(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】複数の異なる誘電充填材を含む溶融加工可能な熱可塑性複合材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221121BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20221121BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20221121BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/01
B29C64/314
(21)【出願番号】P 2020545117
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 US2019023120
(87)【国際公開番号】W WO2019183192
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-09
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596024851
【氏名又は名称】ロジャーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】オコナー、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】セスーマドハバン、ムラリ
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074763(JP,A)
【文献】特開2013-072032(JP,A)
【文献】特開2009-122573(JP,A)
【文献】特開2014-240134(JP,A)
【文献】特開2011-063699(JP,A)
【文献】特表2000-510639(JP,A)
【文献】国際公開第2003/044099(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/102589(WO,A1)
【文献】特表2008-525550(JP,A)
【文献】特表2013-519756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融加工可能な熱可塑性複合材であって、
熱可塑性ポリマーと、
複数の異なる
粒子サイズ分布を有する誘電性充填材であって、
前記複数の異なる粒子サイズ分布の第1モードのピークの粒子サイズは、前記複数の異なる粒子サイズ分布の第2モードのピークの粒子サイズの少なくとも7倍であり、前記誘電性充填材はシリカを含んでなる、前記誘電性充填材と、
流動性改質剤とを含
み、
前記第1モードのピークが1~10マイクロメートルであり、前記第2モードのピークが0.01~1マイクロメートルであり、
前記誘電性充填材は、第1の平均粒子サイズを有する第1の複数の粒子及び第2の平均粒子サイズを有する第2の複数の粒子を含み、前記第1の平均粒子サイズは前記第1モードのピークに対応し、前記第2の平均粒子サイズは前記第2モードのピークに対応し、
前記熱可塑性複合材は、前記熱可塑性複合材の総体積に対して、30~40体積%の前記第1の複数の粒子及び10~20体積%の前記第2の複数の粒子を含む、溶融加工可能な熱可塑性複合材。
【請求項2】
前記熱可塑性複合材が、500MHz~10GHzで、5以上、好適には10~20、又は、500MHz~10GHzで15~25の誘電率を有し、誘電損失は500MHz~10GHzで0.007以下である、請求項1に記載の溶融加工可能な熱可塑性複合材。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリール)エーテルケトン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(アミドイミド)、フルオロポリマー、ポリオレフィン、又は上記のものの少なくとも1つ
を含む組み合わせを含み、
前記誘電性充填材は二酸化チタン及びチタン酸バリウムのうちの少なくとも一方をさらに含む、請求項1又は2に記載の溶融加工可能な熱可塑性複合材。
【請求項4】
前記熱可塑性複合材は、
前記熱可塑性複合材の総体積に対し
て30~50体積%の
前記熱可塑性ポリマーを含み、
前記熱可塑性複合材は、前記熱可塑性複合材の総重量に対し
て50~70体積%の誘電性充填材を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の溶融加工可能な熱可塑性複合材。
【請求項5】
前記複数の異なる
粒子サイズ分布の前記第1モードのピークは、
前記複数の異なる
粒子サイズ分布の前記第2モードのピークの10~20倍である、請求項1~4のいずれか一項に記載の溶融加工可能な熱可塑性複合材。
【請求項6】
前記流動性改質剤は
、フルオロポリマー、シルセスキオキサン、又は上記のものの少なくとも1つ
を含む組み合わせを含
む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の溶融加工可能な熱可塑性複合材。
【請求項7】
請求項1~
6の少なくともいずれか一項に記載の溶融加工可能な熱可塑性複合材を含んでなる物品。
【請求項8】
前記物品はアンテナ、又は3D印刷用のフィラメント又は粉末である、請求項
7に記載の物品。
【請求項9】
請求項
7又は
8に記載の物品の製造方法であって、
前記溶融加工可能な熱可塑性複合材を溶融形態で金型に射出し、前記金型を冷却して物品を形成する工程、又は
前記溶融加工可能な熱可塑性複合材を溶融し付加製造システムを使用して層ごとに物品を印刷する工程、又は、
前記溶融加工可能な熱可塑性複合材の押出を行う工程を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融加工可能な熱可塑性複合材一般に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融加工可能な熱可塑性複合材の場合、温度に依存する臨界せん断速度が存在し、それを超えると溶融加工材料の表面が粗くなり、それを下回ると溶融加工材料の表面は滑らかである。溶融加工された滑らかな材料表面に対する要望は、組成物を可能な限り速い速度で(例えば、高い剪断速度で)溶融加工することの経済的利点と競合する。熱可塑性複合材中の誘電性充填材の量が増えると、この臨界剪断速度が低下し、組成物の溶融加工がますます困難になる。その結果、誘電充填材の量を増やして溶融加工可能な熱可塑性複合材を実現することは非常に困難であり、最終的には、比誘電率や熱膨張係数などの熱可塑性複合材にセラミック充填材を使用する潜在的な利点がいくつか制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、当技術分野では、溶融加工可能な熱可塑性複合材から作製された高誘電率材料が依然として必要とされている。溶融加工可能な熱可塑性複合材が、改善された溶融加工性及び改善された機械的特性のうちの1つ以上を示すならば、それは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示されるのは、熱可塑性複合材及びそれを作製し、それを使用する方法である。
一実施形態では、熱可塑性複合材は、熱可塑性ポリマーと、複数の異なる粒子サイズ分布を有する誘電性充填材であって、複数の異なる粒子サイズ分布の第1モードのピークは、複数の異なる粒子サイズ分布の第2モードのピークの少なくとも7倍である、誘電性充填材と、流動性改質剤とを含む。
【0005】
熱可塑性組成物を形成する方法は、射出成形、印刷、及び押出を含むことができる。
熱可塑性複合材を含む物品には、アンテナ及びフィラメントが含まれ得る。
上記の特徴及び利点ならびに他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、図、及び特許請求の範囲から容易に明らかである。
【0006】
以下の図は、本開示を例示するために提供される例示的な実施形態である。これらの図は、実施例を例示するものであり、本開示に従って作製されるデバイスを、本明細書に記載される材料、条件、又はプロセスパラメータに限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
