合、プリフォームのサイズも小さいため、このような影響も無視できない。
【0016】
温調部にてプリフォームの温調処理を行うことはできるが、小型・軽量の樹脂容器を成形するためのプリフォームは、胴部がお椀状に形成され、その長さ(高さ)が非常に短いため、適切な温調処理を行い難いという問題もある。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、温調部にて比較的短時間でプリフォームの温度状態の適正化を図ることができ、ブロー成形部にて良好な肉厚分布・外観の樹脂容器をブロー成形することができる樹脂容器のブロー成形装置及びブロー成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、ネック部と該ネック部から連続する有底の胴部とを備えるプリフォームを射出成形する射出成形部と、前記プリフォームが収容される温調金型と、前記プリフォームの内部に挿入される温調ロッドと、を備え、前記プリフォームを前記温調金型内に非接触に収容すると共に、前記温調ロッドを前記プリフォームの内面に接触させて当該プリフォームの温調処理を行う温調部と、前記プリフォームをブロー成形して樹脂容器を形成するブロー成形部と、を備えるブロー成形装置であって、前記温調部は、前記プリフォーム内に前記温調ロッドを挿入して前記ネック部との境界部分を残して前記胴部の内面に接触させた後、前記温調ロッドを前記胴部の底面部側に所定距離だけ移動させて前記胴部を延伸させることを特徴とするブロー成形装置にある。
【0019】
ここで、前記温調部は、前記プリフォームが前記温調金型に接触しない範囲で前記温調ロッドを移動させて前記胴部を延伸させることが好ましい。
【0020】
また前記温調ロッドは、前記温調金型に収容される際の前記プリフォームよりも低い温度に調整されていることが好ましい。
【0021】
さらに前記温調部は、前記温調ロッドが前記胴部の内面に接触した状態を所定時間保持した後、前記温調ロッドを前記所定距離だけ移動させて前記胴部を延伸させることが好ましい。
【0022】
また本発明の他の態様は、ネック部と該ネック部から連続する有底の胴部とを備えるプリフォームを射出成形する射出成形工程と、前記プリフォームを温調金型内に非接触に収容すると共に、温調ロッドを前記プリフォームの内面に接触させて当該プリフォームの温調処理を行う温調工程と、前記プリフォームをブロー成形するブロー成形工程と、を備えるブロー成形方法であって、前記温調工程では、前記プリフォーム内に挿入された前記温調ロッドを前記ネック部との境界部分を残して前記胴部の内面に接触させた後、前記温調ロッドを前記胴部の底面部側に所定距離だけ移動させて前記胴部を延伸させることを特徴とするブロー成形方法にある。
【発明の効果】
【0023】
かかる本発明によれば、温調部にて比較的短時間でプリフォームの温度状態の適切化を図ることができ、ブロー成形部にて良好な肉厚分布・外観の樹脂容器をブロー成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係るブロー成形装置により形成される樹脂容器の一例を示す図である。
【
図2】本発明に係るブロー成形装置により形成されるプリフォームの一例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るブロー成形装置の概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る温調部が備える温調金型の断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る温調部が備える温調金型の断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る温調部が備える温調金型の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
まずは、本実施形態に係るブロー成形装置、ブロー成形方法によって形成される樹脂容器の形状の一例について説明する。
【0026】
