(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】硝子体網膜手術中のスキャン像の制御
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20221121BHJP
A61F 9/008 20060101ALI20221121BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61F9/007 200C
A61F9/008 130
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2021049657
(22)【出願日】2021-03-24
(62)【分割の表示】P 2018511450の分割
【原出願日】2016-06-30
【審査請求日】2021-03-24
(32)【優先日】2015-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】マーク ホプキンズ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート サンチェス
(72)【発明者】
【氏名】ライアン タカカワ
(72)【発明者】
【氏名】リンフォン ユイ
(72)【発明者】
【氏名】フーカン レン
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013210728(DE,A1)
【文献】特開平10-143652(JP,A)
【文献】特表2014-523537(JP,A)
【文献】特表2018-532451(JP,A)
【文献】特開2013-169352(JP,A)
【文献】特表2014-532514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61F 9/008
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術中、スキャン像を制御するスキャンコントローラ(150)であって、
外科顕微鏡(120)のユーザ入力装置から、患者の目の内部の選択される部分の第1の指示を受信することと、
前記外科顕微鏡に結合される光学スキャナ(134)にコマンドを送信して、前記選択される部分のスキャンデータを生成することと、
前記スキャンデータを前記光学スキャナから受信することと、
前記スキャンデータに基付いて、前記スキャンデータ
を示すオーバーレイ像を生成することであって、前記オーバーレイ像は、二次元深度プロファイルの形式のスキャンデータを示していることと、
前記選択される部分を示す表示要素を生成することと、
表示像を生成するために、前記表示要素及び前記オーバーレイ像を前記外科顕微鏡により生成される光学像と組み合わせるこ
とであって、前記表示要素は、前記光学像内の前記選択される部分と位置合わせされていることと、
前記外科顕微鏡に前記表示像を表示させることと、
を可能に
し、
前記選択される部分が面積である場合に、前記オーバーレイ像は、前記面積にわたる三次元深度プロファイルに対応する、スキャンコントローラ。
【請求項2】
更に、前記ユーザ入力装置を使用して、前記選択される部分内に配置されるマーカーの位置の選択の第2の指示を受信することと、
前記第2の指示に基付いて、前記マーカーを前記表示要素及び前記オーバーレイ像に追加することと、
を可能にする、請求項1に記載のスキャンコントローラ。
【請求項3】
前記スキャンコントローラは、前記外科顕微鏡に含まれる眼及び前記外科顕微鏡の外部ディスプレイのうちの少なくとも1つに、前記表示像を出力するように構成されている、請求項1に記載のスキャンコントローラ。
【請求項4】
前記選択される部分が線である場合に、前記オーバーレイ像は、前記線に沿った二次元深度プロファイルに対応する、請求項1に記載のスキャンコントローラ。
【請求項5】
前記光学スキャナは、光学コヒーレンストモグラフィスキャナである、請求項1に記載のスキャンコントローラ。
【請求項6】
前記ユーザ入力装置は、足操作装置であり、前記第1の指示は、前記足操作装置の移動により生成される、請求項1に記載のスキャンコントローラ。
【請求項7】
前記ユーザ入力装置は、オーディオ装置であり、前記第1の指示は、前記オーディオ装置を使用して受信される音声コマンドを用いて生成される、請求項1に記載のスキャンコントローラ。
【請求項8】
前記ユーザ入力装置は、タッチセンシティブ装置であり、前記第1の指示は、前記タッチセンシティブ装置に触れることにより生成される、請求項1に記載のスキャンコントローラ。
【請求項9】
