(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】エンドエフェクタのコーティングを有する外科用ステープラ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/072 20060101AFI20221121BHJP
A61L 31/00 20060101ALI20221121BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20221121BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20221121BHJP
A61L 31/08 20060101ALI20221121BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20221121BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221121BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61B17/072
A61L31/00
A61L31/12
A61L31/16
A61L31/08
A61L31/12 100
A61L31/14 500
A61K45/00
A61P17/02
(21)【出願番号】P 2019568624
(86)(22)【出願日】2018-05-16
(86)【国際出願番号】 IB2018053445
(87)【国際公開番号】W WO2018229574
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517076008
【氏名又は名称】エシコン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Ethicon LLC
【住所又は居所原語表記】#475 Street C, Suite 401, Los Frailes Industrial Park, Guaynabo, Puerto Rico 00969, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ウイテマ・トーマス・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・シンティアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィデンハウス・タマラ・エス
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン・ザ・フォース・フレデリック・イー
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/040143(WO,A1)
【文献】特表2015-504334(JP,A)
【文献】特表2014-524784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ステープラと共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリであって、
カートリッジ本体であって、
複数のステープル空洞と、
複数のステープルであって、各
前記ステープルが前記複数のステープル空洞のうちの1つの内部に配設されている、複数のステープルと、
複数のステープルドライバであって、前記複数のステープル空洞から前記複数のステープルを排出するように上方に移動可能である、複数のステープルドライバと、
前記カートリッジ本体を通って長手方向に移動可能であり、前記複数のステープルドライバの上方移動を引き起こすように構成されたスレッドと、を有する、カートリッジ本体を備え、
前記カートリッジ本体、前記複数のステープル空洞、前記複数のステープル、及び前記複数のステープルドライバのうちの少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分が、少なくとも1つのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤と前記外表面との間の相互作用を選択的に制御するように構成され
ており、
前記複数のステープルが、前記MMP阻害剤の接着を可能にするように構成されたコーティングを含み、前記カートリッジ本体、前記複数のステープルドライバ、及び前記スレッドのうちの少なくとも1つが、前記MMP阻害剤の接着を少なくとも最小化するように構成されたコーティングを含む、アセンブリ。
【請求項2】
外科用ステープラと共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリであって、
カートリッジ本体であって、
複数のステープル空洞と、
複数のステープルであって、各前記ステープルが前記複数のステープル空洞のうちの1つの内部に配設されている、複数のステープルと、
複数のステープルドライバであって、前記複数のステープル空洞から前記複数のステープルを排出するように上方に移動可能である、複数のステープルドライバと、
前記カートリッジ本体を通って長手方向に移動可能であり、前記複数のステープルドライバの上方移動を引き起こすように構成されたスレッドと、を有する、カートリッジ本体を備え、
前記カートリッジ本体、前記複数のステープル空洞、前記複数のステープル、及び前記複数のステープルドライバのうちの少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分が、少なくとも1つのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤と前記外表面との間の相互作用を選択的に制御するように構成されたコーティングを含み、
前記コーティングが、前記外表面に対する前記MMP阻害剤の接着を少なくとも最小化するように構成されている、
アセンブリ。
【請求項3】
外科用ステープラと共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリであって、
カートリッジ本体であって、
複数のステープル空洞と、
複数のステープルであって、各前記ステープルが前記複数のステープル空洞のうちの1つの内部に配設されている、複数のステープルと、
複数のステープルドライバであって、前記複数のステープル空洞から前記複数のステープルを排出するように上方に移動可能である、複数のステープルドライバと、
前記カートリッジ本体を通って長手方向に移動可能であり、前記複数のステープルドライバの上方移動を引き起こすように構成されたスレッドと、を有する、カートリッジ本体を備え、
前記カートリッジ本体、前記複数のステープル空洞、前記複数のステープル、及び前記複数のステープルドライバのうちの少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分が、少なくとも1つのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤と前記外表面との間の相互作用を選択的に制御するように構成されたコーティングを含み、
前記コーティングが、前記カートリッジ本体、前記複数のステープルドライバ、及び前記スレッドのうちの少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分の上に配設され、前記コーティングが、前記外表面に対する前記MMP阻害剤の接着を少なくとも最小化するように構成された少なくとも1つのマスキング剤を含む、
アセンブリ。
【請求項4】
前記マスキング剤が、潤滑剤、パリエン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記潤滑剤がシリコーンを含む、請求項
4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記MMP阻害剤の接着を可能にするように構成された前記コーティングが、前記複数のステープルの
外表面の少なくとも一部分の上に配設され、
前記
複数のステープルの外表面に対する前記MMP阻害剤の接着を可能にするように構成された物質を含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記物質が、吸収性ポリマー及び吸収性潤滑剤からなる群から選択される、請求項
6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記吸収性ポリマーがポリウレタンを含む、請求項
7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記吸収性ポリマーが、前記MMP阻害剤の存在下で重合して、それによって吸収性ポリマー/MMP阻害剤のブレンドをもたらす、請求項
7に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記物質が水溶性である、請求項
6に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記物質が、吸収性であり、かつイオン帯電している、請求項
6に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は外科用器具に関し、具体的には組織の切断及びステープル留めのための方法、装置、及びその構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
外科用ステープラは、外科的処置において、組織、血管、導管、シャント、若しくは特定の処置に関連する他の対象物又は身体部位の開口の閉鎖に使用される。開口は、血管内又は胃のような内臓内の通路として自然に発生するものもあり、あるいは組織若しくは血管穿刺でバイパス若しくは吻合を形成することによって、又はステープル留め処置中に組織を切断することによって、などの外科的処置中に外科医によって形成されることがある。
【0003】
ほとんどのステープラは、細長いシャフトを有するハンドルを有し、シャフトの端部に、その間でステープルを保持して成形するための一対の移動可能な対向するジョーが形成されている。ステープルは典型的にはステープルカートリッジ内に収容され、そのステープルカートリッジは、複数のステープル列を収納することができ、手術部位へのステープルの放出のために2つのジョーのうちの1つの中に配設されることが多い。使用中、ジョーは、ステープルされる対象物がジョーの間に配設されるように位置付けられ、ジョーが閉じて装置が作動されると、ステープルが放出されて成形される。ステープラによっては、ステープルカートリッジ内のステープルの列の間を移動し、ステープル留めされた列の間で、ステープル留めされた組織を長手方向に切断及び/又は開口するように構成されたナイフを含むものがある。
【0004】
外科用ステープラは何年にもわたって改良されてきたが、それ自体にはいまだに多くの問題が存在する。よく見られる問題の1つは、ステープルは、ステープルが中に配設される組織又は他の対象物を貫通するときに孔を形成するため、漏出が起こり得ることである。血液、空気、消化管液、及び他の液体が、ステープルが完全に成形された後でも、ステープルによって形成された開口を通してしみ出ることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ステープル挿入部位における漏出を最小化するように、組織、血管、導管、シャント、又は他の対象物若しくは身体部位をステープル留めするための、改良された装置と方法に対する要求が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、外科用ステープラ及びその構成要素は、少なくとも1つのマトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase、MMP)阻害剤と、ステープラ又は構成要素の外表面と、の間の相互作用を選択的に制御するように構成されたコーティングをその上に有して提供される。
【0007】
一態様では、カートリッジ本体を含む、外科用ステープラと共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリが提供される。カートリッジ本体は、複数のステープル空洞を有する。それぞれのステープル空洞は、内部に配設された外科用ステープルを有する。カートリッジ本体は更に、各ステープルドライバが複数のステープル空洞のうちの1つの中に配設された複数のステープルドライバを有し、これは複数のステープル空洞から複数のステープルを排出するように上方に移動可能である。カートリッジ本体は、カートリッジ本体を通って長手方向に移動可能であり、複数のステープルドライバの上方移動を引き起こすように構成されたスレッドを更に有する。カートリッジ本体、複数のステープル空洞、複数のステープル、及び複数のステープルドライバのうちの少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分は、少なくとも1つのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤と外表面との間の相互作用を選択的に制御するように構成されたコーティングを含むことができる。
