(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】窒素除去を有するLNG生成
(51)【国際特許分類】
F25J 3/02 20060101AFI20221121BHJP
F25J 5/00 20060101ALI20221121BHJP
C10L 3/10 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
F25J3/02 B
F25J5/00
C10L3/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021036936
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2021-04-06
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】シルバン ボバール
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン デイビッド ブコウスキ
(72)【発明者】
【氏名】チェン フェイ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジュリアン ロバーツ
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-210079(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1293232(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0285196(US,A1)
【文献】米国特許第04415345(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226009(US,A1)
【文献】特開2013-036676(JP,A)
【文献】特開2015-210078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J1/00-5/00
C10L3/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガス供給流れを液化し、およびそれから窒素を除去するための方法であって、前記方法は、
(a)窒素含有天然ガス供給流れを主熱交換器に通し、第1の冷媒との間接的な熱交換を介して前記主熱交換器内で前記天然ガス流れを冷却および液化し、それにより第1のLNG流れを生成することと、
(b)前記主熱交換器から前記第1のLNG流れを回収することと、
(c)前記第1のLNG流れを膨張させ、前記流れを、前記流れが部分的に蒸発し、窒素富化オーバーヘッド蒸気および窒素枯渇底液に分離される蒸留塔中に導入することと、
(d)前記蒸留塔から前記窒素枯渇底液の流れを回収して、第2の窒素枯渇LNG流れを形成することと、
(e)前記窒素富化オーバーヘッド蒸気の流れをオーバーヘッド熱交換器内で加温して、加温されたオーバーヘッド蒸気を形成することと、
(f)前記加温されたオーバーヘッド蒸気の第1の部分から形成されたリサイクル流れを圧縮、冷却および液化し、過冷却および膨張させて液体または二相リサイクル流れを形成し、前記液体または二相リサイクル流れを前記蒸留塔に導入して前記蒸留塔に還流を提供することと、
(h)前記加温されたオーバーヘッド蒸気の第2の部分から1つ以上の窒素生成物流れまたは排出流れを形成することと、を含み、
工程(f)において、前記天然ガス供給流れとは別に、前記リサイクル流れの少なくとも一部を前記主熱交換器に通すことによって、前記リサイクル流れの少なくとも一部が前記第1の冷媒との間接的な熱交換を介して液化され、
工程(f)において、前記リサイクル流れの少なくとも一部を前記オーバーヘッド熱交換器に通すことによって、前記リサイクル流れが前記窒素富化オーバーヘッド蒸気との間接的な熱交換を介して過冷却され、
前記オーバーヘッド熱交換器が前記主熱交換器とは別個であり、前記オーバーヘッド熱交換器の冷却機能の全てが、工程(e)における前記窒素富化オーバーヘッド蒸気の前記流れの前記加温によって提供される、方法。
【請求項2】
前記オーバーヘッド熱交換器が、シェル内に収容され、かつ前記熱交換器の管側およびシェルを画定する1つ以上の管束を含むコイル巻き熱交換器であり、工程(e)において、前記窒素富化オーバーヘッド蒸気の前記流れが前記オーバーヘッド熱交換器の前記シェル側を通り、加温され、工程(f)において、前記リサイクル流れの少なくとも一部を前記オーバーヘッド熱交換器の前記管側に通すことによって、前記リサイクル流れが過冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オーバーヘッド熱交換器が、前記蒸留塔と一体化され、前記1つ以上の管束が前記蒸留塔の上部内に配置され、前記オーバーヘッド熱交換器の前記シェルが前記蒸留塔シェルの前記上部を形成している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オーバーヘッド熱交換器が、温かい熱交換器セクションおよび冷たい熱交換器セクションを含み、工程(f)において、前記リサイクル流れの少なくとも一部を前記冷たい熱交換器セクションに通すことによって、前記リサイクル流れが過冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(f)において、前記リサイクル流れの一部または全部を前記温かい熱交換器セクションに通すことによって、前記リサイクル流れの前記一部または全部が冷却される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
天然ガスまたは第1の冷媒の1つ以上の流れが、前記流れ(複数可)を前記温かい熱交換器セクションに通すことによって冷却される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
工程(f)において、液化されたリサイクル流れを形成するために前記流れを前記主熱交換器に通すことによって、前記リサイクル流れの全部が前記第1の冷媒との間接的な熱交換を介して液化される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(f)において、前記液化されたリサイクル流れの全部を前記オーバーヘッド熱交換器に通すことによって、前記リサイクル流れが過冷却される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(f)において、過冷却された部分を形成するために前記液化されたリサイクル流れの第1の部分を前記オーバーヘッド熱交換
器に通すことによって、前記リサイクル流れが過冷却され、前記液化されたリサイクル流れの第2の部分が前記オーバーヘッド熱交換器をバイパスし、次いで前記過冷却された部分と混合され、前記蒸留塔に還流を提供する前記液体または二相リサイクル流れを形成するために、前記過冷却された部分および第2の部分が混合される前または後に膨張される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
工程(f)において、第1の液化された部分を形成するために前記リサイクル流れの第1の部分を前記主熱交換器に通すことによって、前記リサイクル流れの第1の部分が前記第1の冷媒との間接的な熱交換を介して液化され、第2の液化および過冷却された部分を形成するために前記オーバーヘッド熱交換器に通すことによって、前記リサイクル流れの第2の部分が液化および過冷却され、前記第1の液化された部分および前記第2の液化および過冷却された部分が次いで混合され、前記蒸留塔に還流を提供する前記液体または二相リサイクル流れを形成するために、前記第1の液化された部分および第2の液化および過冷却された部分が混合される前または後に膨張される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のLNG流れが、工程(c)において、前記蒸留塔の中間の場所で前記蒸留塔内に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)が、前記第1のLNG流れを前記蒸留塔内に導入する前に、前記第1のLNG流れを再沸騰熱交換器内で冷却することをさらに含み、
前記方法は、前記蒸留塔に沸騰をもたらすように、前記第1のLNG流れとの間接的な熱交換を介して、前記再沸騰熱交換器中の前記窒素枯渇底液の一部を加温し、蒸発させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)において、前記第1のLNG流れが、前記主熱交換器の前記冷たい終端から回収され、工程(f)において、前記主熱交換器内で液化された前記リサイクル流れの前記少なくとも一部が、前記主熱交換器の前記冷たい終端から回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)において、前記第1のLNG流れが
、-220~-250°F
(-140~-155℃)の温度で前記主熱交換器から回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程(f)において、前記主熱交換器内で液化される前記リサイクル流れの前記少なくとも一部が
、-220~-250°F
(-140~-155℃)の温度で前記主熱交換器から回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記窒素富化オーバーヘッド蒸気が
、-300~-320°F(-185~-195℃)の温度で前記オーバーヘッド熱交換器の前記冷たい終端に入る、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の冷媒が、工程(a)において前記主熱交換器内の前記天然ガス流れを液化するための、および工程(f)において前記主熱交換器内の前記リサイクル流れの前記少なくとも一部を液化するため
