(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】低極回転子用コイル装置および巻線支持体
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20221121BHJP
H01B 12/06 20060101ALI20221121BHJP
H02K 55/04 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
H01F6/06 110
H01B12/06
H02K55/04
(21)【出願番号】P 2019571209
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2017065955
(87)【国際公開番号】W WO2019001696
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-01-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】アルント,タベア
(72)【発明者】
【氏名】オーメン,マライン ピーター
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-049040(JP,A)
【文献】特開昭61-191246(JP,A)
【文献】実開昭49-148401(JP,U)
【文献】特表2013-539338(JP,A)
【文献】特表2006-515980(JP,A)
【文献】特開2010-118457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0172196(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103189937(CN,A)
【文献】特開2015-159278(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0213948(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0293189(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1745512(CN,A)
【文献】国際公開第2017/005619(WO,A1)
【文献】特開平2-133115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
H01B 12/06
H02K 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導帯状導体(1)からなる少なくとも1つの巻層(w)を含む少なくとも1つのコイル巻線(21,21a~21d)を有する
、電気機械用の回転子(25)のための超電導コイル装置(23)であって、
前記帯状導体(1)は、第1の主面(3)および第2の主面(5)を有し、
前記コイル巻線(21,21a~21d)は、少なくとも1つの転向領域(7)を有し、前記帯状導体(1)が、前記転向領域(7)において前記帯状導体(1)の長手方向(a1,a2)の明確な方向転換を有し、同時に前記
回転子(25)の中心軸(A)に対して前記両主面(3,5)の向きを変えるように、前記転向領域(7)内で、前記帯状導体(1)が曲げられており、
前記少なくとも1つのコイル巻線(21,21a~21d)が、前記中心軸(A)に沿って延びている2つの長手方向脚部(9)を有し、
前記少なくとも1つのコイル巻線(21,21a~21d)が、両長手方向脚部(9)の2つの軸方向末端領域を互いに接続する2つの軸方向末端にあり、前記中心軸(A)を中心として湾曲した
2つの横方向脚部(11)を有し、
前記少なくとも1つのコイル巻線(21,21a~21d)が、前記長手方向脚部(9)と前記横方向脚部(11)との間の移行領域内に、合計で4つの転向領域(7)を有
し、
前記2つの長手方向脚部(9)および前記2つの横方向脚部(11)において、前記第1の主面(3)および前記第2の主面(5)が、前記中心軸(A)に対して垂直方向を向いている、
超電導コイル装置(23)。
【請求項2】
前記転向領域(7)内の前記帯状導体(1)の最小曲げ半径rが1cm~25cmの範囲にある、請求項1記載の超電導コイル装置(23)。
【請求項3】
前記コイル装置(23)が巻線支持体(15)を有し、前記少なくとも1つのコイル巻線(21,21a~21d)が、少なくとも前記少なくとも1つの転向領域(7)内で前記巻線支持体(15)上に載置されるように、前記巻線支持体(15)上に保持されている、請求項1又は2記載の超電導コイル装置(23)。
【請求項4】
前記帯状導体(1)が、基板帯と、その上に配置された高温超電導層とを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の超電導コイル装置(23)。
【請求項5】
前記転向領域(7)が、前記コイル巻線(21,21a~21d)の全周の空間的に強く制限された部分領域である、請求項1から4のいずれか1項に記載の超電導コイル装置(23)。
【請求項6】
両長手方向脚部(9)が前記中心軸(A)から互いに等しい半径方向距離r1を有し、
両横方向脚部(11)が前記中心軸(A)から互いに等しい半径方向距離r2を有し、
これらの両半径方向距離(r1,r2)が2cm~20cmの範囲の値dだけ互いに異なる、請求項1から5のいずれか1項に記載の超電導コイル装置(23)。
【請求項7】
両長手方向脚部(9)が、前記中心軸(A)から半径方向距離r1を有し、この半径方向距離r1が両横方向脚部(11)の対応する半径方向距離r2よりも大きい、請求項6記載の超電導コイル装置(23)。
【請求項8】
両長手方向脚部(9)が、前記中心軸(A)から半径方向距離r1を有し、この半径方向距離r1が両横方向脚部(11)の対応する半径方向距離r2よりも小さい、請求項6記載の超電導コイル装置(23)。
