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特許7179889磁気共鳴イメージング装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221121BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 312
G01N24/00 510Y
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021035868
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135804
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】竹井 直行
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04896113(US,A)
【文献】米国特許第4684891(US,A)
【文献】米国特許第4748409(US,A)
【文献】U C Wieshmann, et al.,Magnetic resonance imaging in epilepsy with a fast FLAIR sequence,Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry,1996年,61,pp.357-361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFコイル部を駆動する第1の駆動部と、
傾斜磁場コイル部を駆動する第2の駆動部と、
前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御する制御部であって、1TRの時間長を有し撮影部位からエコーを発生させるためのイメージングシーケンスが繰り返し実行されるように、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御する制御部と
を含み、
前記イメージングシーケンスが、
FLAIR画像を得るための第1のシーケンス部であって、
(1a)前記撮影部位に印加されるα°パルスと、
(1b)前記撮影部位に前記α°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、FLAIR画像を得るためのスピンエコーを発生させるための3Dスピンエコーシーケンスと、
を含む第1のシーケンス部と、
前記第1のシーケンス部の後に実行され、T1強調画像を得るための第2のシーケンス部であって、
(2a)前記撮影部位に印加されるβ°パルスと、
(2b)前記撮影部位に前記β°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、T1強調画像を得るためのグラディエントエコーを発生させるための3Dグラディエントエコーシーケンスと、
を含む第2のシーケンス部と
を有
前記イメージングシーケンスが、
第1のシーケンス部の前に実行され、前記撮影部位から、T2強調画像を得るためのスピンエコーを発生させるための他の3Dスピンエコーシーケンスを含む、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1のシーケンス部が、前記α°パルスと前記3Dスピンエコーシーケンスとの間に、脂肪抑制パルスを含む、請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第2のシーケンス部が、前記β°パルスと前記3Dグラディエントエコーシーケンスとの間に、DANTEトレインを含む、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記イメージングシーケンスが、
前記他の3Dスピンエコーシーケンスの前に脂肪抑制パルスを含む、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記イメージングシーケンスが、
前記第2のシーケンス部の後に実行されるq個の3Dグラディエントエコーシーケンスを含む、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記3Dグラディエントエコーシーケンスおよび前記q個の3Dグラディエントエコーシーケンスにより収集された全データのうちの少なくとも一部のデータセットに基づいて計算画像を求めるデータ処理部を有する、請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記3Dスピンエコーシーケンスが3D高速スピンエコーシーケンスである、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記3D高速スピンエコーシーケンスが複数のリフォーカスパルスを有しており、
前記複数のリフォーカスパルスはフリップ角が変化するように印加される、請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記3Dスピンエコーシーケンスにより収集されるエコーの数と、前記3Dグラディエントエコーシーケンスにより収集されるエコーの数が等しい、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記α°パルス又は前記β°パルスが非選択的パルスである、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記α°パルス又は前記β°パルスが反転パルスである、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記3DスピンエコーシーケンスがFRパルスを含む、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記他の3DスピンエコーシーケンスがFRパルスを含む、請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
1つ以上のプロセッサに、RFコイル部を駆動する第1の駆動部および傾斜磁場コイル部を駆動する第2の駆動部を制御する制御信号を生成させるためのプログラムであって、
1TRの間に、
FLAIR画像を得るための第1のシーケンス部であって、
(1a)撮影部位に印加されるα°パルスと、
(1b)前記撮影部位に前記α°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、FLAIR画像を得るためのスピンエコーを発生させるための3Dスピンエコーシーケンスと、
を含む第1のシーケンス部が実行され、
前記第1のシーケンス部が実行された後に実行され、T1強調画像を得るための第2のシーケンス部であって、
