(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】スピーチプライバシーシステム及び/又は関連する方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/175 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
G10K11/175
(21)【出願番号】P 2019548974
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(86)【国際出願番号】 US2018022316
(87)【国際公開番号】W WO2018170045
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-08
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517413513
【氏名又は名称】ガーディアン・グラス・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GUARDIAN GLASS, LLC
【住所又は居所原語表記】2300 Harmon Road, Auburn Hills, MI 48326-1714 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】アレクシー クラスノフ
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-123141(JP,A)
【文献】特表2014-520284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0065778(US,A1)
【文献】特開2005-084645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0125922(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00-13/00
G10L 13/00-13/10
19/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーチ明瞭度を阻害するための方法であって、
マイクロホンを介して、元のスピーチに対応する元のスピーチ信号を受信することと、
前記元のスピーチ信号内に前記元のスピーチの不鮮明化されたキューを含む明瞭度阻害マスキング信号を生成することと、
スピーカを通して、前記不鮮明化されたスピーチキューを含む前記明瞭度阻害マスキング信号を出力することによって、前記元のスピーチ信号の明瞭度レベルを低減させることと、を含
み、
前記明瞭度阻害マスキング信号が、前記元のスピーチ信号に対して時間遅延され、
前記時間遅延を、時間的に発振させる、方法。
【請求項2】
前記明瞭度阻害マスキング信号が、20~150ms時間遅延される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記明瞭度阻害マスキング信号が、80ms時間遅延される、請求項
1又は
2に記載の方法。
【請求項4】
前記時間遅延を、元の信号に対して80~230msの範囲内で時間的に発振させる、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記時間遅延を、2~6Hzの発振周波数によって発振させる、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記時間遅延を、1~10Hzの発振周波数によって発振させる、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記明瞭度阻害マスキング信号は、前記明瞭度阻害マスキング信号の振幅が時間的に変調するように生成される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記元のスピーチ信号に加えられる前記明瞭度阻害マスキング信号に対応する利得が0.05~0.25%であるように、前記明瞭度阻害マスキング信号を生成することを更に含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
不鮮明化されたキューが、0.01~20Hzの周波数で生成される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
不鮮明化されたキューが、2~6Hzの周波数で生成される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記スピーカを通して、予め録音した複数の声の混合物と一緒に、前記明瞭度阻害マスキング信号を出力することを更に含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記予め録音した複数の声の混合物が、2つ~7つの異なる声を含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記予め録音した複数の声の混合物が、3つの異なる声を含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
スピーチ明瞭度阻害装置であって、
制御回路であって、
マイクロホンから、元のスピーチに対応する元のスピーチ信号を受信し、
前記元のスピーチ信号内に前記元のスピーチの不鮮明化されたキューを含む明瞭度阻害マスキング信号を生成し、そして、
前記不鮮明化されたスピーチキューを含む前記明瞭度阻害マスキング信号をスピーカに出力させて、前記元のスピーチ信号
の明瞭度レベルを低減させるように構成された、制御回路を備え
、
前記明瞭度阻害マスキング信号が、前記元のスピーチ信号に対して時間遅延され、
前記時間遅延を、時間的に発振させる、スピーチ明瞭度阻害装置。
【請求項15】
前記明瞭度阻害マスキング信号が、20~150ms時間遅延される、請求項
14に記載の装置。
【請求項16】
前記時間遅延を、元の信号に対して80~230msの範囲内で時間的に発振させる、請求項
14又は15に記載の装置。
【請求項17】
前記時間遅延を、1~10Hzの発振周波数によって発振させる、請求項
14~
16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記明瞭度阻害マスキング信号は、前記明瞭度阻害マスキング信号の振幅が時間的に変調するように生成される、請求項
14~
17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記明瞭度阻害マスキング信号は、前記元のスピーチ信号に加えられる前記明瞭度阻害マスキング信号に対応する利得が0.05~0.25%であるように生成される、請求項
14~
18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
不鮮明化されたキューが、2~6Hzの周波数で生成される、請求項
14~
19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記スピーカを通して、予め録音した複数の声の混合物と一緒に、前記明瞭度阻害マスキング信号を出力することを更に含む、請求項
14~
20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
スピーチ明瞭度阻害システムであって、
マイクロホンと、
スピーカと、
制御回路であって、
前記マイクロホンから、元のスピーチに対応する元のスピーチ信号を受信し、
前記元のスピーチ信号内に前記元のスピーチの不鮮明化されたキューを含む明瞭度阻害マスキング信号を生成し、そして、
前記不鮮明化されたスピーチキューを含む前記明瞭度阻害マスキング信号を前記スピーカに出力させて、前記元のスピーチ信号
の明瞭度レベルを低減させるように構成された、制御回路と、を備え
、
前記明瞭度阻害マスキング信号が、前記元のスピーチ信号に対して時間遅延され、
前記時間遅延を、時間的に発振させる、スピーチ明瞭度阻害システム。
【請求項23】
前記明瞭度阻害マスキング信号は、前記明瞭度阻害マスキング信号
の振幅を時間的に発振させるように生成される、請求項
22に記載のシステム。
【請求項24】
請求項
22~
23のいずれか一項に記載のシステムを備える、音響壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の特定の例示的実施形態は、スピーチプライバシーシステム及び/又は関連する方法に関する。より具体的には、本発明の特定の例示的実施形態は、例えば、時間遅延及び/又は振幅調整を経時的に発振させて、スピーチ信号を元のスピーチ信号の複製に重ね合わせて、その一部分を遅延させる、及び/又は位相調整する、及び/又は振幅調整することによって、スピーチの明瞭度を阻害するスピーチプライバシーシステム及び/又は関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーチプライバシーを保護することは、現代の作業環境においてますます重要な作業になってきている。話す人々は、自分のスピーチコンテンツを自分のオフィス又は会議室に制限することを望む。一方で、意図されていない聴取者は、不必要な口頭の情報によって邪魔されないことを望む。他者からのいらだたしいスピーチもまた、例えば、家庭、図書館、銀行、及び/又は同類のもの、例えば、人々がしばしば自分のスピーチが他者を邪魔していることに気付かない場所、を含む、オフィス以外の環境において問題である。
【0003】
実際に、不快な音に耐えることによって引き起こされるいくつかの潜在的悪影響が存在する。これらの悪影響は、組織の生産性の喪失(例えば、集中力維持の障害及び/又はその遮断)から、人々の医療的な問題(例えば、不快な音、過敏性、心拍数の増加、及び/又は同類のものによる頭痛の発症)にまで、更には、新しい労働環境を探す衝動にまで及ぶ場合がある。また、音恐怖症、すなわち、音と何らかの不快なものとの関連付けに関する後天的な状況も時々起こることがある。一部の人々は、特定の音及びスピーチへの介入に対する音響過覚醒又は神経過敏に悩まされている。
【0004】