【請求項9】
前記中心軸(A)からの巻線の半径方向距離が、当該軸方向末端領域(9b)において、他の内側にある部分(9a)に比べて変化するように、両長手方向脚部(9)の軸方向末端領域(9b)がそれぞれS字形に湾曲している、請求項1から8のいずれか1項に記載の超電導コイル装置(23)。
【請求項10】
電気機械用の回転子(25)であって、
前記電気機械が請求項1から9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの超電導コイル装置(23)を有する、電気機械用の回転子(25)。
【請求項11】
p個の極数を有する磁界を形成するように構成されており、pが2または4である、請求項10記載の回転子(25)。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の超電導コイル装置(23)の3次元形状のコイル巻線(21,21a~21d)のための巻線支持体(15)であって、
前記巻線支持体(15)が、超電導帯状導体(1)の平面的な支持のための環状円周支持面(17)を有し、
前記支持面(17)が少なくとも1つの転向領域(7)を有し、前記転向領域(7)において前記支持面(17)が、その上に載置されている帯状導体(1)の長手方向(a1,a2)の明確な方向転換を生じさせ、同時に、上に載っている帯状導体(1)の両主面(3,5)の向きを
前記回転子(25)の中心軸(A)に対して変えるように、前記転向領域(7)において前記支持面(17)が曲げられており、
前記3次元形状のコイル巻線(21,21a~21d)が、前記中心軸(A)に沿って延びている2つの長手方向脚部(9)を有し、
前記3次元形状のコイル巻線(21,21a~21d)が、両長手方向脚部(9)の2つの軸方向末端領域を互いに接続する2つの軸方向末端にあり、前記中心軸(A)を中心として湾曲した
2つの横方向脚部(11)を有し、
前記3次元形状のコイル巻線(21,21a~21d)が、前記長手方向脚部(9)と前記横方向脚部(11)との間の移行領域内に、合計で4つの転向領域(7)を有する、
巻線支持体(15)。
【請求項13】
前記巻線支持体(15)をその上に載置されたコイル巻線から後で取り外すことができるように、前記巻線支持体(15)が少なくとも2つのセグメントから構成されており、前記コイル装置(23)が前記支持面(17)によって予め与えられた形状を保持することができる、前記請求項12記載の巻線支持体(15)。
【請求項14】
超電導帯状導体(1)からなる少なくとも1つの巻層(w)は、請求項12又は請求項13記載の巻線支持体(15)上に、前記帯状導体の第1の主面(3)が前記巻線支持体(15)の前記支持面(17)上に周方向に平面的に載置されるように巻回される、超電導コイル装置(23)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1および第2の主面を有する少なくとも1つのコイル巻線を備えた超電導コイル装置に関する。さらに、本発明は、このようなコイル装置を備えた電気機械用の回転子、ならびに、このようなコイル巻線用の巻線支持体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導帯状導体、特に金属の基板帯の上に平坦で薄い超電導被覆を有する超電導帯状導体は、コイル巻線の製造のための有望な特性を示す。これらは、特に、電気機械の回転子巻線または固定子巻線であってもよいが、磁気コイルまたは他のタイプのコイル巻線であってもよい。このような超電導帯状導体の使用において一般的に有利であるのは、超電導体の転移温度より低い温度で電流がほとんど無損失で流れ得ることである。
【0003】
コイル巻線の製造中の問題は、このような超電導帯状導体が一般に機械的負荷に非常に敏感であることである。したがって、巻線の製造中における機械的応力は、超電導層の損傷、特に層の一部の層間剥離、および/または超電導特性の劣化に容易につながる可能性がある。公知の帯状導体は、帯平面内で起こる曲げに関して、すなわち帯平面に垂直な軸の周りの曲げに関して、特に敏感である。この場合に、幾何学的な理由により、いくつかの帯領域においては局所的な歪みが、特に大きい。しかし、原則として、このような巻線の製造中における帯状導体のその他の強い曲げも、損傷を避けるために可能な限り最小限に抑えられるべきである。
【0004】
これらの理由のために、従来技術によれば、超電導帯状導体からなる巻線は、通常、フラットコイルの形態で製造される。フラットコイルは、同じままの平らな巻線平面内で固定の巻線軸の周りに巻回されるコイルである。そのような巻線の製造中には、帯状導体の横方向に平行に位置する巻線軸の周りの曲げしか生じないので、帯状導体の超電導層が受ける機械応力は比較的小さい。このような平らな巻線の場合、帯状導体のねじれと帯平面内での曲げの両方が有利に回避される。したがって、フラットコイルのこの製造法は、超電導巻線を製造する最も一般的で緩やかな方法として確立されてきた。
【0005】
しかし、超電導フラットコイルの使用は、いくつかの種類の用途に対して不利である。したがって、3次元幾何学的形状を有するコイルも使用可能であるならば、かなり多くの用途にとって有利である。本発明の関連では、三次元幾何学的形状とは、コイル巻線が、それの巻線平面が一定でないように、すなわち、平面的なコイル形状を放棄するように成形されていることを意味すると理解すべきである。これに該当し得るのは、例えば、鞍形コイルである。
【0006】