【0008】
一実施形態では、複数のステープルは、少なくとも1つのMMP阻害剤の接着を可能にするように構成されたコーティングを含むことができ、カートリッジ本体、複数のステープルドライバ、及びスレッドのうちの少なくとも1つは、外表面に対するMMP阻害剤の接着を少なくとも最小化するように構成されたコーティングを含むことができる。コーティングは、カートリッジ本体、複数のステープルドライバ、及びスレッドのうちの少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分の上に配設されてもよく、コーティングは、外表面に対するMMP阻害剤の接着を少なくとも最小化するように構成された少なくとも1つのマスキング剤を含むことができる。マスキング剤は、潤滑剤、パリエン(parlyene)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。コーティングは、複数のステープルの少なくとも一部分の上に配設することができ、また外表面に対するMMP阻害剤の接着を可能にするように構成された物質を含むことができる。物質は、例えば、吸収性ポリマー及び/又は吸収性潤滑剤であり得る。吸収性ポリマーは、例えば、ポリウレタンであり得る。吸収性ポリマーは、MMP阻害剤の存在下で重合し、それによって吸収性ポリマー/MMP阻害剤のブレンドをもたらし得る。物質は、水溶性であり得る。物質は、吸収性であり、かつイオン帯電していてもよい。
【0009】
別の態様では、一実施態様ではステープル留め装置及びステープルカートリッジを有する外科用ステープル留めアセンブリが提供される。ステープル留め装置は、その遠位端にエンドエフェクタを有する細長いシャフトを有し、エンドエフェクタは、間で組織と係合するように構成された第1及び第2のジョーを有する。ステープルカートリッジは、第1及び第2のジョーのうちの1つの中に配設されるように構成され、複数のステープル空洞内に着座した複数のステープルを含む。複数のステープルの少なくとも一部分は、複数のステープルの少なくとも一部分に対するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤の接着を促進する物質でコーティングされ、ステープルカートリッジの少なくとも一部分は、ステープルカートリッジの少なくとも一部分に対するMMP阻害剤の接着を阻害する物質でコーティングされている。アセンブリは、任意選択的に、第1及び第2のジョーのうちの少なくとも1つの上に配設されるように構成された補助剤を含むことができる。補助剤は、補助材料内に配設され、かつ補助材料から放出可能な、有効量の少なくとも1種のMMP阻害剤を含むことができる。MMP阻害剤は、複数のステープル上で放出可能に保持されてもよく、これは、ステープルをカートリッジ本体内に配備することよって組織に送達されるように構成されてもよい。
【0010】
更なる態様では、本明細書で、外科用ステープラと共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリを製造するための方法が提供される。一実施形態では、方法は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤の接着を阻害するように構成された第1のコーティングを、複数のステープル空洞を有するカートリッジ本体、複数のステープルドライバ、及びカートリッジ本体を通って摺動可能に移動可能なスレッド、のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分に塗布することを含み得る。方法は更に、MMP阻害剤の接着を促進するように構成された第2のコーティングを、複数のステープルの少なくとも一部分に塗布することを含み得る。方法は、複数のステープルを複数のステープル空洞内に装填することを更に含み得る。
【0011】
一実施形態では、第2のコーティングは、複数のステープルの第1の脚部、第2の脚部、及び冠部のうちの少なくとも1つに塗布され得る。第1のコーティングは、複数のステープル空洞に塗布され得る。第2のコーティングは、蒸着(vapor disposition)などの様々な技術を使用して、又はMMP阻害剤を含有する物質に複数のステープルを浸漬することによって塗布することができる。特定の態様では、ステープルは、第2のコーティングを塗布する前に、複数のステープル空洞内に装填され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されるであろう。
【
図1】外科用ステープラの一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1の外科用ステープラの遠位部分の分解図である。
【
図3】
図1の外科用ステープラの発射バーの斜視図であり、発射バーは、その遠位端にE-ビームを有する。
【
図4】外科用ステープラの別の実施形態の斜視図である。
【
図5】外科用ステープラの更に別の実施形態の斜視図である。
【
図6】は、埋め込み可能なステープルカートリッジの一実施形態の斜視部分切取図である。
【
図7】ステープルドライバの一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態のうちの1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に例示されている。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、かつ添付の図面に例示される装置及び方法が、非限定的な典型的な実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの典型的な実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0014】
更に、本開示においては、実施形態の同様の参照符合を付した構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の参照符合を付した各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。加えて、開示されるシステム、装置、及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される範囲において、かかる寸法は、かかるシステム、装置、及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及び装置、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、システム及び装置が内部で用いられる対象の解剖学的構造、システム及び装置が一緒に用いられる構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及び装置が用いられる方法及び手順に依存し得る。
【0015】
「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書では、器具のハンドルを握っている臨床医などのユーザを基準として使用されることが認識されるであろう。「前方」及び「後方」といった他の空間的用語は、同様に、遠位及び近位にそれぞれ対応する。便宜上、また説明を明確にするため、本明細書では「垂直」及び「水平」といった空間的用語が、図面に対して使用されている点も更に理解されるであろう。しかしながら、外科用器具は、多くの向き及び位置で使用されるものであり、これらの空間的用語は、限定的かつ絶対的なものであることを意図するものではない。
【0016】
外科的処置を行うための、様々な例示的な装置及び方法が提供される。いくつかの実施形態において、切開外科的処置のための装置及び方法が提供され、他の実施形態において、腹腔鏡下、内視鏡的、及び他の低侵襲的外科的処置のための装置及び方法が提供される。これらの装置は、人間のユーザによって直接発射されるか、又はロボット若しくは類似の操作ツールの直接制御下でリモート発射されてよい。しかしながら、当業者は、本明細書に開示される様々な方法及び装置が、多数の外科的処置及び用途で用いられ得ることを理解するであろう。本明細書で開示される様々な器具が、例えば、自然開口部を通して、組織に形成された切開部又は穿刺孔を通して、又はトロカールカニューレなどのアクセス装置を使用してなどの、何らかの方法で体内へ挿入され得ることを当業者は更に認識するであろう。例えば、これらの器具の作動部分、すなわちエンドエフェクタ部分は、患者の体内に直接に挿入され得るか、又は外科用器具のエンドエフェクタ及び細長いシャフトが中を通って前進することができる作業チャネルを有するアクセス装置を介して挿入され得る。
【0017】
外科的処置の実行中に、患者の組織は、様々な様式のいずれかにおいて、傷つく(例えば、切断、引き裂き、穿刺など)場合がある。創傷は、例えば、吻合術において、及び/又は外科用装置、例えば、外科用ステープラを使用して組織が切断及びファスナ留めされる場合に、外科的処置の意図した態様である場合がある。傷ついた組織は、典型的には、全ての患者について一般的に同じ様式で経時的に治癒する。
【0018】
創傷治癒は、伝統的には、4つの段階、すなわち止血、炎症、増殖、及び再形成を含むと考えられている。止血段階は、一般的には、例えば、出血を停止させる血液の凝固を含む。一般的に、傷ついた血管は、血流を遅く制限し、血小板が凝集して、創傷部位を封止するのに役立ち、血小板は、フィブリンを活性化させて、創傷の封止を更に促進し、血餅が、創傷部位に形成する。炎症段階は、一般的には、創傷部位のクリーニングを含む。一般的に、免疫系が、創傷部位における可能性のある感染の危険に対する応答を、防御型免疫細胞、例えば、好中球及びマクロファージに対するシグナル伝達を介して提供する。増殖段階は、一般的には、組織成長及び血管新生(血管成長)により、組織を再構築することを含む。一般的に、線維芽細胞は、創傷部位に到着し、コラーゲンを定着させ、上皮細胞を誘引する成長因子を放出し、上皮細胞が内皮細胞を誘引する。成熟段階とも呼ばれる再形成段階は、一般的には、創傷部位における瘢痕組織を増強することを含む。一般的に、コラーゲン繊維が整列し、架橋し、瘢痕が成熟して、最終的に消えていく。
【0019】
創傷治癒の4つの段階のそれぞれは、治癒プロセスの異なる態様を含むが、段階は、典型的には互いに重複する。すなわち、最後の3つの段階はそれぞれ典型的にはその前の段階と重複し、例えば、炎症は止血と重複し、増殖は炎症と重複し、再形成は増殖と重複する。段階間の遷移が生じる速度は、一般的には、創傷治癒全体の速度に影響を及ぼすため、一般的には、患者の回復時間、合併症を生じる恐れ、及び/又は患者の快適性に影響を及ぼす。同様に、4つの個々の段階それぞれの長さは、一般的には、創傷治癒全体の速度及び患者の全身回復に影響を及ぼす。
【0020】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、創傷治癒中を含む様々な生理学的及び病理学的条件下で、組織の細胞外マトリックス(extracellular matrix、ECM)の成分を分解するプロテアーゼのファミリーである。これらの酵素は、壊死組織及び失活組織を除去し、ECMの下層の結合組織を再形成するのを助け、創傷部位への炎症細胞の移動を促進し、血管新生を支援する。創傷治癒の炎症段階の間、MMPは創傷の縁部に位置する損傷したECMを分解する。これにより、創傷治癒の後期段階の間に創傷部位に位置するか又はこれに誘引された細胞によって合成された新たなECM分子(例えば、コラーゲン、エラスチン、及びフィブロネクチンなど)が、最終的に無傷のECMと融合してその一部となり、それにより創傷閉鎖及び治癒をもたらすことが可能となる。
【0021】
したがって、組織のステープル留めの直後に、ステープル挿入部位に存在する細胞がMMPを放出し、これにより、創傷治癒の初期段階を促進するために、ステープルに起因する創傷、及びその付近においてECMを分解するプロセスが開始する。しかしながら、理論に束縛されるものではないが、この天然のプロセスは、少なくとも最初に、ステープル部位を包囲する組織の弱化をもたらして、引き裂き又はその他の合併症(ステープルによって形成された開口部からの血液、空気、及びその他の流体の漏出、並びに、例えば腸切除後の吻合部漏出など)を生じさせやすくし得るものと考えられる。かくして、これも理論によって束縛されるものではないが、ステープルを挿入した直後にMMPを阻害することのできる物質を組織(例えば腸組織)の創傷部位に送達することによって、創傷治癒の初期段階に関連するECMの変質を防ぐかあるいは最小化して、それによってステープル挿入部位を強化して、漏出又は破裂しにくくすることができるものと考えられる。
【0022】
