(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】眼球模型
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20221121BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61F9/008
A61B3/113
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021074792
(22)【出願日】2021-04-27
(62)【分割の表示】P 2018521421の分割
【原出願日】2016-08-10
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】102015014324.7
(32)【優先日】2015-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】マリオ アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ペーター リーデル
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-523131(JP,A)
【文献】特開2015-075615(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125136(WO,A1)
【文献】特表2013-519401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
A61B 3/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球模型を用いてアイトラッカーの機能試験及び較正をする試験装置であって、屈折矯正眼科手術用のレーザー装置とともに使用されるように構成されており、
眼球模型と、位置決めデバイスと、アイトラッカーとを具備しており、
前記眼球模型は眼球本体を備えており、
前記眼球本体は、
前記眼球模型の被覆表面を形成する平坦領域と、
ポリ塩化ビニルを少なくとも主成分として含有する高輝度プラスチック材料製の強膜疑似物であって、球形または楕円形表面に従う環状表面を形成して、前記平坦領域を取り囲む強膜疑似物と、
前記強膜疑似物に対して色のコントラストを有するパターンであって、眼の瞳孔及び虹彩構造を模しており、前記平坦領域の全体に拡がるパターンと、
を有しており、
前記眼球模型は、赤外線カメラによって撮像されるように構成されており、前記強膜疑似物の材料は白色に見えるように構成されており、前記パターンは赤外線照明のもとで前記強膜疑似物に対して色のコントラストを有するように構成されており、
前記眼球本体はさらに、前記パターンと反対側の前記環状表面の側の平坦基礎領域であって、ねじ穴を備えられた平坦基礎領域を有しており、
前記位置決めデバイスは、前記眼球模型の位置及び姿勢を機械的に調整するように構成されており、前記ねじ穴は前記眼球模型を前記位置決めデバイスに配置するように用いられ、前記眼球模型は前記位置決めデバイスによって異なる位置及び姿勢へ移動せしめられ、前記位置決めデバイスによって引き起こされる前記移動は、眼球運動の全自由度に対応しており、
前記アイトラッカーは、前記眼球模型が前記位置決めデバイスによって移動せしめられるときに、前記眼球模型の移動を検出して定量化するように構成されており、
前記アイトラッカーは、赤外線カメラと処理ユニットとをさらに具備しており、
前記赤外線カメラは、前記眼球模型が前記位置決めデバイスによって移動せしめられるときに、前記眼球模型の赤外線画像を記録するように構成されており、前記赤外線画像は、前記パターンと、該パターンに隣接する前記強膜疑似物の少なくとも一部分とを含んでおり、
前記処理ユニットは、前記アイトラッカーの機能を試験し且つ前記アイトラッカーを較正するために、眼球模型の前記パターンの前記アイトラッカーに対する位置及び/又は姿勢を、記録された前記赤外線画像内の前記眼の瞳孔の中心位置及び/又は前記虹彩構造の模擬物の姿勢を含んで、決定するように構成されている、試験装置。
【請求項2】