図1に示すように、樹脂容器1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の合成樹脂製であり、例えば、飲料等の保存用に用いられる小型軽量容器である。樹脂容器(小型軽量容器)1は、上端に設けられるネック部(口部)2と、このネック部2から肩部3を介して連続する略円筒状の胴部4と、胴部4の底を塞ぐ底部5と、を備えている。またネック部2の肩部3との境界付近には、ネック部2の外周面にサポートリング6が設けられている。また、上述の樹脂容器1は、例えば、ネック部(口部)の外径が23mm~25mmであり、容量が100ml~200ml、重量が5g~20gとなるように各部の寸法が設定されている。
【0027】
樹脂容器1の形状は特に限定されず、上述の小型軽量容器のほか、ネック部(口部)の外径が例えば43mm以上で、食品等の保存用に用いられる広口容器と称されているものであってもよい。
【0028】
そして、このような樹脂容器1は、射出成形されたプリフォーム10をブロー成形することによって形成されている。
【0029】
例えば、
図2に示すように、このプリフォーム10は、ネック部11と、ネック部11から連続する有底の胴部12とで構成されている。胴部12は、上方胴部(境界部)12aと、主要胴部12bと、下方胴部12cと、から構成されている。
【0030】
上方胴部12aは、樹脂容器1のネック部2の直下から肩部3の少なくとも一部(上方)を形成する部位である。主要胴部12bは、樹脂容器1の少なくとも胴部4を形成する部位であり、胴部4と共に肩部3の一部(下方)も形成する場合もある。下方胴部12cは、樹脂容器1の底部5を形成する部位である。
【0031】
また上方胴部12aは、ネック部11と主要胴部12bとに連接する部位であり、その内壁面の傾斜角(
図2中、ネック部11の内周面に対する傾斜角度)が、外壁面の傾斜角よりも大きくなっている。また上方胴部12aの厚さは、下方に向かうに連れて漸次増加している。
【0032】
主要胴部12bは、上方胴部12aと下方胴部12cとに連接する部位であり、その内壁面と外壁面が略平行となるように形成されている。また主要胴部12bの厚さは、全体に亘って上方胴部12aよりも厚くなっている。
【0033】
下方胴部12cは、主要胴部12bに連接する部位であり、その内壁面及び外壁面の傾斜角(
図2中、ネック部11の内周面に対する傾斜角度)は他の部位(上方胴部12a,主要胴部12b)よりも大きくなっている。また下方胴部12cは、全体に亘って主要胴部12bよりも薄く形成され、その下端にホットランナー(射出成形型の一部)のゲート痕を有している。
【0034】
ネック部11は、樹脂容器1のネック部2と略同一形状に形成されており、ネック部11の外周面にはサポートリング13が形成されている。また、このプリフォーム10は、樹脂容器1をブロー成形する際の縦軸および横軸への延伸倍率が大きいため、胴部12は短小で略テーパー状とされ、いわゆる、お椀状に形成されている。すなわち胴部12は、ネック部11との境界部分(上方胴部12aの際上端)の直径が最も大きく、胴部12の下方胴部(底面部)12c側ほど直径が小さくなるように形成されている。
【0035】
以下、このような樹脂容器1を成形するためブロー成形装置について説明する。
図3に示すように、ブロー成形装置20は、いわゆるホットパリソン方式(1ステップ方式)の装置であり、機台21上に、射出成形部(射出成形装置)30と、温調部(温調装置)40と、ブロー成形部(ブロー成形装置)50と、取出し部(取出し装置)60と、を備えている。
【0036】
射出成形部30には射出部(射出装置)70のノズルが連結されており、射出成形部30は、射出部70から射出される樹脂材料により上述した形状のプリフォーム10を成形する(射出成形工程)。温調部40は、射出成形されたプリフォーム10の温調処理を実施し、プリフォーム10の温度を適正な温度に調整する(温調工程)。また詳しくは後述するが、温調部40は、温調処理と共に、プリフォーム10の例えば温調ロッドによる延伸処理(予備延伸処理)を実施する。
【0037】
ブロー成形部50は、温調部40によって温調処理及び予備延伸処理が施されたプリフォーム10を、例えば、延伸ロッドにより縦軸方向に延伸させると共に高圧エアーにより横軸方向に延伸させるブロー成形を行い、最終成形品である樹脂容器1を形成する(ブロー成形工程)。このように形成された樹脂容器1は、取出し部60で外部に取り出される(取出し工程)。
【0038】
