(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】操作確実なパーキング弁
(51)【国際特許分類】
B60T 15/04 20060101AFI20221121BHJP
B60T 13/10 20060101ALI20221121BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20221121BHJP
B60T 7/20 20060101ALI20221121BHJP
F16D 55/40 20060101ALI20221121BHJP
F16D 65/56 20060101ALI20221121BHJP
B60T 7/10 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B60T15/04 B
B60T13/10
B60T13/74 F
B60T7/20
F16D55/40 A
F16D65/56 F
B60T7/10 L
(21)【出願番号】P 2020569070
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065163
(87)【国際公開番号】W WO2019238651
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】102018209479.9
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラースロー コンツ
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01512600(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2218617(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第1132275(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第03228512(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00 - 8/1769
8/32 - 8/96
13/00 - 17/22
F16D 49/00 - 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね蓄力器・パーキングブレーキの手動操作のためのパーキング弁(1)であって、
ばね蓄力器・ブレーキシリンダ(3)の解除室に流体接続することができる接続部(2a)と、貯蔵空気容器(4)に流体接続することができる接続部(2b)と、空気抜き接続部(2c)とを備えたハウジング(2)
と、
手動操作のために形成されていて、2つの終端位置の間の全区間(14)に沿って前記ハウジング(2)の内部において移動可能に設けられているスライダ(5)であって、
前記貯蔵空気容器(4)への前記接続部(2b)は、前記解除室への接続部(2a)よりもブレーキ作用時の前記スライダ(5)の操作方向に配置されており、前記解除室への接続部(2a)は、前記空気抜き接続部(2c)よりも前記操作方向に配置されており、
前記スライダ(5)は、第1のシール部材(7)と、前記第1のシール部材(7)よりも前記操作方向に配置された第2のシール部材(6)と、に結合されており、
前記全区間(14)は、部分区間(12)と、前記部分区間(12)に属していない区間区分(13)であって、前記部分区間(12)よりも前記操作方向にある区間区分(13)とを有し、
前記スライダ(5)は、
前記第1のシール部材(
7)に基づいて前記解除室への前記接続部(2a)と前記空気抜き接続部(2c)との間の流体接続が存在しない位置
をとるように、かつ
第2のシール部材(
6)に基づいて前記解除室
への前記接続部(2a)と前記貯蔵空気容器(4)への前記接続部(2b)との間の流体接続が存在しない他方の位置
をとるように形成されているスライダ(5)
と、
前記スライダ(5)が前記操作方向へ移動しているとき且つ前記第1のシール部材(7)が前記部分区間(12)にあるときに、前記部分区間(12)における前記スライダ(5)の位置に関連した連続的に可変の反力(F
H)を
前記スライダ(5)に加えるように形成されているロック装置(10)
と、
を有し、
前記ロック装置(10)は、磁力を用いて前記反力(F
H
)を前記スライダ(5)に加えるように形成されている、
パーキング弁(1)。
【請求項2】
前記スライダ(5)への前記反力(F
H)は
、前記ハウジング(2)における前記少なくとも1つのシール部材(6,7)の摩擦に基づいて、
前記スライダ(5)の前記操作方向への移動時に
前記スライダ(5)が受ける力に対して、少なくとも25
%高められた最大値を有している、請求項
1記載のパーキング弁(1)。
【請求項3】
ばね蓄力器・パーキングブレーキの手動操作のためのパーキング弁(1)であって、
ばね蓄力器・ブレーキシリンダ(3)の解除室に流体接続することができる接続部(2a)と、貯蔵空気容器(4)に流体接続することができる接続部(2b)と、空気抜き接続部(2c)とを備えたハウジング(2)と、
手動操作のために形成されていて、2つの終端位置の間の全区間(14)に沿って前記ハウジング(2)の内部において移動可能に設けられているスライダ(5)であって、
前記貯蔵空気容器(4)への前記接続部(2b)は、前記解除室への接続部(2a)よりもブレーキ作用時の前記スライダ(5)の操作方向に配置されており、前記解除室への接続部(2a)は、前記空気抜き接続部(2c)よりも前記操作方向に配置されており、
前記スライダ(5)は、第1のシール部材(7)と、前記第1のシール部材(7)よりも前記操作方向に配置された第2のシール部材(6)と、に結合されており、
前記全区間(14)は、部分区間(12)と、前記部分区間(12)に属していない区間区分(13)であって、前記部分区間(12)よりも前記操作方向にある区間区分(13)とを有し、