の冷却機能を提供するために前記主熱交換器に通されると蒸発する冷媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程(f)において、前記主熱交換器の内部で液化される前記リサイクル流れの前記少なくとも一部が、前記第1の冷媒が前記主熱交換器の内部で蒸発し始める温度よりも0~10°F(0~5℃)高い温度で液化を終了するような圧力に前記リサイクル流れが圧縮される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
天然ガス供給流れを液化し、およびそれから窒素を除去するためのシステムであって、前記システムは、
窒素含有天然ガス供給流れを受け取るための1つ以上の通路を含む温かい側と、第1の冷媒の流れを受け取るための1つ以上の通路を含む冷たい側と、を有する主熱交換器であって、前記温かい側と冷たい側が、前記窒素含有天然ガス供給流れが前記温かい側を通るときに、前記冷たい側を通る前記第1の冷媒の流れとの間接的な熱交換によって冷却および液化され、それにより第1のLNG流れを生成するように構成されている、主熱交換器と、
前記主熱交換器の前記冷たい側に前記第1の冷媒の冷却された流れを供給し、前記主熱交換器の前記冷たい側から前記第1の冷媒の流れの加温された流れを回収する第1の冷媒回路と、
前記第1のLNG流れを受け取って膨張させるために前記主熱交換器と流体流連通状態にある膨張装置と、
前記膨張装置から前記第1のLNG流れを受け取るための前記膨張装置と流体流連通状態にある蒸留塔であって、前記第1のLNG流れが、前記蒸留塔の内部で部分的に蒸発し、窒素富化オーバーヘッド蒸気および窒素枯渇底液に分離される、蒸留塔と、
前記蒸留塔から前記窒素枯渇底液の流れを回収して、第2の窒素枯渇LNG流れを形成するための導管と、
前記窒素富化オーバーヘッド蒸気の流れを受け取るための1つ以上の通路を含む冷たい側と、1つ以上の通路を含む温かい側と、を有するオーバーヘッド熱交換器であって、前記温かい側と冷たい側が、前記冷たい側を通る窒素富化オーバーヘッド蒸気が前記温かい側を通る流体との間接的な熱交換によって加温され、それによって加温されたオーバーヘッド蒸気を生成するように構成されている、オーバーヘッド熱交換器と、
前記加温されたオーバーヘッド蒸気の第1の部分から形成されたリサイクル流れを圧縮、冷却および液化し、過冷却および膨張させて液体または二相リサイクル流れを形成し、前記液体または二相リサイクル流れを前記蒸留塔に導入して前記蒸留塔に還流を提供する還流回路と、
前記システムから前記加温されたオーバーヘッド蒸気の第2の部分から形成された1つ以上の窒素生成物流れまたは排出流れを回収するための1つ以上の導管と、を含み、
前記還流回路は、前記天然ガス供給流れとは別に、前記リサイクル流れの前記少なくとも一部を前記主熱交換器の前記温かい側における1つ以上の通路に通すことによって、前記リサイクル流れの前記少なくとも一部が前記第1の冷媒との間接的な熱交換を介して液化するように構成されており、
前記還流回路は、前記リサイクル流れの少なくとも一部を前記オーバーヘッド熱交換器の前記温かい側における前記通路のうちの1つ以上に通すことによって、前記リサイクル流れが前記窒素富化オーバーヘッド蒸気との間接的な熱交換を介して過冷却されるように構成されており、
前記オーバーヘッド熱交換器が前記主熱交換器とは別個であり、前記システムは、窒素富化オーバーヘッド蒸気の前記流れが前記オーバーヘッド熱交換器の前記冷たい側を通る唯一の流れであり、したがって前記オーバーヘッド熱交換器のため
に冷却機能の全てを提供するように構成されている、システム。
【請求項20】
前記オーバーヘッド熱交換器が、シェル内に収容される1つ以上の管束を含み、かつ前記熱交換器の管側およびシェルを画定するコイル巻き熱交換器であり、前記シェル側が、前記熱交換器の前記冷たい側であり、前記管側が、前記熱交換器の前記温かい側である、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス供給流れを液化し、およびそれから窒素を除去するための方法に関する。本発明はまた、天然ガス供給流れを液化し、およびそれから窒素を除去するための(例えば、天然ガス液化プラントまたは他の形態の処理設備などの)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスを液化するためのプロセスにおいて、例えば、純度および/または回収の要件により、生成物(メタン)の損失を最小化しながら供給流れから窒素を除去することが、多くの場合望ましいかまたは必要である。典型的な市販の液体天然ガス(LNG)製品の仕様には、多くの場合、窒素含量が約1%以下であるという要件が含まれ、その結果、LNGは、タンクのロールオーバーの懸念を軽減して保管することができる。
【0003】
従来、LNGは、液化のための電力を提供するために冷媒圧縮機に直接接続されたガスまたは蒸気タービンを使用するプラントで生成されてきた。この場合、窒素は、低圧力で液化装置からのLNGを気相および液相にフラッシュさせることによって生成物LNGから排除することができ、結果として生じる窒素に富んだ蒸気が蒸気発生またはガスタービンの燃料として使用され、結果として生じる窒素を枯渇させた液体がLNG生成物の仕様を満たす。
【0004】
しかしながら、より効率的なガスタービンの使用の増加および冷媒圧縮機を駆動するための電動モーターの使用により、より新しいLNGプラントに対する燃料需要は多くの場合、かなり低い。そのような状況では、天然ガス供給中の過剰な窒素は、大気中に排出されるか、またはそれ以外の方法で窒素生成物として使用もしくは輸出される必要がある。排出される場合、窒素は、環境への関心および/またはメタン回収の要件により、典型的には、厳しい純度仕様(例えば、95モル%超、または99モル%超)を満たさなければならない。窒素を高純度窒素生成物として使用または輸出する場合も、もちろん同様である。そのような純度要件は、分離課題をもたらす。天然ガス供給における非常に高い窒素濃度(典型的には10モル%超、場合によっては20モル%までまたはそれを超える)の場合、専用の窒素排除ユニット(NRU)が、窒素を効率的に除去し、純粋な(99モル%超)窒素生成物を生成する堅牢な方法であることが証明されている。ほとんどの場合、しかしながら、天然ガスは、約1~10モル%の窒素を含む。供給物中の窒素濃度がこの範囲内にある場合、追加の設備に関連する複雑さのため、NRUの適用性は高い資本コストによって妨げられる。
【0005】
米国特許第9,945,604号は、比較的低い窒素濃度を有する天然ガス供給物からも窒素を除去できる単純で効率的なプロセスを開示している。本文書の
図1に開示されるプロセスでは、天然ガス供給流れは、気化混合冷媒に対して主熱交換器内で冷却および液化され、得られたLNG流れは、約-240°F(-150℃)の温度で主熱交換器を出る。次に、LNG流れは、上記塔の中間の場所で蒸留塔に導入され、窒素富化オーバーヘッド蒸気および窒素枯渇底液に分離される前に、蒸留塔の沸騰のための熱を提供する再沸騰熱交換器内でさらに冷却される。底液の流れは、窒素枯渇LNG生成物として回収される。オーバーヘッド蒸気の流れは、オーバーヘッド熱交換器内で周囲温度近くまで加温され、次に2つの部分、すなわち、大気中に排出される排除窒素流れと、高圧に圧縮された後、オーバーヘッド熱交換器内で冷却および凝縮されて蒸留塔に還流をもたらすリサイクル流れとに分割される。オーバーヘッド熱交換器における冷却曲線、したがってプロセスの効率を改善するために、主熱交換器内で使用される混合冷媒の一部もまた、オーバーヘッド熱交換器に冷媒を提供するために使用される。
【0006】
米国特許第9,816,754号の
図10は、オーバーヘッド窒素が蒸留塔に還流を提供するために蒸留塔にリサイクルされ、主熱交換器で使用される混合冷媒の一部によってオーバーヘッド熱交換器に追加の冷媒が供給される、米国特許第9,945,604号の
図1に示されるものと同様の配置を示す。米国特許第9,816,754号の
図10と米国特許第9,945,604号の
図1との主な違いは、米国特許第9,816,754号の
図10では、LNG貯蔵タンクからのボイルオフガス流れから蒸留塔への供給が提供されることであり、ボイルオフガス流れは、蒸留塔に送られる前に主交換器で凝縮され、主交換器を通して最初に圧縮されリサイクルされる。
【0007】
米国特許第9,816,754号の
図3は、LNG貯蔵タンクからのボイルオフガスが主交換器内で凝縮され、蒸留塔に還流を提供するために使用される代替プロセスを示す。この配置は、蒸留塔からのオーバーヘッド流れの窒素の濃縮をいくらか可能にするが、このプロセスの達成可能な窒素純度は、還流流れがボイルオフガス流れと同じ組成を有するという事実によって制限される。この蒸気は、タンク内のLNGと平衡にあり、必然的に大量のメタンを含む。
【0008】
米国特許第9,816,754号の
図10および米国特許第9,945,604号の構成は、高純度の排除された窒素を生成することができるが、これらの図に示される配置はまた、オーバーヘッド熱交換器での二相冷媒および複数の冷媒の流れの使用に関連する特定の設計、ならびに操作上の困難および複雑さを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、単純かつ効率的な方法で、天然ガス供給流れから窒素を除去し、天然ガス供給流れを液化して窒素枯渇LNG生成物を生成することができる方法およびシステムに対する当技術分野での必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に開示されるのは、LNG生成物が低量の窒素(典型的には1%以下の窒素)を含むことができ、排除された窒素が、大気への排出または高純度の窒素生成物(典型的には99%の窒素またはより純度の高い窒素)として使用するのに十分に純粋であり得るように、窒素含有天然ガスを液化する一方で、単純かつ効率的な方法で、それから窒素を同時に分離し、除去する方法およびシステムである。上記方法およびシステムは、低コストでLNG生成物から窒素を効率的に排除することを可能にし、特に、内部または外部の燃料需要が低い(プラントを介して、他の方法で窒素を排除することができる)プラントに有用である。
【0011】
本発明によるシステムおよび方法のいくつかの好ましい態様を以下に概説する。
【0012】
態様1天然ガス供給流れを液化し、およびそれから窒素を除去するための方法であって、方法は、
(a)窒素含有天然ガス供給流れを主熱交換器に通し、第1の冷媒との間接的な熱交換を介して主熱交換器内で天然ガス流れを冷却および液化し、それにより第1のLNG流れを生成することと、
