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7179920配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20221121BHJP
   G06F 113/14 20200101ALN20221121BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F113:14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021109099
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 有吾
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-351935(JP,A)
【文献】特開2018-120444(JP,A)
【文献】特開2019-106141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング装置であって、
前記固定ルートを通過するように各前記配管の配管ルートを生成するルート生成部と、
前記配管ルートのそれぞれに対して、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向を示す躱し方向情報を生成する躱し方向情報生成部と、
前記躱し方向情報に基づいて、前記配管ルートの並び順序を設定する順序設定部と、
を備える配管ルーティング装置。
【請求項2】
前記ルート生成部は、前記固定ルートを基準線として、前記基準線に沿って各前記配管ルートを生成する請求項1に記載の配管ルーティング装置。
【請求項3】
進行方向が設定された前記配管ルートのそれぞれに対して、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートとの前記進行方向の対比関係を示す進行方向情報を生成する進行方向情報生成部を備え、
前記躱し方向情報生成部は、前記進行方向情報に基づいて、前記躱し方向情報を生成する請求項1または2に記載の配管ルーティング装置。
【請求項4】
前記進行方向情報は、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートと進行方向が同じであること、及び前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートと進行方向が逆であることが、各前記配管ルートに対応して示されている請求項3に記載の配管ルーティング装置。
【請求項5】
前記躱し方向情報は、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して左右どちらに躱しても交差を回避できること、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して左に躱した場合に交差を回避できること、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して右に躱した場合に交差を回避できること、及び前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して左右どちらに躱しても交差を回避できないことが、各前記配管ルートに対応して示されている請求項1から4のいずれか1項に記載の配管ルーティング装置。
【請求項6】
前記順序設定部は、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートによって前記躱し方向が左右いずれの場合も有する前記配管ルートを対象配管ルートとして、前記躱し方向が左である他の前記配管ルートのグループと、前記躱し方向が右である他の前記配管ルートのグループに分けて、前記対象配管ルートを配置した後に、いずれかの前記グループを配置する請求項1から5のいずれか1項に記載の配管ルーティング装置。
【請求項7】
前記躱し方向情報に基づいて、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向が存在するように、各前記配管ルートを前記固定ルートにおける複数の層に振り分ける層設定部を備え、
前記順序設定部は、各前記層のそれぞれにおいて、前記配管ルートの並び順序を設定する請求項1から6のいずれか1項に記載の配管ルーティング装置。
【請求項8】
前記順序設定部は、前記躱し方向情報に基づいて、交差箇所で前記配管ルートをブリッジさせる請求項1から7のいずれか1項に記載の配管ルーティング装置。
【請求項9】
前記配管ルートの並び順序、及び前記配管ルートの前記固定ルートにおける層振り分けの少なくともいずれか一方において、複数のルートパターンがある場合に、各前記ルートパターンに対して、配管径、前記固定ルートの幅、及び前記配管を支える梁にかかる曲げモーメントの少なくともいずれか1つに基づく評価を行う評価部を備える請求項1から8のいずれか1項に記載の配管ルーティング装置。
【請求項10】
前記固定ルートの分岐点を境目として前記固定ルートを複数のブランチに分け、前記ブランチの組み合わせパターンをブランチパターンとし、前記ブランチパターン毎に前記配管ルートをまとめる配管分類部を備え、
前記進行方向情報生成部は、前記ブランチパターン毎に前記進行方向情報を生成し、
前記躱し方向情報生成部は、前記ブランチパターン毎に前記躱し方向情報を生成する請求項3に記載の配管ルーティング装置。
【請求項11】
配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング装置であって、
前記固定ルートを基準線として、前記基準線に沿って各前記配管の配管ルートを生成するルート生成部と、
前記配管ルートの並び順序を設定する順序設定部と、
を備え
前記順序設定部は、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向が左右いずれの場合も有する前記配管ルートを対象配管ルートとして、前記躱し方向が左である他の前記配管ルートのグループと、前記躱し方向が右である他の前記配管ルートのグループに分けて、前記対象配管ルートを配置した後に、いずれかの前記グループを配置する配管ルーティング装置。
【請求項12】
配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング方法であって、
前記固定ルートを通過するように各前記配管の配管ルートを生成する工程と、
前記配管ルートのそれぞれに対して、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向を示す躱し方向情報を生成する工程と、
前記躱し方向情報に基づいて、前記配管ルートの並び順序を設定する工程と、
を有する配管ルーティング方法。
【請求項13】
配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング方法であって、
前記固定ルートを基準線として、前記基準線に沿って各前記配管の配管ルートを生成する工程と、
前記配管ルートの並び順序を設定する工程と、
を有し、
前記配管ルートの並び順序を設定する工程は、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向が左右いずれの場合も有する前記配管ルートを対象配管ルートとして、前記躱し方向が左である他の前記配管ルートのグループと、前記躱し方向が右である他の前記配管ルートのグループに分けて、前記対象配管ルートを配置した後に、いずれかの前記グループを配置する配管ルーティング方法。
【請求項14】
