(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】人工弁のための縫合糸ガード
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2020524084
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 US2018057796
(87)【国際公開番号】W WO2019089387
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-06-17
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン エル.ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ライアン エス.ティトン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0039609(US,A1)
【文献】国際公開第2013/128432(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0148017(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合ポストを含む心臓弁と、
前記心臓弁にカップリングされた送達装置と、
を含む、システムであって、前記送達装置が、
流入端部、及び前記流入端部に対して遠位側にある流出端部を含む基部と、
弾性であるフレームエレメントを含みおよび選択的に展開可能であり且つ前記基部を通って延びる縫合糸ガードであって、前記弾性により前記縫合糸ガードの形状を初期形態から展開形態へ移行するように形成され、前記初期形態では、前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの流出端部の内面の半径方向内側へ向かって位置するように、前記縫合糸ガードが圧潰形態にあり、そして前記展開形態では、前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの前記流出端部に対して遠位方向に、前記流出端部の前記内面の半径方向外側へ向かって延びている、縫合糸ガードと、
を含
み、
前記フレームエレメントは弾性であることにより前記初期形態と前記展開形態との間で移行することができ、前記縫合糸ガードが前記展開形態から前記初期形態へ移行されるのに伴って、前記フレームエレメントの曲げ領域は角度が減少することによって前記曲げ領域の材料がエネルギーを蓄え、
前記縫合糸ガードが前記初期形態から前記展開形態へ移行されるに伴って、前記フレームエレメントの前記曲げ領域の前記材料に蓄えられたエネルギーが運動エネルギーに変換されて前記曲げ領域の角度を増大させる、システム。
【請求項2】
前記縫合糸ガードが前記展開形態に移行されると前記フレームエレメントが前記縫合糸ガードに前記展開形態を自然に取らせるように形成されるべく、前記フレームエレメントが形状設定されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フレームエレメントが第1ストラットと第2ストラットとによって画定されており、前記第1ストラットが前記第1接合ポストの前記流出端部に対して遠位方向に、前記流出端部の前記内面の半径方向外側へ向かって延びるように、そして前記第2ストラットが第2接合ポストの流出端部の内面の半径方向外側へ向かって、且つ前記第2接合ポストの前記流出端部の遠位方向へ延びるように、前記フレームエレメントが形状設定されていることに基づき、前記縫合糸ガードが前記展開形態へ移行されるのに伴って、前記第1ストラットと前記第2ストラットとが互いに分離するように形成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1ストラットが前記フレームエレメントの第1ループ状部分を画定し、そして前記第2ストラットが前記フレームエレメントの第2ループ状部分を画定しており、曲げ領域が前記第1ループ状部分と前記第2ループ状部分との間の移行部を画定しており、前記展開形態の前記曲げ領域の角度が、前記初期形態の前記曲げ領域の角度よりも大きい、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記曲げ領域が前記初期形態でポテンシャルエネルギーを蓄えており、前記ポテンシャルエネルギーは、前記フレームエレメントに前記展開形態を取らせるように運動エネルギーに変換することができる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1ストラットと前記第2ストラットとが同じストラットである、請求項4~5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記第1ループ状部分と前記第2ループ状部分とがまとまって第1フレームエレメントを画定し、前記縫合糸ガードが前記第1フレームエレメントとほぼ同様の第2フレームエレメントを含み、前記第2フレームエレメントが、前記第1フレームエレメントの前記第1ループ状部分が前記第2フレームエレメントの第2ループ状部分に隣接するように前記第1フレームエレメントに対して角度的にオフセットされており、前記第1フレームエレメントの前記第1ループ状部分と、前記第2フレームエレメントの前記第2ループ状部分とがまとまって前記縫合糸ガードの第1ペタルを画定しており、そして前記縫合糸ガードの前記第1ペタルが、前記展開形態で前記第1接合ポストの前記流出端部に対して遠位方向に、前記流出端部の前記内面の半径方向外側へ向かって延びるように形成されている、請求項4~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1フレームエレメントの前記第1ループ状部分と、前記第2フレームエレメントの前記第2ループ状部分とが生体適合性フィルムによって一緒にカップリングされている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記生体適合性フィルムがポリマーを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ポリマーがePTFEを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記縫合糸ガードが、前記心臓弁が接合ポストを含むのと同じ数のペタルを含む、請求項7~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記縫合糸ガードが、前記第1フレームエレメント及び前記第2フレームエレメントとほぼ同様の第3フレームエレメントを含み、前記縫合糸ガードが3つのペタルを含むように前記第3フレームエレメントが、前記第1フレームエレメント及び前記第2フレームエレメントに対して角度的にオフセットされている、請求項7~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記初期形態では前記縫合糸ガードが非反転形態を成しており、そして、前記展開形態では、前記第1接合ポストの前記流出端部の前記内面の半径方向外側へ向かって延びる前記縫合糸ガードの部分が前記基部の前記流入端部へ向かって延びるように、前記縫合糸ガードが反転させられる、請求項2~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記縫合糸ガードを前記展開形態へ移行させるように前記縫合糸ガードが前記基部に対して前進可能であり、そして前記縫合糸ガードを前記初期形態へ移行させるように前記縫合糸ガードが前記基部に対して後退可能である、請求項2~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記初期形態にあるときは前記第1接合ポストの流出端部が露出されており、そして前記展開形態にあるときには前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの前記流出端部をカバーする、請求項2~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記フレームエレメントがニチノール又は形状記憶ポリマーを含む、請求項2~15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記縫合糸ガードが、前記第1接合ポストと絡み合うようにならないように縫合線を変向させるように形成されている、請求項1~16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記縫合糸ガードが、前記第1接合ポストの周りにルーピングされるようにならないように縫合線を変向させるように形成されている、請求項1~17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記送達装置がさらに、前記基部を通って延びるシャフトを含み、前記シャフトが流入端部と流出端部とを含み、そして前記縫合糸ガードが前記シャフトのルーメンを通って延びており、前記基部に対して流出方向へ前記シャフトの直線運動が印加されると、前記縫合糸ガードが前記展開形態へ移行させられる、請求項1~18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記縫合糸ガードが前記展開形態にある状態で、前記基部に対して流入方向へ前記シャフトの直線運動が印加されると、前記縫合糸ガードが前記初期形態へ移行させられる、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
さらに、前記縫合糸ガードの、前記初期形態と前記展開形態との間の移行を制御するように形成された送達ハンドルを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
人工弁のための送達装置であって、前記装置が、
前記人工弁と係合するように形成された基部であって、流入端部と流出端部とを含み、前記流出端部が前記流入端部よりも遠位側にある、基部と、
初期形態から展開形態へ移行するように形成された縫合糸ガードであって、端部と中間部分とを含み、前記初期形態では、前記端部が前記中間部分に対して遠位側にあるように、前記縫合糸ガードが非反転形態を成して前記基部の内部で圧潰されており、そして前記展開形態では、前記縫合糸ガードの一部が反転させられて前記端部が前記中間部分に対して近位方向に、前記基部の前記流入端部へ向かって延びるように、前記縫合糸ガードが前記基部の前記流出端部から展開させられる、縫合糸ガードと、
を含み、
前記縫合糸ガードが、植え込み処置中に前記人工弁の第1接合ポストと絡み合うようにならないように縫合線を変向させるように形成されており、
前記縫合糸ガードは弾性であるフレームエレメントを含み、前記縫合糸ガードは前記弾性により前記縫合糸ガードの形状を初期形態から展開形態に移行させるように形成されて
おり、
前記フレームエレメントは弾性であることにより前記初期形態と前記展開形態との間で移行することができ、前記縫合糸ガードが前記展開形態から前記初期形態へ移行されるのに伴って、前記フレームエレメントの曲げ領域は角度が減少することによって前記曲げ領域の材料がエネルギーを蓄え、
前記縫合糸ガードが前記初期形態から前記展開形態へ移行されるに伴って、前記フレームエレメントの前記曲げ領域の前記材料に蓄えられたエネルギーが運動エネルギーに変換されて前記曲げ領域の角度を増大させる、
人工弁のための送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は大まかに言えば、人工弁に関し、そしてより具体的には、可撓性リーフレット型人工心臓弁デバイスのための縫合糸ガード及びホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
天然弁の機能及び性能を模倣しようとする人工弁が開発されている。可撓性リーフレットを備えた人工弁は、リーフレットを支持構造、例えばリーフレットフレームに固定するための何らかの手段を必要とするのが典型的である。例えば縫合又は接着剤/熱ボンディングによって、リーフレットをフレームに固定することができる。加えて、人工弁は典型的には、フレームと一緒に配置された縫合用カフ、又は何らかの他の機械的取り付け手段(例えばステープル)を介して、縫合糸によってヒトの心臓に取り付けられる。
【0003】
人工心臓弁送達は、人工弁の種々の特徴、及び人工弁が挿入される生体構造に起因して、難しい場合がある。したがって、人工弁の送達中、及び人工弁の心臓への取り付け中に植え込みを容易にし、そして人工弁を保護することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1実施例(「実施例1」)によれば、システムが、第1接合ポストを含む心臓弁と、前記心臓弁にカップリングされた送達装置とを含み、前記送達装置が、流入端部、及び前記流入端部に対して遠位側にある流出端部を含む基部と、選択的に展開可能であり且つ前記基部を通って延びる当該縫合糸ガードが、初期形態から展開形態へ移行し、前記初期形態では、前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの流出端部の内面の半径方向内側へ向かって位置するように、前記縫合糸ガードが圧潰形態にあり、そして前記展開形態では、前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの流出端部に対して遠位方向に、前記流出端部の内面の半径方向外側へ向かって延びている、縫合糸ガードと、を含む。
【0005】
実施例1に付加される別の実施例(「実施例2」)によれば、前記縫合糸ガードがフレームエレメントを含み、前記縫合糸ガードが前記展開形態に移行されると前記フレームエレメントが前記縫合糸ガードに前記展開形態を自然に取らさせるように形成されるべく、前記フレームエレメントが形状設定されている。
【0006】
実施例2に付加される別の実施例(「実施例3」)によれば、前記フレームエレメントが第1ストラットと第2ストラットとによって画定されており、前記第1ストラットが前記第1接合ポストの流出端部に対して遠位方向に、流出部の内面の半径方向外側へ向かって延びるように、そして前記第2ストラットが第2接合ポストの流出端部の内面の半径方向外側へ向かって、且つ前記第2接合ポストの流出端部の遠位方向へ延びるように、前記フレームエレメントが形状設定されていることに基づき、前記縫合糸ガードが前記展開形態へ移行されるのに伴って、前記第1ストラットと前記第2ストラットとが互いに分離するように形成されている。
