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特許7179860超音波解析装置、超音波解析方法および超音波解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】超音波解析装置、超音波解析方法および超音波解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
A61B8/14 ZDM
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020538231
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2019027884
(87)【国際公開番号】W WO2020039796
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018155356
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新井 竜雄
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010193(WO,A1)
【文献】西原賢 外1名,超音波画像を用いた大腿四頭筋の筋厚と輝度の分析による高齢者の運動機能と骨格筋との比較,日本超音波骨軟組織学術研究,2016年06月30日,第15巻・第2号,pp.7-12
【文献】福元喜啓,超音波エコー輝度を用いた骨格筋内脂肪の評価,理学療法学,2014年,第41巻第8号,pp.559-561
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
医中誌WEB
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の表面上の互いに異なる複数の位置から該被検体の内部にある筋肉に向けて送信されて内部で反射された超音波を受信する送受信装置からの信号が入力されるインターフェイス部と、
前記インターフェイス部から入力された信号に基づいて、前記各位置に対応した超音波画像をそれぞれ生成する超音波画像生成部と、
前記各位置における前記超音波画像を合成して合成画像を生成する画像合成部と、
前記合成画像の一部に対象領域を設定する領域設定部と、
合成前の前記超音波画像のうち、前記対象領域の位置に対応する領域に基づいて、前記筋肉に関連する指標を算出する指標算出部と、
を備えたことを特徴とする超音波解析装置。
【請求項2】
前記超音波画像は、リニアスキャン画像およびセクタスキャン画像の少なくともいずれかを含む、請求項1記載の超音波解析装置。
【請求項3】
前記指標は、前記筋肉の筋質に対応する指標である、請求項1または2に記載の超音波解析装置。
【請求項4】
前記指標は、前記対象領域に対応する前記画像の輝度の平均値である、請求項1からのいずれかに記載の超音波解析装置。
【請求項5】
前記筋肉は、大腿四頭筋である、請求項1からのいずれかに記載の超音波解析装置。
【請求項6】
前記領域設定部は、前記大腿四頭筋の大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋の各々に対して前記対象領域を設定し、
前記指標算出部は、前記大腿直筋、前記外側広筋、前記中間広筋および前記内側広筋の各々の筋肉に関連する前記指標を算出する、請求項に記載の超音波解析装置。
【請求項7】
前記超音波画像は、セクタスキャン画像およびリニアスキャン画像を含み、
前記指標算出部は、
前記外側広筋および前記中間広筋の各々の筋肉に関連する前記指標を、前記リニアスキャン画像に設定された前記対象領域に対応する画像から算出し、
前記大腿直筋および前記内側広筋の各々の筋肉に関連する前記指標を、前記セクタスキャン画像に設定された前記対象領域に対応する画像から算出する、請求項に記載の超音波解析装置。
【請求項8】
前記領域設定部は、前記合成画像に設定した前記対象領域からなるマスク画像を前記合成画像から抽出し、前記マスク画像を、前記超音波画像に重ね合わせることにより、前記超音波画像に対して対象領域を設定する、請求項1からのいずれかに記載の超音波解析装置。
【請求項9】
被検体の表面上の互いに異なる複数の位置から該被検体の内部にある筋肉に向けて送信されて内部で反射された超音波を受信する送受信装置からの信号を受信する受信ステップと、
前記受信された信号に基づいて、前記各位置に対応した超音波画像をそれぞれ生成する超音波画像生成ステップと、
前記各位置における前記超音波画像を合成して合成画像を生成する画像合成ステップと、
前記合成画像の一部に対象領域を設定する領域設定ステップと、
合成前の前記超音波画像のうち、前記対象領域の位置に対応する領域に基づいて、前記筋肉に関連する指標を算出する指標算出ステップと、
を含むことを特徴とする超音波解析方法。
【請求項10】
被検体の表面上の互いに異なる複数の位置から該被検体の内部にある筋肉に向けて送信されて内部で反射された超音波を受信する送受信装置からの信号が入力されるインターフェイス部、
前記インターフェイス部から入力された信号に基づいて、前記各位置に対応した超音波画像をそれぞれ生成する超音波画像生成部、
前記各位置における前記超音波画像を合成して合成画像を生成する画像合成部と、
前記合成画像の一部に対象領域を設定する領域設定部と、
合成前の前記超音波画像のうち、前記対象領域の位置に対応する領域に基づいて、前記筋肉に関連する指標を算出する指標算出部と、
としてコンピュータを動作させる、超音波解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波によって被検体の内部を解析する超音波解析装置、超音波解析方法および超音波解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化に伴う筋肉の衰えは、筋量の低下だけでなく筋質の低下としても現れる。筋質に関する明確な定義は存在しないが、主な指標として、筋内脂肪量の増加、線維化、速筋/遅筋、羽状角、有酸素能力、神経筋接合部機能などが挙げられる。これらの中で、高齢者の運動機能低下に関連し、測定することが必要な筋質の指標は、筋内脂肪量である。筋内脂肪量が増加すると、筋量が低下しなくても発揮できる筋力は低下してしまう。
【0003】