前記スライダ(5)は、前記第1のシール部材(7)に基づいて前記解除室への前記接続部(2a)と前記空気抜き接続部(2c)との間の流体接続が存在しない位置をとるように、かつ前記第2のシール部材(6)に基づいて前記解除室への前記接続部(2a)と前記貯蔵空気容器(4)への前記接続部(2b)との間の流体接続が存在しない他方の位置をとるように形成されているスライダ(5)と、
前記スライダ(5)が前記操作方向へ移動しているとき且つ前記第1のシール部材(7)が前記部分区間(12)にあるときに、前記部分区間(12)における前記スライダ(5)の位置に関連した連続的に可変の反力(F
H
)を前記スライダ(5)に加えるように形成されているロック装置(10)と、
を有し、
前記ロック装置(10)は、
前記スライダ(5)が前記操作方向へ移動しているとき且つ前記第1のシール部材(7)が前記区間区分(13)
にあるときに、前記スライダ(5)の位置に関連した補助力(F
U)を、
前記スライダ(5)に前記操作方向において加えるよう
に形成されている、パーキング弁(1)。
【請求項4】
前記補助力(F
U)は、
前記操作方向の終端位置への前記スライダ(5)の移動を、手動操作なしでも生ぜしめるように形成されている、請求項
3記載のパーキング弁(1)。
【請求項5】
前記ロック装置(10)は、磁力を用いて
、前記スライダ(5)が前記操作方向へ移動しているとき且つ前記第1のシール部材(7)が前記部分区間(12)にあるときに、前記反力(F
H)
を前記スライダ(5)に加え、前記スライダ(5)が前記操作方向へ移動しているとき且つ前記第1のシール部材(7)が前記区間区分(13)にあるときに、前記補助力(F
U)を前記スライダ(5)に加えるように形成されて
いる、
請求項3または4記載のパーキング弁(1)。
【請求項6】
前記ロック装置(10)は、磁石(16)と、前記磁石(16)によって引き付けられるように形成されている対応部材(18)とを有しており、
前記磁石(16)は、前記スライダ(5)上にまたは前記スライダ(5)内に、かつ前記対応部材(18)は、前記ハウジング(2)上にまたは前記ハウジング(2)内に設けられている、若しくは、
前記磁石(16)は、前記ハウジング(2)上にまたは前記ハウジング(2)内に、かつ前記対応部材(18)は、前記スライダ(5)上にまたは前記スライダ(5)内に設けられている、請求項3から5のいずれか1項記載のパーキング弁(1)。
【請求項7】
前記磁石(16)および前記対応部材(18)は、互いの引付け力が前記スライダ(5)の前記操作方向の反対方向の終端位置において最大になるように配置されている、請求項6記載のパーキング弁(1)。
【請求項8】
前記ロック装置(10)は、別の磁石(17)を、前記ハウジング(2)上にまたは前記ハウジング(2)内に、若しくは前記スライダ(5)上にまたは前記スライダ(5)内に有している、請求項6または7記載のパーキング弁(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラのばね蓄力器・パーキングブレーキの手動操作のためのパーキング弁に関する。
【0002】
このようなパーキング弁は、位置「パーキング」において、ばね蓄力器・パーキングブレーキのブレーキシリンダの解除室からの圧縮空気の流出を可能にし、これによってばね力を加えられたピストンによってブレーキをかけることができる。次いで位置「ドライブ」におけるパーキング弁によって、ブレーキを再び解除することができ、このとき解除室は蓄圧器からの圧縮空気によって再び満たされ、これによってピストンは、ばね力に抗して、その本来の位置に再び戻され、その結果ブレーキは解除される。
【0003】
このようなパーキング弁は、通常、手動操作のためのスライダを有しており、このスライダは、その周囲におけるシール部材を用いて、パーキング弁のハウジングの内部において解除室への相応の接続部を生ぜしめる。スライダは、操作者によって、特にスライダの終端位置である位置「ドライブ」もしくは「パーキング」に確実に移行され得ることが必要であり、中間位置は回避されることが望ましい。中間位置は、スライダの特定の位置によって確定されており、この位置においては、両位置の間における明瞭な区別が不可能であり、ひいては例えば解除室が走行中に空気抜きされる可能性があり、解除室が空気抜きされると、これによって走行中にブレーキがかけられてしまう。
【0004】
安全を脅かすこの中間位置を回避するために、スライダに、スライダが通過すべき全区間の部分区間において反力を加えるパーキング弁が公知であり、これによって操作者に、操作者が克服しなくてはならない力限界値を知らせることができる。操作者が力限界値を克服すると、スライダは、操作者がその操作力を十分迅速に減じることができないことに基づいて、相応の終端位置に移行させられる。これによって力限界値の克服は、パーキング弁の確実な操作を保証する。
【0005】
このような力限界値は、通常、摩擦部材によって実現されており、この摩擦部材は、相応の部分区間において、高められた摩擦係数を有する対応する対応面と接触している。しかしながら力限界値のこの実施形態は次のような欠点を有しており、すなわちこの実施形態では、スライダへの、移動中における特定の力経過を形成するために、摩擦部材と対応面とを互いに同調させる比較的高い構造上のコストをかける必要がある。さらに力限界値の両要素には、相互の接触によって大きな滑り摩擦が加えられ、このことによってさらに両要素は摩耗してしまう。摩耗は極端な場合に、スライダへの反力を変化させることがあり、これによって反力は、摩擦部材が強く摩耗した場合または対応面が強く摩耗した場合に、著しく僅かになり、これによって操作確実性は低下してしまう。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、操作確実にかつ上に述べた欠点なしに、一方の位置から他方の位置への移行を可能にするパーキング弁を提供することである。
【0007】
この課題は、独立請求項に記載された対象によって解決される。好適な発展形態は、従属請求項の対象である。
【0008】
本発明によれば、ばね蓄力器・パーキングブレーキの手動操作のためのパーキング弁であって、
- ばね蓄力器・ブレーキシリンダの解除室に流体接続することができる接続部と、貯蔵空気容器に流体接続することができる接続部と、空気抜き接続部とを備えたハウジング、