(b)主熱交換器から第1のLNG流れを回収することと、
(c)第1のLNG流れを膨張させ、該流れを、該流れが部分的に蒸発し、窒素富化オーバーヘッド蒸気および窒素枯渇底液に分離される蒸留塔中に導入することと、
(d)蒸留塔から窒素枯渇底液の流れを回収して、第2の窒素枯渇LNG流れを形成することと、
(e)窒素富化オーバーヘッド蒸気の流れをオーバーヘッド熱交換器内で加温して、加温されたオーバーヘッド蒸気を形成することと、
(f)加温されたオーバーヘッド蒸気の第1の部分から形成されたリサイクル流れを圧縮、冷却および液化し、過冷却および膨張させて液体または二相リサイクル流れを形成し、該液体または二相リサイクル流れを蒸留塔に導入して蒸留塔に還流を提供することと、
(h)加温されたオーバーヘッド蒸気の第2の部分から1つ以上の窒素生成物流れまたは排出流れを形成することと、を含み、
工程(f)において、天然ガス供給流れとは別に、該リサイクル流れの少なくとも一部を主熱交換器に通すことによって、リサイクル流れの少なくとも一部が第1の冷媒との間接的な熱交換を介して液化され、
工程(f)において、リサイクル流れの少なくとも一部をオーバーヘッド熱交換器に通すことによって、リサイクル流れが窒素富化オーバーヘッド蒸気との間接的な熱交換を介して過冷却され、
オーバーヘッド熱交換器が主熱交換器とは別個であり、オーバーヘッド熱交換器の冷却機能の全てが、工程(e)における窒素富化オーバーヘッド蒸気の流れの加温によって提供される、方法。
【0013】
態様2オーバーヘッド熱交換器が、シェル内に収容され、かつ熱交換器の管側およびシェルを画定する1つ以上の管束を含むコイル巻き熱交換器であり、工程(e)において、窒素富化オーバーヘッド蒸気の流れがオーバーヘッド熱交換器のシェル側を通過しながら加温され、工程(f)において、リサイクル流れの少なくとも一部をオーバーヘッド熱交換器の管側に通すことによって、リサイクル流れが過冷却される、態様1に記載の方法。
【0014】
態様3オーバーヘッド熱交換器が、蒸留塔と一体化され、1つ以上の管束が蒸留塔の上部内に配置され、オーバーヘッド熱交換器のシェルが蒸留塔の上部を形成している、態様2に記載の方法。
【0015】
態様4オーバーヘッド熱交換器が、温かい熱交換器セクションおよび冷たい熱交換器セクションを含み、工程(f)において、リサイクル流れの少なくとも一部を冷たい熱交換器セクションに通すことによって、リサイクル流れが過冷却される、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
態様5工程(f)において、リサイクル流れの一部または全部を温かい熱交換器セクションに通すことによって、該リサイクル流れの一部または全部が冷却される、態様4に記載の方法。
【0017】
態様6天然ガスまたは第1の冷媒のうちの1つ以上の流れが、該流れ(複数可)を温かい熱交換器セクションに通すことによって冷却される、態様4または5に記載の方法。
【0018】
態様7工程(f)において、液化されたリサイクル流れを形成するために流れを主熱交換器に通すことによって、リサイクル流れの全部が第1の冷媒との間接的な熱交換を介して液化される、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
態様8工程(f)において、液化されたリサイクル流れの全部をオーバーヘッド熱交換器に通すことによって、リサイクル流れが過冷却される、態様7に記載の方法。
【0020】
態様9工程(f)において、過冷却された部分を形成するために液化されたリサイクル流れの第1の部分をオーバーヘッド熱交換器に通すことによって、リサイクル流れが過冷却され、液化されたリサイクル流れの第2の部分がオーバーヘッド熱交換器をバイパスし、次いで過冷却された部分と混合され、蒸留塔に還流を提供する液体または二相リサイクル流れを形成するために、過冷却された部分および第2の部分が混合される前または後に膨張される、態様7に記載の方法。
【0021】
態様10工程(f)において、第1の液化された部分を形成するためにリサイクル流れの第1の部分を主熱交換器に通すことによって、該リサイクル流れの第1の部分が第1の冷媒との間接的な熱交換を介して液化され、第2の液化および過冷却された部分を形成するためにオーバーヘッド熱交換器を通すことによって、リサイクル流れの第2の部分が液化および過冷却され、第1の液化された部分ならびに第2の液化および過冷却された部分が次いで混合され、蒸留塔に還流を提供する液体または二相リサイクル流れを形成するために、第1の液化された部分ならびに第2の液化および過冷却された部分が混合される前または後に膨張される、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
態様11第1のLNG流れが、工程(c)において、蒸留塔の中間の場所で蒸留塔に導入される、態様1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0023】
態様12工程(c)が、第1のLNG流れを蒸留塔内に導入する前に、第1のLNG流れを再沸騰熱交換器内で冷却することをさらに含み、
方法は、蒸留塔に沸騰をもたらすように、第1のLNG流れとの間接的な熱交換を介して、再沸騰熱交換器中の窒素枯渇底液の一部を加温および蒸発することをさらに含む、態様11に記載の方法。
【0024】
態様13工程(b)において、第1のLNG流れが、主熱交換器の冷たい終端から回収され、工程(f)において、主熱交換器内で液化されたリサイクル流れの少なくとも一部が、主熱交換器の冷たい終端から回収される、態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
態様14工程(b)において、第1のLNG流れが、約220~250°F(約140~-155℃)の温度で主熱交換器から回収される、態様1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
態様15工程(f)において、主熱交換器内で液化されるリサイクル流れの少なくとも一部が、約-220~-250°F(約140~-155℃)の温度で主熱交換器から回収される、態様1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
態様16窒素富化オーバーヘッド蒸気が、約-300~-320°F(-185~-195℃)の温度でオーバーヘッド熱交換器の冷たい終端に入る、態様1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
態様17第1の冷媒が、工程(a)において主熱交換器内の天然ガス流れを液化するための、および工程(f)において主熱交換器内のリサイクル流れの少なくとも一部を液化するための冷却機能を提供するために主熱交換器を通る際に蒸発する冷媒である、態様1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
態様18工程(f)において、主熱交換器の内部で液化されるリサイクル流れの少なくとも一部が、第1の冷媒が主熱交換器の内部で蒸発し始める温度よりも0~10°F(0~5℃)高い温度で液化を終了するような圧力にリサイクル流れが圧縮される、態様17に記載の方法。
【0030】
態様19天然ガス供給流れを液化し、およびそれから窒素を除去するためのシステムであって、システムは、
窒素含有天然ガス供給流れを受け取るための1つ以上の通路を含む温かい側と、第1の冷媒の流れを受け取るための1つ以上の通路を含む冷たい側と、を有する主熱交換器であって、温かい側と冷たい側が、窒素含有天然ガス供給流れが温かい側を通るときに、冷たい側を通る第1の冷媒の流れとの間接的な熱交換によって冷却および液化され、それにより第1のLNG流れを生成するように構成されている、主熱交換器と、
主熱交換器の冷たい側に第1の冷媒の冷却された流れを供給し、主熱交換器の冷たい側から第1の冷媒の流れの加温された流れを回収する第1の冷媒回路と、
第1のLNG流れを受け取って膨張させるために主熱交換器と流体流連通状態にある膨張装置と、
膨張装置から第1のLNG流れを受け取るための、膨張装置と流体流連通状態にある蒸留塔であって、第1のLNG流れが蒸留塔の内部で部分的に蒸発され、窒素富化オーバーヘッド蒸気および窒素枯渇底液に分離される、蒸留塔と、
蒸留塔から窒素枯渇底液の流れを回収して、第2の窒素枯渇LNG流れを形成するための導管と、
窒素富化オーバーヘッド蒸気の流れを受け取るための1つ以上の通路を含む冷たい側と、1つ以上の通路を含む温かい側と、を有するオーバーヘッド熱交換器であって、温かい側と冷たい側が、冷たい側を通る窒素富化オーバーヘッド蒸気が温かい側を通る流体との間接的な熱交換によって加温され、それによって加温されたオーバーヘッド蒸気を生成するように構成されている、オーバーヘッド熱交換器と、
加温されたオーバーヘッド蒸気の第1の部分から形成されたリサイクル流れを圧縮、冷却および液化し、過冷却および膨張させて液体または二相リサイクル流れを形成し、該液体または二相リサイクル流れを蒸留塔に導入して蒸留塔に還流を提供するための還流回路と、
システムから、加温されたオーバーヘッド蒸気の第2の部分から形成された1つ以上の窒素生成物流れまたは排出流れを回収するための1つ以上の導管と、を含み、
還流回路は、天然ガス供給流れとは別に、該リサイクル流れの少なくとも一部を主熱交換器の温かい側における1つ以上の通路に通すことによって、該リサイクル流の少なくとも一部が第1の冷媒との間接的な熱交換を介して液化するように構成されており、
還流回路は、リサイクル流れの少なくとも一部をオーバーヘッド熱交換器の温かい側における該通路のうちの1つ以上に通すことによって、リサイクル流れが窒素富化オーバーヘッド蒸気との間接的な熱交換を介して過冷却されるように構成されており、
オーバーヘッド熱交換器が主熱交換器とは別個であり、システムは、窒素富化オーバーヘッド蒸気の流れがオーバーヘッド熱交換器の冷たい側を通る唯一の流れであり、したがってオーバーヘッド熱交換器のために冷却機能の全てを提供するように構成されている、システム。
【0031】