したがって、外科的処置を改善するのを助けるために、外科用ステープラなどの外科用器具と共に1つ又は2つ以上のMMP阻害剤を使用することが望ましい場合がある。MMP阻害剤は、創傷部位におけるECM成分上のMMPのタンパク質分解活性を阻害又は減少させることができる分子である。理論に束縛されるものではないが、ステープル挿入直後に生じる天然のMMPが媒介するECM分解を防止することによって、MMP阻害剤は、創傷部位を包囲する組織を強化することにより組織ステープル留めに伴う組織漏出合併症を防止することができる場合がある。場合によっては、本明細書で提供される組織のステープル留め部位に送達されるMMP阻害剤が、瘢痕組織形成の発生率を増加させて、ステープル留め後に生じる組織変形(例えば、肺膨張、消化管拡張など)から生じ得るステープル穿刺部位内及びその周囲における組織の運動を最小化させる場合がある。当業者は、ステープル穿刺部位は応力集中部となることがあり、ステープルによって形成された孔の寸法は、その付近の組織が張力下に置かれると増大することを認識するであろう。MMPが媒介するECMの分解(例えばMMPが媒介するコラーゲンのタンパク質分解)を防ぐことによってこれらの穿刺部位周辺での組織の運動を制限することで、瘢痕組織の形成を促進し、それによって張力下で成長し得る孔の寸法、並びに漏出の可能性を最小化することができる。
【0023】
残念ながら、多くのMMP阻害剤は、過剰な粘着性などの物理的特性を有するため、外科用ステープラなどの複数の可動部品を含む装置内で直接使用することができない。本明細書でより詳細に説明するように、本発明者らは、外科用ステープラ及び関連する構成要素の様々な部分を、ステープルの1つ又は2つ以上の部分(遠位脚部又は冠部)上へのMMP阻害剤の堆積を促進するための、あるいは、外科用ステープル機器のその他の部分(1つ又は2つ以上の可動部品、又は可動部品と接触する機器の一部など)上へのMMP阻害剤の堆積を防止するための物質でコーティングすることができることを発見した。これらのコーティングは、さもなければステープラ装置の可動部品上にMMP阻害剤が堆積することに起因して引き起こされる外科用ステープラの誤動作を防止する。したがって、ステープルの配備が成功した後で、ステープルは、周囲のステープル留めされた組織にMMP阻害剤を放出して、ステープル挿入部位を強化し、組織のステープル留めに付随する合併症の可能性を最小限に抑えることができる。
【0024】
外科用ステープル留め器具
様々な外科用器具が、本明細書で開示される薬剤(複数可)と共に使用され得る。外科用器具は、外科用ステープラを含み得る。様々な外科用ステープラ、例えば、リニア外科用ステープラ及び円形ステープラが使用され得る。一般的に、リニアステープラは長手方向ステープルラインを形成するように構成することができ、長手方向ステープル列を収容するカートリッジが結合される細長いジョーを含むことができる。細長いジョーは、ジョー内に保持された組織に沿って、ステープル列間の切断を形成することができるナイフ又は他の切断部材を含むことができる。一般的に、円形ステープラは、環状ステープルラインを形成するように構成されることができ、環状ステープル列を収容するカートリッジを有する円形ジョーを含むことができる。円形ジョーは、ジョー内に保持された組織を貫通する開口部を画定するために、ステープルの列の内側に切断を形成することができるナイフ又は他の切断部材を含み得る。ステープラは、様々な異なる外科的処置において、例えば、胸部手術又は胃部手術において、様々な組織に対する様々な異なる外科的処置に使用され得る。
【0025】
図1は、1つ又は2つ以上の補助剤(複数可)及び/又は薬剤(複数可)(MMP阻害剤など)と共に使用するに適したリニア外科用ステープラ10の一例を図示する。ステープラ10は、一般に、ハンドルアセンブリ12と、ハンドルアセンブリ12の遠位端12dから遠位に延在するシャフト14と、シャフト14の遠位端14dにあるエンドエフェクタ30と、を含む。エンドエフェクタ30は、対向する下部ジョー32及び上部ジョー34を有するが、他の種類のエンドエフェクタを、シャフト14、ハンドルアセンブリ12、及びそれらに関連する構成要素と共に使用してもよい。下部ジョー32は、ステープルカートリッジ40を支持するように構成されたステープルチャネル56を有し、上部ジョー34は、下部ジョー32に面し、かつアンビルとして動作してステープルカートリッジ40のステープル(ステープルは、
図1及び
図2において隠れている)を配備するのを支援するように構成されたアンビル面33を有する。対向する下部ジョー32及び上部ジョー34の少なくとも一方は、それらの間に配設された組織及び/又は他の物体をクランプするために、他方の下部ジョー32及び上部ジョー34に対して移動可能である。いくつかの実施態様では、対向する下部ジョー32及び上部ジョー34の一方は、固定されるか、又は別の方法で移動不能であってよい。いくつかの実施態様では、対向する下部ジョー32及び上部ジョー34の両方が移動可能であってよい。発射システムの構成要素は、ステープルをクランプされた組織内に放出するために、エンドエフェクタ30の少なくとも一部分を通過するように構成され得る。様々な実施態様において、ナイフブレード36又は他の切断部材は、発射システムに接続され、ステープル留め処置中に組織を切断し得る。
【0026】
エンドエフェクタ30の作動は、例えば、臨床医、外科医などのユーザがハンドルアセンブリ12で入力することによって開始され得る。ハンドルアセンブリ12は、それに連結されるエンドエフェクタ30を扱って操作するように設計された多くの異なる構成を有してもよい。図示した実施例では、ハンドルアセンブリ12は、器具10の多様な特徴部を操作するための様々な機械的及び/又は電気的構成要素が内部に配設されている、ピストルグリップ型のハウジング18を有している。例えば、ハンドルアセンブリ12は、ハンドルアセンブリ12に対する、シャフト14の長手方向軸線Lの周りでのシャフト14及び/又はエンドエフェクタ30の回転を促進し得る、その遠位端12dに隣接して取り付けられた回転ノブ26を含み得る。ハンドルアセンブリ12は、クランプトリガ22によって作動されるクランプシステムの一部としてクランプ構成要素と、発射トリガ24によって作動される発射システムの一部として発射構成要素と、を更に含み得る。クランプ及び発射トリガ22、24は、例えば、トーションばねによって、静止ハンドル20に対して開放位置に付勢され得る。静止ハンドル20に向けたクランプトリガ22の移動は、以下に記載のクランプシステムを作動させることができ、これにより、ジョー32、34を互いに向けて倒し、それによって、それらの間に組織をクランプすることができる。発射トリガ24の移動は、以下に記載の発射システムを作動させることができ、これにより、その中に配設されたステープルカートリッジ40からステープルを放出させることができ、及び/又は、ナイフブレード36を前進させて、ジョー32、34の間に捕捉された組織を切断することができる。当業者であれば、機械、油圧、空気圧、電気機械、ロボット、又はその他の発射システムの構成要素の様々な構成が、ステープルの放出及び/又は組織の切断に使用され得ることを認識するであろう。
【0027】
図1及び2に示すように、図示した実施態様のエンドエフェクタ30は、カートリッジアセンブリ又はキャリアとして機能する下部ジョー32と、アンビルとして機能する、対向する上部ジョー34と、を有する。内部に複数のステープルを有するステープルカートリッジ40は、ステープルトレイ37内に支持され、次に、ステープルトレイ37は、下部ジョー32のカートリッジチャネル内に支持される。上部ジョー34は、複数のステープル形成ポケット(図示せず)を有し、ステープル形成ポケットの各々は、ステープルカートリッジ40内に収容される複数のステープルからの対応するステープルの上に位置付けられる。上部ジョー34は、様々な方法で下部ジョー32に接続され得るが、図示した実施態様では、上部ジョー34は、シャフト14との係合部のすぐ遠位の、ステープルチャネル56の近位端56p内に枢動可能に受容される近位枢動端34pを有している。上部ジョー34が下向きに枢動すると、上部ジョー34は、アンビル面33を移動させ、その上に形成されているステープル形成ポケットが、対向するステープルカートリッジ40に向かって移動する。
【0028】
てジョー32、34の開放及び閉鎖をもたらして、それらの間に組織を選択的にクランプするために、様々なクランプ構成要素を使用することができる。図示するように、上部ジョー34の枢動端34pは、ステープルチャネル56とのその枢動的な取り付け部より遠位に閉鎖機構34cを含む。したがって、その遠位端部に、閉鎖機構34cと係合する馬蹄形開口部46aを含む閉鎖管46は、クランプトリガ22に応じて、閉鎖管46の近位長手方向運動中に上部ジョー34に対して開放運動を、及び、閉鎖管46の遠位長手方向運動中に上部ジョー34に対して閉鎖運動を選択的に与える。上記のように、様々な実施態様において、エンドエフェクタ30の開閉は、上部ジョー34に対する下部ジョー32の相対運動、下部ジョー32に対する上部ジョー34の相対運動、又は互いに対する両方のジョー32、34の運動によってもたらされてよい。
【0029】
図示した実施態様の発射構成要素は、
図3に示すように、遠位端にEビーム38を有する発射バー35を含む。発射バー35は、シャフト14内、例えば、シャフト14の長手方向発射バースロット14s内に包含され、ハンドル12からの発射運動によって誘導される。発射トリガ24の作動は、エンドエフェクタ30の少なくとも一部分を通るEビーム38の遠位運動に影響を及ぼし、それによって、ステープルカートリッジ40内に収容されたステープルを発射させ得る。図示したように、Eビーム38の遠位端から突出しているガイド39は、
図2に示したウェッジスレッド47と係合し得る。次に、ウェッジスレッド47は、ステープルカートリッジ40内に形成されたステープル空洞41を通ってステープルドライバ48を押し上げ得る。ステープルドライバ48の上向きの移動は、カートリッジ40内の複数のステープルの各々に上向きの力を加え、それによって上部ジョー34のアンビル面33に対してステープルを上向きに押し、成形されたステープルを作り出す。
【0030】
ステープルを発射させることに加えて、Eビーム38は、ジョー32、34の閉鎖、ステープルカートリッジ40からの上部ジョー34の引き離し、及び/又は、ジョー32、34間に捕捉された組織の切断を促進するように構成され得る。具体的には、一対の頂部ピン及び一対の底部ピンは、上部ジョー32及び下部ジョー34の一方又は両方と係合して、発射バー35がエンドエフェクタ30を通って前進するときに、ジョー32、34を互いに向けて圧迫し得る。同時に、頂部ピンと底部ピンとの間に延在するナイフ36は、ジョー32、34の間に捕捉された組織を切断するように構成され得る。
【0031】
使用中、外科用ステープラ10は、カニューレ又はポートの中に配設され、手術部位に配設され得る。切断されてステープル留めされる組織は、外科用ステープラ10のジョー32、34の間に定置されてもよい。ステープラ10の機構は、ユーザの要求に従って操作されて、手術部位におけるジョー32、34、及びジョー32、34に対する組織の所望の位置を達成することができる。適切な位置決めを達成した後に、クランプトリガ22を静止ハンドル20に向けて引いて、クランプシステムを作動させ得る。トリガ22は、閉鎖管46がシャフト14の少なくとも一部分を通って遠位方向に前進して、ジョー32、34の少なくとも一方を他方に向かって倒し、これらの間に配設された組織をクランプするように、クランプシステムの構成要素を動作させ得る。その後、発射バー35及び/又はEビーム38が、エンドエフェクタ30の少なくとも一部分を通って遠位方向に前進して、ステープルの発射をもたらし、任意追加的に、ジョー32、34の間で捕捉された組織を切断するように、トリガ24を、静止ハンドル20に向けて引いて、発射システムの構成要素を作動させ得る。
【0032】
リニア外科用ステープラ50の形態における外科用器具の別の例を、
図4に図示する。ステープラ50は、一般に、
図1のステープラ10同様に、構成され、使用され得る。
図1の外科用器具10と同様に、外科用器具50は、遠位に延在し、組織を処置するために遠位端にエンドエフェクタ60を有するシャフト54を備えるハンドルアセンブリ52を含む。エンドエフェクタ60の上部ジョー64及び下部ジョー62は、それらの間に組織を捕捉し、下部ジョー62の中に配設されたカートリッジ66からステープルを発射することによって組織をステープル留めする、及び/又は、組織に切開部を形成するように構成され得る。この実施態様において、シャフト54の近位端にある取り付け部67は、シャフト54及びエンドエフェクタ60をハンドルアセンブリ52に取り外し可能に取り付け可能にするように構成することができる。具体的には、取り付け部67の嵌合機構68は、ハンドルアセンブリ52の補助嵌合機構71と嵌合できる。嵌合機構68、71は、例えば、スナップフィット結合、バヨネット式結合などによって一体に連結するように構成され得るが、シャフト54をハンドルアセンブリ52と着脱可能に連結するために、任意の数の補助嵌合機構及び任意の種類の結合を使用してもよい。図示した実施態様のシャフト54の全体は、ハンドルアセンブリ52から分離可能に構成されているが、いくつかの実施態様において、取り付け部67は、シャフト54の遠位部のみを取り外すことができるように構成され得る。シャフト54及び/又はエンドエフェクタ60の分離可能な連結は、特定の処置のための所望のエンドエフェクタ60の選択的な取り付け、及び/又は、多数の異なる処置のためのハンドルアセンブリ52の再利用を可能にできる。