多くの環境において、音の不快感は、しばしば、ラウドネス、突発性、高音程、及びスピーチ音の事例においてスピーチコンテンツに関連する。多くの事例において、スピーチ又はノイズには、それらを特に阻害する、又はいらだたせる特定の成分が存在する。スピーチコンテンツに関して、人間は、ボリュームに関係なく、何が言われているのかを聴こうと耳を澄ますが、これは、無意識のうちに不快感を加えることが分かっている。すなわち、ある人が誰かが話していることに気が付くと、その人は、しばしば、不本意ながら引き込まれ、一種の潜在的な不快感を加える。
【0005】
人々は、しばしば、高周波(例えば、2,000~4,000Hz範囲の音)にいらだちを感じる。これらの音は、大きいと知覚されるような高強度のものである必要はない。これに関して、
図1は、周波数に対する音圧レベルをプロットした、一定レベルで知覚される人間の聴覚を示すグラフである。図から分かるように、
図1の「等ラウドネスサウンド曲線」は、一般に、高い音圧レベルを有するより低い周波数の音が、より低い音圧レベルを有するより高い周波数の音と同じ方式で知覚されることを実証する。典型的に、いらだちは、ノイズのボリュームと共に増加する。
【0006】
スピーチを含む音波は、主に、空気の圧縮及び希薄化を交替させることによって長手方向に伝搬する。波が壁に衝突すると、分子の歪みが壁の外側への圧力を作り出し、次に、二次的な音を放射する。
【0007】
少なくともいくつかの環境について、スピーチ阻害特性を含むノイズ消去を伴う壁を設計することが望ましいことが理解されよう。ガラスを含むいくつかの構造材料は、不十分な遮音材料である。同時に、ガラスは、優れた視覚的接続性をオフィス間に提供し、かつ社員の関わり合いに寄与することができるので、ガラスを使用することが、しばしば、有利である。したがって、少なくともいくつかの環境について、スピーチ阻害特性を含むノイズ消去特性を伴う光学的に透明な壁を設計することが望ましいことが理解されよう。
【0008】
遮音窓は、当技術分野において既知である。1つの主流の手法は、壁の音響透過クラス(Sound Transmission Class、STC)を増加させることを含む。STCは、壁が音をどのくらい減衰させるかの整数評価である。これは、人間の聴覚の範囲全体にわたって16の周波数を通じて加重される。STCは、例えば、音を破壊的に共振させるために二重枠ガラス壁と関連して特定の間隔を使用すること、ガラスの厚さを増加させることによって単一又は二重枠壁のSTCを増加させること、及び/又は積層ガラスを使用すること、によって増加させることができる。
【0009】
しかしながら、残念なことに、これらの技術にはコストがかかる。例えば、単一枠ガラスの厚さを増加させることは、僅かな音の減少しか可能にせず、一方で、コストが高くなる。二重枠ガラスの使用は、より効果的であるが、典型的に、少なくとも2つの比較的厚い(例えば、6~12.5mm)ガラスシートの使用を必要とする。これらの手法はまた、典型的に、フランキング効果を回避するために、壁の構築における高い許容度、及び特別な柔軟な機械的接続部の使用も必要とする。そのような厚さのガラスは、重く、かつ高価であり、また高い設置コストをもたらす。
【0010】
更に、二重枠壁は、典型的に、主に低周波数音に対して良好に機能する。これは、壁の有効性を、例えば、ジェットエンジン及び自動車エンジンの低周波ノイズ、海港、鉄道などのノイズに反作用するための外壁などへの、より少ない数の用途に制限する場合がある。同時に、不快感及びスピーチ認識の両方の役割を果たす大部分のスピーチ音は、1800Hz以上の範囲内にある。したがって、例えば、いらだたせる成分をブロックし、かつスピーチプライバシーを高めるのを補助するために、より高い周波数範囲においてノイズ消去を達成することが望ましい。
【0011】
より高い周波数ノイズを軽減する代わりに、いくつかの音響解決策は、サウンドマスキングに重点を置いている。例えば、様々な周波数の音は、スピーカを通して電子的に重ね合わせることができ、よって、余分な音が元のノイズ「の上に」提供される。サウンドマスキングとしては、滝及び雨の音から焚火及び雷の音に及ぶ自然の音を挙げることができる。また、これに関して、例えば、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、ブラウンノイズ、及び他のノイズなどの、様々なタイプの人工的に生成されたマスキングノイズも使用される。これらのサウンドマスキング技術の主な目的は、周囲のノイズの不快感を低減させることであり、実際に、そのような手法は、いらだちを弱めることができる。しかしながら、残念なことに、この方法はまた、追加的なノイズも作り出し、一部の人々は、それ自体をいらだたせるものと知覚する。上で述べたサウンドマスキング技術の1つの問題は、それらの周波数が、音節-スピーチの構成単位-の出現する周波数の範囲外にあることである。例えば、
図11を参照すると、下で更に詳細に説明するが、本図は、通常のスピーチパターン、ホワイトノイズ、及び自然のサウンドマスカーの時間的周波数分析の結果を示す。
【0012】
ノイズ消去を達成するための更に別の例示的な手法は、Bose社のヘッドホンにおいて使用されている。この手法は、入来ノイズを登録し、登録された入来ノイズと位相不一致である反作用的なノイズを作り出すことが必要である。ある人がヘッドホンを装着することによって自分を環境から分離することは比較的容易であるが、そうすることは、ヘッドホンを装着している人が、他者が邪魔であると認めるノイズを出すことを防止しない。すなわち、ヘッドホンを装着している人が個人レベルで隔離環境を作り出している場合であっても、あるグループ内の他者が何を話しているのかを聴き取ることができないようなグループの隔離領域を作り出すという問題が依然として存在する。加えて、壁に関するこの概念の1つの問題点は、それが典型的に、小さい領域でしか良好に機能せず、かつ、主に、連続性の低周波音(例えば、エンジンの唸音)にしか適していないことである。その1つの理由は、狭い周波数帯域だけしか効果的に位相を調整することができず、周波数が高くなるにつれて、効果的なノイズ消去の聴覚空間が小さくなることである。
【0013】
したがって、上で説明したこと及び/又は他のスピーチマスキング問題のうちのいくつか又は全てを克服する技術を提供することが望ましいことが理解されよう。例えば、人々にいらだち及び不快感を生じさせる、スピーチを含む音を減少させる、又は別様に補償するのを補助する音響技術を提供することが望ましいことが理解されよう。
【0014】
本発明者は、例えば、開放又は閉鎖したオフィス空間及び/又は他の環境、低STCの薄壁によって分離された隣接するオフィス、車両(例えば、自動車、トラック、電車、飛行機、などの商用車及び自家用車を含む)、銀行の金銭出納空間、病院、警察署、会議室、などの環境内で話している人の周りにいる人々によって、スピーチコンテンツが理解されることをブロックすることが望ましいことを認識している。実際に、広い意味で、現代のオフィス空間において、音響プライバシーの要求が増大し続けていると思われる。
【0015】
上で論じたサウンドマスキング及び消音技術を含む現在の技術は、スピーチコンテンツを標的にしておらず、かつ特に、スピーチ明瞭度阻害技術ではない。実際に、当技術分野において既知のノイズマスキング技術は、基本的な方法において、多くの追加的な不快感を生じさせることなくスピーチを効果的に阻害することを意図していない。これに関して、発明者は、人間のスピーチの基本周波数は、少なくとも部分的に消去することができる利用可能なマスキングノイズ及び/又は範囲の一部と同じ周波数スペクトル内にあるが、情報を含むブロックは、本質的に異なる周波数で現れていることを認識している。この文脈における情報を含むブロックは、フォルマントであり、これは、音のエネルギーバーストを表す。
【0016】
したがって、追加の不快感を生じさせることなくスピーチの情報コンテンツを阻害することを対象とする、音響マスキング技術を開発することが望ましいことを認識している。マスキング技術は、一般に、元のスピーチの上にある量のラウドネスを追加するものであることが理解されよう。特定の例示的実施形態の技術は、それらが特にフォルマントなどのスピーチの本質的事項キューを標的にしているので、少量の追加のラウドネスだけしか加えない。
【0017】
特定の例示的実施形態では、スピーチ明瞭度を阻害するための方法が提供され、この方法は、マイクロホンを介して、元のスピーチに対応する元のスピーチ信号を受信することと、元のスピーチ信号内に元のスピーチの不鮮明化されたキューを含む、明瞭度阻害マスキング信号を生成することと、スピーカを通して、不鮮明化されたスピーチキューを含む明瞭度阻害マスキング信号を出力することによって、元のスピーチ信号の明瞭度のレベルを低減させることと、を含む。
【0018】
本明細書では、そのような装置及びシステムを組み込んだ壁と同様に、そのような機能を組み込んだ装置及びシステムも想到される。
【0019】
本明細書に記載の特徴、態様、利点、及び例示的実施形態は、更なる実施形態を実現するために組み合わされてよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
これら及び他の特徴及び利点は、図面と併せて、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、より良好かつより完全に理解され得る。
【0021】
【
図1】周波数に対する音圧レベルをプロットした、一定レベルで知覚される人間の聴覚を示すグラフである。
【
図2】残響時間が異なることによって起こることのいくつかの例を示し、異なる残響時間に適した例示的な用途を示す図である。
【
図3】3つの異なる材料、すなわち、ガラス、ポリカーボネート、及び乾式壁で作製した壁を用いた様々な寸法の部屋において算出したT
60を表す。
【
図5】特定の例示的実施形態による、スピーチ明瞭度阻害のためのアクティブ手法を使用したときにもたらされるいくつかの利点を更に確認する、STC対T
60をプロットしたグラフである。
【
図6A】特定の例示的実施形態による、アクティブノイズスピーチ明瞭度阻害手法を組み込んだ音響壁アセンブリの概略図である。
【
図6B】特定の例示的実施形態による、アクティブノイズスピーチ明瞭度阻害手法を組み込んだ音響壁アセンブリの概略図である。
【
図7】特定の例示的実施形態による、アクティブスピーチ明瞭度阻害手法を組み込んだ別の音響壁アセンブリの概略図である。