従来より、CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置によって取得した筋断面画像から筋質を測定する技術が用いられている。非特許文献1では、骨格筋平均CT値と筋生検により得られた筋内脂肪量の間に有意な相関関係があるため、骨格筋平均CT値が筋質の評価指標として有効であることが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Goodpaster BH, et al、"Skeletal muscle attenuation determined by computed tomography is associated with skeletal muscle lipid content"、J Appl Physiol(1985)、 2000 Jul、89(1)、104-10 (1), 104-110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、CT装置やMRI装置は複雑な構成で高額であり、被爆を伴う。また、画像解析に専用のソフトウェアが無く、一般の技師が扱えるものではない。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、被爆を伴うことなく、比較的簡易な構成で筋肉の状態を評価する超音波解析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る超音波解析装置は、被検体の表面上の互いに異なる複数の位置から該被検体の内部にある筋肉に向けて送信されて内部で反射された超音波を受信する送受信装置からの信号が入力されるインターフェイス部と、前記インターフェイス部から入力された信号に基づいて、前記各位置に対応した超音波画像をそれぞれ生成する超音波画像生成部と、前記各位置における前記超音波画像を合成して合成画像を生成する画像合成部と、前記合成画像および前記超音波画像の各画像のうちの少なくとも前記合成画像に対して対象領域を設定する領域設定部と、前記対象領域に対応する前記各画像の少なくとも1つから、前記筋肉に関連する指標を算出する指標算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る超音波解析方法は、被検体の表面上の互いに異なる複数の位置から該被検体の内部にある筋肉に向けて送信されて内部で反射された超音波を受信する送受信装置からの信号を受信する受信ステップと、前記受信された信号に基づいて、前記各位置に対応した超音波画像をそれぞれ生成する超音波画像生成ステップと、前記各位置における前記超音波画像を合成して合成画像を生成する画像合成ステップと、前記合成画像および前記超音波画像の各画像のうちの少なくとも前記合成画像に対して対象領域を設定する領域設定ステップと、前記対象領域に対応する前記各画像の少なくとも1つから、前記筋肉に関連する指標を算出する指標算出ステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る超音波解析プログラムは、被検体の表面上の互いに異なる複数の位置から該被検体の内部にある筋肉に向けて送信されて内部で反射された超音波を受信する送受信装置からの信号が入力されるインターフェイス部、前記インターフェイス部から入力された信号に基づいて、前記各位置に対応した超音波画像をそれぞれ生成する超音波画像生成部、前記各位置における前記超音波画像を合成して合成画像を生成する画像合成部と、前記合成画像および前記超音波画像の各画像のうちの少なくとも前記合成画像に対して対象領域を設定する領域設定部、および、前記対象領域に対応する前記各画像の少なくとも1つから、前記筋肉に関連する指標を算出する指標算出部、としてコンピュータを動作させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被爆を伴うことなく、比較的簡易な構成で筋肉の状態を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波解析システムのブロック図である。
図2】超音波プローブの操作態様を説明するための図である。
図3】リニアスキャンモードおよびセクタスキャンモードの動作態様を説明するための図である。
図4】信号処理部の機能ブロック図である。
図5】リニアスキャン画像の生成を説明するための図である。
図6】セクタスキャン画像の生成を説明するための図である。
図7】大腿部の合成画像の一例である。
図8】合成画像への対象領域の設定を説明するための図である。
図9】対象領域が設定された超音波画像の一例である。
図10】超音波画像から抽出された対象領域の一例である。
図11】対象領域の輝度と画像番号との関係を示すグラフである。
図12】輝度分布を表わすヒストグラムである。
図13】対象領域の輝度と画像番号との関係を示すグラフである。
図14】リニアスキャン画像およびこれを2次元高速フーリエ変換した画像である。
図15】本発明の一実施形態に係る超音波解析方法における処理の流れを示すフローチャートである。
図16】合成画像への対象領域の設定の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。なお、以下では、大腿四頭筋を筋質の解析対象とするが、本発明においては、筋肉の種類は特に限定されない。
【0013】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波解析システム1のブロック図である。超音波解析システム1は、送受信装置2と、送受信装置2に接続される超音波解析装置3とを備える。
【0014】
(送受信装置)
送受信装置2は、被検体9の内部にある筋肉に向けて超音波を送信し、被検体9の内部で反射されたエコー信号を受信する装置であり、超音波プローブ21と、送受信部22と、A/D変換部23とを備える。
【0015】
図2(A)に示すように、超音波プローブ21は、超音波を被検体9の表面上の互いに異なる複数の位置から被検体9の内部に向けて送信し、被検体9の内部で反射された超音波を受信する装置であり、本実施形態では、ユーザが把持して動かすことができるように構成されており、超音波プローブ21の下端面には超音波送受面が設けられている。超音波送受面には、複数の超音波振動子を一列に並べて構成された超音波アレイセンサが配置されている。被検体9の断層画像(あるいは断面画像)を取得する場合、ユーザは、被検体9に超音波プローブ21の超音波送受面を当接させて、超音波プローブ21を被検体9の表面に沿って移動させる(超音波プローブ21によりスキャンする)。その間に、超音波プローブ21は、超音波送受面から被検体9の内部に向けて超音波を断続的に送信し、被検体9の内部で反射された超音波を超音波送受面において受信する。これにより、超音波プローブ21は、受信した超音波を示す電気信号(エコー信号)を出力する。