コンピュータを請求項1から11のいずれかに記載の配管ルーティング装置として機能させるための配管ルーティングプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラントの配管設計では、物理的干渉を避けながら装置間に配管を通過させる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-188282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配管ルーティングでは、装置との物理的干渉を避けながら最短距離でルーティングされるような自動生成プログラムが検討されている。例えばプラント設備では、3次元空間内で多くの構造鉄骨や機器類の間を縫うように、すなわち、配管にとっては障害となる物と干渉しないような配管経路が自動生成プログラムにより最短距離でルーティングされる。一方、プラント設備内には、広域に敷設される配管群をまとめ、地表近くの物体と干渉を避けるため、配管ラックを設ける場合がある。配管ラックを通過するルートは最短距離とならない場合が多く、上記の自動生成プログラムでは、配管ラックを通過しないルートが生成される可能性が高い。
【0005】
配管ラックを複数の配管が通過する場合には、配管を横並びにする必要があるが、並び順序が適切でないと配管同士が交差する箇所が数多く発生する可能性がある。配管ルーティングで総当り的に演算を行う場合には処理量が膨大となる可能性がある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、配管が通過すべきルートとして予め設定されているルートである固定ルートを有するプラント設備において効率的に配管のルーティングを行うことのできる配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様は、配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング装置であって、前記固定ルートを通過するように各前記配管の配管ルートを生成するルート生成部と、前記配管ルートのそれぞれに対して、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向を示す躱し方向情報を生成する躱し方向情報生成部と、前記躱し方向情報に基づいて、前記配管ルートの並び順序を設定する順序設定部と、を備える配管ルーティング装置である。
【0008】
本開示の第2態様は、配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング方法であって、前記固定ルートを通過するように各前記配管の配管ルートを生成する工程と、前記配管ルートのそれぞれに対して、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向を示す躱し方向情報を生成する工程と、前記躱し方向情報に基づいて、前記配管ルートの並び順序を設定する工程と、を有する配管ルーティング方法である。
【0009】
本開示の第3態様は、コンピュータを上記の配管ルーティング装置として機能させるための配管ルーティングプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、固定ルートを有するプラント設備において効率的に配管のルーティングを行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る配管ルーティング装置が備えるハードウェア構成の一例を示した概略構成図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る配管ルーティング装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
図3】配管ラックを積み木形状で示した図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る配管ラックをアウトラインでモデル化した図である。
図5】本開示の第1実施形態に係る配管ラックのルートをアウトラインで示した図である。
図6】本開示の第1実施形態に係る配管ラックにおけるルート設定例を示す図である。
図7】本開示の第1実施形態に係る配管ラックにおけるルート設定例を示す図である。
図8】本開示の第1実施形態に係る配管ラックにおけるルート設定例を示す図である。
図9】本開示の第1実施形態に係る配管ラックにおけるルート設定例を示す図である。
図10】本開示の第1実施形態に係る進行方向の定義ルールを説明する図である。
図11】本開示の第1実施形態に係る複数のルートの構成例を示す図である。
図12】本開示の第1実施形態に係る進行方向の状態に対応する躱し方向を説明する図である。
図13】本開示の第1実施形態に係る具体的なルートの躱し方向について説明する図である。
図14】本開示の第1実施形態に係る具体的なルートの躱し方向について説明する図である。
図15】本開示の第1実施形態に係る具体的なルートの躱し方向について説明する図である。
図16】本開示の第1実施形態に係る複数のルートの構成例を示す図である。
図17】本開示の第1実施形態に係る配置方法を説明する図である。
図18】本開示の第1実施形態に係る配置方法を説明する図である。
図19】本開示の第1実施形態に係るルーティング処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図20】本開示の第1実施形態に係る配管の配置例を示す図である。
図21】本開示の第1実施形態に係るルーティング処理の手順の具体例を示すフローチャートである。
図22】本開示の第1実施形態に係る順序操作の手順の具体例を示すフローチャートである。
図23】本開示の第1実施形態に係る具体的処理を説明する図である。
図24】本開示の第1実施形態に係る各ルートの配置例を示す図である。
図25】本開示の第2実施形態に係る配管ルーティング装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
図26】本開示の第2実施形態に係る複数のルートの構成例を示す図である。
図27】本開示の第2実施形態に係る第1層の構成例を示す図である。
図28】本開示の第2実施形態に係る第2層の構成例を示す図である。
図29】本開示の第3実施形態に係るブリッジを説明する図である。
図30】本開示の第3実施形態に係る分割した例を示している。
図31】本開示の第4実施形態に係る複数のルートの構成例を示す図である。
図32】本開示の第4実施形態に係る各パターンを説明する図である。
図33】本開示の第4実施形態に係る各パターンを説明する図である。
図34】本開示の第4実施形態に係る各パターンを説明する図である。
図35】本開示の第4実施形態に係る各パターンを比較する図である。
図36】本開示の第5実施形態に係る配管ルーティング装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
図37】本開示の第5実施形態に係る曲げモーメントを説明する図である。
図38】本開示の第5実施形態に係る配置例を説明する図である。
図39】本開示の第6実施形態に係る配管ルーティング装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
図40】本開示の第6実施形態に係る配管ラックのアウトラインの一例を示す図である。
図41】本開示の第6実施形態に係るブランチパターンごとに躱し方向マトリックスを作成した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムの第1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
配管ルーティング装置10は、プラント設備の配管設計に適用される。プラント設備には、敷設される配管群をまとめ、地表近くの物体と干渉を避けるため、配管ラックが設けられる。配管ラックは、複数の梁が設けられており、配管は梁に支えられて配管ラック内に配置される。配管ラックは、配管が通過するルートとして予め配置されている構成であるため、配管ラックは配管のルーティングにおいて予め定められたルート(固定ルート)となる。なお、固定ルートは、配管が通過するルートとして予め設定されていればよく、配管ラック以外にも、例えば、地下共同溝配管等とすることとしてもよく上記に限定されない。配管ルーティング装置10は、固定ルートを有するプラント設備において、複数の配管の配管経路を設定する。
【0014】