(2a)前記撮影部位に印加されるβ°パルスと、
(2b)前記撮影部位に前記β°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、T1強調画像を得るためのグラディエントエコーを発生させるための3Dグラディエントエコーシーケンスと、
を含む第2のシーケンス部とが実行され

前記1つ以上のプロセッサに、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御する制御信号を生成させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FLAIR画像およびT1強調画像を取得する磁気共鳴イメージング装置、および、当該磁気共鳴イメージング装置のプロセッサに所定の動作を実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内の画像を非侵襲的に撮影する医用装置として、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置が知られている。MRI装置は、患者にX線を照射するのではなく、患者に磁場を印加し、画像データを収集する。したがって、MRI装置は患者を被曝させずに画像データを収集することができるので、安全性の高い医用装置として、病院等の医療施設に普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-051483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、患者の診断に有効なMR画像を提供することが可能な多数の撮影方法が開発されている。例えば、病変を強調させることができる撮影方法、診断に不要な組織の信号強度を低下させる撮影方法、異なる時相の画像を取得するのに適した撮影方法など、診断精度を高めるのに非常に有益な多数の撮影方法が開発されている。異なる複数の撮影方法を用いて患者をスキャンすることにより、患者の診断に有益な様々なMR画像を取得することができるので、患者の検査を行う場合、異なる複数の撮影方法を用いて患者をスキャンすることが行われている。
【0005】
例えば、患者の頭部を検査する場合、FLAIR画像およびT1強調画像などを含む複数種類のMR画像を取得する撮影がしばしば行われる。医師は、これらのMR画像を参考にして患者の診断をする。FLAIR画像は、頭部の白質と灰白質とのコントラストを強調することができる画像であり、T1強調画像は脳の形状が視認しやすい画像であるので、FLAIR画像およびT1強調画像は診断に有益な画像である。したがって、患者の頭部のMR検査をする場合、FLAIR画像を取得するためのスキャン、およびT1強調画像を取得するためのスキャンが実行されることが多い。特許文献1には、FLAIR画像やT1強調画像を取得する例が示されている。
【0006】
しかし、患者を検査する場合、診断に有益な複数のMR画像を得る目的で、一回の検査で、FLAIR画像を取得するためのスキャンだけでなく、T1強調画像を取得するためのスキャンも実行しようとすると、スキャン時間が長くなってしまうという問題がある。
【0007】
したがって、FLAIR画像およびT1強調画像を短いスキャン時間で取得することができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、RFコイル部を駆動する第1の駆動部と、
傾斜磁場コイル部を駆動する第2の駆動部と、
前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御する制御部であって、1TRの時間長を有し撮影部位からエコーを発生させるためのイメージングシーケンスが繰り返し実行されるように、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御する制御部と
を含み、
前記イメージングシーケンスが、
FLAIR画像を得るための第1のシーケンス部であって、
(1a)前記撮影部位に印加されるα°パルスと、
(1b)前記撮影部位に前記α°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、FLAIR画像を得るためのスピンエコーを発生させるためのスピンエコーシーケンスと、
を含む第1のシーケンス部と、
前記第1のシーケンス部の後に実行され、T1強調画像を得るための第2のシーケンス部であって、
(2a)前記撮影部位に印加されるβ°パルスと、
(2b)前記撮影部位に前記β°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、T1強調画像を得るためのグラディエントエコーを発生させるためのグラディエントエコーシーケンスと、
を含む第2のシーケンス部と
を有する、磁気共鳴イメージング装置である。
【0009】
本発明の第2の観点は、1つ以上のプロセッサに、RFコイル部を駆動する第1の駆動部および傾斜磁場コイル部を駆動する第2の駆動部を制御する制御信号を生成させるためのプログラムであって、
1TRの間に、
FLAIR画像を得るための第1のシーケンス部であって、
(1a)撮影部位に印加されるα°パルスと、
(1b)前記撮影部位に前記α°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、FLAIR画像を得るためのスピンエコーを発生させるためのスピンエコーシーケンスと、
を含む第1のシーケンス部が実行され、
前記第1のシーケンス部が実行された後に実行され、T1強調画像を得るための第2のシーケンス部であって、
(2a)前記撮影部位に印加されるβ°パルスと、
(2b)前記撮影部位に前記β°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、T1強調画像を得るためのグラディエントエコーを発生させるためのグラディエントエコーシーケンスと、
を含む第2のシーケンス部とが実行されるように、
前記1つ以上のプロセッサに、前記第1の駆動部および前記第2の駆動部を制御する制御信号を生成させる、プログラムである。
【0010】
本発明の第3の観点は、1つ以上のプロセッサによる実行が可能な1つ以上の命令が格納された、1つ以上の非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体であって、前記1つ以上の命令は、前記1つ以上のプロセッサに、
1TRの間に、
FLAIR画像を得るための第1のシーケンス部であって、
(a)撮影部位に印加されるα°パルスと、
(b)前記撮影部位に前記α°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、FLAIR画像を得るためのスピンエコーを発生させるためのスピンエコーシーケンスと、
を含む第1のシーケンス部が実行され、