例えば、三次元形状のコイル巻線の使用は、少ない極数を有する電気機械の回転子における回転子巻線としての使用に有利である。このように極数が少ない場合、特に極数p=2の場合、コイル巻線の電気的に有効な長手方向脚部を回転子軸の方向に配置すると共に、この軸を含むいわゆる赤道面にできるだけ近接して配置することが有利である。しかし、これは、フラットコイル巻線では、しばしば不可能である。というのは、回転子の中心が回転子軸の領域で自由に保たなければならず、巻線に曲がりがなければ、横方向脚部も回転子軸に非常に近接して延びるからである。軸を自由に保つことは、例えば、トルク伝達のための回転子シャフトの配置、冷却剤の供給、回転子動的機械的理由、および/または軸の領域における給電線の配置のために必要である。したがって、超電導フラットコイルを有するこのような低極回転子のためのコイル装置を製造する際には、しばしば妥協がなされなければならない。例えば、このような平坦なコイルは、電気的又は電気力学的な理由から望まれているよりもさらに赤道面から離れて配置されることが多い。
【0007】
したがって、一般的には、超電導帯状導体を用いて三次元形状のコイル巻線を製造することも要求される。以前は、これは、例えば非特許文献1に記載されているように、平らに巻かれた楕円形コイルを円筒形表面の形状に後で曲げることによって達成することができた。別の公知の可能性は、特許文献1に記載されているように、帯状導体をすでに3次元に巻き付けることである。しかしながら、帯状導体の強い曲げを回避するためには、両方の場合において、巻線の長手方向脚部をそれらの軸方向末端領域で接続するために、かつ同時に帯状導体の小さい曲げ半径を回避するために、場所を取る巻線端部が必要である。この巻線端部によって、大きな占有空間が生じ、したがって、このような巻線を用いて製造される回転子は比較的長くなり、これは、大きな重量およびより高い材料消費を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102008035655号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】M.P. Oomen et al,“Transposed-cable coil & saddle coils of HTS for rotating machines: test results at 30K IEEE Trans. Appl. Superconductivity 19-3, P.1633-1638 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、上述の欠点を回避するコイル装置を提供することにある。特に、3次元に成形されていて、それでもなお巻線端部のための占有空間が比較的小さく、巻回中に機械的応力によって帯状導体が損傷されることのない、超電導帯状導体からなるコイル巻線を有するコイル装置が提供されるべきである。さらなる課題は、このようなコイル装置を有する回転子を提供すること、このコイル装置のコイル巻線のための巻線支持体を提供すること、ならびにそのコイル巻線を製造するための製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題は、本発明によれば、請求項1記載のコイル装置、請求項11記載の回転子、請求項13記載の巻線支持体、および請求項15記載の製造方法によって解決される。
【0012】
本発明による超電導コイル装置は、少なくとも1つのコイル巻線を含み、該コイル巻線は、超電導帯状導体からなる少なくとも1つの巻層を有する。この帯状導体は、第1および第2の主面を有する。前記コイル巻線は、少なくとも1つの転向領域を有し、該転向領域内で、前記帯状導体は、次のように曲げられている、すなわち、前記帯状導体が、この転向領域において前記帯状導体の長手方向の明確な方向転換を有し、同時に前記コイル装置の中心軸に対して前記両主面の向きを変えるように曲げられている。
【0013】
上述の「明確な方向転換」とは、帯状導体が、それの主面の向きを変えることだけではなく、同時に曲がることでもあると解釈すべきである。このような曲がりは、例えば45°~135°の範囲の長手方向の方向転換に結びつけることができる。その方向転換は、約90°、すなわち、例えば約70°~110°または80°~100°の範囲にあると、格別に有利である。約90°の範囲のこのような強い方向転換は、有利なことに、次の効果をもたらす。すなわち、帯状導体の方向を、巻線の長手方向脚部の方向と巻線の横方向脚部の方向との間で、比較的急激に変化させることができ、したがって、巻線端部のために必要とされる軸方向の占有空間が比較的少なくて済むという効果である。
【0014】
上述の主面の向きの変化とは、帯状導体が曲がりと同時に転向させられることであると解釈すべきである。この場合に、請求項1に記載のコイル装置の中心軸は、例えば、回転子軸または別の中心の対称軸であってよい。したがって、上述の転向領域では、そのような中心に対して帯状導体の両主面の向きが変化する。例えば、転向領域において帯状導体をほぼ完全に転向させることができ、その結果、所定の主面の平面姿勢は、転向領域を通過する際に約半回転させられる。転向領域を通過する際のその平面姿勢の回転角度は、例えば160°~200°、特に170°~190°の範囲内にあるとよい。
【0015】
帯状導体の上述の如き同時の方向転換と強いねじれ(すなわち、転向)によって、巻線の長手方向脚部と横断方向脚部との間の移行が、比較的小さい占有空間で可能にされることが達成される。上述の如き転向(ターン)は、以下では「コーナーターン」とも呼ばれる。このような「コーナーターン」が僅かな空間で行われる場合、帯状導体は、それに応じて小さい曲げ半径で曲げられなければならないことになる。これは、まず先に、超電導帯状導体で、できる限り小さい曲げ半径を回避すべきであるという一般的な認識と矛盾する。しかしながら、本発明に関連で驚くべきことに、本発明の超電導帯状導体の方向転換と組み合わせた上述の転向の際に、比較的小さい曲げ半径を、損傷なしに許容し得ることが判明した。この理由は、方向転換の際に同時に導入される転向によって、帯平面内での帯状導体の曲げが大幅に回避され、代わりに、ねじれによって方向転換が容易にされるからである。このようなねじれは、公知の帯状導体の比較的小さい空間での曲げの際にも、同等の空間上で同じ方向転換をもたらすことになる平面内での対応する曲げよりも、明確に良好に許容することができる。したがって、本発明は、超電導体に損傷を与えることなく、公知の帯状導体の帯状導体平面内での曲げを回避しながら、帯状導体の強度の小規模の「ねじれ」、すなわち狭く制限されたコーナーターンを許容することができるという驚くべき発見に基づいている。特に、基板帯上に配置された薄い超電導層を有する帯状導体は、曲げ半径を適切に選択するならば、このようなねじれを、超電導層の層間剥離または他の損傷なしに克服することができる。