【0033】
ハンドルアセンブリ52は、エンドエフェクタ60を操作して作動させるための1つ又は2つ以上の機構をその上に有していてもよい。非限定例として、ハンドルアセンブリ52の遠位端に取り付けられた回転ノブ72は、ハンドルアセンブリ52に対するシャフト54及び/又はエンドエフェクタ60の回転を促進し得る。ハンドルアセンブリ52は、移動可能なトリガ74によって作動されるクランプシステムの一部としてのクランプ構成要素と、これもトリガ74によって作動され得る発射システムの一部としての発射構成要素とを含み得る。したがって、いくつかの実施態様において、第1運動範囲を通る、静止ハンドル70に向けたトリガ74の移動は、クランプ構成要素を作動させて、対向するジョー62、64を互いに向けて閉鎖位置に近づけさせ得る。いくつかの実施態様において、対向するジョー62、24の一方のみが、ジョー62、64に向けて閉鎖位置に移動し得る。静止ハンドル70に向けた、第2運動範囲を通るトリガ74の更なる移動は、発射構成要素を作動させて、ステープルカートリッジ66からステープルを放出させることができ、及び/又は、ナイフ若しくは他の切断部材(図示せず)を前進させて、ジョー62、64の間に捕捉された組織を切断することができる。
【0034】
円形外科用ステープラ80形態の外科用器具の一例を、外科用ステープラの更に別の実施形態の斜視図である
図5に示す。
【0035】
ステープラ80は、一般に、
図1及び
図4の線状ステープラ10、50と同様に構成され、使用され得るが、一部の機構が、円形ステープラとしてのその機能に適応している。外科用器具10、50と同様に、外科用器具80は、シャフト84を備えるハンドルアセンブリ82を備え、シャフト84は、外科用器具80から遠位に延在し、組織を処置するためのエンドエフェクタ90をその遠位端に有している。エンドエフェクタ90は、略円形の形状を有する、組織に接触する表面をそれぞれが有するカートリッジアセンブリ92及びアンビル94を含み得る。カートリッジアセンブリ92とアンビル94とは、ステープラ80のアンビル94からハンドルアセンブリ82まで延在するシャフト98を介して結合させることができ、ハンドルアセンブリ82上のアクチュエータ85を操作すると、シャフト98を後退及び前進させて、カートリッジアセンブリ92に対してアンビル94を移動させることができる。アンビル94及びカートリッジアセンブリ92は、様々な機能を行うことができ、それらの間に組織を捕捉する、カートリッジアセンブリ92のカートリッジ96からステープルを発射することにより組織をステープル留めする、かつ/又は、組織に切開部を形成するように構成することができる。一般的に、カートリッジアセンブリ92は、ステープルを収容しているカートリッジを収納することができ、またステープルをアンビル94に対して配備して、ステープルの円形パターン、例えば、管状体器官の外周上のステープルを形成することができる。
【0036】
1つの実施態様において、シャフト98は、アンビル94をカートリッジアセンブリ92から分離することができるように解放可能に互いに連結されるように構成された第1及び第2の部分(図示せず)で構成することができ、これにより、アンビル94及びカートリッジアセンブリ92を、患者の体内に位置付けるのに、より高い柔軟性を与えることができる。例えば、シャフトの第1の部分は、カートリッジアセンブリ92の内部に配設され、遠位方向にカートリッジアセンブリ92の外部へと延在して、遠位嵌合機構において終端することができる。シャフト84の第2の部分は、アンビル94の内部に配設され、カートリッジアセンブリ92の外部へと近位方向に延在して、近位嵌合機構において終端することができる。使用に際しては、近位嵌合機構と遠位嵌合機構とを互いに連結することにより、アンビル94とカートリッジアセンブリ92とを互いに対して動かすことができる。
【0037】
ステープラ80のハンドルアセンブリ82には、ステープラの動作を制御することができる様々なアクチュエータが上部に配設されてもよい。例えば、ハンドルアセンブリ82には、回転によってエンドエフェクタ90の位置付けを容易にする回転ノブ86、及び/又は、エンドエフェクタ90を作動させるためのトリガ85が上部に配設されてもよい。第1の運動範囲によるトリガ85の静止ハンドル87に向かう運動によって、クランプシステムの構成要素をジョーに近づける(すなわち、カートリッジアセンブリ92に向かってアンビル94を動かす)ように作動させることができる。第2の運動範囲によるトリガ85の静止ハンドル87に向かう運動によって、発射システムの構成要素を作動させて、ステープルをステープルカートリッジアセンブリ92から配備させ、かつ/又は、カートリッジアセンブリ92とアンビル94との間に捕捉された組織を切断するためにナイフを前進させることができる。
【0038】
様々な形態の埋め込み可能なステープルカートリッジを、本明細書で開示される外科用器具及び器具構成要素の様々な実施形態で利用することができる。具体的なステープルカートリッジ構成及び構造について、単に非限定的な例として以下で更に詳細に説明する。
【0039】
図6に示される実施形態では、埋め込み可能なステープルカートリッジ40が示される。ステープルカートリッジ40は、内部に未成形の金属ステープル43のラインが支持されている、例えば、酸化再生セルロース(oxidized regenerated cellulose、「ORC」)又は生体吸収性発泡材などの圧縮性の止血材料で形成された本体部分42を有している。ステープルカートリッジ40の本体42は、
図2に示されるように、アンビル94が駆動されてステープルカートリッジ40との接触を形成すると、内部の各ステープル43が、アンビル内の対応するステープル形成ポケット44と位置合わせされるように、細長チャネル56内に取り外し可能に支持されるような大きさである。
【0040】
図7及び
図8は、それぞれ、本明細書に開示される外科用器具の様々な実施形態と共に使用され得るステープルドライバ48及びスレッド47の代表的な実施形態を示す。
図7のステープルドライバ48は、カートリッジ内でステープルの下のステープルポケット内に着座し、
図8のスレッドがカートリッジを通って遠位方向に並進すると上方に前進するように構成されている。各ステープルポケットは、カートリッジから
図1に示すアンビル面33に向かってステープルを駆動するためのステープルドライバ48を内部に有する。
【0041】
図9は、本明細書で開示される外科用器具の様々な実施形態で利用され得るステープル43の代表的な実施形態を示す。ステープル43は、それぞれ遠位先端部51を有するステープル脚部49、並びに脚部49に接続する冠部53を有する。
【0042】
外科用ステープル留め器具10、50、及び80の図示した例は、多くの異なる構成及び関連する使用方法のうちのごく一部の例を提供するものであり、これらは本明細書で提供される開示と共に使用され得る。図示した実施例は、全て低侵襲性処置で使用するように構成されているが、切開外科処置で使用するように構成されている器具、例えば、2007年2月28日出願の米国特許第8,317,070号、発明の名称「Surgical Stapling Devices That Produce Formed Staples Having Different Lengths」に記載されるオープンニリニアステープラを、本明細書で提供される開示と共に使用することができることは理解されるであろう。図示した実施例の更なる詳細、並びに、外科用ステープラ、その構成要素、及びその関連する使用方法の更なる実施例は、2013年2月8日出願の米国出願公開第2013/0256377号、発明の名称「Layer Comprising Deployable Attachment Members」、2010年9月30日出願の米国特許第8,393,514号、発明の名称「Selectively Orientable Implantable Fastener Cartridge」、2007年2月28日出願の米国特許第8,317,070号、発明の名称「Surgical Stapling Devices That Produce Formed Staples Having Different Lengths」、2005年6月21日出願の米国特許第7,143,925号、発明の名称「Surgical Instrument Incorporating EAP Blocking Lockout Mechanism」、2013年11月8日出願の米国特許出願公開第2015/0134077号(発明の名称「Sealing Materials For Use In Surgical Stapling」、2013年11月8日出願の米国特許出願公開第2015/0134076号、発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」、2013年11月8日出願の米国特許出願公開第2015/0133996号、発明の名称「Positively Charged Implantable Materials and Method of Forming the Same」、2013年11月8日出願の米国特許出願公開第2015/0129634号、発明の名称「Tissue Ingrowth Materials and Method of Using the Same」、2013年11月8日出願の米国特許出願公開2015/0133995号、発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」、2014年3月26日出願の米国特許出願第14/226,142号、発明の名称「Surgical Instrument Comprising a Sensor System」、及び2014年6月10日出願の米国特許出願第14/300,954号、発明の名称「Adjunct Materials and Methods of Using Same in Surgical Methods for Tissue Sealing」に提供され、これらは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
MMP阻害剤
20個を超えるメンバーのファミリーを含むMMPは、それらの活性部位にZn2+を使用して、コラーゲンなどのECM成分の加水分解を触媒する。それらの基質特異性に基づいて、これらは、3つのサブファミリー、すなわちコラゲナーゼ、ストロメリシン、及びゼラチナーゼに大別することができる。
【0044】
通常の生理学的条件下では、これらの酵素は、創傷治癒及び組織再形成を含む多くの重要な機能を果たす。しかしながら、これらの酵素が過剰活性化されると、これらはECMを過剰分解し、疾患状態をもたらす場合がある。例えば、MMP-2及びMMP-9(両方がゼラチナーゼである)は、多くの器官における炎症性、感染性、及び腫瘍性疾患の発症に関与すると考えられる。コラゲナーゼ-2又は好中球コラゲナーゼとしても知られるMMP-8の過剰活性は、肺気腫及び骨関節炎などの疾患に関連する。Balbin et al.,「Collagenase 2(MMP-8)expression in murine tissue-remodeling processes,analysis of its potential role in postpartum involution of the uterus」(J.Biol.Chem.,273(37):23959-23968(1998))を参照されたい。マクロファージエラスターゼ又はメタロエラスターゼとしても知られるMMP-12の過剰な活性は、腫瘍浸潤、関節炎、アテローム性動脈硬化症、アルポート症候群、及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)で重要な役割を果たす。MMP-1及びMMP-13は、コラーゲンのタンパク質分解に関与する。コラーゲンの過剰な分解は、骨関節炎を含む様々な疾患の発症に関連する。例えば、P.G.Mitchell et al.,「Cloning,expression,and type II collagenolytic activity of matrix metalloproteinase-13 from human osteoarthritic cartilage」(J Clin invest.1996 Feb.1;97(3):761-768)を参照されたい。
【0045】
本明細書で使用するとき、「マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤」又は「MMP阻害剤」は、哺乳動物で自然に発生する少なくとも1つのマトリックスメタロプロテイナーゼ酵素(創傷治癒中に自然に発現するMMPなど)のタンパク質分解活性を少なくとも5%阻害する(タンパク質分解活性を5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%のいずれかで阻害するなど)任意の化学化合物である。多くのMMP阻害剤が当該技術分野で既知である。例えば、既存のMMP阻害剤は、ヒドロキサム酸誘導体、スフロニル(suflonyl)アミノ酸、及びスルホニルアミノヒドロキサム酸誘導体に基づき得る。これらの阻害剤中のヒドロキサム酸部分は、MMP活性部位Zn2+に結合して、酵素活性を阻害する。更に、多くのペプチドが、既知のマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤である。