【0007】
実施例3に付加される別の実施例(「実施例4」)によれば、前記第1ストラットが前記フレームエレメントの第1ループ状部分を画定し、そして前記第2ストラットが前記フレームエレメントの第2ループ状部分を画定しており、曲げ領域が前記第1ループ状部分と前記第2ループ状部分との間の移行部を画定しており、前記展開形態の前記曲げ領域の角度が、前記初期形態の前記曲げ領域の角度よりも大きい。
【0008】
実施例4に付加される別の実施例(「実施例5」)によれば、前記曲げ領域が初期形態でポテンシャルエネルギーを蓄えており、前記ポテンシャルエネルギーは、フレームエレメントに前記展開形態を取らせるように運動エネルギーに変換することができる。
【0009】
実施例3から5までのいずれかに付加される別の実施例(「実施例6」)によれば、前記第1ストラットと前記第2ストラットとが同じストラットである。
【0010】
実施例4から6までのいずれかに付加される別の実施例(「実施例7」)によれば、前記第1ループ状部分と前記第2ループ状部分とがまとまって第1フレームエレメントを画定し、前記縫合糸ガードが前記第1フレームエレメントとほぼ同様の第2フレームエレメントを含み、前記第2フレームエレメントが、前記第1フレームエレメントの前記第1ループ状部分が前記第2フレームエレメントの第2ループ状部分に隣接するように前記第1フレームエレメントに対して角度的にオフセットされており、前記第1フレームエレメントの前記第1ループ状部分と、前記第2フレームエレメントの前記第2ループ状部分とがまとまって前記縫合糸ガードの第1ペタルを画定しており、そして前記縫合糸ガードの第1ペタルが、前記展開状態で前記第1接合ポストの流出端部に対して遠位方向に、流出部の内面の半径方向外側へ向かって延びるように形成されている。
【0011】
実施例4から7までのいずれかに付加される別の実施例(「実施例8」)によれば、前記第1フレームエレメントの第1ループ状部分と、前記第2フレームエレメントの前記ループ状部分とが生体適合性フィルムによって一緒にカップリングされている。
【0012】
実施例8に付加される別の実施例(「実施例9」)によれば、前記生体適合性フィルムがポリマーを含む。
【0013】
実施例8に付加される別の実施例(「実施例10」)によれば、前記ポリマーがePTFEを含む。
【0014】
実施例7から10までのいずれかに付加される別の実施例(「実施例11」)によれば、前記縫合糸ガードが、前記心臓弁が接合ポストを含むのと同じ数のペタルを含む。
【0015】
実施例7から11までのいずれかに付加される別の実施例(「実施例12」)によれば、前記縫合糸ガードが、前記第1フレームエレメント及び前記第2フレームエレメントとほぼ同様の第3フレームエレメントを含み、前記縫合糸ガードが3つのペタルを含むように前記第3フレームエレメントが、前記第1フレームエレメント及び前記第2フレームエレメントに対して角度的にオフセットされている。
【0016】
前記実施例のいずれかに付加される別の実施例(「実施例13」)によれば、前記初期形態では前記縫合糸ガードが非反転形態を成しており、そして、前記展開形態では、前記第1接合ポストの流出端部の内面の半径方向外側へ向かって延びる前記縫合糸ガードの部分が前記基部の前記流入端部へ向かって延びるように、前記縫合糸ガードが反転させられる。
【0017】
前記実施例のいずれかに付加される別の実施例(「実施例14」)によれば、前記縫合糸ガードを前記展開形態へ移行させるように前記縫合糸ガードが前記基部に対して前進可能であり、そして前記縫合糸ガードを前記初期形態へ移行させるように前記縫合糸ガードが前記基部に対して後退可能である。
【0018】
前記実施例のいずれかに付加される別の実施例(「実施例15」)によれば、前記初期形態にあるときは前記第1接合ポストの流出端部が露出されており、そして前記展開形態にあるときには前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの流出端部をカバーする。
【0019】
前記実施例のいずれかに付加される別の実施例(「実施例16」)によれば、前記フレームエレメントがニチノール又は形状記憶ポリマーを含む。
【0020】
前記実施例のいずれかに付加される別の実施例(「実施例17」)によれば、前記縫合糸ガードが、前記第1接合ポストと絡み合うようにならないように縫合線を変向させるように形成されている。
【0021】
前記実施例のいずれかに付加される別の実施例(「実施例18」)によれば、前記縫合糸ガードが、前記第1接合ポストの周りにルーピングされるようにならないように縫合線を変向させるように形成されている。
【0022】
前記実施例のいずれかに付加される別の実施例(「実施例19」)によれば、前記送達装置がさらに、前記基部を通って延びるシャフトを含み、前記シャフトが流入端部と流出端部とを含み、そして前記縫合糸ガードが前記シャフトのルーメンを通って延びており、前記基部に対して流出方向へ前記シャフトの直線運動が印加されると、前記縫合糸ガードが前記展開形態へ移行させられる。
【0023】
実施例19に付加される別の実施例(「実施例20」)によれば、前記縫合糸ガードが前記展開形態にある状態で、前記基部に対して流入方向へシャフトの直線運動が印加されると、前記縫合糸ガードが前記初期形態へ移行させられる。
【0024】
前記実施例のいずれかに付加される別の実施例(「実施例21」)によれば、前記システムがさらに、前記縫合糸ガードの、前記初期形態と前記展開形態との間の移行を制御するように形成された送達ハンドルを含む。
【0025】
別の実施例(「実施例22」)によれば、人工弁のための送達装置が、前記人工弁と係合するように形成された当該基部が、流入端部と流出端部とを含み、前記流出端部が前記流入端部よりも遠位側にある、基部と、初期形態から展開形態へ移行するように形成された当該縫合糸ガードが、端部と中間部分とを含み、前記初期形態では、前記端部が前記中間部分に対して遠位側にあるように、前記縫合糸ガードが非反転形態を成して前記基部内部で圧潰されており、そして前記展開形態では、前記縫合糸ガードの一部が反転させられて前記端部が前記中間領域に対して近位方向に、前記基部の前記流入端部へ向かって延びるように、前記縫合糸ガードが前記基部の流出端部から展開させられる、縫合糸ガードと、を含み、前記縫合糸ガードが、植え込み処置中に前記人工弁の前記第1接合ポストと絡み合うようにならないように縫合線を変向させるように形成されている。
【0026】
別の実施例(「実施例23」)によれば、人工弁のための送達装置が、前記人工弁と係合するように形成された当該基部が、流入端部と流出端部とを含む、基部と、前記基部を通って延びる当該縫合糸ガードが、前記基部の流出端部から延びるように形成されており、前記縫合糸ガードがさらに、前記縫合糸ガードの端部が前記基部の前記流入端部へ向かって延びるべく反転するように形成されている、縫合糸ガードと、を含み、前記縫合糸ガードが、植え込み処置中に前記人工弁の前記第1接合ポストと絡み合うようにならないように縫合線を変向させるように形成されている。
【0027】
別の実施例(「実施例24」)によれば、第1接合ポストを含む人工弁を送達する方法が、流入端部と流出端部とを含み、前記流出端部が前記流入端部に対して遠位側にある基部と、選択的に展開可能であり前記基部を通って延びる当該縫合糸ガードが、前記第1接合ポストの流出端部の内面の半径方向内側へ向かって位置している、縫合糸ガードとを含む、前記人工弁に固定された送達装置を用意し、前記第1接合ポストの周りにルーピングしないように縫合線を変向させるために、前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの流出端部に対して遠位方向に、流出端部の内面の半径方向外側へ向かって延びるように、前記縫合糸ガードを前記基部に対して前進させることを含む。
【0028】
実施例24に付加される別の実施例(「実施例25」)によれば、方法がさらに、前記縫合糸ガードが圧潰・非反転形態を成すべく前記縫合糸ガードが前記基部の内部内へ引き込まれるように、前記縫合糸ガードを前記基部に対して後退させることを含む。
【0029】
別の実施例(「実施例26」)によれば、人工弁のための送達装置が、縫合糸ガードを含み、前記縫合糸ガードが、前記縫合糸ガードの長さを短くするために直線運動を印加すると、前記人工弁の1つ又は2つ以上の弁ポストを前記人工弁の長手方向軸線へ向かって内向きに動かすように形成されている。
【0030】
実施例26に付加される別の実施例(「実施例27」)によれば、前記縫合糸ガードが、ターゲット部位への人工弁の植え込み中に縫合糸と絡み合うようになることから、前記人工弁の前記弁ポストの少なくとも1つ及び1つ又は2つ以上のリーフレットを保護するように形成されている。
【0031】
実施例26~27のいずれかに付加される別の実施例(「実施例28」)によれば、前記縫合糸ガードが、前記1つ又は2つ以上の弁ポストの間に配置された1つ又は2つ以上のファイバ線を含む。
【0032】
実施例28に付加される別の実施例(「実施例29」)によれば、直線運動が印加されると、前記人工弁の長手方向軸線へ向かって内向きに前記人工弁の1つ又は2つ以上の弁ポストを動かすために緊張を加えるように、前記1つ又は2つ以上のファイバ線が形成されている。
【0033】
実施例29に付加される別の実施例(「実施例30」)によれば、前記縫合糸ガードが、前記1つ又は2つ以上のファイバ線に緊張を加えるように形成された直線運動機構を含み、そして前記縫合糸ガードへ向かって内向きに前記1つ又は2つ以上のファイバ線を引き込む。
【0034】
実施例28~30のいずれかに付加される別の実施例(「実施例31」)によれば、前記縫合糸ガードが上側部分及び下側部分を含み、そして前記下側部分が、前記人工弁とインターフェイス形成するように形成されており、そして前記下側部分が前記1つ又は2つ以上のファイバ線に緊張を加えるように形成されている。
【0035】
実施例26~31のいずれかに付加される別の実施例(「実施例32」)によれば、前記装置がさらに、前記人工弁の流出部分と一緒に配置された非外傷性ドームを含み、前記ドームが、心臓の一部に対する損傷を防ぎ、そして縫合糸が前記接合ポスト上をスライドして前記接合ポストの傍らを通り過ぎるための傾斜路を作るように形成されている。
【0036】
実施例26に付加される別の実施例(「実施例33」)によれば、前記縫合糸ガードが、反転管を含み、前記反転管が前記弁ポストをカバーし、そして前記人工弁の長手方向軸線へ向かって内向きに前記人工弁の前記1つ又は2つ以上の弁ポストを動かすように形成されている。
【0037】
実施例26に付加される別の実施例(「実施例34」)によれば、前記縫合糸ガードが1つ又は2つ以上のアームを含み、前記アームが、前記人工弁の長手方向軸線へ向かって内向きに前記人工弁の前記1つ又は2つ以上の弁ポストを曲げるように形成されている。
【0038】
実施例26~34のいずれかに付加される別の実施例(「実施例35」)によれば、前記縫合糸ガードが、手術中に弁を保護し、挿入中に組織を保護し、そしてストラット・ラップ(strut wrap)を阻止するように形成されている。
【0039】
実施例36~35のいずれかに付加される別の実施例(「実施例36」)によれば、前記装置がさらに、前記縫合糸ガードを制御するように形成された送達ハンドルを含む。
【0040】
実施例36に付加される別の実施例(「実施例37」)によれば、前記ハンドルが、前記人工弁の植え込みのために前記縫合糸ガードに予め取り付けられる。
【0041】
実施例36~37のいずれかに付加される別の実施例(「実施例38」)によれば、直線運動が印加されると、前記人工弁の長手方向軸線へ向かって内向きに前記人工弁の前記1つ又は2つ以上の弁ポストを動かすべく緊張を加えるように、前記1つ又は2つ以上のファイバ線が形成されており、そして前記装置がさらに、前記ハンドルにカップリングされた解放ファイバを含み、前記解放ファイバが、前記1つ又は2つ以上のファイバ線を前記縫合糸ガードで解放可能にロックするように形成されており、そして前記ハンドルの一部が、前記1つ又は2つ以上のファイバ線をロック解除するために前記解放ファイバを作動させ解放するように形成されている。
【0042】
前記実施例は一例に過ぎず、本開示によって他の形で提供される発明概念のうちのいずれかの概念の範囲を制限するか又は狭くするように読まれるべきではない。
【0043】
添付の図面は、本開示のさらなる理解のために含まれ、そして本明細書中に組み込まれ、且つ本明細書の一部を構成し、実施態様を例示し、そして記載内容と一緒に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1A】
図1Aは、1実施態様に基づく人工心臓弁例の流出側の斜視図である。
【0045】
【0046】
【
図2A】
図2Aは、1実施態様に基づく縫合糸ガード例を示す上面及び底面の斜視図である。
【0047】
【
図2B】
図2Bは、
図2Aに示された縫合糸ガードを、人工心臓弁と一緒に示す第1及び第2の側面図である。
【0048】
【
図2C】
図2Cは、
図2A~Bに示された縫合糸ガード及び人工心臓弁を、ファイバと一緒に示す底面図である。
【0049】
【
図2D】
図2Dは、
図2A~Cに示された縫合糸ガード、人工心臓弁、及びファイバを示す第1及び第2の側面図である。
【0050】
【
図2E】
図2Eは、
図2A~Dに示された縫合糸ガード、人工心臓弁、及びファイバを示す上面図である。
【0051】
【
図2F】
図2Fは、
図2A~Eに示された縫合糸ガード、人工心臓弁、及びファイバを示す第1部分断面図及び第2側面図である。
【0052】
【
図2G】
図2Gは、
図2A~Fに示された縫合糸ガード、人工心臓弁、及びファイバを示す第1部分断面図及び第2上面図である。
【0053】
【
図3A】
図3Aは、1実施態様に基づく、縫合糸ガード例及び人工心臓弁を示す分解図である。
【0054】
【0055】
【
図3C】
図3Cは、
図3A~Bに示された縫合糸ガード及び人工心臓弁を示す別の底面図である。
【0056】
【
図4A】
図4Aは、1実施態様に基づく、縫合糸ガード例、人工心臓弁、及び送達ハンドルを示す部分断面図である。
【0057】
【
図4B】
図4Bは、
図4Aに示された縫合糸ガード、人工心臓弁、及び送達ハンドルを別の形態で示す部分断面図である。
【0058】
【
図5】
図5は、1実施態様に基づく、縫合糸ガード例、人工心臓弁、及び別の送達ハンドルを示す部分断面図である。
【0059】
【
図6】
図6は、1実施態様に基づく、縫合糸ガード例、及び人工心臓弁を示す図である。