【0016】
記載されたコイル装置の重要な利点は、上述の「コーナーターン」によって、空間的に比較的制限された空間でコイル巻線の長手方向脚部と横方向脚部との間の移行を行うことができ、したがって、巻線端部のための非常に小さい軸方向の占有空間が生じることにある。前記巻線端部とは、ここでは一般的に、本発明との関連において、横方向脚部と、横方向脚部と縦方向脚部との間の移行領域との組み合わせであると解釈すべきである。全体として、このような「コーナーターン」をコイル巻線に配置することにより、(フラットコイルとは違って)三次元的に形成された巻線の設計が可能になる。これは、とりわけ電気機械における低極回転子のためのコイル装置との関連で有利である実施形態を可能にする。例えば、コイル巻線は、円筒表面の少なくとも一部に適合させることができる。このような形状は、低極回転子の場合、巻線の長手方向脚部を赤道面の近くに案内することができ、それにもかかわらず、横方向脚部は、この面からに対して比較的大きな距離を有することができるという利点を有する。このために、横方向脚部は、特に、巻線が横方向脚部の領域において中心軸からより大きな距離を得るように曲げられるとよい。
【0017】
記載されたコイル装置の利点は、とりわけ、超電導帯状導体と関連して効力を発揮する。というのは、ここでは、帯平面内での帯状導体の曲げを回避しながら3次元成形が達成されるからである。しかし、一般には、対応する常伝導帯状導体を(特に、その平面内での曲げに対して高い感度で)説明したように巻き付け、そうすることで相応の利点を達成することも可能である。例えば、その常伝導帯状導体については、変形による粒径の減少と、それに付随する常伝導電気抵抗の増加が回避される。
【0018】
本発明による回転子は、電気機械用の回転子として設計され、本発明による少なくとも1つのコイル装置を有する。このような回転子の利点は、上述した本発明によるコイル装置の利点に類似してもたらされる。
【0019】
本発明による巻線支持体は、三次元形状のコイル巻線のための巻線支持体として構成されている。これは、特に、本発明によるコイル装置用のコイル巻線とすることができる。その巻線支持体は、超電導帯状導体を平坦に支持するための環状の円周方向支持面を有する。この場合、支持面は、少なくとも1つの転向領域を有し、この転向領域において、支持面は、上に載っている帯状導体の長手方向に明確な方向転換を生じさせ、同時に、上に載っている帯状導体の2つの主面の向きをコイル装置の中心軸に対して変化させるように曲げられている。
【0020】
言い換えれば、本発明による巻線支持体は、その上に巻き付けられる巻線に「コーナーターン」を形成するように構成されている。このことから得られる利点は、本発明によるコイル装置の上述の利点と同様に得られる。
【0021】
本発明の方法は、超電導コイル巻線を製造するために使用される。この場合、超電導帯状導体からなる少なくとも1つの巻層は、帯状導体の第1の主面が巻線支持体の支持面上に円周方向に平らに載るように、本発明による巻線支持体上に巻回される。この場合も、利点は、上述した本発明によるコイル装置の利点に類似している。
【0022】
本発明の有利な実施形態および発展形態は、請求項1、10、および13に従属する請求項、ならびに以下の説明から明らかになるであろう。コイル装置、回転子、巻線支持体、および製造方法の記載された実施形態は、有利に、互いに組み合わせることができる。
【0023】
したがって、転向領域内の帯状導体の最小曲げ半径は、有利には、1cm~25cm、特に3cm~10cmの範囲とすることができる。この場合に、上述の最小の曲げ半径とは、それぞれ全ての転向領域において帯状導体の経路にわたって生じる最小の曲げ半径のことであると解釈すべきである。特に有利なのは、全ての転向領域にわたる曲げ半径が比較的均一であることである。したがって、例えば、転向領域は、帯状導体がここでは円筒面の一部を形成する湾曲面に従うように、設計されているとよい。
【0024】
前記領域における曲げ半径は、次の利点を有する。すなわち、小規模区間における「コーナーターン」において強い曲げが達成されるが、しかし同時に、上述の下限によって、帯状導体の過剰な曲げが回避され、したがって帯状導体の損傷が回避されるという利点を有する。損傷を受けることなく曲げ半径の上述の範囲内で超電導帯状導体を曲げることができるという事実は驚くべきことであり、それは、帯状導体が前述のコーナーターンにおいて帯平面内で曲げられないか、もしくはせいぜい最小限にしか曲げられないためである。
【0025】
巻層が、単一の帯状導体からではなく、重なり合った帯状導体のスタックから形成される場合、これらの帯状導体も、全体としてスタックごとに前述の「コーナーターン」を介して転向させることができる。このような実施形態では、同様に本発明の前述の利点が達成されると同時に、巻線内のより高い電流を達成することができる。
【0026】
少なくとも1つのコイル巻線は、鞍形に形成されていることが好ましい。したがって、当該巻線は、特に部分領域において、中空円筒セグメントの輪郭に適合させられているとよい。当該巻線の1つ以上の部分領域は、平坦な平面から湾曲していてもよい。これは、特に、そのような巻線の横方向脚部であり得る。代替的または付加的に、長手方向脚部は、中央コイル平面から傾けられていてもよい。
【0027】