【0016】
本実施形態では、図2(A)および(B)に示すように、超音波プローブ21はプローブアダプタ24に取り付けられており、プローブアダプタ24の当接面が被検体9の大腿部91の表面に当接している。この状態で、ユーザは、超音波プローブ21およびプローブアダプタ24を、撮像しようとする大腿部91の横断面の外周に沿って動かす。超音波プローブ21が大腿部91の表面に沿って移動される間に、超音波プローブ21の超音波振動子から超音波が所定の時間間隔で送信される。これにより、超音波プローブ21は、大腿四頭筋92に向けて異なる位置から超音波を複数回、送信する。
【0017】
なお、超音波プローブ21またはプローブアダプタ24に傾斜センサを設けてもよい。傾斜センサは、超音波プローブ21の鉛直方向からの傾き、すなわち、超音波送受面が向く方向を検出する。また、プローブアダプタ24に取り付けられた超音波プローブ21を動かす例を示したが、プローブアダプタ24を用いず超音波プローブ21のみを動かして、超音波画像を取得してもよい。
【0018】
また、超音波プローブ21は、リニアスキャン画像を取得するリニアスキャンモードと、セクタスキャン画像を取得するセクタスキャンモードとの2種類のモードで動作可能である。
【0019】
超音波プローブ21がリニアスキャンモードで動作している場合、図3(A)に示すように、超音波送受面から送信される超音波は帯状領域93に指向する。そのため、リニアスキャンモードで超音波プローブ21を駆動させると、超音波解析装置3では、帯状領域93を鮮明に撮像した超音波画像を生成することができる。
【0020】
超音波プローブ21がセクタスキャンモードで動作している場合、図3(B)に示すように、超音波送受面から送信される超音波は扇状領域94に指向する。そのため、セクタスキャンモードで超音波プローブ21を駆動させると、超音波解析装置3では、扇状領域94を撮像した超音波画像を生成することができる。
【0021】
本実施形態では、超音波プローブ21は、リニアスキャンモードとセクタスキャンモードとを交互に繰り返しながら動作し、リニアスキャン画像およびセクタスキャン画像を各々例えば200ずつ、計400取得する。なお、この画像の個数はあくまでも一例であり、適宜任意の値に設定される。操作や被検者の状態に応じて、個数を定めてもよい。また、超音波プローブ21は、リニアスキャン画像およびセクタスキャン画像のいずれかのみを取得するように構成してもよい。
【0022】
図1に示す送受信部22は、超音波帯域の周波数で構成される搬送波をパルス状に波形成形して送信パルスを生成し、生成した送信パルスを超音波プローブ21に出力する。これにより、超音波プローブ21の振動子から被検体9の深度方向に超音波が送信される。送受信部22は、超音波プローブ21の振動子が受信した、被検体9の内部からのエコー信号を受信する。
【0023】
A/D変換部23は、送受信部22から送信されるエコー信号をアナログ-デジタル変換して、超音波解析装置3に送信する。
【0024】
(超音波解析装置)
超音波解析装置3は、入力部31と、信号処理部32と、出力部33とを備える。
【0025】
本実施形態では、超音波解析装置3は公知のパーソナルコンピュータで構成されており、ハードウェアの構成として、データ処理を行うCPU等のプロセッサ(図示省略)と、プロセッサがデータ処理の作業領域に使用するメモリ(図示省略)と、処理データを記録する記録部34と、各部の間でデータを伝送するバス(図示省略)と、外部機器とのデータの入出力を行うインターフェイス部(以下、I/F部と記す)35とを備えている。任意の機能として、超音波解析装置3は、インターネット等のネットワークを介して外部サーバと接続することもできる。
【0026】
入力部31は、ユーザからの操作の入力を受け付ける。例示的には、入力部31は、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成することができる。
【0027】
信号処理部32は、デジタル形式に変換されたエコー信号を送受信装置2から取り込んで、解析対象となる大腿四頭筋の筋質に対応する指標の算出等の各種演算処理を行う機能ブロックである。信号処理部32は、集積回路上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現されてもよいが、本実施形態では、記録部34またはメモリに予め記録されている超音波解析プログラムPをプロセッサが実行することによりソフトウェア的に実現される。超音波解析プログラムPは、ネットワークを介して超音波解析装置3にインストールしてもよい。あるいは、超音波解析プログラムPを記録したCD-ROM等の、コンピュータ読み取り可能な非一時的な有体の記録媒体を超音波解析装置3に読み取らせることにより、超音波解析プログラムPを超音波解析装置3にインストールしてもよい。信号処理部32の詳細については図4を参照して後述する。
【0028】
出力部33は、信号処理部32の演算結果を出力する。例示的には、出力部33は、モニタまたはプリンタ等で構成することができる。
【0029】
I/F部35には、送受信装置2からの信号(アナログ-デジタル変換されたエコー信号)が入力される。
【0030】
図4は、信号処理部32の機能ブロック図である。信号処理部32は、超音波画像生成部321と、画像合成部322と、領域設定部323と、指標算出部324と、筋質評価部325と、断面積算出部326と、判定部327とを備える。
【0031】
(超音波画像および合成画像の生成)
超音波画像生成部321は、I/F部35から入力されたエコー信号に基づいて、被検体9の内部の超音波画像を生成する。上述のように、送受信装置2は、リニアスキャンモードとセクタスキャンモードとを交互に繰り返しながら超音波を複数回送信し、被検体9の内部で反射されたエコー信号を受信する。そのため、送受信装置2がエコー信号を受信するたびに、I/F部35は、A/D変換されたエコー信号を受信する。これに応じて、超音波画像生成部321は、リニアスキャンモードで受信されたエコー信号から超音波画像としてリニアスキャン画像を生成し、セクタスキャンモードで受信されたエコー信号から超音波画像としてセクタスキャン画像を生成する。本実施形態では、超音波画像生成部321は、リニアスキャン画像およびセクタスキャン画像を例えば計400生成する。