【0046】
MMPのタンパク質分解活性を阻害又は低減するマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤の非限定的な特定の例としては、外因性MMP阻害剤、Batimastat(BB-94)、Ilomastat(GM6001)、Marimastat(BB2516)、チオール類、ドキシサイクリン、スクアリン酸、BB-1101、CGS-27023-A(MMI270B)、COL-3(metastat;CMT-3)、ヒドロキシウレア、AZD3342、ヒドラジン、Endogenous、カルバミルリン酸、β-ラクタム、テトラサイクリン並びにテトラサイクリンの類縁体及び同族体、ミノサイクリン、フェノキシフェニルスルホニルプロピルチイラン、ピリミジン-2,4-ジオン、BAY12-9566、prinomastat(AG-3340)、N-{1S-[4-(4-クロロフェニル)ピペラジン-1-スルホニルメチル]-2-メチルプロピル}-N-ヒドロキシホルムアミド、RO31-9790、3-(4-フェノキシフェニルスルホニルDプロピルチイラン、1,6-ビス[N’-(p-クロロフェニル)-N5-ビグアニド]ヘキサン、トロケード、1-(12-ヒドロキシ)オクタデカニル硫酸ナトリウム、ミノサイクリン(7-ジメチルアミノ-6-ジメチル-6-デオキシテトラサイクリン)、テトラペプチジルヒドロキサム酸、N-[(2R)-2-(カルボキシメチル)-4-メチルペンタノイル]-L-トリプトファン-(S)-メチル-ベンジルアミド、N-[(2R)-2-(ヒドロキシアミドカルボニルメチル)-4-メチルペンタノイル]-L-トリプトファンメチルアミド、N-ヒドロキシ-1,3-ジ-(4-メトキシベンゼンスルホニル)-5,5-ジメチル-[1,3]-ピペラジン-2-カルボキサミド、N-{1S-[4-(4-クロロフェニル)ピペラジン-1-スルホニルメチル]-2-メチルプロピル}-N-ヒドロキシホルムアミド、トリアリール-オキシ-アリールオキシ-ピリミジン-2,4,6-トリオン、4r(4r)ビアリール酪酸、5-ビアリールペンタン酸、フェンブフェン、ペプチドMMPI、ヒドロキサム酸、三環式酪酸、ビフェニル酪酸、複素環式置換フェニルv酪酸、スルホンアミド、琥珀酸アミド、FN-439(P-アミノベンゾイル-Gly-Pro-D-Leu-D-Ala-NHOH、MMP-Inh-1)、スルホン化アミノ酸、MMP9阻害剤I(CTK8G1150)、ONO-4817、SB-3CT、中和抗MMP抗体、MMI-166、タノマスタット、シペマスタット、MMI-270、ABT-770、プリノマスタット、テトラヒドロピラン、RS-130830、239796-97-5、Ro-28-2653、及びタクロリムス(FK506)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
MMP阻害剤はまた、MMP(TIMP)の組織阻害剤のファミリーも含む。本明細書で使用するとき、用語「TIMP」は、活性マトリックスメタロプロテイナーゼの阻害、プロMMP活性化の調節、細胞増殖、及び血管新生の調節を含む生理学的/生物学的機能に関与することが知られている、メタロプロテイナーゼの内因性組織阻害剤を意味する。ヒト「TIMPファミリー」は、4つのメンバー、すなわちTIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、及びTIMP-4を含む。TIMP-1タンパク質は、TIMPファミリーの最も広く発現しかつ研究されているメンバーである。TIMPファミリーの他のメンバーとしては、TIMP-2、TIMP-3、及びTIMP-4が挙げられる。TIMPタンパク質は、天然タンパク質構造に必須のジスルフィド結合を形成する一連の保存されたシステイン残基を含む、共通の構造的特徴を共有する(Brewら、2000)だけでなく、広範に重複する生物学的活性も有する。TIMPタンパク質の保存されたN末端領域は、機能的阻害活性に必要であるが、分岐C末端領域は、薬剤のMMPに対する阻害及び結合効率の選択性を調節すると考えられる(Maskos及びBode、2003)。しかしながら、MMP阻害剤として作用する能力とは別に、様々なTIMPファミリーメンバーが、血管新生及び炎症応答の調節に加えて、増殖及びアポトーシスの調節を含む追加の生物学的活性も示し得る。
【0048】
TIMP-1は、大半のMMPを阻害することが判明しており(MMP-2及び-14を除く)、MMP-8を選択的に阻害する。TIMP-1は、様々な細胞型によって可溶性形態で産生及び分泌され、身体全体に広く分布している。これは、28.5kDaの分子量を有する広範にグリコシル化されたタンパク質である。TIMP-1はMMPの活性型を阻害し、MMP9のプロフォーム(proform)と複合体を形成する。MMP9と同様に、TIMP-1の発現は多くの因子に対して感受性である。TIMP-1の合成の増加は、TGF-β、EGF、PDGF、FGFb、PMA、オールトランス型レチノイン酸(RA)、IL1及びIL11を含む多種多様な試薬によって引き起こされる。
【0049】
TIMP-2は、様々な細胞型によって発現される21kDa糖タンパク質である。これは、潜在性及び活性型MMPの両方を有する非共有性の化学量論的複合体を形成する。TIMP-2は、MMP-2の阻害の選好を示す。
【0050】
TIMP-3は、典型的にはECMに結合し、MMP-1、-2、-3、-9、及び13の活性を阻害する。TIMP-3は、TIMP-1との30%のアミノ酸相同性、及びTIMP-2との38%の相同性を示す。TIMP-3は、ECMから形質転換された細胞の分離を促進し、細胞形質転換に伴う形態変化を促進することが示されている。
【0051】
ECMに対するその高親和性結合のため、TIMP-3はTIMPの中でも独特である。TIMP-3は、ECMから形質転換された細胞の分離を促進し、細胞形質転換に伴う形態変化を促進することが示されている。TIMP-3は、細胞表面との会合の原因であると考えられる6つのアミノ酸(Lys30、Lys26、Lys22、Lys42、Arg20、Lys45)を含むグルコサミノグリカン(GAG)結合ドメインを含有する。TIMP-3は、可溶性TNFを放出し、IL-6受容体の処理に関与し、したがって創傷治癒プロセスにおける中心的役割を演じる別のメタロプロテアーゼであるTACE(TNF-α-変換酵素)を通常で阻害する唯一のTIMPである。
【0052】
TIMP-4は、全ての既知のMMPを阻害し、MMP-2及び-7を選択的に阻害する。TIMP4は、TIMP1との37%のアミノ酸相同性、並びにTIMP2及びTIMP3との51%の相同性を示す。TIMP4は、主に心臓及び脳組織において細胞外に分泌され、細胞外マトリックス(ECM)恒常性に関して組織特異的な様式で機能するように見える。
【0053】
MMP及び創傷治癒におけるMMP阻害剤の使用に関する更なる臨床研究は、Argen et al.,Surgery,2006,140(1):72-82;Krarup et al.,Int J Colorectal Dis,2013,28:1151-1159;Bosmans et al.,BMC Gastroenterology(2015)15:180;Holte et al.,Brit.J.Surg.,2009,96:650-54;Siemonsma et al.,Surgery,2002,133(3):268-276;Klein et al.,Eur.Surg.Res.,2011,46:26-31;Moran et al.,World J.Emergency Surgery,2007,2:13;Kaemmer et al.,J.Surg.Res.,2010,I63,e67-e72;Martens et al.,Gut,1991,32,1482-87;Fatouros et al.,1999,Eur.J.Surg.,165(10):986-92;Savage et al.,1997,40(8):962-70;Oines et al.,World J Gastroenterol,2014 20(35):12637-48;Kiyama et al.,Wound Repair and Regen.,10(5):308-13;Raptis et al.,Int.J.Colorectal Dis.,2011;de Hingh et al.,Int.J.Colorectal.Dis.,2002,17:348-54;及びHayden et al.,2011,J.Surgical Res.,168:315-324で見出すことができ、それぞれの開示は、参照によりその全体がより組み込まれる。
【0054】
コーティング
少なくともいくつかの実施態様では、外科用ステープラ装置内のカートリッジ本体42、複数のステープル空洞44、複数のステープル43、スレッド47、アンビル面33、及び/又は複数のステープルドライバ48のうちの少なくとも1つの外表面は、少なくとも1つのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤とコーティングを有する構成要素の外表面との間の相互作用を選択的に制御するように構成されたコーティングを含むことができる。MMP阻害剤と、外科用ステープラ装置の少なくとも1つの構成要素の外表面との間の相互作用を制御することにより、MMP阻害剤がステープラアセンブリ内でステープラ構成要素の運動又は機能に干渉して、ステープラ装置の誤動作を引き起こし得るのを防ぐ又は回避することができる。
【0055】
いくつかの実施態様では、コーティングは、1つ又は2つ以上のステープラアセンブリ構成要素の外表面(「接着コーティング」)に対するMMP阻害剤の接着を可能にする又は高めることのできる物質を含み得る。物質は、任意選択的に水溶性であり、かつ/又はイオン的に帯電し得る吸収性物質(吸収性ポリマー又は吸収性潤滑剤など)であり得る。
【0056】
外表面に対するMMP阻害剤の接着を可能にする又は高めることができる好適な吸収性ポリマーとしては、合成及び/又は非合成材料を挙げることができる。非合成材料の例としては、凍結乾燥多糖類、糖タンパク質、牛の心膜、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、フィブリノーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、ケラチン、アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、酸化セルロース、酸化再生セルロース(ORC)、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、カゼイン、アルギン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。合成吸収性材料の例としては、ポリ(乳酸)(poly (lactic acid)、PLA)、ポリ(L-乳酸)(poly (L-lactic acid)、PLLA)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(poly (trimethylene carbonate)、TMC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoate、PHA)、εグリコリドとε-カプロラクトンとのコポリマー(PGCL)、グリコリドと-トリメチレンカーボネートとのコポリマー、ポリ(セバシン酸グリセロール)(poly (glycerol sebacate)、PGS)、ポリ(ジオキサノン)(poly (dioxanone)、PDS)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリオキサエステル、ポリエーテルエステル、ポリカーボネート、ポリアミドエステル、ポリ酸無水物、ポリサッカライド、ポリ(エステル-アミド)、チロシン系ポリアリーレート、ポリアミン、チロシン系ポリイミノカーボネート、チロシン系ポリカーボネート、ポリ(D,L-ラクチド-ウレタン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(β-ヒドロキシブチレート)、εポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol、PEG)、ポリ[ビス(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン]ポリ(アミノ酸)、擬似ポリ(アミノ酸)、吸収性ポリウレタン、ポリ(ホスファジン(phosphazine))、ポリホスファゼン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリアセテート、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、コポリ(エーテル-エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコリド、トリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリブテステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。