有利には、前記コイル装置が少なくとも1つの巻線支持体を有し、該巻線支持体上に少なくとも1つのコイル巻線が、次のように保持されている。すなわち、当該コイル巻線が、少なくとも、少なくとも1つの転向領域内で、前記巻線支持体上に載置されているように保持されている。ここで、巻線支持体に関して下にある帯状導体の巻線は、有利には、巻線支持体上に平坦に載置されているべきである。特に好ましくは、下にあるこの巻線は、その全周にわたって巻線支持体上にある。巻線支持体は、一般に、請求項13に記載されているように構成されているとよい。このようにして、コイル巻線の上述した形状は、巻線支持体によって特に効果的に支持することができる。
【0028】
帯状導体は、一般に、その上に超電導層が配置された基板帯であるとよい。特に有利には、この層は、高温超電導層とすることができる。高温超電導体(HTS)は、25Kを超える転移温度を有する超電導材料であり、例えば、77 Kを超える銅酸化物超電導体などのいくつかの種類の材料では、液体ヘリウム以外の極低温材料で冷却することによって動作温度を達成することができる。HTS材料はまた、動作温度の選択に応じて、これらの材料が非常に高い臨界電流密度を有することができるので、特に魅力的である。
【0029】
超電導層は、例えば、第2世代のHTS材料、特にタイプREBa2Cu3Ox (略して、REBCO)の化合物を含むことができ、ここで、REは希土類元素またはそのような元素の混合物を表す。その高い転移温度のために、REBCO超電導体は、液体窒素で冷却することもでき、特に77 Kより低い温度では、特に高い通電容量を有する。
【0030】
あるいは、高温超電導材料は、二ホウ化マグネシウムを含んでもよい。特に有利には、超電導層は、主成分として二ホウ化マグネシウムを含んでいてもよく、または実質的に二ホウ化マグネシウムからなっていてもよい。二ホウ化マグネシウムは約39 Kの転移温度を有し、従って高温超電導体と考えられるが、転移温度は他のHTS材料と比較してかなり低い。酸化物セラミック高温超電導体と比較したこの材料の利点は、その製造が容易であり、したがって安価であることにある。二ホウ化マグネシウムベースの導体は、エアロゾル堆積によって、またはいわゆるパウダーインチューブ法によって、特に簡単に、かつ有利に調製することができる。
【0031】
帯状導体の基板は、有利には、鋼又はハステロイのようなニッケル含有合金を含むことができる。一般に、材料の正確な選択にかかわらず、それは、特に超電導層に導電的に接続され得る電気的に常伝導性の基板であり得る。
【0032】
超電導帯状導体は、典型的には、基板上に堆積されたミクロン範囲の層厚を有する比較的薄い超電導層を有する。この支持基板は、帯状導体の体積の大部分を占めるので、帯状導体の機械的特性を実質的に決定する。この場合に、支持基板と超電導層との間に、他の中間層が、例えば超電導層の成長に積極的に影響を及ぼし得る1つ以上の酸化緩衝層が、任意に設けられているとよい。さらに、支持基板および超電導層の構造は、常伝導層によって覆われるか、または包囲されるとよい。このような層は、当技術分野ではシャント層と呼ばれることが多く、電気的および/または熱的安定化に役立てることができる。
【0033】
転向領域は、特に好ましくは、コイル巻線の全周の空間的に強く制限された部分領域である。例えば、コイル巻線内に存在する全ての転向領域の合計は、巻線全体の周囲長さの最大10%を占めることができる。そのうえさらに、この周囲長さの割合が、最大で5%でしかないこと、特に最大で2.5%でしかないことが格別に好ましい。個々の長手方向脚部および横方向脚部に関して、これらの周囲長さの関係は以下の通りであってもよい。各長手方向脚部の軸方向長さは、好ましくは、単一の転向領域の軸方向長さの少なくとも10倍であってもよい。これは、巻線の電気的に特に有効な領域の有利に高い割合を可能にする。さらに、方位角方向における各横方向脚部の広がりは、好ましくは、単一の転向領域の対応する広がりの少なくとも4倍であるとよい。転向領域のこれらの比較的狭い寸法により、巻線端部の格別にコンパクトな設計が可能である。
【0034】
少なくとも1つの転向領域は、好ましくは、コイル巻線の長手方向脚部がコイル巻線の横方向脚部に移行する、いわゆるコーナー領域であってよい。長手方向脚部は、ここでは、一般に、コイル装置の中心軸に実質的に平行に延在する巻線部分を意味すると理解すべきである。これに対して、横方向脚部は、一般に、そのような軸に対して実質的に横方向に延在する巻線部分を意味すると理解すべきである。
【0035】
少なくとも1つのコイル巻線は、一般に、コイル装置の中心軸に沿って延びている厳密に2つの長手方向脚部を有するとよい。さらに、コイル巻線は、2つの軸方向末端領域において2つの長手方向脚部を互いに接続する厳密に2つの軸方向末端領域にある横方向脚部を有することができる。有利には、コイル巻線は、合計4つの転向領域を有し、これらの転向領域を介して、長手方向脚部と横方向脚部とが相互接続されている。格別に好ましくは、4つのこの種の転向領域の全てにおいて、巻線を形成する帯状導体が、それぞれコーナーターンを介して上述したように曲げられている。
【0036】
2つの長手方向脚部と2つの横方向脚部とを有するこのようなコイル巻線では、2つの長手方向脚部は、中心軸から互いに等しい半径方向距離r1を有することができる。さらに、2つの横方向脚部は、中心軸から互いに等しい距離r2を有することができる。これらの2つの距離は、互いに2cm~20cmの値だけ異なることができる。
【0037】
言い換えれば、長手方向脚部と横断方向脚部とで異なる半径が存在することは、記載されたコーナーターンによって引き起こされ得る。原則として、長手方向脚部または横方向脚部のいずれかが、半径方向においてさらに外側に配置されているとよい。長手方向脚部と横方向脚部との間の半径方向距離は、例えば、巻線支持体の半径方向厚さに対応しているとよく、内側半径の差は、巻線支持体の半径方向厚さと巻線の半径方向高さとの合計に対応する。この場合、巻線支持体の半径方向の厚さは、特に、転向領域に存在する帯状導体の曲げ半径の約2倍に対応するとよい。というのは、帯状導体は、例えば、実質的に円形円筒面の断面に対応し得る表面の周りに約180°の角度で案内することができるからである。