高濃度の誘電性充填材を有する熱可塑性複合材は、例えば摂氏300度(℃)を超える高い処理温度であっても、粘性が高い傾向があるため、溶融処理が非常に難しい。例えば、40体積パーセント(vol%)を超える二酸化チタンを含む熱可塑性複合材は、しばしば射出成形が困難であるか、又は行うことさえできない。驚くべきことに、誘電性充填材の一部を異なる粒子サイズを有する誘電性充填材と交換するだけで、熱可塑性複合材の粘度を低減できることが発見された。この粘度の低下により、最終的に、熱可塑性複合材をより容易に射出成形でき、より滑らかな成形表面を得ることができる。具体的には、熱可塑性ポリマーと、複数の異なる粒子サイズ分布を有する誘電性充填材であって、複数の異なる粒子サイズ分布の第1のモードのピークは、複数の異なる粒子サイズ分布の第2のモードのピークの少なくとも7倍である、誘電性充填材とを含む熱可塑性複合材がより低い粘度の複合材をもたらすことがわかった。
【0009】
改善された成形性は、熱可塑性複合材の誘電特性を低下させることなく有利に達成された。例えば、熱可塑性複合材は、500メガヘルツ(MHz)~10ギガヘルツ(GHz)で5以上、又は10以上、又は10~20、500MHz~10GHz、23℃では15~25の誘電率(一般的に比誘電率とも呼ばれる)を有し得るが、これは、通常、熱硬化性ポリマーを使用した場合にのみ得られるものである。さらに、驚くべきことに、誘電性充填材の複数の異なる分布を含む熱可塑性複合材は、機械的特性の改善をももたらすことが発見された。例えば、複数の異なる誘電充填材を40体積%含む熱可塑性複合材は、延性破壊モードを示すが、同量の単一モードの誘電充填材を含む対応する熱可塑性複合材は脆性破壊モードを示す。
【0010】
熱可塑性複合材は、熱可塑性ポリマーを含むことができる。熱可塑性ポリマーは、オリゴマー、ポリマー、アイオノマー、デンドリマー、コポリマー(例えば、グラフトコポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー(例えば、スターブロックコポリマー及びランダムコポリマー))、及び上記のものの少なくとも1つを含む組み合わせを含み得る。熱可塑性ポリマーは、半結晶性又はアモルファスであり得る。熱可塑性ポリマーは、500MHz~100GHz、又は500MHz~10GHzまでの周波数、23℃で0.007以下、又は0.006以下、又は0.0001~0.007の誘電損失(誘電正接とも呼ばれる)を持つことができる。熱可塑性ポリマーは、1.8MPaでASTM D648-18に従って決定されるように、55℃以上、又は55~250℃の熱変形温度を有することができる。熱可塑性ポリマーは、ASTM E1545-11(2016)に従って決定されるように、50~300℃、又は80~300℃以上のガラス転移温度を有することができる。
【0011】
熱可塑性複合材は、熱可塑性複合材の総体積に対して、10~90体積%、又は20~80体積%、又は20~70体積%、又は20~60体積%、又は30~50体積%の熱可塑性ポリマーを含むことができる。
【0012】
熱可塑性ポリマーは、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリイミド(例えば、ポリエーテルイミド)、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリ(C1~12アルキル)メタクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリチオエステル)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE))、ポリアミド(例えば、ポリアミドイミド)、ポリアリレート、ポリスルホン(例えば、ポリアリールスルホン、ポリスルホンアミド)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリエーテル(例えば、ポリ(エーテルケトン)(PEK)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES))、ポリ(アクリル酸)、ポリアセタール、ポリベンゾオキサゾール(例えば、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン)、ポリオキサジアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシインドール、ポリオキソイソインドリン(例えば、ポリジオキソイソインドリン)、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリ無水物、ビニルポリマー(例えば、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ハロゲン化ビニル)(例えば、ポリ(ビニル塩化物))、ポリ(ビニルニトリル)、ポリ(ビニルエステル))、ポリスルホネート、フルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(PETFE))、又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリール)エーテルケトン(例えば、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、及びポリ(エーテルケトンケトン))、ポリスルホン(例えば、ポリ(エーテルスルホン))、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(アミドイミド)、フルオロポリマー、又はこれらの少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィンを含むことができる。熱可塑性ポリマーは、上記のポリマーの少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。
【0013】
熱可塑性ポリマーは、ポリ(アリール)エーテルケトン、例えば、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、及びポリ(エーテルケトンケトン)を含むことができる。例えば、熱可塑性ポリマーは、ポリ(エーテルエーテルケトン)を含み得る。ポリ(エーテルエーテルケトン)のメルトフローレート(MRF)は、ASTM D1238-13手順Aに従って、2.16キログラム(kg)の負荷、400℃で、10分毎に40~50グラム(g/10分)である。
【0014】
熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィンを含むことができる。ポリオレフィンは低密度ポリエチレンを含むことができる。ポリオレフィンは、環状オレフィンコポリマー(例えば、メタロセン触媒を使用したノルボルネンとエチレンの共重合生成物)を、任意に線状ポリオレフィンと組み合わせて含むことができる。環状オレフィン共重合体は、次の特性を有する:ISO 527-2/1A:2012に従って測定した場合、毎分5ミリメートル(mm/min)で、40~50メガパスカル(MPa)で1つ以上の引張強度;IEC 60250に従って判定したときの、1~10キロヘルツ(kHz)の周波数で2~2.5の誘電率;ISO 75-1,-2:2004に従って判定したときの、0.46MPaで125℃以上の熱変形温度、例えば135~160℃。
【0015】
熱可塑性複合材は、液晶ポリマーを含むことができる。液晶ポリマー(「LCP」と略されることもある)は、様々な用途が公知のポリマーの種類である。液晶ポリマーは、熱可塑性樹脂を含むことが多いが、それらは、官能化によって、又はエポキシなどの熱硬化性樹脂との配合によって、熱硬化性樹脂としても使用できる。液晶ポリマーは、ポリマー鎖中の繰り返し単位の性質により、固定された分子形状(例えば、線状)を有すると考えられている。繰り返し単位は、典型的には剛直な分子要素を含む。剛直な分子要素(メソゲン)は、形状がしばしば棒状又は円盤状であり、通常は芳香族であり、しばしば複素環式である。剛直な分子要素は、ポリマーの主鎖(骨格)及び側鎖の一方又は両方に存在することができる。剛直な分子要素は、スペーサと呼ばれることがある、より柔軟な分子要素によって分離することができる。
【0016】
市販の液晶ポリマーの例には、セラニーズから市販されているベクトラ(登録商標、VECTRA)及びゼナイト(登録商標、ZENITE)、及びソルベイスペシャルティポリマーズ社から市販されているザイダー(登録商標、XYDAR)、及びアールティーピー社から入手可能なもの、例えばRTP-3400シリーズ液晶ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