図1は、本開示の第1実施形態に係る配管ルーティング装置10が備えるハードウェア構成の一例を示した概略構成図である。図1に示すように、配管ルーティング装置10は、いわゆるコンピュータであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)11、メインメモリ12、記憶部13、外部インターフェース14、通信インターフェース15、入力部16、及び表示部17等を備えている。これら各部は直接的にまたはバスを介して間接的に相互に接続されており、互いに連携して各種処理を実行する。
【0015】
CPU11は、例えば、バスを介して接続された記憶部13に格納されたOS(Operating System)により配管ルーティング装置10全体の制御を行うとともに、記憶部13に格納された各種プログラムを実行することにより各種処理を実行する。
【0016】
メインメモリ12は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU11の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
【0017】
記憶部13は、非一時的な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等である。記憶部13は、例えば、Windows(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)等の装置全体の制御を行うためのOS、BIOS(Basic Input/Output System)、周辺機器類をハードウェア操作するための各種デバイスドライバ、各種アプリケーションソフトウェア、及び各種データやファイル等を格納する。また、記憶部13には、各種処理を実現するためのプログラムや、各種処理を実現するために必要とされる各種データが格納されている。
【0018】
外部インターフェース14は、外部機器と接続するためのインターフェースである。外部機器の一例として、外部モニタ、USBメモリ、外付けHDD等が挙げられる。なお、図1に示した例では、外部インターフェースは、1つしか図示されていないが、複数の外部インターフェースを備えていてもよい。
【0019】
通信インターフェース15は、ネットワークに接続して他の装置と通信を行い、情報の送受信を行うためのインターフェースとして機能する。
例えば、通信インターフェース15は、例えば、有線又は無線により他の装置と通信を行う。無線通信として、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、専用の通信プロトコルを用いた通信等が挙げられる。有線通信の一例として、有線LAN(Local Area Network)等が挙げられる。
【0020】
入力部16は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド等、ユーザが指示を与えるためのユーザインタフェースである。
【0021】
表示部17は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。また、表示部17は、タッチパネルが重畳されたタッチパネルディスプレイでもよい。
【0022】
図2は、配管ルーティング装置10が備える機能を示した機能ブロック図である。図2に示されるように、配管ルーティング装置10は、ルート生成部21と、進行方向情報生成部22と、躱し方向情報生成部23と、順序設定部24とを備えている。
【0023】
これら各部によって実現される機能は、例えば、処理回路(processing circuitry)によって実現される。例えば、以下に示す機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラム(例えば、経路教示データ作成プログラム)の形式で記憶部13に記憶されている。そして、このプログラムをCPU11がメインメモリ12に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。
【0024】
なお、プログラムは、記憶部13に予めインストールされている形態や、他のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0025】
ルート生成部21は、配管ラックを通過するように各配管のルート(配管ルート)を生成する。具体的には、各配管には、始点及び終点が予め設定されている。ルート生成部21は、この始点及び終点をつなぐようにルーティングを行うが、特に配管ラックを通過するようにルートを設定する。なお、配管によって配管ラックを通るか否かを設定し、配管ラックを通る設定をした配管のみ配管ラックを通過するルートを生成することとしても良い。
【0026】
ルート生成部21は、配管ラックを基準線(以下、「アウトライン」という)OLとして、アウトラインOLに沿って各ルートを生成する。配管ラックは、3次元形状を有する。この3次元形状を簡略化するために例えば図3に示すように複数の直方体(積み木)で定義した場合、直方体の定義やモディファイに手間を要する場合がある。このため、本実施形態では、固定ルートである配管ラックを、アウトラインOLで示す。図4は、アウトラインOLを中心線として、配管ラックをモデル化した例を示す。このように、配管ラックが長手方向の折れ線(アウトラインOL)として示されることで、モデルが簡略化でき、モディファイもしやすくなる。なお、アウトラインOLについては、中心線に限定されない。
【0027】
すなわち、プラント設備において、配管ラックの位置がアウトラインOLで示される。図5は、プラント設備において、配管ラックをアウトラインOLで示した図である。図5に示すように、配管ラックの構造に合わせて、端点や分岐が設定される。図5の例では、端点が4つ(端点A、端点B、端点C、端点D)設定されている場合を例示している。2つの端点をつなぐために、端点の組み合わせを予め設定することしても良い。例えば、端点Aと端点B、端点Aと端点C、端点Aと端点D、端点Bと端点C、端点Bと端点D、端点Cと端点Dが互いにつなぐことができると設定される。例えば端点Bと端点Dは互いにつなぐことができないと設定することも可能である。
【0028】
図5のようにアウトラインOLが設定されると、ルート生成部21は、アウトラインOLに沿って(アウトラインOL上を通るように)各配管のルートを生成する。例えば、図6に示すように、ある配管の始点S1と終点E1が設定されたとする。この場合には、始点S1から最寄りのアウトラインOLへ垂線が設定される。終点E1も同様である。すると、設定された端点の組み合わせから、端点Aと端点Dの組み合わせが選択される。そして、端点Aと端点Dを結ぶルートを、始点S1から設定された垂線とアウトラインOLの交点S1’と、終点E1から設定された垂線とアウトラインOLの交点E1’を結ぶルートまで短縮したルートが配管ラック上のルートとして設定される。図7は、始点S2と終点E2、始点S3と終点E3、始点S4と終点E4に対しても同様に処理を行った場合の例を示している。図7の例では、後述するように並走するルートの並び順序が図8のように設定される。なお、ルート同士の間隔は、配管重量を考慮して、隣接する配管外周面の間に所定間隔(例えば150mm)が設けられる。そして配管ラック以外のルートが図9に示すように機器等を避けるように設定される。配管ラック以外のルートの設定方法については限定されず、様々な方法を用いることができる。
【0029】
ここで、配管ラック上では複数の配管が横並びで配置される。このため、横方向の並びの順序によっては、配管ルートの交差が発生する可能性がある。交差が発生すると、ルートの複雑化による部品コスト・製作コストの増大や、流体の滞留等の問題を生じる場合があるため、なるべく交差が生じないように各ルートの並び順序を設定することが好ましい。本実施形態では、後述する進行方向情報生成部22及び躱し方向情報生成部23における処理によって、交差が回避できるように、ルート生成部21で生成されたルートの並び順序を設定していく。
【0030】