【0038】
第1の可能な実施形態では、2つの長手方向脚部は、中心軸からの半径方向距離r1を有することができ、この半径方向距離r1は、2つの横方向脚部の対応する半径方向距離r2よりも大きい。この実施形態の一般的な利点は、半径方向外側にできるだけ遠くにある長手方向脚部の配置が、より高い電気効率をもたらすことにある。そのような外側の配置は、記載された変形例によって、より容易に達成することができる。特に、電気機械が内側回転子形である場合には、回転子と固定子との間の電気的相互作用が格別に高い。
【0039】
第2の可能な実施形態では、2つの長手方向脚部が、代替的に次のような中心軸からの半径方向距離r1を有するとよい。すなわち、この半径方向距離r1は、2つの横方向脚部の対応する半径方向距離r2よりも小さい。この代替実施形態の利点は、例えば、円筒形配置の外側輪郭に従う湾曲した横方向脚部を設けることがより容易であることにある。このように湾曲した横方向脚部が長手方向脚部に対してさらに半径方向外側にある場合、この湾曲を維持しながら、横方向脚部と長手方向脚部との間で半径方向にあってここで内側から支持する巻線支持体に対して、前記横方向脚部を、適用される巻回張力によって外側からより容易に押しつけることができる。この実施形態のさらに別の利点は、軸付近の露出領域のより大きい断面積にあり、その露出領域は、例えば、給電線、機械装置および/または回転子シャフトのような上述の目的のために利用することができる。
【0040】
一般に、2つの長手方向脚部は、それぞれの軸方向端部領域において、次のようにS字形に湾曲しているとよい。すなわち、コイル装置の中心からの巻線の半径方向距離が、これらの端部領域において、長手方向脚部のさらに内側の部分に比べて変化するように、S字形に湾曲しているとよい。長手方向脚部の前述の内側の部分は、特に、基本的には電気的に有効な軸方向長さの主要部分である。この場合、S字形の湾曲した軸方向端部領域は、巻線端部に隣接するか、または既に巻線端部に移行する領域である。特に好ましくは、S字形状は、電気的に有効な軸方向内側部分における中心からの半径方向距離が端部領域に対して増大するように形成されているとよい。この実施形態によって、長手方向脚部が転向領域内で半径方向内側にある変形形態では、それにもかかわらず、高い電気効率を達成することができる。
【0041】
しかし、横方向脚部が長手方向脚部よりもさらに外側またはさらに内側のいずれかにある前述の2つの「純粋な形態」とは違って、原則として混合形態も可能である。したがって、このような混合形態の場合には、与えられた1つの横方向脚部から見て、半径方向内側への転向と半径方向外側への転向の両方が並存することができる。
【0042】
コイル装置全体の軸方向長さは、0.5m~10m、特に1m~7mであることが好ましい。コイル装置全体の半径は、(回転対称の構成で)好ましくは10~100cmであるとよい。
【0043】
上述の回転子は、好ましくは、同期機用の回転子であってよい。特に、それは、中心の回転子シャフトによって回転可能に支持することができる内側回転子機械用の回転子とすることができる。
【0044】
一般に、回転子は、特にp=2またはp=4 極を有する磁界を形成するように構成された低極回転子であるとよい。極数p=2が特に好ましい。このような低極回転子では、本発明の利点が特に発揮される。というのは、この場合には回転子巻線の三次元形状が特に望まれているからである。このような形状により、長手方向脚部を赤道の近くに配置することができ、同時に、横断方向脚部は、回転子軸の中心領域がコイル巻線から自由に保たれるように案内される。
【0045】
しかしながら、回転子におけるコイル装置の上述の適用の代替として、これは、原則として、例えば電気機械の固定子においても、又は磁界を生成するための装置においても使用することができる。
【0046】
巻線支持体は、好ましくは、その上に巻かれる帯状導体がその2つの主面の一方で平らにその上に巻かれることができるように設計されているとよい。特に好ましくは、これは、最も下にある帯状導体の巻層全体にわたって連続的に行われるとよい。
【0047】
巻線支持体は、好ましい実施形態によれば、少なくとも2つのセグメントから構成することができる。この細分は、巻線支持体を、その上に載置されるコイル巻線から、後で取り外すことができるように構成されているとよく、そのコイル巻線は、支持面によって予め与えられた形状を維持することができる。複数のセグメントへの巻線支持体のこのような分離は、特に、次の場合には必要となることがある。すなわち、帯状導体の巻線の製造後に、巻線の形状を変えることなく巻線支持体を一体的に取り外すことがもはや不可能であるように、帯状導体が円周方向において巻線支持体を取り囲んでいる場合である。しかしながら、巻線支持体を複数のセグメントに分割することによって、そのような取り外しを可能にすることができる。というのは、異なるセグメントを、巻線からある一部は半径方向内側に、またある一部は半径方向外側に分離することができるからである。
【0048】
特に、このような後での取り外しは、巻線が含浸剤を含浸させられ、次いで、巻線支持体がなくても形状安定である自立巻線が生じるように硬化された後に実施することができる。この自立巻線は、そのような自立巻線をそれの巻線支持体から分離することを容易にするために、例えば、巻線支持体が巻線装着前に剥離剤で被覆されるとよい。このような剥離剤は、例えば、テフロン(登録商標)層であってよい。
【0049】