【
図8A】特定の例示的実施形態による、2枚の壁と関連して使用可能なアクティブスピーチ明瞭度阻害手法を組み込んだ音響壁アセンブリの概略図である。
【
図8B】特定の例示的実施形態による、2枚の壁と関連して使用可能なアクティブスピーチ明瞭度阻害手法を組み込んだ音響壁アセンブリの概略図である。
【
図9】特定の例示的実施形態と関連して使用することができるアクティブスピーチ明瞭度阻害のための例示的な手法を示すフローチャートである。
【
図10】その頂部分及び底部分における、単一及び複数の声スピーチのフォルマント周波数をそれぞれ示す。
【
図11】異なる自然の音及び異なるスピーチ音を含む、異なるタイプの音のフォルマント周波数を示す。
【
図12】特定の例示的実施形態による、電子スピーチ明瞭度阻害装置のブロック図である。
【
図13】それぞれが子音及び母音を含む、様々な音節の周波数依存性の例を含む。
【
図14】特定の例示的実施形態による、室内の不快な残響を低減させるのを補助する電子装置のブロック図である。
【
図15】元のスピーチ信号(黒色)に重ね合わせた例示的なマスキング信号(灰色)を示すグラフである。
【
図16】特定の例示的実施形態に従って作製したサンプルから導出された試験データを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特定の例示的実施形態は、(電子的手段による)アクティブな残響音を使用してスピーチ明瞭度阻害機能を達成する音響壁アセンブリ、並びに/又は音響壁アセンブリを作製及び/若しくは使用する方法に関する。アクティブな様態で加えられる残響は、そのような壁アセンブリを備えた部屋の内側又は外側に由来する、いらだたしい音をマスキングするのを補助する。この手法は、特定の例示的実施形態において、例えば、そうしなければ潜在的に邪魔をするスピーチを不明瞭な(したがって、不快でない)ものとして知覚されるのを補助することを含む。
【0023】
特定の例示的実施形態は、低STCを有する壁にノイズマスキング及びスピーチ阻害特性を加え、好都合に、スピーチプライバシー品質を有する低コストで軽量の解決策を可能にする。特定の例示的実施形態は、例えばスピーチプライバシー及び/又はノイズマスキングを更に向上させる手段として、高STC壁で使用することができる。
【0024】
残響は、一般的な防音技術及びサウンドマスキング技術と比較したときに有利である。例えば、残響は、いくつかの事例において、スピーチ又はノイズを阻害するために必要なラウドネスだけを加える。いくつかの実施形態では、不必要な追加のノイズが全く作成されない、又は最小量だけ作成される。残響はまた、好都合に、特定の壁アセンブリ寸法及び/又はジオメトリに制限されず、低周波数及び高周波数において等しく良好に機能することができ、かつフランキングロスの存在に対して「寛大」である(そうでない場合には、例えば、骨組みの接続部、電気のコンセント、埋め込み式ライト、配管パイプ、管路、及び他の音響学的な間隙などの入射経路に沿って構造体を通過する音の振動の結果として、音の隔離を弱めることがある)。残響はまた、好都合に、監視にも抵抗する。ホワイトノイズによってマスキングされたスピーチは、(信号から、追加のランダムに生成されたノイズを除去することによって)容易に解読することができる場合があり、残響は、基本的にいかなる参照信号も存在しない(例えば、基本的に、自己参照される)ので、復号化することが困難である。更に、残響は、少なくともいくつかの事例において、元のスピーチ信号によってアクティブ化され、そのボリュームは、元の信号のボリュームに従うように自動的に調整される。残響を使用する追加的な利点は、いわゆる「ビーティング」を阻害するその能力に関連しており、これは、2つの異なる可聴周波数によって構築された潜在的にいらだたせる超低周波音である。超低周波音は、それ自体が常時聞こえるわけではないが、潜在的な逆効果を有し得る。また更に、残響は、ラウドネスを犠牲にして完全にカバーしようとするのではなく、単にスピーチの情報部分だけを阻害するだけであるので、コストの観点から有利であり得る。実際に、例えば、残響は、しばしば、ホワイトノイズを加えることよりも、必要とするエネルギーが少なくなる。
【0025】
特にスピーチに関して、特定の例示的実施形態は、基本周波数及びそれらの高調波を含むスピーチのリズムを阻害すること、重ね合わせた音節及び母音のキー音響キューをマスキングすること、脳波と不都合に共振する閾値以下の周波数を用いて、人工的に作成された超低周波音を除去すること、など、に効果的である。特定の例示的実施形態は、4~6Hzの範囲の残響を使用するが、これは、通常の英語のスピーチにおいて1秒あたりに発音される音節の数に対応する)。
【0026】
残響時間T
60は、残響と関連付けられた1つの尺度である。これは、音がその初期レベルから60デシベル減衰するのに必要とされる時間を表す。異なる目的を有する部屋は、異なる残響時間から利益を得る。
図2は、残響時間が異なることによって起こることのいくつかの例を示し、異なる残響時間に適した例示的な用途を示す図である。概して、低過ぎるT
60の値(例えば、残響が殆ど又は全くない)は、スピーチ音を「乾燥」させる傾向があり、会議室、教室、及びオフィスにおいて好ましく、一方で、高過ぎるT
60の値(例えば、多くの残響を提供する)は、スピーチをよりリッチにし、ミュージックホール、教会などにおいて使用される傾向がある。非常に高いT60値は、スピーチを不明瞭にする。
【0027】
T
60は、セイビンの式に基づいて計算することができる。
【数1】
【0028】
式中、Vは、ボリュームであり、Seは、部屋の複合有効表面積である。各壁のSeは、物理的領域と、材料毎に異なる教科書値である吸収係数とを乗算することによって計算される。以下の表は、いくつかの一般的な内部建材の吸音係数を提供する。
【表1】
【0029】
図3は、3つの異なる材料、すなわち、ガラス、ポリカーボネート、及び乾式壁で作製した壁を用いた様々な寸法の部屋において計算したT
60を表す。
【0030】
残響が有し得る効果の例を
図4A~
図4Bに示す。
図4Aは、元のスピーチパターンを表し、
図4Bは、残響が有し得る例示的な効果を示す。
図4A~
図4Bから分かるように、残響は、(とりわけ)フォルマント間の「隙間」を埋めることによってスピーチ明瞭度を阻害し、これは、一群の発生エネルギーとみなすことができる。これらのスピーチの構成単位(すなわち、母音及び特に子音)に信号を加えること、及びフォルマント間の隙間を阻害することは、スピーチを不明瞭にすること、及びスピーチの潜在的に音響心理学的な逆効果を低減させるのを補助する。
【0031】
上に示したように、特定の例示的実施形態は、残響を引き起こして、ノイズマスキングとして機能し、かつスピーチ明瞭度を阻害する役割を果たすために、アクティブ手法を使用することができる。下の説明からより明らかになるように、アクティブ手法は、壁アセンブリ又は同類のものに入射及び/又は近接する音波を阻害するために、電子部品、電気機械、及び/又は選択的に制御可能な機械装置を含むことができる。パッシブ手法は、特定の例示的実施形態において、そのような技術を補完することができる。これに関して、パッシブ手法は、例えば、そのようにして形成された壁自体などの自然特性を使用して、壁アセンブリ及び/若しくは取り付け部品内の孔の組み込み、又はその中及び/若しくは上の残響音成分の他の形成を通して、残響を引き起こすように特に設計された壁アセンブリを含むことができる。
【0032】
図3を再度参照すると、壁の残響は、主に低周波数範囲において顕著であることが分かる。したがって、いくつかの事例において、高周波範囲の残響を使用してスピーチのいらだたせる音及び情報コンテンツをマスキングするために、アクティブ手法を使用することが望ましくなり得る。
図5は、特定の例示的実施形態による、スピーチ明瞭度阻害のためのアクティブ手法を使用したときにもたらされるいくつかの利点を更に確認する、STC対T
60をプロットしたグラフである。すなわち、
図5で分かるように、低いT60値に対処するときには、スピーチ及び/又は同類のものを不明瞭にするために、高いSTCが望ましくなり得る。対照的に、電子的に作成された領域は、低いSTC値であっても、知覚されるスピーチを不明瞭にするのを補助することができる。
【0033】
図6Aは、特定の例示的実施形態による、アクティブスピーチ明瞭度阻害手法を組み込んだ音響壁アセンブリの概略図である。
図6Aに示されるように、壁600は、外側主表面600aと、内側主表面600bと、を含む。
図6Aの実施形態では、聴取者(複数可)604に対するスピーチ音602によって生じる明瞭度及び不快感の両方を低減させることが望ましい。したがって、マイクロホン又は他の受信装置606は、この音を取り込み、信号は、
図6Aのより幅の広い壁アセンブリの壁600内に埋設された、又はそれと関連して提供されるサウンドマスキング回路608まで移動する。マイクロホン606からの信号は、異なる例示的実施形態において、アナログ又はデジタル信号とすることができ、サウンドマスキング回路608は、例えば提供されるアナログ信号がデジタル的に処理される場合には、アナログ-デジタル変換器を含むことができる。特定の例示的実施形態において、マイクロホン606は、壁600内に、聴取者(複数可)604と同じ壁の側に、及び/又は同類に設置することができる。
【0034】
サウンドマスキング回路608は、マイクロホン606からそこに提供された信号が、1つ以上の所定の周波数範囲内にあるかどうか、及び/又はその中に1つ以上の所定の周波数範囲を有するノイズを含むかどうかを判定する。これに関して、サウンドマスキング回路608の一部である帯域通過フィルタ又は他のフィルタを使用することができる。1つ以上の所定の周波数範囲のうちの1つは、音響心理学的に阻害するもの、邪魔をするもの、又は不快なものと判定されるスピーチ及び/又はノイズに対応することができる。1つ以上の所定の周波数範囲のうちの1つは、2800~3200Hzの範囲に対応することができ、これは、大部分の子音の音(音をマスキングする、最も統計学的に有効な様態であり得る)及び少なくともいくつか音節の情報搬送音をマスキングするのを補助する。1つ以上の所定の周波数範囲のうちの1つは、例えば下で詳細に論じるように、スピーチの基本周波数とは対照的に、フォルマントの周波数範囲に対応することができる。