前記第1のシーケンス部が実行された後に実行され、T1強調画像を得るための第2のシーケンス部であって、
(a)前記撮影部位に印加されるβ°パルスと、
(b)前記撮影部位に前記β°パルスが印加された後に、前記撮影部位から、T1強調画像を得るためのグラディエントエコーを発生させるためのグラディエントエコーシーケンスと、
を含む第2のシーケンス部とが実行されるように、
RFコイル部を駆動する第1の駆動部および傾斜磁場コイル部を駆動する第2の駆動部を制御する動作を行わせる、1つ以上の非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0011】
FLAIR画像は、CSF等の流体部分の信号が抑制され、且つ、着目している複数の組織に大きなT2コントラストを付与することができるので、患者の診断に有益な画像である。しかし、FLAIR画像のシーケンスは、T1値の影響をできるだけ受けないようにするため、TRを長くする必要があり、その結果、FLAIR画像を取得するためのスキャン時間は長くなる。
【0012】
しかし、本願発明者は、このFLAIR画像のスキャンにおいて、待ち時間を長くする必要がある点に着目し、FLAIR画像のシーケンスの待ち時間を、診断でよく利用されるT1強調画像を取得するためのシーケンスの実行時間として利用することを考えた。
【0013】
本発明では、1TRの間に、FLAIR画像用のスピンエコーを収集するシーケンス部だけでなく、T1強調画像用のグラディエントエコーを収集するシーケンス部が実行される。したがって、FLAIR画像を取得するためのスキャン時間の間に、FLAIR画像とT1強調画像との両方の画像のデータを収集することができるので、複数種類のMR画像を取得するために必要なスキャン時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一形態のMRI装置を示す図である。
図2】従来法でFLAIR画像およびT1強調画像を取得する一例の説明図である。
図3】FLAIR画像のスキャンAの長い待ち時間w1を利用して検査時間を短くする考え方の説明図である。
図4】本形態において実行されるスキャンの一例を示す図である。
図5】3D FSEシーケンス12および3D GREシーケンス22の一例を示す図である。
図6】頭部の白質、灰白質、および脳脊髄液の縦磁化の挙動の説明図である。
図7】MR検査のワークフローを示す図である。
図8】撮影領域RSの一例を示す図である。
図9】変形例1の説明図である。
図10】変形例2の説明図である。
図11】変形例3の説明図である。
図12】変形例4の説明図である。
図13】変形例5の説明図である。
図14】本形態の手法で実際に取得した画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0016】
図1は、本発明の一形態のMRI装置を示す図である。
MRI装置は、マグネット100を有している。
【0017】
マグネット100は、超電導コイル部101、傾斜磁場コイル部102、およびRFコイル部103を有している。また、マグネット100は、撮影対象が移動可能なボア104を画定する内壁を有している。
【0018】
超電導コイル部101はボア104内に静磁場を印加する。傾斜磁場コイル部102は、互いに直交する3つの空間軸(x軸、y軸、およびz軸)に対応したx軸コイル、y軸コイル、およびz軸コイルを有しており、ボア104内に傾斜磁場を印加する。RFコイル部103はボア104内にRFパルスを印加する。
【0019】
また、撮影対象115の撮影部位には表面コイル105が設置されている。表面コイル105は撮影対象115のMR信号を受信する。
【0020】
また、MRI装置は、T/Rスイッチ120、RF駆動部121、傾斜磁場コイル駆動部122、データ取得部123、制御部124、データ処理部125、操作コンソール部126を有している。
【0021】
T/Rスイッチ120は、送信モードにおいて、RF駆動部121をRFコイル部103に接続することができ、受信モードにおいて、表面コイル105をデータ取得部123に接続することができる。
【0022】
RF駆動部121は、制御部124に接続されており、制御部124からの制御信号に基づいて、RFコイル部103を駆動するための駆動信号を出力する。RFコイル部103は、RF駆動部121からの駆動信号に応じたRFパルスを送信する。尚、RFコイル部103は、RFパルスを送信するだけでなく、MR信号を受信する、送受信兼用のコイル部とすることもできる。
【0023】
傾斜磁場コイル駆動部122は、制御部124に接続されており、制御部124からの制御信号に基づいて傾斜磁場コイル部102を駆動するための駆動信号を出力する。傾斜磁場コイル部102は、傾斜磁場コイル駆動部122からの駆動信号に応じた傾斜磁場を発生させる。傾斜磁場コイル駆動部122は、傾斜磁場コイル部102に含まれる3つの傾斜磁場コイル(x軸コイル、y軸コイル、およびz軸コイル)に対応する3系統の駆動回路(図示せず)を含んでいる。
【0024】
データ取得部123は、前置増幅器(図示せず)、位相検出器(図示せず)、およびアナログ/デジタル変換器(図示せず)を含んでいる。表面コイル105は、受信したMR信号に対応するアナログ信号を出力し、このアナログ信号はT/Rスイッチ120を介してデータ取得部123の前置増幅器に供給される。アナログ信号は前置増幅器で増幅され、増幅されたアナログ信号が位相検出器で位相検波され、位相検波されたアナログ信号がアナログ/デジタル変換器でデジタル信号に変換される。こうして得られたデジタル信号は、制御部124によって、データ処理部125に出力される。
【0025】
また、MRI装置は、テーブル111を有している。制御部124からの制御信号に基づいてテーブル111を移動させることにより、撮影対象115をボア104内に移動させることができる。
【0026】
制御部124は、コンピュータと、コンピュータによって実行されるプログラムが記録された記録媒体と、を含んでいる。このプログラムは、コンピュータに、撮影対象の検査を行う上で必要な様々な動作を実行させる。記録媒体は、例えば、ROM、可撓性ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、不揮発性メモリなどを含むことができる。制御部124は、テーブル111、RF駆動部121、傾斜磁場コイル駆動部122およびデータ取得部123を制御するための制御信号を出力する。また、制御部124は、操作コンソール部126から受信した操作信号に基づいて、所望の画像を取得するためにデータ処理部125を制御する。
【0027】