【0057】
いくつかの実施形態では、MMP阻害剤は、合成又は非合成の吸収性ポリマーに吸収されるか、又はこれによってカプセル化され得る。更に、ポリマーは、それによりコーティングされたステープルの領域に対するMMP阻害剤の接着を促進するための、それに関連した1つ又は2つ以上の魅力的な態様を有することができる。例えば、吸収性ポリマーは多孔質であってもよく、それにより、MMP阻害剤を含有する液体を、液体が乾燥したときにそれが保持される孔の中にプール及び回収することが可能となる。加えて、MMP阻害剤又は吸収性ポリマーの一方又は両方をイオン電荷と共に配合して、それによって、これらに静電吸引させることができる。吸収性ポリマー(例えば、ポリウレタン)はまた、MMP阻害剤をペンダント要素としてポリマー鎖自体に共有結合させるように配合することもできる。最後に、ポリマーとMMP阻害剤との混合が可能となるように、薬物及びポリマーがブレンドされたままで構造体から水を除去する前に、ポリマー自体の水溶性を操作することができる。
【0058】
少なくともいくつかの実施態様では、接着コーティングは、吸収性潤滑剤を含み得る。好適な吸収性潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、粉末ステアリン酸、タルク、パラフィン、カカオバター、グラファイト、ライカポジウム、又はこれらの組み合わせなどの、任意の一般的な錠剤非水溶性潤滑剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。吸収性潤滑剤は、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸などの脂肪酸由来であり得る。
【0059】
コーティングは更に、それが塗布される表面に対するMMP阻害剤の接着を防止する又は少なくとも最小限にするように構成された少なくとも1つのマスキング剤(抗接着コーティング)を含むことができる。好適なマスキング剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーングリース、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、及びシリコーンコーキング材などの非吸収性シリコーン系化合物が挙げられる。更に、シリコーン系潤滑剤などの非吸収性潤滑剤を使用してもよい。好適なシリコーン系潤滑剤の例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルシロキサンなどが挙げられる。他の好適なマスキング剤としては、パリエン化合物(例えば、フッ素化パリエン化合物)を挙げることができる。パリエンは、固有のポリマー(ポリ-p-キシリレン)シリーズのメンバーの一般名であり、このうちいくつかは市販されている(例えば、Union Carbideから「Parlyene C」、「Parylene D」及び「Parylene N」の形態で)。パリエン化合物は、当該技術分野において既知のパリエン蒸着プロセスによって堆積させることができる。フッ素化パリエンの例としては、Specialty Coatings Systems(SCS)(Indianapolis,Ind.)から供給されるparlyene HTが挙げられる。Parlyene HTは、SCSによって供給されるコーティング装置によって蒸着され得る。
【0060】
コーティングは、例えば、噴霧、又はステープル若しくは構成要素をコーティングに液浸させるなどの多くの方法で、ステープル又はステープルカートリッジの任意の構成要素に塗布することができる。いくつかの実施形態で、
図2及び6に示すステープルカートリッジ40では、接着コーティングは、組織表面42に面するステープルカートリッジの表面に塗布することができ、一方で抗接着コーティングは、組織表面に面さず、かつ/又は
図2に示されるようなステープルカートリッジを支持する細長チャネル56に接触する、ステープルカートリッジ40の表面に塗布することができる。別の一実施形態では、抗接着コーティングを、組織表面42に面するステープルカートリッジの表面、及び
図2に示すような細長チャネル56内に支持されるステープルカートリッジ40の表面の両方に塗布することができる。ステープルカートリッジ40の44のステープル空洞は、ステープルがステープル空洞の壁部に粘着することによってMMP阻害剤がステープルカートリッジ40を出るステープル43に干渉しないように、抗接着コーティングでコーティングすることができる。
【0061】
同様に、
図7は、本明細書に開示される装置又は方法のいずれかで使用するためのステープルドライバ48の一実施形態を示す。抗接着コーティングは、ステープルドライバ48の1つ又は2つ以上の構成要素(スレッド係合面101又はステープル係合面102のうちの1つ又は2つ以上など)に塗布することもでき、あるいはステープルドライバ48の表面全体を抗接着コーティングでコーティングすることもできる。
図8は、本明細書に開示される装置又は方法のいずれかで使用するためのスレッド47の一実施形態を示す。抗接着コーティングは、スレッド47の1つ又は2つ以上の構成要素(中央ガイド104、2つの左側ウェッジ103a、103b、及び2つの右側ウェッジ105a、105bのうちの1つ又は2つ以上など)に塗布することもでき、あるいはスレッド47の表面全体を抗接着コーティングでコーティングすることもできる。
図9は、本明細書に開示される装置又は方法のいずれかで使用するためのステープル43を示す。接着コーティングは、ステープル脚部の遠位先端部51、又は冠部53などの組織に接触するステープルの表面に塗布することができ、一方で抗接着コーティングは、ステープル脚部49に塗布することができる。代替的な一実施形態では、抗接着コーティングを、ステープル脚部の遠位先端部51又は冠部53に塗布することができ、一方で接着コーティングを、ステープル脚部49に塗布することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、接着コーティング及び抗接着コーティングは、ステープルカートリッジ40(ステープルカートリッジの構成要素の全てを含む)に同時に又は順次に塗布することができる。一実施態様では、抗接着コーティングは、カートリッジ本体42、ステープル空洞44の内部、ステープルドライバ48、スレッド47、アンビル面33、又はステープル脚部49の少なくとも一部分に塗布され、一方で、接着コーティングは、複数のステープル43の少なくとも一部分に塗布される(ステープル43の脚部の遠位先端部51、及び/又は冠部53などであり、それによってMMP阻害剤を組織層の外部に送達することを可能にする)。しかしながら、その他の実施形態では、接着コーティングはステープル脚部49に塗布することができ、一方で、抗接着コーティングは、ステープル43の遠位先端部51又は冠部53に塗布することができる(それによってMMP阻害剤を組織層の内部に送達することを可能にする)。
【0063】
好ましくは、抗接着コーティングは、構成要素を組み立てる前に、カートリッジ本体42、複数のステープルドライバ48、スレッド47、アンビル面33、及び複数のステープル空洞44の少なくとも一部分に塗布される。抗接着コーティングが、最初に、カートリッジ本体42、複数のステープルドライバ48、スレッド47、及び複数のステープル空洞44の少なくとも一部分も塗布される場合、ステープル43は、接着コーティングを塗布する前に、複数のステープル空洞44内に装填され得る。更に、抗接着コーティングが最初に塗布される場合、接着コーティングは、接着コーティングへのステープルカートリッジアセンブリ40の蒸着、浸漬、又は液浸することを用いて、複数のステープル43の少なくとも一部分(ステープル43の脚部の遠位先端部51及び/又は冠部53などの)に塗布され得る。
【0064】
特に3D印刷技術などのその他の配置プロセスを用いて、抗接着コーティング又はMMP阻害剤(例えば、ブレンドされたMMP阻害剤-吸収性ポリマー)のいずれかが付着した所望のアセンブリの区画のみを露出させてもよい。これにより、冠部53、及びステープル脚部49の遠位先端部51上にのみMMP阻害剤を選択的に配置することが可能となり、それにより、MMP阻害剤(inhibiter)が望まれない領域ではなく、所望される処置領域(外科用ステープル留め装置の可動構成要素上、又はその付近など)に対してのみMMP阻害剤を露出することが可能となる。
【0065】
埋め込み可能な補助剤
様々な埋め込み可能な補助剤が、外科用ステープル留め器具と共に使用するために提供される。「補助剤」は、本明細書において、「補助材料」とも呼ばれる。補助剤は、様々な構成を有することができ、様々な材料から形成されることができる。一般的に、補助剤は、1つ又は2つ以上のフィルム、発泡体、射出成形熱可塑性材料、真空熱成形材料、繊維性構造体、及びそれらのハイブリッドから形成され得る。また、補助剤は、1つ又は2つ以上の生物由来材料及び1つ又は2つ以上の薬物も含み得る。これらの材料はそれぞれ、以下により詳細に検討される。
【0066】
補助剤は、発泡体、例えば、独立気泡発泡体、連続気泡発泡体、又はスポンジから形成され得る。このような補助剤を製造することができる方法の例は、動物由来コラーゲン、例えば、ブタの腱からのものであり、次いで、これが処理され、凍結乾燥されて、発泡構造を得ることができる。様々な発泡補助剤の例は、先で言及された2010年9月30日出願の米国特許第8,393,514号、発明の名称「Selectively Orientable Implantable Fastener Cartridge」に更に記載されている。
【0067】
また、補助剤は、以下で検討された任意の適切な材料又はその組み合わせから形成されたフィルムからも形成され得る。フィルムは、1つ又は2つ以上の層を含むことができ、これら層はそれぞれ、異なる分解速度を有することができる。更に、フィルムは、その内部に形成される様々な領域、例えば、多くの異なる形態の1種以上の薬剤(例えばMMP阻害剤)をその内部に放出可能に保持することができるリザーバを有することができる。中に少なくとも1つの薬剤が配設されているリザーバは、吸収性又は非吸収性ポリマーを含み得る、1つ又は2つ以上の異なるコーティング層を使用して封止され得る。フィルムは、様々な方法で形成され得る。例えば、フィルムは、押出しフィルム又は圧縮成形フィルムであり得る。
【0068】
また、補助剤は、射出成形熱可塑性材料又は真空熱成形材料からも形成され得る。様々な成形補助剤の例は、2013年2月8日出願の米国特許出願公開第2013/0221065号、発明の名称「Fastener Cartridge Comprising A Releasably Attached Tissue Thickness Compensator」に更に記載されている。同文献は、その全体が参照により組み込まれる。また、補助剤は、ファイバベース格子であることもできる。同格子は、織布、編地、又は、メルトブロー、ニードルパンチ、若しくは熱構成ルーズ織布などの不織布であることができる。補助剤は、多くの異なる方法で共に補助剤を形成し得る、同じ種類の格子又は異なる種類の格子から形成され得る、複数の領域を有し得る。例えば、ファイバは、規則的又は不規則な構造を形成するために、織られ、編まれ、編み組まれ、又は他の方法で相互に結び付けられ得る。得られた補助剤が比較的緩くなるように、ファイバは、相互に結び付けられ得る。あるいは、補助剤は、密に相互に結び付けられたファイバを含み得る。補助剤は、シート、チューブ、螺旋、又は、柔らかい部分及び/若しくはより硬い補強部分を含み得る任意の他の構造の形態であり得る。補助剤は、特定の領域がより密なファイバを有することができ、一方で、他の領域がより密でないファイバを有するように構成され得る。ファイバ密度は、補助剤の1つ又は2つ以上の次元に沿って、補助剤の意図した用途に基づいて、異なる方向で変わり得る。
【0069】
また、補助剤は、積層複合材又はメルトロック相互結合ファイバなどのハイブリッド構造であることもできる。様々なハイブリッド構造補助剤の例は、2013年2月8日出願の米国特許出願公開第2013/0146643号、発明の名称「Adhesive Film Laminate」及び2007年9月12日出願の米国特許第7,601,118号、発明の名称「Minimally Invasive Medical Implant And Insertion Device And Method For Using The Same」に更に記載されており、これらは、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0070】