【0060】
【
図7】
図7は、1実施態様に基づく、別の縫合糸ガード例、及び人工心臓弁を示す図である。
【0061】
【
図8】
図8は、1実施態様に基づく、ファイバラッピング経路例を示す図である。
【0062】
【
図9】
図9は、1実施態様に基づく、ファイバラッピング経路例を示す図である。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【
図14】
図14は、
図4~5に示された送達ハンドル及び縫合糸ガードを示す分解図である。
【
図15】
図15は、
図4~5に示された送達ハンドル及び縫合糸ガードを示す分解図である。
【
図16】
図16は、
図4~5に示された送達ハンドル及び縫合糸ガードを示す分解図である。
【
図17】
図17は、
図4~5に示された送達ハンドル及び縫合糸ガードを示す分解図である。
【0068】
【
図18】
図18は、
図6に示された、反転させられた縫合糸ガードを示す分解図である。
【0069】
【
図19】
図19は、
図6に示された、反転させられた縫合糸ガードを示す別の分解図である。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【
図23】
図23は、1実施態様に基づくハンドル例を示す図である。
【0074】
【0075】
【0076】
【
図26】
図26は、
図2A~Gに示された縫合糸ガードの種々の構成部分を示す概略分解図である。
【0077】
【0078】
【0079】
【
図29A】
図29Aは、1実施態様に基づく縫合糸ガード例を展開形態で、心臓弁との組み合わせで示す概略図である。
【
図29B】
図29Bは、1実施態様に基づく縫合糸ガード例を展開形態で、心臓弁との組み合わせで示す概略図である。
【
図29C】
図29Cは、1実施態様に基づく縫合糸ガード例を展開形態で、心臓弁との組み合わせで示す概略図である。
【
図29D】
図29Dは、1実施態様に基づく縫合糸ガード例を展開形態で、心臓弁との組み合わせで示す概略図である。
【
図29E】
図29Eは、1実施態様に基づく縫合糸ガード例を展開形態で、心臓弁との組み合わせで示す概略図である。
【0080】
【
図30A】
図30Aは、1実施態様に基づく、
図29Aに示された縫合糸ガード例を、明確にするために心臓弁を取り外した状態で示す概略図である。
【
図30B】
図30Bは、1実施態様に基づく、
図29Aに示された縫合糸ガード例を、明確にするために心臓弁を取り外した状態で示す概略図である。
【0081】
【
図31B】31Bは、1実施態様に基づく、
図30Aに示された縫合糸ガード例を非展開形態で示す概略図である。
【0082】
【
図32】
図32は、1実施態様に基づく、
図29Aに示された縫合糸ガード例を、植え込み処置中の状態で示す概略図である。
【0083】
【
図33A】
図33Aは、1実施態様に基づく、
図29Bにおいて展開形態で示された縫合糸ガード例を、33-33線に沿って示す断面図である。
【0084】
【
図33B】
図33Bは、1実施態様に基づく、
図33Aで示された縫合糸ガード例を、非展開形態で、そして明確にするために心臓弁を取り外した状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
当業者には明らかなように、所望の機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって、本開示の種々の態様を実現することができる。なお、本明細書中に言及される添付の図面は必ずしも原寸に比例するものではなく、本開示の種々の態様を例示するために誇張されることもある。その点において、図面は制限的なものと解釈されるべきではない。
【0086】
本明細書中の実施態様は種々の原理及び信念に関連して記載されるものの、記載の実施態様は理論によって縛られるべきではない。例えば、実施態様は人工弁、より具体的には心臓人工弁と関連して本明細書中に記載される。しかしながら、本開示の範囲に含まれる実施態様を、類似の構造及び/又は機能を有する任意の弁又は機構に向けて適用することもできる。さらに、本開示の範囲に含まれる実施態様は非心臓用途において適用することもできる。
【0087】
本開示の特徴は、心臓縫合糸ガードに関する。心臓縫合糸ガードは、心臓弁の植え込みを容易にするように形成されている。本明細書中で論じられる心臓縫合糸ガードは、天然アニュラス内への心臓弁の配置及び縫合を容易にし、そしてある特定の実施態様では、植え込み処置中の心臓弁の誤ハンドリングから生じる心臓弁への損傷を阻止するのに役立つ。例えば、本明細書中に論じられる心臓縫合糸ガード(本明細書中では縫合糸ガードとも呼ばれる)は、植え込み中に縫合糸が弁ポスト上でルーピングするか又は弁ポストと絡み合うようになること(本明細書中では縫合糸ルーピング(suture looping)、及び/又はシャント・ラッピング(shunt wrapping)、及び/又はストラット・ラッピング(strut wrapping)とも呼ばれる)を阻止するのを助けるように形成されている。縫合糸が不注意により1つ又は2つ以上の弁ポストの周りにルーピングされ、続いて締め付けられると、ルーピングされた縫合糸は弁構造の1つ又は2つ以上の部分を損傷し、1つ又は2つ以上の弁リーフレットを損傷し、弁及び/又はポスト内部のリーフレットの機能に不都合な影響を与えるおそれがある。本開示の種々の特徴と一致する心臓縫合糸ガードのデザインは、縫合糸ルーピングの機会を少なくするように形成されている。
【0088】
いくつかの実施態様では、縫合糸ガードは、人工弁100の長手方向軸線へ向かって半径方向内側に弁ポストを変向させるために、弁ポストと係合するように形成されている。いくつかの実施例では、弁ポストを半径方向内側に変向させるこの機構は、アニュラス内への挿入のために弁を調製するのに役立つ。さらに、いくつかの実施例では、弁ポストを半径方向内側に変向させることは、弁ポストの半径方向プロフィールの縮小に役立つ。このことは、縫合糸が弁ポストと絡み合うようになる可能性を少なくするのに役立つ。いくつかの実施態様では、以下に例示し説明するように、縫合糸ガードは弁ポストの流出端部をカバーするか、又は少なくとも流出端部にわたって延びるように動作してもよい。弁ポストの流出端部にわたって延びる縫合糸ガードは、弁の外部に沿って延びる縫合線を、弁ポストの内部位置へ移動しないように変向させるように動作することができる。
【0089】
いくつかの実施態様では、心臓縫合糸ガードは、弁ポストから離反する方向へ縫合糸を変向させるように形成された傾斜フィーチャを含む。いくつかの実施例では、縫合糸ガードは、弁ポストと絡み合うようになることなしに、縫合糸が縫合リング又は縫合用カフ上に安全に着地するのを助ける。
【0090】
図1A及び1Bは、1実施態様に基づく、人工心臓弁の形態を成す弁100の、それぞれ流出側及び流入側の斜視図である。
図1A及び1Bにおいて見ることができる弁100の構成部分は、3つの可撓性リーフレット310と、3つの弁(接合)ポスト210を含む、材料でカバーされているリーフレットフレーム200と、材料でカバーされているベースフレーム500と、縫合用カフ600とを含む。リーフレット310のリーフレット自由縁部312は接合領域316において(上から見て)Y字形パターンを成して1つに纏まることにより、弁100を閉じる。弁100は、流出側(
図1Aに見られる)における血圧が人工弁の流入側(
図1Bに見られる)における血圧よりも高い場合に、このように閉じる。弁100の流入側における血圧が弁100の流出側における血圧よりも高いと、リーフレット310のリーフレット自由縁部312は互いに離れることにより、弁100を開き、血液が
図1Bに見られる流入側から弁100を通って流れるようにする。本開示の目的において、言うまでもなく、心臓弁100の流入側又は流入端部は心臓弁100の流出側又は流出端部に対して「近位側」にあると考えられ、これに対して、心臓弁100の流出側又は流出端部は心臓弁100の流入側又は流入端部に対して「遠位側」にあると考えられる。
【0091】
リーフレット310が開閉するのに伴って、リーフレット310は大まかに言えばU字形部分のリーフレット基底部325の周りで撓む。1実施態様では、弁100が閉じられると、大まかに言えば、
図1Aに示されているように、各リーフレット自由縁部312の約半分が、隣接して位置するリーフレット310のリーフレット自由縁部312の隣接する半部に当接する。
図1Aの実施態様の3つのリーフレット310は三重点348で合致する。リーフレット310が閉位置にある時には、弁開口部150は塞がれ、逆流中の流体流を止める。
【0092】
弁100の他の実施態様によれば、各リーフレット310は中央領域329と、中央領域329の互いに対向する側に位置する2つの側方領域328とを含む。中央領域329は、2つの中央領域側部327、リーフレット基底部325、及びリーフレット自由縁部312によって画定されたほぼ等脚台形の形状によって画定されている。側方領域328のそれぞれはほぼ三角形の形状を有しており、それぞれ中央領域側部327のうちの一方、リーフレット側部323のうちの一方、及びリーフレット自由端部312によって画定されている。
【0093】
図2Aは、1実施態様に基づく縫合糸ガード202を並べて示す図である。縫合糸ガード202は第1(上側)部分204と第2(下側)部分206とを含む。第1部分204は、人工心臓弁100(
図2B~Gにおいてさらに詳細に示されている)とインターフェイス形成するように形成されている。第1部分204は支持体208を含む。支持体は、
図1A~Bに示される弁(接合)ポスト210の数と等しくてよい。支持体208は弁(接合)ポスト210の内側部分とインターフェイス形成してよい。より詳細に後述するように、支持体208は、弁(接合)ポスト210を、これが送達のために内方へ向かって動かされたときに構造的に支持するための表面として作用する。より具体的には、縫合糸ガード202は、人工弁100の1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210を、人工弁100の長手方向軸線へ向かって内側へ動かす(このことは曲げることによって行われてよい)ように形成されている。
【0094】
加えて、第1部分204は、第1部分204から刻み込まれたテーパ面211を含んでよく、これによってリーフレット310との干渉を回避する。第1部分204は、弁100の流入側内部に配置されてよい。縫合糸ガード202の第1部分204はまたファイバ保持部分212を含む。ファイバ保持部分は、縫合糸ガード202の第1部分204の周囲に配置されている。ファイバ保持部分212は、縫合糸又はファイバを手繰り通すことができる開口を含み、これにより、人工弁100の1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210を、人工弁100の長手方向軸線へ向かって内側へ動かす。
【0095】
縫合糸ガード202の第2部分206は、第1部分204の下方又は下側に配置されている。第2部分206は、人工弁100の1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210を、人工弁100の長手方向軸線へ向かって内側へ動かすために用いられる力を加えるように形成されていてよい。第2部分206は例えば直線運動を介して、ファイバ又は縫合糸に緊張を加えることができる。第2部分206は、1つ又は2つ以上のファイバ線を縫合糸ガード202の第2部分206へ向かって内向きに引き込むことにより、1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210を動かす。加えて、この機構は、集成体を長くするのとは逆に、縫合糸ガード202、及び1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210の長さを短くする。
図2C~Gを参照しながら詳細に示されているように、第2部分206は縫合糸又はファイバとインターフェイス形成することができ、これにより縫合糸又はファイバは第2部分206内部をスライドし、このことは縫合糸又はファイバを引張る。第2部分206によるこのようなアクションは、人工弁100の1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210を、人工弁100の長手方向軸線へ向かって内側へ動かすために用いられる力を加える。
【0096】
図2Bは、
図2Aに示された縫合糸ガード202を、人工心臓弁100と一緒に示す第1及び第2の側面図である。縫合糸ガード202は人工心臓弁100と一緒に示されている。縫合糸ガード202はこの時点では形状を変えることはなく、或いは人工心臓弁100を動かすこともない。縫合糸ガード202は、人工心臓弁100の流入部分内部に配置されており、植え込み中、リーフレット310を支持することができる。
【0097】
縫合糸ガード202は初期(例えば緊張させられていない)位置で示されている。縫合糸ガード202は、
図2Bに示された位置では、人工心臓弁100に緊張を与えておらず、或いはその形状を変化させていない。第1部分204と第2部分206とを結合するために、第2部分206は第1部分204内へ押し込まれる。ある特定の実施態様では、第2部分206はクリック締め付け機構又は歯止め機構を用いて結合する。第2部分206はある特定の実施態様では、ワンクリックで第1部分204と結合する。
【0098】
縫合糸ガード202を人工弁100と整合させるために、ファイバ保持部分212(又はタブ)は弁(接合)ポスト210と整合させられる。ファイバ保持部分212は、人工弁100の基底部に当て付けられてよい。このことは、縫合糸ガード202の第1部分204のテーパ面211によって容易にすることができる。
【0099】
図2Cは、
図2A~Bに示された縫合糸ガード202及び人工心臓弁100を、ファイバ214と一緒に示す底面図である。ファイバ214の一方の端部は、ファイバ保持部分212の開口を通してラッピングされる。ファイバ214をファイバ保持部分212の開口で結び目形成することにより、ファイバ214を縫合糸ガード202に縛り付けることができる。ある特定の実施態様では、別のファイバ214もファイバ保持部分212のそれぞれを通って同様にルーティングされる。他の実施態様では、単一のファイバ214が使用される。ある特定の実施態様では、ファイバ保持部分212は縫合糸ガード202の第1部分204の支持体208の数に等しい。支持体は弁(接合)ポスト210の数に等しくてよい。第1ファイバ214の他方の端部は、ある特定の実施態様では、ファイバ保持部分212の右側の穴を通して、そして人工心臓弁100の縫合用カフ600を通して供給される。ファイバ214を縫合用カフ600を通して配置することにより、人工弁100の流入側と流出側との間にファイバ214を織り込むことができる。