前記ユーザ入力装置は、光学スキャン装置であり、前記第1の指示は、前記光学スキャン装置により検出されるジェスチャを用いて生成される、請求項1に記載のスキャンコントローラ。
【請求項10】
前記ジェスチャは、手、足、頭、外科器具、及び目のうちの少なくとも1つによる動きを含む、
請求項9に記載のスキャンコントローラ。
【請求項11】
眼科手術中に、スキャン像を制御するためのコンピュータで実行される方法であって、前記方法は、手術用顕微鏡で使用される光学スキャナにインターフェース接続する、請求項1から
請求項10の何れか1項に記載のスキャンコントローラによって実行されており、
前記方法は
、
前記光学スキャナに結合される前記スキャンコントローラ
が、
患者の前記目の前記内部の選択される部分の前記第1の指示を前記ユーザ入力装置から受信することと、
前記外科顕微鏡に結合される
前記光学スキャナにコマンドを送信して、前記選択される部分のスキャンデータを生成することと、
前記スキャンデータを前記光学スキャナから受信することと、
前記スキャンデータに基付いて、前記スキャンデータを示すオーバーレイ像を生成することであって、前記オーバーレイ像は、二次元深度プロファイルの形式のスキャンデータを示していることと、
前記選択される部分の位置を示す表示要素を生成することと、
前記表示要素及び前記オーバーレイ像を
前記外科顕微鏡によって生成された前記目の前記内部の光学像と組み合わせることであって、これにより、表示像を生成し、前記表示要素は、前記光学像内の前記選択される部分と位置合わせされる、組み合わせることと、
前記外科顕微鏡に前記表示像を表示させることと、
を
可能にすることを特徴とし、
前記選択される部分が面積である場合に、前記オーバーレイ像は、前記面積にわたる三次元深度プロファイルに対応する、方法。
【請求項12】
前記スキャンコントローラは、
前記ユーザ入力装置から、
前記選択される部分内に配置されるマーカーの位置の選択の第2の指示を受信することと、
前記第2の指示に基付いて、前記マーカーを前記表示要素及び前記オーバーレイ像に追加することと、
を更に可能にする
ことを特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記表示像は、前記外科顕微鏡に含まれる眼及び前記外科顕微鏡の外部ディスプレイのうちの少なくとも1つに出力される、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記選択される部分は、
(i)前記選択される部分は線であり、前記オーバーレイ像は、前記線に沿った二次元深度プロファイルに対応する、
(ii)前記選択される部分は面積であり、前記オーバーレイ像は、前記面積にわたる三次元深度プロファイルに対応する、
のうちの1つとされている、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科手術に関し、より詳細には、硝子体網膜手術中のスキャン像の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科では、目の手術又は眼科手術は、毎年何万もの患者の視覚を助け、改善している。しかし、目の小さな変化であっても、それに対する視覚の影響の受けやすさ及び多くの目の構造の微細で繊細な性質により、眼科手術は、実行が難しく、小さな若しくは非一般的な手術ミスの低減であってさえも又は手術技術の精度のささやかな改善も、術後の患者の視覚に非常に大きな差に繋がり得る。
【0003】
眼科手術は、目及び付随する視覚構造に対して実行される。より具体的には、硝子体網膜手術は、硝子体液及び網膜等の目の内部が関わる様々な繊細な処置を含む。異なる硝子体網膜手術処置が、時にレーザと併用されて、特に、黄斑上膜、糖尿病性網膜症、硝子体出血、黄斑円孔、及び白内障手術の複雑性を含め、多くの眼疾患の治療での視覚性能を改善する。
【0004】
硝子体網膜手術中、強膜を貫通する外科器具を導入して、様々な異なる任意の処置を実行し得る間、眼科医は通常、外科顕微鏡を使用して、角膜を通して眼底を見る。外科顕微鏡は、硝子体網膜手術中、眼底の撮像及び任意選択的な照明を提供する。患者は通常、硝子体網膜手術中、外科顕微鏡の下で仰臥位になり、検眼鏡を使用して、目を露出したままにする。使用される光学系のタイプに応じて、眼科医は、眼底の所与の視野を有し、視野は、狭視野から、眼底の周縁領域まで延びることができる広視野まで様々であり得る。外科顕微鏡を使用する硝子体網膜手術の多くのタイプで、外科医は、赤道を越え、さらには鋸状縁外まで延びる眼底の非常に広い視野を有したいことがある。硝子体網膜手術中、眼底ビューを外科医に提供する光学系は、特殊な接触レンズを含み得、通常、そのうちの3つのタイプが使用される:直接(度なし、平面、又は拡大)接触レンズ、間接非接触レンズ、又は間接接触レンズ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