態様20オーバーヘッド熱交換器が、シェル内に収容される1つ以上の管束を含み、かつ熱交換器の管側およびシェルを画定するコイル巻き熱交換器であり、シェル側が、熱交換器の冷たい側であり、管側が、熱交換器の温かい側である、態様19に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、天然ガス流れから窒素を液化および除去するための、本発明に従わない比較方法およびシステムを示す概略流れ図である。
【0033】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による、天然ガス流れから窒素を液化および除去するための方法およびシステムを示す概略流れ図である。
【0034】
【
図3】
図3は、本発明の別の実施形態による、天然ガス流れから窒素を液化および除去するための方法およびシステムを示す概略流れ図である。
【0035】
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態による、天然ガス流れから窒素を液化および除去するための方法およびシステムを示す概略流れ図である。
【0036】
【
図5】
図5は、粗ヘリウム流れの追加の分離および回収を可能にする、
図2に示される方法およびシステムへの変更を示す概略流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求の範囲に記載される本発明の実施形態のいずれかの特徴に適用される場合、1つ以上を意味する。「a」および「an」の使用は、そのような制限が具体的に記述されない限り、意味を単一の特徴に限定するものではない。冠詞「the」の先行する単数または複数の名詞または名詞句は、1つの特別な特定の特徴または複数の特別な特定の特徴を表し、それが使用される文脈に応じて単数または複数の意味を有し得る。
【0038】
本明細書で文字が方法の列挙された工程(例えば、(a)、(b)、および(c))を識別するために使用される場合、これらの文字は、単に方法工程に言及するのを助けるために使用され、そのような順序が具体的に列挙されない限り、かつその範囲においてのみ、特許請求された工程が実行される特定の順序を示すことを意図しない。
【0039】
特に明記しない限り、本明細書で言及されるいずれかのおよび全ての割合は、モルパーセントを示すものとして理解されたい。特に明記しない限り、本明細書で言及されるいずれかのおよび全ての圧力は、絶対圧力(ゲージ圧力+大気圧)を示すものとして理解されたい。
【0040】
本明細書で方法またはシステムの列挙された特徴を識別するために使用される場合、用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、そのような順序が具体的に列挙されない限り、かつその範囲においてのみ、単に当該の特徴に言及し、それらを区別するのを助けるために使用され、特徴のいずれかの特定の順序を示すことを意図しない。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「天然ガス供給流れ」はまた、合成および/または置換天然ガスを含むガスおよび流れ、ならびにLNG貯蔵タンクからのボイルオフガスを含むか、またはそれからなる流れなどのリサイクルされた天然ガス流れも包含する。天然ガスの主要成分はメタンであり、天然ガス供給流れは典型的には、少なくとも85%、より多くの場合、少なくとも90%がメタンである。自明であるように、「窒素含有天然ガス供給流れ」は、窒素も含む天然ガス流れであり、典型的には1~10%の窒素濃度を有することになる。少量で供給流れ中に存在し得る未加工または粗天然ガスの他の典型的な成分は、他のより重い炭化水素(エタン、プロパン、ブタン、ペンタンなど)、ヘリウム、水素、二酸化炭素および/または他の酸ガス、ならびに水銀を含む。しかしながら、主熱交換器内を通り、冷却および液化される天然ガス供給流れは、必要に応じて、水分、酸ガス、水銀、および/またはより重い炭化水素などのいずれかの(比較的)高い凍結点成分のレベルを、主熱交換器内の凍結または他の動作上の問題を回避するために必要なレベルまで低減するために前処理される。
【0042】
本明細書で使用される場合、かつ別段の指示がない限り、流れまたは蒸気中の窒素の濃度が、天然ガス供給流れを含む窒素中の窒素の濃度よりも高い場合、流れまたは蒸気は「窒素富化」である。流れまたは蒸気は、流れまたは蒸気中の窒素の濃度が、天然ガス供給流れを含む窒素中の窒素の濃度よりも低い場合、「窒素枯渇」である。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「間接的な熱交換」は、2つの流体が、なんらかの形態の物理的バリアによって互いに分離して維持される、2つの流体間の熱交換を指す。
【0044】
本明細書で言及されるように、用語「熱交換器」は、2つ以上の流れ間で間接的な熱交換が行われているいずれかの装置またはシステムを指す。別段の指示がない限り、熱交換器は、直列および/または並列に配置された1つ以上の熱交換器セクションから構成されてよく、ここで「熱交換器セクション」は、2つ以上の流れ間で間接的な熱交換が行われている熱交換器の一部である。そのような各セクションは、独自のハウジングを有する別個のユニットを構成してもよいが、同様にセクションは、共通ハウジングを共有する単一の熱交換器ユニットに組み合わされてもよい。別段の指示がない限り、熱交換器ユニット(複数可)は、シェルおよび管、コイル巻き、またはプレートおよびフィンタイプの熱交換器ユニットなどのいずれかの好適なタイプであってもよいが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「温かい」および「冷たい」は相対的な用語であり、特に指示されない限り、いずれかの特定の温度範囲を暗示することを意図しない。
【0046】
本明細書で使用される場合、熱交換器または熱交換器セクションの「温かい終端」および「冷たい終端」は、熱交換器または熱交換器セクションの端部を指し、その熱交換器または熱交換器セクションの(それぞれ)最高および最低温度の端部である。熱交換器の「中間の場所」とは、温かい終端と冷たい終端との間、典型的には直列である2つの熱交換器セクションの間の場所を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、熱交換器または熱交換器セクションの「温かい側」という用語は、冷たい側を流れる流体との間接的な熱交換によって冷却される流体の1つ以上の流れが通る側を指す。温かい側は、単一の流体流れを受け取るための熱交換器もしくは熱交換器セクションを通る単一の通路、または熱交換器もしくは熱交換器セクションを通る際に互いに分離して維持される同じもしくは異なる流体の複数の流体流れを受け取るための熱交換器もしくは熱交換器セクションを通る2つ以上の通路を画定してもよい。同様に、熱交換器または熱交換器セクションの「冷たい側」という用語は、温かい側を流れる流体との間接的な熱交換によって加温される流体の1つ以上の流れが通る側を指す。冷たい側は同様に、単一の流体流れを受け取るための熱交換器もしくは熱交換器セクションを通る単一の通路、または熱交換器もしくは熱交換器セクションを通る際に互いに分離して維持される複数の流体流れを受け取るための熱交換器もしくは熱交換器セクションを通る2つ以上の通路を画定してもよい。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「冷たい熱交換器セクション」および「温かい熱交換器セクション」は、同じ熱交換器に関して使用されるとき、直列に配置される2つの熱交換器セクションを指し、冷たい熱交換器セクションは、熱交換器の冷たい終端に近いセクションであり、温かい熱交換器セクションは、熱交換器セクションの温かい終端に近いセクションである。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「主熱交換器」は、天然ガス供給流れを冷却および液化して第1のLNG流れを生成することに関与する熱交換器を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「蒸気」または「蒸発した」は、気体相にある流体、またはその流体の臨界点密度よりも小さい密度を有する流体に対する超臨界流体に関する流体を指す。本明細書で使用される場合、用語「液体」または「液化」は、液体相にある流体、またはその流体の臨界点密度よりも大きい密度を有する流体に対する超臨界流体に関する流体を指す。本明細書で使用される場合、用語「二相」または「部分的に蒸発した」は、気体相および液体相の両方を含む、亜臨界流体(特にその流れ)を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「液化」は、蒸気から液体への流体または流体の流れの(典型的には、冷却による)変換を指す。本明細書で使用される場合、用語「過冷却」は、既に完全に液化された流体または流体の流れのさらなる冷却を指す。本明細書で使用される場合、用語「蒸発する」は、流体または流体の流れの、液体から蒸気への(典型的には、加温による)変換を指す。本明細書で使用される場合、用語「部分的に蒸発する」は、流体の流れに関連して、流れ内の流体のなんらかの、液体から蒸気への変換を指し、それによって、二相の流れをもたらす。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「コイル巻き熱交換器」は、「シェル」として知られるハウジングに封入された1つ以上の管束を含む、当該技術分野で既知の種類の熱交換器を指し、各管束は、独自のシェルを有してもよく、または2つ以上の管束は、共通のシェルケーシングを共有してもよい。各管束は、熱交換器セクションを表し得、束の管側(束内の管の内部)は典型的に、該セクションの温かい側を表し、セクションを通る1つ以上の通路を画定し、束のシェル側(シェルの内部と管の外部との間のおよびそれらによって画定される空間)は典型的に、セクションを通る単一の通路を画定する該セクションの冷たい側を表し得る。コイル巻き熱交換器は、堅牢性、安全性、および熱伝達効率で知られる熱交換器のコンパクトな設計であり、したがって、それらのフットプリントと比較して非常に効率的なレベルの熱交換を提供する利点がある。しかしながら、シェル側は、熱交換器セクションを通る単一の通路のみを画定するため、該熱交換器セクションのシェル側(すなわち、典型的には冷たい側)内の冷媒の流れを混合することなしに、各コイル巻き熱交換器セクションのシェル側で冷媒の2つ以上の流れを使用することは不可能である。