前記強膜疑似物の領域の前記プラスチック材料は白色である、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記環状表面から前記平坦領域への移行部はリング状の縁によって形成されている、請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記パターンは、前記眼球本体のインプリント若しくは塗装によって、又は前記パターンが記載されている接着要素を前記眼球本体に接着することによって形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項5】
前記眼球本体の前記表面は
前記強膜疑似物の
領域において凸状に湾曲した環状表面を形成している、請求項1~4のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項6】
前記赤外線画像が記録される間、前記眼球模型は、患者台の、前記患者台の頭部支持部の領域内に配置される、請求項1に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、眼球模型に関する。本開示は、特に、赤外線カメラによって記録可能な眼球模型、眼球模型を製造するための方法、及び眼球模型を赤外線カメラとともに使用するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
眼を測定するための測定方法の多くにおいては、検査する眼の上及び/又は中に電磁放射(以後、簡潔にするため「光」とする)を放射し、眼から反射された放射を検出及び評価する。したがって、例えば、ヒトの眼の屈折矯正レーザー治療の分野では、少なくとも1つの赤外線カメラを有するアイトラッキングシステム(いわゆるアイトラッカー)を使用して、眼から反射された赤外光を記録し、記録された赤外画像に基づいて眼の位置及び姿勢を特定する。したがって、適切な処理ソフトウェアの使用により、治療中の眼の運動を検出及び定量してもよい。
【0003】
アイトラッカーによる眼の位置及び姿勢の特定は、記録された赤外画像又はVIS画像内における、眼の瞳孔、虹彩構造、縁、及び強膜内の血管などの眼の構造の検出に基づく。したがって、アイトラッカーの試験測定(例えば、校正時)において使用する試験物体もこうした眼の構造を有する。試験物体は慣例的に、刻印された眼の構造の1つ以上(例えば、眼の瞳孔のみ)のレプリカを有するシート状又は板状物体として呈される。
【0004】
例えば、アイトラッカーと試験物体との間に2次元相対運動を生じさせることにより眼の横方向並進をシミュレーションし、アイトラッカーにより追尾させてもよい。しかしながら、眼(例えば、屈折矯正レーザー治療中の)は、眼の光軸に沿った並進、並びに光軸の周り、及び同様に、光軸に垂直に延びる空間軸の周りの回転も行う場合があることに留意されたい。近頃のアイトラッカーは記載の運動を検出するように構成されている。しかしながら、試験測定の範囲内において、眼球運動の全自由度をシート状又は板状試験物体により適切にシミュレーションすることは不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アイトラッキングシステムの試験測定の範囲内において試験物体として使用するための眼球模型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、高輝度プラスチック材料製の強膜擬似物であって、プラスチック材料は、ポリ塩化ビニルを少なくとも主成分として含有する、強膜擬似物と、強膜擬似物に対して色のコントラストを有するパターンであって、パターンは、眼の瞳孔及び/又は虹彩構造を模している、パターンと、を含む、眼球模型である。
【0007】
プラスチック材料の少なくとも主成分としてポリ塩化ビニルを使用した結果、眼球模型の赤外照明中、強膜擬似物内に顕著な拡散反射は生じない。1つの好適な実施形態では、プラスチック材料はポリ塩化ビニルからなる。
【0008】
プラスチック材料製の強膜擬似物は赤外照明下で高輝度に見える。したがって、拡散又は直接赤外照明下でもパターンは強膜擬似物に対して色のコントラストを有する。プラスチック材料は強膜擬似物の領域内において白色であることが好ましい。
【0009】