熱可塑性複合材は、全熱可塑性複合材の総体積に対して、10~90体積%、又は20~80体積%、又は20~70体積%、又は20~60体積%、又は10~20体積%の液晶ポリマーを含む。熱可塑性複合材は、熱可塑性複合材の総体積に対して、液晶ポリマー以外に熱可塑性ポリマーを20~80体積%、又は40~80体積%、及び液晶ポリマーを10~20体積%にて含むことができる。
【0018】
熱可塑性複合材は、誘電率、散逸率、熱膨張係数、及び組成物のその他の特性を調整するために選択できる誘電性充填材を含む。誘電性充填材は、複数の異なる粒子サイズ分布の第1モードのピークが、複数の異なる粒子サイズ分布の第2モードのピークの少なくとも7倍である、複数の異なる粒子サイズ分布を有する。複数の異なる粒子サイズ分布は、例えば、2つのモード、3つのモード、又は4つのモードを有し得る。換言すると、誘電性充填材は、第1の平均粒径を有する第1の複数の粒子と、第2の平均粒径を有する第2の複数の粒子とを含む。ここで、第1の平均粒子サイズは、第2の平均粒子サイズの7倍以上、又は10倍以上、又は7~60倍、又は第2の平均粒子サイズの7~20倍である。本明細書で使用する場合、粒子サイズという用語は、粒子と同じ体積を有する球の直径を指し、平均粒子サイズは、複数の粒子の粒子サイズの数平均を指す。第1のモード(第1の平均粒子サイズ)のピークは2マイクロメートル以上、又は2~20マイクロメートルであり得る。第2のモード(第2の平均粒子サイズ)のピークは、0.2マイクロメートル以上、又は2マイクロメートル以下、又は0.2~1.5マイクロメートルであり得る。
【0019】
第1の複数の粒子及び第2の複数の粒子は、同一の誘電性充填材からなることができる。例えば、第1の複数の粒子及び第2の複数の粒子は二酸化チタンを含んでなることができる。逆に、第1の複数の粒子及び第2の複数の粒子は、異なる誘電性充填材からなることができる。例えば、第1の複数の粒子はシリカを含むことができ、第2の複数の粒子は二酸化チタンを含むことができる。
【0020】
第1の複数の粒子は、1~10マイクロメートル、又は2~5マイクロメートルの平均粒子サイズを有することができる。第2の複数の粒子は、0.01~1マイクロメートル、又は0.1~0.5マイクロメートルの平均粒子サイズを有することができる。誘電性充填材は、1~10マイクロメートルの平均粒子サイズを有し二酸化チタンからなる第1の複数の粒子、及び0.1~1マイクロメートルの平均粒子サイズを有する第2の複数の粒子を含むことができる。
【0021】
熱可塑性複合材は、熱可塑性複合材の総体積に対して、10~90体積%、又は20~80体積%、又は30~80体積%、又は40~80体積%の誘電性充填材を含むことができる。熱可塑性複合材は、第1の複数の粒子を25~45体積%、又は30~40体積%、及び第2の複数の粒子を10~25体積%、又は10~20体積%、どちらも熱可塑性複合材の総体積に対する割合として、含むことができる。誘電性充填材は、誘電性充填材の総体積に対して、第1の複数の粒子を10~90体積%、又は50~90体積%、又は60~80体積%含むことができる。誘電性充填材は、誘電性充填材の総体積に対して、第2の複数の粒子を10~90体積%、又は10~50体積%、又は20~40体積%含むことができる。
【0022】
誘電性充填材は、二酸化チタン(例えば、ルチル及びアナターゼ)、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、シリカ(例えば、溶融アモルファスシリカ)、コランダム、ウォラストナイト、Ba2Ti9O20、中実ガラス球、中空微小球(例えば、中空ガラス球及び中空セラミック球)、石英、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナ、アルミナ三水和物、マグネシア、マイカ、タルク、ナノクレイ、水酸化マグネシウム、又はこれらの少なくとも1つを含む組み合わせからなることができる。誘電性充填材は、二酸化チタン、シリカ、チタン酸バリウム、又は上記の物の少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。誘電性充填材は中空微小球を含むことができる。誘電性充填材の形状は、例えば、凝集体として、球形、小板状、又は不規則な1つ以上であり得る。誘電性充填材は、繊維状成分を含まなくてもよい。
【0023】
誘電性充填材は、処理された二酸化チタンを含むことができる。例えば、二酸化チタンを焼結して、所望の相の量を増加させることができる。理論に縛られることを望まないが、焼結は、組成物がより低い誘電損失を達成するのを助けることができると考えられている。1~10マイクロメートル、又は2~5マイクロメートルの平均粒子サイズを有する第1の複数の二酸化チタン粒子を焼結することができる。0.1~1マイクロメートル、又は0.1~0.5マイクロメートルの平均粒子サイズを有する第1の複数の二酸化チタン粒子を焼結することができる。
【0024】
誘電性充填材が複数の中空微小球を含む場合、第1の複数の中空微小球は、70~300マイクロメートル、又は10~200マイクロメートルの平均外径を有することができ、第2の複数の中空微小球は、10~50マイクロメートル、又は20~45マイクロメートルの平均外径を有することができる。中空微小球の密度は、立方センチメートルあたり0.1グラム(g/cc)以上、又は0.2~0.6g/cc、又は0.3~0.5g/ccにすることができる。中空微小球は、例えば、トレルボルグオフショア社(ボストン)、旧エマーソンアンドカミング社、W.R.グレースアンドカンパニー社(マサチューセッツ州キャントン)、スリーエムカンパニー(ミネソタ州セントポール)など、様々な販売元から入手できる。そのような中空微小球は、マイクロバルーン、ガラスバブル、及びマイクロバブルとも呼ばれ、例えば、密度、サイズ、コーティング、及び/又は表面処理が多様であり得る様々なグレードで販売されている。中空微小球は、セラミック中空微小球、ポリマー中空微小球、ガラス中空微小球(例えば、アルカリホウケイ酸ガラスから作製されたもの)、又は上記の1つ以上を含む組み合わせを含み得る。
【0025】
誘電性充填材は、シリコン含有コーティング、例えば、有機官能性アルコキシシランカップリング剤で表面処理することができる。ジルコン酸塩又はチタン酸塩のカップリング剤を使用することができる。そのようなカップリング剤は、熱可塑性複合材中の充填材の分散を改善し、それから製造された物品の吸水を低減することができる。
【0026】
シランコーティングは、線状シラン、分岐シラン、シクロシラン、又は上記の少なくとも1つからなる組み合わせを含むことができるシランから形成することができる。シランは、沈降性シランを含むことができる。シランは、溶媒(例えば、トルエン)又は分散シランを含まなくてもよく、例えば、シランは、シランの総重量に対して、溶媒分散シランを0~2重量%(例えば、0重量%)含むことができる。
【0027】
フェニルシラン及びフルオロシランの一方又は両方を含む、様々な異なるシランを使用してコーティングを形成することができる。フェニルシランは、p-クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニル-トリス-(4-ビフェニリル)シラン、ヘキサフェニルジシラン、テトラキス-(4-ビフェニリル)シラン、テトラ-Z-チエニルシラン、フェニルトリ-Z-チエニルシラン、3-ピリジルトリフェニルシラン、又はこれらの少なくとも1つを含む組み合わせであってよい。米国特許第4,756,971号明細書に記載されている官能化フェニルシランも使用でき、例えば、式R1SiZ1Z2Z3の官能化フェニルシラン(Z1及びZ2はそれぞれ独立して、塩素、フッ素、臭素、6個以下の炭素原子を含むアルコキシ、NH,-NH2,-NR2’であり、ここでR’は1~3個の炭素原子を持つアルキル、-SH,-CN,-N3又は水素であり、R1は
【0028】
【化1】
ここで、各S置換基S
1,S
2,S
3,S
4,S
5は、水素、炭素数1~4のアルキル、メトキシ、エトキシ、及びシアノからなる群から独立して選択され、少なくとも1つのS置換基が水素以外であり、メチル又はメトキシのS置換基がある場合、(i)少なくとも2つのS置換基が水素以外であり、(ii)2つの隣接するS置換基がフェニル核とナフタレン又はアントラセン基を形成し、又は(iii)隣接する3つのS置換基はフェニル核と一緒にピレン基を形成し、Xは基