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「蒸留塔」は、1つ以上の分離セクションを含む塔(または塔のセット)を指し、各分離セクションは、接触を増加させ、したがって、上昇気体と、塔内のセクションを流れる下方へ流れる液体との間の質量移動を高める1つ以上の分離ステージ(例えば、パッキンおよび/またはトレイなどのインサートを含む)から構成される。このようにして、オーバーヘッド蒸気中のより軽い成分(窒素など)の濃度が増加し、底液中のより重い成分(メタンなど)の濃度が増加する。用語「オーバーヘッド蒸気」は、塔の上部に集まる蒸気を指す。用語「底液」は、塔の下部に集まる液体を指す。塔の「上部」は、分離セクションの上の塔の部分を指す。塔の「下部」は、分離セクションの下の塔の部分を指す。塔の「中間の場所」は、塔の上部と下部との間、典型的には直列である2つの分離セクションの間の場所を指す。用語「還流」は、塔の上部から下向きに流れる液体の供給源を指す。用語「沸騰」は、塔の下部から上昇する蒸気の供給源を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「オーバーヘッド熱交換器」は、蒸留塔オーバーヘッド蒸気から冷熱を回収する熱交換器を指し、用語「再沸騰熱交換器」は、蒸留塔底液の一部を加温し、蒸発させて蒸留塔に沸騰をもたらす熱交換器を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「冷媒回路」は、冷却された冷媒を熱交換器または熱交換器セクションの冷たい側に供給し、該熱交換器または熱交換器セクションに冷却機能を提供するために、加温された冷媒を熱交換器または熱交換器セクションの冷たい側から回収するために必要な構成要素の集合を指す。また、熱交換器に再供給するために冷却された冷媒を再生するように、該加温された冷媒を圧縮、冷却、および膨張させることによって、該加温された冷媒の少なくとも一部をリサイクルするために必要なこれらの構成要素を含んでもよい。したがって、冷媒回路は、典型的には、1つ以上の圧縮機、アフタークーラー、膨張装置、および関連する導管を含み得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「膨張装置」は、流体を膨張させ、それによって圧力を下げるのに好適ないずれかの装置または装置の集合を指す。流体を膨張させるための好適なタイプの膨張装置には、これらに限定されないが:流体が作用膨張され、それによって流体の圧力および温度を下げるタービン;および流体がスロットルされ、それによってジュール-トムソン膨張を介して流体の圧力および温度を下げるジュール-トムソンバルブ(J-Tバルブとしても知られる)が含まれる。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「流体流連通」は、言及される流れ(複数可)が当該の装置または構成要素によって送り出され、受け取られ得るように、当該の装置または構成要素が互いに接続されていることを示す。装置または構成要素を、例えば、当該の流れ(複数可)を移送するための好適な管、通路、または他の形態の導管によって接続してもよく、また、それらを分離することができるシステムの他の構成要素を介して、例えば、1つ以上のバルブ、ゲート、または流体の流れを選択的に制限または誘導することができる他の装置などを介して連結してもよい。
【0058】
ここで、単なる例として、比較配置および本発明の様々な例示的実施形態を
図1~
図4を参照して説明する。これらの図において、前図と共通の特徴がある場合、その特徴には、100ずつ増加する同じ参照番号が割り当てられている。例えば、
図1の特徴が参照番号110を有する場合、
図2の同じ特徴は参照番号210を有し、
図3では参照番号310を有する。
【0059】
ここで
図1を参照すると、本発明に従わない比較配置による天然ガス液化方法およびシステムが示されている。
図1は、米国特許第9,945,604号の
図1に開示されるものと同様の、天然ガス流れから窒素を液化および除去するための方法およびシステムを示す。
【0060】
天然ガス供給流れ100を含む窒素は、主熱交換器102の温かい側に通され、冷却され、液化され、それによって第1のLNG流れ104を生成し、天然ガス供給流れは、主熱交換器102の冷たい側で流れ、加温され、蒸発される混合冷媒との間接的な熱交換を介して冷却され、液化される。
図1に示される配置では、主熱交換器102は、3つの管束の形態の3つの熱交換器セクション、すなわち、温かいセクション/管束102A、中間セクション/管束102B、および冷たいセクション/管束102Cを含み、これらは全て単一のシェル内に収容され、天然ガス供給流れは、主熱交換器102の管側を通って流れ、冷却および液化され、第1の冷媒は、主熱交換器102のシェル側を通って流れ、加温される、コイル巻き熱交換器である。しかしながら、代替的な配置では、熱交換器は、より多くもしくはより少ない管束を有してもよく、または管束は、適切な管を介して相互接続された別個のシェルに収容されてもよい。同様に、さらに他の配置では、例えば、異なるタイプのシェルおよび管熱交換器またはプレートおよびフィン熱交換器などの他のタイプの熱交換器を使用することができ、そのような熱交換器は、任意の数の熱交換器セクションを含み得る。
【0061】
主熱交換器102に冷媒を提供するために使用される、
図1に示される混合冷媒サイクルは、ほぼ従来の単一混合冷媒(SMR)サイクルであり、したがって、ごく手短に説明する。主熱交換器102の温かい終端から出る加温された混合冷媒151は、圧縮機152内で圧縮され、アフタークーラー153内で冷却され、相分離器154内で液体流れ155および蒸気流れに分離される。蒸気流れは、圧縮機156内でさらに圧縮され、アフタークーラー157内で冷却され、相分離器158内で液体流れ159および蒸気流れ160に分離される。全てのアフタークーラーで、典型的には、冷却液として、例えば、空気または水などの周囲温度流体を使用する。
【0062】
液体流れ155および159は、J-Tバルブを通って減圧される前に、主熱交換器102の温かいセクション102Aの管側を通り、過冷却され、組み合わされて、温かいセクション102Aのシェル側を通る冷たい冷媒流れ161を形成し、そこで蒸発し、加温されて、該セクションに冷媒を提供する。蒸気流れ160は、主熱交換器102の温かいセクション102Aの管側内を通り、冷却され、部分的に液化され、次いで相分離器162内で蒸気流れ164および液体流れ163に分離される。液体流れ163は、J-Tバルブを通って減圧される前に、主熱交換器102の中間セクション102 Bの管側を通り、過冷却されて、冷たい冷媒流れ165を形成し、冷たい冷媒流れ165は、中間セクション102Bおよび温かいセクション102Aのシェル側を通り、そこで蒸発および加温されて、冷媒を該セクションに提供する(温かいセクション102Aのシェル側で、流れ161からの冷媒と混合される)。蒸気流れ164は、主熱交換器102の中間102Bセクションおよび冷たい102Cセクションを通り、液化および過冷却され、主熱交換器の冷たい終端を冷たい冷媒流れ166として出て、その大部分はJ-Tバルブを通して膨張されて、冷たい、中間、および温かいセクション102C、102B、および102Aのシェル側を通る冷たい冷媒流れ167を提供し、ここで、蒸発および加温されて、該セクションに冷媒を提供する(中間セクション102Bのシェル側で、流れ165からの冷媒と混合され、さらに温かいセクション102Aのシェル側で、流れ161からの冷媒と混合される)。
【0063】
図1に示される混合冷媒サイクルは、米国特許第9,945,604号の
図1に示され、これに関連して説明されるものと同じであるため、該混合冷媒サイクルの動作に関するさらなる詳細は、後者の文献に見出すことができ、その内容は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0064】
第1のLNG流れ104は、約-240°F(-150℃)の温度で主熱交換器の冷たい終端から出ていく。次に、第1のLNG流れ104は、再沸騰熱交換器106の温かい側を通ることによってさらに冷却され、2つの分離セクションの間、塔の中間の場所で蒸留塔110内に導入される前にJ-Tバルブ108を通ることによって膨張される。蒸留塔内で、第1のLNG流れを部分的に蒸発させ、窒素富化オーバーヘッド蒸気および窒素枯渇底液に分離する。底液の流れ141は、蒸留塔110に沸騰をもたらすために、第1のLNG流れ104との間接的な熱交換を介して、再沸騰熱交換器106の冷たい側を通り、そこで加温されて、少なくとも部分的に蒸発する。底液の別の流れ132は、蒸留塔の下部から回収されて、窒素枯渇LNG生成物として直接取り出され得るか、または最初にLNG貯蔵タンク(図示せず)に貯蔵され得る第2の窒素枯渇LNG流れを形成する。
【0065】
蒸留塔110への還流は、窒素富化オーバーヘッド蒸気の一部をリサイクルおよび凝縮(液化)することによって提供される。オーバーヘッド蒸気112の流れは、オーバーヘッド熱交換器114の冷たい側を通ることによって周囲温度近くまで加温され、次いで2つの部分に分割される。第1の部分は、蒸留塔に還流を提供するために使用されるリサイクル流れ118、133、130を形成し、第2の部分は、大気中に排出される窒素排出流れ116を形成する。リサイクル流れ118は、圧縮機120内で高圧に圧縮され、アフタークーラー内で冷却され、次に圧縮流れ133はオーバーヘッド熱交換器114の温かい側を通り、そこでJ-Tバルブ143内で膨張される前に、流れ112との間接的な熱交換を介して冷却され、液化され、過冷却されて、還流を提供するために蒸留塔の上部に導入される液体または二相リサイクル流れ130を形成する。
【0066】
オーバーヘッド熱交換器114内の冷却曲線、したがってプロセスの効率を改善するために、主熱交換器102内で使用される混合冷媒もまた、オーバーヘッド熱交換器114に追加の冷媒を提供するために使用される。より具体的には、冷たい冷媒流れ166のわずかな部分(典型的には20%未満)が流れ122として回収され、J-Tバルブ124を通して減圧されて二相混合冷媒流れ128を形成する。次いで、この流れ128は、オーバーヘッド熱交換器114の温かい側に通され、加温され、部分的に蒸発し、オーバーヘッド熱交換器114内のリサイクル流れ133の冷却および液化のための追加の冷却機能を提供し、得られた加温され、部分的に蒸発した混合冷媒流れ126は、中間および温かいセクション102Bおよび102Aのシェル側を通る冷たい冷媒流れ165と組み合わされることを介して主熱交換器に戻される。