一実施形態では、眼球模型は眼球本体から形成されており、眼球本体の強膜擬似物の領域の表面は、球形又は楕円形表面の形状に従う環状表面を形成している。眼球本体の3次元設計、特に、環状表面の凸湾曲(例えば、ヒトの眼の強膜表面を模した)のため、眼球模型を回転させることにより眼の光軸(z軸)の周り、並びに眼の光軸(z軸)に垂直に延びる空間軸の周り(いわゆる、x軸及びy軸の周りにおける眼の回転)の回転運動をシミュレーションすることが可能である。
【0010】
眼球模型の眼球本体は、パターンの少なくとも一部分、好ましくは全パターンが配置されている平坦領域を有してもよい。パターンは平坦領域の一部区域のみに配置されるものとしてもよい。少なくともこの場合、パターンは、例えば、平坦領域の好ましくは中心に位置する眼の瞳孔のみを模してもよい。加えて、パターンは平坦領域の実質的に区域全体に配置されるものとしてもよい。
【0011】
環状表面から平坦領域への移行部はリング状の縁によって形成されていてもよい。パターンは、リング状の縁に隣接していることが好ましい。パターンは、少なくとも虹彩構造を模してもよく、その外縁部は、リング状の縁に隣接していてもよい。いずれの場合においても、パターンは、眼球本体のインプリント若しくは塗装によって、又はパターンが記載されている接着要素を眼球本体に接着することによって形成されていてもよい。
【0012】
眼球模型の一実施形態では、眼球本体は、環状表面又はパターンと反対側の環状表面の側にねじ切り穴を有する。ねじ切り穴の断面は、パターンの少なくとも一部分が配置される平坦領域に実質的に平行に又は実質的に矩形に方向付けられてもよい。好ましくは、眼球本体はパターンと反対側の環状表面の側に平坦領域を有し、この平坦領域の区域にねじ切り穴が設けられている。ねじ切り穴は眼球模型を取り付けるために設けてもよい。
【0013】
本発明の更なる態様は眼球模型、特に、本明細書中に記載される眼球模型である。眼球模型は、平坦領域と、平坦領域をリングのような状態で取り囲む高輝度の、特に白色の強膜擬似物と、を有する眼球本体を含み、パターンが平坦領域に形成されており、パターンは強膜擬似物に対して色のコントラストを有し、眼の瞳孔及び/又は虹彩構造を模している。眼球本体の表面は強膜擬似物の領域において凸状湾曲環状表面を形成している。
【0014】
本発明の更なる態様は、眼球模型を製造するための、特に、本明細書中に記載される眼球模型の1つを製造するための方法である。当該方法は、板状又は矩形ブランクを用意することであって、ブランクは、ポリ塩化ビニルを少なくとも主成分として含有する高輝度、特に白色のプラスチック材料製であり、ブランクは対向して位置する2つのブランク平坦面を有する、ことを含む。当該方法はまた、少なくとも1つの眼球本体をブランクから分離するためにブランクを切断又はチッピング加工することであって、分離された眼球本体は、第1のブランク平坦面から形成された第1の平坦領域と、第1の平坦領域をリングのような状態で取り囲む凸状湾曲周辺部表面と、を有する、ことと、プラスチック材料に対して色のコントラストを有する、眼の瞳孔及び/又は虹彩構造を模したパターンを、第1の平坦領域に対応する第1のブランク平坦面の領域内に形成することと、を含む。
【0015】
1つの眼球本体又は複数の眼球本体をブランクから分離するものとしてもよい。複数の眼球本体の分離は、例えば、実質的に同時に、又は複数の眼球本体の一部分内において実質的に同時に、又は時間的に連続して行ってもよい。
【0016】
第1のブランク平坦面におけるパターンの形成は眼球本体がブランクから分離された後に行ってもよい。しかしながら、パターンは、眼球本体をブランクから分離する工程の前に第1のブランク平坦面に形成されることが好ましい。特に、単一ブランクを基にした複数の眼球模型の製造はこのようにして簡略化及び加速してもよい。
【0017】
当該方法の更なる発展形態によれば、ブランクから分離される各眼球本体に関連するブランクの第2のブランク平坦面に、各眼球本体がブランクから分離される前にねじ切り穴が導入される。分離された眼球本体は第2の平坦領域を有してもよく、第2の平坦領域は第2のブランク平坦面により形成してもよく、第2の平坦領域にねじ切り穴を配置してもよい。
【0018】
本発明の更なる態様は、眼球模型の画像をカメラによって記録するための、眼球模型の使用、特に本明細書中に記載される眼球模型の1つの使用に関する。カメラとして赤外線カメラを使用し、眼球模型については、ポリ塩化ビニルを少なくとも主成分として含有する高輝度プラスチック材料製の強膜擬似物を有するとともにパターンを有し、パターンは強膜擬似物に対して色のコントラストを有し、眼の瞳孔及び/又は虹彩構造を模している眼球本体が使用される。眼球模型の画像は、少なくともパターン及び強膜擬似物の一部分を含むものとしてもよい。