- 手動操作のために形成されていて、2つの終端位置の間の全区間に沿ってハウジングの内部において移動可能に設けられているスライダであって、スライダは、少なくとも1つのシール部材に基づいて解除室への接続部と空気抜き接続部との間の流体接続が存在しない位置を、全区間に沿ってとるように、かつ少なくとも1つのシール部材に基づいて解除室の接続部と貯蔵空気容器への接続部との間の流体接続が存在しない他方の位置を、全区間に沿ってとるように形成されているスライダ、および
- スライダに、少なくとも一方の方向における全区間の少なくとも部分区間に沿った移動時に、部分区間におけるスライダの位置に関連した可変の反力を加えるように形成されているロック装置
を有している、パーキング弁が提案されている。
【0009】
スライダは、好ましくは滑動するようにかつ/またはシール作用をもってハウジング内に設けられている。
【0010】
好ましくは、反力は連続的に可変に形成されている。このことは特に、反力が部分区間に沿った移動中に変化すると理解することができる。特に好ましくは、反力は移動にわたって一定ではない。
【0011】
スライダの終端位置は、好ましくは、スライダが接触することができるストッパを有しており、このストッパは、特に好ましくはハウジングの内部に形成されている。
【0012】
以下において、「部分区間」と「区間区分」という概念は下記のように区別される。部分区間は、全区間の一部分であり、この部分において、スライダがこの部分を通過する場合に、スライダに、ロック装置からの、スライダの運動方向とは逆向きの力、つまり反力が作用する。区間区分は、同じく全区間の一部分であり、この部分において、スライダがこの部分を通過する場合に、スライダに、ロック装置からの、スライダの運動の方向における力、つまり補助力が作用し、またはロック装置からの力は作用しない。これによってロック装置は、部分区間の通過時にスライダのさらなる運動を阻止するように作用し、区間区分の通過時には助成するように、または少なくともスライダのさらなる運動に関してニュートラルに作用する。部分区間と区間区分とは、全区間の、互いに隣接していない部分から成っていてもよい。
【0013】
好ましくは、部分区間は、スライダの少なくとも1つの終端位置を含んでいる。これによって、少なくとも1つの終端位置において反力がスライダに作用することが保証され、これによって操作者は、移動中に相応の終端位置からこの反力を克服しなくてはならない。
【0014】
好ましくは、反力は、2つのコンポーネント相互の機械的な摩擦に基づいて生ぜしめられるのではない。摩耗を僅かに保つために、または完全に回避するために、反力の発生は、機械的な摩擦によるのとは別の形式で行われる。好ましくは、反力の発生は、磁力および/または空気力を用いて行われる。
【0015】
好ましくは、ロック装置は、スライダを少なくとも全区間の1つの位置においてまたは制限された領域において保持するように形成されている係止装置を有している。このように構成されていると、パーキング弁の操作確実性がさらに高められる。それというのは、これによってスライダが、好ましくは少なくとも1つの終端位置である係止された位置から、走行中の振動もしくは衝撃によって、またはスライダの偶然の接触によって運動し得ないことが保証されるからである。係止装置は、別個に、例えば互いに摩擦結合式にかつ/または形状結合式に係合する要素を用いて形成されているか、またはロック装置による反力の特殊な付与によって形成されている。例えば磁石の保持力は、磁石が係止装置の機能を満たすように強く選択することができる。同様に、負圧または正圧を用いて生ぜしめられる、スライダへの力は、係止装置の機能が満たされるように高く形成されていてもよい。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つのシール部材は、スライダにまたはハウジング内に設けられている。少なくとも1つのシール部材は、全区間に沿ったスライダの移動時にシール面と接触するように形成されており、これによってシール作用を生ぜしめることができる。シール面は、好ましくはハウジング内に、少なくとも1つのシール部材はスライダに設けられている。択一的にまたは追加的に、シール面はスライダに形成されていてもよく、少なくとも1つのシール部材はハウジング内に設けられている。
【0017】
好ましくは、部分区間は、全区間の少なくとも2つの区分から成っており、これらの区分は、特に互いに直接隣接していない。このように構成されていると、操作者が全区間におけるスライダの複数の位置において反力を受けることを達成することができる。好ましくは、部分区間の区分の間には、スライダに移動の方向における力または補助力が加えられない領域が位置している。
【0018】
好ましくは、スライダへの反力は、スライダがその構造形式に基づいて、特に少なくとも1つのシール部材の摩擦に基づいて、移動時に受ける力に対して、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%高められた最大値を有している。このように構成されていると、操作者がスライダへの反力を、基本的にスライダの移動時に存在している力に対して明瞭に区別できることが保証される。これによって操作者は、操作者が少なくとも反力の最大値によって特徴付けられている力限界値をいつからもしくはどの位置から克服したのかを知覚することができる。
【0019】
好ましくは、ロック装置は、スライダに、全区間の、部分区間に属していない区間区分にわたって、特に区間区分におけるスライダの位置に関連した補助力を、移動の方向において加えるように、または力を加えないように形成されている。このように構成されていると、補助力がスライダに作用した場合に、好ましくは、移動の方向に位置している終端位置へのスライダの移動を助成することができ、これによって、スライダが相応の終端位置に達しているという蓋然性が高められる。
【0020】
好ましくは、補助力は、移動の方向に位置している終端位置へのスライダの移動を、手動操作なしでも生ぜしめるように形成されている。補助力のこの構成によって、例えばスライダが所望の終端位置に既に達していると勘違いして操作者がスライダを放してしまったことに基づいて、スライダへの操作者の操作力が消滅した場合にも、スライダは、補助力によって終端位置に達するまでさらに運動する。補助力をスライダに作用させる区間区分の位置および延在長さは、好ましくは、スライダが常にそのさらなる移動路において中間位置をもはや通過する必要がないように選択されている。