これら射出成形部30、温調部40、ブロー成形部50及び取出し部60の上方には、回転盤(移送盤)22が設けられている。回転盤22は、機台21に対して、例えば、反時計回り方向に間欠的に回転可能となっている。回転盤22の周方向の4箇所には一対の割型からなるリップ型23が各々備えられ、プリフォーム10及び樹脂容器1は、このリップ型23に保持されて回転盤22の間欠回転により所定の装置に順次搬送されるようになっている。リップ型23は、回転盤22の径方向にて少なくとも1列、好ましくは3列以上、設けられている。
【0039】
そして本発明は、このような構成のブロー成形装置20の温調部40による予備延伸処理に特徴がある。さらに言えば、本発明は、ハイサイクル(例えば、7秒以下)で稼働されるブロー成形装置20の温調部40による予備延伸処理に特徴がある。以下では、
図4~
図6を参照して温調部40による予備延伸処理について詳しく説明する。
【0040】
なお
図4及び
図5は温調部が備える温調金型の概略構成を示す図であり、
図4はプリフォームが加熱ポットに収容されている状態を示し、
図5は温調ロッドをプリフォームの内面に接触するまで下降させた状態を示している。また
図6は、温調部が備える温調金型の拡大図であり、図中左側は温調ロッドをプリフォームの内面に接触するまで下降させた状態を示し、図中右側は、さらに温調ロッドを下降させてプリフォームを延伸させた状態を示している。
【0041】
図4に示すように、温調部40は、プリフォーム10が収容される温調金型としての加熱ポット41と、温調ロッド42と、を備えている。加熱ポット41は、プリフォーム10の胴部12の下方胴部(底面部)12cに対向して配置される第1の加熱ブロック43と、胴部12の周囲に配置される第2の加熱ブロック44と、を備えている。なお、第2の加熱ブロック44は複数設けられていてもよい。
【0042】
図示は省略するが、温調部40は、複数列(本実施形態では3列)に配置された加熱ポット41及び温調ロッド42を備えており、同時に多数個(本実施形態では36個:12個×3列)のプリフォーム10の温調処理を実施することができるように構成されている。
【0043】
加熱ポット41が備える第1の加熱ブロック43及び第2の加熱ブロック44は、どちらも、例えば、100℃~400℃の範囲で温度調整が可能に構成されている。加熱ポット41はリップ型23と同数設けられ、その下端が、昇降可能な加熱ポット固定部材46に連結されている。
【0044】
また加熱ポット41は、第1の加熱ブロック43及び第2の加熱ブロック44とは非接触の状態でプリフォーム10を収容可能に構成されている。すなわち加熱ポット41内にプリフォーム10が収容された状態で、プリフォーム10と第1の加熱ブロック43及び第2の加熱ブロック44との間には、数ミリ程度の空間(隙間)が確保されている。
【0045】
温調ロッド42は、プリフォーム10に挿入される棒状の部材であり、その先端側には、プリフォーム10の内面に沿った表面を有しプリフォーム10の胴部12の内面に接触する接触部42aが設けられている。
【0046】
温調ロッド42はリップ型23と同数設けられ、接触部42aとは逆側にある係合部42bにて、昇降可能な温調ロッド固定部材45に連結されている。本実施形態では、係合部42bは、温調ロッド固定部材45に対して螺合されている。すなわち、係合部42bの外周面には、例えば、雄ネジが形成され、温調ロッド固定部材45の内周面には、例えば、雌ネジが形成されている。
【0047】
この構成では、係合部42bの締め付け量を調整することで、下降時における温調ロッド42の下限位置(昇降ストローク)を調整することができる。これにより、後述する非接触領域110の延伸量(上方胴部12aの温度低下量)を適宜調整することができる。
【0048】
また接触部42aは、所定範囲で温度調整が可能に構成されている。本実施形態では、接触部42aは、加熱ポット41に収容される際のプリフォーム10の温度(例えば、100℃~120℃)よりも低い温度(例えば60~80℃、より好ましくは70±5℃)に設定可能に構成されている。
【0049】
そして、このような構成の温調部40では、射出成形部30からプリフォーム10が搬送されると、まず所定温度に調整された加熱ポット41内にプリフォーム10が収容される(
図4参照)。上述のように、この状態で、プリフォーム10と第1の加熱ブロック43及び第2の加熱ブロック44との間には空間(隙間)が確保されている。
【0050】