【0067】
上述のように、
図1は、米国特許第9,945,604号に示されるものと同様の、天然ガス流れから窒素を液化および除去するための方法およびシステムを示すが、
図1のオーバーヘッド熱交換器114は、米国特許第9,945,604号に示されるものとある特定の点で異なることに留意されたい。特に、
図1のオーバーヘッド熱交換器114は、3つの熱交換器セクション、すなわち、冷たい、中間、および温かいセクション114A、114B、および114Cを含み、主熱交換器166からの混合冷媒流れ128は、オーバーヘッド熱交換器の中間セクション114Bのみを通り、加温される。その理由は、蒸留塔110からのオーバーヘッド蒸気流れ112が混合冷媒流れ128よりも著しく冷たくなるからである。したがって、冷たい熱交換器セクション114A内のリサイクル流れ133を過冷却する冷却機能を提供するためにオーバーヘッド蒸気流れ112のみを使用する方が効率的である。
【0068】
ここで
図2を参照すると、本発明の一実施形態による、天然ガス流れから窒素を液化および除去するための方法およびシステムが示されている。
【0069】
窒素含有天然ガス供給流れ200、201が、主熱交換器236の温かい側に通され、冷却され、液化され、それによって第1のLNG流れ204を生成し、天然ガス供給流れは、主熱交換器236の冷たい側を流れる第1の冷媒(図示せず)との間接的な熱交換を介して冷却され、液化される。窒素含有天然ガス供給流れ200は、典型的には周囲温度であり、典型的には、約600~1200psia(40~80bara)の圧力などの高圧であり、必要に応じて、供給流れ中の水分、酸ガス、水銀および/またはより重い炭化水素などのいずれかの(比較的)高い凍結点成分のレベルを、主熱交換器236内の凍結または他の動作上の問題を回避するために必要なレベルまで低減するように、前処理される(図示せず)。代替的または追加的に、重質成分除去工程(図示せず)は、例えば、LPG成分ならびに凍結可能なペンタンおよびより重い成分を供給流れから除去するために、主熱交換器の中間の場所で実施することができ、主熱交換器236の中間の場所から窒素含有天然ガス供給流れ201を回収し、重質成分除去工程を実施し、得られた重質成分枯渇供給流れをその後、主熱交換器236の中間の場所に戻して、供給流れの冷却および液化を完了して、第1のLNG流れ204を形成する。
【0070】
所望される場合、主熱交換器236に窒素含有天然ガス供給流れ200を導入する前に、窒素含有天然ガス供給流れ200のわずかな部分、通常は流れの5%前後が、主熱交換器を迂回する天然ガス流れ203として回収され得る。別の代替として、窒素含有天然ガス供給流れ200、201のわずかな部分、この場合も流れの5%前後は、冷却されたが、まだ液化または完全に液化されていない天然ガス流れ(すなわち、蒸気流れまたは二相流れとして)203Aとして主熱交換器の中間の場所から回収され得、該流れは典型的には、周囲温度と-70°Fとの間(周囲温度と-55℃との間)の温度で回収される。
【0071】
該熱交換器で使用される主熱交換器236および第1の冷媒は、天然ガス流れを冷却および液化するのに好適な任意のタイプのものであり得る。例えば、主熱交換器は、1つ以上の熱交換器セクションを含むコイル巻き熱交換器であり得、第1の冷媒は、
図1を参照して上述したSMRサイクル内で循環する混合冷媒などの蒸発冷媒であり得る。しかしながら、同様に、他のタイプの熱交換器および/または他のタイプの冷媒を使用することができ、多くの好適なタイプの熱交換器および冷媒が当該技術分野で知られている。例えば、主熱交換器は、代替的に、他のタイプのシェルおよび管熱交換器、ならびに/またはプレートおよびフィン熱交換器を含み得、冷媒は、気体膨張サイクル(窒素、メタン、またはエタンを使用した逆ブレイトンサイクルなど)で循環する気体冷媒であり得るか、あるいは二重混合冷媒(DMR)サイクル、プロパン、アンモニア、もしくはHFC予備冷却混合冷媒サイクル、またはカスケードサイクルで循環する蒸発冷媒であり得る。
【0072】
第1のLNG流れ204は、典型的には、主熱交換器236内で約-220°F~-250°F(-140~-155℃)、より好ましくは約-220°F~-240°F(-140~-150℃)の温度で主熱交換器236の冷たい終端で冷却され、次いで典型的には主熱交換器236の冷たい終端から出る。
【0073】
次に、第1のLNG流れ204は、再沸騰熱交換器206の温かい側を通ることによってさらに冷却され、J-Tバルブ208を通ってフラッシュさせることによって膨張され、その後、2つの分離セクションの間の、塔の中間の場所で蒸留塔210に導入される。蒸留塔内で、第1のLNG流れを部分的に蒸発させ、窒素富化オーバーヘッド蒸気および窒素枯渇底液に分離させる。底液の流れ241は、蒸留塔210に沸騰を提供するために、第1のLNG流れ204との間接的な熱交換を介して、再沸騰熱交換器206の冷たい側を通り、そこで加温され、少なくとも部分的に蒸発する。底液の別の流れ232は、蒸留塔の下部から回収されて、窒素枯渇LNG生成物として直接取り出され得るか、または最初にLNG貯蔵タンク(図示せず)に貯蔵され得る第2の窒素枯渇LNG流れを形成する。流れ232は、典型的には、1%以下、好ましくは0.5%以下の窒素含量を有する。
【0074】
第1のLNG流れ204を蒸留塔210に導入する前に、J-Tバルブ208を使用して第1のLNG流れ204を膨張させる代わりに、例えば、液体タービンなどの別の形態の膨張装置を同様に使用することができる。
【0075】
再沸騰熱交換器206は、コイル巻き、シェルおよび管、またはプレートおよびフィン熱交換器など、いずれかの好適なタイプの熱交換器であり得る。蒸留塔とは別個であるとして
図2に示されているが、代わりに、再循環熱交換器は、蒸留塔の下部と統合されてもよい。
【0076】
さらに代替的な配置(図示せず)では、再沸騰熱交換器の使用および蒸留塔(第1のLNG流れの導入点の下の蒸留塔内の分離セクション)内のストリッピングセクションの使用は、両方とも省くことができ、その場合、蒸留塔は蒸留セクション(第1のLNG流れの導入点の上の蒸留塔内の分離セクション)のみを収容する。そのような配置では、第1のLNG流れ204は、膨張されて蒸留塔に導入される前にさらに冷却されず、塔の下部で蒸留塔210に導入され、底液の全ては、第2の窒素枯渇LNG流れ232として回収されることになる。しかしながら、これにより、
図2に示される配置で達成されるものよりも、第2の窒素枯渇LNG流れ232中の窒素の濃度が高くなる。
【0077】
蒸留塔210の上部に集まる窒素富化オーバーヘッド蒸気は、主に窒素であり、典型的には1%未満、好ましくは0.1%未満のメタン含量を有し、典型的には約-300~-320°F(-185~-195℃)、好ましくは約-310°F(-190℃)の温度でその露点にある。窒素富化オーバーヘッド蒸気の流れ212は、蒸留塔210の上部から回収され、オーバーヘッド熱交換器214の冷たい側を通ることによって周囲温度近くまで加温され、加温されたオーバーヘッド蒸気を形成する。
図2に示される配置では、オーバーヘッド熱交換器214は、冷たいセクション214Aおよび温かいセクション214Bを含む2つの熱交換器セクションを有し、窒素富化オーバーヘッド蒸気流れ212は、オーバーヘッド熱交換器214の冷たい終端に導入され、冷たいセクション214A内を通り、加温され、温かいセクション214B内を通り、さらに加温され、オーバーヘッド熱交換器214の温かい終端から回収される。冷たいセクション214Aにおいて、窒素富化オーバーヘッド蒸気流れ212は、以下により詳細に説明されるように、リサイクル流れ234の少なくとも一部との間接的な熱交換を介して加温される。温かいセクション214Bにおいて、低圧窒素ガスは、冷却されることが所望される好適な温度のいずれかのプロセス流れとの間接的な熱交換を介して加温される。例えば、
図2に示されるように、天然ガス流れ203および/または203A(前述の)などの天然ガス流れの1つ以上の流れは、オーバーヘッド熱交換器の温かいセクション214Bの温かい側を通ることによって冷却および液化され得、結果として生じる液化天然ガス流れ(複数可)205は、蒸留塔210に導入される前に第1のLNG流れ204と組み合わされる。代替的または追加的に、また
図2に示されるように、第1の冷媒の流れ203Bは、オーバーヘッド熱交換器の温かいセクション214Bの温かい側に通すことによって冷却されて、主熱交換器236で使用するために戻される第1の冷媒205Aの冷却された流れを形成することができる。例えば、第1の冷媒が
図1を参照して上述したSMRサイクルで循環される混合冷媒である場合、オーバーヘッド熱交換器の温かいセクション214Bに供給される第1の冷媒の流れ203Bは、
図1の流れ160の一部から取り出される周囲温度混合冷媒蒸気流れであってもよく、オーバーヘッド熱交換器の温かいセクション214Bから回収される第1の冷媒205Aの冷却された流れは、膨張され、主熱交換器の冷たい終端で主熱交換器のシェル側に導入される冷たい冷媒流れ167または主熱交換器の中間セクションの冷たい終端で主熱交換器のシェル側に導入される冷たい冷媒流れ165と組み合わせることができる。
【0078】
オーバーヘッド熱交換器214は、コイル巻き、シェルおよび管、またはプレートおよびフィン熱交換器などのいずれかの好適なタイプの熱交換器であってもよいが、好ましくはコイル巻きタイプの熱交換器である。
図2は、オーバーヘッド交換器214の両方のセクションが単一のユニットとして内部に収容れていることを示すが、温かいセクションおよび冷たいセクションは、それぞれ独自のハウジングを有する別個のユニットに同様に配置され得る。同様に、蒸留塔とは別個であるとして
図2に示されているが、オーバーヘッド熱交換器214は、
図4に示される実施形態を参照して以下にさらに説明されるように、代わりに蒸留塔の上部と一体化された好ましい配置にある。
【0079】
