(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】発電制御システム、発電制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20221121BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20221121BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221121BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20221121BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20221121BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20221121BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20221121BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221121BHJP
B60L 50/75 20190101ALN20221121BHJP
B60L 58/12 20190101ALN20221121BHJP
B60L 58/40 20190101ALN20221121BHJP
H02J 7/00 20060101ALN20221121BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/0432
H01M8/04537
H01M8/04694
H01M8/04858
H01M8/04955
H01M8/249
B60L50/75
B60L58/12
B60L58/40
H02J7/00 P
H02J7/00 303E
(21)【出願番号】P 2020149033
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2021-05-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 大士
(72)【発明者】
【氏名】安藤 章二
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸高
(72)【発明者】
【氏名】樽家 憲司
(72)【発明者】
【氏名】中島 穣二
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-084688(JP,A)
【文献】特開2020-031029(JP,A)
【文献】特開2011-175963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
B60L 50/75
B60L 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムと、
前記電動装置に搭載されたバッテリと、
前記複数の燃料電池システムの状態と、前記バッテリの状態と、前記複数の燃料電池システムの要求電力とに基づいて、前記複数の燃料電池システムのそれぞれを制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の燃料電池システムの状態は複数の燃料電池システムの劣化度合いであり、前記制御装置は前記劣化度合いに基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動または停止させる燃料電池システムを決定
し、
前記制御装置は、前記複数の燃料電池システムの温度と第6のしきい値と比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択し、
前記第6のしきい値は、前記複数の燃料電池システムの暖機が完了する温度である、
発電制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記要求電力と第1のしきい値を比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを決定する、
請求項1に記載の発電制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記要求電力と第2のしきい値を比較した結果、前記要求電力が前記第2のしきい値以上の場合に、前記複数の燃料電池システムのうち停止させる燃料電池システムを決定する、
請求項2に記載の発電制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記バッテリの状態と第3のしきい値を比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを決定する、
請求項1に記載の発電制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記バッテリの状態と第4のしきい値を比較した結果、前記バッテリの状態であるSOC(State Of Charge)が前記第4のしきい値以上の場合に、前記複数の燃料電池システムのうち停止させる燃料電池システムを決定する、
請求項4に記載の発電制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記要求電力と前記バッテリの状態の双方に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動または停止させる燃料電池システムを決定する、
請求項1に記載の発電制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記複数の燃料電池システムそれぞれの発電時間と第5のしきい値とを比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択する、
請求項2または請求項3に記載の発電制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記複数の燃料電池システムそれぞれの発電時間と前記第5のしきい値とを比較した結果、前記発電時間が前記第5のしきい値以上の前記複数の燃料電池システムのうち停止させる燃料電池システムを選択する、
請求項7に記載の発電制御システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記複数の燃料電池システムの温度と前記第6のしきい値と比較した結果、前記温度が前記第6のしきい値以上の場合に、前記複数の燃料電池システムのうち停止させる燃料電池システムを選択する、
請求項
1に記載の発電制御システム。
【請求項10】
コンピュータが、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態と、移動体に搭載されたバッテリの状態と、前記複数の燃料電池システムの要求電力とに基づいて、前記複数の燃料電池システムのそれぞれを制御し、
前記複数の燃料電池システムの状態は複数の燃料電池システムの劣化度合いであり、前記劣化度合いに基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動または停止させる燃料電池システムを決定