眼底を見ることに加えて、多くの外科顕微鏡は、光学スキャナを備えて、硝子体網膜手術に関わる目組織の部分についての追加情報を提供し得る。光学スキャナは、光学的又は電気機械的に外科顕微鏡に統合し得る。典型的なシステム構成では、光学スキャナの制御及び光学スキャナからの出力像の表示は、外科医等のユーザが個々に操作する異なるシステムを使用して実行される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の開示される実施形態は、硝子体網膜手術中の光学スキャナの制御と、外科顕微鏡の閲覧表示に統合される光学スキャナからの出力像の閲覧とを提供する。このようにして、本明細書に記載されるように、硝子体網膜手術中の光学スキャナの制御は、眼底の光学像及び光学スキャナからの出力画像を含む1つの統合視野を使用して、外科医により実行し得る。
【0007】
一態様では、眼科手術を実行する、開示される方法は、目の内部の光学像を生成する外科顕微鏡を使用して、患者の目の内部を表示することを含む。本方法は、ユーザ入力装置を使用して、光学スキャナに結合されるスキャンコントローラに目の内部の選択される部分の第1の指示を送信することを含み得る。本方法では、スキャナコントローラは、第1の指示をユーザ入力装置から受信することと、外科顕微鏡に結合される光学スキャナにコマンドを送信して、選択される部分のスキャンデータを生成することと、スキャンデータを光学スキャナから受信することとを可能にし得る。本方法では、スキャンデータに基付いて、スキャンコントローラは、スキャンデータを示すオーバーレイ像を生成することと、選択される部分を示す表示要素を生成することと、表示要素及びオーバーレイ像を光学像と組み合わせることであって、それにより、表示像を生成し、外科顕微鏡に、表示像を表示させる、組み合わせることとを更に可能にし得る。本方法では、表示要素は、光学像内の選択される部分と位置合わせし得る。
【0008】
開示される任意の実施形態では、本方法は、ユーザ入力装置を使用して、選択される部分内に配置されるマーカーの第2の指示をスキャンコントローラに送信することを含み得、その間、スキャンコントローラは、第2の指示をユーザ入力装置から受信することを更に可能にし得る。第2の指示に基付いて、スキャンコントローラは、マーカーを表示要素及びオーバーレイ像に追加できるようにし得る。
【0009】
本方法の開示される任意の実施形態では、表示像は、外科顕微鏡に含まれる眼及び外科顕微鏡の外部ディスプレイのうちの少なくとも1つに出力し得る。本方法では、選択される部分は線であり得、オーバーレイ像は、線に沿った二次元深度プロファイルに対応し得る。本方法の開示される任意の実施形態では、選択される部分は面積であり得、オーバーレイ像は、面積にわたる三次元深度プロファイルに対応し得る。本方法の開示される任意の実施形態では、光学スキャナは、光学コヒーレンストモグラフィスキャナであり得る。
【0010】
本方法の開示される任意の実施形態では、ユーザ入力装置は、足操作装置であり得、一方、第1の指示は、足操作装置の移動により生成し得る。
【0011】
本方法の開示される任意の実施形態では、ユーザ入力装置は、オーディオ装置であり得、一方、第1の指示は、オーディオ装置を使用して受信される音声コマンドを用いて生成し得る。
【0012】
本方法の開示される任意の実施形態では、入力装置は、タッチセンシティブ装置であり得、一方第1の指示は、タッチセンシティブ装置に触れることにより生成し得る。
【0013】
本方法の開示される任意の実施形態では、ユーザ入力装置は、光学スキャン装置であり得、一方、第1の指示は、光学スキャン装置により検出されるジェスチャを用いて生成し得る。本方法では、ジェスチャは、手、足、頭、外科器具、及び目のうちの少なくとも1つによる動きを含み得る。
【0014】
別の態様では、開示されるスキャンコントローラは、眼科手術中、スキャン像を制御するためのものである。本スキャンコントローラは、外科顕微鏡のユーザ入力装置から、患者の目の内部の選択される部分の第1の指示を受信することと、外科顕微鏡に結合される光学スキャナにコマンドを送信して、選択される部分のスキャンデータを生成することと、スキャンデータを光学スキャナから受信することとを可能にし得る。本スキャンコントローラは、スキャンデータに基付いて、スキャンデータを示すオーバーレイ像を生成することと、選択される部分を示す表示要素を生成することと、表示要素及びオーバーレイ像を外科顕微鏡により生成される光学要素と組み合わせることであって、それにより、表示像を生成する、組み合わせることと、外科顕微鏡に表示像を表示させることとを更に可能にし得る。スキャンコントローラでは、表示要素は、光学像内の選択される部分と位置合わせし得る。