補助剤は、様々な材料から形成することができる。材料は、異なる目的のための様々な実施形態に使用され得る。材料は、組織内方成長を促進するために、組織に提供されるべき所望の治療に従って選択され得る。以下に記載された材料は、任意の所望の組み合わせで、補助剤を形成するのに使用され得る。
【0071】
材料は、ホモポリマー及びコポリマーを含めた、生体吸収性及び生体適合性ポリマーを含み得る。ホモポリマー及びコポリマーの非限定例としては、p-ジオキサノン(PDO又はPDS)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、トリメチレンカーボネート(TMC)、及びポリ乳酸(PLA)、ポリ(グリコール酸-コ-乳酸)(PLA/PGA)(例えば、Vicryl、Vicryl Rapide、PolySorb、及びBiofixに使用されるPLA/PGA材料)、ポリウレタン(例えば、Elastane、Biospan、Tecoflex、Bionate、及びPellethaneファイバなど)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物(例えば、Gliadel及びBiodelポリマー)、ポリオキサエステル、ポリエステルアミド、並びにチロシン系ポリエステルアミドが挙げられる。コポリマーとしては、ポリ(乳酸-コ-ポリカプロラクトン)(PLA/PCL)、ポリ(L-乳酸-コ-ポリカプロラクトン)(PLLA/PCL)、ポリ(グリコール酸-コ-トリメチレンカーボネート)(PGA/TMC)(例えば、Maxon)、ポリ(グリコール酸-コ-カプロラクトン)(PCL/PGA)(例えば、Monocryl及びCapgly)、PDS/PGA/TMC(例えば、Biosyn)、PDS/PLA、PGA/PCL/TMC/PLA(例えば、Caprosyn)、及びLPLA/DLPLA(例えば、Optima)も挙げられ得る。
【0072】
本明細書で記載された補助剤は、内部に、少なくとも1つの薬剤を放出可能に保持し得る。同薬剤は、多数の異なる薬剤から選択され得る。薬剤としては、本明細書に開示される広域スペクトルのMMP阻害剤のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
補助剤と共に用いるための他の薬剤としては、例えば、抗菌(antibacterial)剤及び抗生物質などの抗菌剤(antimicrobial agents)、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、成長因子、鎮痛薬、麻酔剤、組織基質変性阻害剤、抗癌剤、止血剤、並びに生物学的応答を誘発する他の剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
また、補助剤としては、その他の活性剤、例えば、活性細胞培養物(例えば、ダイス状の自家組織、幹細胞療法に使用される剤(例えば、Biosutures及びCellerix S.L.)、止血剤、及び組織治癒剤も挙げられ得る。止血剤の非限定例としては、酸化再生セルロース(ORC)(例えば、Surgicel及びInterceed)などのセルロース、フィブリン/トロンビン(例えば、Thrombin-JMI、TachoSil、Tiseel、Floseal、Evicel、TachoComb、Vivostat、及びEverest)、自家血小板血漿、ゼラチン(例えば、Gelfilm及びGelfoam)、例えば、マイクロファイバ(例えば、ヤーン及び織物)若しくはヒアルロン酸系の他の構造体などのヒアルロン酸、又はヒアルロン酸系のヒドロゲルが挙げられ得る。また、止血剤は、ポリマーシーラント、例えば、ウシ血清アルブミン及びグルタルアルデヒド、ヒト血清アルブミン及びポリエチレン架橋剤、並びに、エチレングリコール及びトリメチレンカーボネートなども含み得る。ポリマー封止剤としては、Focal Inc.により開発されたFocalSeal手術用封止剤を挙げることができる。
【0075】
抗菌剤の非限定例は、銀イオン、アミノ配糖体、ストレプトマイシン、ポリペプチド、バシトラシン、トリクロサン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、デメクロサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ニトロフラン、フラゾリドン、ニトロフラントイン、ベータ-ラクタム、ペニシリン、アモキシシリン、アモキシシリン+、クラブラン酸、アズロシリン、フルクロキサシリン、チカルシリン、ピペラシリン+、タゾバクタム、タゾシン、Biopiper TZ、ゾシン、カルバペネム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、ビアペネム、パニペネム/ベタミプロン、キノロン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、スルホンアミド、マフェニド、スルファセトアミド、スルファジアジン、銀スルファジアジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、バクトリム、プロントシル、アンサマイシン、ゲルダナマイシン、ヘルビマイシン、フィダキソマイシン、グリコペプチド、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、ダルババシン、オリタバンシン、リンコサミド、クリンダマイシン、リンコマイシン、リポペプチド、ダプトマイシン、マクロライド、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、スピラマイシン、オキサゾリジノン、リネゾリド、アミノ配糖体、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロマイシン、パロモマイシン、セファロスポリン、セフトビプロール、セフトロザン、セフクリジン、フロモキセフ、モノバクタム、アズトレオナム、コリスチン、及びポリミキシンBを含む。
【0076】
抗真菌剤の非限定例は、トリクロサン、ポリエン、アムホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ナイスタチン、リモシジン、アゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、アリルアミン、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、エキノカンジン、アニデュラファンジン、カスポファンジン、ミカファンジン、シクロピロックス、及び安息香酸を含む。
【0077】
抗ウイルス剤の非限定例は、脱殻阻害剤、例えば、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリルなど;逆転写阻害剤、例えば、アシクロビル、ラミブジン、アンチセンス、フォミビルセン、モルホリノ、リボザイム、リファンピシンなど;及び抗ウイルス薬、例えば、シアノビリン-N、グリフィスシン、シトビリン、α-ラウロイル-L-アルギニンエチルエステル(LAE)、並びに銀イオンを含む。
【0078】
抗炎症剤の非限定例としては、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、サリチル酸塩、アスピリン、ジフルニサル、プロピオン酸誘導体、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、及びロキソプロフェン)、酢酸誘導体(例えば、トルメチン、スリンダク、及びジクロフェナク)、エノール酸(enolic acid)誘導体(例えば、ピロキシカム、メロキシカム、ドロキシカム、及びロルノキシカム)、アントラニル酸誘導体(例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、及びフルフェナム酸)、選択的COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ(Celebrex)、パレコキシブ、ロフェコキシブ(Vioxx)、スルホンアニリド、ニメスリド、及びクロニキシン)、免疫選択的抗炎症誘導体、副腎皮質ホルモン(例えば、デキサメタゾン)、及びiNOS阻害剤が挙げられる。
【0079】
成長因子の非限定例は、細胞の成長、治癒、再形成、増殖、及び分化を刺激する細胞シグナル伝達分子である因子を含む。例示的な成長因子は、短い範囲(パラクリン)、長い範囲(エンドクリン)、又は自己刺激(オートクリン)であり得る。成長因子の更なる例としては、成長ホルモン(例えば、組換え成長因子、ニュートロピン、ヒューマトロープ、ゲノトロピン、ノルディトロピン、サイゼン、オムニトロープ、及び生合成成長因子)、表皮成長因子(EGF)(例えば、阻害剤、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、及びセツキシマブ)、へパリン結合EGF様成長因子(例えば、エピレグリン、ベタセルリン、アンフィレグリン、及びエピジェン)、形質転換成長因子α(TGF-α)、ニューロレグリン1-4、線維芽細胞成長因子(FGF)(例えば、FGF1-2、FGF2、FGF11-14、FGF18、FGF15/19、FGF21、FGF23、FGF7、又はケラチノサイト成長因子(KGF)、FGF10、又はKGF2、及びフェニトイン)、インスリン様成長因子(IGF)(例えば、IGF-1、IGF-2、及び血小板由来成長因子(PDGF))、血管内皮成長因子(VEGF)(例えば、阻害剤、ベバシズマブ、ラニビズマブ、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、及びベカプレルミン)が挙げられる。
【0080】
成長因子の更なる非限定的な例としては、サイトカイン、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(例えば、炎症応答を阻害する阻害剤並びに組換えDNA技術を使用して及び組換え酵母由来源により製造されたGM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(例えば、フィルグラスチム、レノグラスチム、及びニューポジェン)、組織成長因子β(TGF-β)、レプチン、及びインターロイキン(IL)(例えば、IL-1a、IL-1b、カナキヌマブ、IL-2、アルデスロイキン、インテルキング(Interking)、デニロイキンディフチトクス、IL-3、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、及びオプレルベキン)が挙げられる。成長因子の非限定例としては、エリスロポエチン(例えば、ダルベポエチン、エポセプト、ダイネポ、エポマックス、ネオレコルモン、シラポ、及びレタクリット)が更に挙げられる。
【0081】
鎮痛薬の非限定例は、麻酔剤、オピオイド、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ブプレノルフィン、トラマドール、非麻酔剤、パラセタモール、アセトアミノフェン、NSAID、及びフルピルチンを含む。
【0082】
麻酔剤の非限定例としては、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、ベンゾカイン、及びロピバカイン)及び全身麻酔剤が挙げられる。
【0083】
抗癌剤の非限定的な例としては、モノクローナル抗体、ベバシズマブ(アバスチン)、細胞/化学誘引物質、アルキル化剤(例えば、二官能性(bifunctional)、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、単官能性(monofunctional)、ニトロソ尿素及びテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、及びバルルビシン)、細胞骨格分解剤(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、微小管機能を阻害することにより細胞分裂を制限するエポチロン剤、細胞分裂又は特定の細胞機能に必要とされる様々な酵素をブロックする阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えば、ボリノスッタト及びロミデプシン)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン及びトポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、及びタフルポシド)、キナーゼ阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、及びビスモデジブ)、ヌクレオチド類似体(例えば、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、5-FU、アドルシル、カラック、エフジックス、エフデックス、フルオロプレックス、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、及びチオグアニン)、DNAを開裂させ、DNAの巻戻し/巻取りを中断させるペプチド抗生物質(例えば、ブレオマイシン及びアクチノマイシン)、DNAに架橋し、DNAの修復及び/又は合成を阻害する白金系抗新生物剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、及びエロキサチン)、レチノイド(例えば、トレチノイン、アリトレチノイン、及びベクサロテン)、有糸分裂及び微小管形成を阻害するビンカアルカロイド剤(gents)(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、抗イレウス剤、運動促進剤、免疫抑制剤(例えば、タクロリムス)、血液アスペクト改変剤(例えば、血管拡張剤、バイアグラ及びニフェジピン)、3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA(HMG CoA)還元酵素阻害剤(例えば、アトルバスタチン)、及び抗血管新生剤が挙げられる。