製造方法の好ましい実施形態では、巻線の製造中に、個々の帯状導体当たり10N~200Nの範囲にある巻回張力を使用することができる。複数の帯状導体からなるスタックを同時に巻回する場合、使用されることが好ましい巻回張力は、それに応じて増加する。前記範囲の巻回張力により、帯状導体の前述の「コーナーターン」が十分な寸法安定性のもとで行われることを保証することができ、同時に、過大な巻回張力による帯状導体の過負荷が回避される。言い換えれば、巻回張力は、有利には、上述の小規模の転向が、巻線支持体への押圧によって支援され、この形状到達後も巻線支持体上に固定保持されるように、高く選択されるべきである。
【0050】
以下、添付図面を参照して、本発明をいくつかの好ましい実施例に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、転向領域における超電導コイル装置の帯状導体の概略図を示す。
【
図2】
図2は、巻線支持体の概略平面図および概略断面図を
示す。
【
図3】
図3は、巻線が配置された
図2の巻線支持体に相当する図を示す。
【
図4】
図4は、4つの異なるコイル巻線を有する例示的な回転子の概略断面図を示す。
【
図5】
図5は例示的な巻線の一部の概略縦断面図を示す。
【0052】
図1には、本発明によるコイル装置の転向領域7における帯状導体1の概略図が示されている。
このような転向領域7は、原則的に、このようなコイル装置の一部であるコイル巻線の任意の領域で生じ得る。本発明の関連では、帯状導体1が、そのような転向領域7において明確な方向転換を行い、その際に同時に、帯状導体の両主面の向きを変えることが極めて重要である。したがって、帯状導体1の長手方向は、
図1の左側の範囲では、表示図面において垂直方向にある方向a1に沿って延びているのに対して、図面の右側部分では、転向領域7を通過した後、その図面において水平方向にある方向a2に沿って延びている。したがって、ここでは、帯状導体1の長手方向が約90°だけ変化する。左側では、帯状導体がまさしく図面平面内にある。右側では、帯状導体が当該図面平面の少し「上側」にあってそれに平行している1つの平面内にある。同時に、ここでは、帯状導体1の向きが変えられ、これは、図面の左側部分では、第1の主面3が観察者の方に向けられているのに対して、図面の右側部分では、第2の主面5が観察者の方に向けられている。例えば回転子軸上にあり得るコイル装置全体の仮想中心に関して、両主面の向きがそのように同様に変化する。
【0053】
図1に同様に示されているロッド13は、実際には、必ずしもこのようなコイル巻線の一部である必要はない。このロッドは、ここでは、帯状導体の曲げの典型を例示すために使用しているに過ぎない。すなわち、帯状導体1が、図示のように、そのような円筒形ロッドの周りで曲げられる場合、図示の方向転換は、帯状導体平面内で望ましくないゆがみなしに行うことができる。代わりに、曲げは、優しい方法で、いわゆるコーナーターン、すなわち、同時に起こる面転向および約90°の方向転換によって達成される。この仮想ロッドの軸線は、図平面に対して平行な1つの平面内において、図示された2つの導体部分11および9の平面の間にあって、両帯状導体方向a1およびa2に対して約45°の角度を有する。
【0054】
実際のコイル巻線では、そのような転向領域7内の帯状導体1は、単一の丸棒上に載置されるのではなく、むしろ、この領域内でのみ同様の外形を有するより大きな巻線支持体上に載置されることが好ましい。この巻線支持体は、好ましくは、帯状導体が、比較的直線的な部分においても転向領域においても、その巻線支持体の支持面に当接するように形成されている。この支持面は、転向領域内において、円筒面の一部分に相当する輪郭を有することが好ましい。この点に関して、
図1に示すロッドの外面は、コイル巻線の転向領域7における巻線支持体の湾曲面を表している。図示された円筒形ロッドと同様に、転向領域における巻線支持体の湾曲面が実質的に一定の曲げ半径を有することが、格別に好ましい。この曲げ半径は、例えば、1cm~10cmの範囲にあるとよい。
【0055】
転向領域7によって互いに接続された帯状導体1の2つの部分は、
図1では、1つの巻線の長手方向脚部9および横方向脚部11として示されている。しかし、これらの2つの部分は、完全に真っ直ぐである必要はなく、少なくとも部分的に曲げられていてもよい。しかし、これらの2つの部分は、これらが曲げられている場合に、転向領域7と比べて、より小さい曲げ半径を有することが重要である。
【0056】
図2は、左側部分に、本発明の一実施例による巻線支持体15の概略平面図を示し、右側部分に、その巻線支持体15の概略断面図を示す。
図2の右側部分に見られるように、巻線支持体15は、その基本形状が円筒面の一部を複製するように形成されている。このように形成された巻線支持体は、例えば、それに装着された巻線と一緒に、電気機械の円筒形回転子の円筒面上に取り付けることができる。このために、例えば、2つのこのような円筒セグメントが、それぞれ、回転子の中心回転軸Aの周りに相応の半径方向距離で対称的に取り付けられる。
図2の左側部分には、このような軸Aが、概略的に中央に、図示された巻線支持体15の背後の紙面に示されている。
【0057】
図示の巻線支持体15は、円周方向の支持面17を有し、その支持面17上に超電導帯状導体の1つまたは複数の巻層を平面的に巻回することができる。
図2の左側部分では、巻線支持体上に、支持面17における巻線の横方向脚部に属する2つ部分を認識することができる。巻線支持体15は、4つの転向領域7を有し、これらの転向領域において、
図1と関連してより詳細に説明するように、その上に巻かれる帯状導体が方向転換され、最終的に巻線の長手方向脚部に移行する。これらの長手方向脚部に属する支持面は、巻線支持体の背後の方向に延びているので、
図2には詳細に示されていない。
図2において認識することができるように、巻線支持体は4つの転向領域7に丸みを帯びた角を有し、該角を介して、その上に載置されている帯状導体が所定の曲げ半径で案内される。
【0058】
記載された幾何学的関係は、
図3に関連してさらに明確にされる。