操作コンソール部126は、入力装置および表示装置を有している。入力装置は、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ操作画面、ライトペン、および他の入力機器を含むことができる。表示装置は、制御部124から受信した制御信号に基づいて表示装置の表示画面に画像を表示する。表示装置は、例えば、データ処理部125により生成された撮影対象115の二次元(2D)スライス画像または三次元(3D)画像を表示する。
【0028】
操作コンソール部126は、リンク131を介して制御部124と通信することができる。オペレータは、操作コンソール部126を操作して、撮像プロトコルなどのデータを制御部124に入力することができる。
【0029】
データ処理部125は、コンピュータと、コンピュータが所定のデータ処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体と、を含んでいる。データ処理部125は、制御部124に接続されており、制御部124から受信した制御信号に基づいてデータ処理を行う。データ処理部125は、データ取得部123で生成されたデジタル信号に基づいて、MR画像を生成する。
MRI装置は上記のように構成されている。
【0030】
近年、患者の診断に有効なMR画像を提供することが可能な多数の撮影方法が開発されており、異なる撮影方法を用いて患者をスキャンすることにより、患者の診断に有益な様々なMR画像を取得することができる。したがって、患者の検査を行う場合、異なる撮影方法を用いて患者をスキャンすることが行われている。例えば、患者の頭部を検査する場合、FLAIR画像およびT1強調画像などの複数種類のMR画像を取得する撮影がしばしば行われる。しかし、一回の検査で、複数種類のMR画像を取得しようとすると、検査時間が長くなってしまうという問題がある。そこで、本形態のMRI装置は、上記の問題に対処するために、一回の検査で複数種類のMR画像を取得する場合であっても、検査時間をできるだけ短くすることができるようにスキャンを実行する。以下に、FLAIR画像およびT1強調画像を取得する例を取り上げて、本形態において実行されるスキャンを説明する。尚、以下では、本形態の効果を明確にするため、先ず、従来法でFLAIR画像およびT1強調画像を取得する一例を説明し、その後で、本形態の手法でFLAIR画像およびT1強調画像を取得する一例を説明する。
【0031】
図2は、従来法でFLAIR画像およびT1強調画像を取得する一例の説明図である。
図2には、スキャンAとスキャンBとが示されている。スキャンAは、FLAIR画像を取得するためのスキャンであり、スキャンBはT1強調画像を取得するためのスキャンである。
【0032】
スキャンAは、n個のセグメントa1~anに分けることができる。セグメントa1~anの各々の時間長は1TR(Repetition Time)である。したがって、スキャンAのスキャン時間はn×TRとなる。また、スキャンBは、m個のセグメントb1~bmに分けることができる。セグメントb1~bmの各々の時間長は1TRである。したがって、スキャンBのスキャン時間はm×TRとなる。尚、スキャンAにおけるセグメントの数nと、スキャンBにおけるセグメントの数mは、n=mでもよいし、n≠mでもよい。
【0033】
先ず、スキャンAについて説明する。セグメントa1~anの各々では、FLAIR画像を取得するためのイメージングシーケンスが実行される。図2では、セグメントa1~anのうちのセグメントa2を取り上げて、1つのセグメントで実行されるイメージングシーケンスを示している。各セグメントは、反転(Inversion)パルス11と、FLAIR画像の再構成に使用される高速スピンエコーを発生させるための3D FSE(Fast Spin Echo)シーケンス12とを含んでいる。
【0034】
一方、スキャンBでは、セグメントb1~bmの各々で、T1強調画像を取得するためのイメージングシーケンスが実行される。図2では、セグメントb1~bmのうちのセグメントb2を取り上げて、1つのセグメントで実行されるイメージングシーケンスを示している。各セグメントは、反転パルス21と、T1強調画像の再構成に使用されるグラディエントエコーを発生させるための3D GRE(GRadient Echo)シーケンス22とを含んでいる。
【0035】
上記のように、スキャンAおよびBを実行することにより、FLAIR画像およびT1強調画像を取得することができる。
【0036】
しかし、スキャンAでは、T1値の影響をできるだけ受けないようにするため、TRを長くする必要がある。したがって、1TRの間において、3D FSEシーケンス12を終了してから、次のTRが開始するまでの時間(待ち時間)w1を長くしなければならず、その結果、スキャンAのスキャン時間が長くなるという問題がある。更に、FLAIR画像およびT1強調画像を取得するために、スキャンAおよびBを実行する必要があるので、複数種類のMR画像を取得しようとすると、検査時間が長くなるという問題もある。
【0037】
上記の問題に対処するため、本願発明者は、このFLAIR画像のスキャンAにおいて待ち時間w1が長いことを利用して、検査時間を短くすることを考えた。図3は、FLAIR画像のスキャンAの長い待ち時間w1を利用して検査時間を短くする考え方の説明図である。
【0038】
スキャンAの1TRは、例えば、8秒以上の値になることがある。そこで、本願発明者は、FLAIR画像のスキャンAにおけるイメージングシーケンス1の待ち時間w1が長いことに着目し、イメージングシーケンス1の待ち時間w1を、T1強調画像のスキャンBのイメージングシーケンス2(反転パルス21および3D GREシーケンス22)の実行時間t2として利用することを考えた。T1強調画像を取得するためのイメージングシーケンス2の実行時間t2は、例えば3秒程度であるので、T1強調画像を取得するためのイメージングシーケンス2を、FLAIR画像のシーケンス1の待ち時間w1に組み込むことが可能となる。したがって、複数種類のMR画像が取得される検査の検査時間を短縮することが可能となる。以下に、本形態において、上記の考えに基づいて実行されるスキャンの一例について説明する(図4参照)。
【0039】
図4は、本形態において実行されるスキャンの一例を示す図である。
本形態では、スキャンCが実行される。スキャンCでは、撮影部位からエコーを発生させるためのイメージングシーケンスが繰り返し実行される。
【0040】
スキャンCは、n個のセグメントci(i=1~n)、すなわち、セグメントc1~cnで表されている。各セグメントでは、撮影部位からエコーを発生させるためのイメージングシーケンスが実行される。したがって、スキャンCでは、撮影部位からエコーを発生させるためのイメージングシーケンスの繰り返し回数は、n回である。セグメントc1~cnの各々の時間長は1TRである。したがって、スキャンCの時間長はn×TRとなる。
次に、セグメントc1~cnで実行されるイメージングシーケンスについて説明する。
【0041】
図4では、セグメントc1~cnで実行されるイメージングシーケンスのうち、代表して、i=2のセグメント、すなわちセグメントc2で実行されるイメージングシーケンスIScが示されている。