進行方向情報生成部22は、ルートのそれぞれに対して、配管ラックにおける同じ箇所を通過する(並走する)他のルートとの進行方向の対比関係を示す進行方向情報(以下、「進行方向マトリックス」という)を生成する。
【0031】
図10は、進行方向の定義ルールを説明する図である。各ルートには、進行方向が定義されているものとする。進行方向とは、ルートの向きを示すものであり、任意に設定される。例えば、始点から終点に向かう方向を進行方向としてもよい。なお、配管内を流通する流体の流れ方向とは必ずしも一致しない。後述するように躱し方向は、進行方向に対して右か左かで定義される。ルート同士の進行方向の対比関係は、自身と相手との関係によって決まる相対的なものである。図10の(a)ではルートRAに対してルートRBは同方向であることを示している。(b)は、ルートRCに対してルートRAは同方向であることを示している。(c)は、ルートRBに対してルートRCは逆方向であることを示している。
【0032】
図11は、複数のルートの構成例を示す図である。各ルートの矢印の向きは進行方向を示している。図11では、各ルートがわかりやすいように少しずらして記載しているが、実際の処理としてはアウトラインOL上に設定される。すなわち、並走しているルートはアウトラインOL上で互いに重なることとなる。そして、図11では、対応する進行方向マトリックスを示している。進行方向マトリックスは、ルートごとに、他のルートとの進行方向の対比関係を示す情報である。進行方向マトリックスは、並走する他のルートと進行方向が同じであること、並走する他のルートと進行方向が逆であること、及びどちらでもない(並走区間がない)ことが、各ルートに対応して示されている。具体的には、相手と同方向である場合には1を、相手と逆方向である場合には-1を、どちらでもない(並走区間がない)場合には0を設定するものとする。例えば、図11において、ルートR4から見たときに、ルートR0は進行方向が同方向であるため1が設定される。ルートR4から見たときに、ルートR6は進行方向が逆方向であるため-1が設定される。ルートR4から見たときに、ルートR8は並走しないため0が設定される。
【0033】
このように、進行方向情報生成部22では、ルートごとに、他のルートとの進行方向の状態が進行方向マトリックスとして整理される。
【0034】
躱し方向情報生成部23は、進行方向マトリックスに基づいて、ルートのそれぞれに対して、並走する他のルートに対して交差回避できる躱し方向を示す躱し方向情報(以下、「躱し方向マトリックス」という)を生成する。躱し方向とは、他のルートに対して、自身の進行方向を基準に、自身を左右どちらに移動すれば(躱せば)交差が生じないかを示す方向である。
【0035】
図12は、進行方向の状態に対応する躱し方向を説明する図である。各ルートの矢印の向きは進行方向を示している。図12の(a)ではルートRAに対してルートRBは同方向であることを示しており、ルートRAはルートRBとの交差を避けるために、自身の進行方向に対して左方向に躱せば交差を回避できる。(b)では、ルートRCに対してルートRAは同方向であることを示しており、ルートRCはルートRAとの交差を避けるために、自身の進行方向に対して右方向に躱せば交差を回避できる。(c)は、ルートRBに対してルートRCは逆方向であることを示しており、ルートRBはルートRCとの交差を避けるために、自身の進行方向に対して右方向に躱せば交差を回避できる。このようにして、自身のルートの進行方向を基準として、他のルートに対する躱し方向を定義する。
【0036】
図13は、具体的なルートの躱し方向について説明する図である。図13では、ルートR4に対するルートR0の躱し方向を設定する例を示している。ルートR0とルートR4とは並走する区間(アウトラインOL上で互いに重なる区間)を有しており、進行方向は同じである。この場合に、ルートR0を全体的に進行方向右側へオフセットしたルートR0(右)と、ルートR0を全体的に進行方向左側へオフセットしたルートR0(左)を作成する。そうすると、ルートR0(左)は、ルートR4と交差してしまう。一方で、ルートR0(右)は、ルートR4と交差しない。このため、ルートR4に対するルートR0の躱し方向は右となる。
【0037】
例えば、ルートR0とルートR4aが図14のような状態である場合には、ルートR4aに対するルートR0の躱し方向は右及び左の両方(右及び左のどちらに躱しても交差回避できる)となる。ルートR0とルートR4bが図15のような状態である場合には、ルートR4bに対するルートR0の躱し方向はなし(右及び左のどちらに躱しても交差回避できない)となる。
【0038】
図16は、複数のルートの構成例を示す図である。図16では、各ルートがわかりやすいように少しずらして記載しているが、実際の処理としてはアウトラインOL上に設定される。すなわち、並走しているルートはアウトラインOL上で互いに重なることとなる。そして、図16では、対応する躱し方向マトリックスを示している。躱し方向マトリックスは、ルートごとに、他のルートに対して交差回避可能な躱し方向を示す情報である。躱し方向マトリックスは、並走する他のルートに対して左右どちらに躱しても交差を回避できること、並走する他のルートに対して左に躱した場合に交差を回避できること、並走する他のルートに対して右に躱した場合に交差を回避できること、及び並走する他のルートに対して左右どちらに躱しても交差を回避できないことが、各ルートに対応して示されている。具体的には、交差がなしの場合(重なる区間や交わる区間がなく、躱す必要がない場合)には0を、躱し方向が左右の両方(右及び左のどちらに躱しても交差回避できる)である場合には1を、躱し方向が左のみである場合には2を、躱し方向が右のみである場合には3を、躱し方向はなしの場合(左右のどちらに躱しても交差回避できない場合)には4を設定するものとする。例えば、図16において、ルートR4から見たときに、ルートR0は躱し方向が左であるため2が設定される。ルートR4から見たときに、ルートR3は躱し方向が右であるため3が設定される。ルートR4から見たときに、ルートR5は交差しないため0が設定される。
【0039】
順序設定部24は、躱し方向マトリックスに基づいて、並走するルートの並び順序を設定する。並び順序とは、並走する複数のルートの横方向の並び配置である。ルート生成部21で生成された各ルートはアウトラインOLに沿って設定されているため、このままでは配管同士が干渉してしまう。順序設定部24では、交差がなるべく発生しないように、並び順序を設定する。順序設定部24は、アウトラインOLを基準にして各ルートの並び順序を設定する。
【0040】
図16のルートの構成及び躱し方向マトリックスにおいて、並び順序を設定する場合について説明する。図16は、躱し方向マトリックスにおいて4(左右どちらに躱しても交差回避できない場合)がない場合である。躱し方向マトリックスにおいて行全体が0であるルート(R5及びR8)は、躱すべき相手を持たないため、他のルートとの関係によらず配置できる。躱し方向マトリックスにおいて、行全体で0以外がすべて同じ数字であるルート(R2及びR6は3であり、R3及びR7は2)は、他のルートとの関係において左右のどちらかに躱せば交差を回避することができるため、躱し方向に従って他のルートに対してずれて配置さえればよい。
【0041】
躱し方向マトリックスにおいて、行全体で0以外が2及び3の両方を含むルート(R0、R1及びR4)は、互いの並び方次第で交差が発生する可能性がある。
【0042】
このため、相手によって躱し方向が左右いずれの場合も有するルートを対象ルート(対象配管ルート)とする。そして、対象ルートの躱し方向が左である他のルートのグループと、対象ルートの躱し方向が右である他のルートのグループに分ける。そして、対象ルートを配置した後に、いずれかのグループを配置する。
【0043】
図17及び図18は、対象ルートをルートR0とする場合の例を示している。ルートR0は、ルートR1、ルートR2、ルートR7に対して2(躱し方向が左)が設定されている。すなわち、ルートR1、ルートR2、ルートR7は、ルートR0に対して右側にいるべきルートとなる。ルートR1、ルートR2、及びルートR7を右配置グループとする。ルートR0は、ルートR3、ルートR4に対して3(躱し方向が右)が設定されている。すなわち、ルートR3、ルートR4は、ルートR0に対して左側にいるべきルートとなる。ルートR3、及びルートR4を左配置グループとする。