【0100】
図2Dは、
図2A~Cに示された縫合糸ガード202、人工心臓弁100、及びファイバ214を示す第1及び第2の側面図である。ファイバ214を縫合用カフ(図示せず)に通した後、ファイバ214は次いで弁(接合)ポスト210に通される。ファイバ214は弁(接合)ポスト210の側方(例えば
図2Dの左部分に示されている弁(接合)ポスト210の右側)に沿ってルーティングされる。ファイバ214は人工心臓弁100の外径上に留まり、いかなる時点でも人工心臓弁100の内径を通ることはない。ファイバ214は弁(接合)ポスト210を通して左(
図2Dの右部分に示されている)へ移動させられ、そして他の弁(接合)ポスト210と同様に、しかし鏡像的に人工心臓弁100と係合する。
【0101】
図2Eは、
図2A~Dに示された縫合糸ガード202、人工心臓弁100、及びファイバ214を示す(流出側から見た)上面図である。
図2Dを参照しながら説明したようにファイバ214を配置した後、ファイバ214は次いで、人工心臓弁100に通し(例えば縫合用カフを通し)、そしてファイバ保持部分212の左開口に通すことができる。第1ファイバ214を参照しながら説明したように、他の2つのファイバ214は次いでファイバ保持部分(
図2Eでは遮られている)のそれぞれの開口を通して、人工心臓弁100を通して(例えば縫合用カフを通して)、そしてそれぞれの弁(接合)ポスト210を通して供給される。この実施態様では、3つのファイバ214が人工心臓弁100及び縫合糸ガード202を通して供給される。ファイバ214はそれぞれ、ファイバの214の一方の端部が縫合糸ガード202のファイバ保持部分212に取り付けられた状態で、2つの弁(接合)ポスト210に跨っている。
【0102】
人工心臓弁100は三尖弁(例えば3つのリーフレット310)として示されてはいるものの、人工心臓弁100は任意の数(1,2,4,5,6つなど)のリーフレットを含んでよい。人工心臓弁100が異なる数のリーフレット310を含む実施態様では、リーフレット310の数が、縫合糸ガード202上の等しい数のアスペクト、例えば等しい数のファイバ214、ファイバ保持部分212、支持体208、及び弁(接合)ポスト210に相当することができる。
【0103】
図2Fは、
図2A~Eに示された縫合糸ガード202、人工心臓弁100、及びファイバ214を示す第1部分断面図及び第2側面図である。各ファイバ214の自由端は次いで、縫合糸ガード202の内部に供給される。より具体的には、ファイバ214は、縫合糸ガード202の第2部分206内へ、第2部分206の円錐形部材216間に供給されてよい。ファイバ214は開口218を通って第2部分に入ってよい。
【0104】
図2Fに示されているように、第2部分206は、縫合糸ガード202の第1部分204と係合された状態で示されている。
図2Gと比較すると、第2部分206は第1部分204から外方へ向かって伸長されている。第2部分206は第1部分204に螺合するか、又はスナップ嵌め(クリック嵌め又は歯止め機構)を介して係合してよい。第2部分206を第1部分204内部で内方へ向かって動かすことにより、
図2Gに示されているようにファイバ214に加えられる緊張を調節する。人工弁100と縫合糸ガード202とは一緒にパッケージングされ、
図2Fに示された形態を成して植え込みのために医師へ配送される。医師は、第1部分204を第2部分206内へ押し込む(例えば直線的に作動させる)ことにより、縫合糸ガード202を係合させる。このことはファイバ214を緊張させて弁(接合)ポスト210を内方へ変向させ、アニュラス内への挿入のために人工弁100を調製する。
【0105】
図2Gは、
図2A~Fに示された縫合糸ガード202、人工心臓弁100、及びファイバ214を示す第1部分断面図及び第2上面図である。人工弁100及び縫合糸ガード202は植え込みのための係合状態で示されている。全てのファイバ214が第2部分206(例えば円錐形部材216内部)に固定されている状態で、人工心臓弁100は植え込みの用意ができている(例えばパッケージング及び滅菌の後)。医師が人工弁100を植え込む準備ができたら、第2部分206にハンドル(例えば
図4~5に示されている)を取り付け、次いで第2部分206を第1部分204内へ押し込み、
図2Gの矢印によって示されているように3つのファイバ214をこれと一緒に引張る。ファイバ214の長さは端部から端部まで固定されており、ひいては第2部分206を第1部分204内へ押し込むこと(例えば直線運動機構)から生じる緊張は、弁(接合)ポスト210を内方へ向かって変向させるか、又は動かす(曲げによって行われてよい)。ファイバ214を縫合用カフ600を通して配置することにより、人工弁100の流入側と流出側との間にファイバ214を織り込むことができる。
【0106】
縫合糸ガード202を取り外すために、医師は3つのファイバ214のそれぞれを指定区域220(例えば
図2Cにも示されている切断スロット)内で切断する。これによりファイバ214内の緊張が解かれ、縫合糸ガード202が人工弁100から解放されると、ファイバ214によって内方へ向かって保持された弁(接合)ポスト210が初期位置へ戻ることが可能になる。縫合糸ガード202を人工心臓弁100から引き抜くことにより、縫合糸ガード202は人工心臓弁100から取り外される。ハンドルは縫合糸ガード202を取り外す前に取り外されてよく、或いは、ハンドルは縫合糸ガード202の取り外しを容易にするために再取り付けされてもよい。各ファイバ214の端部は切断された後、縫合糸ガード202に取り付けられたままなので、縫合糸ガード202が心臓弁100から後退させられるのに伴って、各ファイバ214の切断端部は人工心臓弁100を通って巻き戻される。こうして、縫合糸ガード202を取り外すことによって、ファイバ214も人工弁100から取り外される。
【0107】
縫合糸ガード202は手術プロセスを助ける送達ツールとして作用する。上述のように、縫合糸ガード202は、縫合糸が弁(接合)ポスト210と絡み合わされる機会を少なくし、且つ/又はターゲット部位における人工弁100の植え込み中にリーフレット310の1つ又は2つ以上の周りに縫合糸がラッピングする(シャント・ラッピング)機会を少なくする。詳細に上述したように、縫合糸ガード202は、植え込みを容易にし、生体構造を保護し、そしてストラット・ラップを阻止するように形成されている。
【0108】
図3Aは、1実施態様に基づく、縫合糸ガード例202及び人工心臓弁100を示す分解図である。縫合糸ガード202は第1(上側)部分204と第2(下側)部分206とを含む。第1部分204は、
図3Bにおいてさらに詳細に示されるように、人工心臓弁100とインターフェイス形成するように形成されている。縫合糸ガード202は非外傷性ドーム320を含んでもよい。非外傷性ドーム320は縫合糸ガード202の第1部分204とインターフェイス形成する。第1部分204は人工心臓弁100の流入区分内部に配置されてよく、そして非外傷性ドーム320は人工心臓弁100の流出部分内部に配置されてよい。非外傷性ドーム320は、心臓の一部に対する損傷を防ぐように形成されている。加えて非外傷性ドーム320は、(人工弁100を植え込み部位に取り付けるために使用される)縫合糸が人工弁100の弁(接合)ポスト210上をスライドして弁(接合)ポスト210の傍らを通り過ぎるための傾斜路を作るように形成されており、これにより、縫合糸が弁(接合)ポスト210の1つ又は2つ以上のリーフレットと絡み合うのを回避する。
【0109】
図3Aに示されているように、第2部分206は第1部分204から分離可能であってよい。加えて、縫合糸ガード202は、縫合糸ガード202を通してルーティングされたファイバ214を含む。ファイバ214の一方の端部は第1部分204の開口(例えば上記
図2A~Gに示されている)を通してルーティングされている。ファイバ214は1つ又は2つ以上の結び目付き部分322によって画定されてよい。ある特定の実施態様では、ファイバ214は、
図3Aに示されているように、人工弁100の弁(接合)ポスト210を通してルーティングされている。弁(接合)ポスト210は開口を含んでよい。
【0110】
縫合糸ガード202の第2部分206は、縫合糸ガード202の第1部分204の下方又は下側に配置されている。第2部分206は、人工弁100の1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210を、人工弁100の長手方向軸線へ向かって内側へ動かすために用いられる力を加えるように形成されていてよい。第2部分206は例えば直線運動をファイバ214に加えることができる。第2部分206は、1つ又は2つ以上のファイバ線を縫合糸ガード202の第2部分206へ向かって内向きに引き込むことにより、1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210を動かす。加えて、この機構は、集成体を長くするのとは逆に、縫合糸ガード202、及び1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210の長さを短くする。
【0111】
図3Aに示されているように、第2部分206は、第1部分204とインターフェイス形成する1つ又は2つ以上のプロング構造324を含む。この1つ又は2つ以上のプロング構造324は、ファイバ214を第1部分204内へ強制的に押し込む。第2部分206によるこのようなアクションは、
図3Bを参照しながらより詳細に示されるように、ファイバ214に緊張を加える。
【0112】
第2部分206は、第2部分206を第1部分204に固定するように形成されたねじ機構326を含むことができる。ねじ機構326は第2部分206に対して相対回転する。ねじ機構326は、ファイバ214に緊張を加えること、そして人工弁100の送達及び植え込み中にファイバ214上の緊張を維持することを容易にし得る。
【0113】
図3Bは、
図3Aに示された縫合糸ガード202及び人工心臓弁100を、理解しやすさのために部分が取り除かれた状態で示す別の分解図である。
図3Bに示されているように、プロング構造324はファイバ214を第1部分204内に強制的に押し込み、これによりファイバ214に緊張を加える。ファイバ214はプロング構造324によって第1部分204内にクリンプされる。ファイバ214が人工弁100の1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210のうちの少なくとも1つにカップリングされるので、緊張は、人工弁100の長手方向軸線へ向かって内向きに弁(接合)ポスト210を動かす。
【0114】
ある特定の実施態様では、ファイバ214は弁(接合)ポスト210のそれぞれに固定されている。他の実施態様では、縫合糸ガード202は(例えば
図2A~Gを参照しながら説明したような)マルチプルファイバ214を含んでよい。医師が人工弁100を植え込む準備ができたら、ハンドル(例えば
図4~5に示された部分)が第2部分206に、ねじ機構326のところで取り付けられる。ハンドルを使用してねじ機構326を作動させることにより、ファイバ214に緊張を加えることができる。非外傷性ドーム320及びねじ機構326は対向ねじ山付き部分を含むことができ、これによりねじ機構326は縫合糸ガード202の第1部分204と第2部分206とを一緒に固定することができる。加えて、ハンドルはねじ機構326に対して対向ねじ山付き部分を含むことにより、ねじ機構326を締め付け、そしてファイバ214を緊張させる。
【0115】
縫合糸ガード202を取り外すために、医師はファイバ214を指定区域内で切断する。これによりファイバ線214内の緊張が解かれ、弁(接合)ポスト210が内方へ向かって所期位置へ戻ることが可能になる。縫合糸ガード202を人工心臓弁100から引き抜くことにより、縫合糸ガード202は人工心臓弁100から取り外される。ハンドルは縫合糸ガード202を取り外す前に取り外されてよく、他の事例では、ハンドルは縫合糸ガード202の取り外しを容易にするために再取り付けされてもよい。
図3Cは、
図3A~Bに示された縫合糸ガード202及び人工心臓弁100を、非外傷性ドーム320なしに示す別の底面図である。
【0116】
図4Aは、1実施態様に基づく、縫合糸ガード例202、人工心臓弁100、及び送達ハンドル410を示す部分断面図である。
図4Aに示された縫合糸ガード202は、雌ねじ山付き部分402を有する非外傷性ドーム320を含む。非外傷性ドーム320は変向ローブ404を含む。変向ローブは非外傷性ドーム320を縫合糸ガード202の別の部分にインターフェイス形成しカップリングするように形成されている。
図4Aはまた、送達ハンドル410の使用を容易にするために使用されるスリーブ400を示している。
【0117】
図4Aに示されたスリーブ400は雄ねじ山付き部分406を含む。雄ねじ山付き部分は非外傷性ドーム320の雌ねじ山付き部分402内にねじ込むように形成されている。雄ねじ山付き部分406は、人工弁100の弁(接合)ポスト210の1つ又は2つ以上と一緒に配置された1つ又は2つ以上のファイバ214とインターフェイス形成するように形成されている。送達ハンドル410は、1つ又は2つ以上のファイバ214に緊張を加えるように形成されている。雄ねじ山付き部分406は雌ねじ山付き部分402に対して相対回転し、そして雄ねじ山付き部分406と雌ねじ山付き部分402とが互いに離反する方向に動くことに基づき、ファイバ214に緊張を加える。このことは、人工弁100の植え込み中にファイバ214上の緊張を維持する。ファイバ214が人工弁100の1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210のうちの少なくとも1つにカップリングされるので、ハンドル410は緊張を加え、そして人工弁100の長手方向軸線へ向かって内向きに弁(接合)ポスト210を動かす。
【0118】
スリーブ400は、縫合糸ガード202とインターフェイス形成するタブ408を含む。加えて、送達ハンドル410は、ファイバ214に緊張を加えるように、スリーブ400に対して相対運動するように形成されている。送達ハンドル410は、雄ねじ山付き部分406にカップリングされている。
図4Bは、送達ハンドル410の一部を示している。送達ハンドル410は操作中の医師にアクセス可能であり、身体の外部に延びる。ある特定の事例では、図示された送達ハンドル410の部分は、別のハンドルに取り付けられる。図示の送達ハンドル410は使い捨てであってよい。