【0042】
イメージングシーケンスIScは、FLAIR画像を取得するためのシーケンス部SQ1と、T1強調画像を取得するためのシーケンス部SQ2とを含んでいる。
【0043】
シーケンス部SQ1は、反転パルス11と、3D FSEシーケンス12とを含んでいる。シーケンス部SQ1の反転パルス11および3D FSEシーケンス12は、例えば、図2に示すスキャンAにおける反転パルス11および3D FSEシーケンス12と同じものとすることができる。
【0044】
反転パルス11は、撮影部位の組織の縦磁化を反転させるパルスである。3D FSEシーケンス12は、反転パルス11から待ち時間w11が経過した時点で実行されるシーケンスであり、撮影部位からFLAIR画像を生成するためのスピンエコーを発生させる3Dシーケンスである。3D FSEシーケンス12の実行時間v12は、例えば、1秒程度の値に設定することができる。尚、反転パルス11は典型的には非選択的反転パルスとすることができるが、診断に適した画質を有するFLAIR画像を取得することができるのであれば、選択的反転パルスとすることもできる。
【0045】
シーケンス部SQ2は、シーケンス部SQ1から待ち時間w12が経過した時点で実行されるシーケンス部である。シーケンス部SQ2は、反転パルス21と、3D GREシーケンス22とを含んでいる。シーケンス部SQ2の反転パルス21および3D GREシーケンス22は、例えば、図2に示すスキャンBにおける反転パルス21および3D GREシーケンス22と同じものとすることができる。
【0046】
反転パルス21は、撮影部位の組織の縦磁化を反転させるパルスである。3D GREシーケンス22は、反転パルス21から待ち時間w21が経過した時点で実行されるシーケンスであり、撮影部位からT1強調画像を生成するためのグラディエントエコーを発生させる3Dシーケンスである。3D GREシーケンス22の実行時間v22は、例えば、1秒程度の値に設定することができる。尚、反転パルス21は典型的には非選択的反転パルスとすることができるが、診断に適した画質を有するT1強調画像を取得することができるのであれば、選択的反転パルスとすることもできる。
【0047】
図5は、3D FSEシーケンス12および3D GREシーケンス22の一例を示す図である。
【0048】
図5では、3D FSEシーケンス12の一例として、3D RARE(Rapid Acquisition with Relaxation Enhancement)シーケンスが示されている。
【0049】
3D FSEシーケンス12は、励起パルス50およびリフォーカスパルスr1、r2、r3、r4、・・・を含んでいる。励起パルス50を印加した後、リフォーカスパルスr1、r2、r3、r4、・・・が印加される。励起パルス50は、例えば90°パルスとすることができる。このシーケンス12では、リフォーカスパルスr1、r2、r3、r4、・・・のフリップ角が変化するようにリフォーカスパルスr1、r2、r3、r4、・・・を印加するVFA(Variable Flip Angle)法が使用されている。Gphase1はky方向に印加される傾斜磁場を表しており、Gphase2はkz方向に印加される傾斜磁場を表している。Greadoutは読み出し傾斜磁場を表している。リフォーカスパルスr1、r2、r3、r4、・・・を印加することにより、エコーec1、ec2、ec3、ec4、・・・を得ることができる。ここでは、3D FSEシーケンス12を実行することにより、u(≧1)個のスピンエコーec1~ecuを収集することができる。図5では、3D FSEシーケンス12により収集されるu個のスピンエコーのうち、5つのスピンエコーec1、ec2、ec3、ec4、ecuが示されている。uの値は、例えば、u=200とすることができる。u=200の場合、3D FSEシーケンス12の実行時間v12は、例えば、v12≒800msecとすることができる。
【0050】
3D GREシーケンス22は、s個のサブシーケンス22_1~22_sを含んでいる。図5では、s個のサブシーケンス22_1~22_sのうちの最初のサブシーケンス22_1のシーケンス図が具体的に示されている。サブシーケンス22_1は、励起パルス51を含んでいる。励起パルス51は、例えば、90°よりも小さいフリップ角を有する励起パルスとすることができる。SSはスライス選択方向に印加される傾斜磁場を表しており、PEは位相エンコード方向に印加される傾斜磁場を表しており、FEは周波数エンコード方向に印加される傾斜磁場を表している。サブシーケンス22_1を実行することにより、1つのグラディエントエコーecgを収集することができる。ここでは、3D GREシーケンス22はs個のサブシーケンス22_1~22_sを含んでいるので、s個のグラディエントエコーを収集することができる。sの値は、例えば、s=200とすることができる。s=200の場合、3D GREシーケンス22の実行時間v22は、例えば、v22≒1200msecとすることができる。
【0051】
次に、シーケンス部SQ1およびSQ2を実行する場合において、撮影部位の主要な組織の縦磁化の挙動について、簡単に説明する。ここでは、撮影部位の主要な組織として、頭部の白質、灰白質、および脳脊髄液を考えることにする。
【0052】
図6は、頭部の白質、灰白質、および脳脊髄液の縦磁化の挙動の説明図である。
時点p1の直前までは、各組織の縦磁化は、Mz=1であるとする。時点p1において反転パルス11が印加されると、撮影部位の縦磁化が反転し、各組織の縦磁化がMz=-1となる。縦磁化が反転した各組織は、各組織のT1値に応じて縦磁化回復する。白質および灰白質はT1値が小さいので、比較的早く回復するが、脳脊髄液は白質よりもT1値がかなり大きいので、白質および灰白質よりもT1回復が緩やかとなる。
【0053】
そして、待ち時間w11が経過した時点p2で、3D FSEシーケンス12が実行される。待ち時間w11は、脳脊髄液のMzがMz=-1からMz=0(ヌルポイント)に到達するまでの時間(またはMz=0の近くに到達するまでの時間)に設定されている。したがって、3D FSEシーケンス12を実行することにより、FLAIR画像を取得するためのスピンエコーを収集することができる。待ち時間w11は、例えば1,5秒程度の値に設定することができる。尚、3D FSEシーケンス12の実行を開始してから3D FSEシーケンス12の実行が終了するまでの間に(例えば、3D FSEシーケンス12の実行開始時点p2と実行終了時点p21との中間の時点p20で)、脳脊髄液のMzがMz=0(ヌルポイント)に到達するように、待ち時間w11を設定することも可能である。
【0054】
3D FSEシーケンス12を実行した後、待ち時間w12が経過した時点p3でシーケンス部SQ2が実行される。
【0055】