【0015】
開示される任意の実施形態では、スキャンコントローラは、ユーザ入力装置から、選択される部分内に配置されるマーカーの第2の指示を受信することと、第2の指示に基付いて、マーカーを表示要素及びオーバーレイ像に追加することとを可能にし得る。
【0016】
本スキャンコントローラの開示される任意の実施形態では、表示像は、外科顕微鏡に含まれる眼及び外科顕微鏡の外部ディスプレイのうちの少なくとも1つに出力し得る。
【0017】
本スキャンコントローラの開示される任意の実施形態では、選択される部分は線であり得、一方、オーバーレイ像は、線に沿った二次元深度プロファイルに対応し得る。
【0018】
本スキャンコントローラの開示される任意の実施形態では、選択される部分は面積であり得、一方、オーバーレイ像は、面積にわたる三次元深度プロファイルに対応し得る。
【0019】
本スキャンコントローラの開示される任意の実施形態では、光学スキャナは、光学コヒーレンストモグラフィスキャナであり得る。
【0020】
本スキャンコントローラの開示される任意の実施形態では、ユーザ入力装置は、足操作装置であり得、一方、第1の指示は、足操作装置の移動により生成し得る。
【0021】
本スキャンコントローラの開示される任意の実施形態では、ユーザ入力装置は、オーディオ装置であり得、一方、第1の指示は、オーディオ装置を使用して受信される音声コマンドを用いて生成し得る。
【0022】
本スキャンコントローラの開示される任意の実施形態では、ユーザ入力装置は、タッチセンシティブ装置であり得、一方、第1の指示は、タッチセンシティブ装置に触れることにより生成し得る。
【0023】
本スキャンコントローラの開示される任意の実施形態では、ユーザ入力装置は、光学スキャン装置であり得、一方、第1の指示は、光学スキャン装置により検出されるジェスチャを用いて生成し得る。本スキャンコントローラでは、ジェスチャは、手、足、頭、外科器具、及び目のうちの少なくとも1つによる動きを含み得る。
【0024】
本発明並びにその特徴及び利点をより完全に理解するために、これより、添付図面を併せて解釈される以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】外科顕微鏡スキャン器具の実施形態の選択された要素のブロック図である。
【
図3】スキャンコントローラの実施形態の選択された要素のブロック図である。
【
図4】硝子体網膜手術中のスキャン像を制御する方法の選択された要素のフローチャートである。
【
図5】硝子体網膜手術中のスキャン像を制御する方法の選択された要素のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明では、詳細を例として記載して、開示される趣旨の考察を促進する。しかし、開示される実施形態が、例示的であり、可能な全ての実施形態を網羅するものではないことが、当業者には理解されるはずである。
【0027】
本明細書で使用される場合、ハイフンが付いた形態の参照番号は、要素の特定のインスタンスを指し、ハイフンが付かない形態の参照番号は、集合的な要素を指す。したがって、例えば、装置「12-1」は、装置クラスのインスタンスを指し、装置クラスは集合的に装置「12」として参照し得、そのいずれか1つは装置「12」として総称し得る。
【0028】
上述したように、硝子体網膜手術中、外科医は、例えば、角膜に配置された接触レンズと併せて、外科顕微鏡を使用して患者の目の眼底を見得る。任意の様々な外科処置を実行するために、外科医は、眼底の特定の部分を光学的にスキャンして、光学コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャナを使用する等により、対応する目組織のプロファイル深度スキャンを生成することを望み得る。プロファイル深度スキャンは、外科顕微鏡により生成される光学像からは容易に見ることができない目組織についての情報を明らかにし得る。OCTスキャナ等の光学スキャナは、外科顕微鏡の光学系に統合されているが、その結果生成される器具のユーザ操作は、扱いにくく、硝子体網膜手術中に使用するには非実用的であり得る。特に、外科医は、光学スキャンの位置及びプロファイル深度スキャンを示すスキャンデータを外科顕微鏡からの光学像に空間的に相関付けたいことがあり、これは、独立した操作及び表示出力を有する異なるシステム(すなわち、外科顕微鏡及び光学スキャナ)を使用して、硝子体網膜手術中に実行することは困難であり得るか、又は時間がかかり得る。