オーバーヘッド熱交換器から回収される加温されたオーバーヘッド蒸気を分割し、加温されたオーバーヘッド蒸気の第1の部分が、冷却され、液化され、過冷却され、膨張され、蒸留塔に導入されることによって蒸留塔に還流を提供するために使用されるリサイクル流れ218、233、234、239、237、230を形成し、加温されたオーバーヘッド蒸気の第2の部分が、1つ以上の窒素生成物または排出流れ250、238、216を形成する。以下のさらなる議論から明らかになるように、リサイクル流れ(加温されたオーバーヘッド蒸気の第1の部分)からの窒素生成物/排出流れ(加温されたオーバーヘッド蒸気の第2の部分)の該分割は、もちろん、該リサイクル流れが蒸留塔に導入される前に、該窒素生成物および排出流れの全てが分割され、リサイクル流れから除去されて蒸留塔に還流を提供することを条件として、様々な異なる場所で行われ得る。
【0080】
より具体的には、加温されたオーバーヘッド蒸気の第1の部分は、圧縮器220内で、典型的には500psia超(35bara超)の高圧に圧縮され、(典型的には周囲冷却水または空気を使用して)アフタークーラー221内で冷却されるリサイクル流れ218を形成する。圧縮機220は、周囲インタークーラーを備えた複数の段階を含み得る。次いで、圧縮され、冷却されたリサイクル流れ233は、天然ガス供給流れ201が通る1つ以上の通路とは別個の主熱交換器の温かい側の1つ以上の通路を介して主熱交換器236の温かい側を通り、主熱交換器内の天然ガス供給流れとは別にリサイクル流れを維持する。リサイクル流れが主熱交換器236の温かい側を通ると、第1の冷媒との間接的な熱交換を介して冷却および液化され、主熱交換器の冷たい終端を第1のLNG流れ204の温度に近い温度、すなわち、典型的には約-220°F~-250°F(-140~-155℃)、好ましくは約-220°F~-240°F(-140~-150℃)、最も好ましくは約-230°F~-240°F(-145~-150℃)の温度でリサイクル流れ234として出る。この温度では、リサイクル流れは完全に液体である(または液体様密度、すなわち、流れが超臨界である場合、その臨界点密度よりも大きい密度を有する)。次いで、リサイクル流れ234は、熱交換器の中間の場所(冷たいセクションと温かいセクションとの間)でオーバーヘッド熱交換器214内に導入され、熱交換器の冷たいセクション214Aの温かい側を通り、該セクションの冷たい側を通る窒素富化オーバーヘッド蒸気212との間接的な熱交換を介して過冷却される。オーバーヘッド熱交換器214の冷たい終端を出る過冷却リサイクル流れ239は、典型的には、約-280~290°F(-175~-180℃)の温度であり、次いで、例えば、J-Tバルブ243を通ってフラッシュさせることによって膨張されて、上部蒸留塔210内に導入されて塔に還流を提供する液体または二相リサイクル流れ230を形成する。
【0081】
任意選択的に、リサイクル流れ234の全てをオーバーヘッド熱交換器234に通す代わりに、リサイクル流れ234の第1の部分のみがオーバーヘッド熱交換器234に通され、過冷却流れ239を形成しで、リサイクル流れの第2の部分はオーバーヘッド熱交換器をバイパス流れ237としてバイパスする。次いで、流れ239および237を膨張させ、混合して、上部蒸留塔210内に導入される液体または二相リサイクル流れ230を形成することができる(
図2に示すように、流れ239および237は、例えば、混合される前に別個のJ-Tバルブを通ることによって、別個に膨張させることができるか、または流れ239および237を最初に混合してから膨張させることができる)。そのような配置は、全てのリサイクル流れが該熱交換器を通る場合よりも低温に、オーバーヘッド熱交換器214の214Aの冷たいセクション内で過冷却流れ239を冷却することを可能にし(熱交換器を通って流れるリサイクル流れの数が少なくなり、過冷却を必要とするため)、これは、オーバーヘッド熱交換器214の冷たい終端から出る流れ239の温度が、オーバーヘッド熱交換器214の冷たい終端に入る窒素富化オーバーヘッド蒸気212の温度とより厳密に一致し得、したがって、交換器214の冷たい終端における熱応力を低減することを意味する。この液体窒素生成物流れ238は次いで、該液体窒素生成物の貯蔵を容易にするより低温で利用可能であるため、(以下にさらに説明するように)液体窒素生成物流れ238が過冷却流れ239から分割される場合にも有益であり得る。しかしながら、該バイパス流れの使用および動作を必要とすることによって、プロセスを複雑にする。この代替配置は、バイパス流れ237の使用と同様に、バイパスを使用しない配置と比較して、液体または二相リサイクル流れ230の温度を変化させず、過冷却流れ239はより低温で利用可能であるが、次いで、この流れは、バイパス流れ237と混合されて液体または二相リサイクル流れ230を形成することによってある程度加温されることに留意されたい。
【0082】
上述のように、加温されたオーバーヘッド蒸気の第2の部分は、天然ガス液化システムから回収される1つ以上の窒素生成物または排出流れ250、238、216を形成し、これらの流れは、様々な異なる場所でシステムから回収され得る。例えば、オーバーヘッド蒸気の一部は、圧縮機220内でのリサイクル流れの圧縮の前に、リサイクル流れ218を形成するオーバーヘッド蒸気の部分から分割される窒素排出流れ216を形成することができ、その後、該窒素排出流れ216は大気中に排出される。代替的または追加的に、オーバーヘッド蒸気の一部は、該リサイクル流れが圧縮機220内で圧縮された後であり、主熱交換器236内にリサイクル流れが導入され、冷却され、液化される前に、リサイクル流れ233を形成するオーバーヘッド蒸気の部分から分割される高圧気体窒素生成物流れ250を形成することができる。代替的または追加的に、オーバーヘッド蒸気の一部は、該リサイクル流れがオーバーヘッド熱交換器214の冷たいセクション214A内で過冷却された後、かつリサイクル流れが膨張され蒸留塔210内に導入される前に、リサイクル流れ230を形成するオーバーヘッド蒸気の部分から分割される液体窒素生成物流れ238を形成することができる。
【0083】
好ましい実施形態では、蒸留塔に還流を提供するリサイクル流れ218、233、234、239、237、230を形成する第1の部分と、1つ以上の窒素生成物または排出流れ250、238、216を形成する第2の部分との間の加温されたオーバーヘッド蒸気の分割は、第1の部分がオーバーヘッド熱交換器214を出る加温されたオーバーヘッド蒸気の総流量の約75%であり、第2の部分がオーバーヘッド熱交換器214を出る加温されたオーバーヘッド蒸気の総流量の約25%であるような分割である。
【0084】
図2に示される方法およびシステムは、
図1に示される比較配置よりもいくつかの利点を提供する。
【0085】
図1に示される配置と同様に、
図2に示される方法およびシステムは、非常に高純度の窒素排出流れ216(および/または非常に高純度の窒素生成物流れ250、238)の生成を可能にし、窒素純度は、非常に低い窒素含量を有するLNG生成物232を生成すると同時に、蒸留塔中の還流速度および分離段数によってのみ制限される。
図1に示される配置と同様に、
図2に示される方法およびシステムはまた、主熱交換器で使用される冷媒を使用して、蒸留塔に還流を提供するために蒸留塔から加温されたオーバーヘッド蒸気を液化するための冷却機能の少なくとも一部を提供し、それによってプロセスの効率を向上させる(オーバーヘッド蒸気自体から抽出された冷熱のみが、そのような冷却機能を提供するために使用されるプロセスと比較して)。
【0086】
しかしながら、
図1に示される配置は、オーバーヘッド熱交換器へのおよびオーバーヘッド熱交換器からの二相混合冷媒流れ128および126の移送を必要とし、これは配管の設計を複雑化させ、スラッグのために望ましくない不安定な動作を引き起こし得るが、
図2に示される配置では、該熱交換器に冷却機能を提供するために、オーバーヘッド熱交換器に二相冷媒流れが移送されないか、またはそれは必要ない。
【0087】
同様に、
図1に示される配置は、オーバーヘッド熱交換器の冷たい側に二相冷媒を使用することを必要とし、液体相および蒸気相が均等に分布することを保証するために特別な設計特徴を必要とし得る。例えば、オーバーヘッド熱交換器がプレート-フィン交換器である場合、セパレータおよび注入管などの特殊装置を設けて、全ての通路にわたって相を均等に分散させる必要がある。これらの装置の使用は、コストを増加させる。加えて、二相流は、低流速で不安定になり、相の離脱を引き起こし、大きな内部温度勾配および交換器への潜在的な損傷をもたらし得る。
図2に示される配置では、このような問題が回避されるように、オーバーヘッド熱交換器の冷たい側に二相冷媒は使用されない。
【0088】
図1に示される配置はまた、3つの熱交換器セクションを有するオーバーヘッド熱交換器の使用を必要とし、一方、
図2の方法およびシステムでは、2つの熱交換器セクションのみが必要とされ、オーバーヘッド熱交換器のコストおよび複雑さを低減する。
【0089】
図1に示される配置の別の欠点は、オーバーヘッド蒸気流れ112および混合冷媒流れ128の両方が、互いに分離されたままオーバーヘッド熱交換器114の冷たい側を通ることを必要とすることであり、次いで2つ以上の別個の通路からなる冷たい側を有する熱交換器の使用を必要とする。これは、
図1において、コイル巻き熱交換器をオーバーヘッド熱交換器として使用することを実質的に排除する。
図1のコイル巻き熱交換器114をオーバーヘッド熱交換器として使用するには、コイル巻き熱交換器が通常とは反対の方法で使用されることを必要とし、シェル側が熱交換器の温かい側として使用され、蒸留塔に還流を提供するために冷却、液化、および過冷却されるより高圧なリサイクル流れを受け取り、管側(複数の通路を含む)がより低圧なオーバーヘッド蒸気流れ112および混合冷媒流れ128を受け取る。このような設計は、冷たい流れ112および128の利用可能な圧力低下および管束内の通路に典型的な比較的高い抵抗を考慮すると困難であろう。逆に、
図2の方法およびシステムは、窒素富化オーバーヘッド蒸気流212がオーバーヘッド熱交換器214に全ての冷却機能を提供しており、低抵抗シェル側を単独で通ることができるため、コイル巻き熱交換器をオーバーヘッド熱交換器214として使用することを可能にする。これは、コイル巻き熱交換器が、天然ガス液化エンドフラッシュガス熱交換用途において効率的で信頼性があり堅牢であることが証明されているため、有利である。