【0029】
【化2】
であり、nが0でない場合はnが0~20又は10~16である、すなわち、Xはスペーサ基、S置換基である)を使用できる。基又は化合物に関連して「低級」という用語は、1~7個又は1~4個の炭素原子を意味する。
【0030】
フルオロシランコーティングは、化学式:
【0031】
【化3】
を有する過フッ素化アルキルシランから形成することができ、式中、Xは、加水分解性官能基であり、nは0又は整数である。フルオロシランは、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ジメチルクロロシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルジクロロシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-トリクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-メチルジクロロシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1-ジメチルクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)-1-メチルジクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)-1-トリクロロシラン、ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル) -1-ジメチルクロロシラン、(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルメチルジクロロシラン、3-(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリクロロシラン、3-(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、又はこれらの少なくとも1つを含む組み合わせであり得る。
【0032】
フェニルシラン及びフルオロシランの代わりに、又はそれに加えて、他のシラン、例えば、アミノシラン及び、重合性官能基、例えばアクリル及びメタクリル基を含有するシランを使用することができる。アミノシランの例には、N-メチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-エチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-β-アミノエチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-メチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-N-メチルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(γ-アミノプロピル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(γ-アミノプロピル)-N-メチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ-アミノプロピルエチルジエトキシシランアミノエチルアミノトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-エチルピペリジノトリメチルシラン、2-エチルピペリジノメチルフェニルクロロシラン、2-エチルピペリジノジメチルヒドリドシラン、2-エチルピペリジノジシクロペンチルクロロシラン、(2-エチルピペリジノ)(5-ヘキセニル)メチルクロロシラン、モルホリノビニルメチルクロロシラン、nーメチルピペラジノフェニルジクロロシラン、又はこれらの少なくとも1つを含む組み合わせが含まれる。
【0033】
重合可能な官能基を含むシランには、式Ra
xSiRb
(3-x)Rのシランが含まれ、ここで、各Raは同一であり、又は異なっていて、例えば同じであることができ、ハロゲン(例えば、Cl及びBr)、C1~4アルコキシ、C2~6アシル、例えば、メトキシ又はエトキシであり;各Rbは、C1~8アルキル又はC6~12アリール、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はフェニルであり; xは1,2又は3、例えば2又は3であり;そしてRは-(CH2)nOC(=O)C(Rc)=CH2であり、Rcは水素又はメチルであり、nは1~6の整数、例えば2~4である。シランは、メタクリルシラン(例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)であり得る。
【0034】
チタン酸塩コーティングは、ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリネオデカノニルチタン酸塩、ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(ジオクチル)ホスファトチタネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(ジオクチル)ピロホスファトチタネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(N-エチレンジアミノ)チタン酸エチル;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(m-アミノ)フェニルチタネート;ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリヒドロキシカプロイルチタネート;又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせから形成することができる。ジルコン酸塩コーティングは、ネオペンチル(ジアリルオキシ)トリ(ジオクチル)ピロリン酸ジルコン酸塩、ネオペンチル(ジアリルオキシ)トリ(N-エチレンジアミノ)エチルジルコン酸塩、又は上記のものの少なくとも1つを含む組み合わせから形成することができる。
【0035】
熱可塑性複合材は、流動性改質剤を含むことができる。流動性改質剤はセラミック充填材を含むことができる。セラミック充填材は、誘電性充填材とは異なるという条件で、本明細書に記載されている1つ以上の誘電性充填材を含むことができる。例えば、誘電性充填材は二酸化チタンを含むことができ、セラミック充填材は窒化ホウ素を含むことができる。流動性改質剤には、フルオロポリマー(例えば、パーフルオロポリエーテル液)、例えば、デラウェア州ウィルミントンのケマーズ USA フロロプロダクツ社から市販されているフロロガード(登録商標、FLUOROGARD)が含まれる。流動性改質剤は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(一般に「POSS」と呼ばれ、本明細書では「シルセスキオキサン」とも呼ばれる)を含むことができる。流動性改質剤は、上記の流動性改質剤の1つ以上を含む組み合わせを含み得る。流動性改質剤は、熱可塑性複合材の総体積に対して、5体積%以下、又は0.5~5体積%、又は0.5~2体積%の量で存在することができる。これらの低濃度では、熱可塑性複合材の誘電率はそれほど影響を受けない。
【0036】
流動性改質剤は、シルセスキオキサンを含むことができる。シルセスキオキサンは、表面に反応性官能基を持つことができるシリカコアを有したナノサイズの無機材料である。シルセスキオキサンは、頂点にシリコン原子を有し、酸素原子を相互接続する立方体又は立方体のような構造を有することができる。各シリコン原子は、ペンダントR基に共有結合することができる。シルセスキオキサン、例えば、オクタ(ジメチルシロキシル)シルセスキオキサン(R8Si8O12)は、8つのペンダントR基を持つコアの周りにシリコンと酸素原子のケージを構成する。各R基は独立して、水素、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、又はアルケン基であり、R基は1~12の炭素原子と1つ以上のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、リン、ケイ素、ハロゲン、又は上記のものの少なくとも1つを含む組み合わせ)からなることができる。各R基は独立して、反応性基、例えば、アルコール、エポキシ基、エステル、アミン、ケトン、エーテル、ハロゲン化物、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。各R基は、独立して、シラノール、アルコキシド、塩化物、又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。シルセスキオキサンは、トリシラノールフェニルPOSS、ドデカフェニルPOSS、オクタイソブチルPOSS、オクタメチルPOSS、又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。シルセスキオキサンはトリシラノールフェニルPOSSを含むことができる。