【0044】
図17は、右配置グループに着目して配置を行う場合の例である。この場合には、まず対象ルートR0を配置する。例えばアウトラインOLや既に設定されているルートの右側に配置される。対象ルートR0を配置した後に、右配置グループ(ルートR1、ルートR2、及びルートR7)を配置する。これによって、対象ルートR0は、右配置グループに対して左に躱したこととなるため、右配置グループに対して交差を回避できる。今回着目していない左配置グループについては、対象ルートR0を配置する前に配置しても良いし、右配置グループを配置した後に対象ルートR0の左側に配置することとしてもよい。
【0045】
図18は、左配置グループに着目して配置を行う場合の例である。この場合には、まず対象ルートR0を配置する。例えばアウトラインOLや既に設定されているルートの左側に配置される。対象ルートR0を配置した後に、左配置グループ(ルートR3、ルートR4)を配置する。これによって、対象ルートR0は、左配置グループに対して右に躱したこととなるため、左配置グループに対して交差を回避できる。今回着目していない右配置グループについては、対象ルートR0を配置する前に配置しても良いし、左配置グループを配置した後に対象ルートR0の右側に配置することとしてもよい。
【0046】
図17図18のように配置していく順番(時間的な順番)を設定することによって、並び順序を総当りすることなく、交差を回避できる並び順序を設定することができる。躱し方向が左右両方含む他のルートであるルートR1及びルートR4についても上記のルートR0と同様に処理することができる。
【0047】
次に、上述の配管ルーティング装置10によるルーティング処理の一例について図19を参照して説明する。図19は、本実施形態に係るルーティング処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0048】
まず、配管ラックを通過するように、各配管の始点及び終点のセットのそれぞれに対応したルートを生成する(S101)。S101では、各ルートはアウトラインOLに沿って生成される。
【0049】
次に、各ルートのそれぞれに対応した進行方向マトリックスを生成する(S102)。
【0050】
次に、進行方向マトリックスに基づいて、各ルートのそれぞれに対応した躱し方向マトリックスを生成する(S103)。
【0051】
次に、躱し方向マトリックスに基づいて、各ルートの並び順序を設定する(S104)。なお、交差がないルート同士の並び順序は、例えば図20に示すように、重量が軽い配管は配管ラックの内側(アウトラインOLの近く)に配置し、重量が重い配管は配管ラックの外側に配置することが好ましい。このようにすることで、梁への曲げモーメントを抑制することができる。隣接する配管の外周面間の間隔CLは等しく設定されてもよいし、各配管を固縛する機材等によって適切な間隔としてもよい。並び順序が設定されたらアウトラインOLを中心としてセンタリングすることが好ましい。
【0052】
上記の処理により、効率的に各ルートの配置を設定することができる。
【0053】
次に、ルーティング処理の具体例について図21を参照して説明する。図21は、本実施形態に係るルーティング処理の手順の具体例を示すフローチャートである。図21では、図16の躱し方向マトリックスに対応したルーティング処理の具体例である。具体的には、行全体で0以外が2及び3の両方を含むルート(R0、R1及びR4)に対して、交差が生じないように並び順序を設定する。
【0054】
図21は、再帰的に探索を行うもの(例えば二分木走査アルゴリズム(深さ優先探索))である。具体的には、分岐点がある場合には、原則として左へ進むものとし、進んだ後の処理で再帰処理(すなわち「戻る」の処理)を行う場合に、一つ前の分岐点まで処理を戻り、右へ進むものとする。
【0055】
まず、処理を開始すると、分岐点BK1となるため、左へ進む。そして、順序操作1Aを行う(SA1)。順序操作では、対象ルートと、対象配置グループが設定される。そして、図17及び図18に示すように、対象配置グループよりも先に対象ルートを配置するように配置順序が設定される。配置順序とは、並び順序ではなく、各ルートを配置していく時間的な順番である。順序操作では、対象配置グループよりも先に対象ルートを配置するように配置順序であることを要件として、この要件が満たされていない場合には、配置順序の変更を行う。順序操作の詳細については後述する。順序操作1Aでは、対象ルートをルートR0として、対象配置グループを右配置グループとする。
【0056】
次に、分岐点BK2となるため、左へ進む。そして、順序操作2Aを行う(SA2a)。順序操作2Aでは、対象ルートをルートR1として、対象配置グループを右配置グループとする。そして、順序操作2Aで配置順序が変わる可能性があるため、順序操作1Aの要件(対象配置グループよりも先に対象ルートを配置するように配置順序であること)が満たされるか否かを判定する(SA3a)。
【0057】
順序操作1Aが満たされない場合(SA3aのNO判定)には、分岐点BK2へ戻り(配置順序についても戻り先まで戻る)、右へ進む。そして、順序操作2Bを行う(SA2b)。順序操作2Bでは、対象ルートをルートR1として、対象配置グループを左配置グループとする。そして、順序操作2Bで配置順序が変わる可能性があるため、順序操作1Aの要件が満たされるか否かを判定する(SA3b)。SA3bでNO判定の場合には、分岐点BK1へ戻り、右へ処理が進む。順序操作1Bでは、対象ルートをルートR0として、対象配置グループを左配置グループとして、順序操作処理を行う(SB1)。
【0058】
順序操作1Aが満たされた場合(SA3aのYES判定)には、分岐点BK3となるため、左へ進む。そして、順序操作3Aを行う(SA4a)。順序操作3Aでは、対象ルートをルートR4として、対象配置グループを右配置グループとする。そして、順序操作3Aで配置順序が変わる可能性があるため、順序操作1A及び順序操作2Aの要件が満たされるか否かを判定する(SA5a)。
【0059】
順序操作1A及び順序操作2Aが満たされる場合(SA5aのYES判定)には、配置順序が決定される。
【0060】
順序操作1A及び順序操作2Aが満たされない場合(SA5aのNO判定)には、分岐点BK3へ戻り、右へ進む。そして、順序操作3Bを行う(SA4b)。順序操作3Bでは、対象ルートをルートR4として、対象配置グループを左配置グループとする。そして、順序操作3Bで配置順序が変わる可能性があるため、順序操作1A及び順序操作2Aの要件が満たされるか否かを判定する(SA5b)。SA5bでNO判定の場合には、分岐点BK2へ戻り、右へ処理が進む。
【0061】
図21のフローにおいて、SA2a及びSB2aは同様に順序操作2Aを行う。SA2b及びSB2bは同様に順序操作2Bを行う。SA4a、SA4c、SB4a、SB4cは同様に順序操作3Aを行う。SA4b、SA4d、SB4b、SB4dは同様に順序操作3Bを行う。SB3a及びSB3bは同様に、順序操作1Bの要件(対象配置グループよりも先に対象ルートを配置するように配置順序であること)が満たされるか否かを判定する。SA5c及びSA5dは同様に順序操作1A及び順序操作2Bの要件が満たされるか否かを判定する。SB5a及びSB5bは同様に順序操作1B及び順序操作2Aの要件が満たされるか否かを判定する。SB5c及びSB5dは同様に順序操作1B及び順序操作2Bの要件が満たされるか否かを判定する。
【0062】
図21の処理を行うことで、ルートの配置順序を決定することができる。
【0063】
次に、順序操作の一例として図22を用いて説明する。
【0064】
まず、対象ルート及び対象配置グループを設定する(S201)。そして、対象ルートが対象配置グループよりも前に配置されるか否かを判定する(S202)。対象ルートが対象配置グループよりも前に配置される場合(S202のYES判定)には、処理を終了する。
【0065】