【0119】
図4Bは、
図4Aに示された縫合糸ガード例202、人工心臓弁100、及びスリーブ400を別の形態で示す部分断面図である。スリーブ400は
図4Bに示された形態では、縫合糸ガード202から分離されている。
図4Bに示されているように、図示の弁(接合)ポスト210は
図4Aに示された形態と比較して内方へ向かって動かされている。縫合糸ガード202からのスリーブ400の解放を容易にするために、送達ハンドル410は、雄ねじ山付き部分406とのインターフェイス点でダブテイル状に形成されている。結果として、雄ねじ山付き部分410を雄ねじ山付き部分406に対して垂直にスライドさせることにより、雄ねじ山付き部分406から解放することができる。こうして送達ハンドル410及びスリーブ400は縫合糸ガード202からカップリング解除され、解放される。
【0120】
図5は、1実施態様に基づく、弁保持デバイス200例、人工心臓弁100、及び別の送達ハンドル505を示す部分断面図である。
図5に示された縫合糸ガード202は、雌ねじ山付き部分402を有する非外傷性ドーム320を含む。送達ハンドル505は、操作中の医師にとってアクセス可能であり、身体の外部に延びる。ある特定の事例では、図示された送達ハンドル505の部分は、別のハンドルに取り付けられる。図示の送達ハンドル505は使い捨てであってよい。
【0121】
図5に示された送達ハンドル505は、雄ねじ山付き部分406を含む。雄ねじ山付き部分は非外傷性ドーム320の雌ねじ山付き部分402内にねじ込むように形成されている。雄ねじ山付き部分406は、人工弁100の弁(接合)ポスト210の1つ又は2つ以上と一緒に配置された1つ又は2つ以上のファイバ214とインターフェイス形成するように形成されている。送達ハンドル505は、縫合糸ガード202を制御し、そして1つ又は2つ以上のファイバ214に緊張を加えるように形成されている。雄ねじ山付き部分406は雌ねじ山付き部分402に対して相対回転し、そして人工弁100の送達及び植え込み中にファイバ214上の緊張を維持する。ファイバ214が人工弁100の1つ又は2つ以上の弁(接合)ポスト210のうちの少なくとも1つにカップリングされるので、ハンドル505は緊張を加え、そして
図5に示されているように、人工弁100の長手方向軸線へ向かって内向きに弁(接合)ポスト210を動かす。
【0122】
送達ハンドル505は、矢印によって示された区域506に圧力を加えることにより、縫合糸ガード202から分離するように形成されている。区域506に圧力を加えると、矢印によって示された区域508において送達ハンドル505が開く。結果として、送達ハンドル505は雄ねじ山付き部分406を解放する。こうして送達ハンドル505は縫合糸ガード202からカップリング解除される。
【0123】
図6は、1実施態様に基づく、縫合糸ガード例202、及び人工心臓弁100を示す図である。
図6に示された保持デバイス200は反転管である。反転管保持デバイス200は人工弁100の流入部分を通して配置され、弁(接合)ポスト上に折り重ねられる(反転管保持デバイス200に関するさらなる詳細は
図18~20を参照することができる)。反転管保持デバイス200は、上述の実施例に基づいて人工弁100を通して配置されたファイバによって所定の場所に固定される。図示のように、反転管保持デバイス200は、縫合糸ルーピングの可能性を最小化するのを助けるために弁(接合)ポストをカバーするように形成されている。例えば反転管保持デバイス200は、植え込み処置中に、カバーされた弁(接合)ポストのうちの1つ又は2つ以上と絡み合うようにならないように、弁に沿って弁の外部で延びる縫合線を変向させるように働く。
【0124】
いくつかの実施例では、反転管保持デバイス200は、弁(接合)ポストと係合することにより、人工弁100の長手方向軸線へ向かって内向きに人工弁100の1つ又は2つ以上の弁(接合)ポストを動かすように形成されていてよい。例えば、弁(接合)ポストを内方へ向かって動かすために、反転管保持デバイス200は、ファイバが弁(接合)ポストに対して緊張させられるのに伴って、ファイバ214(上述のように、ファイバの数は弁(接合)ポストの数に等しくてよい)がスライドする表面を作るように形成されていてよい。これにより弁(接合)ポストは内方へ向かって動かされる。これに加えて又はこれの代わりに、反転管保持デバイス200は弁(接合)ポストにクッション作用を提供することにより、植え込み中の外傷の可能性を低減することができる。
【0125】
ファイバ214を解放して、これにより反転管保持デバイス200及び弁(接合)ポスト上の緊張を解くことによって、反転管保持デバイス200は人工心臓弁100から取り外されてよい。反転管保持デバイス200は次いで人工弁100を通ってスライドさせてよい。弁(接合)ポストの1つ又は2つ以上をカバーするように働く縫合糸ガードの付加的な実施例が下記
図29A~33Bに関してさらに示され説明される。
【0126】
図7は、1実施態様に基づく、別の縫合糸ガード例202、及び人工心臓弁100を示す図である。縫合糸ガード202は1つ又は2つ以上の後退可能なアーム700を含む。これらのアームは、人工弁100の弁(接合)ポストをカバーする。後退可能なアーム700は人工弁100の弁(接合)ポストと生体構造的フィーチャ、例えば心臓の内壁との間に軟質バリアを提供し、これにより外傷の可能性を低減する。これらのアームはまた、ファイバループ214が人工心臓弁100の弁(接合)ポストを傍らを擦過するための傾斜面を提供する。これらの後退可能アーム700は後退可能であり、人工心臓弁100が人工心臓弁100の上流側から取り外されるのを可能にする。
【0127】
本明細書中で論じられる縫合糸ガードは、手術中に人工心臓弁を保護し、挿入中に組織を保護し、そして詳細に上述する縫合糸の配置及び結束のための余地を提供するように形成されている。縫合糸ガード200はまた、送達ハンドルに対して結合且つ解離するように、そして流入方向から人工心臓弁100に対して取り付け/取り外しを行うように形成されている。
【0128】
図8は、1実施態様に基づく、ファイバ経路例を示す図である。ファイバ214は表面800を横切り、そしてトラフ802を通ってルーティングされてよい。ファイバ214は調節不能方向804と調節可能方向806とを含む。
図8に示されているように、ファイバ214はそれ自体の下にルーティングされ、その結果、ファイバ214は調節不能方向804が緊張下に置かれたときにはトラフ802内に配置されることになる。
【0129】
表面800は、ファイバ214を切断することによりファイバ214を取り外すのを容易にするための、本明細書中に論じられるようなデバイスであり得る表面800の後ろ側の区域808を含む。ファイバ214のルーティングは、ファイバの一方の端部が(調節可能方向806に)引張られるとスリップするのを可能にし、これに対してファイバ214の他方の端部が(調節不能方向804に)スリップするのを可能にしない。
【0130】
表面800は本明細書中に示され論じられた縫合糸ガード202の一部であってよい。
図8に示された表面800及び対応するフィーチャは、例えばファイバ214のために縫合糸ガード202の周囲に配置されてよい。ファイバ214が固着されるいずれの場所(例えば
図2A~Gに示されたファイバ保持部分、又は
図3A~Bに示された結び目付き部分322)でも、
図8の特徴を活用することができる。
【0131】
図9は、1実施態様に基づく、ファイバラッピング経路例を示す図である。ファイバ214はデバイス900を通してルーティングされてよい。デバイスは、ファイバ214がそこを通ってルーティングされ得る経路902を含む。ファイバ214は調節不能方向804と調節可能方向806とを含む。
図9に示されているように、ファイバ214はそれ自体の上にルーティングされる。経路902は
図9の左部分に示されているように、2つのファイバ214を収容するのに充分に大きいが、しかし3つのファイバ214を収容するほどには大きくない。ある特定の実施態様では、解放ファイバ904を使用してファイバ214を解放することができる。解放ファイバ904は、解放方向906に引張られたときにファイバ214を解放し得るロックループとして作用する。
図9の右部分に示されているように、経路902は3つのファイバに対しては充分に大きいが、しかし4つのファイバに対しては充分に大きくはない。
【0132】
ファイバ214のルーティングは、ファイバの一方の端部が(調節可能方向806に)引張られるとスリップするのを可能にし、これに対してファイバ214の他方の端部がスリップする(調節不能方向804に)のを可能にしない。
【0133】
デバイス900は本明細書中に示され論じられた縫合糸ガード202の一部であってよい。
図9に示されたデバイス900及び対応するフィーチャは、例えばファイバ214のために縫合糸ガード202の周囲に配置されてよい。ファイバ214が固着されるいずれの場所(例えば
図2A~Gに示されたファイバ保持部分、又は
図3A~Eに示された結び目付き部分322)でも、
図9の特徴を活用することができる。
【0134】
図23は、1実施態様に基づくハンドル例2300を示す図である。ハンドル2300は使い捨てであってよく、本明細書中に論じられる縫合糸ガード202からファイバ214を解放するようにリモート作動可能であってよい。
図23に示されているように、ハンドル2300は解放ファイバ904を含む。解放ファイバ904は
図9に示されているようにファイバ214と係合することができる。
【0135】
解放ファイバ904の端部がキャップ2302にカップリングされてもよい。キャップ2302は、キャップ2302を図示の方向に引張ることにより、ハンドル2300から取り外すことができる。こうして、解放ファイバ904はハンドル2300のカテーテル2304の部分を通して取り外される。結果として、解放ファイバ904は
図9に示されているように、ファイバ214をロック解除する。
【0136】
上述のように、縫合糸ガード202によって直線運動を印加すると、1つ又は2つ以上のファイバ線214は、人工弁100の長手方向軸線へ向かって内向きに人工弁100の1つ又は2つ以上の弁ポスト210を動かすために緊張を加えるように形成されている。解放ファイバ906はキャップ2302にカップリングされており、そして
図9を参照しながら論じられたように、1つ又は2つ以上のファイバ線214を縫合糸ガード202で解放可能にロックするように形成されている。キャップ2302を作動させ、そしてこれをハンドル2300から取り外すと、解放ファイバ906は
図9に示されたパターンから解放ファイバ906を解放することにより、1つ又は2つ以上のファイバ線214をロック解除する。
【0137】
図29A~33Bはいくつかの実施態様に基づくシステム例1000の図を示している。システム1000は大まかに言えば、心臓弁100の植え込み処置中に心臓弁100の1つ又は2つ以上の構成部分を保護するように働く縫合糸ガード2000を含む。種々の実施態様では、縫合糸ガード2000は、縫合線(又は他の展開構成部分)が心臓弁100の1つ又は2つ以上の部分と絡み合う可能性を最小化するように形成されている。例えば、上述のように、種々の植え込み処置において、1つ又は2つ以上の縫合線を利用して、人工心臓弁100を天然弁アニュラス内へ組み込む又は植え込む。ある特定の植え込み処置の場合、心臓弁100を天然弁アニュラスへ向かって1つ又は2つ以上の縫合線に沿って並進させる(例えば
図32参照)。例えば人工心臓弁100の1つ又は2つ以上の接合ポストをカバーすることによって、心臓弁100が縫合線に沿って並進させられるのに伴って、縫合糸ガード2000は、縫合線が接合ポスト210の1つ又は2つ以上と絡み合うようになる可能性を最小化するのを助けるように働く。言うまでもなく、
図29A~29E,32,及び33Aを参照しながら示され説明される人工心臓弁100は、上で示され説明された心臓弁100と形状及び機能において一致する。
【0138】
いくつかの実施例では、縫合糸ガード2000は、縫合線が接合ポスト210の一方の側から接合ポストの反対側へ横断しないように、縫合線を接合ポスト210の半径方向内側へ向かって変向させるように働くように形成されている。例えば、いくつかの実施例では、縫合糸ガード2000は、
図29A~29Eに示されているように、心臓弁100の接合ポスト210に被さって延びるように形成されている。
図32も、縫合線3000が心臓弁100の接合ポスト210の外部に沿って延びた状態で、心臓弁100上で展開された縫合糸ガード2000を示している。必須ではないが、いくつかの実施態様では、縫合糸ガード2000は任意には、縫合糸ガード2000の展開時に、縫合糸ガード2000が接合ポスト210と係合することにより接合ポストの半径方向内側への変向をもたらすように形成されてもよい。
【0139】
言うまでもなく、
図29A~33Bに関して示され説明された縫合糸ガード2000は、本明細書中に示され説明された種々の他の縫合糸ガードと組み合わせて任意に使用されてよい。例えば縫合糸ガード202(例えば
図2A~2G)を利用して、アニュラス内への挿入のために心臓弁100を調製する際に弁ポストを半径方向内側へ変向させた後、例えば
図29A~33Bに関して示され説明された縫合糸ガード2000を利用して心臓弁100の接合ポスト210をカバーし、これにより接合ポスト210と絡み合うようになることがないように、心臓弁100に沿って心臓弁100の外部で延びる縫合線を変向させるのを助けることができる。或いは、本明細書中に示され説明された種々の他の縫合糸ガードの代わりに、
図29A~33Bに関して示され説明された縫合糸ガード2000を利用することができ、この縫合糸ガード2000は心臓弁100の接合ポスト210が半径方向内側へ変向されるのを必要としない。
【0140】
図29A~29Eは、1実施態様に基づく、縫合糸ガード例2000及び人工心臓弁100を含むシステム1000を示している。縫合糸ガード2000は
図29A~29Eでは展開形態で、心臓弁100との組み合わせで示されている。ここでは縫合糸ガード2000は心臓弁100の接合ポスト210の1つ又は2つ以上の部分を覆っている。
図30A~30Bは、縫合糸ガード2000を展開形態で、明確にするために心臓弁100を取り外した状態で示している。反対に、
図31A~31Bは、縫合糸ガード2000を非展開形態で、明確にするために心臓弁100を取り外した状態で示している。
【0141】
種々の実施態様では、縫合糸ガード2000は大まかに言えば、カバー部材と基部とを含む。いくつかの実施例では、カバー部材はフレームエレメントを含み、そして任意にはフレームエレメントにカップリングされたフィルムエレメントを含んでよい。例えば、