【0037】
熱可塑性複合材は、添加剤、例えば、繊維状充填材、難燃剤、離型剤、又は上記のものの少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。繊維状充填材は、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、チタン酸カリウムウィスカー、又はこれらの少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。繊維状充填材は、ガラス繊維、例えば、アサヒファイバーグラス社製のCS03JAPx-1を含むことができる。ガラス繊維は、細断ガラスストランドを含むことができる。ガラス繊維は粉砕繊維を含むことができる。
【0038】
熱可塑性複合材は、熱可塑性複合材を難燃性にするのに有用な難燃剤を含むことができる。難燃剤はハロゲン化されていても、されていなくてもよい。難燃剤は、熱可塑性複合材の体積に対して0~30体積%の量で熱可塑性複合材中に存在することができる。
【0039】
難燃剤は無機物であることが可能であり、粒子の形態で存在することができる。無機難燃剤は、例えば、1~500ナノメートル(nm)、又は1~200nm、又は5~200nm、又は10~200nmの体積平均粒子サイズを有する金属水和物を含むことができ、あるいは、体積平均粒子サイズは、500nm~15マイクロメートル、例えば、1~5マイクロメートルであり得る。金属水和物は、金属の水和物、例えば、Mg,Ca,Al,Fe,Zn,Ba,Cu,Ni、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。Mg,Al又はCaの水和物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅、及び水酸化ニッケル、あるいは、アルミン酸カルシウム、石膏二水和物、ホウ酸亜鉛、及びメタホウ酸バリウムのいずれかの水和物を使用することができる。これらの水和物の複合材料、例えば、Mgと、Ca,Al,Fe,Zn,Ba,Cu,Niからなる群の少なくとも1つとを含む水和物を使用することができる。複合金属水和物は、化学式MgMx(OH)yを有することができ。ここで、MはCa,Al,Fe,Zn,Ba,Cu,Niであり、xは0.1~10、yは2~32である。難燃性粒子は、分散及び他の特性を改善するためにコーティング又は他の方法で処理することができる。
【0040】
有機難燃剤は、無機難燃剤の代わりに、又はそれに加えて使用することができる。有機難燃剤の例には、シアヌル酸メラミン、微粒子ポリリン酸メラミン、様々な他のリン含有化合物、例えば、芳香族ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩、シロキサン、及びハロゲン化化合物(例えば、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸(HET酸)、テトラブロモフタル酸、及びジブロモネオペンチルグリコール)などが含まれる。難燃剤(例えば、臭素含有難燃剤)は、20phr(熱可塑性複合材100重量部当たりの重量部)~60phr、又は30~45phrの量で存在することができる。臭素化難燃剤の例には、Saytex BT93W(エチレンビステトラブロモフタルイミド)、Saytex 120(テトラデカブロモジフェノキシベンゼン)、及びSaytex 102(デカブロモジフェニルオキシド)が含まれる。難燃剤は、相乗剤と組み合わせて使用できる。例えば、ハロゲン化難燃剤は、相乗剤、例えば、三酸化アンチモンと組み合わせて使用でき、リン含有難燃剤は、窒素含有化合物、例えばメラミンと組み合わせて使用できる。
【0041】
熱可塑性複合材は、500MHz~10GHzで、1.5以上、又は2.5以上、又は1.5~8、又は3~13、又は3.5~8、又は5~8の誘電率(比誘電率とも呼ばれる)を有することができる。熱可塑性複合材は、500MHz~10GHzで10以上、又は10~20の誘電率を有することができる。熱可塑性複合材は、500MHz~10GHzで、0.007以下、又は0.005以下、又は0.001~0.005の誘電損失を有することができる。誘電特性は、23℃の室温でベクトルネットワークアナライザーを使用して測定された散乱パラメータからニコルソン・ロス抽出された同軸エアラインを使用して測定できる。
【0042】
熱可塑性複合材は、例えば、射出成形、3D印刷、又は押出によって溶融加工することができる。本明細書で使用される場合、「溶融加工可能」という用語は、熱可塑性ポリマーが、例えば、そのガラス転移温度より高い温度に溶融され、次に、例えば、そのガラス転移温度より低い温度に固化され成型される任意のプロセスを指すことができる。熱可塑性複合材は、物品に形成することができる。熱可塑性複合材を溶融形態で金型に射出する工程と、金型を冷却して物品を成形する工程とを備えた射出成形プロセスを使用して、物品を形成することができる。この方法は、最初に熱可塑性ポリマーと誘電性充填材を含む混合物を形成する工程と、混合物を完全に混合する工程とを備えることができ、ここで、混合物は、混合前及び/又は混合中に溶融することができる。
【0043】
熱可塑性複合材を含む回路材料は、導電層がその上に配置され、熱可塑性複合材を含んでなる基板層を有した、多層材料を形成することによって調製することができる。有用な導電層には、例えば、ステンレス鋼、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛、遷移金属、及び上記のものの少なくとも1つを含む合金が含まれる。導電層の厚さに関して特に制限はなく、導電層の表面の形状、サイズ、又は質感についても制限はない。導電層は、3~200マイクロメートル、又は9~180マイクロメートルの厚さを有することができる。2つ以上の導電層が存在する場合、2つの層の厚さは同一であっても、異なっていてもよい。導電層は銅層からなることができる。適切な導電層には、導電性金属の薄層、例えば、回路の形成に現在使用されている銅箔、例えば電着銅箔が含まれる。銅箔は、2マイクロメートル以下、又は0.7マイクロメートル以下の二乗平均平方根(RMS)粗さを持つことができる。粗さは、白色光干渉法を使用して、ビーコ インスツルメンツ社、WYCO光学プロファイラを使用して測定される。
【0044】
導電層は、熱可塑性複合材を成形する前に導電層を金型に配置するか、導電層を基板に積層するか、直接レーザー構造化するか、又は接着層を介して導電層を基板に接着することによって付着できる。当技術分野に公知の他の方法を使用して、特定の材料及び回路材料の形態、例えば電着、及び化学蒸着によって可能である場合に導電層を付着することができる。
【0045】
積層は、基板、導電層、及び基板と導電層との間の任意の中間層を含む多層スタックを積層して、層状構造を形成することを伴い得る。導電層は、中間層なしで、基板層と直接接触することができる。次に、層状構造は、層を結合して積層体を形成するのに適した圧力、温度、及び時間の下で、例えば真空プレスなどのプレス内に配置することができる。積層及び任意選択の硬化は、例えば、真空プレスを使用する一段階プロセスによることができ、又は多段階プロセスによることができる。一段階プロセスでは、積層構造をプレスに配置して、積層圧力(例えば、150~400ポンド/平方インチ(psi))にし、ラミネート温度(例えば、260~390℃)に加熱する。積層温度及び圧力は、所望の浸漬時間、例えば20分間維持され、その後、(依然として圧力下にある間に)150℃以下に冷却され得る。
【0046】