【0021】
反力がスライダに作用する部分区間は、好ましくは部分区間の、全区間における位置および延在長さは、相応のシール部材が、解除室に接続可能な接続部の中心に達するまで、部分区間がスライダに反力を加えるように選択されている。好ましくは、部分区間には、スライダに補助力を作用させる区間区分が接続している。このように構成されていると、反力および補助力がスライダを可能な中間位置から常に離れる方向に押し退けることが保証されている。
【0022】
好ましくは、ロック装置は、反力および/または補助力がその最小値からその最大値に至るまで所定の区間にわたって形成されるように形成されており、所定の区間の長さは、特に全区間の少なくとも2%、好ましくは全区間の少なくとも5%、特に好ましくは少なくとも8%である。このように構成されていると、操作者の感覚において突然の力の上昇が回避され、これによって操作者は例えば間違えることなしに、突然発生する反力によって1つの終端位置への到達を推測することができる。これによって誤操作のおそれは、さらに減じられる。
【0023】
好ましくは、ロック装置は、磁力を用いて反力および/または補助力をスライダに加えるように形成されており、ロック装置は、特に磁石と、磁石によって引き付けられるように形成されている対応部材、例えば鋼製の対応部材とを有しており、対応部材は、特に第2の磁石または磁性の要素である。ロック装置のこのような構成は、反力および/または補助力を無接触式に発生させるので、長寿命のコンセプトを得ることができる。反力は、操作者によって、磁石と対応部材とが互いに最小の間隔をおいて位置している終端位置からのスライダの移動時に克服されねばならない。これに対して、磁石と対応部材とが互いに最小の間隔をおいて位置している相応の終端位置の方向への、スライダの運動時には、スライダは補助力を受け、補助力は磁気的な引付け力によって生ぜしめられる。
【0024】
好ましくは、磁石は、スライダにまたはスライダ内に、かつ対応部材は、ハウジングにまたはハウジング内に設けられているか、または磁石は、ハウジングにまたはハウジング内に、かつ対応部材は、スライダにまたはスライダ内に設けられている。
【0025】
好ましくは、磁石および対応部材は、その引付け力がスライダの一方の終端位置において、少なくともスライダのその他のすべての可能な位置に比べて最大になるように配置されている。
【0026】
好ましくは、ロック装置は、別の磁石または別の対応部材を、ハウジングにまたはハウジング内に、またはスライダにまたはスライダ内に有している。この別の磁石またはこの別の対応部材は、好ましくは、磁気的な引付け力がスライダの他方の終端位置において同様に最大になるように配置されている。
【0027】
例えば、スライダを一方の終端位置にも他方の終端位置にも引っ張る磁気的な引付け力が、スライダに作用する構成も考えられる。このような磁気的な引付け力は、全区間におけるスライダの位置と共に変化し、相応の終端位置に対するそれぞれの間隔と共に小さくなる。全区間には、両引付け力がバランスされる少なくとも1つのスライダ位置が存在する。この位置に達する前には、スライダに、両引付け力が合わさってもなお引付け力がスライダの移動方向とは逆向きに作用する。この位置が克服されると、スライダはいまや全体的に補助力を受け、この補助力は、他方の終端位置の、いまや強くなる磁気的な引付け力から生じている。
【0028】
詳細には、磁気的な力がスライダの少なくとも2つの位置、特に終端位置において生じる、ロック装置の、以下に記載の好適な構成、すなわち、
1つの対応部材がハウジングに位置固定に結合されていて、2つの磁石が相応に2つの位置においてスライダに不動に結合されている構成、
1つの磁石がハウジングに位置固定に結合されていて、2つの対応部材が相応に2つの位置においてスライダに不動に結合されている構成、
2つの対応部材が2つの位置においてハウジングに位置固定に結合されていて、1つの磁石が相応にスライダに不動に結合されている構成、
2つの磁石が2つの位置においてハウジングに位置固定に結合されていて、1つの対応部材が相応にスライダに不動に結合されている構成
が考えられる。
【0029】
磁力を用いて力を生ぜしめる代わりにまたはそれに加えて、本発明の別の実施形態では、スライダへのロック装置による力の発生が別の形式で可能である。
【0030】
したがってロック装置は、好ましくはスライダに、負圧および/または正圧から形成される反力および/または補助力を加えるように形成されている。好ましくは、スライダおよび/またはハウジングは、ロック装置の一部として、相応の圧力を生ぜしめるように形成されている。
【0031】
好ましくは、ロック装置は、少なくとも部分区間にわたるスライダの移動時にスライダによって流体的に閉鎖されるように形成された室を有しており、室は、その容積をスライダの移動に相応して変化させるように形成されている。室は、好ましくはパーキング弁のハウジングの一部において形成されている。
【0032】
択一的にまたは追加的に、室は少なくとも部分的にスライダ内に形成されている。室が少なくとも部分的にスライダ内に形成されている場合に、好ましくは、ハウジングの一部は、室を部分区間にわたって流体的に閉鎖するように形成されており、この場合好ましくは、突出部がハウジング内に形成されている。
【0033】
好ましくは、室の閉鎖は、スライダおよび/またはハウジングのシール部材を用いて、かつ/またはそのために形成された別体の要素を用いて行われる。このように構成されていると、室を好ましくは、一方の側においてスライダの端部によって閉鎖することができ、これにより、構造上のコストが最小限に抑えられる。スライダおよび/またはハウジングのシール部材は、好ましくはシール面に接触し、このシール面は、好ましくはハウジング内にかつ/またはスライダに設けられている。
【0034】
室を閉鎖するために形成されたシール部材は、個々の接続部の流体接続を生ぜしめるために形成された少なくとも1つのシール部材と、同一であってもよいし、または別個に形成されていてもよい。