【0035】
1つ以上の所定の周波数範囲の音波の検出に応じて、サウンドマスキング回路608は、マスキング信号を作成し、スピーカ610を作動させて、例えば、音波を生成して、残響及び/又は他の効果を介して、そうでない場合は壁を通過する所定の周波数範囲内のノイズを不鮮明化する。これは、例えば、知覚されるスピーチの情報の部分を阻害し、したがって、その明瞭度を低減させることを含む。そうすることは、次に、検出音波が壁600の外側主表面600aから壁600の内側主表面600bへ移動するときに、検出音波を選択的にマスキングするのを補助し、それによって、聴取者(複数可)604に生じる不快感を低減させるのを補助する。すなわち、残響612は、特定の例示的実施形態において、知覚されるスピーチ及び/又はいらだたせるノイズを阻害するのを補助する。特定の例示的実施形態において、ノイズは、本質的に、潜在的に「オンデマンド」又は動的な様態で非定常的に遮蔽される。好都合に、この効果は、レーザーマイクロホン(例えば)が離散音を取り出すことができない、残響が自己参照しており、したがって解読がより難しい、容易に減算することができるいかなるホワイトノイズも加えられていない、などのため、監視に対する保護を補助する。
【0036】
マイクロホン606及びスピーカ610は、
図6Aにおいて壁600の両側に示されているが、特定の例示的実施形態において、それらが同じ側(例えば、聴取者(複数可)604と同じ側)に提供され得ることが理解されよう。いくつかの事例において、残響612は、特定の例示的実施形態において、聴取者(複数可)604に対してどこで生成されたか、及びどこに位置するかにかかわらず、(スピーチを含む、又は基本的にスピーチからなる)音の明瞭度を阻害する際に有用であり得る。例えば、いくつかの事例において、残響612は、音が聴取者(複数可)604によって生成される場合(例えば、そうでない場合に聴取者(複数可)604からの音を知覚することが可能であり得る他の聴取者が壁600の同じ側に存在する場合)であっても、(スピーチを含む、又は基本的にスピーチからなる)音の明瞭度を阻害する際に有用であり得る。
【0037】
残響に加えて、又はその代わりに、特定の例示的実施形態は、逆マスキングによってアクティブマスキングを実施することができる。サウンドマスキング回路608によって可能にされるノイズマスキングは、例えば標準コンボリューション、拡張コンボリューション、逆残響、遅延制御された残響、及び/又は同類のものなどの技術を使用するアルゴリズム(例えば、残響アルゴリズム)に従って実行することができる。サウンドマスキング回路608は、特定の例示的実施形態において、入来ノイズ602を処理し、アルゴリズムからの出力に従ってスピーカ610を制御することができる。特定の例示的実施形態において、アルゴリズムは、時間領域における入射ノイズの知覚されるラウドネスを変化させることができる。特定の例示的実施形態と関連して使用することができる例示的なアルゴリズムに関する詳細を下に提供する。
【0038】
壁600は、例えば、乾式壁、ガラス、ポリカーボネート、石膏、及び/又は同類のもの、のうちの1つ以上のシートなどの、任意の適切な材料から形成することができる。特定の例示的実施形態において、壁又は壁を構成する材料(複数可)は、125Hzにおいて0.03~0.3、250Hzにおいて0.03~0.6、500Hzにおいて0.03~0.6Hz、1000Hzにおいて0.03~0.9、2000Hzにおいて0.02~0.9、及び4000Hzにおいて0.02~0.8、の範囲の吸音係数を含む。これに関して、
図6Aは、平面図又は断面図のいずれかであるとみなすことができる。前者(すなわち、平面図)の場合、スピーカ610及び/又はサウンドマスキング回路608は、壁600の上に(例えば、天井内に、及び下部、例えば上部スラブに)、又は壁600の側面に提供することができる。特定の例示的実施形態において、サウンドマスキング回路608は、壁600の側面に接続されるが、(例えば、天井内、モールディングの後ろ、などに隠すことによって)視界から見えないようにすることができる。同じことがマイクロホン606にもあてはまる。スピーカ610は、壁600の頂部及び/又は側面に近接して残響612を生成することができ、壁の中に、壁自体の、又は壁に近接して残響を引き起こす。
【0039】
断面図に関して、外側主表面600a及び内側主表面600bは、例えば金属製及び/又は木製の鋲又は同類のものによって分離された別々の乾式壁面とすることができる。スピーカ610及び/又はサウンドマスキング回路608は、壁600の上に(例えば、天井内に、及び下部、例えば上部スラブに)、壁600の側面に、又は外側主表面600aと内側主表面600bとの間の空隙内に提供することができる。上記と同様に、サウンドマスキング回路608は、壁600の側面に接続されるが、(例えば、天井内、モールディングの後ろ、外側主表面600aと内側主表面600bとの間の空隙内、などに隠すことによって)視界から見えないようにすることができる。同じことがマイクロホン606にもあてはまる。スピーカ610は、壁600の頂部及び/又は側面に近接して、壁600の側面内、などで残響612を生成することができ、それによって、壁の中に、壁自体に、又は壁に近接して残響を引き起こす。したがって、特定の例示的実施形態において、壁600は、実質的に平行に離間された第1及び第2の基板(ガラス及び/又は同類のもの、又はそれを含む)を備え、スピーカ610及びサウンドマスキング回路608がそれらの間に位置付けられる、と言うことができる。
【0040】
上で暗に言及したように、壁は、ガラスであってもよく、又はガラスを含んでもよい。すなわち、特定の実施形態は、音響壁アセンブリと関連して使用されるガラス壁を対象とすることができる。ガラス壁は、1枚、2枚、3枚、又は別の枚数のガラスのシートを含むことができる。ガラスは、標準的なフロートガラス、倍強度ガラス、強化ガラス、及び/又は積層ガラスであってもよい。特定の例示的実施形態において、壁は、断熱ガラス(insulated glass、IG)ユニット、真空断熱ガラス(vacuum insulated glass、VIG)ユニット、及び/又は同類のものであってもよく、又はそれを含んでもよい。IGユニットは、実質的に平行に離間された第1及び第2の基板を含むことができ、周辺縁部を囲んで形成された縁部シールを有し、また、基板間の空洞には、空気の有無にかかわらず、任意選択で不活性ガス(例えば、Ar、Xe、及び/又は同類のもの)が充填される。VIGユニットは、実質的に平行に離間された第1及び第2の基板と、スペーサと、を含むことができ、周辺縁部を囲んで形成された縁部シールを有し、また、基板間の空洞は、大気未満の圧力に排気される。いくつかの場合では、IGユニット及び/又はVIGユニットの周囲に骨組みを提供することができ、その骨組みは、音響壁アセンブリの一部とすることができる。特定の例示的実施形態では、他の透明な材料が使用され得る。特定の例示的実施形態において、ガラスの自然に高い音反射係数は、例えば、残響及び/又は他のノイズマスキング効果を引き起こすときに有利であり得る。
【0041】
図6Bは、第1のスピーカ610a及び/又は第2のスピーカ610bを介して入射ノイズ602a、602bを登録し、かつ補償することができ、それによって、壁600’の両側で、聴取者604a及び604bの不快感を低減させることができるように、第1のマイクロホン606a及び第2のマイクロホン606bが提供されたことを除いて、
図6Aに類似する。特定の例示的実施形態において、第1のスピーカ610a及び第2のスピーカ610bは、互いに独立して制御して、例えば、異なる残響612a及び612bを出力すること、異なるラウドネスレベルで同じ残響効果を出力すること、第1のスピーカ610aに第1のマイクロホン606aから受信される音に応答させ、一方で、第2のスピーカ610bをオフのままにし、及び/又は入射ノイズ602aに応答させない、その逆を行わせること、などを行うことができる。特定の例示的実施形態において、第1のスピーカ610a及び第2のスピーカ610bは、協働するように制御して、例えば、同じ残響効果を出力することができる。上に示したように、特定の例示的実施形態において、サウンドマスキング回路608’は、例えば壁600’のどちら側からノイズが来ているかに基づいて、スピーカ610a及び610bに対して同じ又は異なる動作を引き起こすことができる。これに関して、サウンドマスキング回路608’は、例えば強度及び/又は同類のものに基づいて、壁の面600’のどちら側から音が来ているかを判定することが可能であり得る。残響612a及び612bの有効性は、他のマイクロホンによって取り込み、サウンドマスキング回路608’にフィードバックして、例えばノイズ隠蔽効果を向上させることができる。異なる実施形態では、第1のマイクロホン606a及び第2のマイクロホン606bのうちの一方又は両方を壁600’の内面又は外面に提供することができる。特定の例示的実施形態では、第1のマイクロホン606a及び第2のマイクロホン606bのうちの一方を壁600’の外面に形成することができ、第1のマイクロホン606a及び第2のマイクロホン606bのうちの他方を壁600の内面に形成することができる。異なる実施形態では、第1のスピーカ610a及び第2のスピーカ610bのうちの一方又は両方を壁600’内面又は外面に提供することができる。特定の例示的実施形態では、第1のスピーカ610a及び第2のスピーカ610bのうちの一方を壁の外面600’に形成することができ、スピーカ610a及び610bのうちの他方を壁の内面600に形成することができる。
図6Bの例において、(いくつかの事例では、単一のマイクロホンと関連して同じ又は類似する機能を実現することが可能であり得ることが理解されるであろうが)、残響は「両方向において」にアクティブに機能すると言うことができる。
【0042】
図7は、特定の例示的実施形態による、アクティブスピーチ明瞭度阻害手法を組み込んだ別の音響壁アセンブリの概略図である。
図7は、「静かな」又は「安全な」部屋の外側を形成した壁700を示す。部屋の内部からのノイズ702は、マイクロホン606’によって検出される。サウンドマスキング回路608’’は、マイクロホン606’から信号を受信し、スピーカ710を起動し、これが、壁700内に、その上に、又はそれに近接して残響712a~712dを引き起こす。残響712a~712dは、特定の例示的実施形態において、壁全体700の全体を通して実質的に均一であり、よって、部屋の周囲の(及び壁700の周囲の)聴取者704a~704dは、内部から音及び/又は不快感を知覚することができない。