し、
前記複数の燃料電池システムの温度と第6のしきい値と比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択し、
前記第6のしきい値は、前記複数の燃料電池システムの暖機が完了する温度である、
発電制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態と、移動体に搭載されたバッテリの状態と、前記複数の燃料電池システムの要求電力とに基づいて、前記複数の燃料電池システムのそれぞれを制御させ、
前記複数の燃料電池システムの状態は複数の燃料電池システムの劣化度合いであり、前記劣化度合いに基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動または停止させる燃料電池システムを決定さ
せ、
前記複数の燃料電池システムの温度と第6のしきい値と比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択させ、
前記第6のしきい値は、前記複数の燃料電池システムの暖機が完了する温度である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電制御システム、発電制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された燃料電池システムに関する技術として、アクセル踏込量、二次電池の温度、蓄電量に基づいて算出された要求電力に基づいて燃料電池システムの発電を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に複数の燃料電池システムが搭載された場合の制御については考慮されていなかった。したがって、制御のやり方によっては、燃料電池システムのそれぞれの劣化が偏在化する場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、複数の燃料電池システムの全体としての劣化を抑制することができる発電制御システム、発電制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る発電制御システム、発電制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る発電制御システムは、電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムと、前記電動装置に搭載されたバッテリと、前記複数の燃料電池システムの状態と、前記バッテリの状態と、前記複数の燃料電池システムの要求電力とに基づいて、前記複数の燃料電池システムのそれぞれを制御する制御装置と、を備え、前記複数の燃料電池システムの状態は複数の燃料電池システムの劣化度合いであり、前記制御装置は前記劣化度合いに基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動または停止させる燃料電池システムを決定し、前記制御装置は、前記複数の燃料電池システムの温度と第6のしきい値と比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択し、前記第6のしきい値は、前記複数の燃料電池システムの暖機が完了する温度である、発電制御システムである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記制御装置は、前記要求電力と第1のしきい値(第3しきい値)を比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを決定するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記制御装置は、前記要求電力と第2のしきい値(第4しきい値)を比較した結果、前記要求電力が前記第2のしきい値以上の場合に、前記複数の燃料電池システムのうち停止させる燃料電池システムを決定するものである。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記制御装置は、前記バッテリの状態と第3のしきい値(第1しきい値)を比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを決定するものである。
【0010】
(5):上記(4)の態様において、前記制御装置は、前記バッテリの状態と第4のしきい値(第2しきい値)を比較した結果、前記バッテリの状態であるSOC(State Of Charge)が前記第4のしきい値以上の場合に、前記複数の燃料電池システムのうち停止させる燃料電池システムを決定するものである。
【0011】
(6):上記(1)の態様において、前記制御装置は、前記要求電力と前記バッテリの状態の双方に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動または停止させる燃料電池システムを決定するものである。
【0012】
(7):上記(2)または(3)の態様において、前記制御装置は、前記複数の燃料電池システムそれぞれの発電時間と第5のしきい値(第5しきい値)とを比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択するものである。
【0013】
(8):上記(7)の態様において、前記制御装置は、前記複数の燃料電池システムそれぞれの発電時間と前記第5のしきい値とを比較した結果、前記発電時間が前記第5のしきい値以上の前記複数の燃料電池システムのうち停止させる燃料電池システムを選択するものである。
【0015】
(9):上記(1)の態様において、前記制御装置は、前記複数の燃料電池システムの温度と前記第6のしきい値と比較した結果、前記温度が前記第6のしきい値以上の場合に、前記複数の燃料電池システムのうち停止させる燃料電池システムを選択するものである。
【0017】
(10):この発明の一態様に係る発電制御方法は、コンピュータが、電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態と、移動体に搭載されたバッテリの状態と、前記複数の燃料電池システムの要求電力とに基づいて、前記複数の燃料電池システムのそれぞれを制御し、前記複数の燃料電池システムの状態は複数の燃料電池システムの劣化度合いであり、前記劣化度合いに基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動または停止させる燃料電池システムを決定し、前記複数の燃料電池システムの温度と第6のしきい値と比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択し、前記第6のしきい値は、前記複数の燃料電池システムの暖機が完了する温度である、発電制御方法である。
【0018】
(11):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態と、移動体に搭載されたバッテリの状態と、前記複数の燃料電池システムの要求電力とに基づいて、前記複数の燃料電池システムのそれぞれを制御させ、前記複数の燃料電池システムの状態は複数の燃料電池システムの劣化度合いであり、前記劣化度合いに基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動または停止させる燃料電池システムを決定させ、前記複数の燃料電池システムの温度と第6のしきい値と比較した結果に基づいて、前記複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択させ、前記第6のしきい値は、前記複数の燃料電池システムの暖機が完了する温度である、プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