【0035】
好ましくは、室は、部分区間および/または区間区分にわたるスライダの移動時に、大気または空気抜き装置、特に補償室に接続されるように形成されている。そのために好ましくは補償通路が、ハウジングの内部にかつ/またはスライダに設けられており、これらの補償通路は、補償通路が室を大気または空気抜き装置に接続することによって、特定のスライダ位置において圧力バランスを可能にする。
【0036】
補償通路は、特に溝および/または孔として形成されている。全区間における補償通路の相応の位置決め、および全区間にわたる補償通路の延在長さの相応の選択によって、当業者はスライダへの所望の力経過を生ぜしめることができる。
【0037】
好ましくは、室は、部分区間にわたるスライダの移動時に、少なくとも5%の容積変化、好ましくは少なくとも10%の容積変化を受けるように形成されている。このように構成されていると、負圧もしくは正圧に基づくスライダへの力が、操作者にも知覚することができることが保証される。
【0038】
ここに記載された実施形態は、任意の形式で互いに組み合わせることができ、これによって別の実施形態を得ることができる。例えば、上に記載された実施形態に相応して生ぜしめられる磁力および空気力が加えられるスライダを有している実施形態が考えられる。
【0039】
次に添付の図面を用いて本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係るパーキング弁の外観を示す図である。
【
図2a】スライダの種々様々な位置を用いて操作確実なパーキング弁の機能原理を示す概略図である。
【
図2b】スライダの種々様々な位置を用いて操作確実なパーキング弁の機能原理を示す概略図である。
【
図2c】スライダの種々様々な位置を用いて操作確実なパーキング弁の機能原理を示す概略図である。
【
図2d】スライダの種々様々な位置を用いて操作確実なパーキング弁の機能原理を示す概略図である。
【
図3】スライダが位置「パーキング」にある場合における、本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【
図4】スライダが位置「ドライブ」にある場合における、本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【
図5】スライダが位置「パーキング」にある場合における、本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【
図6】スライダが位置「ドライブ」にある場合における、本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【0041】
図1には、ハウジング2と、位置「ドライブ」にあるスライダボタン5aとを備えた、本発明に係るパーキング弁1の外観が示されている。スライダボタン5aには、ハウジング2の内部においてスライダ5が接続しており、このスライダ5は、スライダボタン5aによって手動で操作することができる。
【0042】
図2a~
図2dは、全区間14におけるスライダ5の種々様々な位置を用いてパーキング弁1の機能原理を説明している。
【0043】
図2aには、パーキング弁1の基本構造が示されている。パーキング弁1は、接続部2aを備えたハウジング2を有しており、接続部2aは、ばね蓄力器・ブレーキシリンダ3の解除室に接続されている。さらにハウジング2には、貯蔵空気容器4に接続された接続部2bと、大気または空気抜き装置に接続された空気抜き接続部2cとが設けられている。
【0044】
ばね蓄力器・ブレーキシリンダ3は、その解除室に十分な圧縮空気によって力が加えられている場合にブレーキを解除し、かつ圧縮空気が解除室から排出された場合にブレーキをかけるように構成されている。ブレーキをかけることは、通常、相応のピストンをばね蓄力器・ブレーキシリンダ3の内部において移動させるばねの力によって行われる。解除された位置においてばね力は、解除室内における圧力によって克服されている。
【0045】
この構成は、同様に
図2b~
図2dに対しても言えることであるが、図面を見やすくする理由から、ばね蓄力器・ブレーキシリンダ3および貯蔵空気容器4のさらなる記載は省かれている。
【0046】
さらにパーキング弁1はスライダ5を有しており、このスライダ5は、その周囲にシール部材6,7を保持している。これらのシール部材6,7は、ハウジング2と共に通気室8および空気抜き室9を形成している。通気室8は、図示の位置において接続部2a,2bに接続されており、空気抜き室9は、空気抜き接続部2cに接続されている。
【0047】
スライダ5自体は、その軸線に沿って全区間14にわたって左に向かって移動可能に設けられており、スライダ5は、手動操作のために形成されている。そのためにスライダ5の、ハウジング2から突出している左端部は、スライダボタン5aを有している。
【0048】
さらにロック装置10が破線で示された領域として示されており、このロック装置10は、スライダ5に、移動時に少なくとも全区間14の部分区間12に沿って、少なくとも一方の方向において、部分区間12におけるスライダ5の位置に関連した可変の反力F
H(
図2b参照)を加えるように形成されている。
【0049】
追加的にロック装置10は、スライダ5に、区間区分13の通過時に補助力F
U(
図2c参照)を加えるように形成されている。
【0050】
図示されたロック装置10は、単に例として、スライダボタン5aとシール部材6との間の位置に配置されている。しかしながらまたロック装置10は、スライダ5に反力F
Hを加えるために任意の他の位置に配置されていてもよい。さらにロック装置10は、ここではハウジング2に不動に結合されて示されている。このこともまた同様に、ロック装置10の構成のために必ずしも必要なことではない。特にスライダ5へのロック装置10の作用は、
図3~
図6に示されているように、ロック装置10を形成している個々の要素の協働によって行うこともできる。
【0051】
記載された構成は、
図2b~
図2dに示された構成にも相当している。したがって以下においてはパーキング弁1の機能について詳しく述べる。