対象ルートが対象配置グループよりも前に配置されない場合(S202のNO判定)には、対象ルートが対象配置グループよりも前に配置されるように、配置順序を変更する(S203)。
【0066】
次に、図21の処理を行う場合の具体的処理の一例について説明する。図23は、具体的処理を説明する図である。図23では、丸で各順序操作における対象ルートを囲み、四角で各順序操作における対象配置グループを囲んでいる。
【0067】
まず分岐点BK1で左へ進み、順序操作1Aを行う。順序操作1Aでは、対象ルートはR0であり、対象配置グループは右配置グループ(R1、R2、R7)である。そして、ルートR0からルートR8のそれぞれに配置順序(時間的な配置順番)を設定する。具体的には、配置順序O{R0、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8}として、配置順序を1から9で示す。初期値としては、O{1、2、3、4、5、6、7、8、9}とする。すなわち、初期値では、R0が1番目に配置され、R1が2番目に配置され、R2が3番目に配置され、R3が4番目に配置され、R4が5番目に配置され、R5が6番目に配置され、R6が7番目に配置され、R7が8番目に配置され、R8が9番目に配置される。
【0068】
ここで、初期値の状態で、O{1、2、3、4、5、6、7、8、9}のため、対象ルートR0は1番目に配置され、対象配置グループである右配置グループ(R1、R2、R7)は、それぞれ2番目、3番目、8番目に配置されるため、要件を満たす。このため、配置順序Oは変更しない。
【0069】
そして、分岐点BK2において左へ進み、順序操作2Aを行う。順序操作2Aでは、対象ルートはR1であり、対象配置グループは右配置グループ(R2)である。現在の配置順序O{1、2、3、4、5、6、7、8、9}において、対象ルートR1は2番目に配置され、対象配置グループである右配置グループ(R2)は、3番目に配置されるため、要件を満たす。このため、配置順序Oは変更しない。ここで、現在の配置順序O{1、2、3、4、5、6、7、8、9}で順序操作1Aの要件を満たすため、分岐点BK3で左へ進む。
【0070】
順序操作3Aでは、対象ルートはR4であり、対象配置グループは右配置グループ(R0、R1、R2)である。現在の配置順序O{1、2、3、4、5、6、7、8、9}において、対象ルートR4は5番目に配置され、対象配置グループである右配置グループ(R0、R1、R2)は、それぞれ1番目、2番目、3番目に配置されるため、要件を満たさない。このため、配置順序の変更を行う。
【0071】
まず、相手をルートR0とする。そして、配置順序において、1以上5(対象ルートR4の値)未満の値は+1する。すると、配置順序はO{2、3、4、5、5、6、7、8、9}となる。そして、対象ルートR4の値を、相手のルートR0のもとの値(1)とすると、配置順序はO{2、3、4、5、1、6、7、8、9}となる。これによって、相手のルートR0に対しては、対象ルートR4のほうが先に配置される。
【0072】
同様に、他の相手のルートR1及びルートR2についても見てみると、変更後の配置順序で要件が満たされている。また、順序操作1A及び順序操作2Aの要件についても満たされている。このため、配置順序O{2、3、4、5、1、6、7、8、9}が、最終的な配置順序となる。具体的には、ルートR4、ルートR0、ルートR1、ルートR2、ルートR3、ルートR5、ルートR6、ルートR7、ルートR8の順番で配置される。例えば、ルートR0を配置する場合には、すでにルートR4が配置されることとなるため、躱し方向マトリックスに従い、右方向に躱す。ルートR7を配置する場合には、躱し方向マトリックスに従い、既に配置されているルートに対して、左方向に躱す。
【0073】
このように、導出された配置順序Oの順番で、躱し方向マトリックスに基づいて各ルートを配置すると、図24に示すように、ルートR0からルートR8を、交差を発生させずに配置することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムによれば、固定ルート(例えば配管ラック)を有するプラント設備において、まず、配管ラックを通過するようにルートが生成される。そして、各ルートにおいて、配管ラックにおける同じ区間を通過する他のルートとの相対的な進行方向の状態を示す進行方向情報が生成される。これによって、同じ区間を通過する他のルートに対して交差回避できる方向を示す躱し方向を導出することができる。このため、躱し方向情報に基づいて、交差をなるべく回避しつつ、ルートの並び順序を設定することができる。このように進行方向情報及び躱し方向情報を用いることで、処理量を抑制して効率的にルートの並び順序を設定することができる。例えばルートの並び順序を総当たり的にシミュレーションした場合と比較して、高速にルーティングすることが可能である。
【0075】
配管ラックを基準線で示し、基準線に沿ってルートの生成及び並び順序の設定を行うことで、例えば実際の屋外配管ラックの形状を模した3次元立体として扱う場合と比較して、効果的に処理を効率化できる。これによりルーティング処理を高速に実行することが可能となる。
【0076】
配管ラックにおける同じ区間を通過する他のルートに対する躱し方向が左右いずれの場合も有するルートは、配置順序によって、他の配管ルートとの交差が発生し易い。このため、躱し方向が左である他のルートのグループと、躱し方向が右である他のルートのグループに分けて、対象ルートを配置した後に、いずれかのグループを配置することで、交差を回避した並び順序を効率的に設定することができる。
【0077】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて説明する。
上述した第1実施形態では、躱し方向マトリックスにおいて4(左右どちらに躱しても交差回避できない場合)がないケースを説明していたが、本実施形態では、躱し方向マトリックスに4がある場合について説明する。以下、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0078】
本実施形態における配管ルーティング装置10は、図25に示すように、層設定部25を備える。
層設定部25は、躱し方向マトリックスに基づいて、並走する他のルートに対して交差回避できる躱し方向が存在するように、各ルートを配管ラックにおける複数の層に振り分ける。すなわち、層設定部25は、1層では交差を回避できる並び順序がない場合に、各ルートを複数の層に分ける。配管ラックの層数の最大値は、予め設定することができる。本実施形態では2層(第1層及び第2層)が許容されるものとする。各ルートが複数の層に分けられる場合には、順序設定部24は、各層のそれぞれにおいてルートの並び順序を設定する。
【0079】
なお、本実施形態では、1層では交差を回避できる並び順序がない場合に、層を分けて設定する場合について説明するが、1層で交差を回避できる場合であっても、層を分けて設定することとしても良い。
【0080】
図26は、複数のルートの構成例を示す図である。図26では、各ルートがわかりやすいように少しずらして記載しているが、実際の処理としてはアウトラインOL上に設定される。そして、図26では、対応する躱し方向マトリックスを示している。図26に示すように、ルートR5が、ルートR1及びルートR2に対して4(左右どちらに躱しても交差回避できない場合)である。このため、ルートR1及びルートR2に対して、ルートR5を別層に移す。本実施形態では、ルートR0、ルートR5、ルートR7、及びルートR8を別層とする場合を例として説明する。
【0081】
図27は、ルートR1、ルートR2、ルートR3、ルートR4、及びルートR6を第1層とした場合の例を示している。図27では、別層に該当するルートは躱し方向マトリックスから削除している。層を分けた場合、マトリックスから別層に該当するルートを削除すればよいため、簡単に処理が可能である。図27の躱し方向マトリックスに示すように、4が含まれるルートがなくなったため、互いに交差を回避しつつルートを設定することができる。
【0082】