存在する場合、中間層は、導電層と基板層との間に位置することができるポリフルオロカーボンフィルムからなることができ、マイクロガラス強化フルオロカーボンポリマーの任意の層をポリフルオロカーボンフィルムと導電層との間に設けることができる。マイクロガラスで強化されたフルオロカーボンポリマーの層は、基板への導電層の接着力を高めることができる。マイクロガラスは、層の総重量に対して4~30重量パーセント(wt%)の量で存在することができる。マイクロガラスは、900マイクロメートル以下、又は500マイクロメートル以下の最長スケールを有することができる。マイクロガラスは、コロラド州デンバーのジョンズ・マンビル社によって市販されている種類のマイクロガラスであり得る。ポリフルオロカーボンフィルムには、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー(例えば、テフロンFEP)、及び完全にフッ素化されたアルコキシ側鎖を備えたテトラフルオロエチレン骨格を有するコポリマー(例えば、テフロンPFA)が含まれる。
【0047】
導電層は、レーザー直接構造化によって付着させることができる。ここで、基材は、レーザー直接構造化添加剤を含むことができる。レーザー直接構造化は、レーザーを使用して基板の表面を照射すること、レーザー直接構造化添加剤のトラックを形成すること、及び導電性金属をトラックに適用することを含むことができる。レーザー直接構造化添加剤は、金属酸化物粒子(例えば、酸化チタン及び酸化銅クロム)を含むことができる。レーザー直接構造化添加剤は、スピネルベースの無機金属酸化物粒子、例えば、スピネル銅を含むことができる。金属酸化物粒子は、例えば、スズ及びアンチモンを含む組成物(例えば、コーティングの総重量に対して、50~99重量%のスズ及び1~50重量%のアンチモン)でコーティングすることができる。レーザー直接構造化添加剤は、対応する組成物100部に対して2~20部の添加剤を含むことができる。照射は、10ワットの出力パワー、80kHzの周波数、及び毎秒3メートルの速度の下で、1,064ナノメートルの波長を有するYAGレーザーで行うことができる。導電性金属は、例えば銅を含む無電解めっき浴でのめっきプロセスを使用して付着させることができる。
【0048】
導電層は、導電層を接着剤で塗布することによって付着させることができる。導電層は、回路(別の回路の金属化層)、例えばフレックス回路とすることができる。接着層は、1つ以上の導電層と基板との間に配置することができる。適切な場合、接着層には、ポリ(アリーレンエーテル)、及び、ブタジエン、イソプレン、又はブタジエン及びイソプレン単位、及び0~50重量%の共硬化性モノマー単位を含む、カルボキシ官能化ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーを含むことができる。接着剤層は、1平方メートルあたり2~15グラムの量で存在することができる。ポリ(アリーレンエーテル)は、カルボキシ官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含むことができる。ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(アリーレンエーテル)と環状無水物との反応生成物、又はポリ(アリーレンエーテル)と無水マレイン酸の反応生成物であり得る。カルボキシ官能化ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーは、カルボキシ官能化ブタジエン-スチレンコポリマーであり得る。カルボキシ官能化ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーは、ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーと環状無水物との反応生成物であり得る。カルボキシ官能化ポリブタジエン又はポリイソプレンポリマーは、マレイン化ポリブタジエン-スチレン又はマレイン化ポリイソプレン-スチレンコポリマーであり得る。
【0049】
熱可塑性複合材は、電子集積回路チップのインダクタ、電子回路、電子パッケージ、モジュール、ハウジング、トランスデューサー、超高周波(UHF)アンテナ、超高周波(VHF)アンテナ、ならびに、電力用途、データストレージ、マイクロ波通信など、様々な用途のマイクロ波アンテナなどの電子デバイスで使用できる。熱可塑性複合材は、電子機器、例えばモバイルインターネット機器で使用することができる。熱可塑性複合材は、携帯電話、タブレット、ラップトップ、インターネット時計などの電子機器に使用できる。熱可塑性複合材は、外部直流磁場が印加される用途で使用できる。さらに、熱可塑性複合材は、1~10GHzの周波数範囲全体にわたるのアンテナ設計で非常に良好な結果(サイズと帯域幅)で使用できる。アンテナは、平面逆Fアンテナ、パッチアンテナ、ダイポールアンテナ、又はメアンダラインアンテナにすることができる。熱可塑性複合材は、無線周波数(RF)部品で使用できる。
【0050】
熱可塑性複合材は、3次元(3D)印刷プロセスで使用できる。例えば、熱可塑性複合材は、フィラメント又は粉末の形態であることができ、フィラメント又は粉末は、溶融堆積モデリング(FDM)法を使用する3D印刷で使用することができる。
【0051】
以下の実施例は、熱可塑性複合材を説明するために提供されている。実施例は単に例示的なものであり、本開示に従って作製されたデバイスを、そこに記載された材料、条件、又はプロセスパラメータに限定することを意図したものではない。
【0052】
(実施例)
実施例では、指定された特性を判定するために次の試験方法が使用された。
メルトフローレートは、ASTM D1238-13の手順Aに従って、2.16kgの負荷、400℃で測定された。
【0053】
粘度データは、270°Cの温度でASTM D3835-2016に従って測定された。
【0054】
【表1】
実施例1~6:誘電体充填材の2モード分布がオレフィン組成物に及ぼす影響
ノルボルネンとエチレンに由来する繰り返し単位を含んでなる環状オレフィンコポリマーと、様々な量の誘電性充填材とを含む熱可塑性複合材を準備し、表1に示した。表において、TiO
2-3.5は3.5マイクロメートルの平均粒子サイズを有する二酸化チタンであり、TiO
2-2.7は2.7マイクロメートルの平均粒子サイズを有する二酸化チタンであり、そしてTiO
2-0.2は0.2マイクロメートルの平均粒子サイズを有する二酸化チタンである。
【0055】
表1は、熱可塑性複合材が複数の異なる粒子サイズ分布の誘電性充填材を含む場合、粘度が驚くほど低下し、ほぼサブミクロンの二酸化チタンのみを含む実施例1のレベルに達したことを示している。49s-1の頻度で取得した粘度データを見ると、0.2マイクロメートルの二酸化チタンのみを含む実施例1は、2,348Pa・sの粘度を達成したが、脆性破壊モードを示した。実施例2は、二酸化チタンの粒子サイズを増加させると、粘度が4,252Pa・sに増加することを示している。実施例2を実施例3,4と比較すると、二酸化チタンの2モード粒子サイズ分布を使用することにより、粘度をほぼ30%低減でき、破壊モードを延性破壊モードに有利に変更できることが観察できる。実施例5及び6は、流動性改質剤を使用すると、延性破壊モードを維持しながら、粘度をさらに5%以上さらに有利に低下させることができることを示している。
【0056】
実施例7:環状オレフィンコポリマー組成物における充填材のモードと量の影響
ノルボルネンとエチレンから誘導される繰り返し単位を含んでなる環状オレフィンコポリマーと、様々な量の誘電性充填材とを含む熱可塑性複合材を準備した。10
GHzでの誘電率が様々な組成で決定され、結果を
図1に示す。
【0057】
図1は、1つの粒子サイズのみの二酸化チタンを含んだ組成物が、50体積%を超える高い充填量を達成できなかったことを示している。逆に、複数の異なる粒子サイズ分布を有する誘電性充填材を含む組成物は、50~60体積%の増加した充填量を達成することができた。
図1はさらに、複数の異なる粒子サイズ分布を有する誘電性充填材を含む組成物によって達成された、当業者の予測を超えて高い誘電率を示す。例えば、
図1は、23℃、10
GHzにおいて、15以上又は約20に達するまでの誘電率を達成するいくつかの組成を示している。
【0058】
実施例8:ポリ(エーテルエーテルケトン)組成物における充填材のモードと量の影響
ポリ(エーテルエーテルケトン)と様々な量の誘電性充填材とを含む熱可塑性複合材を調製した。様々な組成に対して10
GHzでの誘電率を決定し、結果を
図2に示す。
【0059】