上記(1)~(13)の態様によれば、複数の燃料電池システムの全体としての劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る電動車両の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るユニットを含む構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る燃料電池システムの構成の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係るECUの構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る第1の制御例におけるシステム要求電力とバッテリSOCの時間変化の一例を示す図である。
【
図7】実施形態の第1の制御例におけるECUの処理手順例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る第2の制御例におけるシステム要求電力とバッテリSOCの時間変化の一例を示す図である。
【
図9】実施形態の第2の制御例におけるECUの処理手順例を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態の第2変形例におけるECUの処理手順例を示すフローチャートである。
【
図13】実施形態に係る記憶部が記憶する情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下では、発電制御システムが、電動車両に搭載されている例について説明する。電動車両は、例えば、燃料電池において発電された電力を走行用の電力または車載機器の動作用の電力として用いる燃料電池車両である。電動車両は、電力により動作する電動装置の一例であり、二輪や三輪、四輪等の自動車である。また、電動車両は、例えば、後述する燃料電池システムを複数搭載することが可能なバスやトラック等の大型車両であってもよい。発電制御システムは、電動車両以外の電動装置(例えば、船舶、飛行体、ロボット)に搭載されてもよく、また、定置型の燃料電池システムに搭載されてもよい。
【0022】
[電動車両]
図1は、本実施形態に係る電動車両1の概略構成の一例を示す図である。
図1のように、電動車両1は、キャブバッグ2、トランスミッション3、ユニット4A、ユニット4B、シャフト5、フレーム6、および車輪7を備えている。
【0023】
キャブバッグ2は、運手席等を含む部分である。トランスミッション3は変速機である。ユニット4A、4Bは、燃料電池システムを含む。以下の説明において、ユニット4A、4Bのうち1つを特定しない場合は、ユニット4という。シャフト5は、例えばプロペラシャフトであり、トランスミッション3と、車輪7に接続されているギアとを接続する部品である。なお、
図1に示した電動車両1の概略構成は一例であり、構成はこれに限らない。例えば、ユニット4は2つに限らず、1つ以上であればよい。
【0024】
[ユニット]
次に、ユニット4の構成例を説明する。
図2は、本実施形態に係るユニット4を含む構成の一例を示すブロック図である。
図2のように、ユニット4Aは、燃料電池システム200A、燃料電池システム200B、BATVCU34A、変換部32A、モータ12A、DCDC変換部45A、補機46A、およびバッテリ40Aを備えている。ユニット4Bは、燃料電池システム200C、燃料電池システム200D、BATVCU34B、変換部32B、モータ12B、DCDC変換部45B、補機46B、およびバッテリ40Bを備えている。
【0025】
ユニット4A、4Bは、ECU100に接続されている。ECU100には、記憶部150が接続されている。なお、ECU100は、制御装置または制御部の一例である。
【0026】
燃料電池システム200Aは、FCVCV244A、燃料電池201A、およびA/P202Aを備える。燃料電池システム200Bは、FCVCV244B、燃料電池201B、およびA/P202Bを備える。燃料電池システム200Cは、FCVCV244C、燃料電池201C、およびA/P202Cを備える。燃料電池システム200Dは、FCVCV244D、燃料電池201D、およびA/P202Dを備える。
【0027】
以下の説明において、燃料電池システム200A、燃料電池システム200B、燃料電池システム200C、および燃料電池システム200Dのうちの1つを特定しない場合は、燃料電池システム200という。BATVCU34AおよびBATVCU34Bのうちの1つを特定しない場合は、BATVCU34という。モータ12Aおよびモータ12Bのうちの1つを特定しない場合は、モータ12という。制御部80Aおよび制御部80Bのうちの1つを特定しない場合は、制御部80という。DCDC変換部45AおよびDCDC変換部45Bのうちの1つを特定しない場合は、DCDC変換部45という。補機46Aおよび補機46Bのうちの1つを特定しない場合は、補機46という。バッテリ40Aおよびバッテリ40Bのうちの1つを特定しない場合は、バッテリ40という。FCVCV244A、FCVCV244B、FCVCV244C、およびFCVCV244Dのうちの1つを特定しない場合は、FCVCV244という。燃料電池201A、燃料電池201B、燃料電池201C、および燃料電池201Dのうちの1つを特定しない場合は、燃料電池201という。A/P202A、A/P202B、A/P202C、およびA/P202Dのうちの1つを特定しない場合は、A/P202という。
【0028】
FCVCV(Fuel Cell Voltage Control Unit)244は、例えば、燃料電池201の電圧を昇圧する昇圧型のDC-DC(直流-直流)コンバータである。燃料電池201は、例えば水素を発電エネルギーとしたエネルギー源である。A/P202は、エアーポンプである。なお、燃料電池システム200の詳細な構成例は後述する。
【0029】
バッテリ40は、エネルギー源であり、例えば、ニッケル・水素電池、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン電池などのような充電と放電とを繰り返すことができる電池である。なお、バッテリ40は、バッテリ40の電流値、電圧値、温度を検出するバッテリセンサを備えている。また、バッテリ40は、例えば外部の充電設備と接続して充放電装置から供給される電力を充電するようにしてもよい。
【0030】
BATVCU(Battery Voltage Control Unit)34は、例えば、昇圧型のDC-DCコンバータである。BATVCU34は、バッテリ40から供給される直流電圧を昇圧して変換部32に供給する。BATVCU34は、モータ12から供給される回生電圧、または、燃料電池システム200から供給される電力をバッテリ40に出力する。
【0031】
DCDC変換部45は、直流-直流変換を行う。DCDC変換部45は、例えばバッテリ40が出力する直流電圧を、12Vの直流電圧に変換する。