待ち時間w12の間に撮影部位の各組織の縦磁化の回復が進み、時点p3においてシーケンス部SQ2の反転パルス21が印加される。したがって、撮影部位の各部位の縦磁化が反転する。そして、縦磁化が反転した各組織は、待ち時間w21の間に、各組織のT1値に応じて縦磁化回復する。白質および灰白質はT1値が小さいので、比較的早く回復するが、脳脊髄液は白質および灰白質よりもT1値がかなり大きいので、白質および灰白質よりもT1回復が緩やかとなる。
【0056】
そして、待ち時間w21が経過した時点p4で、3D GREシーケンス22が実行される。待ち時間w12およびw21は、脳脊髄液の縦磁化がヌルポイントに近くまで回復し、且つ白質と灰白質との間のT1コントラストができるだけ大きくなるように設定されている。したがって、3D GREシーケンス22を実行することにより、T1強調画像を取得するためのグラディエントエコーを収集することができる。待ち時間w12およびw21は、いずれも、例えば1秒程度の値に設定することができる。尚、3D GREシーケンス22の実行を開始してから3D GREシーケンス22の実行が終了するまでの間に(例えば、3D GREシーケンス22の実行開始時点p4と実行終了時点p41との中間の時点p40で)、脳脊髄液のMzがMz=0(ヌルポイント)に到達するように、待ち時間w21を設定することも可能である。
【0057】
ここでは、セグメントc2について説明したが、他のセグメントでもセグメントc2と同様に、FLAIR画像用のスピンエコーと、T1強調画像用のグラディエントエコーとを発生させるためのイメージングシーケンスIScが実行される。
【0058】
スキャンC(図4参照)では、k空間を埋めるためのデータが収集されるように、セグメントごとに、シーケンス12および22の位相エンコードの傾斜磁場の磁場強度を変更しながら、シーケンス12および22が実行される。したがって、スキャンCを実行することにより、撮影部位のFLAIR画像の再構成に必要な一連のエコーと、前記撮影部位のT1強調画像の再構成に必要な一連のエコーとを得ることができる。
【0059】
尚、本形態では、シーケンス部SQ1は、3D FSEシーケンス12の前に、反転パルス11を含んでいる。しかし、シーケンス部SQ1により取得されるFLAIR画像が診断に適した十分な品質を有することができるのであれば、シーケンス部SQ1は、反転パルス11の代わりに、フリップ角が180°とは異なるRFパルスを含むことができる。したがって、図4に示す反転パルス11をα°パルスに一般化して、シーケンス部SQ1を、α°パルスと3D FSEシーケンス12とを含むシーケンス部とすることができる。α°の値は、例えば、許容可能な画質のFLAIR画像を得ること、およびできるだけスキャン時間の短いスキャンCを実現することなどを考慮して、決めることができる。典型的には、α°=180°とすることができる。尚、α°パルスは非選択的パルス又は選択的パルスとすることができる。
【0060】
また、本形態では、シーケンス部SQ2は、3D GREシーケンス22の前に、反転パルス21を含んでいる。しかし、シーケンス部SQ2により取得されるT1強調画像が診断に適した十分な品質を有することができるのであれば、シーケンス部SQ2は、反転パルス21の代わりに、フリップ角が180°とは異なるRFパルスを含むことができる。したがって、図5に示す反転パルス21をβ°パルスに一般化して、シーケンス部SQ2を、β°パルスと3D GREシーケンス22とを含むシーケンス部とすることができる。β°の値は、例えば、許容可能な画質のT1強調画像を得ること、およびできるだけスキャン時間の短いスキャンCを実現することなどを考慮して、決めることができる。典型的には、β°=180°とすることができる。尚、β°パルスは非選択的パルス又は選択的パルスとすることができる。
【0061】
制御部124(図1参照)は、上記のイメージングシーケンスIScが繰り返し実行されるようにRF駆動部121および傾斜磁場コイル駆動部122を制御する。RF駆動部121および傾斜磁場コイル駆動部122を制御するため、制御部124の記憶部にはプログラムが記憶されている。このプログラムは、1つ以上のプロセッサに、上記のイメージングシーケンスIScが繰り返し実行されるようにRF駆動部121および傾斜磁場コイル駆動部122を制御する制御信号を生成させるものである。この記憶部は、1つ以上のプロセッサによる実行が可能な1つ以上の命令が格納された、1つ以上の非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体を含むことができる。1つ以上の命令は、プロセッサによって実行されたときに、1TRの間に第1のシーケンス部SQ1および第2のシーケンス部SQ2が実行されるように、RF駆動部121および傾斜磁場コイル駆動部122を制御するものである。第1のシーケンス部SQ1および第2のシーケンス部SQ2は、以下の通りである。
【0062】
(1)第1のシーケンス部SQ1はFLAIR画像を得るためのシーケンス部であり、
(1a)撮影部位に印加されるα°パルスと、
(1b)撮影部位に前記α°パルスが印加された後に、撮影部位から、FLAIR画像を得るためのスピンエコーを発生させるための3D FSEシーケンス12と
を含んでいる。
【0063】
(2)第2のシーケンス部SQ2は、第1のシーケンス部SQ1の後に実行され、T1強調画像を得るためのシーケンス部であって、
(2a)撮影部位に印加されるβ°パルスと、
(2b)撮影部位にβ°パルスが印加された後に、撮影部位から、T1強調画像を得るためのグラディエントエコーを発生させるための3D GREシーケンス22と
を含んでいる。尚、典型的には、α°パルスは反転パルス11とすることができ、β°パルスは反転パルス21とすることができる。
【0064】
上記の動作は、1つのプロセッサで実行されるようにしてもよいし、複数のプロセッサで実行されるようにしてもよい。また、本形態では、制御部124のプロセッサによって、上記の動作が実行されるようにしているが、制御部124のプロセッサとは別のプロセッサによって、上記の動作が実行されるようにしてもよい。
【0065】
本形態では、3D FSEシーケンス12は、VFA法を使用したシーケンスである。しかし、3D FSEシーケンス12は、VFA法を使用したシーケンスに限定されることは無く、例えば、同じフリップ角を有する複数のリフォーカスパルス(例えば、180°パルス)を含むシーケンスであってもよい。
【0066】
また、3D FSEシーケンス12は、FRFSE(Fast Recovery FSE)法を使用した、FRパルスを含むシーケンスとすることもできる。FRパルスは、横磁化を強制的に縦磁化に戻すので、3D FSEシーケンス12が終了した後の縦磁化の回復を早めることができる。したがって、3D FSEシーケンス12がFRパルスを含むことにより、待ち時間w12(図4参照)を短くすることができるので、スキャンCのスキャン時間を短縮することが可能となる。