図7の例は、特定の例示的実施形態において、部屋の内部に1つ以上のマイクロホンを含むように修正され得ることが理解されよう。加えて又は代替的に、
図7の例は、例えば
図6Bに関連して説明したものに類似する様態で、部屋の外側から生じる音を検出及び補償するために、1つ以上のマイクロホンを含むように修正され得ることが理解されよう。部屋の外側から生じる音を受信するために提供される1つ以上のマイクロホンは、それらの配置にかかわらず、
図7を、外側からの音が補償又はマスキングされたプライベート又は静かな部屋にする際に有用であり得る。
【0043】
特定の実施形態では、1つ以上のスピーカが壁700の外側に位置付けられ得る。例えば、スピーカは、例えば、ノイズをマスキングする、スピーチの明瞭度を阻害する、などのために、壁700の1つ、2つ、又はそれ以上の側部に、例えば、聴取者(複数可)704a~704dの数人又は全員が位置付けられ得る領域内に、又は近接して位置付けることができる。そのような事例において、残響効果712a~712b及び/又は同類のものは、壁700の外側で生成され得る。加えて又は代替的に、例えば潜在的に阻害的な音が部屋内、部屋の外側、又は部屋内及びその外側の両方で生成される場合には、1つ以上のスピーカを部屋内に位置付けて、その中の音を阻害することができる。
【0044】
図8A~
図8Bは、特定の例示的実施形態による、2枚の壁と関連して使用可能なアクティブスピーチ明瞭度阻害手法を組み込んだ音響壁アセンブリの概略図である。
図8A~
図8Bは、
図6A~
図6Bに類似する。しかしながら、単一の壁の外面及び内面を有するのではなく、外壁800a及び内壁800bが提供される。ノイズマスキング回路608’’及び/又はスピーカ810は、外壁800a及び内壁800bによって画定された空洞800内に配置することができ、これらは協働して、空洞800内に、その上に、又はそれに近接して残響812を作成することができる。特定の例示的実施形態において、スピーカ810は、例えば
図8Aに示されるように、聴取者(複数可)604に近接して位置付けられ得る。同様に、特定の例示的実施形態において、スピーカ810a~810bは、例えば
図8Bに示されるように、聴取者(複数可)604a~604bに近接して位置付けられて、残響効果812a及び812bを作成することができる。
図6A~
図6Bに関連して上で論じた修正(サウンド制御回路及びスピーカの位置関係及び/又は機能を含む)はまた、
図8A~
図8Bと関連して行うこともできる。
【0045】
壁の横方向寸法は、大部分がスピーチ及びそれらの低高調波の基本スペクトル領域に影響を及ぼす場合があり、一方で、壁の2枚のシート間の距離は、主に高周波成分及びそれらの倍音に影響を及ぼすと考えられる。ガラス壁の例示的な一実施形態は、10フィート×12フィートの寸法を有し、好ましくは1~20cmの範囲、より好ましくは7~17cmの範囲の2枚のガラスシート間の間隔を有し、及び10cmの例示的な分離を有する。
【0046】
図9は、特定の例示的実施形態と関連して使用することができるアクティブスピーチ明瞭度阻害のための例示的な手法を示すフローチャートである。
図9は、壁又は壁アセンブリが既に提供されていると仮定する(工程S902)。入射音波を検出する(工程S904)。検出した音波が(工程S906において判定したときに)対象の周波数範囲内でない、又はそれを含まない場合、過程は、単に工程S904に戻って、更なる入射音波を検出するのを待つ。一方で、検出した音波が(工程S906において判定したときに)対象の周波数範囲内である、又はそれを含む場合は、例えば下で更に詳細に述べられる例示的なアルゴリズムに従って(工程S908)、スピーカを使用して、スピーチ明瞭度阻害信号を生成する。したがって、この挙動は、例えば、常時「オン」ではないシステムを通して、スピーチ明瞭度の阻害を含む、ノイズの動的又は「オンデマンド」マスキングを提供する。音が(工程S910において判定したときに)終了していない場合、過程は、工程S908に戻り、スピーチ明瞭度阻害信号を更に生成する。一方、音が終了した場合は、入射に関する情報のログを取り(ステップS912)、過程は、ステップS904に戻り、更なる入射音波が検出されるのを待つことができる。
【0047】
工程S912でログを取ることは、例えば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体及び/又は同類のもの(例えば、フラッシュメモリ、USBドライブ、RAMなど)に記憶されたデータファイル内に記録を作成することを含むことができる。記録は、イベントの開始時間及び停止時間を示すタイムスタンプ、並びに場所識別子(例えば、例えば本明細書で開示される技術を実施する複数の壁が存在する場合に音が検出された壁、例えば所与の壁内に複数のマイクロホンが存在する場合に音が検出されたマイクロホン、などを指定すること)を含むことができる。周波数範囲(複数可)に関する情報、並びに/又は検出及び/若しくは生成された信号もまた、記録に記憶することができる。特定の例示的実施形態において、回路は、検出及び/又は生成した音のデジタル又は他の表現を、例えば記録に、又は関連付けられたデータファイルに記憶することができる。その結果、スピーチ又は他のノイズを記録することができ、潜在的に、潜在的な以降の分析のために対話全体が捕捉され、アーカイブされる。例えば、サウンドマスキング回路(例えば)は、記録装置として(例えば、防犯カメラ、盗聴装置、音統計監視装置、及び/又は同類のものと同様に)使用することができる。特定の例示的実施形態において、情報は、例えば、ノイズイベント及び/又は会話の再生、その分析(例えば、どのタイプのノイズが最も多く記録されたか、どの時刻にノイズが最も多かったか、誰が最も多くの種類の異なるノイズを作成したか、などを明らかにするのを補助する)などの、潜在的なフォローアップアクションのために、リモートコンピュータ端末又は同類のものに、ローカルに記憶すること、及び/又は伝送することができる。伝送は、有線接続(例えば、シリアル、USB、Ethernet、又は他のケーブルを通じた伝送を含む)、無線(例えば、Wi-Fi、Bluetooth、インターネット、及び/又は同類のものによる)を通して、物理媒体(フラッシュドライブ、USBドライブなど)を除去することによって達成することができる。情報は、異なる例示的実施形態において、周期的に及び/又はオンデマンドで伝送することができる。
【0048】
特定の例示的実施形態において、サウンドマスキング回路は、入射ノイズが既知のパターン又はタイプに対応するかどうかを判定するようにプログラムすることができる。例えば、不快であるが、アラーム音、サイレン、及び/又は同類のものは、サウンドマスキング回路によって検出することができ、安全、情報、及び/又は他の目的のために、壁アセンブリを通過することを可能にすることができる。
【0049】
特定の例示的実施形態において、サウンドマスキング回路は、(例えば、残響及び/又は同類のもの、の使用を通しての)音(例えば、スピーチ)ディスラプタ、並びにサウンドスゥイートナーの両方として動作するようにプログラミングすることができる。後者に関して、サウンドマスキング回路は、潜在的に不快なノイズをマスキングするのを、及び/又はスピーチの明瞭度を阻害するのを補助するために、残響及び/又は心地良い音を生成することができる。心地良い音は、自然の音(例えば、海の音)、動物の音(例えば、イルカ)、落ち着いた音、及び/又は同類のものであり得る。これらの音は、サウンドマスキング回路によってアクセス可能なデータストアに記憶することができる。適切なときに(例えば、上で説明したように残響を引き起こすときに)、サウンドマスキング回路は、サウンドスゥイートナーを検索し、スピーカ又は同類のもの(例えば、特定の例示的実施形態において、空気ポンプとして使用されるものと同じ又は異なるスピーカであり得る)への出力として提供することができる。
【0050】
例えば音響コントラストを含む残響誘導共振器としての役割を果たすように壁自体を構造化することができるので、特定の例示的実施形態において、ノイズ阻害及び/又は消去のためにパッシブ手法を使用することができることが理解されよう。これは、音響壁アセンブリ内に形成された1つ以上(好ましくは、2つ以上)の開口部、スリット、及び/又は同類のものを有し、それによって、壁自体の自然特性を使用して、所望のタイプの残響効果を作成することによって達成することができる。これらの特徴は、音響壁アセンブリの片側に形成することができ、壁アセンブリの音響効果に方向特性を加える。例えば、効果を指向的にするために、及び残響の効果が壁の外側でより顕著になるように、少なくとも1つの開口部を二重枠壁の外側の枠に作製することができる。別の例として、少なくとも1つの開口部を二重枠壁の内側の枠に作製することができる。これは、ミュージックホールのようないくつかの用途について有利であり得、これは、音をより豊かにする追加の残響音から利益を得ることができる。
【0051】
特定の例示的実施形態では、追加の残響要素を壁に取り付けることができる。サウンドマスキング残響誘導要素(複数可)は、単一又は部分的な壁との直接接触において提供することができ、よって、壁は、特定の例示的実施形態において、音源として作用することができる。特定の例示的実施形態において、サウンドマスキング残響誘導要素(複数可)は、壁アセンブリ内の壁の間に提供することができる。サウンドマスキングは、ノイズ/信号コントラストの増加を好都合にもたらし、これは、単一又は部分的な壁の後ろで知覚されるスピーチをより理解し難くし、かついらだたしい音をより不快でなくする。
【0052】
特定の例示的実施形態において、第1の特徴のセットは、内側枠の中及び/又は上に形成することができ、第2の特徴のセットは、外側枠の中及び/又は上に形成することができ、例えば、一部の不快な又は阻害音を維持し、「内側の」音響を改善する。特定の例示的実施形態において、特徴の複数のセットは、2枠壁アセンブリのうちの一方又は両方の枠の中及び/又は上に形成することができる、特徴の各セットは、異なる範囲が除去されること、及び/又は強調されることを標的とする。