【0032】
補機46は、その他の車載機器等であり、例えば、車両センサ461(車両センサ461A、461B)、ブレーキ装置462(ブレーキ装置462A、462B)等を備える。車両センサ461には、電動車両1の加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、電動車両1の向きを検出する方位センサ等が含まれてもよい。また、車両センサ461には、電動車両1の位置を検出する位置センサが含まれてもよい。位置センサは、例えば、電動車両1に搭載されたGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や、GPS(Global Positioning System)の受信機から電動車両1の位置情報を取得する。また、車両センサ461には、燃料電池システム200の温度を測定する温度センサが含まれてもよい。
【0033】
ECU(Electronic Control Unit)100は、例えば、複数の燃料電池システム200の状態と、バッテリ40の状態と、複数の燃料電池システム200の要求電力とに基づいて、複数の燃料電池システム200のそれぞれを制御する。ECU100は、例えば、要求電力と、記憶部150が記憶するしきい値とを比較し、比較した結果に基づいて、複数の燃料電池システム200のそれぞれを制御する。ECU100は、バッテリ40の状態と、記憶部150がしきい値とを比較し、比較した結果に基づいて、複数の燃料電池システム200のそれぞれを制御する。なお、制御方法例は後述する。また、ECU100は、変換部32A、モータ12A、変換部32B、およびモータ12Bを制御する。なお、ユニット4Aは、制御部80A(80、不図示)を備え、ユニット4Bは制御部80B(80、不図示)を備えていてもよい。この場合、ユニット4Aの制御部は、ECU100の制御に応じて、変換部32A、モータ12Aを制御するようにしてもよい。また、ユニット4Bの制御部は、ECU100の制御に応じて、変換部32B、モータ12Aを制御するようにしてもよい。
【0034】
記憶部150は、例えば、ECU100が制御の際に用いる各種しきい値、ECU100が制御に用いるプログラム等を記憶する。記憶部150は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。
【0035】
ECU100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め電動車両1のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで、例えば記憶部150であるHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0036】
[燃料電池システム]
ここで、燃料電池システム200の構成例に説明する。
図3は、本実施形態に係る燃料電池システム200の構成の一例を示す図である。
図2のように、燃料電池システム200は、例えば、燃料電池スタック210、コンプレッサ214、封止入口弁216、加湿器218、気液分離器220、排気循環ポンプ(P)222、水素タンク226、水素供給弁228、水素循環部230、気液分離器232、温度センサ(T)240、コンタクタ242、FCVCU244、燃料電池制御装置246、および燃料電池冷却システム280を備える。なお、
図3の構成は一例であり、燃料電池システム200の構成はこれに限らない。
【0037】
コンプレッサ214は、燃料電池制御装置246により駆動制御されるモータ等を備え、このモータの駆動力によって外部から空気を取り込んで圧縮し、圧縮後の空気をカソード210Bに接続された酸化剤ガス供給路250に送り込むことで、燃料電池に酸化ガスを圧送する。
【0038】
封止入口弁216は、コンプレッサ214と、燃料電池スタック210のカソード210Bに空気を供給可能なカソード供給口212aとを接続する酸化剤ガス供給路250に設けられ、燃料電池制御装置246の制御によって開閉される。
【0039】
加湿器218は、コンプレッサ214から酸化剤ガス供給路250に送り込まれた空気を加湿する。例えば、加湿器218は、例えば中空糸膜等の水透過膜を備え、コンプレッサ214からの空気を、水透過膜を介して接触させることで水分を空気に添加して空気を加湿する。
【0040】
気液分離器220は、カソード210Bで消費されることなく、カソード排出口212bから酸化剤ガス排出路252に排出されたカソード排ガスと液水とをカソードの排気路262を介して大気中に排出される。また、気液分離器220は、酸化剤ガス排出路252に排出されたカソード排ガスと液水とを分離し、分離されたカソード排ガスのみを排気再循環路254に流入させてもよい。
【0041】
排気循環ポンプ222は、排気再循環路254に設けられ、気液分離器220から排気再循環路254に流入したカソード排ガスを、封止入口弁216からカソード供給口212aに向かい酸化剤ガス供給路250を流通する空気と混合し、カソード210Bに再び供給する。
【0042】
水素タンク226は、水素を圧縮した状態で貯留する。水素供給弁228は、水素タンク226と、燃料電池スタック210のアノード210Aに水素を供給可能なアノード供給口212cとを接続する燃料ガス供給路256に設けられている。水素供給弁228は、燃料電池制御装置246の制御によって開弁した場合に、水素タンク226に貯留された水素を燃料ガス供給路256に供給する。
【0043】
水素循環部230は、例えば、燃料電池201に燃料ガスを循環供給するポンプである。水素循環部230は、例えば、アノード210Aで消費されることなく、アノード排出口212dから燃料ガス排出路258に排出されたアノード排ガスを、気液分離器232に流入する燃料ガス供給路256に循環させる。
【0044】
気液分離器232は、水素循環部230の作用により燃料ガス排出路258から燃料ガス供給路256に循環するアノード排ガスと液水とを分離する。気液分離器232は、液水から分離されたアノード排ガスを、燃料電池スタック210のアノード供給口212cに供給する。また、気液分離器232に排出された液水はドレイン管264を介して大気中に排出される。
【0045】
温度センサ240は、燃料電池スタック210のアノード210Aおよびカソード210Bの温度を検出し、検出信号(温度情報)を燃料電池制御装置246に出力する。
【0046】
コンタクタ242は、燃料電池スタック210のアノード210Aおよびカソード210Bと、FCVCU244との間に設けられている。コンタクタ242は、燃料電池制御装置246からの制御に基づいて、燃料電池スタック210とFCVCU244との間を電気的に接続させ、または遮断する。
【0047】
FCVCU244は、コンタクタ242を介した燃料電池スタック210のアノード210Aおよびカソード210Bと電気負荷との間に配置されている。FCVCU244は、電気負荷側に接続された出力端子248の電圧を、燃料電池制御装置246によって決定された目標電圧に昇圧する。FCVCU244は、例えば、燃料電池スタック210から出力された電圧を目標電圧に昇圧して出力端子248に出力する。
【0048】