【0029】
本開示は、硝子体網膜手術中のスキャン像の制御に関する。本明細書に開示される、硝子体網膜手術中、スキャン像を制御する方法及びシステムは、外科医が、外科顕微鏡により生成される光学像の単一視野内でスキャンデータのスキャン像を見られるようにし得る。本明細書に開示される、硝子体網膜手術中にスキャン像を制御する方法及びシステムは、外科医が、スキャンに向けて目の選択された部分の位置を制御して、スキャン像を生成し、選択された部分を単一視野で見ることを更に可能にし得る。本明細書に開示される、硝子体網膜手術中にスキャン像を制御する方法及びシステムは、外科医が、選択された位置内にマーカーを設定し、表示される選択位置及び単一視野内のスキャン像内でマーカーを見ることを可能にし得る。本明細書に開示される、硝子体網膜手術中にスキャン像を制御する方法及びシステムは、単一視野が外部ディスプレイを出力できるように更にし得る。本明細書に開示される、硝子体網膜手術中にスキャン像を制御する方法及びシステムは、外科医が、足操作装置、オーディオ装置、タッチセンシティブ装置、光学スキャン装置、又はそれらの様々な組み合わせを使用してユーザ入力を提供できるようにすることを可能にし得る。
【0030】
更に詳細に説明するように、硝子体網膜手術中のスキャン像の制御は、光学スキャナ及び外科顕微鏡に統合されるスキャンコントローラを使用して実行される。スキャンコントローラは、光学スキャン及びユーザ、通常は外科医により示される選択位置の位置決めを含め、光学スキャナの動作を制御するコマンドを送信し得る。スキャンコントローラは、スキャン制御装置を介してユーザ入力を受信し得、スキャン制御装置は、例えば、ハンズフリーの操作を可能にする任意の1つ又は複数のタイプのユーザ入力装置であり得る。ユーザ入力及び光学スキャナから受信されるスキャンデータに基付いて、スキャンコントローラは、選択された位置を示し、スキャンデータを示すオーバーレイ像を追加するように、外科顕微鏡の表示を更新し得る。さらに、スキャンコントローラは、ユーザが、眼底の所与の位置をオーバーレイ像内のスキャンデータと相関付けるマーカーを設定し配置できるようにし得る。
【0031】
これより図を参照すると、
図1は、外科顕微鏡スキャン器具100を示すブロック図である。器具100は、一定の縮尺で描かれておらず、概略表現である。更に詳細に説明するように、器具100は、硝子体網膜手術中に使用されて、人間の目110を示し分析し得る。示されるように、器具100は、外科顕微鏡120、スキャンコントローラ150、外部ディスプレイ152、スキャン制御装置154、及びOCTスキャナ134を含む。
図1には、撮像システム140、接触レンズ112、並びに外科ツール116及び照明器114も示される。
【0032】
示されるように、外科顕微鏡120は、概略形態で示されて、光学機能を示す。外科顕微鏡120が、異なる実施形態では、様々な他の電子構成要素及び機械的構成要素を含み得ることが理解される。したがって、対物レンズ124は、所望の拡大又は眼底の視野を提供するように選択可能な対物レンズを表し得る。対物レンズ124は、目110の角膜上に静止する接触レンズ112を介して、目110の眼底からの光を受け取り得る。なお、目110における他のタイプのレンズを外科顕微鏡120と併用し得る。硝子体網膜手術を実行するために、外科ツール116で表される、強膜を貫通するツールを含め、様々なツール及び器具を使用し得る。照明器114は、目110の眼底内からの光源を提供する特殊なツールであり得る。
【0033】
図1では、外科顕微鏡120は、左眼126-L及び右眼126-Rを備える双眼鏡126を用いた閲覧を可能にする2つの別個であるが、略等しい光路を有する双眼鏡構成を有して示されている。対物レンズ124から、左光線はビームスプリッタ128で分割し得、そこから、撮像システム140及び光眼126-Lは光学像を受け取る。対物レンズ124からまた、右光線も部分ミラー129において分割し得、部分ミラー129はまたは、OCTスキャナ134から試料ビーム130を受け取り、測定ビーム132をOCTスキャナ134に出力する。部分ミラー129はまた、右光線の部分を右眼126-Rに向ける。ディスプレイ122は、スキャンコントローラ150からデータを受信し、左眼126-L及び右眼126-Rの像出力をそれぞれ生成する像処理システム等の光電子構成要素を表し得る。幾つかの実施形態では、ディスプレイ122は、ユーザによる閲覧のために、双眼鏡126に像を出力する小型表示装置を含む。
【0034】