図28は、ルートR0、ルートR5、ルートR7、及びルートR8を第2層とした場合の例を示している。図28では、別層に該当するルートは躱し方向マトリックスから削除している。層を分けた場合、マトリックスから別層に該当するルートを削除すればよいため、簡単に処理が可能である。図28の躱し方向マトリックスに示すように、4が含まれるルートがなくなったため、互いに交差を回避しつつルートを設定することができる。
【0083】
例えば、9つのルートを2層に分ける組み合わせは256通りある。そのうち、躱し方向マトリックスに4が設定されるものなど、成立しない組み合わせの数をαとすると、256-α通りの組み合わせがあるため、それぞれの組み合わせを比較して、最適なパターンを選択することが好ましい。選択の手順については第5実施形態で説明する。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムによれば、交差回避できる躱し方向が存在するように各ルートを各層に割り振るため、配管数が多い場合やルートが複雑な場合でも、効率的に交差を回避した配管配置を行うことができる。
【0085】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて説明する。
上述した第2実施形態では、交差を回避するために配管ラックの別層に移す場合を説明したが、設定可能な層数を超える場合など、別層に移すことができないケースがある。このため、本実施形態では、ブリッジを構成する場合について説明する。以下、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0086】
順序設定部24は、躱し方向マトリックスに基づいて、交差箇所でルートをブリッジさせる。ブリッジとは、図29に示すように、他のルートを跨いでルートを繋ぎ、物理的な干渉を回避する方法である。ブリッジは配管ラックの同一層内で行われる。
【0087】
例えば図26に示すように、ルートR5が、ルートR1及びルートR2に対して4である場合(左右どちらに躱しても交差回避できない場合)、図30に示すように、交差する箇所でルートR5を分割する。そして、分割した前後のルートを、それぞれルートR5a、ルートR5bとして、躱し方向マトリックスを再構成する。これによって躱し方向マトリックスにおいて4がなくなる。このため、ルートR5aとルートR5bについてそれぞれ配置を決定し、他のルートを跨ぐようにして、ブリッジによりルートR5aとルートR5bを接続することで、交差を回避することができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムによれば、交差が発生してしまう箇所については配管ルートをブリッジさせることで、物理的干渉を回避することができる。
【0089】
〔第4実施形態〕
次に、本開示の第4実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて説明する。
上述した第1実施形態では、躱し方向マトリックスに1(左右どちらに躱しても交差回避できる場合)が設定されない場合を説明していたが、本実施形態では、躱し方向マトリックスに1が設定された場合について説明する。以下、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と異なる点について主に説明する。
【0090】
図31は、複数のルートの構成例を示す図である。そして、図31では、対応する躱し方向マトリックスを示している。図31に示すように、ルートR1が、ルートR0及びルートR2に対して1(左右どちらに躱しても交差回避できる場合)である。このため、図32のようにルートR1に対してルートR0及びルートR2を左に配置することとしてもよいし、図33のようにルートR1に対してルートR0を左に、ルートR2を右に配置することとしてもよし、図34のようにルートR1に対してルートR0及びルートR2を右に配置することとしてもよい。すなわち、躱し方向マトリックスに1がある場合には、ルートの配置方法が複数パターン存在することとなる。図32図33図34では、それぞれに対応する躱し方向マトリックスを示している。
【0091】
このため、図35に示すように、各パターンそれぞれに分けて比較する。それぞれのパターンを比較して、最適なパターンを選択することが好ましい。選択の手順については第5実施形態で説明する。
【0092】
以上説明したように、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムによれば、左右どちらに躱しても交差回避できる場合には、左とした場合と右とした場合とでパターンを分けて比較することで、より良いパターンを選択することができる。
【0093】
〔第5実施形態〕
次に、本開示の第5実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて説明する。
本実施形態では、ルートの並び順序が複数パターンある場合のルートの選択について説明する。以下、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、及び第4実施形態と異なる点について主に説明する。
【0094】
第2実施形態では複数の層に分けるパターンを説明し、第4実施形態では躱し方向が左右どちらでも可能なルートはそれぞれの躱し方向でパターンを分けることを説明した。例えば第2実施形態のケースや第4実施形態のケースのように、並び順序の組み合わせが複数存在する場合には、いずれか1つを選択する必要がある。本実施形態では、複数のルートパターンから1つのルートパターンを選択する場合について説明する。
【0095】
本実施形態の配管ルーティング装置10は、図36に示すように、評価部26を備える。
【0096】
評価部26は、ルートの並び順序、及びルートの層振り分けの少なくともいずれか一方において、複数のルートパターン(ルートの並び順序の組み合わせ)がある場合に、各ルートパターンに対して、配管径、配管ラック(固定ルート)の幅、及び配管を支える梁にかかる曲げモーメントの少なくともいずれか1つに基づく評価を行う。本実施形態では、並び順序及び層振り分けの両方により複数のルートパターンが存在する場合について説明するが、いずれか1つでもよい。また、本実施形態では、評価する項目について、配管径、配管ラックの幅、及び配管を支える梁にかかる曲げモーメントのすべてを用いる場合について説明するが、評価項目はいずれか1つでもよい。
【0097】
具体的には、評価部26は、以下の式(1)を評価式として各ルートパターンの合計得点を演算する。
【0098】
合計得点=配管ラックを通る配管(大口径)のブリッジ箇所数×評価係数α1
+配管ラックを通る配管(中口径)のブリッジ箇所数×評価係数α2
+配管ラックを通る配管(小口径)のブリッジ箇所数×評価係数α3
+指定ラック幅を超過した箇所数×評価係数α4
+Σ(梁に掛かる曲げモーメントの総和/ラック経路長)×評価係数α5
(1)
【0099】
式(1)では、合計得点が低いほど、評価が高いルートパターンとなる。各ルートは、対応する配管の径により大口径、中口径、及び小口径に分類されているものとする。例えば、配管ラックを通る配管(大口径)のブリッジ箇所数とは、配管ラックを通る大口径配管のルートに対して設定されたブリッジ箇所の総数となる。中口径及び小口径においても同様である。指定ラック幅を超過した箇所数は、ルートを配管として横並びとした場合に、配管ラックに対して予め設定された幅を超過する箇所の総数である。
【0100】
曲げモーメントについて、図37を用いて説明する。図37は、配管ラックの断面図を模擬した図である。配管ラックに梁が設けられており、梁の上にルートが設定されて配管が配置されるものとする。この場合に、配管から梁に掛かる曲げモーメントMは、M=P×a×b/Lとなる。Pは、配管による集中荷重であり、Lは梁の長さであり、a及びbは梁のそれぞれ端部から集中荷重までの距離(すなわちL-a=bの関係)である。
【0101】
梁の上には複数の配管が横並びで配置されるため、各配管に対してそれぞれ曲げモーメントを算出し、総和を取る。これにより、ある梁に対する曲げモーメントの総和が算出される。そして、梁に掛かる曲げモーメントの総和を、ラック経路長で割って正規化する。ラック経路長とは配管ラックの経路の総距離である。そして、配管ラックに設定される各梁に対してそれぞれ算出して合計値を出したものが、式(1)のΣ(梁に掛かる曲げモーメントの総和/ラック経路長)となる。