【0032】
なお、超音波画像生成部321は、超音波プローブ21が被検体9を押す力、超音波プローブ21の位置および向きに基づいて、超音波画像内の被検体9の断面の超音波プローブ21に押されることにより生じる変形の補正を行ってもよい。
【0033】
図5は、リニアスキャン画像の生成を説明するための図である。図5(A)は、大腿部91の部分断面図であり、便宜上、大腿部91を大腿四頭筋92とそれ以外の部分とに区分している。リニアスキャンモードでは、超音波が帯状領域93に指向するため、リニアスキャン画像も実画像領域は帯状となる。例えば、超音波が帯状領域93aに指向している場合、図5(B)に示すリニアスキャン画像Li1が生成され、超音波が帯状領域93bに指向している場合、図5(C)に示すリニアスキャン画像Li2が生成され、超音波が帯状領域93cに指向している場合、図5(D)に示すリニアスキャン画像Li3が生成される。
【0034】
図6は、セクタスキャン画像の生成を説明するための図である。図6(A)は、大腿部91の部分断面図であり、図5(A)と同様に、便宜上、大腿部91を大腿四頭筋92とそれ以外の部分とに区分している。セクタスキャンモードでは、超音波が扇状領域94に指向するため、図6(B)に示すように、セクタスキャン画像Seにおける実画像領域は扇状となる。
【0035】
画像合成部322は、超音波画像生成部321によって生成された複数の超音波画像(リニアスキャン画像、セクタスキャン画像)を合成して合成画像を生成する。超音波画像を合成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、WO2017/010193 A1に記載の方法によって合成画像を生成する場合、画像合成部322は、複数の超音波画像それぞれに含まれる領域同士で、特徴量を検出してマッチングすることにより、複数の超音波画像を重ね合わる位置を決定する。超音波プローブ21またはプローブアダプタ24に傾斜センサが設けられている場合は、画像合成部322は、傾斜センサから得られた検出角度に基づいて超音波画像を回転させ、回転させた超音波画像に基づいてマッチングを行う。このようにすることで、各超音波画像の回転角度を正確に補正することができ、より高い精度で断片画像の重ね合わせ位置を決定することができる。図7は、大腿部の合成画像の一例である。
【0036】
(対象領域の設定)
図4に示す領域設定部323は、合成画像および超音波画像の各画像のうちの少なくとも合成画像に対して対象領域(ROI:Region of Interest)を設定する機能ブロックである。本実施形態では、領域設定部323は、合成画像に対して対象領域を設定し、対象領域が設定された合成画像に基づき、合成前の超音波画像に対して当該合成画像の対象領域に相当する対象領域を設定する機能ブロックである。
【0037】
領域設定部323は、合成画像に含まれる大腿四頭筋の全体に対して1つの対象領域を設定してもよいが、大腿四頭筋の筋質を正確に評価するために、大腿四頭筋を構成する大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋のそれぞれの筋肉の筋質を評価してもよい。そのため、本実施形態では、領域設定部323は、大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋の各々に対して対象領域を設定する。
【0038】
領域設定部323による合成画像への対象領域の設定は、入力部31を介したユーザの操作に応じて行われる。以下、図7に示す合成画像に対象領域を設定する具体例について説明する。
【0039】
ユーザは図7に示す合成画像を見ながらマウス等を操作し、図8(A)に示すように、大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋の境界位置に点を打つ。このとき、隣接する組織の種類に応じて、点の色を異ならせてもよい。
【0040】
なお、図8(A)に示す点は、大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋の境界を自動検出する手法等により自動設定されてもよい。
【0041】
続いて、図8(B)に示すように、入力部31を介したユーザの指示に応じて、同じ色の点同士を繋げることにより、信号処理部32は境界線を作成する。これにより、図8(C)に示すように、大腿四頭筋は、大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋の4つの領域に分割され、領域設定部323は、4つの領域を対象領域R1~R4として設定する。その後、図8(D)に示すように、領域設定部323は、設定した対象領域R1~R4からなるマスク画像(マスク処理した画像)を合成画像から抽出する。以上のように、合成画像への対象領域の設定が完了する。
【0042】
なお、対象領域R1~R4はハッチングで区分されているが、ハッチングの種類は、後述する輝度とは無関係である。
【0043】
さらに、領域設定部323は、合成前の超音波画像に対しても、合成画像の対象領域に相当する対象領域を設定する。本実施形態では、領域設定部323は、合成画像から抽出された対象領域R1~R4からなるマスク画像を各超音波画像に重ね合わせる。このとき、各超音波画像の回転角度に応じてマスク画像を回転させる。これにより、領域設定部323は、各超音波画像における対象領域の境界を特定し、各超音波画像に対しても、対象領域を設定することができる。
【0044】
例えば、図5(D)に示すリニアスキャン画像Li3に対しては、図9(A)に示すように、リニアスキャン画像Li3に含まれる対象領域R11、R12およびR13が設定される。また、図6(B)に示すセクタスキャン画像Seに対しては、図9(B)に示すように、セクタスキャン画像Seに含まれる対象領域R21、R22、R23およびR24が設定される。
【0045】
なお以下では、合成前の超音波画像に設定された対象領域(例えば、対象領域R11~R14、R21~R24)を「二次対象領域」と称することもある。
【0046】
(指標の算出)