図1では、スキャンコントローラ150は、例えば、表示データを出力するディスプレイ122との電気インターフェースを有し得る。このようにして、スキャンコントローラ150は、双眼鏡126において見られるディスプレイ122に表示像を出力し得る。撮像システム140とスキャンコントローラ150との間の電気インターフェースは、デジタル像データをサポートし得るため、スキャンコントローラ150は、比較的高いフレームリフレッシュレートで、リアルタイムで像処理を実行し得、それにより、外科顕微鏡120のユーザは、スキャン及び他の動作のために、目110の選択された部分を制御するユーザ入力への略瞬時のフィードバックを経験し得る。外部ディスプレイ152は、ディスプレイ122と同様の像を出力し得るが、硝子体網膜手術中、様々な人員により見られるスタンドアロンモニタを表し得る。ディスプレイ122又は外部ディスプレイ152は、液晶ディスプレイ画面、コンピュータモニタ、テレビジョン等として実施し得る。ディスプレイ122又は外部ディスプレイ152は、ビデオグラフィックスアレイ(VGA)、拡張グラフィックスアレイ(XGA)、デジタルビジュアルインターフェース(DVI)、高精細マルチメディアインターフェース(HDMI(登録商標))等の対応するタイプのディスプレイのディスプレイ規格に準拠し得る。
【0035】
図1の外科顕微鏡120の双眼鏡構成を用いる場合、撮像システム140は、撮像システム140が、光線及び像データを独立して処理、表示、記憶、及び他の方法で操作できるようにする左光線の部分を受け取り得る。したがって、撮像システム140は、所望のように、任意の様々な異なる種類の撮像システムを表し得る。
【0036】
示されるように、OCTスキャナ134は、光学スキャナの実施形態を表し得る。なお、
図1に示される構成と他のタイプの光学スキャナを併せて使用することもできる。OCTスキャナ134は、試料ビーム130の出力を制御し得、目110内の組織との相互作用する試料ビーム130の光子に応答して反射された測定ビーム132を受け取り得る。OCTスキャナ134はまた、試料ビーム130をユーザにより示される選択位置に移動させることが可能であり得る。スキャンコントローラ150は、OCTスキャナ134とインターフェースして、例えば、選択された位置を示すコマンドをOCTスキャナ134に送信して、スキャンデータの生成及びOCTスキャナ134からのスキャンデータの受信を行い得る。なお、OCTスキャナ134は、時間領域OCT(TD-OCT)及び周波数領域OCT(FD-OCT)等であるが、これらに限定されない、所望の様々なタイプのOCT器具及び構成を表し得る。特に、OCTスキャナ134により生成されるスキャンデータは、ラインスキャンの二次元(2D)スキャンデータ及びエリアスキャンでの三次元(3D)スキャンデータを含み得る。スキャンデータは、目110の眼底内の可視表面よりも下の撮像を可能にするスキャン組織の深度プロファイルを表し得る。
【0037】
示されるように、スキャン制御装置154は、ユーザ入力を提供する任意の様々な装置及びシステムを表す。様々な実施形態では、スキャン制御装置154に関連する特定の機能は、装置インターフェース及び装置機能の実行可能コード等のスキャンコントローラ150内に統合し得る。さらに、幾つかの実施形態では、スキャン制御装置154の少なくとも一部は、外科顕微鏡120内に統合し得る。上述したように、スキャン制御装置154は、足操作装置、オーディオ装置、タッチセンシティブ装置、光学スキャン装置、又はそれらの様々な組み合わせを含み得る。足操作装置は、ユーザが足を使用してユーザ入力を提供できるようにするジョイスティック、トラックボール、又はタッチセンシティブ装置であり得る。オーディオ装置は、音声コマンドを受け取り、識別できるようにするマイクロフォンであり得る。タッチセンシティブ装置は、様々な人体部位を使用して操作し得る、タッチイベントに応答するタッチ画面を含み得る。光学スキャン装置は、ユーザの体の画像を検出し、動き又はジェスチャを入力コマンドとして解釈し得る。例えば、スキャン制御装置は、非限定的な例として、ユーザの手、足、頭、目、又はユーザにより制御される外科器具の動きの画像を捕捉し得る。スキャン制御装置154は、位置決めに関連し、スキャンデータを生成する選択位置を画定する特定のユーザ入力コマンドを受信できるようにされ得る。したがって、ユーザ入力コマンドは、特に、動きコマンド、サイズコマンド、回転コマンドを含み得る。ユーザ入力コマンドは、本明細書に記載されるように、スキャンデータ内にマーカーを配置し、移動させるためにも使用し得る。
【0038】