【0052】
図2aにおいてスライダ5は、位置「ドライブ」にあり、この位置は例えばハウジングにおけるストッパ(図示せず)によって確定されており、この位置においてスライダ5は、ハウジング2内に押し込まれている。この位置において、貯蔵空気容器4とばね蓄力器・ブレーキシリンダ3の解除室との流体接続が、接続部2b、通気室8、および接続部2aを介して形成されている。このとき通気室8は、シール部材6,7によって、空気抜き室9およびハウジング2の残部に対してシールされている。これによってばね蓄力器・ブレーキシリンダ3の解除室において、圧力を形成することができ、この圧力はばね蓄力器・ブレーキシリンダ3のばねに抗して作用し、ひいてはブレーキを解除し、解除された状態に保つ。
【0053】
ここで、パーキング弁1を状態「パーキング」に移行させたい場合には、スライダ5は、
図2aに示された位置を起点として、全区間14を通過することが必要であり、これによりスライダ5は
図2dに示された位置に移行させられる。このようにして接続部2aは、空気抜き室9を介して例えば大気に接続され、これによって解除室における圧力は消滅し、ブレーキがばね蓄力器・ブレーキシリンダ3によってかけられる。これにより、スライダ5がハウジング2の内部における中間位置(Zwitterstellung)において休止することなしに、スライダが位置「ドライブ」から位置「パーキング」にまたはこれとは逆方向に、確実に移行されることを保証することができる。
【0054】
中間位置は、スライダ5の特定の位置であって、この位置においてスライダ5によって、特にスライダ5に設けられたシール部材6,7によって個々の接続部2a,2b,2cの明瞭な分離が存在していない位置として定義されている。このことは、例えばシール部材7が、通気室8から接続部2a内への圧縮空気のオーバフローと、空気抜き室9内への、ひいては空気抜き接続部2cを介した大気への圧縮空気のオーバフローとが可能であるように、接続部2aの上に位置している場合である。この位置においてパーキング弁1は、確定されていない状態にある。
【0055】
このような中間位置を回避するために、ロック装置10が設けられており、このロック装置10の機能形式については以下において述べる。
【0056】
ハウジング2の内部における全区間14の通過時のスライダ5の第1の位置が、
図2bに示されている。この第1の位置では操作力F
Bが、左に向かって例えば操作者によってスライダボタン5aに加えられ、操作力F
Bは、スライダ5を全区間14に沿って移動させる。この操作力F
Bに抗して、全区間14の部分区間12に沿って反力F
Hが作用し、この反力F
Hは、ロック装置10によって生ぜしめられる。図示の実施形態では部分区間12は、スライダ5が反力F
Hを接続部2aの幅の半分に至るまで受けることが保証されるように配置されている。このようにして、例えば操作者がスライダボタン5aを放したことに基づく、操作力F
Bの突然の降下時または完全な消去時に、スライダ5が再び反力F
Hによって右に向かって位置「ドライブ」に戻されることが保証される。部分区間12の延在長さは、単に例として選択されている。特殊な実施形態の設計時には、より長いまたはより短い延在長さ、もしくは全区間14における部分区間12の別の位置も、当業者にとって好適であると思われることがある。
【0057】
スライダ5の図示された位置においてシール部材7は、接続部2aの右縁部に達している。この点を越えて左に向かってさらに移動すると、シール部材7は、空気抜き室9に対するシール作用を失う。これによってばね蓄力器・ブレーキシリンダ3の解除室から流出する空気は、空気抜き室9内に、さらに空気抜き接続部2cを通してパーキング弁1から流出することができる。
【0058】
その結果、ばね蓄力器・ブレーキシリンダ3内における圧力が減少し、これによってばね蓄力器・ブレーキシリンダ3におけるばね力は、解除室内における圧力を上回り、これによってブレーキがかけられる。しかしながらスライダ5はこの位置において、確定された最終状態にない。それというのは接続部2aを通して空気が、通気室8から流出し、ばね蓄力器・ブレーキシリンダ3の解除室内と空気抜き室9内とに流入することができるからである。
【0059】
したがってスライダ5は、
図2cに示されているように、さらに少なくとも区間区分13にわたって、つまり部分区間12に隣接した全区間14の他の部分である区間区分13にわたって、運動させられねばならない。そのためにさらに操作力F
Bが、操作者によってスライダボタン5aに加えられる。
【0060】
この実施例ではロック装置10は、スライダ5に区間区分13にわたって補助力FUを加えるように形成されており、この補助力FUは、操作力FBと同じ方向においてスライダ5に作用する。
【0061】
これによって左に向かってのスライダ5の運動は、追加的な力によって助成され、これによって、シール部材7が少なくとも接続部2aの左縁部に達しかつ/または左縁部を通過し、これによってパーキング弁1が再び確定された状態に位置するという蓋然性が高められる。それというのは、通気室8はシール部材7によって再び空気抜き室9に対して完全にシールされているからである。
【0062】
これによっていまや単になおばね蓄力器・ブレーキシリンダ3の解除室は、空気抜き室9を介して大気にしか接続されていない。解除室は、引き続き空気抜きすることができ、これに対して通気室8、および特に貯蔵空気容器4は、もはや引き続き大気へと空気抜きすることができない。
【0063】
区間区分13の延在長さは、単に例として選択されている。特殊な実施形態の設計時には、区間区分13のより長いまたはより短い延在長さ、もしくは全区間14における区間区分13の別の位置も、当業者にとって好適であると思われることがある。
【0064】
さらにロック装置10によってスライダ5に補助力FUを加えることは、必ずしも必要なことではない。補助力FUを加えることは、単に本発明の好適な実施形態である。補助力FUの代わりに、力がロック装置10によってスライダ5に加えられなくてもよい。
【0065】
スライダ5は、操作者による操作のさらなる経過において全区間14の終端位置に移行され、この終端位置は、ハウジング2におけるストッパ(図示せず)によって確定されている。スライダ5のこの位置は、