図4に示す指標算出部324は、対象領域に対応する各画像(合成画像および超音波画像)の少なくとも1つから、筋肉に関連する指標を算出する。本実施形態では、指標算出部324は、合成前の超音波画像に対して設定された二次対象領域に対応する画像(ここでは超音波画像であり、より詳細にはリニアスキャン画像あるいはセクタスキャン画像)に基づいて、筋肉の筋質に対応する指標を算出する。また、筋肉の画像の輝度は、筋内脂肪量が増加するほど高くなることから、指標算出部324は、対象領域に対応する画像の輝度の平均値を、指標として算出する。指標の算出方法の具体例について、以下説明する。
【0047】
まず、指標算出部324は、各超音波画像に設定された二次対象領域を抽出する。例えば、図5(D)に示すリニアスキャン画像Li3からは、図10(A)に示すように、大腿直筋、外側広筋および中間広筋にそれぞれ対応する二次対象領域R11、R12およびR13が抽出される。また、図6(B)に示すセクタスキャン画像Seから、図10(B)に示すように、大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋にそれぞれ対応する二次対象領域R21、R22、R23およびR24が抽出される。指標算出部324は、この抽出処理を、全てのリニアスキャン画像およびセクタスキャン画像について行う。
【0048】
なお、対象領域内には、輝度の高い線(骨や外側広筋内にある筋膜の線)があるため、対象領域の外周縁部を(例えば数ピクセル分)除去して抽出してもよい。高輝度の線の除去のために、例えば、線強調画像フィルタ、2値化、ダイクストラ法による高輝度の線検出を用いることができる。
【0049】
続いて、指標算出部324は、各対象領域の輝度を算出する。図11(A)および(B)は、200のリニアスキャン画像から抽出された二次対象領域R11~R14の輝度を示すグラフであり、図11(C)および(D)は、200のセクタスキャン画像から抽出された二次対象領域R21~R24の輝度を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸はリニアスキャン画像またはセクタスキャン画像の取得順に付された番号であり、縦軸は、二次対象領域の輝度である。また、輝度が当該二次対象領域の最大輝度の70%以上である部分を太線で示している。
【0050】
指標算出部324は、太線で示された輝度の平均値を、各二次対象領域ごとに算出し、算出された平均値を筋質に対応する指標として出力する。指標の算出にあたっては、全ての二次対象領域を用いてもよいが、筋肉の部位によって、リニアスキャン画像およびセクタスキャン画像のいずれかを選択的に用いて指標を算出してもよい。
【0051】
リニアスキャン画像およびセクタスキャン画像は、以下のような長所および短所を有する。まず、リニアスキャン画像は、エコーの特性に影響されにくく、信頼度が高いという長所を有する。しかし、リニアスキャン画像は、
・1回の観測範囲が狭く、各二次対象領域が部分的にしか映らないため、二次対象領域内のムラの影響を受けやすい
・正しい値となっている画像とムラにより除去すべき画像との判別が難しい
という短所を有する。特に、後者の短所は、内側広筋のリニアスキャン画像において顕著である。また、内側広筋では、他の筋肉に比べ変化幅が小さく(感度が低く)、超音波が当たる方向性の影響が大きい。
【0052】
これに対し、セクタスキャン画像は、
・1回の観測範囲が広く、多くの画像に二次対象領域の全体または大部分が含まれるため、二次対象領域内にムラがあっても平均化される
・正しい値となっている画像と異常値となっている画像(二次対象領域が骨の陰になって映っていない場合など)との判別が容易である
・リニアスキャン画像では変化幅が大きい内側広筋についても、他の筋肉と同様の変化幅である
という長所を有する。一方、セクタスキャン画像は、エコーの特性に影響されやすく、深くなるほどエコー特性が劣化するという短所を有する。
【0053】
以上のようなリニアスキャン画像およびセクタスキャン画像の特性を踏まえて、筋肉の部位ごとに、指標を算出するための画像を選択してもよい。大腿四頭筋の場合、外側広筋および中間広筋では、二次対象領域の輝度とCT値相当量との相関関係がセクタスキャン画像よりもリニアスキャン画像のほうが高い傾向がある。そのため、外側広筋および中間広筋については、リニアスキャン画像を用いて指標を算出してもよい。一方、大腿直筋および内側広筋では、二次対象領域の輝度とCT値相当量との相関関係がリニアスキャン画像よりもセクタスキャン画像のほうが高い傾向がある。そのため、大腿直筋および内側広筋については、セクタスキャン画像を用いて指標を算出してもよい。
【0054】
なお、輝度は、0~255の階調で表わすことができるが、筋肉の部位やスキャンの方法により誤差が生じる可能性があるため、輝度補正された補正輝度を用いることができる。補正輝度の算出は、
a)元々明るめに映る部位、暗めに映る部位の傾向を同列で評価するために、部位に応じたスケーリングに補正する、
b)スキャン方法の異なる結果を混ぜて使用する場合、部位の傾向の差を補正する、
ことにより可能である。これにより、送受信装置2のゲインなどの画質や輝度に関する設定を共通化する必要がなくなる。
【0055】
輝度は、特定の条件での画像処理値であるため、物理指標に変換することにより普遍化することができる。例えば、輝度をエコーの反射レベルとしてdBに変換することができる。具体的には、0dBに相当する物質(例えば精度管理用ファントム)などにより基準を決め、実測あるいは計算から輝度をdBに変換することができる。これにより、検査や補正による量産時のばらつきの補正や多機種での指標の共通化が可能になる。
【0056】
さらに、指標算出部324は、筋質に対応する指標として、輝度の平均値の代わりに、画像のCT値相当値(HU)、MRI相当値(T1、T2)、または筋組織評価値(脂肪量相当値(%)、有効筋断面積など)を算出してもよい。これらの値は、CTやMRIによる測定値や、筋肉の解剖学的・医学的な実際の状態など、臨床的に有意なデータと関連付けることが可能である。
【0057】
(筋質の評価)
図4に示す筋質評価部325は、指標算出部324が算出した指標に基づいて筋質の評価を行う。上記指標が輝度の平均値である場合、平均値が大きいほど、筋内脂肪量が多く、筋質が低下していると評価できる。
【0058】
また、輝度分布を表わすヒストグラムを用いて、筋質を評価することもできる。例えば図12(A)および(B)に示すように、高齢者と若年者とでは、特定の輝度値となる画素数の割合が異なるため、当該割合に基づいて筋質を評価することができる。
【0059】