燃料電池制御装置246は、ECU100による発電制御にしたがって、燃料電池システム200における発電の開始や終了、発電量等を制御する。また、燃料電池制御装置246は、燃料電池冷却システム280を用いて燃料電池システム200の温度調整に関する制御を行う。燃料電池制御装置246は、例えばFC-ECUといった制御装置に置き換えられてもよい。また燃料電池制御装置246は、ECU100と連携して電動車両1の発電制御を行ってもよい。
【0049】
燃料電池冷却システム280は、燃料電池制御装置246による制御にしたがって、例えば、温度センサ240により検出された燃料電池スタック210の温度が所定のしきい値以上である場合に、燃料電池システム200を冷却する。例えば、燃料電池冷却システム280は、燃料電池スタック210内に設けられた流路に冷媒を巡回させて燃料電池スタック210の熱を排出することで、燃料電池スタック210の温度を冷却する。また、燃料電池冷却システム280は、燃料電池システム200が発電中である場合に、温度センサ240による温度が所定温度範囲で維持されるように、燃料電池スタック210を加熱または冷却させる制御を行ってもよい。
【0050】
[制御装置]
次に、ユニット4A、4Bが制御部80(80A、80B)を備える場合、制御部80の構成例を説明する。
図4は、本実施形態に係る制御部80の構成の一例を示すブロック図である。制御部80は、例えば、モータ制御部82、ブレーキ制御部84、電力制御部86、および走行制御部88を備える。なお、制御部80を備えていない場合は、ECU100が以下の制御を行う。
【0051】
モータ制御部82は、車両センサ461の出力に基づいて、モータ12に要求される駆動力を算出し、算出した駆動力を出力させるようにモータ12を制御する。
【0052】
ブレーキ制御部84は、車両センサ461の出力に基づいて、ブレーキ装置462に要求される制動力を算出し、算出した制動力を出力させるようにブレーキ装置462を制御する。
【0053】
電力制御部86は、バッテリ40の充電状況(蓄電状況)を管理する。例えば、電力制御部86は、バッテリ40が備えるバッテリセンサの出力に基づいて、バッテリ40のSOC(State Of Charge;バッテリ充電率)を算出する。電力制御部86は、例えば、バッテリ40のSOCが所定値未満である場合には、燃料電池システム200による発電によってバッテリ40を充電させるための制御を実行したり、外部の充電設備からの電力供給による充電を乗員に促す情報を報知させる。また、電力制御部86は、バッテリ40のSOCが所定値より大きい場合に充電制御を停止したり、燃料電池システム200で発電された余剰電力を補機等で消費させるための制御を行ってもよい。
【0054】
走行制御部88は、例えば車両センサ461により取得される情報に基づいて、電動車両1に対する運転制御を実行する。また、走行制御部88は、車両センサ461により取得される情報に加えて、地図情報や監視ユニット(不図示)から取得される情報に基づいて電動車両1の運転制御を実行してもよい。監視ユニットとは、例えば、電動車両1の外部の空間を撮像するカメラや、電動車両1の外部を検知範囲とするレーダあるいはLIDAR(Light Detection and Ranging)、これらの出力に基づいてセンサフュージョン処理を行う物体認識装置等を含む。監視ユニットは、電動車両1の周辺に存在する物体の種類(特に、車両、歩行者、および自転車)を推定し、その位置や速度の情報と共に走行制御部88に出力する。運転制御とは、例えば、電動車両1の操舵または加減速のうち一方または双方を制御することで、電動車両1を走行させるものである。
【0055】
[ECU]
次に、ECU100の構成例を説明する。
図5は、本実施形態に係るECU100の構成の一例を示すブロック図である。
図5のように、ECU100は、燃料電池状態取得部101、バッテリ状態取得部102、温度取得部103、比較部104、および発電制御部105を備えている。
【0056】
燃料電池状態取得部101は、燃料電池システム200それぞれの状態に関する情報を取得する。
【0057】
バッテリ状態取得部102は、バッテリ40の状態に関する情報を取得する。
【0058】
温度取得部103は、燃料電池システム200の温度に関する情報を取得する。
【0059】
比較部104は、算出されたSOCと記憶部150が記憶するしきい値とを比較する。比較部104は、算出された要求電力と記憶部150が記憶するしきい値とを比較する。比較部104は、温度と記憶部150が記憶するしきい値とを比較する。
【0060】
発電制御部105は、車両センサ461の出力に基づいて、バッテリ40と燃料電池システム200に要求される要求電力量を算出する。例えば、発電制御部105は、アクセル開度と車速に基づいてモータ12が出力すべきトルクを算出し、トルクとモータ12の回転数から求められる駆動軸負荷電力と、補機46等が要求する電力とを合計して要求電力量を算出する。例えば、電力制御部86は、バッテリ40が備えるバッテリセンサの出力に基づいて、バッテリ40のSOCを算出する。なお、発電制御部105は、制御部80からSOC情報を取得するようにしてもよい。発電制御部105は、比較部104が比較した結果に基づいて、複数の燃料電池システム200のそれぞれをオン状態またはオフ状態に制御する。なお、発電制御部105が行う処理の一部を制御部80が行ってもよい。
【0061】
[第1の制御例]
次に、第1の制御例を説明する。第1の制御では、電動車両1が例えばアイドリング状態のとき、ECU100がSOCに応じて、複数の燃料電池システムのそれぞれを制御する
図6は、本実施形態に係る第1の制御例におけるシステム要求電力とバッテリSOCの時間変化の一例を示す図である。
図6において横軸は時刻[s]である。線g11は、縦軸がSOC値であり、時刻に対するバッテリSOCの変化である。なお、縦軸が電圧値[V]であってもよい。線g12は、縦軸が電力値[W]であり、時刻に対するシステム要求電力の変化である。破線g21は第1しきい値(SOC15)を示し、破線g22は第2しきい値(SOC13)を示す。第1しきい値は、発電停止実施しきい値であり、第2しきい値は、発電停止解除しきい値である。なお、要求電力の大小関係は、W11<W12<W13<W14である。SOCの大小関係は、SOC11<SOC12<SOC13<SOC14<SOC15である。
【0062】
時刻t0からt11の期間、複数の燃料電池システム200による発電電力が、電動車両1の負荷による消費電力より低いためバッテリ40のSOCがSOC11からSOC15まで上昇する。この期間の要求電力はW13である。ECU100は、SOCが第1しきい値(g21)以下であるため、4基の燃料電池システム200(200A、200B、200C、200D)を全てオン状態(動作状態)に制御する。
【0063】
時刻t11からt12の期間、SOCが第1しきい値に達したため、バッテリ40に充電できなくなる。このため、ECU100は、負荷を停止するように制御する。さらに、要求電力がW13のままであるため、ECU100は、4つの燃料電池システム200のうち2基をオフ状態(停止状態)、2基をオン状態に制御する。なお、この例では、2基の燃料電池システム200を停止させる例を説明するが、停止させる燃料電池システム200は1つ以上であればよい。この制御によって、SOCはSOC15からSOC13に下がる。
【0064】