【0019】
赤外線カメラはアイトラッキングシステムの一部であってもよく、画像が記録される間、眼球模型を赤外線カメラに対して移動させ、アイトラッキングシステムは記録された画像に基づき眼球運動を検出する。この目的のため、アイトラッキングシステムはまた、記録された赤外画像内における、眼球模型に含まれるパターンの位置及び/又は姿勢を特定するように構成された処理ユニットを有するものとしてもよい。
【0020】
また、使用のため、画像が記録される間、眼球模型は、患者台の、患者台の頭部支持部の領域内に配置されるものとしてもよい。例えば、眼球模型が取り付けられる(例えば、ねじ止めされる)眼球模型用の位置決めデバイスを頭部支持部に組み込み可能であってもよい。
【0021】
本発明の更なる特徴、利点、及び構成要素は、以下を示す添付の図面の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2A】眼球模型を製造するためのブランクの一例示的実施形態を示す。
【
図2B】眼球模型を製造するためのブランクの一例示的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1A~
図1Dは、全体として参照番号10で示す眼球模型の一例示的実施形態の概略図を示す。
図1Aは斜視図を示し、
図1Bは上面図を示し、
図1Cは側面図を示し、
図1Dは、
図1Bに示す断面線Iに沿って取った眼球模型10の断面図を示す。
【0024】
図1A~
図1Dに示す例示的実施形態では、眼球模型10は眼球本体12から形成されている。眼球本体12は第1の平坦領域14を有し、第1の平坦領域14内において眼球本体12の表面は平坦である。第1の平坦領域14は眼球模型10のディスク形状(例えば、楕円形、特に円形)の被覆表面を形成している。被覆表面14をリングのような状態で周方向に取り囲む凸状湾曲周辺部表面18は第1のリング状の縁16を介して被覆表面14に接合されている。周辺部表面18は、楕円形表面(例えば、球形表面)の形状に従う(又は合致する)環状表面として設計されている。
【0025】
眼球本体12はまた、被覆表面14の反対側に第2の平坦領域20を有する。第2の平坦領域20は、眼球模型10のディスク形状(例えば、楕円形、特に円形)の基部領域を形成している。基部領域20は(リング状の縁を介して)環状表面18に隣接するものとしてもよい。
図1A~
図1Dに示す例示的実施形態では、しかしながら、眼球本体12は、環状表面18と基部領域20との間に延びる外側面22を有する。平坦な外側面22は、基部領域20及び環状表面18にそれぞれ、同じ周長を有する2つの円形縁24、26を介して隣接する円筒状表面の形状を示す。別の例示的実施形態では、外側面22は、例えば、錐面に合致する設計を有してもよい。
【0026】
図1A~
図1Dに示す眼球模型10はヒト強膜の擬似物(即ち、レプリカ)を含む。強膜擬似物は、眼球本体12、特に、環状表面18に縁取られた眼球本体12の部分によって形成されている。眼球本体12は白色ポリ塩化ビニル製である。眼球本体12に赤外光を照射したとき、ポリ塩化ビニル内に顕著な拡散反射は生じない。したがって、眼球本体12は赤外照明下でも白色に見える。
【0027】
別の例示的実施形態では、眼球本体12は、白色ポリ塩化ビニル製である代わりに(例えば、白色)ポリ塩化ビニルを少なくとも主成分として含有する、高輝度、特に白色のプラスチック材料製としてもよい。プラスチック材料は、可塑剤又は更なるプラスチックなどの更なる成分を含んでもよい。いずれの場合においても、プラスチック材料は赤外照明下でも高輝度、特に白色に見えるように設計すべきである。
【0028】
図1A~
図1Dに示す眼球模型10では、擬似物はヒト強膜の一部分のみを含む。強膜擬似物を有する眼球本体12の部分が楕円層(例えば、球形層)の形状を形成している。あるいは、強膜の擬似部分を拡大して、実質的に強膜全体の擬似物を形成するものとしてもよい。後者の場合、眼球本体12は楕円ドーム(例えば、球形ドーム)の形状を取ってもよい。
【0029】
図1A及び