プリフォーム10が加熱ポット41内に収容されると、温調ロッド42が下降(移動)してプリフォーム10内に挿入され、接触部42aがプリフォーム10の胴部12の内面に接触してプリフォーム10の温調処理が行われる(
図5参照)。
【0051】
本実施形態では、温調ロッド42(接触部42a)をプリフォーム10の内面に接触させてプリフォーム10を僅かに冷却する。同時に、加熱ポット41を、例えば、250℃程度に設定してプリフォーム10の外面を非接触で加熱し、ブロー成形部50での延伸処理に必要な温度(保有熱)を維持させている。接触式(熱伝導式)の温調は、加熱ロッドのような非接触式(輻射式)の温調よりも熱交換の効率が良く、短時間で複数のプリフォーム10の均温化を行うにあたり効果的である。
【0052】
これにより、各プリフォーム10の偏温解消や複数のプリフォーム10の均温化を行い(温度差を低減させ)、全てのプリフォーム10をブロー成形に適した温度に等しく調整することができる。
【0053】
ここで、温調ロッド42の接触部42aは、胴部12のネック部11との境界部分を残してプリフォーム10の胴部12の内面に接触するように設けられている。すなわち接触部42aがプリフォーム10の胴部12の接触領域100に接触した状態で、プリフォーム10の胴部12には、ネック部11との境界部分に、接触部42aが接触していない非接触領域110が存在する。
【0054】
例えば、本実施形態では、温調ロッド42の接触部42aの直径は、プリフォーム10のネック部11の内径よりも若干小さい。また接触部42aの縦軸方向の長さは、プリフォーム10の胴部12の内面の縦軸方向の長さよりも短くなっている。
【0055】
このため、プリフォーム10の胴部12に温調ロッド42を接触させた状態で、胴部12のネック部11との境界部分には、温調ロッド42が接触していない領域が存在する。すなわち、プリフォーム10の胴部12の接触領域100に温調ロッド42(接触部42a)を接触させた状態で、接触領域100の周囲には温調ロッド42が接触していない非接触領域110が存在する。
【0056】
言い換えれば、温調ロッド42の接触部42aは、胴部12のネック部11との境界部分(接触領域100の周囲)に、非接触領域110が存在するように、所定形状(直径及び高さ)に形成されている。なお、非接触領域110には、少なくともプリフォーム10の上方胴部12aが含まれ、接触領域100にはプリフォーム10の主要胴部12bと下方胴部12cとが含まれる。
【0057】
またプリフォーム10の縦軸方向における非接触領域110の長さ(リップ型23の最下面位置から接触部42aの最上端位置までの長さ)L1は、樹脂容器1やプリフォーム10の形状等を考慮して適宜決定されればよいが、例えば、5mm以内に設定されていることが好ましい(
図6参照)。
【0058】
そして温調部40は、このように温調ロッド42の接触部42aがプリフォーム10の胴部12の内面(接触領域100)に接触すると、さらに温調ロッド42を所定距離D1だけ下降(移動)させてプリフォーム10を延伸させる予備延伸処理を実施する(
図6参照)。
【0059】
その際、温調ロッド42の接触部42aは、プリフォーム10の温度よりも低い温度に設定されている。このため、温調ロッド42(接触部42a)がプリフォーム10の接触領域100に接触すると、プリフォーム10の接触領域100は実質的に冷却されることになる(温調処理)。ただし、温調ロッド42が接触していない非接触領域110は、温調ロッド42が接触している接触領域100よりも温度の低下が遅い。このため、プリフォーム10の非接触領域110の温度(保有熱)は、プリフォーム10の接触領域100の温度(保有熱)に比べて相対的に高くなる(大きくなる)。
【0060】
したがって、予備延伸処理において温調ロッド42を下降させると、プリフォーム10の非接触領域110、すなわち胴部12のネック部11との境界部分(サポートリング13のネック部11とは反対側)が、局所的に延伸する。プリフォーム10の接触領域100は実質的に延伸することなく、非接触領域110が局所的に延伸する。そして、この延伸に伴い、プリフォーム10の非接触領域110の肉厚が若干薄くなり所定の厚さとなる。
【0061】