図2は、1つの粒子サイズのみ二酸化チタンを含む組成物が、40体積%を超える高い充填量を達成することができなかったことを示している。逆に、複数の異なる粒子サイズ分布を有する誘電性充填材を含む組成物は、50~60体積%を超える高い充填量を達成することができた。
図2はさらに、複数の異なる粒子サイズ分布を有する誘電性充填材を含む組成物によって達成された、当業者の予測を超えて高い誘電率を示している。例えば、
図2は、23℃、10
GHzにおいて、13以上、あるいは20以上の誘電率を達成するいくつかの組成を示している。
【0060】
実施例9~13:ポリ(エーテルエーテルケトン)組成物の充填性に対する充填材モードの影響
表2に示されるような充填材組成物を有する5つのポリ(エーテルエーテルケトン)組成物が調製された。充填材の相対量は、全充填材体積に基づく。充填材の総量は、組成物の総体積に対する値であり、23℃、10GHzでの誘電率が15になるように調整された。
【0061】
各組成物を射出成形して、バレル温度470℃及び様々な射出圧力で2インチ(5.08センチメートル)×3インチ(7.62センチメートル)×0.125インチ(0.3175センチメートル)の寸法を有するプラークを成形した。表2は、金型の総体積に対して一定の射出速度で成形した場合の各組成物の毎秒あたりの立方センチメートル(cc/秒)の流量を示している。例えば、ポリ(エーテルエーテルケトン)組成物が金型の全容量を満たした場合、その圧力での充填は100%と表示される。
【0062】
プラークは、射出成形機を使用して成形され、従来の射出成形機と同様に、回転スクリューがポリマーを加熱してノズルに向かって搬送し、射出する時になると射出成形機は回転スクリューを使用して型に材料を入れる。この射出方法は、逆流を停止してスクリューの横方向の動きで材料を前方に押し込むチェックリングを備えた従来の射出成形機とは異なっている。この射出成形機では、バレル(471℃)と金型(177℃)の温度と、スクリューRPM(これが材料の流れを制御)(最大速度の50%)と、射出時間と射出圧力のうちの一方とは、ユーザが制御する。これらの実験では、射出成形機を圧力モードで操作し、このモードでは、スクリューは回転し続け、選択した圧力に達するまで材料を押し出そうとする。選択した圧力に達したときに達成される充填体積を表2に示す。材料が全体を形成する場合、それはより高い圧力で成形されなかった。各材料の各圧力で複数のパーツを成形して定常状態を確保し、各圧力での各材料の体積を計算した(重量を密度で割った値)。次に、各材料の各パーツの平均を比較しました。最低の圧力で最大の体積を持つ材料は、成形が最も簡単で、最高の流量を持つと想定される。流量を決定するために、すべての射出圧力における各成形サンプルの射出時間に対する体積(スプルーとランナーを含む)をグラフにした。各材料の結果として得られたトレンドラインの勾配を流量とした。
【0063】
【表2】
表2は、複数の異なる充填材組成物を利用することにより、モールドへの組成物の流量を増加させることができ、モールドを100%充填するのに必要な圧力を低減できることを示している。例えば、2モードの粒子サイズ分布を有する二酸化チタンの実施例10,11は、大きな粒子サイズの二酸化チタンのみを含む実施例9と比較して流量が増加し、金型の100%を充填するために必要な充填圧力が、小粒子サイズの二酸化チタンのみを含む実施例
12に比べて低下した。実施例
12に関して、12.1以下の充填圧力では、組成物は溶融加工できず、射出成形できず、100%の充填を達成するために著しく高い充填圧力を必要とした。表2はまた、実施例10の組成物が実施例9~13のすべての中で最高の流量を有し、優れた流動性を有していることも示している。
【0064】
以下に示すのは、本発明の非限定的な態様である。
態様1: 熱可塑性ポリマーと、複数の異なる粒子サイズ分布を有する誘電性充填材であって、複数の異なる粒子サイズ分布の第1モードのピークは、複数の異なる粒子サイズ分布の第2モードのピークの少なくとも7倍である誘電性充填材と、流動性改質剤とを含むことを要旨とする。
【0065】
態様2: 態様1の熱可塑性複合材において、熱可塑性複合材は、500MHz~10GHzで5以上、好適には10~20、又は500MHz~10GHzで15~25の誘電率を有し、誘電損失は500MHz~10GHzで0.007以下であることを要旨とする。
【0066】
態様3: 熱可塑性ポリマーが、ポリ(アリール)エーテルケトン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(アミドイミド)、フルオロポリマー、ポリオレフィン、又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせであることを要旨とする。
【0067】
態様4: 熱可塑性ポリマーが、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリエチレン、ポリ(フェニレンオキシド)、環状オレフィンコポリマー、又はこれらの少なくとも1つを含む組み合わせを含む、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を要旨とする。
【0068】
態様5: 上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材であって、熱可塑性複合材は、熱可塑性複合材の総体積に対して10~90体積%、又は20~80体積%、又は20~70体積%、又は30~50体積%含むことを要旨とする。
【0069】
態様6: 熱可塑性ポリマーが液晶ポリマーを含むか又は液晶ポリマーからなる、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を要旨とする。
態様7: 液晶ポリマーが液晶ポリエステルを含む、態様6に記載の熱可塑性複合材を要旨とする。
【0070】
態様8: 誘電性充填材が、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、シリカ、コランダム、ウォラストナイト、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、マグネシア、シリカ 、又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせを含む、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を要旨とする。
【0071】
態様9: 誘電性充填材が二酸化チタンを含む、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を要旨とする。
態様10: 誘電性充填材がシリカを含む、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を要旨とする。
【0072】
態様11: 誘電性充填材が、第1の平均粒径を有する第1の複数の粒子と、第2の平均粒径を有する第2の複数の粒子とを含む、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材であって、第1の平均粒子サイズは第1のモードのピークに対応し、第2の平均粒子サイズは第2のモードのピークに対応し、複数の異なる粒度分布の第1モードのピークは、複数の異なる粒度分布の第2モードのピークのピークの10~20倍であることを要旨とする。
【0073】
態様12: 態様11の熱可塑性複合材において、第1の複数の粒子はシリカを含み、第2の複数の粒子は二酸化チタンを含むことを要旨とする。
態様13: 態様11の熱可塑性複合材において、第1の複数の粒子及び第2の複数の粒子は二酸化チタンを含むことを要旨とする。
【0074】
態様14: 異なる複数の粒子サイズ分布が2つのモード又は3つのモードを有する、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を要旨とする。
態様15: 第1のモードのピークが1~10マイクロメートルであり、第2のモードのピークが0.01~1マイクロメートルである、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を要旨とする。
【0075】
態様16: 上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材であって、熱可塑性複合材は、熱可塑性複合材の総重量に対して、10~90体積%、又は20~80体積%、又は30~80体積%、又は50~70体積%の誘電性充填材を含むことを要旨とする。