時刻t12からt13の期間、SOCが第2しきい値になり、要求電力がW13のままであるため、ECU100は、停止させていた2基の燃料電池システム200をオン状態にして4基の燃料電池システム200を全てオン状態に制御する。この制御によって、SOCはSOC13からSOC15に上がる。
【0065】
時刻t13のとき、負荷が下がり要求電力がW13からW11に下がる。時刻t13からt14の期間、要求電力が下がったため、ECU100は4基の燃料電池システム200全てをオフ状態に制御する。この制御によって、SOCはSOC15からSOC14に下がる。
【0066】
時刻t14からt15の期間、負荷が変化して要求電力がW11から、W13より小さくW11より大きいW12に増加するが、ECU100は、SOCが第2しきい値以上であるため、4基の燃料電池システム200全てをオフ状態の制御を継続する。この制御によって、SOCはSOC14からSOC13に下がる。
【0067】
時刻t15のとき、要求電力がW12から、W13より大きいW14に上がる。時刻t15からt16の期間、要求電力が上がったため、ECU100は4基の燃料電池システム200全てをオン状態に制御する。この制御によって、SOCはSOC13からSOC12に下がる。
【0068】
このように、ECU100は、SOCが第1しきい値に達した後、1基以上の燃料電池システム200をオフ状態に制御する。そして、ECU100は、SOCが第1しきい値以下かつ第2しきい値以上である場合に燃料電池システム200のオフ状態を継続する。第1しきい値と第2しきい値とは、ヒステリシスを有している。そして、ECU100は、SOCが第2しきい値未満になった場合、全ての燃料電池システム200をオン状態に制御する。第1しきい値と第2しきい値との間は、所定発電域である。
【0069】
次に、ECU100の処理手順例を説明する。
図7は、本実施形態の第1の制御例におけるECU100の処理手順例を示すフローチャートである。なお、処理開始時、4基の燃料電池システム200が動作(オン状態)であるとする。
【0070】
燃料電池状態取得部101は、燃料電池システム200それぞれの状態に関する情報を取得する(ステップS11)。バッテリ状態取得部102は、バッテリ40に関する情報を取得する(ステップS12)。
【0071】
発電制御部105は、バッテリ40が備えるバッテリセンサの出力に基づいて、バッテリ40のSOCを算出する(ステップS13)。
【0072】
比較部104は、算出されたSOCと、記憶部150が記憶する第1しきい値と第2しきい値とを比較する(ステップS14)。発電制御部105は、比較部104が比較した結果、SOCが第1しきい値以上であるか否かを判別する(ステップS15)。
【0073】
SOCが第1しきい値未満であると判別された場合(ステップS15;NO)、発電制御部105は、第2しきい値以上であるか否かを判別する(ステップS18)。SOCが第2しきい値以上であると判別した場合(ステップS17;YES)、発電制御部105は、ステップS16の処理に進める。
【0074】
SOCが第1しきい値以上であると判別された場合(ステップS15;YES)、または、SOCが第2しきい値以上であると判別した場合(ステップS17;YES)、発電制御部105は、1基以上の燃料電池システム200を停止(オフ状態)に制御する(ステップS16)。処理後、発電制御部105は、ステップS11の処理に戻す。
【0075】
SOCが第2しきい値未満であると判別した場合(ステップS17;NO)、発電制御部105は、全ての燃料電池システム200を動作(オン状態)させる(ステップS18)。処理後、発電制御部105は、ステップS11に処理を戻す。
【0076】
なお、
図7の処理において、ECU100は、
図6のように要求電力の増減にも基づいて、燃料電池システム200の制御状態の維持や変更を行うようにしてもよい。すなわち、ECU100は、要求電力とバッテリ40の状態の双方に基づいて、複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択するようにしてもよい。この場合、ECU100は、例えば要求電力とバッテリ40の状態に基づくスコアを算出し、算出したスコアに基づいて、複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択するようにしてもよい。
【0077】
[第2の制御例]
次に、第2の制御例を説明する。第2の制御では、電動車両1が例えばアイドリング状態のとき、ECU100が要求電力に応じて、複数の燃料電池システムのそれぞれを制御する。
図8は、本実施形態に係る第2の制御例におけるシステム要求電力とバッテリSOCの時間変化の一例を示す図である。
図8において横軸は時刻[s]である。線g13は、縦軸がSOCであり、時刻に対するバッテリSOCの変化である。なお、縦軸は電圧値[V]であってもよい。線g14は、縦軸が電力値[W]であり、時刻に対するシステム要求電力の変化である。破線g23は第3しきい値(W25)を示し、破線g24は第4しきい値(W23)を示す。第3しきい値は、発電停止解除しきい値であり、第4しきい値は、発電停止実施しきい値である。なお、要求電力の大小関係は、W21<W22<W23<W24<W25<W26<W27である。SOCの大小関係は、SOC21<SOC22<SOC23<SOC24である。
【0078】
時刻t0からt21の期間、複数の燃料電池システム200による発電電力が、電動車両1の負荷による消費電力より低いためバッテリ40のSOCがSOC21からSOC23まで上昇する。この期間の要求電力はW26である。ECU100は、要求電力が第3しきい値(g23)以上であるため、4基の燃料電池システム200を全てオン状態(動作状態)に制御する。
【0079】
時刻t21のとき、要求電力がW26から、W26より小さいW23に上がる。時刻t21からt23の期間、要求電力が第4しきい値(g24)より小さいため、ECU100は、4つの燃料電池システム200のうち2基をオフ状態(停止状態)、2基をオン状態に制御する。なお、この例では、2基の燃料電池システム200を停止させる例を説明するが、停止させる燃料電池システム200は1つ以上であればよい。この制御によって、SOCはSOC23からSOC24に上がる。
【0080】
時刻t23のとき、要求電力がW23から、W23より小さいW21に下がる。時刻t23からt24の期間、要求電力が第4しきい値(g24)より小さため、ECU100は、4つの燃料電池システム200のうち2基をオフ状態(停止状態)、2基をオン状態に制御する状態を継続する。この制御によって、SOCはSOC24のままである。
【0081】
時刻t24のとき、要求電力がW21から、W26より小さくW23より大きいW24に上がる。時刻t24からt25の期間、要求電力が第4しきい値(g24)以上かつ第3しきい値以下であるため、ECU100は、4つの燃料電池システム200のうち2基をオフ状態(停止状態)、2基をオン状態に制御する状態を継続する。この制御によって、SOCはSOC24からSOC23に下がる。
【0082】
時刻t25のとき、要求電力がW24から、W26より大きいW27に上がる。時刻t25からt26の期間、要求電力が第3しきい値(g23)より大きいため、ECU100は、4つの燃料電池システム200全てをオン状態に制御する。この制御によって、SOCはSOC23からSOC22に下がる。
【0083】