器具100の動作に当たり、ユーザは、硝子体網膜手術が目110に対して実行されている間、顕微鏡を使用して目110の眼底を見ることができる。ユーザは、ハンズフリー様式等でユーザ入力をスキャン制御装置154に提供して、OCTスキャナ134を操作し得る。例えば、ユーザ入力は、スキャンデータを生成する視野内の選択位置の第1の指示を含み得る。次に、スキャンコントローラ150は、第1の指示をスキャン制御装置154から受信し、コマンドをOCTスキャナ134に送信して、目110の内部の選択部分に対応する選択位置のスキャンデータを生成し得る。次に、スキャンコントローラ150は、スキャンデータをOCTスキャナ134から受信し、スキャンデータを示すオーバーレイ像を生成し得る。次に、スキャンコントローラ150は、ディスプレイ122から受信される外科顕微鏡120により捕捉された光学像にオーバーレイ像を重ね得る。スキャンコントローラ150は、光学像上の選択部分と位置合わせして、目110の選択部分を示す表示要素を更に重ね得る。ユーザは、スキャン制御装置154を使用して、選択部分内のマーカーの位置等の追加のユーザ入力を提供し得る。スキャン制御装置154からマーカーの第2の指示を受信することに応答して、スキャンコントローラ150は、マーカーを表示要素及びオーバーレイ像の対応する位置に重ねるか、又は追加し得る。このようにして、双眼鏡126でユーザが見る表示像は、光学スキャンに関する最新の更新された情報を含む。
【0039】
本開示の範囲から逸脱せずに、変更、追加、又は省略を外科顕微鏡スキャン器具100に対して行い得る。本明細書に記載されるように、外科顕微鏡スキャン器具100の構成要素及び要素は、特定の用途に従って統合又は分離し得る。外科顕微鏡スキャン器具100は、幾つかの実施形態では、より多数、より少数、又は異なる構成要素を使用して実施し得る。
【0040】
図2は、外科顕微鏡表示像200の実施形態を示す。表示像200は、ユーザ操作の外科顕微鏡スキャン器具100(
図1参照)により見られる視野を表し得る。示されるように、表示像200は、外科顕微鏡120により生成される光学像208を含む。光学像208は、目110の眼底のビューを含み得、特定の外科ツール又は器具を示し得る。
図2では、外科ツール116は、光学像208内の眼底内に見られる。光学像208に加えて、表示像200は、上述したように、器具100の操作中、光学像208に重ねられる追加の要素を含む。特に、表示要素202は、スキャン制御装置154を使用して、光学スキャンのラインスキャンがユーザにより選ばれている場合、眼底の位置における選択部分を示す。さらに、オーバーレイ像206は、表示要素202に対応する2D深度プロファイル像の形態のスキャンデータを示す。さらに、マーカー204は、ユーザがスキャン制御装置154を使用して選択することができる特定の位置も示す。マーカー204は、表示要素202により指定されるラインスキャンに沿った位置に制限され得る。マーカー204-1は、表示要素202上のマーク位置を示し、一方、マーカー204-2は、オーバーレイ像206上の対応するマーク位置を示す。マーカー204は十字として示されているが、他の実施形態では、様々なサイズ及び色の様々な異なるタイプの形状、線、及び点をマーカー204に使用し得る。
【0041】
説明を明確にするために、2Dラインスキャンが
図2に示されているが、表示要素202が2Dエリアであってもよく、その間、オーバーレイ像206が3Dスキャンデータを示すことが理解される。表示像200及び表示像200内部の要素の更なる制御が、スキャン制御装置154を使用してユーザにより実行し得る。例えば、オーバーレイ像206の位置又はサイズを選択又は変更し得る。さらに、幾つかの実施形態では、スキャン制御装置154を使用して、光学スキャナを構成し、特定の光学スキャンパラメータを設定し得る。
【0042】
これより
図3を参照して、
図1に関して上述したスキャンコントローラ150の実施形態の選択された要素を示すブロック図を提示する。
図3に示される実施形態では、スキャンコントローラ150は、共有バス302を介して、メモリ310としてまとめて識別されるメモリ媒体に結合されるプロセッサ301を含む。
【0043】
スキャンコントローラ150は、
図3に示されるように、スキャンコントローラ150をOCTスキャナ134又はスキャン制御装置154等の様々な外部エンティティにインターフェースすることができる通信インターフェース320を更に含む。幾つかの実施形態では、通信インターフェース320は、スキャンコントローラ150がネットワーク(
図3に示されず)に接続できるようにするよう動作可能である。硝子体網膜手術中、スキャン像を制御するのに適する実施形態では、スキャンコントローラ150は、
図3に示されるように、共有バス302又は別のバスをディスプレイ122又は外部ディスプレイ152等の1つ又は複数のディスプレイの出力ポートに接続するディスプレイインターフェース304を含む。