図1Bにおいて明らかなように、眼球模型10の被覆表面14にはパターン28が適用されている。パターン28は眼の瞳孔30及び虹彩構造32の擬似物を含む。パターン28は眼球本体12の平坦領域全体にわたって延び、眼球模型10の被覆表面14を形成している。別の例示的実施形態では、パターン28は虹彩構造32のみ又は眼の瞳孔30のみを模すものとしてもよい。少なくともこの場合、眼球模型10の被覆表面14の領域(例えば、瞳孔レプリカのみの場合、眼の瞳孔30周囲の領域内)にパターン28を適用しないことは可能である。
【0030】
また、パターン28の一部分(例えば、虹彩構造32の擬似物)が眼球本体12の凸状湾曲表面領域内に延びる、又は全体が眼球本体12の凸状湾曲表面領域内に適用される(例えば、環状表面18の形状に合致する)ものとしてもよい。後者の場合、眼の瞳孔30の擬似物レプリカのみを眼球模型10の被覆表面14上に配置するものとしてもよい。
【0031】
図1A及び
図1Bにおいて明らかなように、眼の瞳孔30の擬似物及び虹彩構造32の擬似物は強膜擬似物に対して色のコントラストを有する。眼の瞳孔30及び虹彩構造32の擬似物は、RGB色空間の色又はCMYK色空間の色におけるグレ-トーンで実装してもよい。
【0032】
少なくとも、
図1B及び
図1Cに示す例示的実施形態では、パターン28を有する眼球本体12の平坦領域は円形ディスクとして設計されている。平坦領域(故に、パターン28)は約12mmの直径φDを有する。あるいは、別の例示的実施形態では、直径φDは、約9mm~約14mm(特に、約10mm~約13mm)の範囲内の、12mmとは異なる値を有してもよい。パターン28を有する平坦領域の直径φDはヒト虹彩の外縁部の典型的な直径に一致する。
【0033】
加えて、眼球模型10の基部領域20を形成する平坦領域は円形ディスクとして存在する。少なくとも、
図1B及び
図1Cに示す例示的実施形態では、基部領域20の直径φGは約24mmである。更に、眼球本体12は約7.8mmの高さhUを有する。高さhUは、環状表面18の領域内において眼球模型10の基部領域20に対し垂直に延びる。外側面22の領域内において基部領域20に対し垂直に延びる眼球本体12の高さhMは約2.2mmである。
【0034】
別の例示的実施形態では、眼球本体12の直径φGの値及び高さhU、hMの値のうちの少なくとも1つは記載値と異なっていてもよい。したがって、ヒト強膜のより小さな又は大きな部分の擬似物の場合、直径φG及び高さhUは互いの関数として変化するものとしてもよい。
【0035】
図1Dで明らかなように、眼球本体12の平坦領域の区域内には、パターン28と反対側の環状表面18の側に凹部30が設けられている。具体的には、凹部30は、眼球模型10の基部領域20に導入されたねじ切り穴である。ねじ切り穴30は、例えば、眼球模型10を位置決めデバイス(図示せず)に配置する(例えば、ねじ止めする)ために使用してもよい。
【0036】
図1Dに示す例示的実施形態では、ねじ切り穴30は眼球模型10の基部領域20の中央の領域から開始して眼球本体12へと延びている。ねじ切り穴30はまた、基部領域20に対し垂直に延びる約6.5mmの高さhAを有する。別の例示的実施形態では、眼球本体12内に複数の凹部(例えば、複数のねじ切り穴30)が設けられるものとしてもよい。加えて、凹部(単数)又は凹部(複数)は、
図1Dに示される例示的実施形態に関して記載した伸張範囲と異なる伸張範囲を有してもよい。
【0037】
図2A及び
図2Bは、全体として参照番号40で示す、眼球本体12の製造のために使用されるプラスチック材料製の(先の図を参照して記載した通り)ブランクの一例示的実施形態の概略図を示す。
図2Aは、ブランク40(
図2Aに破線で示される矢印の方向に方向付けられている)の斜視図を示し、
図2Bは、ブランク40の側面図を示す。
【0038】
プラスチック材料(この場合、白色ポリ塩化ビニル)の板状ブランク40は、2つの平坦な、対向して位置するブランク平坦面42、44を有する。第1のブランク平坦面42(ブランク上部面42)に複数のパターン28(
図1A及び
図1Bを参照)が適用されている。
【0039】
先の図に示される眼球模型10を製造するために、眼球本体12又は複数の眼球本体12がブランク40から分離される(
図2Bに破線で示されるように)。この工程では、眼球本体12の平坦領域を結合する側表面がそれぞれブランク40内に作成される。眼球模型10の被覆表面14及び基部領域20は、ブランク平坦面42、44の分離された部分によって形成される。