同時に、この延伸により非接触領域110(上方胴部12a)の温度が低下して、胴部12の接触領域100(主要胴部12b及び下方胴部12c)の温度が、非接触領域110よりも相対的に高くなる。すなわち胴部12の非接触領域110以外の部分の保有熱が、非接触領域110よりも相対的に大きくなる。
【0062】
以上のように本発明に係るブロー成形装置20では、温調部40にてプリフォーム10の温度調整(温調処理)を行うと共に、プリフォーム10の局所的な延伸(予備延伸処理)を行うようにしたので、比較的短時間でプリフォーム10の温度状態の適切化を図ることができる。
【0063】
これにより、良好な肉厚分布・外観の樹脂容器1をブロー成形することが可能になる。詳しくは、ブロー成形部50では、プリフォーム10の胴部12において温度が相対的に高い(保有熱が相対的に大きい)肉厚の部分が、温度が相対的に低い(保有熱が相対的に小さい)薄肉のネック部11の直下(境界部分)よりも優先的に延伸される。その結果、肩部3の肉溜りと胴部4および底部5の薄肉化が解消された、良好な肉厚分布・外観の樹脂容器1をブロー成形することが可能になる。
【0064】
なお予備延伸処理において温調ロッド42を下降させる距離D1は、プリフォーム10の形状等を考慮して適宜決定されればよいが、プリフォーム10が加熱ポット41を構成する第1の加熱ブロック43に接触しない程度の距離だけ下降させることが好ましい。この程度の距離だけ下降させれば、プリフォーム10の温度状態を十分に適正化することができる。
【0065】
また従来のブロー成形装置においても、プリフォームをブロー成形する前にプリフォームの温調処理は行われていたが、上述したようにハイサイクル条件下でのプリフォームの適切な温調処理を行うことができず、樹脂容器の肉厚を十分に均一化できていなかった。
【0066】
これに対し、本発明に係るブロー成形装置20では、温調部40にてプリフォーム10の温調処理と共に、予備延伸処理を実施することで、比較的短時間でブロー成形により形成した樹脂容器1の肉厚を十分に均一化することができる。つまり、温調処理を行う時間が短くても、一つのプリフォーム10に対してメリハリがある温度分布を付与でき(延伸させたい部位と延伸させたくない部位を峻別して明瞭かつ適正な温度差を付与でき)、かつ、複数のプリフォーム10の均温化を図ることができる。
【0067】
これにより、樹脂容器1に対して強度を確保したい部位の肉厚化や強度が不要な部位の薄肉化を行い、略均等な品質の容器を複数同時に製造することができる。したがって、ハイサイクル条件下であっても、プリフォーム10の温度状態を適正化することができ、良好な肉厚分布・外観の樹脂容器1を形成することができる。
【0068】
例えば、本実施形態では、温調ロッド42をプリフォーム10の胴部12の内面に接触させた際に、温調ロッド42を停止させることなく、所定距離だけ下降させてプリフォーム10を延伸させている。このため、温調部40における温調処理及び予備延伸処理に要する時間を極力短く抑えることができる。
【0069】
ただし、温調ロッド42は必ずしも連続的に下降(移動)させなくてもよい。例えば、プリフォーム10の胴部12の内面に接触した状態で温調ロッド42の下降を一旦停止させ、この状態を所定時間保持した後、温調ロッド42を再度下降させてプリフォーム10(胴部12)を延伸させてもよい。樹脂容器1の形状等によっては、プリフォーム10の温調処理をより適切に行うことができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、樹脂容器1が小型・軽量の容器であり、プリフォーム10の胴部12がお椀状に形成され、またその長さ(高さ)が非常に短いため、プリフォーム10の温度状態の適正化が難しいが、温調部40にて温調処理と共に、予備延伸処理を実施することで、プリフォーム10の温度状態の適正化が容易となる。
【0071】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0072】
20 ブロー成形装置
21 機台
22 回転盤
23 リップ型
30 射出成形部(射出成形装置)
40 温調部(温調装置)
41 加熱ポット
42 温調ロッド
42a 接触部
42b 係合部
43 第1の加熱ブロック
44 第2の加熱ブロック
45 温調ロッド固定部材
46 加熱ポット固定部材
50 ブロー成形部(ブロー成形装置)
60 取出し部(取出し装置)
70 射出部(射出装置)
100 接触領域
110 非接触領域