【0044】
図3では、メモリ310は、永続的媒体及び揮発性媒体、固定媒体及びリムーバブル媒体、並びに磁気媒体及び半導体媒体を含む。メモリ310は、命令、データ、又は両方を記憶するように動作可能である。示されるようなメモリ310は、命令セット又は命令シーケンス、すなわち、オペレーティングシステム312及びスキャン像制御アプリケーション314を含む。オペレーティングシステム312は、UNIX(登録商標)又はUNIX(登録商標)様オペレーティングシステム、Windows(登録商標)ファミリオペレーティングシステム、又は別の適するオペレーティングシステムであり得る。
【0045】
これより
図4を参照して、本明細書に記載されるような、硝子体網膜手術中、スキャン像を制御する方法400の実施形態の選択された要素のフローチャートをフローチャート形態で示す。方法400は、ユーザが、外科顕微鏡スキャン器具100を操作して、目の眼底を見、眼底のビューに基付いて外科処置を実行する間に実行し得るステップ及び手順を説明する。なお、方法400に示される特定の動作は、異なる実施形態では、任意選択的であり得、又は配置替えし得る。方法400は、外科医又は他の医療従事者により実行し得る。幾つかの実施形態では、方法400の少なくとも特定の部分は、例えば、外科顕微鏡の上昇又は下降等の外科顕微鏡の特定の側面に関連するサーボ-機械制御を使用して自動化し得る。
【0046】
方法400は、ステップ402において、目の内部の光学像を生成する外科顕微鏡を使用して、患者の目の内部を見ることにより開始し得る。ステップ404において、ユーザ入力装置を使用して、目の内部の選択部分の第1の指示を光学スキャナに結合されたスキャンコントローラに送信し得る。ステップ406において、光学像と、選択部分を示す表示要素と、選択部分におけるスキャンデータを示すオーバーレイ像とを含む表示像を見ることができる。ステップ408において、ユーザ入力装置を使用して、選択部分内に配置されるマーカーの第2の指示をスキャンコントローラに送信し得る。ステップ410において、マーカーが表示要素及びオーバーレイ像に追加された表示像を見ることができる。
【0047】
図5を参照して、本明細書に記載されるような、硝子体網膜手術中、スキャン像を制御する方法500の実施形態の選択要素のフローチャートをフローチャート形態で示す。方法500は、ユーザが、外科顕微鏡スキャン器具100を操作して、目の眼底を見、眼底のビューに基付いて外科処置を実行する間、スキャンコントローラ150が実行し得るステップ及び手順を説明する。したがって、方法500の少なくとも特定の部分は、スキャン像制御アプリケーション314により実行し得る。ユーザは、外科医又は別の医療従事者であり得る。なお、方法500に記載される特定の動作は、異なる実施形態では、任意選択的であり得、又は配置替えし得る。方法500は、
図4の方法400と併せて実行し得る。
【0048】
方法500は、ステップ502において、第1の指示をユーザ入力装置から検索することにより開始し得る。ステップ504において、コマンドを光学スキャナに送信して、選択部分のスキャンデータを生成し得る。ステップ506において、スキャンデータを光学スキャナから受信し得る。スキャンデータに基付いて、ステップ508において、スキャンデータを示すオーバーレイ像を生成し得る。ステップ510において、選択部分を示す表示要素を生成し得る。ステップ512において、表示要素が光学像の選択部分と位置合わせされるように、表示要素及びオーバーレイ像を光学像と組み合わせて、表示像を生成し得る。
【0049】
本明細書に開示されるように、硝子体網膜手術中のスキャン像の制御は、外科顕微鏡と併用される光学スキャナとインターフェースするスキャンコントローラを用いて実行し得る。スキャン制御装置は、外科顕微鏡を使用して見られる光学像データに重ねられたスキャンデータのオーバーレイ像を制御する、ハンズフリーユーザ入力を含むユーザ入力を受信し得る。光学スキャンの選択された位置も、スキャンコントローラを使用して表示し制御することができる。
【0050】
上記開示した趣旨は、限定ではなく例示として見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内にあるそのような全ての変更、改善、及び他の実施形態を包含することが意図される。したがって、法律が許す範囲で、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の許される限り最も広義の解釈により決定されるべきであり、上記の詳細な説明により制限又は限定されるものではない。