図2Bに示す例示的実施形態では、したがって、ブランク平坦面42、44の間に延びる高さhRは、眼球本体12の平坦領域の間に延びる眼球模型10の高さに一致する(
図1Cを参照)。
【0040】
ブランク40から分離された複数の眼球本体12、即ち、複数の製造後の眼球模型10は、ブランク40に適用された(即ち、形成された)複数のパターン28に対応することが好ましい。
図2Aに示されるブランク40の例示的実施形態によれば、眼球本体12が分離される前に、パターン28はブランク上部面42に既に適用されている。眼球本体12を分離するために、パターン28をリングのような状態で取り囲む凸状湾曲周辺部表面18がブランク40内に作成される。加えて、
図2Bに示す例示的実施形態では、周辺部表面18に隣接する外側面22がブランク40内に作成される。
【0041】
分離工程の前にパターン28を適用することで、既に分離されている各々の眼球本体12にパターン28を個々に適用することに比べて、眼球模型10の製造が簡略化されるとともに加速される。別の例示的実施形態では、更に、眼球本体12又は複数の眼球本体12が分離された後、個々のパターン28又は複数のパターン28を(表面の平坦及び/又は凸状湾曲領域に)適用するものとしてもよい。複数のパターン28は互いに実質的に類似していてもよい。少なくともこの場合、眼球本体12又はブランク40への複数のパターン28の適用は自動的に実施してもよい。
【0042】
パターン28は、ブランク40又はブランク40から既に分離されている眼球本体12にインプリントされることが好ましい。あるいは、パターン28は、ブランク40又はブランク40から既に分離されている眼球本体12に他の何らかの手法で形成してもよい。したがって、例えば、パターン28に塗装を施す、又はパターン28が記載されている接着要素を適用するものとしてもよい。更に、強膜擬似物を有する眼球本体12の部分(
図1A~
図1Dに関して記載したように)に、血管擬似物などの別のパターンを適用するものとしてもよい。
【0043】
別の例示的実施形態では、また、1つの眼球模型10を製造するために1つの眼球本体12のみをブランク40から分離するものとしてもよい。少なくともこの場合、ブランク40はまた、例えば矩形形状であってもよい。
【0044】
図2A及び
図2Bに示すブランク40から眼球本体12を削り出すものとされている。あるいは又は加えて、眼球本体12(又は1つの眼球本体12)の分離には、ブランク40の他の何らかの切断又はチッピング加工を含んでもよい。また、眼球本体12は時間的に連続してブランク40から分離されるものとされている。しかしながら、複数の眼球本体12はまた、一部同時に(例えば、同時に対で)又は同時に分離されてもよい。
【0045】
眼球模型10の製造には更なる工程を含んでもよい。したがって、ブランク40から分離される各眼球本体12に関連するブランク40に、
図1Dに示されるねじ切り穴30(又は複数のねじ切り穴30)を導入するものとされている。具体的には、ねじ切り穴30は、ブランク上部面42の反対側に位置する第2のブランク平坦面44から開始して(例えば、プラスチック材料を削り出すことにより)ブランク40に導入される。あるいは、ねじ切り穴30はまた、眼球本体12を分離した後、眼球本体の基部領域20から開始して、眼球本体12に導入してもよい。
【0046】
別の実施形態では、眼球模型10の製造工程の少なくともいくつかを3D印刷に置換してもよい。例えば、眼球本体12はプラスチック材料(白色ポリ塩化ビニルなど)で3D印刷してもよい。この場合、3D印刷は、着色プラスチック材料(着色ポリ塩化ビニルなど)を印刷することにより眼球本体12にパターン28を適用する工程を更に含んでもよい。
【0047】
図3は、全体として参照番号50で示す、
図1A~
図2Bを参照して記載した眼球模型10を使用するためのデバイスの一例示的実施形態の高度概略ブロック図を示す。
【0048】
デバイス50は、ヒトの眼の屈折矯正レーザー治療用のアイトラッキングシステム52及びレーザーデバイス53を含む。アイトラッキングシステム52は、複数次元、特に2を超える次元の並進及び回転眼球運動を検出し、定量化するように設計されたアイトラッカーであってもよい。アイトラッカー52は、例えば、高度概略的に示すレーザーデバイス53の一部であってもよい。