あるいは、輝度分布の領域の大小関係で筋質を評価することもできる。健常状態から筋質が低下するに従って、輝度分布が異なるため、例えば図13に示すように、グレーの領域とその前後の領域における輝度値を、◎(多い)、○(中間)、△(少ない)の3段階で判定し、その大小関係の組み合わせで筋質を評価する。なお、図13の各グラフにおいて、縦軸および横軸は、それぞれ輝度および画像番号である。
【0060】
あるいは、パターン・空間周波数を用いて、筋質を評価することもできる。例えば、リニアスキャン画像に対して2次元高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行う。図14に示す上側の4つの画像は、変換前の画像であり、下側の4つの画像は変換後の画像である。健常状態の場合、変換後の画像における輝度の高周波成分が低周波成分よりも大きく、低周波成分は低レベルであるが、筋質の低下に伴い、輝度の分布が低周波側に移動する。よって、高周波成分および低周波成分に基づいて、筋質を評価することができる。なお、この評価方法は、上述した、輝度の平均値またはヒストグラムを用いた筋質評価に追加的に実施することにより、評価精度を向上させることができる。
【0061】
図4に示す断面積算出部326は、大腿四頭筋の大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋の各々の筋断面積を算出する。算出結果は、筋質評価部325の評価結果とともに、判定部327に入力される。また、判定部327には、記録部34に格納されている被検者の年齢、性別、身長、体重などの被検者情報Tも入力される。なお、断面積算出部326および被検者情報Tは、任意の構成である。
【0062】
判定部327は、筋質評価部325および断面積算出部326からそれぞれ入力された筋質の評価結果および筋断面積、ならびに被検者情報Tに基づく参照データを提示する。また、判定部327は、判定のために参照データと比較した計算(例えばT-SCORE)を行う。これらの結果は、出力部33に出力され、ユーザに確認させることができる。
【0063】
(超音波解析方法)
図15は、本実施形態に係る超音波解析方法における処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態に係る超音波解析方法は、本実施形態に係る送受信装置2および超音波解析装置3によって実施することができる。
【0064】
ステップS1では、図1に示す送受信装置2が、超音波プローブ21の振動子から被検体の内部にある筋肉に向けて異なる位置から超音波を送信し、被検体9の内部で反射されたエコー信号を、超音波プローブ21の振動子で受信する。本実施形態では、前記筋肉は大腿四頭筋である。送受信装置2は、受信したエコー信号をデジタル変換して、超音波解析装置3に送信し、超音波解析装置3のI/F部35が、送受信装置2からのエコー信号を受信する。
【0065】
ステップS2では、図4に示す超音波画像生成部321が、前記受信されたエコー信号に基づいて、被検体9の内部の超音波画像を生成する。本実施形態では、超音波画像生成部321は、超音波画像としてリニアスキャン画像およびセクタスキャン画像を生成する。
【0066】
ステップS3では、画像合成部322が、超音波画像を合成して合成画像を生成する。
【0067】
ステップS4では、領域設定部323が、合成画像および合成前の超音波画像に対して対象領域を設定する。本実施形態では、大腿四頭筋を構成する大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋のそれぞれについて対象領域を設定する。
【0068】
ステップS5では、指標算出部324が、合成前の超音波画像に対して設定された二次対象領域に対応する画像に基づいて、筋質に対応する指標を算出する。前記指標は、例えば画像の輝度の平均値である。
【0069】
ステップS6では、筋質評価部325が、前記指標に基づいて筋質の評価を行う。筋質の評価は、輝度の平均値、輝度のヒストグラム、特定の輝度値の画素数の割合などに基づいて行うことができる。
【0070】
ステップS7では、断面積算出部326が、筋断面積を算出する。本実施形態では、断面積算出部326は、大腿四頭筋の大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋の各々の筋断面積を算出する。
【0071】
ステップS7では、判定部327が、筋質の評価結果、筋断面積、ならびに被検者情報Tに基づく参照データを提示する。
【0072】
(実施形態の総括)
本実施形態に係る超音波解析装置および超音波解析方法によると、従来技術のように、複雑な構成のCT装置やMRI装置を用いおらず、超音波画像を解析することにより筋質の評価を行うことができる。よって、被爆を伴うことなく、比較的簡易な構成で筋質を評価することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能であり、例えば、上記実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態も、本発明の技術的範囲に属する。
【0074】
上記実施形態では、指標算出部324は、合成前の超音波画像に対して設定された対象領域に対応する画像から、筋質に対応する指標を算出していたが、合成画像に対して設定された対象領域に対応する画像から前記指標を算出してもよい。ところで、超音波画像では深さに応じて輝度が低下するため、合成画像ではその影響を受ける。よって、合成前の超音波画像に対して設定された対象領域に対応する画像から前記指標を算出してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、1つの超音波プローブ21を大腿部91の表面に沿って移動させる間に、大腿四頭筋92に向けて異なる位置から超音波を複数回送信することにより、複数の超音波画像を取得していたが、複数の超音波画像を取得する方法はこれに限定されない。例えば、複数の超音波プローブ21を大腿部91の周囲に配置し、各超音波プローブ21から大腿四頭筋92に向けて超音波を同時に送信することにより、複数の超音波画像を取得してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、超音波画像生成部321は、超音波画像としてリニアスキャン画像およびセクタスキャン画像を生成していたが、リニアスキャン画像およびセクタスキャン画像のいずれか一方のみを生成してもよい。あるいは、超音波画像生成部321は、超音波画像としてコンベックス画像を生成してもよい。この場合、コンベックス画像に対象領域を設定して、当該対象領域に対応する画像から筋質に対応する指標を算出してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、指標を算出するためにリニアスキャン画像およびセクタスキャン画像をそれぞれ100用いたが、指標の算出に用いる超音波画像の数は特に限定されず、取得された超音波画像の一部を選択して、指標の算出に用いてもよい。例えば、取得順に並べられた超音波画像から所定数おきに画像を選択してもよい。