図3は、
図2の巻線支持体の対応する2つの図を示しており、ここでは、周りを取り巻くコイル巻線21が巻線支持体上に付加的に配置されている点が
図2と異なる。このコイル巻線21は、帯状導体1の複数の重ね合わされた巻層を含み、これらの巻層の最下部は、巻線支持体の周方向の支持面17上に平坦に載置されている。巻線支持体15の後方に延びる巻線21の2つの長手方向脚部9は、破線で示されている。これらの2つの長手方向脚部9は、コイル装置全体の中心軸Aの方向に平行に延びている。このようなコイル装置全体は、例えば、この軸Aの周りに対称に配置された複数のこのようなコイル巻線21を有することができる。
図3の右側部分に見られるように、巻線の2つの横方向脚部11は、巻線支持体の湾曲した輪郭に従う曲率を有する。巻線支持体のこの曲率および中心軸Aに基づいて、横方向脚部11は半径方向外側に位置し、長手方向脚部9は半径方向内側に位置する。個々の脚部の対応する半径間の差は、巻線支持体の厚さと巻線の高さとの合計を表す距離dによって与えられる。全体として、巻線支持体15は、これらの個々の脚部の間で半径方向にある。4つの転向領域7において、帯状導体1は、巻線支持体の丸みを帯びた角の周りに、所定の巻回張力のもとで、比較的小さい曲げ半径で曲げられている。
【0059】
図4は、本発明の他の実施例による回転子25の概略断面図を示す。中心回転子軸Aに垂直な断面が図示されている。回転子は、この中心軸Aを中心として、ここでは図示されていない回転子シャフトによって回転可能に支持されており、ほぼ円形の円筒形ハウジング27を有する。この回転子25は、例えば電気機械の励磁巻線として構成することができるコイル装置23を有する。このコイル装置の一部として、ここでは例として4つの個別のコイル巻線21a~21dが示されている。赤道面Eの上方には、第1のタイプの2つのコイル巻線21aおよび21bが示されており、その第1のタイプでは、2つの長手方向脚部9がそれぞれ、半径r2を有する2つの横断方向脚部11よりも大きい半径r1を有する。それに対して、赤道面Eの下方には、異なる第2のタイプの2つのコイル巻線21cおよび21dが示されており、その第2のタイプでは、2つの長手方向脚部9がそれぞれ、半径r2を有する2つの横断方向脚部11よりも小さい半径r1を有する。ここに示されたコイル巻線の各々は、超電導帯状導体1の複数の巻層wを有する。実際のコイル装置では、
図4の例とは違って、同じタイプの複数のコイル巻線を使用するのが基本的に有利である。異なる実施形態は、ここでは説明にしか役立たない。
【0060】
図4の上部では、両方の図示されたコイル巻線21aおよび21bが、ここでは破線で示されている同じ巻線支持体15上に配置されている。これらのコイル巻線の各々は、2つの長手方向脚部9を有し、これらの脚部の各々は、中心軸Aから半径方向の距離r1を有する。これらの長手方向脚部9は、巻線支持体の半径方向外側に密着している。1つの巻線の2つの長手方向脚部は、ここでもやはり
図3におけると同様に、4つの転向領域7を介して2つの軸方向末端にある横方向脚部11に接続されており、
図4では、前方にある横方向脚部のみが見えている。2つの半径r1とr2との間の差は、距離dによって与えられ、この距離dは、ここでも巻線支持体の半径方向厚さd1と巻線の半径方向高さd2との合計として生じる。ここでは、電気的に有効な長手方向脚部9は、回転子の中心に対して大きな半径方向距離r1で配置されることが有利である。
【0061】
図4の下部では、両脚部の半径の関係が全く逆である。長手方向脚部9は、巻線支持体の半径方向内側に密着しており、転向領域7を介してそれらの長手方向脚部に接続された横方向脚部11は、巻線支持体の半径方向外側に密着している。その結果、ここではr2はr1よりも大きくなる。2つの半径r1とr2との間の差は、ここでも距離dによって与えられ、距離dは、巻線支持体の半径方向厚さd1と巻線の半径方向高さd2との合計として生じる。この第2の実施形態のタイプでは、湾曲した横方向脚部9が、巻回中に使用される巻回張力によって、湾曲した巻線支持体15の外側にしっかりと保持されることが有利である。
【0062】
図4の左下部分に概略的に示されているように、各巻線は、それぞれ複数の互いに重なり合う巻層wだけでなく、帯状導体1の複数の円周方向に隣接している軌道を有する(ここでは、2つの軌道が隣接している)。この場合もやはり、これは、巻線全体においてより高い電流を達成するための1つの可能な方法である。そのような構成を可能にするためには、巻線支持体の関連支持面は、相応に広げられるべきである。単一の帯状導体の幅は、一般に、2mm~40mm、特に4mm~12mmであることが好ましい。個々の帯状導体(ならびに複数の帯状導体または複数の隣接する帯状導体からなるスタック)に加えて、ここでは原則として、巻回中にレーベル導体(すなわち、複数の転位帯状導体から構成される複合導体)を使用することもできる。
【0063】
図5は、本発明の他の実施例によるコイル装置の切り取り部分の概略縦断面図を示す。ここには、回転子ハウジング27の領域内のこのようなコイル装置における1つのコイル巻線の半径方向外側の領域が示されている。巻線の長手方向脚部9と横方向脚部11とを互いに接続する転向領域7が示されている。長手方向脚部9は、ここでは、軸方向内側領域9a(そのうち小さな部分のみが示されている)と、これに隣接する軸方向末端領域9bとを有し、この領域9bで、長手方向脚部がS字形に曲げられている。その曲げられた部分は、ここでは次のように構成されている。すなわち、ここでは図示されていない軸からの半径方向距離が、中央領域9aから末端領域9bへ向かって減少させられるように構成されている。これに対して、転向領域7は、横方向脚部11へ向かって半径方向距離が再び増大するように構成されている。このようにして、(横方向脚部から見て)内側に向けられた方向転換にもかかわらず、長手方向脚部9の大部分を回転子の比較的大きな半径上に有利に配置することができる。