【0090】
ここで
図3を参照すると、本発明の代替の実施形態による、天然ガス流れから窒素を液化および除去するための方法およびシステムが示されている。
図3の方法およびシステムは、主にリサイクル流れが冷却され、液化され、および過冷却される方法に関してのみ、
図2に示される配置と異なり、
図3との差異のみを以下に説明する。
【0091】
より具体的には、アフタークーラー321からの圧縮および冷却されたリサイクル流れ333は、この場合、オーバーヘッド熱交換器314の温かい熱交換器セクション314Bの温かい側に通され、冷却される。温かいセクションを出る冷却されたリサイクル流れは、典型的には、それが依然として全てまたはほとんど蒸気である(または蒸気のような密度、すなわち、流れが超臨界である場合、その臨界点密度未満の密度を有する)温度であり、典型的には、約-180°F(-115℃)の温度で温かい熱交換器セクション314Bの冷たい終端を出る。温かいセクションを出る冷却されたリサイクル流れは、次に、第1の部分、流れ340、および第2の部分、流れ345に分割される。典型的には、冷却されたリサイクル流れの分割は、流れの約50%が流れ340を形成し、流れの約50%が流れ345を形成するようにしてもよい。
【0092】
次いで、第1の部分である流れ340は、主熱交換器336の温かい側を通り、そこで第1の冷媒との間接的な熱交換を介して冷却および液化されて、第1の液化部分である流れ342を形成する。より具体的には、流れ340は、天然ガス供給流れ301が通る1つ以上の通路から分離されている主熱交換器の温かい側の1つ以上の通路を介して主熱交換器の温かい側を通る。特に、流れ340は、主熱交換器336の中間の場所に導入されてもよい。例えば、主熱交換器336が
図1に示されるようなコイル巻き熱交換器である場合、流れ340は、中間102Bと冷たい102C束との間の中間の場所に導入され、冷たい束102Cの管側を通り、冷却され、液化され得る。これは、第1のLNG流れ304のものに近い温度、すなわち典型的には約-220°F~-250°F(-140~-155℃)、好ましくは約-220°F~-240°F(-140~-150℃)、最も好ましくは約-230°F~-240°F(-145~-150℃)の温度で、液化流れ342として主熱交換器の冷たい終端から出て、完全に液体である(または液体のような密度、すなわち、流れが超臨界である場合、その臨界点密度よりも大きい密度を有する)。
【0093】
第2の部分、流れ345は、オーバーヘッド熱交換器314の冷たいセクション314Aの温かい側に導入され、通され、そこで該セクションの冷たい側を通る窒素富化オーバーヘッド蒸気312との間接的な熱交換を介して液化され、過冷却されて、第2の液化および過冷却された部分、流れ339を形成する。流れ339は、典型的には、オーバーヘッド熱交換器314の冷たい終端に入る窒素富化オーバーヘッド蒸気312の温度に近い温度でオーバーヘッド熱交換器314の冷たい終端を出る。
【0094】
次いで、流れ339および342を膨張させ、混合して、上部蒸留塔310に導入される液体または二相リサイクル流れ330を形成し、蒸留塔に還流を提供する(
図3に示すように、流れ339および342は、例えば、混合される前に別個のJ-Tバルブを通ることによって別個に膨張させるか、または流れ339および342を最初に混合してから膨張させることができる)。
【0095】
任意選択的に、1つ以上の追加のプロセス流れを、圧縮および冷却されたリサイクル流れ333に加えて(およびそれとは別個に)、オーバーヘッド熱交換器314の温かいセクション314Bの温かい側を通し、加温することができる。例えば、
図2に関連して考察されるように、天然ガス流れ303および/もしくは303A、ならびに/または第1の冷媒303Bの1つ以上の流れなどの1つ以上の天然ガスの流れを、温かいセクション314B内で追加的に冷却することができる。しかしながら、
図2に示される配置と比較して、
図3に示される方法およびシステムでは、該追加のプロセス流れの流量ははるかに低くなり、
図3のように、温かいセクション314B内のホットストリーム機能が主にリサイクル流れ333によって提供され、追加のプロセス流れが、温かいセクション314Bの熱負荷のバランスを取るために使用される。したがって、例えば、天然ガス流れ303が温かいセクション314Bを通る場合、
図3に示される配置において、流れ303の流量は、典型的には、天然ガス供給流れ300の総流量の1%未満になってしまう。
【0096】
図3の配置が
図2の配置よりも優れている1つの潜在的な利点は、オーバーヘッド熱交換器内の窒素富化オーバーヘッド蒸気流れ312の潜在的な汚染が回避および緩和されやすいことである。オーバーヘッド熱交換器を通るいずれかの追加のプロセス流れ303、303A、303Bの流れは、温かいセクション314B内の漏れが検出された場合に停止されてもよい。この場合、必要に応じて、温かい終端温度差および得られる熱応力を最小限に抑えるために、温かいセクション314Bの熱負荷のバランスを取ることは、該部分392がオーバーヘッド熱交換器314の温かいセクション314Bをバイバスし、そこでさらに加温されないように、バイパスラインを介して冷たいセクション314Aと温かいセクション314Bとの間で、オーバーヘッド熱交換器314の冷たい側から窒素富化オーバーヘッド蒸気の一部392を回収することによって達成することができる。
【0097】
ここで
図4を参照すると、本発明の別の実施形態による、天然ガス流れから窒素を液化および除去するための方法およびシステムが示されている。
図4に示される配置は、
図2に示される実施形態の好ましい変形例を表し、オーバーヘッド熱交換器414は、蒸留塔の上部と一体化されている。この変形例は、
図3に示す実施形態に同様に適用可能である。
【0098】
より具体的には、
図4に示される配置において、オーバーヘッド熱交換器414は、蒸留塔410の上部440と一体化されたコイル巻き熱交換器であり、オーバーヘッド熱交換器の冷たいおよび温かいセクションは、それぞれ、冷たい管束414Aおよび温かい管束414Bを含み、冷たい管束414Aおよび温かい管束414Bは、蒸留塔の上部440内に位置し、オーバーヘッド熱交換器のシェルは、蒸留塔シェルの上部を形成する。
【0099】
オーバーヘッド熱交換器414の冷たい終端の下の蒸留塔410の上部440に集まる窒素富化オーバーヘッド蒸気の流れ412は、次に、オーバーヘッド熱交換器414のシェル側を通り(これもまた蒸留塔シェルの上部も形成する)、冷たい414Aおよび温かい414B管束の管側を通る流れとの間接的な熱交換を介して周囲温度近くまで加温され、上で論じたように、第1および第2の部分に分割される加温されたオーバーヘッド蒸気として、オーバーヘッド熱交換器414の温かい終端(および蒸留塔410の上部)を出る:第1の部分は、冷却および液化、過冷却、膨張され、蒸留塔410の上部440(オーバーヘッド熱交換器414の冷たい終端の下)に導入されることによって蒸留塔に還流を提供するために使用されるリサイクル流れ418、433、434、439、430を形成する;および第2の部分は、1つ以上の窒素生成物流れ438または排出流れ416を形成する。
【0100】
図4に示される配置の利点は、窒素富化蒸気流れ212を移送するために、塔210と交換器214との間に
図2の配置で必要とされる相互接続配管およびノズルが、関連する圧力降下と共に除去されることである。窒素富化蒸気流れ212は低圧であるため、
図2の配置では非常に大口径の低温管を必要とする。
図4の配置では、窒素富化オーバーヘッド蒸気流れ412は、シェルの全直径を使用して蒸留塔410/オーバーヘッド熱交換器414シェルを流れる。オーバーヘッド熱交換器の冷たい熱交換器セクションと温かい熱交換器セクションとの間のいずれかの低圧配管も同様に除去され、窒素富化オーバーヘッド蒸気は管束414Aと414Bとの間のシェル内で上に流れる。
図4に示すこの配置はまた、システムのプロット空間を最小限に抑え、ここでも頑丈なコイル巻き交換器を使用し、一過性動作に起因する熱応力による損傷の可能性を最小限に抑える。
【0101】
ここで
図5を参照すると、粗ヘリウム流れの追加の分離および回収を可能にする、
図2の方法およびシステムに対する任意の変更が示され、この変更は、
図3および
図4に示される実施形態に同様に適用可能である。
【0102】
より具体的には、
図5に示される変更では、オーバーヘッド熱交換器214の冷たい終端から出る過冷却リサイクル流れ239は、少量のヘリウムを含み、膨張され、蒸留塔210の上部に直接導入される代わりに、例えば、J-Tバルブ570を通して約20~120psia(1.4~8.3bara)の中間圧力まで膨張され、流れ中に含まれる微量のヘリウムの約90~95%を含む流れに少量の蒸気を形成する。得られた流れはドラム572内で分離され、ヘリウム含有蒸気574は、熱交換器576内で約-315°F(-190℃)の温度に冷却され、部分的に凝縮され、次いでドラム578を使用して液体窒素流れ580および粗ヘリウム流れ582に分離される。流れ582は、約80%のヘリウム含量を有する。液体窒素流れ580は、例えば、J-Tバルブ584を横切って1~10psig(0.07~0.7barg)の圧力までフラッシュさせることによって膨張され、次いで熱交換器576中で蒸発し、冷たい流れ574に冷媒を提供し、排出される。粗ヘリウム流れ582は、製品として貯蔵されるか、またはさらなる精製のためにヘリウム精製ユニットに送られる前に、冷媒を提供する熱交換器576内で加温される。ドラム572からの液体を回収し、膨張させて液体または二相リサイクル流れ230を形成し、これを蒸留塔210の上部に導入して塔に還流を提供する。
【実施例】
【0103】
表1は、
図2の実施形態による本発明のシミュレーション例からの流れデータを示す。このシミュレーション例では、圧縮機220は、総消費電力が3756馬力の4つの段階である。
【表1】
【0104】
本発明は、好ましい実施形態に関して上述した詳細に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲に定義された本発明の精神または範囲から逸脱することなく、多数の変更および変形を行うことができることが理解されよう。