【0053】
壁アセンブリの他の自然特性(サイズ、隣接する直立壁の間の隙間、などを含む)もまた、例えば上で説明したような、望ましい残響効果を引き起こすように選択することができる。
【0054】
上で暗に言及したように、これらのよりパッシブな技術を、上で論じたアクティブな技術に加えて、例えば単一壁又は二壁の音響壁アセンブリと共に、使用することができることが理解されよう。
【0055】
したがって、壁アセンブリは、特別に設計された基本共振周波数を有する音共振器の様態で作製することができる。上記のように、壁を構築する際には、任意の適切な材料を使用することができる。例えば、ガラスは、自然に良好な共振器であるので、特定の例示的実施形態は、基本周波数の整数倍である様々な共振高調波を利用することが可能である。材料にかかわらず、特徴を介した入来音を調整することは、不明瞭に及び/又はより不快でないようにするために、スピーチ及びノイズの周波数範囲を阻害するのを補助することができる。例えば、スピーチなどを処理するときに、子音又はフォルマントと関連付けられたそれらの周波数範囲を標的にすることが可能である。更に、そのような壁アセンブリは、選択的に音を阻害するように設計されているので、特定の例示的実施形態において、壁アセンブリ内で薄いガラス及び長持ちする硬質ジョイントを使用することができる。この構築は、好都合に設計全体をより堅牢で信頼性の高いものにすることができる。ガラスが使用されるときに、漏出などを回避することによって音共振特性の有効性を最大にするのを補助するなどのために、高い許容度が望ましくなり得る。
【0056】
本明細書で説明される壁は、部分的な壁、例えば分離された領域の間に開放空間を残す壁であり得る。すなわち、音響壁及び音響壁アセンブリは、異なる例において全高又は部分高であり得る。また、単一又は二重パネル壁も使用することができる。更に、特定の例示的実施形態は、壁及び/又は部屋と関連して説明されているが、本明細書で説明される技術は、(例えば、カーテンが2つの患者領域を分離する病室、ロビー、自動車の前席と後席との間、飛行機の異なる列又は領域の間、などにおいて)画定パーティション又は構造的画定中断部が全く又は殆ど存在しない、より一般的な領域に関連して使用することができることが理解されよう。
【0057】
知覚されるスピーチ明瞭度を低減させるために、パッシブ又はアクティブ(例えば、コンピュータ生成)残響が譲受人によって使用されているが、更なる改良が依然として可能であることが分かっている。例えば、人間の脳は、早期到来信号に優先度を与えることによって反響音を処理するように適合される。加えて、いわゆる音素修復は、欠落した、又は重なり合った音の情報を脳が復元するのを補助することが知られている。これらの2つの現象は、同じ時間遅延複製を除去し、元のスピーチ信号の明瞭度を保存することがある。その結果、これは、直接的な残響の有効性を危殆化する場合がある。下で説明する例示的実施形態では、これらの課題を考慮した、知覚されるスピーチの明瞭度を阻害し、かつ不快感を低減させる、別の潜在的により効果的な方法を提示する。
【0058】
図9の工程S908、及びスピーチ明瞭度阻害周波数をどのように生成することができるのかを再度参照すると、特定の例示的実施形態は、元のスピーチの上に適用されるマスキング信号に関する動的手法を使用する。この手法は、以下の手法、すなわち、(1)一定の時間遅延、(2)時間的に変動する時間遅延(時間的整相)、(3)振幅変調、及び(4)スペクトルフィルタ、のうちの1つ、又はいずれかの組み合わせを使用する。これらの効果の寄与は、特定のニーズ又は要求に応じて調整することができる。例えば、振幅増加の変化は、特定の静かで落ち着いたレベルであるべきと思われる環境(例えば、病院の回復室など)では最小に保つことができ、一方で、振幅増加の変化は、多くのノイズがあると思われる領域(例えば、病院の待機室、警察署の「ブルペン」、など)ではより大きくすることができる。
【0059】
上で述べた手法は、ロバストなスピーチ阻害を生じることが分かっている。しかしながら、知覚されるサウンドラウドネスの顕著な増加が起こる場合があり、聴取者は、ラウドネスの増加によって不快感を経験する場合がある。したがって、そのラウドネス及び潜在的な不快感を大幅に加えることのなく元のスピーチを阻害するために、更に技術を向上させることが望ましいことが理解されよう。
【0060】
人間は、複製音を(それらの形状が類似している限り)元の音の一部として解釈し、したがって、情報コンテンツを効果的に無視し、ラウドネスの増加のみに集中する傾向がある。これは、先行音効果として知られている。しかしながら、複製信号は、情報コンテンツを阻害し、先行音効果の影響を低減させるのを補助するように、更に修正することができる。したがって、特定の例示的実施形態は、マスキングスピーチ信号を選択的に阻害することによって、上で説明した技術を改善する。下記からより明らかになるように、この選択的な阻害は、スピーチのフォルマント、音素、協和音、及び/又は他の構成単位に関連して行うことができる。
【0061】
特定の例示的実施形態は、数ヘルツの範囲の残響遅延の発振周波数を使用する。この範囲は、通常の英語のスピーチにおける1秒あたりの音節数に対応するので有利である。その結果、特定の例示的実施形態は、相当な量のノイズを加えることなく、スピーチ明瞭度を大幅に阻害することを可能にする。すなわち、スピーチの情報搬送周波数は、「不快感」部分と異なる周波数範囲内にあり、よって、前者を標的にすることは、音響マスキングによって生じる追加のラウドネスの少ない犠牲でスピーチコンテンツ阻害を行うことを可能にすることが認識されている。
【0062】
特定の例示的実施形態において、スピーチ明瞭度阻害マスキング信号は、元のスピーチ信号の一般的なパターンをとり得る。特定の例示的実施形態において、マスキング信号は、元の信号に対して遅延させることができ、及び/又は(例えば、群衆ノイズの知覚を作り出すために)複数の予め録音した声をスピーチ明瞭度阻害信号に加えることができる。特定の例示的実施形態において、他の音(例えば、上で説明した及び/若しくは他の自然の音、サウンド「スゥイートナー」、並びに/又は同類のもの)を加えて、スピーチ明瞭度阻害効果を更に向上させることができる。
【0063】
図10は、その頂部分及び底部分における、単一及び複数の声のスピーチのフォルマント周波数をそれぞれ示す。下側のグラフは、特定の例示的実施形態において、検出したスピーチの上に加えて、例えばスピーチなどの明瞭度を阻害することができることが理解されよう。
【0064】
図11は、異なる自然音及び異なるスピーチ音を含む、異なるタイプの音のフォルマント周波数を示しており、前者は、例えば上で述べたように、サウンドスゥイートナー又は同類のものとして後者に加えることができる。
【0065】
動作に際して、スピーチ明瞭度を阻害するための方法は、マイクロホン又は他の聴取装置を介して、元のスピーチ信号を受信することを含む。元のスピーチ信号は、複数のフォルマント(スピーチ明瞭度のビルディングブロック)を含み、人間の聴取者によって知覚できる特定の基本的な明瞭度レベルを有する。元のスピーチ信号は、(例えば、ハードウェアプロセッサ又は他の制御回路を使用して)元のスピーチ信号を含むフォルマントと関連付けられた周波数範囲を識別するように処理される。次いで、様々なパラメータを使用して、本質的にスピーチ信号を改変し、明瞭度阻害マスキング信号を作製することができる。例えば、明瞭度阻害信号は、元のスピーチ信号を含むフォルマントと同じ周波数範囲内にある明瞭度阻害フォルマントを含むように生成することができ、結果として生じる知覚されるスピーチの明瞭度レベルは、生成された明瞭度阻害フォルマントを含む明瞭度阻害信号を、スピーカを通して出力することによって低減させることができる。明瞭度阻害フォルマントは、いくつかの事例において、0.02~8Hzの周波数範囲内で生成される。いくつかの事例において、明瞭度阻害フォルマントは、2~6Hz(例えば、4Hz)の周波数で生成される。
【0066】
特定の例示的実施形態において、明瞭度阻害信号は、例えば、明瞭度阻害マスキング信号が、元のスピーチ信号の一般的なパターンに従うように、元のスピーチ信号の時間遅延複製であるように、元の信号の時間位相複製であるように、元のスピーチ信号の振幅変調バージョンであるように、及び/又は同類のものであるように、元のスピーチ信号に対して時間遅延させることができる。0~150msの定時間遅延範囲が好ましく、40~120msがより好ましく、60~110msがより好ましい。いくつかの事例では、80msの例示的な遅延が最適な場合があり、他の事例では、平均80msの遅延が最適な場合がある。特定の例示的実施形態において、追加的又は代替的に、例えば時間遅延を時間的に発振させるように、動的残響を使用することができる。
【0067】
特定の例示的実施形態では、追加的又は代替的に、元のスピーチ信号に対する利得を調整することができる。更に、利得はまた、時間的にも変調することができる。例えば、明瞭度阻害マスキング信号は、明瞭度阻害信号のラウドネスを時間的に発振させるように生成することができる。好ましくは、利得(元のスピーチ信号と合計した、変調した明瞭度阻害信号に対応する)は、例えば、多過ぎるラウドネス又は阻害を作り出すことによって、これが負の音響心理学的な影響を作り出すので、大き過ぎないことが好ましい。特定の例示的実施形態において、適用される利得は、対応する元のスピーチ信号の最大で2倍である。特定の例示的実施形態において、利得は、0.05~0.25%、より好ましくは0.10~0.20%であるか、又はその平均であり、例えば、0.15%である。
【0068】
特定の例示的実施形態において、時間遅延及び/又は振幅調整は、1つ又は複数の所与の周波数で変調することができる。例えば、時間遅延及び/又は振幅調整は、1~10Hzの、好ましくは2~6Hzの、又はその平均の、及び一例として4Hzの発振周波数で変調することができる。変調は、異なる例示的実施形態において、時間遅延及び振幅調整について同じでも異なってもよいことが理解されよう。遅延及び/又は振幅変調は、特定の例示的実施形態において、1つ以上のアルゴリズムに従って提供することができる。特定の例示的実施形態において、遅延及び/又は振幅変調は、ガウス形、ランダム、波形(例えば、正弦波、方形波など)に従うもの、階段状、事前定義パターン(例えば、増加し、次いで減少する、周波数発振など)に従うもの、アルゴリズム適用の結果、及び/又は同類のものであり得る。特定の例示的実施形態では、例えば、40~400Hz、より好ましくは、60~300Hz、及び80~230Hの動的時間遅延変調を使用することができる。