図29A~31Bに示されているように、縫合糸ガード2000はカバー部材2100を含む。種々の実施例では、カバー部材2100はフレームエレメント2200とフィルムエレメント2306とを含む。いくつかの実施例では、フレームエレメント2200とフィルムエレメント2306とはまとまってカバー部材2100を画定する。しかしながら、いくつかの実施例では、カバー部材2100は、フィルムエレメント2306をも必要とすることなしにフレームエレメント2200を含んでよい。さらに別の実施例では、
図6に関連して上述したものと同様に、縫合糸ガードはフレームエレメントなしでカバー部材を含んでよい。
図29Dは
図29Cと一致するシステム1000を示す上面図であるが、しかしフィルムエレメント2306は、基部2400内へ延びるフレームエレメント2200を示すために高度に透明である。
【0142】
フレームエレメント2200は1つ又は2つ以上の細長部材(例えばワイヤ)から形成されていてよい。
図29A~33Bに示された模範的実施態様では、フレームエレメント2200は複数の相関細長部材2200A,2200B,及び2200Cから形成される。これらの相関細長部材はまとまって三重ペタル形態を有するカバー部材2100を画定する。しかしながら言うまでもなく、図示のフレームエレメント2200は、開示の範囲内で考えられる唯一のフレームエレメント形態ではない。フレームエレメント2200は、数多くの点において、一例としてはペタルの数、集合的又は個別に見た、相関細長部材の種々の曲率及び角度を含む相関細長部材のジオメトリ、フレームエレメント2200を形成する細長部材の数(例えば1,2,3つの細長部材、例えば単一の連続的な細長部材、又は複数の不連続な、しかし相関する細長部材)、及び/又は細長部材の直径という点において、
図29A~33Bに示された実施態様とは異なっていてよい。
【0143】
相関細長部材2200A,2200B,及び2200Cは種々の材料及び/又は材料の組み合わせから形成されてよい。模範的実施態様では、ニチノール(NiTi)が細長部材の材料として使用される。しかしながら他の材料、例えばステンレス鋼、ポリマー材料、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、生体吸収性ポリマー、コバルト、クロム、ニッケル合金、又は任意の他の適宜の生体適合性材料、及びこれらの組み合わせを細長部材の材料として使用することができる。種々の実施態様では、フレームエレメント2200は大まかに言えば、コンフォマーブル、耐疲労性、弾性、及び膨張性であることにより、フレームエレメント2200は展開形態と非展開形態との間で移行することができる。種々の実施態様では、フレームエレメント2200は縫合糸ガード2000のカバー部材2100のための構造及び形状を提供する。
図29A~33Bに示された実施態様の場合、フレームエレメント2200はフィルムエレメント2306のための支持構造フレームワークを提供する。支持構造フレームワークは他の点では比較的弛緩性且つ可撓性であってよい。
【0144】
種々の実施態様では、フィルムエレメント2306はフレームエレメント2200の少なくとも一部に取り付けられ、又はカップリングされてよい。いくつかの実施例では、フィルムエレメント2306は接着材料、例えばシリコーン、ポリウレタン、又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)でフレームエレメント2200に取り付けられる。シリコーンを例えばボンディング材として利用して、フィルムエレメント2306をフレームエレメント2200に接着することができる。接着材料はフレームエレメント2200の部分に、又はフレームエレメント2200の全てに被着されてよい。
【0145】
いくつかの実施例では、フィルムエレメント2306のいくつか又は全てはフレームエレメント2200の両側(例えば第1側2202及び第2側2204)上に配置することにより、細長部材(例えば細長部材2200A,2200B,及び2200C)はフィルムエレメント2306によってカプセル化される。いくつかの実施例では、フレームエレメント2200の第1側2202は、縫合糸ガード2000が展開形態にあるときには心臓弁100に面する、カバー部材2100の部分に相当する。フレームエレメント2200の第1側2202は或いは、非展開形態(本明細書中では送達形態とも呼ばれる)を成す縫合糸ガード2000の基部2400の内側ルーメンに晒された、カバー部材2100の部分と呼ぶこともできる。いくつかの実施例では、フレームエレメント2200の第2側2204は、第1側2202とは反対側の、カバー部材2100の部分であって、縫合糸ガード2000が展開形態にあるときには心臓弁100から離反する方向に向く部分に相当する。展開形態では、第1側2202は心臓弁100の流出方向に面することが判るのに対して、第2側2204は心臓弁100の流入方向に面することが判る。
【0146】
種々の実施例では、フィルムエレメント2306の部分、例えばフレームエレメント2200の互いに対向する側にある部分を互いに接着することにより、フレームエレメント2200の部分又は全体をカプセル化することができる。或いは、ステッチング、ラッシング、バンディング及び/又はクリップを用いてフィルムエレメント2306をフレームエレメント2200に取り付けてもよい。いくつかの実施態様では、技術の組み合わせを用いてフィルムエレメント2306をフレームエレメント2200に取り付ける。
【0147】
いくつかの実施態様では、フィルムエレメント2306はフィルムエレメント2306を通る血液及び/又は他の体液及び物質の通流量を抑制又は低減するメンブラン状材料から形成されてよい。1模範的実施態様では、フィルムエレメント2306はポリマー材料、例えばフルオロポリマー材料である。少なくとも1つの実施態様では、フィルムエレメント2306は延伸ポリテトラフルオロエチレンメンブレンである。言うまでもなく、フィルムエレメント2306は他の材料、一例としてはシリコーン、ウレタン、ポリエステル(例えばDACRON(登録商標))、及びこれらの組み合わせから形成されてよい。
【0148】
図29A~30Cに示されているように、送達形態では縫合糸ガード2000は、カバー部材2100が基部2400から半径方向外側へ向かって延びるように形成されている。
図29A~29Cに示されているように、カバー部材2100は接合ポスト210の流出端部224に対して遠位方向に、接合ポスト210の流出端部224の内面222の半径方向外側へ向かって延びている。いくつかの実施例では、カバー部材2100は接合ポスト210の流出端部224の外面226の半径方向外側へ向かって延びている。
図33Aは、
図29Bのシステム1000を、明確にするためにフィルムエレメント2306が取り外された状態で33-33線に沿って示す断面図である。
【0149】
図33Aに示されているように、フレームエレメント2200を含むカバー部材2100は、心臓弁100の接合ポスト210の半径方向外側へ向かって延びている。接合ポスト210の半径方向外側へ向かって延びるか、又は接合ポスト210をカバーすることにより、カバー部材2100は、心臓弁100が縫合線に沿って(そして縫合線に対して)前進させられるのに伴って縫合線が接合ポスト210と絡み合わないように、接合ポスト210に沿って接合ポスト210の外部で延びる縫合線(例えば縫合線3000)を変向させるように働く。
【0150】
種々の実施態様では、カバー部材2100は、ひとたび基部2400から展開されると、所定の展開形状を取るように形成されている。いくつかの実施例では、カバー部材2100によって取られる形状は、フレームエレメント2200の所定の形状によって決定づけられる。いくつかの他の実施例では、カバー部材2100によって取られる形状はこれに加えて又はこれの代わりに、フィルムエレメント2306の所定の形状によって決定づけられる。すなわち、種々の実施態様では、カバー部材2100の材料のうちの1種又は2種以上が形状記憶特性を有するように形成されている。形状記憶特性は、縫合糸ガード2000が展開形態へ移行されるとカバー部材2100に所定の展開形状を取らせるように働く。
【0151】
種々の実施態様では、カバー部材2100は、これが基部2400から展開されるのに伴って反転するように形成されている。例えば、
図29A~30Cに示されているように、展開形態では、カバー部材2100の第1部分2102が、カバー部材2100の第2部分2104に対して、これらの間に移行領域を有する状態で反転させられている。反対に、
図31A~31Cに示されているように、非反転形態(例えば送達形態)では、カバー部材2100の第1部分2102はカバー部材2100の第2部分2104に対して非反転状態にある。したがって、いくつかの実施例では、展開形態では、カバー部材2100は反転部分(第1部分2102)と非反転部分(例えば第2部分2104)とを含む。図示のように、非展開形態では、第1部分2102及び第2部分2104のそれぞれが、これらの間に移行領域2106を有する状態で流出方向に延びるのに対して、展開形態では、第1部分2102(例えば反転部分)が反転させられることにより、第1部分2102は移行領域2106から流入方向に、基部2400の流入端部2410へ向かって延びる。したがって、縫合糸ガードの長手方向軸線に沿って測定されたカバー部材2100の軸線方向長さは、展開形態よりも非展開形態の方が大きい。さらに、半径方向プロフィール(例えばカバー部材2100の直径)は、非展開形態よりも展開形態の方が大きい。したがって言うまでもなく、非展開形態から展開形態へ移行すると、カバー部材2100の軸線方向長さの一部がカバー部材2100の半径方向寸法に変えられる。換言すれば、種々の実施例において、非展開形態では、縫合糸ガード2000は第1軸線方向長さと第1直径とを有するのに対して、展開形態では、縫合糸ガードはより短い第2軸線方向長さと、より大きい第2直径とを有している。
【0152】
このような展開形態によって、心臓弁100の植え込み中に心臓弁100の1つ又は2つ以上の部分をカバーすることに繋がる送達プロフィールを取り、これにより縫合線絡み合いの可能性を最小化するのを助けるように、カバー部材2100を形成することができる。引き続き
図33Aを参照すると、言うまでもなく、カバー部材2100は、カバー部材の第1部分2102がシステム1000の長手方向軸線に対して0>θ>180度の角度を成して延びている(例えば角度θはまた、心臓弁100の長手方向軸線と第1部分2102との間の相対角度、並びにカバー部材2100の第2部分2104の長手方向軸線と第1部分2102との間の相対角度を表す)ものの、角度θはゼロ度又は180度に等しくてよい(0>θ>180)。換言すれば、カバー部材2100が接合ポスト210の流出端部224の内面の半径方向外側にある位置まで延びるのであれば、第1部分2102と第2部分2104とは平行又は非平行であってよい。
【0153】
上述のように、カバー部材2100によって取られる形状は、フレームエレメント2200及びフィルムエレメント2306の1つ又は2つ以上のエレメントの特性によって決定づけることができる。例えば、いくつかの実施例では、フレームエレメント2200は複数の細長部材(例えば2200A,2200B,及び2200C)を含む。細長部材は形状記憶特性を含む。形状記憶特性は、例えば基部2400によって拘束されていないときにはカバー部材2100が所定のプロフィールを取るべく、カバー部材2100を付勢するように働く。
【0154】
図29C及び29Dに示されているように、種々の細長部材2200A,2200B,及び2200Cは、これらがまとまって多ペタルジオメトリを形成するように成形されている。各ペタルは、心臓弁のそれぞれの接合ポストをカバーする又はこれに重なるように形成されている。
図29C及び29Dに示されたカバー部材2100は3つのペタル2110,2112及び2114を含む。第1ペタル2110は細長部材2200A及び2200Cを含む。第2ペタル2112は細長部材2200A及び2200Bを含む。第3ペタル2114は細長部材2200B及び2200Cを含む。
【0155】
細長部材2200A,2200B,及び2200Cは曲げられるか、又は1つ又は2つ以上の曲げ領域、及び任意には1つ又は2つ以上のループ領域を有するように形成されてよい。例えば、細長部材2200Cは、第1ループ領域2206C及び第2ループ領域2208Cを含む複数のループ領域、並びに曲げ領域2210Cを含む。図示のように、曲げ領域2210Cは第1ループ領域2206Cと第2ループ領域2208Cとの間に位置している。曲げ領域2210Cと第1ループ領域2206Cとの間には、細長部材2200Cの第1長さ又はストラット2212Cが位置している。同様に、曲げ領域2210Cと第2ループ領域2208Cとの間には、細長部材2200Cの第2長さ又はストラット2214Cが位置している。細長部材2200Cは、縫合糸ガード2000が非展開形態を成すときには、細長部材2200Cの第1長さ2212Cと第2長さ2214Cとが第1角度を成して互いに離反する方向に角度付けされるように形成されている。反対に、縫合糸ガード2000が展開形態を成すときには、細長部材2200Cは、第1長さ2212Cと第2長さ2214Cとが第1角度よりも大きい第2角度を成して互いに離反する方向に角度付けされるように形成されている。すなわち、縫合糸ガードが展開形態と非展開形態との間を移行されるのに伴って、曲げ領域2210Cの角度は変化するように形成されている。
【0156】
具体的には、縫合糸ガード2000が非展開形態から展開形態へ移行されるのに伴って、曲げ領域2210Cは曲げ領域2210Cの角度が増大するように形成されており、これにより細長部材2200Cは
図29C及び29Dに示された展開プロフィールを取る。いくつかの実施例では、縫合糸ガード2000が非展開形態から展開形態へ移行されるのに伴って、曲げ領域2210Cの角度は鋭角から鈍角へ増大する。反対に、縫合糸ガード2000が展開形態から非展開形態へ移行されるのに伴って、曲げ領域2210Cは、曲げ領域2210Cの角度が減少するように形成されており、これにより細長部材2200Cの第1長さ2212C及び第2長さ2214Cが互いに引き寄せられるようになる。種々の実施例では、細長部材2200Cは