このように、ECU100は、要求電力が第3しきい値以下になったとき、1基以上の燃料電池システム200をオフ状態に制御する。そして、ECU100は、要求電量が第3しきい値以下かつ第4しきい値以上である場合に燃料電池システム200のオフ状態を継続する。第1しきい値と第2しきい値とは、ヒステリシスを有している。そして、ECU100は、要求電力が第4しきい値未満になった場合、全ての燃料電池システム200をオン状態に制御する。第3しきい値と第4しきい値との間は、所定発電域である。
【0084】
次に、ECU100の処理手順例を説明する。
図9は、本実施形態の第2の制御例におけるECU100の処理手順例を示すフローチャートである。なお、処理開始時、4基の燃料電池システム200が動作(オン状態)であるとする。また、第1の制御と同様の処理については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0085】
ECU100は、ステップS11~S12の処理を行う。
【0086】
発電制御部105は、車両センサ461の出力に基づいて、バッテリ40と燃料電池システム200に要求される要求電力量を算出する(ステップS101)。発電制御部105は、バッテリ40が備えるバッテリセンサの出力に基づいて、バッテリ40のSOCを算出する(ステップS13)。
【0087】
比較部104は、算出された要求電力と、記憶部150が記憶する第3しきい値と第4しきい値とを比較する(ステップS102)。発電制御部105は、比較部104が比較した結果、要求電力が第3しきい値未満であるか否かを判別する(ステップS103)。
【0088】
要求電力が第3しきい値以上である判別された場合(ステップS103;NO)、発電制御部105は、比較部104が比較した結果、要求電力が第4しきい値以上であるか否かを判別する(ステップS105)。要求電力が第4しきい値以上であると判別した場合(ステップS105;YES)、発電制御部105は、ステップS104の処理に進める。
【0089】
要求電力が第3しきい値未満であると判別された場合(ステップS103;YES)、または要求電力が第4しきい値以上であると判別された場合(ステップS105;YES)、発電制御部105は、1基以上の燃料電池システム200を停止(オフ状態)に制御する(ステップS104)。発電制御部105は、ステップS11の処理に戻す。
【0090】
要求電力が第4しきい値未満であると判別された場合(ステップS105;NO)、発電制御部105は、全ての燃料電池システム200を動作(オン状態)させる(ステップS106)。処理後、発電制御部105は、ステップS11に処理を戻す。
【0091】
なお、
図9の処理においても、ECU100は、要求電力とバッテリ40の状態の双方に基づいて、複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択するようにしてもよい。この場合、ECU100は、例えば要求電力とバッテリ40の状態に基づくスコアを算出し、算出したスコアに基づいて、複数の燃料電池システムのうち作動させる燃料電池システムを選択するようにしてもよい。
【0092】
[第1変形例]
ここで、第1変形例を説明する。第1の制御および第2の制御では、所定の条件を満たす場合に4基のうちの2基の燃料電池システム200をオフ状態にする例を説明した。第1変例では、発電時間に基づいてオフ状態またはオフ状態にする燃料電池システム200を設定する方法例を説明する。
【0093】
図8の時刻t21からt25の期間、ECU100は、4基のうち2基をランダムに選択してもよく、順番に選択してもよく、
図10のように発電時間が多い順に選択するようにしてもよい。
図10は、第1変形例を説明するための図である。
図10において、横軸は燃料電池システム番号であり、縦軸は発電時間[(例えば分)]である。破線g101は、発電時間に対する第5しきい値(TIth)を示している。符号g111は第1の燃料電池システム200Aの発電時間を示し、符号g112は第2の燃料電池システム200Bの発電時間を示し、符号g113が第3の燃料電池システム200Cの発電時間を示し、符号g114が第4の燃料電池システム200Dの発電時間を示している。
【0094】
図10の例では、発電時間が第5しきい値以上であるのが第1の燃料電池システム200Aと第3の燃料電池システム200Cであり、発電時間が第5しきい値未満であるのが第2の燃料電池システム200Bと第4の燃料電池システム200Dである。なお、第5しきい値は、発電制御部105が複数の燃料電池システムの発電時間を、例えば平均して求めるようにしてもよく、予め定められた値であってもよい。この場合、時刻t21からt25の期間、ECU100は、発電時間が第5しきい値以上の第1の燃料電池システム200Aと第3の燃料電池システム200Cを停止させ、発電時間が第5しきい値未満の第2の燃料電池システム200Bと第4の燃料電池システム200Dを停止させるように制御する。
【0095】
なお、上述した例では、発電制御部105が、第5しきい値と比較して停止させるまたは動作させる燃料電池システム200を選択する例を説明したが、これに限らない。発電制御部105は、複数の燃料電池システム200それぞれの発電時間を多い順または少ない順ソートして、発電時間が多い順に停止させる燃料電池システム200を選択するようにしてもよく、発電時間が短い順に動作させる燃料電池システム200を選択するようにしてもよい。なお、発電制御部105は、発電時間としきい値を比較して結果に基づいて、動作させる燃料電池システム200を選択するようにしてもよく、停止させる燃料電池システム200を選択するようにしてもよい。
【0096】
ここで、ECU100の処理手順例を、
図9を参照して説明する。
図9において処理が異なるのは、ステップS103である。
発電制御部105は、停止させる燃料電池システム200を、発電時間に基づいて選択する(ステップS103)。なお、第5しきい値の算出、発電時間と第5しきい値との比較も発電制御部105が、例えばステップS103で行う。
【0097】
なお、上述した例では、第2の制御に第1変形例を適用する例を説明するが、第1の制御にも第1変形例を適用することは可能である。
【0098】
[第2変形例]
次に、第2変形例を説明する。第1の制御および第2の制御では、所定の条件を満たす場合に4基のうちの2基の燃料電池システム200をオフ状態にする例を説明した。第1変例では、燃料電池システム200の温度情報に基づいてオフ状態またはオフ状態にする燃料電池システム200を設定する方法例を説明する。
【0099】
ECU100は、温度としきい値とを比較した結果に基づいて選択するようにしてもよい。
図11は、第2変形例を説明するための図である。
図11において、横軸は時刻[s]である。線g13は、縦軸がSOCであり、時刻に対するバッテリSOCの変化である。なお、線g13の縦軸は電圧値[V]であってもよい。線g14は、縦軸が電力値[W]であり、時刻に対するシステム要求電力の変化である。破線g41は、縦軸が温度[度]であり、時刻に対する燃料電池システム200の温度の変化である。破線g42は第6しきい値(Tth)を示す。
【0100】
燃料電池システム200の温度は、例えば温度センサ240(
図3)によって検出された温度である。第6しきい値は、燃料電池システム200の動作を完了させるための暖機完了しきい値(温度のしきい値)である。
【0101】
図11の例では、要求電力の線g14と、SOCの線g13との変化が