【0069】
特定の例示的実施形態は、スピーカを通して、生成された明瞭度阻害フォルマントを含む明瞭度阻害信号と一緒に、追加のマスキングサウンド信号を出力することを更に含むことができる。例えば、明瞭度阻害信号は、予め録音した複数の声の混合物を含むように生成することができる。加えて、又は代替的に、サウンドスゥイートナー又は同類のものを使用することができる。
【0070】
この機能は、特定の例示的実施形態において、電子装置に組み込むことができる。
図12は、特定の例示的実施形態による、電子スピーチ明瞭度阻害装置のブロック図である。電子装置は、これらの例示的な技術を実施する、スピーチ602を受信するマイクロホン606と、処理回路1202(例えば、プログラムされたマイクロチップ又はアナログ装置)、電源(図示せず)と、スピーカ(複数可)810と、を含むことができ、又はこれらに結合することができる。処理回路1202は、マイクロホン606から元のスピーチ信号を受信し、(例えば、マイクロホンがアナログである場合)任意選択のアナログ-デジタル変換器1204は、元のスピーチ信号をデジタル表現に変換する。デジタル化された信号は、時間遅延発振器1206に送信され、時間遅延パターンを使用して元のスピーチ信号の複製信号を作成し、発振時間遅延を通して残響が加えられるように修正される。信号は、次いで、振幅調整パターンを使用して信号を更に修正する振幅発振器1208によって更に修正される。したがって、修正された信号は、上で述べたように、出力のためのスピーカ810に提供される。上で述べたように、時間遅延及び振幅調整に使用される発振のタイプは、同じでも異なってもよい。同様に、これらの要素を含むシステムは、例えばスピーチの内容を隠すために、壁に、確定された領域内(開放領域を含む)に、及び/又は同類のものに組み込むこと、又は提供することができる。
【0071】
上で暗に言及したように、特定の例示的実施形態において、スピーチの他の構成単位を標的にすることができる。例えば、スピーチの基本周波数は、85Hz~250Hzで生じることが知られている。この低周波数の「基本チャネル」の上には、スピーチの追加の構成単位が存在し、これは、(a)主に、声の「パワー」を決定するエネルギーフォルマントの役割を果たす「不活性な」母音と、(b)情報搬送する子音と、を含む。
【0072】
子音は、エネルギーを殆ど含まないが、明瞭度(少なくとも英語及び他の言語に関して)、例えば意味特徴的な音韻単位の形態のもの、すなわち音素(明瞭度及びラウドネスの両方の場所によって画定される)、及び周波数依存の音調素に必須であると考えられる。また、いくつかの事例では、期間依存的の長さ要素などの他のスピーチの構成単位も標的にされ得る。母音は、350Hz~2kHzで生じ、主に、スピーチのボリューム搬送ブロックである。スペクトルフィルタの補助を用いて、低ボリュームの情報運搬子音を標的にし、高ボリュームの母音をそのままの状態にすることは、スピーチ阻害中の不快感を更に低減させるのを補助することができる。
【0073】
様々な子音は、声腔の狭窄の程度及び明瞭度のタイミングが異なる。それでも、それらの殆どは、1.5kHz~4kHzの周波数範囲内にある。これに関して、
図13は、それぞれが子音及び母音を含む、様々な音節の周波数依存性の例を含む。
【0074】
主要な子音の開始フォルマント遷移は、その後の母音に応じて異なるが、それらの音素の解釈は不変である。この知識を使用して、いくつかの事例において同じく主な情報搬送スピーチ単位とみなすことができる子音の閾値周波数に基づいて、スピーチ阻害を引き起こすことができる。
【0075】
したがって、特定の例示的実施形態において、マスキング信号の生成は、大部分の母音の周波数よりも高いが、大部分の子音の周波数よりも低い閾値周波数(例えば、約1.5kHz)に到達することに基づいて引き起こすことができる。これに関して、特定の例示的実施形態では、1.2~2kHzの予め設定された周波数範囲が効果的であり得る。この手法は、大部分の母音の複製を防止するのを補助することができ、これは、情報負荷を殆ど搬送しないが、不必要なラウドネスに寄与し、代わりに、情報搬送子音に複製信号を集中させるのを補助することができる。これに関しては、例えば、高域通過音響フィルタを使用することができる。
図12のブロック図は、例えばそのような高域通過音響フィルタが時間遅延発振器1206の前に提供されるのであれば、そのような例示的な技術と関連して使用することができる。
【0076】
特定の例示的実施形態のマスキング信号は、大部分の子音の有声開始時間(voice onset time、VOT)に対応する20ms~95msの遅延を提供するような方法で発振(時間的に整相)させることができる。VOTは、「停止」子音の放出と有声開始との間の時間である。1~10Hzの範囲の時間的整相の変調周波数が有利であり得、2~10Hzがより有利であり、2~6Hzが更に有利であり、4Hzは、最適であると考えられる1つの例である。振幅変調もまた、特定の例示的実施形態において実施することができる。これに関して、元の信号の10~100%、及びより好ましくは元の信号の40~90%の振幅変調が有利であることが分かっている。
【0077】
以下、内部残響を考慮した特定の例示的な技術を説明する。上で述べたように、異なる部屋は、潜在的に異なる音響特性を有し、部屋内で計測される潜在的に異なるT60値を含む。高いT60値を有する部屋では、残響が多過ぎることが問題になり得る。例えば、ガラス壁又は窓を組み込んだ部屋は、部屋内のスピーチの高い明瞭度に関しては、より大きい問題を提示し得る。高い音反射面からの内部残響は、マスキング信号として作用する。異なる部屋(ガラスを有する部屋を含む)は、その中に不快な内部音響残響、特に低周波範囲(例えば、20~200Hz)を有することが分かっている。部屋の内部(例えば、様々な吸音面を使用することを含む)の不快な残響を処理するのを補助するいくつかの利用可能な解決策が存在するが、これらの解決策は、ガラスの透明度を損なう傾向があり、かつ相当なコストを加える傾向がある。
【0078】
特定の例示的実施形態は、追加的又は代替的に、低周波範囲の残響によって生じる部屋又は領域内の不快な音響残響を低減させる(あるときには、除去さえする)ための音響解決策を提供する。例えば、特定の例示的実施形態は、等化された(又は実質的に等化された)ラウドネスを有するが、スペクトルの下部分に不快な残響を含まない、元のスピーチ信号の複製を生成する。
【0079】
図14は、特定の例示的実施形態による、室内の不快な残響を低減させるのを補助する電子装置のブロック図である。電子装置は、これらの例示的な技術を実施する、スピーチ602を受信するマイクロホン606と、処理回路1402(例えば、プログラムされたマイクロチップ又はアナログ装置)、電源(図示せず)と、スピーカ(複数可)810と、を含むことができ、又はこれらに結合することができる。処理回路1402は、マイクロホン606から元のスピーチ信号を受信し、(例えば、マイクロホンがアナログである場合)任意選択のアナログ-デジタル変換器1404は、元のスピーチ信号をデジタル表現に変換する。デジタル化された信号は、部屋の特性に基づいてプログラム可能であるバンドパスフィルタ1406に送信される。すなわち、部屋固有の較正プロセス中に、電子装置が検出される部屋の残響モード。典型的に、これらの残響モードは、20~200Hzの範囲内に3~4つの波節及び波腹の対として存在し(したがって定常波を形成し)、例えば、部屋のジオメトリ、壁材料(複数可)、床の敷物、天井の高さ/表面材料などを含む、部屋の特性に依存する。これらの及び/又は他の音響パラメータは、爽快な音が作成される拍手又はピング方法を使用して測定することができ、部屋の音響特性は、自動的に記録され、不快な残響に対応する波節(複数可)及び/又は波腹(複数可)の強度及びスペクトル位置(複数可)の位置を特定することを可能にする。特定の例示的実施形態において、これらのパラメータは、処理回路1402の、又はそれがアクセス可能なメモリの場所に記憶すること、その処理回路によって読み出すこと、及びバンドパスフィルタ1406を制御するために使用することができる。バンドパスフィルタ1406は、より高い周波数が通過することを可能にするが、例えば、スピーカ810を介した出力として、バンドパスフィルタ1406によって通過されない低周波の残響モードを本質的にマスキングする、より高い周波数の強度値を増加させることによって、増幅器1408が、同じ又は実質的に同じ知覚される総ラウドネスを有する様態で、バンドパスされた信号を増幅することを知っている。
【0080】
このようにして、新しい複合音のレベルが元の音及び不快な残響の複合レベルに等しく又は実質的に等しくなるように、元のスピーチに対応する音響パターンの修正したバージョンが生成される。しかしながら、求められていない残響は、音響パターンの修正したバージョンにおいて結果として生じたスペクトルから本質的に「切り取られる」ので、その中にはスパイクが存在しない。
【0081】
本質的に切り取られた信号の形状は、方形、正弦波パターン、ガウス形、及び/又は同類のものであり得ることが理解されよう。特定の例示的実施形態において、本質的に切り取られた信号の形状は、残響波形の形状にマッチするように、より正確に調整することができる。いくつかの事例では、単一の基本的な残響モードを切り取ることができる、一方で、他の事例では、より広い周波数範囲が除去される。これに関して、特定の例示的実施形態では、急激なカットオフを生じさせるデルタ関数を使用することができる。
【0082】
図14は、増幅器1408の上流にバンドパスフィルタ1406を示しているが、これらの構成要素の順序は、特定の例示的実施形態において逆になり得ることが理解されよう。また、求められていない残響を削除する役割を果たす処理回路1402は、特定の例示的実施形態において、部屋の外側のスピーチ明瞭度を阻害する役割を果たす処理回路1202の下流に配置され得ることも理解されよう。異なる例示的実施形態は、求められていない残響を削除する役割を果たす処理回路1402、及び(例えば、単一チップ上の)単一の装置においてスピーチ明瞭度を阻害するため役割を果たす処理回路1202の機能を並置することができる。部屋又は領域内の残響を抑制する電子構成要素は、異なる例示的実施形態において、部屋又は領域の外側の明瞭度を抑制することを意図した構成要素と異なっていても同じであってもよいことが理解されよう。