図29C及び29Dに示された展開プロフィールを取るように形状設定されている。細長部材2200A,2200B,及び2200Cは周知の方法に基づいて形状設定されてよい。したがって、このような実施例では、縫合糸ガード2000が非展開形態にあるときには、曲げ領域2210Cの角度は、曲げ領域2210Cの材料がエネルギーを蓄えるように減少される。縫合糸ガード2000が非展開形態から展開形態へ移行されるのに伴って、曲げ領域2210C内に蓄えられたこのエネルギーは運動エネルギーに変換され、縫合糸ガード2000を展開形態へ移行するのを助ける(例えばカバー部材が展開プロフィールを取るのを助ける)。
【0157】
種々の実施例では、細長部材2200Cの第1ループ領域2206C及び第2ループ領域2208Cは、カバー部材2100のそれぞれ第1ペタル2110及び第3ペタル2114を少なくとも部分的に画定するのを助ける。図示のように、ペタル2114は細長部材2200Cのループ領域2208Cによって、そして細長部材2200Cのループ領域2208Bによって少なくとも部分的に画定される。ペタル2110及び2112も同様に、複数の細長エレメントの複数のループ領域によって少なくとも部分的に画定される。
図29C及び29Dのカバー部材が、各ペタルが例えば複数の細長エレメントから成る複数のループ部分を含むように形成されてはいるものの、言うまでもなく細長エレメントはその代わりに、カバー部材2100の各ペタルが細長エレメントのうちのただ1つを含むように形成されていてもよい。
【0158】
種々の実施例では、カバー部材2100のペタルをまとまって画定する複数の細長エレメントの相対するループ領域は、カバー部材2100のフィルムエレメント2306を介して互いにカップリングされてよい。例えば、図示のように、フィルムエレメント2306は細長エレメント2200A及び2200Cのループ領域をペタル2110のところで互いにカップリングしている。同様に、フィルムエレメント2306は細長エレメント2200B及び2200Cのループ領域をペタル2114のところで互いにカップリングしている。
【0159】
やはり言うまでもなく、縫合糸ガード2000は
図33Aに展開形態で、カバー部材2100の一部(例えば第1部分2102又はその一部)が接合ポスト210の流出端部224に対して近位方向に延びた状態で示されてはいるものの、縫合糸ガード2000はその代わりに、カバー部材2100が接合ポスト210の流出端部224に対して近位方向に延びるのではなく、接合ポスト210の流出端部224に対して遠位方向に、接合ポストの内面222の半径方向外側へ向かって延びるように形成されてもよい。
【0160】
縫合糸ガード2000は、カバー部材2100が基部2400から選択的に展開可能であるように形成されてよく、或いは基部2400の活性化時に、カバー部材2100が基部2400から自動的に展開するように形成されてよい。すなわち、カバー部材2100は基部2400から展開することにより、心臓弁100の接合ポストをカバーし、この場合、基部2400の活性化は別としてカバー部材2100のマニピュレーションは必要とならない。例えば、いくつかの実施例では、基部2400は支持エレメント2402とシャフトエレメント2404とから成っている。シャフトエレメント2404は支持エレメント2402に対して並進運動(例えば前進及び/又は後退)するように働くことができる。いくつかのこのような実施例では、支持エレメント2402はルーメン2412を含む。このルーメンを通してシャフトエレメント2404が延びている。いくつかの実施例では、基部2400の長手方向軸線に対して横方向に断面されたシャフトエレメント2404の断面プロフィール(以後、シャフトエレメントの横断面プロフィールと呼ぶ)は、ルーメン2412のルーメンプロフィールに対して相補的である。いくつかの実施例では、シャフトエレメント2404は1つ又は2つ以上の突起、例えばその長手方向長さに沿って延びる突起2432を含む。これらの突起は支持エレメント2402のルーメンプロフィールの1つ又は2つ以上のフィーチャ2434に対して相補的であり、そしてシャフトエレメント2404を、支持エレメント2402に対する実質的な回転運動に抗して拘束するように働く。より詳細に後述するように、このような突起はこれに加えて、又はこの代わりに、シャフトエレメント2402を支持エレメント2402に対して1つ又は2つ以上の(軸線方向の又は角度的な)不連続位置に付勢又は維持するように働いてもよい。
【0161】
種々の実施例では、シャフトエレメントが支持エレメント2402に対して前進させられるのに伴って、カバー部材2100はシャフトエレメント2040の流出端部2406から自動的に展開される。いくつかの実施例では、シャフトエレメント2404は、シャフトエレメント2040を通って延びるルーメン2408を含み、このルーメンを通ってカバー部材2100が延びている。このように、種々の実施例では、フレームエレメント2200(細長部材2200A,2200B,及び2200Cの1つ又は2つ以上を含む)及びフィルムエレメント2306の1つ又は2つ以上は、基部2400のシャフトエレメント2040を通って延び、そしてこのシャフトエレメント2040に対して並進運動可能(例えば前進可能又は後退可能)である。
【0162】
種々の実施例では、フレームエレメント2200及びフィルムエレメント2306の1つ又は2つ以上は、支持エレメント2402及びシャフトエレメント2404の1つ又は2つ以上に動作的にカップリングされることにより、支持エレメント2402に対するシャフトエレメント2404の前進が、シャフトエレメント2404に対するカバー部材2100の前進(例えば流出/遠位方向への並進運動)を引き起こす。このことは縫合糸ガード2000を展開形態に移行させる。展開形態において、カバー部材2100はシャフトエレメント2404のルーメン2408の半径方向外側へ向かって延びる。
【0163】
同様に、種々の実施例では、フレームエレメント2200及びフィルムエレメント2306の1つ又は2つ以上は、支持エレメント2402及びシャフトエレメント2404の1つ又は2つ以上に動作的にカップリングされることにより、支持エレメント2402に対するシャフトエレメント2404の後退が、シャフトエレメント2404に対するカバー部材2100の後退(例えば流入/近位方向の並進運動)を引き起こし、これが縫合糸ガード2000の非展開(例えば、送達)形態への以降を引き起こす。縫合糸ガード2000のカバー部材2100の展開及び後退を基部2400の活性化と関連付けすることにより、カバー部材2100の時期尚早の展開又は後退を含む、縫合糸ガード2000の誤ハンドリングの可能性を最小化することができる。
【0164】
上述のものに加えて、いくつかの実施例では、言うまでもなく、いくつかの実施例では、縫合糸ガード2000は、非展開(例えば送達)形態ではカバー部材2100が基部2400のルーメン2408内部に圧潰形態を成して位置するように形成されている。すなわちいくつかの実施例では、縫合糸ガード2000は、非展開形態において、フレームエレメント2200及び/又はフィルムエレメント2306を含むカバー部材2100が、接合ポスト210の流出端部224の内面222の半径方向内側へ向かって位置するように形成されている。
【0165】
やはり言うまでもなく、上に示され説明された実施例は、シャフトエレメント2404が支持エレメント2402に対して並進運動可能であるように形成された基部2400を伴うのに対して、種々の他の実施例では、基部2400は或いは、シャフトエレメント2404がこれに加えて又はこの代わりに支持エレメント2402に回転可能にカップリングされるように形成されてよい。このような実施例では、支持エレメント2402に対するシャフトエレメント2040の並進運動に加えて、又は並進運動の代わりに、シャフトエレメント2404は支持エレメント2402に対して回転可能である。このような回転運動及び/又は並進運動は、カバー部材2100が接合ポスト210の流出端部224の内面222の半径方向外側へ向かって延びるように働く。
【0166】
いくつかの実施例では、基部2400の1つ又は2つ以上の領域、例えばルーメン2408の壁は1つ又は2つ以上の支承面として働く。カバー部材2100が反転形態と非反転形態と間を移行するのに伴って、これらの支承面に沿ってカバー部材2100が作用する。したがって、種々の実施例では、基部2400は、縫合糸ガードが非展開形態にあるときにはカバー部材2100を圧潰形態で拘束するように形成されている。
【0167】
接合ポスト210の流出端部224の内面222の半径方向外側へ向かってカバー部材2100を伸長させるのを容易にするために、互いに相対的に並進及び/又は回転するように形成された構成部分(例えば支持エレメント2402及びシャフトエレメント2404)を基部2400が含むいくつかの実施例では、基部2400は加えて、シャフトエレメント2040を支持エレメント2402に対して(軸線方向の又は角度的な)1つ又は2つ以上の不連続位置へ付勢するように働く1つ又は2つ以上のフィーチャを含んでよい。例えば、
図33Aに示されているように、シャフトエレメント2404は付勢部材2414A及び2414Bを含む。これらの付勢部材はそれぞれ、支持エレメント2402のフランジ2416とインターフェイス形成するように形成されている。図示のように、シャフトエレメント2404が支持エレメント2402に対して遠位方向に前進させられた位置にある状態で、縫合糸ガード2000は展開形態を成している。ここでは、フランジ2416は付勢部材2414Aとシャフトエレメント2404とのフランジ2418との間に位置している。フランジ2416がこのように位置決めされている状態で、付勢部材2414A及びフランジ2418は、フランジ2416を付勢部材2414Aとフランジ2418との間に付勢することによって、縫合糸ガード2000を展開位置に維持するのを助けるように働く。
【0168】
種々の実施例では、タブ2420Aをフランジ2416の半径方向内側へ向かって変向させるために、近位方向に向けられた長手方向力をシャフトエレメント2404に加えることにより、付勢部材2414Aの付勢力を克服することができ、これにより、付勢部材2414Aはフランジ2416をクリアすることができ、そしてシャフトエレメント2404を支持エレメント2402に対して近位側に引き込むことができる。種々の実施例では、付勢部材(例えば2414A及び/又は2414B)は1つ又は2つ以上の傾斜フィーチャ、例えば傾斜フィーチャ2422Aを含むことができる。傾斜フィーチャは、長手方向力がシャフトエレメント2404に(例えば近位方向/遠位方向に)加えられるのに伴って、付勢部材の変向を容易にするのを助ける。シャフトエレメント2404が支持エレメント2402に対して並進運動させられるのに伴って、このような傾斜フィーチャは、フランジ2416に沿って係合してスライドする支承面として形成されてよい。いくつかの実施例では、付勢部材(例えば2414A及び/又は2414B)の1つ又は2つ以上は1つ又は2つ以上のストップフィーチャを含んでよい。ストップフィーチャは、シャフトエレメント2404が支持エレメント2402に対して指定の軸線方向位置を超えて並進運動するのを遮るように働く。例えば、
図33Bに示されているように、付勢部材2414Bは、タブ2420Bの一部であるストップフィーチャ2424Bを含む。このストップフィーチャは、
図33Bに示された位置を超えてシャフトエレメント2404が近位方向へ並進運動するのを遮るためにフランジ2416と係合するように形成されている。この位置は、非展開形態を成すシャフトエレメント2040の位置である。なお心臓弁100は明確にするために
図33Bから取り除かれている。
図33Aに戻ると、いくつかの実施例では、シャフトエレメント2404のフランジ2418はストップフィーチャとして働いてよい。このストップフィーチャは、シャフトエレメント2404が
図33Aに示された位置を超えて遠位方向へ並進運動するのを遮るように機能する。この位置は、展開形態を成すシャフトエレメント2040の位置である。
図33Bに示されているように、縫合糸ガード2000は非展開形態を成しており、これとともにシャフトエレメント2404は支持エレメント2402に対して近位方向に前進させられた位置にある。この位置ではフランジ2416は付勢部材2414Aとタブ2420Bとの間に位置している。フランジ2416がこのように位置決めされている状態で、付勢部材2414A及びタブ2420Bは、フランジ2416を付勢部材2414Aとタブ2420Bとの間に付勢することによって、縫合糸ガード2000を展開位置(例えば不連続位置)に維持するのを助けるように働く。
【0169】
いくつかの実施例では、基部2400は、本明細書中に示され説明された送達ハンドルのいずれかとインターフェイス形成するように形成されてよい。したがって、本明細書中に示され説明された送達ハンドルのうちの1つ又は2つ以上を利用して、心臓弁100を患者の心臓内部のターゲット領域へ前進させることを含め、縫合糸ガード2000を前進させ、且つ/又は縫合糸ガード2000を送達形態と展開形態との間で移行させることができる。したがって、言うまでもなく、本明細書中に示されおよび/または説明された送達ハンドルの1つ又は2つ以上は、シャフトエレメント2040が支持エレメント2402に対して前進させられるように形成された1つ又は2つ以上の機構を含んでよい。
【0170】
いくつかの実施態様では、基部2400は、心臓弁100の1つ又は2つ以上の領域にカップリング可能であるように形成されてよい。例えば、
図30Aに示されているように、基部2400は保持フィーチャ2426を含む。保持フィーチャ2426は基部2400の一部から、例えば支持エレメント2402の一部から半径方向に延びる突起である。種々の実施例では、縫合糸を心臓弁100の縫合用カフ600に通し、そして保持フィーチャ2426の周りにルーピングすることにより、心臓弁100を縫合糸ガード2000に固定又はカップリングすることができる。いくつかの実施例では、保持フィーチャ2424はガイド2428を含んでよい。ガイドは縫合糸と保持フィーチャ2424との係合を保持するように働く。例えば
図30Aに示されているように、ガイド2428はチャネル又は溝を含み、
図29Eには、縫合糸又はファイバ3002が、ガイド2428のチャネル又は溝内で延びている状態で示されている。
【0171】
いくつかの実施例では、基部2400はさらに、
図2に関して上述した切断スロットと同様の切断スロット2430を含むように形成されてよい。心臓弁100から縫合糸ガード2000をカップリング解除するために、医師は切断スロット2430の指定区域内で縫合糸又はファイバ3002を切断する。このことは、縫合用カフ600を通って延びて保持フィーチャ2426の周りにルーピングした縫合糸又はファイバを解放し、心臓弁100が縫合糸ガード2000からカップリング解除されるのを可能にする。
【0172】