図2dに示されている。通気室8は、大気と、ばね蓄力器・ブレーキシリンダ3の解除室に通じる接続部2aとから隔てられている。ばね蓄力器・ブレーキシリンダ3の解除室は、空気抜き室9を介して大気に空気抜きされている。
【0066】
再びブレーキを解除するために、スライダ5は
図2dにおける位置を起点として、再び全区間14に沿ってハウジング2内に押し込まれ、
図2aにおける位置に移行されなければならない。この実施形態においてロック装置10は、いまや反力をスライダ5に左に向かって少なくとも区間区分13の通過時に、次いで補助力をスライダ5に右に向かって部分区間12の通過時に加えるように形成されている。逆方向における部分区間12および区間区分13の通過時に、いまやスライダ5への力作用は逆転している。いまやスライダ5には、区間区分13においてその運動方向とは逆向きの力が、かつ部分区間12において補助力が加えられる。
【0067】
図3~
図6には、ロック装置10を構成するための2つの異なった実施形態が示されている。ここで付言しておくと、これらの図において接続部2a~2cおよびパーキング弁1のさらなる構造上の詳細は、図示されていない。それというのはここではもっぱらロック装置10の構成に対してだけ言及したいからである。
図2a~
図2dとは異なり、ここでは位置「パーキング」から位置「ドライブ」への移行が示されている。
【0068】
図3には、ロック装置10の第1実施形態が断面図で示されている。スライダ5は、位置「パーキング」にある。ロック装置10は、破線で示された領域を用いて明瞭になっている。ロック装置10は2つの磁石16,17を有しており、両磁石16,17は、本実施形態ではスライダ5の内部に設けられている。磁石16,17の間にスライダ5は、長孔の形態の切欠き5bを有しており、この切欠き5b内には、ピンの形態の対応部材18が設けられていて、この対応部材18は、ハウジング2に不動に設けられている。切欠き5bを通してスライダ5は、位置固定の対応部材18のところを通過運動することができ、この際に対応部材18はこの運動を妨げない。
【0069】
ロック装置10の作用形式は、反力FHおよび補助力FUを生ぜしめるための、磁石16,17と対応部材18との間における引付け力に基づいている。対応部材18は、例えば強磁性材料から形成されており、これによって対応部材18を磁石16,17によって引き付けることができる。
【0070】
図3におけるスライダ5の図示された位置において、磁石17と対応部材18との間の間隔は最小である。スライダ5は位置「パーキング」にあるので、スライダ5は、ハウジング2から完全に引き出されている。
【0071】
ここで、スライダ5を位置「ドライブ」に移行させたい場合に、スライダ5は、操作者によってハウジング2内に、操作力FBを加えることによって右に向かって押し込まれねばならない。操作者は、最初に磁石17と対応部材18との間における磁気的な引付け力を克服する必要がある。その後で磁石17と対応部材18とが互いに大きく離れれば離れるほど、両者の間における磁気的な引付け力は小さくなる。
【0072】
同時にこの運動時に、磁石16と対応部材18との間の間隔が小さくなり、この結果、これらの両要素の間における引付け力が上昇する。
【0073】
これによってスライダ5の運動の経過において、対応部材18への磁石16,17の引付け力が互いにバランスされたスライダ位置が得られる。これによってスライダ5への反力F
Hが作用しなくなる。なお、運動が続けられると、位置「ドライブ」への運動のさらなる経過において対応部材18への磁石16の引付け力が優勢になる。しかしながらこの引付け力は、
図4に示されているように、右に向かってのスライダ5の運動方向において助成するように作用し、これによってスライダ5は、スライダボタン5aへの操作者による操作力F
Bに加えて、位置「ドライブ」への移行を促進する補助力F
Uを受ける。
【0074】
この位置は
図4に示されている。この位置において磁石16と対応部材18との間の間隔は最小なので、両要素の間における磁気的な引付け力は最大になる。
【0075】
ここで、スライダ5を再び位置「パーキング」に移行させたい場合に、いまや磁石16はスライダ5への反力を生ぜしめ、磁石17はその引付け力によって助成するように作用する。
【0076】
これによってロック装置10の図示の実施形態は、スライダ5をそれぞれ他方の位置に移行させたい場合に、スライダ5に、図示された両終端位置において最大の反力FHを加える。力限界値を形成するこの反力FHは、まず操作者によって克服されねばならず、これによって操作者はスライダ5を比較的大きな操作力FBで運動させることになる。この反力FHが克服されるや否や、反力FHは磁気的な距離法則に基づいて、スライダ5の戻された区間にわたって迅速に低下する。しかしながら操作者は、操作者によってもたらされた操作力FBを十分に速く減じることができないので、操作者はスライダ5に比較的大きな操作力FBを、それぞれ他方の終端位置の方向に加える。最終的にスライダ5は、操作力FBに加えてさらにロック要素10の力が合わさって、第2の磁石の引付け力が作用する位置に達し、これによってスライダ5は、第2の終端位置の方向への補助力FUを受ける。これによって反力FHおよび補助力FUは、磁石16,17および対応部材18の両引付け力の合計から生じる力である。
【0077】
特に磁気的な引付け力は、スライダ5の特定の位置からスライダ5が操作力FBの消滅時にも比較的近くに位置する終端位置に引き付けられるような強さに選択されていてもよい。
【0078】
したがってロック装置10は、ロック装置10がパーキング弁1、特にスライダ5の操作確実性を高めるように形成されていてもよく、ロック装置10はスライダ5に、スライダ5が確実に終端位置に移行されるように力を加える。当業者は、磁石16,17の強さを特殊な使用事例に合わせることができる。
【0079】
同時に終端位置においては、高い磁気的な引付け力によって磁石16,17のうちの一方の磁石と対応部材18との間においてさらに係止部が形成可能であり、この場合磁気的な引付け力は、スライダ5が、走行中の振動時またはまだ操作ではない軽い接触時にもその現時点の位置に留まるような高さに選択される。