【0067】
また、一回の3D FSEシーケンス12で収集されるエコーの数uと、一回の3D GREシーケンス22で収集されるエコーの数sは、同じ値、すなわち、u=sに設定することができる。ただし、診断に適した十分な品質のFLAIR画像およびT1強調画像を取得することができるのであれば、u≠sであってもよい。また、セグメントc1~cnのうちの一部のセグメントについては、u=sとし、残りのセグメントはu≠sとすることも可能である。
【0068】
次に、図4のスキャンCを用いたMR検査のワークフローについて簡単に説明する。
【0069】
図7は、MR検査のワークフローを示す図である。
ステップST1では、オペレータは、スキャン計画を立てる。スキャン計画では、撮影領域が設定される。図8は、撮影領域RSの一例を示す図である。ここでは、撮影部位は脳であるとする。したがって、オペレータは、脳を含むように撮影領域RSを設定する。また、オペレータは、スキャンCを実行するためのスキャン条件も設定する。
【0070】
ステップST2では、スキャンCが実行される。撮影領域RSは脳を含んでいるので、スキャンCを実行することにより、脳を含む部位のFLAIR画像およびT1強調画像を取得することができる。
このようにしてフローが終了する。
【0071】
スキャンCでは、FLAIR画像のシーケンス部SQ1の待ち時間w1(図4参照)を利用して、T1強調画像のシーケンス部SQ2が実行される。したがって、スキャンCを実行するだけで、FLAIR画像およびT1強調画像を取得することができるので、スキャン時間や検査時間を短縮することができる。
【0072】
また、ステップST1において、オペレータが設定した撮影領域RS(図8参照)は、FLAIR画像用の撮影領域とT1強調画像用の撮影領域とを兼ねている。したがって、オペレータは、FLAIR画像用の撮影領域と、T1強調画像用の撮影領域とを別々に設定する必要がないので、オペレータの作業負担を軽減することも可能となる。尚、図8では、脳(頭部)を撮影する例が示されているが、撮影部位は脳(頭部)に限定されることは無く、本発明は、脳(頭部)とは別の部位を撮影する場合にも適用することができる。
【0073】
尚、図4のスキャンCでは、イメージングシーケンスIScが実行されているが、本発明は、イメージングシーケンスIScに限定されることは無く、イメージングシーケンスIScとは異なるイメージングシーケンスを実行してもよい。以下に、イメージングシーケンスIScとは異なるイメージングシーケンスを実行するいくつかの変形例について説明する。
【0074】
図9は、変形例1の説明図である。
図9には、スキャンDが示されている。スキャンDでは、イメージングシーケンスISdが実行される。イメージングシーケンスISdは、イメージングシーケンスISc(図4参照)と比較すると、3D FSEシーケンス10が加えられている点が異なっている。3D FSEシーケンス10は、シーケンス部SQ1の前に加えられている。したがって、イメージングシーケンスISdを実行する例では、記録媒体に格納された1つ以上の命令は、プロセッサに、1TRの間に、3D FSEシーケンス10、第1のシーケンス部SQ1、および第2のシーケンス部SQ2がこの順で実行されるように、RF駆動部121および傾斜磁場コイル駆動部122を制御する動作を行わせるものである。
【0075】
3D FSEシーケンス10は、T2強調画像を取得するためのシーケンスである。したがって、変形例1では、スキャンDを実行することにより、FLAIR画像、T1強調画像の他に、T2強調画像も取得することができる。3D FSEシーケンス10の実行時間v10は、例えば1秒程度の値とすることができる。3D FSEシーケンス10とシーケンス部SQ1との間には、待ち時間w10が設けられている。待ち時間w10が長くなるほど、1TRの時間長が長くなるので、スキャンDのスキャン時間が長くなる。したがって、スキャン時間が長くなってしまうことを回避したい場合は、待ち時間w10はできるだけ短くすることが望ましい。一方で、待ち時間w10を短くし過ぎると、白質、灰白質、および脳脊髄液の縦磁化が十分に回復する前にシーケンス部SQ1が開始してしまうので、白質と灰白質の信号強度を大きくすることができなかったり、脳脊髄液に信号ムラが生じたり、脳脊髄液の信号を十分に抑制することができない恐れがある。したがって、待ち時間w10は、スキャン時間とFLAIR画像の画質との両方を考慮して設定することが望ましい。待ち時間w10は、例えば、1秒程度の値に設定することができる。
【0076】
尚、3D FSEシーケンス10は、同じフリップ角を有する複数のリフォーカスパルス(例えば、180°パルス)を含むシーケンスとすることができ、FRパルスを含むシーケンスとすることもできる。
【0077】
図10は、変形例2の説明図である。
図10には、スキャンEが示されている。スキャンEでは、イメージングシーケンスISeが実行される。イメージングシーケンスISeは、イメージングシーケンスISd(図9参照)と比較すると、シーケンス部SQ1が脂肪抑制パルス13を含む点が異なっている。脂肪抑制パルス13は、3D FSEシーケンス12の前に加えられている。したがって、イメージングシーケンスISeを実行する例では、記録媒体に格納された1つ以上の命令は、プロセッサに、1TRの間に、3D FSEシーケンス10、脂肪抑制パルス13を含む第1のシーケンス部SQ1、および第2のシーケンス部SQ2がこの順で実行されるように、RF駆動部121および傾斜磁場コイル駆動部122を制御する動作を行わせるものである。
【0078】
シーケンス部SQ1が脂肪抑制パルス13を含むことにより、脂肪信号が抑制されたFLAIR画像を取得することができる。
【0079】
尚、脂肪抑制パルス13と3D FSEシーケンス12との間には、待ち時間w13が設けられている。待ち時間w13は、脂肪抑制パルス13の脂肪抑制効果が十分に発揮できるように、できるだけ短いことが望ましい。待ち時間w13は、例えば、数m秒程度の値に設定することができる。
【0080】
図11は、変形例3の説明図である。
図11には、スキャンFが示されている。スキャンFでは、イメージングシーケンスISfが実行される。イメージングシーケンスISfは、イメージングシーケンスISe(図10参照)と比較すると、シーケンス部SQ2がDANTE(Delay Alternating with Nutation for Tailored Excitation)トレイン23を含む点が異なっている。DANTEトレイン23は、反転パルス21と3D GREシーケンス22との間に加えられている。したがって、イメージングシーケンスISfを実行する例では、記録媒体に格納された1つ以上の命令は、プロセッサに、1TRの間に、3D FSEシーケンス10、脂肪抑制パルス13を含む第1のシーケンス部SQ1、およびDANTEトレイン23を含む第2のシーケンス部SQ2がこの順で実行されるように、RF駆動部121および傾斜磁場コイル駆動部122を制御する動作を行わせるものである。