【0076】
態様17: 流動性改質剤が、セラミック充填材、フルオロポリマー、シルセスキオキサン、又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせを含む、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材。ことを要旨とする。
【0077】
態様18: 流動性改質剤が、窒化ホウ素、フルオロポリマー、トリシラノールフェニルシルセスキオキサン、又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせを含む、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を要旨とする。
【0078】
態様19: 流動性改質剤が、熱可塑性複合材の総体積に対して5体積%以下、又は0.5~5体積%、又は0.5~2体積%の量で存在する、上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を要旨とする。
【0079】
態様20: 上記の態様のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を含む物品を要旨とする。
態様21: 導電層が熱可塑性複合材の少なくとも片側に配置されている、態様20の物品を要旨とする。
【0080】
態様22: 物品がアンテナであり、アンテナが、好適には平面逆Fアンテナ、パッチアンテナ、ダイポールアンテナ、又はメアンダラインアンテナである、態様20の物品を要旨とする。
【0081】
態様23: 物品が3D印刷用のフィラメント又は粉末である、態様20の物品を要旨とする。
態様24: 態様20~24のいずれか1つの物品の製造方法であって、態様1~19のいずれか1つ以上の態様の熱可塑性複合材を溶融形態で金型に射出する工程と、金型を冷却して物品を成形する工程とを備えることを要旨とする。
【0082】
態様25: 態様20~24のいずれか1つの物品の製造方法であって、態様1~19のいずれか1つ以上の熱可塑性複合材を溶融して溶融熱可塑性複合材を形成する工程と、積層造形システムを用いて、層ごとに物品を印刷する工程とを備えることを要旨とする。
【0083】
態様26: 態様1~19のいずれか1つの熱可塑性複合材を形成する方法であって、熱可塑性複合材を押し出すことを含む方法ことを要旨とする。
態様27: 例えばポリオレフィンを含む熱可塑性複合材において、49s-1の周波数、270℃の温度でASTM D3835に従って測定された測定された粘度が3,000Pa・s以下である、上記の態様のいずれか1つの熱可塑性複合材を要旨とする。
【0084】
態様28: 49s-1の周波数、270℃の温度でASTM D3835に従って測定された測定された、3,000Pa・s以下の1つ以上、又は2つ以上の粘度;延性破壊モード;500MHz~10GHzで5以上、又は10~20以上の誘電率;500MHz~10GHzで0.007以下の誘電損失を有する、上記の態様のいずれか1つに記載の熱可塑性複合材を要旨とする。
【0085】
態様29: 態様11~13のいずれか1つの熱可塑性複合材であって、熱可塑性複合材は、10~90体積%、又は50~90体積%、又は60~80体積%の第1の複数の粒子、及び10~90体積%、10~50体積%、又は20~40体積%の第2の複数の粒子を含み、どちらも誘電体充填材の総体積に対する数値であることを要旨とする。
【0086】
態様30: 態様11~13,29のいずれか1つの熱可塑性複合材であって、熱可塑性複合材は、熱可塑性複合材の総体積に対して、25~45体積%又は30~40体積%の第1の複数の粒子、及び10~25体積%又は10~20体積%の第2の複数の粒子を含むことを要旨とする。
【0087】
態様31: 熱可塑性複合材が、熱可塑性複合材の総体積に対して45~90体積%の誘電性充填材を含む、上記の態様のいずれか1つの熱可塑性複合材を要旨とする。
態様32: 1つのモードのみを有した誘電充填材のみを含む、対応する組成物と比較して、低い粘度、より滑らかな成形表面、及び延性破壊モードの少なくとも1つによって証明されるなど、成形性の改善が見られる、上記の態様のいずれかの熱可塑性複合材を要旨とする。
【0088】
代替的に、組成物、方法、及び物品は、本明細書に開示されている任意の適切な材料、ステップ、又は構成要素を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなることができる。組成物、方法、及び物品は、追加的又は代替的に、組成物、方法、及び物品の機能又は目的の達成に必要でない、任意の材料(又は種)、ステップ、又は構成要素を欠くか、又は実質的に含まないように構成され得る。
【0089】
「a 」及び「an」という用語は、数量の制限を示すのではなく、参照される項目が少なくとも1つの存在することを示す。「又は」という用語は、文脈によって明確に示されていない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書全体を通して「態様」、「実施形態」、「別の実施形態」、「いくつかの実施形態」などへの言及は、関連して説明された特定の要素(例えば、特徴、構造、ステップ、又は特性)を意味する実施形態とともに、本明細書に記載される少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態には存在してもしなくてもよい。さらに、説明された要素は、様々な実施形態において任意の適切な方法で組み合わされてもよいことが理解されるべきである。「任意の」又は「任意では」とは、この語に続いて説明するイベント又は状況が発生する場合と発生しない場合があり、説明にイベントが発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。本明細書で使用される「第1」、「第2」などの用語、「一次」、「二次」などは、順序、数量、又は重要度を示すのではなく、ある要素を別の要素から区別するために使用される。「組み合わせ」という用語は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含む。本明細書で使用される「層」は、平面フィルム、シートなど、ならびに他の三次元非平面形態を含む。層はさらに巨視的に連続的又は非連続的であり得る。また、「上記の少なくとも1つを含む組み合わせ」とは、リストに各要素が個別に含まれること、及びリストの2つ以上の要素の組み合わせや、リストの少なくとも1つの要素とリストに記載されない同様の要素の組み合わせが含まれることを意味する。
一般に、組成物、方法、及び物品は、代替的に、本明細書で開示される任意の成分、ステップ、又は構成要素を含む、それらからなる、又は本質的にそれらからなることができる。組成物、方法、及び物品は、追加的又は代替的に、請求項に係る発明の機能又は目的の達成に必要ではない任意の成分、工程、又は構成要素を欠く、又は実質的に含まないように処方、実施、又は製造することができる。
【0090】
ここに反対の記載がない限り、すべてのテスト標準は、この出願の出願日、又は、優先権が主張されている場合は、テスト標準が出現した最も早い優先出願の出願日で有効な最新の標準である。
【0091】
同一の要素又は特性についてのすべての範囲の端点は、端点を含み、独立して結合可能であり、すべての中間点を含む。例えば、25重量%以上、又は5~20重量%」は、端点と、「5~25重量%」の範囲のすべての中間値、例えば10~23重量%などを含む。
【0092】
他に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。引用されたすべての特許、特許出願、及びその他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、本出願における用語が、組み込まれた参考文献における用語と矛盾又は矛盾する場合、本出願からの用語は、組み込まれた参考文献からの矛盾する用語よりも優先される。
特定の実施形態が説明されてきたが、代替案、修正、変形、改善、及び現在予期されないか又は予想されない可能性のある実質的な等価物が、出願人又は他の当業者に生じ得る。したがって、提出され、修正される可能性がある添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改良、及び実質的な同等物を包含することを意図している。