本明細書中に示され説明されたカバー部材2100は3ローブ形態又は3ペタル形態で示されてはいるものの、言うまでもなく、カバー部材2100は、3つ未満、例えば2つのペタル、或いは3つ超のペタル、例えば4,5,6,又は6つ超のペタルを含むように形成されてもよい。実際に、種々の実施例では、カバー部材2110が上記開示内容に基づいて展開され後退させられるように動作可能であるならば、いかなる数のペタルを含んでもよい。いくつかの実施例では、ペタル又はローブ状デザインの代わりに、カバー部材2100はペタルを含むのではなく、
図6に関して示され説明されたプロフィールと一致する反転可能なフードとして形成されてもよい。
【0173】
さらに、
図29A~33Bと関連して示され説明されたカバー部材は、不連続な細長エレメント2200A,2200B,及び2200Cを有するフレームエレメント2200を含んではいるものの、言うまでもなく、フレームエレメント2200は単一の連続的な細長エレメントを含んでもよい。単一の連続的な細長エレメントは、曲げることにより、上記
図29A~33Bと関連して示され説明された形態にしてよく、或いは別の形態に形成してもよい。例えば、いくつかの実施例では、フレームエレメント2200は螺旋状に成形されてよい。加えて、細長エレメント2200A,2200B,及び2200Cは曲げ領域、例えば曲げ領域2210Cを含むものとして示され説明されているものの、言うまでもなく、細長エレメントは複数の曲げ領域を含んでもよい。
【0174】
本出願の発明を全般的に、そして具体的な実施態様に関連して上記のように説明してきた。当業者には明らかなように、開示の範囲を逸脱することなしに、種々の改変及び変更を実施態様において加えることができる。したがって、本発明の改変形及び変更形が添付の請求項及びこれらの同等物の範囲に含まれるのであれば、実施態様はこれらの改変形及び変更形に範囲が及ぶものとする。
(態様)
(態様1)
第1接合ポストを含む心臓弁と、
前記心臓弁にカップリングされた送達装置と、
を含む、システムであって、前記送達装置が、
流入端部、及び前記流入端部に対して遠位側にある流出端部を含む基部と、
選択的に展開可能であり且つ前記基部を通って延びる縫合糸ガードであって、初期形態から展開形態へ移行し、前記初期形態では、前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの流出端部の内面の半径方向内側へ向かって位置するように、前記縫合糸ガードが圧潰形態にあり、そして前記展開形態では、前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの流出端部に対して遠位方向に、前記流出端部の内面の半径方向外側へ向かって延びている、縫合糸ガードと、
を含む、システム。
(態様2)
前記縫合糸ガードがフレームエレメントを含み、前記縫合糸ガードが前記展開形態に移行されると前記フレームエレメントが前記縫合糸ガードに前記展開形態を自然に取らせるように形成されるべく、前記フレームエレメントが形状設定されている、態様1に記載のシステム。
(態様3)
前記フレームエレメントが第1ストラットと第2ストラットとによって画定されており、前記第1ストラットが前記第1接合ポストの流出端部に対して遠位方向に、流出部の内面の半径方向外側へ向かって延びるように、そして前記第2ストラットが第2接合ポストの流出端部の内面の半径方向外側へ向かって、且つ前記第2接合ポストの流出端部の遠位方向へ延びるように、前記フレームエレメントが形状設定されていることに基づき、前記縫合糸ガードが前記展開形態へ移行されるのに伴って、前記第1ストラットと前記第2ストラットとが互いに分離するように形成されている、態様2に記載のシステム。
(態様4)
前記第1ストラットが前記フレームエレメントの第1ループ状部分を画定し、そして前記第2ストラットが前記フレームエレメントの第2ループ状部分を画定しており、曲げ領域が前記第1ループ状部分と前記第2ループ状部分との間の移行部を画定しており、前記展開形態の前記曲げ領域の角度が、前記初期形態の前記曲げ領域の角度よりも大きい、態様3に記載のシステム。
(態様5)
前記曲げ領域が初期形態でポテンシャルエネルギーを蓄えており、前記ポテンシャルエネルギーは、フレームエレメントに前記展開形態を取らせるように運動エネルギーに変換することができる、態様4に記載のシステム。
(態様6)
前記第1ストラットと前記第2ストラットとが同じストラットである、態様2~5のいずれかに記載のシステム。
(態様7)
前記第1ループ状部分と前記第2ループ状部分とがまとまって第1フレームエレメントを画定し、前記縫合糸ガードが前記第1フレームエレメントとほぼ同様の第2フレームエレメントを含み、前記第2フレームエレメントが、前記第1フレームエレメントの前記第1ループ状部分が前記第2フレームエレメントの第2ループ状部分に隣接するように前記第1フレームエレメントに対して角度的にオフセットされており、前記第1フレームエレメントの前記第1ループ状部分と、前記第2フレームエレメントの前記第2ループ状部分とがまとまって前記縫合糸ガードの第1ペタルを画定しており、そして前記縫合糸ガードの第1ペタルが、展開状態で前記第1接合ポストの流出端部に対して遠位方向に、流出部の内面の半径方向外側へ向かって延びるように形成されている、態様4~6のいずれか1項に記載のシステム。
(態様8)
前記第1フレームエレメントの第1ループ状部分と、前記第2フレームエレメントの前記第2ループ状部分とが生体適合性フィルムによって一緒にカップリングされている、態様4~7のいずれか1項に記載のシステム。
(態様9)
前記生体適合性フィルムがポリマーを含む、態様8に記載のシステム。
(態様10)
前記ポリマーがePTFEを含む、態様8に記載のシステム。
(態様11)
前記縫合糸ガードが、前記心臓弁が接合ポストを含むのと同じ数のペタルを含む、態様7~10のいずれか1項に記載のシステム。
(態様12)
前記縫合糸ガードが、前記第1フレームエレメント及び前記第2フレームエレメントとほぼ同様の第3フレームエレメントを含み、前記縫合糸ガードが3つのペタルを含むように前記第3フレームエレメントが、前記第1フレームエレメント及び前記第2フレームエレメントに対して角度的にオフセットされている、態様7~11のいずれか1項に記載のシステム。
(態様13)
前記初期形態では前記縫合糸ガードが非反転形態を成しており、そして、前記展開形態では、前記第1接合ポストの流出端部の内面の半径方向外側へ向かって延びる前記縫合糸ガードの部分が前記基部の前記流入端部へ向かって延びるように、前記縫合糸ガードが反転させられる、態様1~12のいずれか1項に記載のシステム。
(態様14)
前記縫合糸ガードを前記展開形態へ移行させるように前記縫合糸ガードが前記基部に対して前進可能であり、そして前記縫合糸ガードを前記初期形態へ移行させるように前記縫合糸ガードが前記基部に対して後退可能である、態様1~13のいずれか1項に記載のシステム。
(態様15)
前記初期形態にあるときは前記第1接合ポストの流出端部が露出されており、そして前記展開形態にあるときには前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの流出端部をカバーする、態様1~14のいずれか1項に記載のシステム。
(態様16)
前記フレームエレメントがニチノール又は形状記憶ポリマーを含む、態様2~15のいずれか1項に記載のシステム。
(態様17)
前記縫合糸ガードが、前記第1接合ポストと絡み合うようにならないように縫合線を変向させるように形成されている、態様1~16のいずれか1項に記載のシステム。
(態様18)
前記縫合糸ガードが、前記第1接合ポストの周りにルーピングされるようにならないように縫合線を変向させるように形成されている、態様1~17のいずれか1項に記載のシステム。
(態様19)
前記送達装置がさらに、前記基部を通って延びるシャフトを含み、前記シャフトが流入端部と流出端部とを含み、そして前記縫合糸ガードが前記シャフトのルーメンを通って延びており、前記基部に対して流出方向へ前記シャフトの直線運動が印加されると、前記縫合糸ガードが前記展開形態へ移行させられる、態様1~18のいずれか1項に記載のシステム。
(態様20)
前記縫合糸ガードが前記展開形態にある状態で、前記基部に対して流入方向へシャフトの直線運動が印加されると、前記縫合糸ガードが前記初期形態へ移行させられる、態様
19に記載のシステム。
(態様21)
さらに、前記縫合糸ガードの、前記初期形態と前記展開形態との間の移行を制御するように形成された送達ハンドルを含む、態様1~20のいずれか1項に記載のシステム。
(態様22)
人工弁のための送達装置であって、前記装置が、
前記人工弁と係合するように形成された基部であって、流入端部と流出端部とを含み、前記流出端部が前記流入端部よりも遠位側にある、基部と、
初期形態から展開形態へ移行するように形成された縫合糸ガードであって、端部と中間部分とを含み、前記初期形態では、前記端部が前記中間部分に対して遠位側にあるように、前記縫合糸ガードが非反転形態を成して前記基部内部で圧潰されており、そして前記展開形態では、前記縫合糸ガードの一部が反転させられて前記端部が前記中間領域に対して近位方向に、前記基部の前記流入端部へ向かって延びるように、前記縫合糸ガードが前記基部の流出端部から展開させられる、縫合糸ガードと、
を含み、
前記縫合糸ガードが、植え込み処置中に前記人工弁の第1接合ポストと絡み合うようにならないように縫合線を変向させるように形成されている、
人工弁のための送達装置。
(態様23)
人工弁のための送達装置であって、前記装置が、
前記人工弁と係合するように形成された基部であって、流入端部と流出端部とを含む、基部と、
前記基部を通って延びる縫合糸ガードであって、前記基部の流出端部から延びるように形成されており、前記縫合糸ガードがさらに、前記縫合糸ガードの端部が前記基部の前記流入端部へ向かって延びるべく反転するように形成されている端部を含む、縫合糸ガードと、
を含み、
前記縫合糸ガードが、植え込み処置中に前記人工弁の第1接合ポストと絡み合うようにならないように縫合線を変向させるように形成されている、
人工弁のための送達装置。
(態様24)
第1接合ポストを含む人工弁を送達する方法であって、前記方法が、
流入端部と流出端部とを含む基部であって、前記流出端部が前記流入端部に対して遠位側にある基部と、
選択的に展開可能であり前記基部を通って延びる縫合糸ガードであって、前記第1接合ポストの流出端部の内面の半径方向内側へ向かって位置している、縫合糸ガードと、
を含む、前記人工弁に固定された送達装置を用意することと、
前記第1接合ポストの周りにルーピングされないように縫合線を変向させるために、前記縫合糸ガードが前記第1接合ポストの流出端部に対して遠位方向に、流出端部の内面の半径方向外側へ向かって延びるように、前記縫合糸ガードを前記基部に対して前進させることと、
を含む、第1接合ポストを含む人工弁を送達する方法。
(態様25)
前記縫合糸ガードが圧潰・非反転形態を成すべく前記縫合糸ガードが前記基部の内部内へ引き込まれるように、前記縫合糸ガードを前記基部に対して後退させることを含む、態様24に記載の方法。
(態様26)
人工弁のための送達装置であって、前記装置が、
縫合糸ガードを含み、前記縫合糸ガードが、前記縫合糸ガードの長さを短くするために直線運動を印加すると、前記人工弁の1つ又は2つ以上の弁ポストを前記人工弁の長手方
向軸線へ向かって内向きに動かすように形成されている、人工弁のための送達装置。
(態様27)
前記縫合糸ガードが、ターゲット部位への人工弁の植え込み中に縫合糸と絡み合うようになることから、前記人工弁の前記弁ポストの少なくとも1つ及び1つ又は2つ以上のリーフレットを保護するように形成されている、態様26に記載の装置。
(態様28)
前記縫合糸ガードが、前記1つ又は2つ以上の弁ポストの間に配置された1つ又は2つ以上のファイバ線を含む、態様26又は27に記載の装置。
(態様29)
直線運動が印加されると、前記人工弁の長手方向軸線へ向かって内向きに前記人工弁の1つ又は2つ以上の弁ポストを動かすために緊張を加えるように、前記1つ又は2つ以上のファイバ線が形成されている、態様28に記載の装置。
(態様30)
前記縫合糸ガードが、前記1つ又は2つ以上のファイバ線に緊張を加えるように形成された直線運動機構を含み、そして前記縫合糸ガードへ向かって内向きに前記1つ又は2つ以上のファイバ線を引き込む、態様29に記載の装置。
(態様31)
前記縫合糸ガードが上側部分及び下側部分を含み、そして前記下側部分が、前記人工弁とインターフェイス形成するように形成されており、そして前記下側部分が前記1つ又は2つ以上のファイバ線に緊張を加えるように形成されている、態様28~30のいずれか1項に記載の装置。
(態様32)
さらに、前記人工弁の流出部分と一緒に配置された非外傷性ドームを含み、前記ドームが、心臓の一部への損傷に対して保護し、そして縫合糸が前記接合ポスト上をスライドして前記接合ポストの傍らを通り過ぎるための傾斜路を作るように形成されている、態様26~31のいずれか1項に記載の装置。
(態様33)
前記縫合糸ガードが、反転管を含み、前記反転管が前記弁ポストをカバーし、そして前記人工弁の長手方向軸線へ向かって内向きに前記人工弁の前記1つ又は2つ以上の弁ポストを動かすように形成されている、態様26に記載の装置。
(態様34)
前記縫合糸ガードが1つ又は2つ以上のアームを含み、前記アームが、前記人工弁の長手方向軸線へ向かって内向きに前記人工弁の前記1つ又は2つ以上の弁ポストを曲げるように形成されている、態様26に記載の装置。
(態様35)
前記縫合糸ガードが、手術中に弁を保護し、挿入中に組織を保護し、そしてストラット・ラップを阻止するように形成されている、態様26~34のいずれか1項に記載の装置。
(態様36)
さらに、前記縫合糸ガードを制御するように形成された送達ハンドルを含む、態様36~35のいずれか1項に記載の装置。
(態様37)
前記ハンドルが、前記人工弁の植え込みのために前記縫合糸ガードに予め取り付けられる、態様36に記載の装置。
(態様38)
直線運動が印加されると、前記人工弁の長手方向軸線へ向かって内向きに前記人工弁の前記1つ又は2つ以上の弁ポストを動かすべく緊張を加えるように、前記1つ又は2つ以上のファイバ線が形成されており、そして前記装置がさらに、前記ハンドルにカップリングされた解放ファイバを含み、前記解放ファイバが、前記1つ又は2つ以上のファイバ線を前記縫合糸ガードで解放可能にロックするように形成されており、そして前記ハンドル
の一部が、前記1つ又は2つ以上のファイバ線をロック解除するために前記解放ファイバを作動させ解放するように形成されている、態様36又は37に記載の装置。