【0078】
また、合成画像に対象領域を設定する際に、上記実施形態では、大腿四頭筋を大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋の4つの領域に区分していたが、領域の境界を手作業で見つけることは、被検者によって難しい場合がある。そのため、例えば図16に示すように、該当する筋肉の代表的な位置を円形枠などの単純な形状の枠で囲み、枠内の領域を対象領域として設定してもよい。同図に示す例では、大腿直筋を含む円形枠C1を対象領域R1として設定する。また、外側広筋のような細長い断面形状を有する筋肉の場合、筋肉内の領域を複数の円形枠C2aおよびC2bで囲み、円形枠C2aおよびC2b内の領域を領域R2として設定してもよい。
【0079】
また、大腿四頭筋を筋質の解析対象とする場合、大腿四頭筋の全体に対して1つの対象領域を設定してもよいし、大腿四頭筋を構成する大腿直筋、外側広筋、中間広筋および内側広筋のうち少なくとも1つに対象領域を設定してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、筋質の解析対象が大腿四頭筋であったが、本発明はこれに限定されず、大腿部背面、ふくらはぎ、上腕筋などのあらゆる筋肉を解析対象に含めることができる。
【0081】
また、上記実施形態では、被検体9の表面上の互いに異なる複数の位置に対応した超音波画像を得るために、超音波プローブ21を被検体9の表面に沿って移動させながら、超音波プローブ2から超音波を断続的に送信していたが、超音波画像を得る態様はこれに限定されない。例えば、被検体9に超音波プローブ21を複数配置し、各超音波プローブ21から同時に超音波を送信してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 超音波解析システム
2 送受信装置
21 超音波プローブ
22 送受信部
23 A/D変換部
24 プローブアダプタ
3 超音波解析装置
31 入力部
32 信号処理部
321 超音波画像生成部
322 画像合成部
323 領域設定部
324 指標算出部
325 筋質評価部
326 断面積算出部
327 判定部
33 出力部
34 記録部
35 インターフェイス部
9 被検体
91 大腿部
92 大腿四頭筋
93 帯状領域
93a 帯状領域
93b 帯状領域
93c 帯状領域
94 扇状領域
C1 円形枠
C2a 円形枠
C2b 円形枠
Li1 リニアスキャン画像
Li2 リニアスキャン画像
Li3 リニアスキャン画像
P 超音波解析プログラム
R1~R4 対象領域
R11~R14 対象領域
R21~R24 対象領域
Se セクタスキャン画像
T 被検者情報
【用語】
【0083】
必ずしも全ての目的または効果・利点が、本明細書中に記載される任意の特定の実施形態に則って達成され得るわけではない。従って、例えば当業者であれば、特定の実施形態は、本明細書中で教示または示唆されるような他の目的または効果・利点を必ずしも達成することなく、本明細書中で教示されるような1つまたは複数の効果・利点を達成または最適化するように動作するように構成され得ることを想到するであろう。
【0084】
本明細書中に記載される全ての処理は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサを含むコンピューティングシステムによって実行されるソフトウェアコードモジュールにより具現化され、完全に自動化され得る。コードモジュールは、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体または他のコンピュータ記憶装置に記憶することができる。一部または全ての方法は、専用のコンピュータハードウェアで具現化され得る。
【0085】
本明細書中に記載されるもの以外でも、多くの他の変形例があることは、本開示から明らかである。例えば、実施形態に応じて、本明細書中に記載されるアルゴリズムのいずれかの特定の動作、イベント、または機能は、異なるシーケンスで実行することができ、追加、併合、または完全に除外することができる (例えば、記述された全ての行為または事象がアルゴリズムの実行に必要というわけではない)。さらに、特定の実施形態では、動作またはイベントは、例えば、マルチスレッド処理、割り込み処理、または複数のプロセッサまたはプロセッサコアを介して、または他の並列アーキテクチャ上で、逐次ではなく、並列に実行することができる。さらに、異なるタスクまたはプロセスは、一緒に機能し得る異なるマシンおよび/またはコンピューティングシステムによっても実行され得る。
【0086】
本明細書中に開示された実施形態に関連して説明された様々な例示的論理ブロックおよびモジュールは、プロセッサなどのマシンによって実施または実行することができる。プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替的に、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシン、またはそれらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を処理するように構成された電気回路を含むことができる。別の実施形態では、プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはコンピュータ実行可能命令を処理することなく論理演算を実行する他のプログラマブルデバイスを含む。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、デジタル信号プロセッサ(デジタル信号処理装置)とマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装することができる。本明細書中では、主にデジタル技術に関して説明するが、プロセッサは、主にアナログ素子を含むこともできる。例えば、本明細書中に記載される信号処理アルゴリズムの一部または全部は、アナログ回路またはアナログとデジタルの混合回路により実装することができる。コンピューティング環境は、マイクロプロセッサ、メインフレームコンピュータ、デジタル信号プロセッサ、ポータブルコンピューティングデバイス、デバイスコントローラ、または装置内の計算エンジンに基づくコンピュータシステムを含むが、これらに限定されない任意のタイプのコンピュータシステムを含むことができる。