【0083】
図15は、元のスピーチ信号(黒色)に重ね合わせた例示的なマスキング信号(灰色)を示すグラフである。クローンは、(他の例示的実施形態では、他のサンプリングレートを使用することができるが)8kHzの例示的なサンプリングレートで記録した。
図15は、スピーチをどのように阻害することができるかに関する例を1つだけ示していることが理解されよう。すなわち、このグラフにおいて示される及び/又は暗示される時間遅延、振幅変調などは、明示的に主張されていない限り、一例として提供される。
【0084】
試験用の部屋を準備し、特定の例示的な技術を評価した。試験用の部屋は、一時的に無効にしたHVACファン、0.4sの残響時間を有し、また、特別な防音を伴わない、典型的な乾式壁のオフィスであった。標的のスピーチ信号は、30のSTCを有する壁のうちの1枚の背面に位置決めされたYamaha社のHS5スピーカで再生した。信号は、Crown Audio社のファーフィールドマイクロホンを使用して登録し、ソフトウェアで処理し、そして、部屋内で対象の前方2メートルに位置決めした同じスピーカで再生した。ソフトウェアは、以下の4つのオーディオ効果、すなわち、(1)一定の時間遅延、(2)時間的に変動する時間遅延(時間的整相)、(3)振幅変調、及び(4)スペクトルフィルタ、の組み合わせを使用した。時間遅延、変調周波数、及び変調度は全て、調整可能なパラメータであった。スピーチ刺激は、男性の声が通常のペースで話した、100個の予め録音した短い、5~7語の長さで、無関係の、構文的及び意味論的に正しい発話のブロックであった。発話は、10人の被験者の各々に別々に提示し、知覚されるスピーチの認識及びマスキング音の不快感を主観的にスコアリングした。被験者は全員、正常な聴覚を有する英語のネイティブスピーカであった。実験では、以下のタイプのスピーチマスカーを使用した。ホワイトノイズ(WN)、ターゲットスピーチ信号(TD)の時間遅延クローン、上で説明した4つのオーディオ効果の最適化した組み合わせ(OC)、及びマルチトーカーバックグラウンドを追加したOCマスカー(OCB)。
【0085】
この試験において、OCマスカーの時間遅延は、80msに設定した。時間遅延整相及び振幅変調は、1秒あたり3~5回の変調の割合で行った。3人の話し手、すなわち2人の男性及び1人の女性が同時に話している、予め録音したスピーチを、OCBマスカーのバックグラウンドとして使用した。標的のスピーチの本質的なキューを不鮮明化して、それを必要最小限の追加の不快感で理解できないようにするのにちょうど十分なクローン信号を改変するために、OCの最適化を行った。この手法は、声起動式であり、マスキング信号の強度は、標的のスピーチの強度に対して常に自動調整されるである。
【0086】
1秒あたり3~5サイクルの遅延整相及び振幅変調の割合は、通常の英語のスピーチにおける1秒あたりの音節数に類似し、これは、上で述べたように、標的のスピーチの言葉のリズムを妨げる際に、OCマスキングを高度選択的にする。比較のために、及び上でも述べたように、ホワイトノイズ及び自然音は、それらの時間的パターンが通常のスピーチのパターンと異なるので、適度なラウドネスにおいて不十分なスピーチマスカーである。スペクトルフィルタを使用して、マスキングに関連する不快感の更なる最小化を行った。スペクトルフィルタは、エネルギー母音及び情報搬送子音の役割を果たすスペクトル領域の寄与をバランスさせた。
【0087】
スコアリング結果を
図16に示す。数値評価のために、4人全てのマスカーのデシベルレベルは、50%の文章が不明瞭であると知覚されたWNのデシベルレベルにした。WN及びTDマスカーの事例において、スピーチは依然として聴き取れるが、言葉を理解できなかったときのマスキングレベルにおいて、10人の被験者は全て、不快感に対する持続的な注意及び相当な認知的疲労を報告した。OC及びOCBマスキングの事例では、いかなる認知的疲労も報告されず、不快感のレベルが大幅に低下した。OCBマスキングを使用して約30秒後に、被験者の大部分が、コンテンツ不足のスピーチに注意することを止めた。3人の被験者は、OCマスキングしたスピーチを外国語として知覚すると報告した。
【0088】
図16のデータから、特定の例示的実施形態は、スピーチをマスキングするための知覚的に有効な技術を提供することが可能であり、スピーチ明瞭度に関連するキューが標的信号の時間的整相及び振幅変調によって不鮮明化されることが理解されよう。知覚されるスピーチ明瞭度と不快感との関係は、主観的な評価分析で評価した。この手法は、好都合に声起動式であり、かつスピーチの心理言語学的な態様及び音響音声学的なキューに自動的に適応する。これは、スタンドアロンのサウンドマスキング装置で使用することができ、又は低STCレベル及び高フランキングロスを有する建築用聴覚空間における、並びに本明細書で論じられる他の用途におけるオフィス用壁の一体化部分とすることができる。
【0089】
本明細書では、上で説明した及び/又は他の壁及び壁アセンブリを作製する方法も想到される。本明細書で説明される例示的なアクティブ手法の場合、そのような方法は、例えば、壁を立てること、マイクロホン及び空気ポンプを音マスキング回路に接続すること、などを含むことができる。サウンドマスキング回路のための構成工程(例えば、対象の1つ以上の周波数範囲、いつ/どのように空気ポンプを作動させるか、など)も想到される。載置作業は、例えば、マイクロホン及び/又は空気ポンプ(スピーカの吊り下げを含む)、などに対して使用することができる。また、HVACシステム及び/又は同類ものも想到される。
【0090】
また、類似する文脈において、既存の壁及び/又は壁アセンブリを後付けする方法も想到され、同じ又は類似する工程を含むことができる。また、本明細書では、後付けキットも想到される。
【0091】
特定の例示的実施形態を音響壁及び音響壁アセンブリに関連して説明してきた。これらの音響壁お及び音響壁アセンブリは、知覚されるスピーチパターンを改変するために、隣接する領域から放射される特定のいらだたせる音の成分を不明瞭にするために、及び/又は同類のことのために、様々な用途で使用することができることが理解されよう。例示的な用途としては、例えば、住宅内の部屋のための音響壁及び音響壁アセンブリ、オフィス内の部屋、診療室、空港、コンビニエンスストア、銀行、モールなどの画定された待機領域、家、オフィス、及び/又は他の構造物のための外部音響壁及び音響壁アセンブリ、車両のための外部要素(例えば、ドア、サンルーフ、又は同類のもの)、並びに、車両のための内部領域(例えば、それによって、前部座席に座ることで、後部座席に座っているそれらの子供から音響的に不明瞭することができ、逆もまた同じである)、など、が挙げられる。サウンドマスキングは、隣接する領域が別の部屋であるかどうか、音響壁及び音響壁アセンブリを収容している構造の範囲の外部にあるかどうか、などにかかわらず、隣接する領域から放射しているノイズに提供することができる。同様に、サウンドマスキングは、ノイズがこの又は他の種類の隣接する領域の中へ入ることを防止するために提供することができる。
【0092】
特定の例示的実施形態では、スピーチ明瞭度を阻害するための方法が提供され、この方法は、マイクロホンを介して、元のスピーチに対応する元のスピーチ信号を受信することと、元のスピーチ信号内に元のスピーチの不鮮明化されたキューを含む、明瞭度阻害マスキング信号を生成することと、スピーカを通して、不鮮明化されたスピーチキューを含む明瞭度阻害マスキング信号を出力することによって、元のスピーチ信号の明瞭度のレベルを低減させることと、を含む。
【0093】
前のパラグラフの特徴に加えて、特定の例示的実施形態において、明瞭度阻害マスキング信号は、元のスピーチ信号に対して、例えば20~150ms、80msなどだけ時間遅延させることができる。
【0094】
前のパラグラフの特徴に加えて、特定の例示的実施形態において、時間遅延は、時間的に発振させることができ、例えば、時間遅延は、元の信号に対して80~230msの範囲内で時間的に発振させる。
【0095】
3つの前のパラグラフのうちのいずれかの特徴に加えて、特定の例示的実施形態において、明瞭度阻害マスキング信号は、明瞭度阻害マスキング信号の振幅が時間的に変調するように生成することができる。
【0096】
4つの前のパラグラフのうちのいずれかの特徴に加えて、特定の例示的実施形態において、明瞭度阻害マスキング信号は、元のスピーチ信号に加えられる明瞭度阻害マスキング信号に対応する利得が0.05~0.25%であるように生成することができる。
【0097】
5つの前のパラグラフのうちのいずれかの特徴に加えて、特定の例示的実施形態において、時間遅延は、1~10Hzの発振周波数によって発振させることができ、例えば、時間遅延は、2~6Hzの発振周波数によって発振させる。
【0098】
6つの前のパラグラフのうちのいずれかの特徴に加えて、特定の例示的実施形態において、不鮮明化されたキューは、0.01~20Hzの周波数で、例えば2~6Hzの周波数で生成することができる。
【0099】
7つの前のパラグラフのうちのいずれかの特徴に加えて、特定の例示的実施形態において、本方法は、スピーカを通して、予め録音した複数の声の混合物と一緒に、明瞭度阻害マスキング信号を出力することを更に含むことができ、例えば、予め録音した複数の声の混合物は、2つ~7つの異なる声、3つの異なる声、などを含む。
【0100】
特定の例示的実施形態において、制御回路を備えたスピーチ明瞭度阻害装置は、8つの前のパラグラフのうちのいずれかの特徴を実施するように構成することができる。
【0101】
特定の例示的実施形態において、システムは、前のパラグラフの装置を含むことができる。
【0102】
特定の例示的実施形態において、壁は、前のパラグラフのシステムを組み込むことができる。
【0103】
本発明は、現在実用的で好ましい実施形態と考えられるものと関連して説明されたが、本発明は、開示される実施形態に限定されるものではなく、寧ろ、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図するものであることを理解されたい。