【0049】
アイトラッカー52は当業者に周知の様々な手法で実装してもよい。
図3に示す例示的実施形態では、アイトラッカー52は赤外線カメラユニット54及び処理ユニット56を含む。アイトラッカー52は、光軸に沿った眼又は眼球模型10の運動に関する情報など、ヒトの眼又は眼球模型10の光軸に沿う方向に関連する情報を得るための手段(ここでは図示せず)を更に含む。この手段は、例えば、赤外線カメラユニット54の視野内に位置するストライプ投影機を含んでもよい。
【0050】
赤外線カメラユニット54は、例えば、眼球模型10の周囲に配置された1つ又は複数の赤外線カメラによって、複数の眼球模型10(及びストライプ投影機)の赤外画像を記録するように構成されている。眼球模型10のこのような赤外画像は、パターン28と、パターン28に隣接する強膜擬似物の少なくとも一部分(即ち、眼球本体12の環状表面18の領域)とを含むものとされている。
図1A~
図2Bを参照して記載したプラスチック材料によって、強膜擬似物は赤外線カメラユニット54による赤外照明下でも高輝度に見える。したがって、パターン28は、赤外照明下でも、即ち赤外画像において、高輝度強膜擬似物に対して色のコントラストを有する。
【0051】
処理ユニット56は、眼球模型10の1つの赤外画像及び複数の赤外画像から、アイトラッカー52に対する、眼の瞳孔30の擬似物の中心の位置及び虹彩構造32の擬似物の姿勢(
図1A、
図1B、及び
図2Aを参照)を特定するように構成されている。パターン28の設計に応じて、別の例示的実施形態では、例えば、処理ユニット56は、例えば、瞳孔縁を認識することにより眼の瞳孔30の擬似物の中心の位置のみを特定するものとしてもよい。
【0052】
図3に示す例示的実施形態では、アイトラッカー52又は処理ユニット56は適切なインターフェースを介してレーザーデバイス53の制御システム58に接続されているため、アイトラッカー52により収集された眼球模型10の運動に関するデータは制御システム58にリレーされ、アイトラッカー53により特定された眼の位置及び眼の姿勢を考慮に入れて、レーザーデバイス53により発生したレーザー放射の制御を行ってもよい。レーザー放射のビーム経路は参照番号60で示す矢印により示される。
【0053】
図3に示す例示的実施形態では、デバイス50はまた、眼球模型10が配置される位置決めデバイス62を含む。眼球模型10は、したがって、例えば、位置決めデバイス62のねじ切り部分(例えば、ねじ)(図示せず)に眼球模型10をねじ止めすることによって固定してもよい。位置決めデバイス62を、その上に配置された眼球模型10とともに、患者台(ここでは図示しない)の頭部支持部の領域内に、例えば、単純なフォームロック嵌合によって患者台に挿入することにより配置するものとされている。
【0054】
位置決めデバイス62はまた、眼球模型10の位置及び姿勢を機械的に調整するように設計されている。したがって、眼球模型10とアイトラッカー52との間の相対運動が実施される。あるいは又は加えて、別の例示的実施形態では、アイトラッカー52と眼球模型10との間の相対運動は、アイトラッカー52の位置及び姿勢を変更することによって行われてもよい。
【0055】
眼球模型10とアイトラッカー52との間のこのような相対運動の結果、3次元強膜擬似物(
図1A~
図2Bを参照して記載したような)は、光軸に沿った及び光軸に垂直なヒトの眼の並進運動、並びにまた、光軸(z軸の周りにおける眼の回転)及び光軸に垂直な空間軸(x軸及びy軸の周りにおける眼の回転)の周りにおける眼の回転運動のシミュレーションを可能にする。実施した相対運動は、運動中、アイトラッカー52により繰り返される赤外画像記録及び赤外画像処理により検出し、定量してもよい。したがって、アイトラッカー52の機能を(例えば、屈折矯正レーザー治療中に行われる際の)眼球運動の全自由度について試験し、例えば、校正してもよい。
【0056】
図3に示されるデバイスとともに眼球模型10を使用する場合、例えば位置決めデバイス62によって実施される眼球模型10の擬似的な運動に基づき、レーザーデバイス53の1つ以上の機能試験も実施してよい、及び/又はレーザーデバイス53を校正してもよい、及び/又は同時アイトラッキングを伴うレーザーデバイス53によるヒトの眼のレーザー治療をシミュレーションしてもよい。