【0084】
また、例示的な薬剤は、創傷治癒に受動的に寄与する作用剤、例えば、栄養、酸素排除剤、アミノ酸、コラーゲン合成剤、グルタミン、インスリン、ブチレート、及びデキストランなども含む。また、例示的な薬剤は、抗接着剤も含む。その非限定例は、ヒアルロン酸/カルボキシメチルセルロース(seprafilm)、酸化再生セルロース(Interceed)、及びイコデキストリン4%(Extraneal、Adept)も含む。
【0085】
記載された技術に基づく補助剤は、例えば組織内方成長に対して所望される方法で所望の効果を提供するために、多くの異なる方法で、少なくとも1つの薬剤(例えばMMP阻害剤)と関連付けられ得る。少なくとも1つの薬剤は、施療部位において、所望の治癒プロセスをトリガするために、複数の空間的及び時間的パターンにおいて、補助剤から放出されるように構成され得る。薬剤は、補助剤の中に配設されるか、補助剤に結合するか、補助剤の中に組み込まれるか、補助剤の中に分散されるか、又は補助剤と他の方法で関連付けられ得る。例えば、補助剤は、内部に、1種以上の異なる薬剤を放出可能に保持している、1つ又は2つ以上の領域を有し得る。この領域は、様々なサイズ及び形状の、様々な方法で内部に薬剤を保持する、別個のリザーバであるか、又は、補助剤内の他の別個の、若しくは連続した領域であることができる。いくつかの態様では、補助剤の特定の構成により、1つの薬剤又は2種以上の異なる薬剤を、内部に放出可能に保持することができる。
【0086】
薬剤が補助剤内に配設される方法に関わらず、有効量の少なくとも1つの薬剤が、容器、例えば、マイクロカプセル、マイクロビーズ、又は任意の他の容器の形態にあることができるペレット内に封入され得る。この容器は、生体吸収性ポリマーから形成され得る。
【0087】
補助剤からの少なくとも1つの薬剤の標的化運搬及び放出は、様々な要因に応じた多くの方法において達成され得る。一般的に、少なくとも1つの薬剤は、薬剤が補助材料の組織への運搬後実質的に直ちに放出されるように、ボーラス投与量として、補助材料から放出され得る。あるいは、少なくとも1つの薬剤は、特定に期間にわたって、補助剤から放出され得る。同期間は、数分、数時間、数日以上であり得る。時限放出(timed release)の速度及び放出される薬剤量は、様々な要因、例えば、薬剤が放出される領域の分解速度、補助剤内に薬剤を保持するのに使用される1つ又は2つ以上のコーティング又は他の構造の分解速度、施療部位の環境条件、及び様々な他の要因により決まり得る。いくつかの態様では、補助剤の中に2つ以上の薬剤が配設されている場合、第1の薬剤のボーラス投与量放出は、第1の薬剤が放出された後に放出し始めるように、第2の薬剤の放出を調節し得る。補助剤は、複数の薬剤を含み得る。同薬剤はそれぞれ、1種以上の他の薬剤の放出に、任意の適切な方法で影響を及ぼし得る。
【0088】
ボーラス投与量として又は時限放出としての少なくとも1つの薬剤の放出は、補助材料の組織への運搬後実質的に直ちに生じるか若しくは開始してもよく、又は所定の時点まで遅延されてもよい。遅延は、補助剤又は1つ又は2つ以上のその領域の構造及び性質により決まり得る。
【0089】
本発明には従来の低侵襲性及び開放手術用器具における用途、並びにロボット支援手術における用途があることを当業者は認識するであろう。
【0090】
本明細書に開示される装置は、1回の使用後に廃棄されるように設計することができ、又は複数回使用されるように設計することができる。しかしながら、いずれの場合も、装置は、少なくとも1回の使用後に再使用のために再調整することができる。再調整には、装置の分解工程、それに続く洗浄工程又は特定の部品の交換工程、及びその後の再組み立て工程の任意の組み合わせを含むことができる。特に、装置は分解することができ、装置の任意の数の特定の部品又は部分を、任意の組み合わせで選択的に交換するか又は取り外すことができる。特定の部分を洗浄及び/又は交換した後、装置を後の使用のために、再調整施設で、又は外科手技の直前に外科チームによってのいずれかで再組み立てることができる。当業者であれば、装置の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用できることを理解するであろう。こうした技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本出願の範囲内にある。
【0091】
追加の例示的な構造及び構成要素は、本出願と同日付で出願され、その全体が参照により本出願に組み込まれる、米国特許出願第15/621,565号、発明の名称「Surgical Fastener Device for the Prevention of ECM Degradation」、同第15/621,636号、発明の名称「Surgical Fastener with Broad Spectrum MMP Inhibitors」、及び同第15/621,572号、発明の名称「Surgical Stapler with Controlled Healing」に記載される。
【0092】
当業者には、上述の実施形態に基づいて本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明される内容により限定されるものではない。本明細書において引用されている全ての刊行物及び参照文献は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれている。
【0093】
〔実施の態様〕
(1) 外科用ステープラと共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリであって、
カートリッジ本体であって、
複数のステープル空洞と、
複数のステープルであって、各ステープルが前記複数のステープル空洞のうちの1つの内部に配設されている、複数のステープルと、
複数のステープルドライバであって、前記複数のステープル空洞から前記複数のステープルを排出するように上方に移動可能である、複数のステープルドライバと、
前記カートリッジ本体を通って長手方向に移動可能であり、前記複数のステープルドライバの上方移動を引き起こすように構成されたスレッドと、を有する、カートリッジ本体を備え、
前記カートリッジ本体、前記複数のステープル空洞、前記複数のステープル、及び前記複数のステープルドライバのうちの少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分が、少なくとも1つのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤と前記外表面との間の相互作用を選択的に制御するように構成されたコーティングを含む、アセンブリ。
(2) 前記複数のステープルが、MMP阻害剤の接着を可能にするように構成されたコーティングを含み、前記カートリッジ本体、前記複数のステープルドライバ、及び前記スレッドのうちの少なくとも1つが、MMP阻害剤の接着を少なくとも最小化するように構成されたコーティングを含む、実施態様1に記載のアセンブリ。
(3) 前記コーティングが、前記外表面に対するMMP阻害剤の接着を可能にするように構成されている、実施態様1に記載のアセンブリ。
(4) 前記コーティングが、前記外表面に対する前記MMP阻害剤の接着を少なくとも最小化するように構成されている、実施態様1に記載のアセンブリ。
(5) 前記コーティングが、前記カートリッジ本体、前記複数のステープルドライバ、及び前記スレッドのうちの少なくとも1つの外表面の少なくとも一部分の上に配設され、前記コーティングが、前記外表面に対する前記MMP阻害剤の接着を少なくとも最小化するように構成された少なくとも1つのマスキング剤を含む、実施態様1に記載のアセンブリ。
【0094】
(6) 前記マスキング剤が、潤滑剤、パリエン(parlyene)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様5に記載のアセンブリ。
(7) 前記潤滑剤がシリコーンを含む、実施態様6に記載のアセンブリ。
(8) 前記コーティングが、前記複数のステープルの少なくとも一部分の上に配設され、前記コーティングが、前記外表面に対する前記MMP阻害剤の接着を可能にするように構成された物質を含む、実施態様1に記載のアセンブリ。
(9) 前記物質が、吸収性ポリマー及び吸収性潤滑剤からなる群から選択される、実施態様8に記載のアセンブリ。
(10) 前記吸収性ポリマーがポリウレタンを含む、実施態様9に記載のアセンブリ。
【0095】
(11) 前記吸収性ポリマーが、前記MMP阻害剤の存在下で重合して、それによって吸収性ポリマー/MMP阻害剤のブレンドをもたらす、実施態様9に記載のアセンブリ。
(12) 前記物質が水溶性である、実施態様8に記載のアセンブリ。
(13) 前記物質が、吸収性であり、かつイオン帯電している、実施態様8に記載のアセンブリ。
(14) 外科用ステープル留めアセンブリであって、
遠位端にエンドエフェクタを有する細長いシャフトを有するステープル留め装置であって、前記エンドエフェクタが、間で組織と係合するように構成された第1及び第2のジョーを有する、ステープル留め装置と、
前記第1及び第2のジョーのうちの1つの中に配設されるように構成されたステープルカートリッジであって、前記ステープルカートリッジが、複数のステープル空洞内に着座した複数のステープルを含み、前記複数のステープルの少なくとも一部分が、前記複数のステープルの前記少なくとも一部分に対するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤の接着を促進する物質でコーティングされ、前記ステープルカートリッジの少なくとも一部分が、前記ステープルカートリッジの前記少なくとも一部分に対するMMP阻害剤の接着を阻害する物質でコーティングされている、ステープルカートリッジと、を備える、アセンブリ。
(15) 前記第1及び第2のジョーのうちの少なくとも1つの上に配設されるように構成された補助剤を更に含み、前記補助剤が、前記補助材料内に配設され、かつ前記補助材料から放出可能な、有効量の少なくとも1つのMMP阻害剤を含む、実施態様14に記載のアセンブリ。
【0096】
(16) 外科用ステープラと共に使用するためのステープルカートリッジアセンブリを製造するための方法であって、
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤の接着を阻害するように構成された第1のコーティングを、
複数のステープル空洞を有するカートリッジ本体、
複数のステープルドライバであって、各ステープルドライバが前記複数のステープル空洞のうちの1つの内部に配設されている、複数のステープルドライバ、及び
前記カートリッジ本体を通って摺動可能に移動可能なスレッド、
のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分に塗布することと、
MMP阻害剤の接着を促進するように構成された第2のコーティングを、複数のステープルの少なくとも一部分に塗布することと、
前記複数のステープルを前記複数のステープル空洞内に装填することと、を含む、方法。
(17) 前記第2のコーティングが、前記複数のステープルの第1の脚部、第2の脚部、及び冠部のうちの少なくとも1つに塗布される、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記第1のコーティングが前記複数のステープル空洞に塗布される、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記第2のコーティングが蒸着(vapor disposition)を使用して塗布される、実施態様16に記載の方法。
(20) 前記第2のコーティングが、前記MMP阻害剤を含有する物質に前記複数のステープルを浸漬することによって塗布される、実施態様16に記載の方法。
【0097】
(21) 前記ステープルが、前記第2のコーティングを塗布する前に、前記複数のステープル空洞内に装填される、実施態様16に記載の方法。