【0080】
図5には、本発明の別の実施形態が断面図で示されている。ここではスライダ5の、ハウジング2から突出していない端部が示されている。スライダ5は、位置「パーキング」にある。これによってスライダ5は、ハウジング2から最大に引き出されている。ロック装置10は、ここでは破線で取り囲まれており、以下において説明するようにスライダ5の一部とハウジング2の一部とによって形成されている。
【0081】
スライダ5の右には、室20がハウジング2内に形成されており、この室20は、左側においてスライダ5によって、かつ特にスライダ5におけるシール部材22によってシール作用をもって閉鎖することができる。室20は、例えば溝または盲孔の形態の補償通路2dを有している。さらに補償通路2eが示されており、この補償通路2eは、室20を空気抜き装置24に接続している。空気抜き装置24は、例えば大気への接続部を有しているか、または補償室として形成されている。
【0082】
ここで、スライダ5を位置「ドライブ」に移行させるためには、スライダ5を、右に向かってハウジング2内に操作力FBを用いて運動させることが必要である。このときシール部材22は補償通路2eを通過し、これによって室20は、シール作用をもって閉鎖される。室20内に閉じ込められた空気は、スライダ5の運動のさらなる経過において圧縮されねばならず、これによって室20内には正圧が発生し、この正圧は、スライダ5への反力FHを生ぜしめ、この反力FHは、右に向かってのスライダ5の運動の継続と共に高まる。
【0083】
シール部材22が補償通路2dに達すると、室20内における圧縮された空気は、補償通路2dを介して空気抜き装置24に逃げることができ、これによって室20内における正圧が補償され、反力は消滅する。スライダ5は、位置「ドライブ」にある。
【0084】
この位置は、
図6に示されている。このとき室20は、最小容積に圧縮されているが、しかしながら室20は、シール部材22が全周にわたってハウジング2に接触しておらず、ひいては室20をシールしていないので、補償通路2dを介して空気抜き装置24に接続されている。
【0085】
位置「パーキング」へのパーキング弁1の移行のために、スライダ5は再び
図5に示された位置に運動させられねばならない。このときシール部材22が補償通路2dの左縁部を通過する瞬間に、室20は新たに閉鎖される。室20内に閉じ込められた空気は、同方向へのスライダ5のさらなる移動によって膨張させられる。それというのは、閉鎖された室20の容積が増大するからである。これによって室20内においてスライダ5の下には負圧が形成され、この負圧は、スライダ5を右に向かっての運動方向とは逆向きに吸い込み、移動に抗して反力F
Hとして作用する。シール部材22が補償通路2eを通過した場合に初めて、負圧は補償通路2eによって再び補償することができる。それというのは、室20は、再び空気抜き装置24に接続されているからである。これによってスライダ5への反力は再び消滅する。
【0086】
スライダ5が、シール部材22が補償通路2eを通過した位置にある場合に、スライダ5の位置「パーキング」が得られている。
【0087】
付言しておくと、
図5および
図6に示されているように、スライダ5の両終端位置において、正圧もしくは負圧の発生によってスライダ5の運動時に反力が生ぜしめられ、この反力は、スライダ5を一方への意図しない移動時に再び出発位置に押圧する。この押圧作用は、シール部材22が、圧力バランスのために働く相応の補償通路2d,2eをまだ通過していない限り継続する。これによってスライダ5は、終端位置において係止されるか、またはスライダ5は、少なくとも極めて制限された移動可能性しか有しておらず、この移動可能性は、中間位置が発生し得ないように設計することができる。これによってパーキング弁1の誤操作をも十分に阻止することができ、操作確実性を高めることができる。さらに当業者は、室20がとることができる容積限界の設計によって、かつ/または補償通路2d,2eの適宜な構成によって、スライダ5への反力の所望の力経過を形成することができる。さらに、補償通路2d,2eをスライダ5の運動方向に沿って、スライダ5の、室20内において正圧も負圧も形成されない位置が存在するように、延在させることも考えられる。このとき正圧も負圧も形成されないのは、補償通路2d,2eがこれらの位置において空気抜き装置24に接続されているからである。
【0088】
ここに示された実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、本発明の対象を制限するものではない。さらに、上に記載された実施形態の特徴の組合せによって形成することができる別の実施形態も考えられる。例えば、スライダ5の一方の終端位置においてスライダ5に特に磁力を加え、かつ他方の終端位置においてスライダ5に、正圧または負圧から成る力を加えるロック装置を形成することも可能である。また位置「パーキング」および「ドライブ」は、単に例として上に記載されたように選択されている。位置「ドライブ」は正確にスライダ5の引き出された位置によって、位置「パーキング」はスライダ5の走入させられた位置によって特徴付けられていてもよい。さらに両位置は、必ずしもスライダ5の終端位置として形成されていなくてもよい。さらにスライダ5は、操作者が選択することができる別の位置を有することもでき、このときロック装置10によって択一的にまたは追加的に、上に記載されたようにスライダ5に力を加えることによって、これらの位置へのスライダ5の確実な移行を達成することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 パーキング弁
2 ハウジング
2a 接続部
2b 接続部
2c 空気抜き接続部
2d 補償通路
2e 補償通路
3 ばね蓄力器・ブレーキシリンダ
4 貯蔵空気容器
5 スライダ
5a スライダボタン
5b 切欠き
6 シール部材
7 シール部材
8 通気室
9 空気抜き室
10 ロック装置
12 部分区間
13 区間区分
14 全区間
16 磁石
17 磁石
18 対応部材
20 室
22 シール部材
24 空気抜き装置
FB 操作力
FH 反力
FU 補助力