図8と同じであるが、発電制御部105は、時刻t0からt26の期間の温度が第6しきい値以未満であるため、燃料電池システム200の動作を停止させない。仮に時刻t26以降で、温度が第6しきい値以上になった場合に、少なくとも1つ以上の燃料電池システム200の動作を停止させる。
【0102】
なお、
図11に示した温度は、例えば4つの燃料電池システム200の温度の平均である。温度は、燃料電池システム200毎であってもよい。この場合、仮に時刻t21からt25の期間、発電制御部105は、温度が第6しきい値以上であった燃料電池システム200の動作を停止させるようにしてもよい。または、仮に時刻t21からt25の期間、発電制御部105は、温度が第6しきい値以上であった燃料電池システム200のうち、温度が高い順に2基の動作を停止させるようにしてもよい。
【0103】
次に、ECU100の処理手順例を説明する。
図12は、本実施形態の第2変形例におけるECU100の処理手順例を示すフローチャートである。なお、処理開始時、4基の燃料電池システム200が動作(オン状態)であるとする。また、第1の制御と同様の処理については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0104】
ECU100は、ステップS11~S12、S101、S13の処理を行う。
【0105】
比較部104は、複数の燃料電池システム200の温度センサ240が検出した温度の例えば平均値を算する。比較部104は、温度の平均値と、記憶部150が記憶する第6しきい値とを比較する(ステップS201)。発電制御部105は、比較部104が比較した結果、温度の平均値が第6しきい値より大きいか否かを判別する(ステップS202)。
【0106】
温度の平均値が第6しきい値より大きいと判別された場合(ステップS202;YES)、発電制御部105は、1基以上の燃料電池システム200を停止(オフ状態)に制御する(ステップS203)。処理後、発電制御部105は、ステップS11に処理を戻す。
【0107】
温度の平均値が第6しきい値以上ではないと判別された場合(ステップS202;NO)、発電制御部105は、全ての燃料電池システム200を動作状態に制御する(ステップS204)。処理後、発電制御部105は、ステップS11に処理を戻す。以上、温度の平均値をしきい値と比較して判別したが、システムの特性に応じて温度の最低値や最大値などに基づき判別することも可能である。
【0108】
なお、第2の変形例は、第1の制御、および第2の制御に適用することができる。
【0109】
なお、上述した第1変形例、第2変形例に限らず、ECU100は、燃料電池システム200の稼働時間、湿潤、前回停止させた燃料電池システム200の履歴、イオン交換装置の使用時間、燃料電池201の劣化等に応じて、停止させる燃料電池システム200を選択するようにしてもよい。
【0110】
なお、ECU100は、第1の制御、第2の制御において、バッテリSOCが高い場合は、システム要求電力が最低発電電力以上になっても、すぐには発電停止を解除しないよう制御するようにしてもよい。この理由は、所定のSOC(第7しきい値Soth)になるまでバッテリ40で電力を補い、バッテリ40のSOCを減らすためである。第7しきい値Sothは、バッテリ40に応じたしきい値であり、例えば、規格値以下であり、かつ第1しきい値より大きな値である。このような処理を行う場合、ECU100は、例えばステップS14(
図7)またはS102(
図9)において、SOCと記憶部150が記憶するSOCの所定値との比較を行うようにしてもよい。そして、ECU100は、例えばステップS15(
図7)またはS103(
図9)において、SOCと比較した結果も考慮して、燃料電池システム200を停止させるか否かを判別するようにしてもよい。
【0111】
[記憶部150が記憶する情報例]
ここで、記憶部150が記憶する情報の一例を説明する。
図13は、本実施形態に係る記憶部150が記憶する情報の一例を示す図である。
図13のように、記憶部150は、SOCに関する第1しきい値と第2しきい値と、要求電力に関する第3しきい値と第4しきい値と、発電時間に対する第5しきい値と、温度に関する第6しきい値と、SOC(充電率)に関する第7しきい値と、を記憶している。
【0112】
なお、
図13に示した例は一例であり、記憶部150は他のしきい値を記憶していてもよい。
【0113】
上述した実施形態によれば、所定発電域に達した場合に、燃料電池システム200の発電を停止させることができる。上述した実施形態によれば、要求電力に合わせて燃料電池システム200の停止状態を変えることができる。上述した実施形態によれば、燃料電池システム200の発電状態をECU100で監視し、燃料電池システム200の発電頻度を均一化(稼働/非稼働スタックを決定する)することができる。上述した実施形態によれば、暖機未完了状態(例:システム温度が所定値以下)では、発電停止をしないように制御することができる。上述した実施形態によれば、要求電力が、最低発電電力(高電位発電閾値等)を下回った場合に、燃料電池システム200を発電停止させることができる。上述した実施形態によれば、燃料電池システム200の湿潤、稼働時間、劣化、温度、イオン交換器使用時間、前回履歴等をECU100が監視し、発電停止する燃料電池システム200を切り替えることができる。上述した実施形態によれば、バッテリ40のSOCが高い場合は、システム要求電力が最低発電電力以上になった場合に、すぐには発電停止を解除しないように制御することができる。
【0114】
この結果、本実施形態によれば、搭載している燃料電池システム200の発電頻度(使用時間等)を均一化することができるので、複数の燃料電池システムの全体としての劣化を抑制することができる。本実施形態によれば、燃料電池システム200および、燃料電池システム200の構成部品の耐久性を向上させることができる。
【0115】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0116】
1…電動車両、2…キャブバッグ、3…トランスミッション、4,4A,4B…ユニット、5…シャフト、6…フレーム、7…車輪、200,200A,200B,200C,200D…燃料電池システム、34,34A,34B…BATVCU、32,32A,32B…変換部、12,12A,12B…モータ、80,80A,80B…制御部、45,45A,45B…DCDC変換部、46,46A,46B…補機、40,40A,40B…バッテリ、100…ECU、150…記憶部、244,244A,244B,244C,244D…FCVCV、201,201A,201B,201C,201D…燃料電池、202,202A,202B,202C,202D…A/P、461,461A,461B…車両センサ、462,462A,462B…ブレーキ装置、210…燃料電池スタック、214…コンプレッサ、216…封止入口弁、218…加湿器、220…気液分離器、222…排気循環ポンプ、226…水素タンク、228…水素供給弁、230…水素循環部、232…気液分離器、240…温度センサ、242…コンタクタ、246…燃料電池制御装置、280…燃料電池冷却システム、82…モータ制御部、84…ブレーキ制御部、86…電力制御部、88…走行制御部、101…燃料電池状態取得部、102…バッテリ状態取得部、103…温度取得部、104…比較部、105…発電制御部