【0081】
DANTEトレイン23を印加することにより、血管信号が更に抑制されたT1強調画像を取得することが可能となる。DANTEトレイン23は、例えば100個程度のDANTEパルスを含むことができる。DANTEパルスは非選択的パルス又は選択的パルスとすることができる。
【0082】
反転パルス21とDANTEトレイン23との間には、待ち時間w23が設けられている。待ち時間w23が長くなるほど、DANTEトレイン23の血管信号抑制効果が低減するので、待ち時間w23は、DANTEトレイン23の時間長などを考慮して、できるだけ長く設定することが望ましい。待ち時間w23は、例えば800m秒程度の値に設定することができる。
【0083】
図12は、変形例4の説明図である。
図12には、スキャンGが示されている。スキャンGでは、イメージングシーケンスISgが実行される。イメージングシーケンスISgは、イメージングシーケンスISf(図11参照)と比較すると、3D FSEシーケンス10の前に脂肪抑制パルス9が加えられている点が異なっている。したがって、イメージングシーケンスISgを実行する例では、記録媒体に格納された1つ以上の命令は、プロセッサに、1TRの間に、脂肪抑制パルス9、3D FSEシーケンス10、脂肪抑制パルス13を含む第1のシーケンス部SQ1、およびDANTEトレイン23を含む第2のシーケンス部SQ2がこの順で実行されるように、RF駆動部121および傾斜磁場コイル駆動部122を制御する動作を行わせるものである。
【0084】
脂肪抑制パルス9を印加することにより、脂肪信号が抑制されたT2強調画像を取得することができる。
【0085】
尚、脂肪抑制パルス9と3D FSEシーケンス10との間には、待ち時間w9が設けられている。待ち時間w9は、脂肪抑制パルス9の脂肪抑制効果が十分に発揮できるように、できるだけ短いことが望ましい。待ち時間w9は、例えば、数m秒程度の値に設定することができる。
【0086】
図13は、変形例5の説明図である。
図13には、スキャンHが示されている。スキャンHでは、イメージングシーケンスIShが実行される。イメージングシーケンスIShは、イメージングシーケンスISd(図9参照)と比較すると、シーケンス部SQ2の後に、q(≧1)個の3D GREシーケンス31、32、・・・3qが加えられている点が異なっている。したがって、イメージングシーケンスIShを実行する例では、記録媒体に格納された1つ以上の命令は、プロセッサに、1TRの間に、3D FSEシーケンス10、第1のシーケンス部SQ1、第2のシーケンス部SQ2、q個の3D GREシーケンス31~3qがこの順で実行されるように、RF駆動部121および傾斜磁場コイル駆動部122を制御する動作を行わせるものである。
【0087】
q個の3D GREシーケンス31、32、・・・3qを加えることにより、1TRの間に、3D GREシーケンス22だけでなく、q個の3D GREシーケンス31、32、・・・3qも実行することができる。したがって、1TRの間に、複数の3D GREシーケンスが異なるタイミングで実行されるので、T1強調画像とは別のMR画像(例えば、T2*画像)やマッピング画像を取得することが可能となる。また、データ処理部125(図1参照)は、MR画像の公知の計算手法を用いることにより、3D GREシーケンス22および3D GREシーケンス31、32、・・・3qにより収集された全データのうちの少なくとも一部のデータセットに基づいて、様々な計算画像を求めることが可能である。
【0088】
また、図13のイメージングシーケンスIShは脂肪抑制パルスを含んでいないが、図10図12に示すように、必要に応じて、脂肪抑制パルスを含むようにしてもよい。
【0089】
尚、上記のイメージングシーケンスISc~IShでは、FLAIR画像を取得するためにFSEシーケンス12が用いられ、T2強調画像を取得するためにFSEシーケンス10が用いられている。しかし、FSEシーケンスの代わりに、シングルエコーを収集するSEシーケンスを使用することも可能である。
【0090】
また、上記に説明したFSEシーケンス10、FSEシーケンス12、GREシーケンス22、およびGREシーケンス31~3qは、3Dシーケンスであるが、本発明は、上記のシーケンス10、12、22、および31~3qが2Dシーケンスである場合にも適用することが可能である。
【0091】
次に、本形態の手法で実際に取得した画像について説明する。
【0092】
図14は、本形態の手法で実際に取得した画像の一例を示す図である。
図14の上段に示す画像は、本形態の手法で実際に取得したT2強調画像、FLAIR画像、およびT1強調画像である。これらのT2強調画像、FLAIR画像、およびT1強調画像は、図10に示すスキャンEによって取得した画像である。スキャン時間は3分であった。
【0093】
図14の下段には、比較例として、別々のスキャンによって取得したT2強調画像、FLAIR画像、およびT1強調画像を示してある。比較例のデータサンプリング数および画像の空間分解能は、本形態の手法と同じである。比較例では、T2強調画像のスキャン時間は1分40秒、FLAIR画像のスキャン時間は2分47秒、およびT1強調画像のスキャン時間は1分56秒であった。したがって、比較例では、これらの画像を取得するのに必要なスキャン時間は、合計で6分23秒であった。
【0094】
本形態の手法で取得されたT2強調画像、FLAIR画像、およびT1強調画像と、比較例のT2強調画像、FLAIR画像、およびT1強調画像とを比較すると、本形態の手法で取得されたT2強調画像、FLAIR画像、およびT1強調画像は、比較例のT2強調画像、FLAIR画像、およびT1強調画像と遜色のない画質を有している。したがって、本形態の手法を用いることにより、比較例よりも約半分のスキャン時間で比較例と同等の画質の画像が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0095】
1、2 イメージングシーケンス
9、13 脂肪抑制パルス
10、12 FSEシーケンス
11、21 反転パルス
22、31、31~3q GREシーケンス
23 DANTEトレイン
50、51 励起パルス
100 マグネット
101 超電導コイル部
102 傾斜磁場コイル部
103 RFコイル部
104 ボア
105 表面コイル
111 テーブル
115 撮影対象
120 T/Rスイッチ
121 RF駆動部
122 傾斜磁場コイル駆動部
123 データ取得部
124 制御部
125 データ処理部
126 操作コンソール部
131 リンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14