【0087】
特に明記しない限り、「できる」「できた」「だろう」または「可能性がある」などの条件付き言語は、特定の実施形態が特定の特徴、要素および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝達するために一般に使用される文脈内での意味で理解される。従って、このような条件付き言語は、一般に、特徴、要素および/またはステップが1つ以上の実施形態に必要とされる任意の方法であること、または1つ以上の実施形態が、これらの特徴、要素および/またはステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、または実行されるかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを意味するという訳ではない。
【0088】
語句「X、Y、Zの少なくとも1つ」のような選言的言語は、特に別段の記載がない限り、項目、用語等が X, Y, Z、のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせであり得ることを示すために一般的に使用されている文脈で理解される(例: X、Y、Z)。従って、このような選言的言語は、一般的には、特定の実施形態がそれぞれ存在するXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、またはZの少なくとも1つ、の各々を必要とすることを意味するものではない。
【0089】
本明細書中に記載されかつ/または添付の図面に示されたフロー図における任意のプロセス記述、要素またはブロックは、プロセスにおける特定の論理機能または要素を実装するための1つ以上の実行可能命令を含む、潜在的にモジュール、セグメント、またはコードの一部を表すものとして理解されるべきである。代替の実施形態は、本明細書中に記載された実施形態の範囲内に含まれ、ここでは、要素または機能は、当業者に理解されるように、関連する機能性に応じて、実質的に同時にまたは逆の順序で、図示または説明されたものから削除、順不同で実行され得る。
【0090】
特に明示されていない限り、「一つ」のような数詞は、一般的に、1つ以上の記述された項目を含むと解釈されるべきである。従って、「~するように設定された一つのデバイス」などの語句は、1つ以上の列挙されたデバイスを含むことを意図している。このような1つまたは複数の列挙されたデバイスは、記載された引用を実行するように集合的に構成することもできる。例えば、「以下のA、BおよびCを実行するように構成されたプロセッサ」は、Aを実行するように構成された第1のプロセッサと、BおよびCを実行するように構成された第2のプロセッサとを含むことができる。加えて、導入された実施例の具体的な数の列挙が明示的に列挙されたとしても、当業者は、このような列挙が典型的には少なくとも列挙された数(例えば、他の修飾語を用いない「2つの列挙と」の単なる列挙は、通常、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)を意味すると解釈されるべきである。
【0091】
一般に、本明細書中で使用される用語は、一般に、「非限定」用語(例えば、「~を含む」という用語は「それだけでなく、少なくとも~を含む」と解釈すべきであり、「~を持つ」という用語は「少なくとも~を持っている」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「以下を含むが、これらに限定されない。」などと解釈すべきである。) を意図していると、当業者には判断される。
【0092】
説明の目的のために、本明細書中で使用される「水平」という用語は、その方向に関係なく、説明されるシステムが使用される領域の床の平面または表面に平行な平面、または説明される方法が実施される平面として定義される。「床」という用語は、「地面」または「水面」という用語と置き換えることができる。「垂直/鉛直」という用語は、定義された水平線に垂直/鉛直な方向を指します。「上側」「下側」「下」「上」「側面」「より高く」「より低く」「上の方に」「~を越えて」「下の」などの用語は水平面に対して定義されている。
【0093】
本明細書中で使用される用語の「付着する」、「接続する」、「対になる」及び他の関連用語は、別段の注記がない限り、取り外し可能、移動可能、固定、調節可能、及び/または、取り外し可能な接続または連結を含むと解釈されるべきである。接続/連結は、直接接続及び/または説明した2つの構成要素間の中間構造を有する接続を含む。
【0094】
特に明示されていない限り、本明細書中で使用される、「およそ」、「約」、および「実質的に」のような用語が先行する数は、列挙された数を含み、また、さらに所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する、記載された量に近い量を表す。例えば、「およそ」、「約」及び「実質的に」とは、特に明示されていない限り、記載された数値の10%未満の値をいう。本明細書中で使用されているように、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語が先行して開示されている実施形態の特徴は、さらに所望の機能を実行するか、またはその特徴について所望の結果を達成するいくつかの可変性を有する特徴を表す。
【0095】
上述した実施形態には、多くの変形例および修正例を加えることができ、それらの要素は、他の許容可能な例の中にあるものとして理解されるべきである。そのような全ての修正および変形は、本開示の範囲内に含まれることを意図し、以下の特許請求の範囲によって保護される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
図12
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