【0102】
曲げモーメントは上記のように算出されるため、図38に示すように、集中荷重が小さい(配管の径や肉厚によって決まる単位長さ当たりの重量が小さい)配管が梁の中心へ配置され、集中荷重が大きい(配管の径や肉厚によって決まる単位長さ当たりの重量が大きい)配管が梁の端側へ配置されるルートパターンが高い評価となる。
【0103】
各評価係数は、各パラメータに対する重み付けを設定する係数である。各パラメータに対して値を設定することができる。例えば評価係数α1の値を大きく設定することで、配管ラックを通る配管(大口径)のブリッジ箇所数が多いルートパターンほど評価が低くなるように調整できる。
【0104】
評価部26は、各ルートパターンに対して式(1)を適用して評価を行い、最も評価の高い(合計得点が低い)ルートパターンを選定する。これによって、ルートパターンが複数存在する場合でも、それぞれのルートパターンを評価して最適なルートパターンを選定することができる。
【0105】
以上説明したように、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムによれば、ルートの並び順序や層振り分けにおいて複数のルートパターン(組み合わせ)がある場合には、配管径や、配管ラックの幅、曲げモーメントに基づいて評価を行うことで、最適ルートを探索することができる。
【0106】
〔第6実施形態〕
次に、本開示の第6実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて説明する。
上述した第1実施形態では、ルートごとに進行方向マトリックスと躱し方向マトリックスを作成する場合について説明していたが、本実施形態では、複数のルートをまとめて取り扱う場合について説明する。以下、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムについて、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態、及び第5実施形態と異なる点について主に説明する。
【0107】
本実施形態にかかる配管ルーティング装置10は、図39に示すように、配管分類部27を備える。
【0108】
配管分類部27は、配管ラックの分岐点を境目として配管ラックを複数のブランチに分け、ブランチの組み合わせパターンをブランチパターンとし、ブランチパターン毎にルートをまとめる。
【0109】
図40は、配管ラックのアウトラインOLの一例を示している。図40では、2つの分岐点(分岐点M1及び分岐点M2)がある。このため2つの分岐点を境として、アウトラインOLを複数のブランチ(ブランチBR0、ブランチBR1、ブランチBR2、ブランチBR3、ブランチBR4)に分ける。すなわち、各ブランチは、分岐点を介して他のブランチと接続される。
【0110】
ここで、ルートが各ブランチを通過するかどうか(ブランチパターン)で、複数のルートをグループ化する。具体的には、
・ブランチBR3のみを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば14本ある場合には、この14本のルートをブランチBR3のみに属するルートとしてまとめてグループGP8とする。
・ブランチBR0のみを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば2本ある場合には、この2本のルートをブランチBR0のみに属するルートとしてまとめてグループGP9とする。
・ブランチBR0、ブランチBR2、及びブランチBR3のすべてを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば14本ある場合には、この14本のルートをブランチBR0、ブランチBR2、及びブランチBR3に属するルートとしてまとめてグループGP0とする。
・ブランチBR1、ブランチBR2、及びブランチBR3のすべてを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば8本ある場合には、この8本のルートをブランチBR1、ブランチBR2、及びブランチBR3に属するルートとしてまとめてグループGP1とする。
・ブランチBR0、ブランチBR2、及びブランチBR4のすべてを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば2本ある場合には、この2本のルートをブランチBR0、ブランチBR2、及びブランチBR4に属するルートとしてまとめてグループGP2とする。
・ブランチBR2、及びブランチBR4のすべてを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば2本ある場合には、この2本のルートをブランチBR2、及びブランチBR4に属するルートとしてまとめてグループGP3とする。
・ブランチBR1、及びブランチBR2のすべてを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば6本ある場合には、この6本のルートをブランチBR1、及びブランチBR2に属するルートとしてまとめてグループGP4とする。
・ブランチBR0、及びブランチBR1のすべてを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば10本ある場合には、この10本のルートをブランチBR0、及びブランチBR1に属するルートとしてまとめてグループGP5とする。
・ブランチBR0、及びブランチBR2のすべてを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば4本ある場合には、この4本のルートをブランチBR0、及びブランチBR2に属するルートとしてまとめてグループGP6とする。
・ブランチBR2、及びブランチBR3のすべてを通過して他のブランチは通過しないルートが、例えば4本ある場合には、この4本のルートをブランチBR2、及びブランチBR3に属するルートとしてまとめてグループGP7とする。
【0111】
このように、各ブランチパターンのグループを1つのルートとして捉えることで、他の実施形態と同様に取り扱うことができる。具体的には、ブランチパターンごとに進行方向マトリックス及び躱し方向マトリックスが生成される。図41は、ブランチパターン(GP0からGP9)ごとにルートを集約して、グループGP0からGP9ごとに躱し方向マトリックスを作成した例である。ルートがないグループについては省略することができる。グループごとにルートをまとめることで、処理量を効率的に減少させることができる。
【0112】
そして、グループごとに、上記の実施形態と同様に並び順序を設定する。その後に、各グループにおいて、まとめた各ルートをそれぞれ配置する。
【0113】
以上説明したように、本実施形態に係る配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムによれば、配線ラックを複数のブランチに分けて、ブランチパターン毎にルートをまとめてグループ化することで、進行方向情報や躱し方向情報を整理して簡略化することができる。
【0114】
本開示は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。すなわち、上記の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、及び第4実施形態については、それぞれ組み合わせることも可能である。
【0115】
以上説明した各実施形態に記載の配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムは例えば以下のように把握される。
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング装置(10)であって、前記固定ルートを通過するように各前記配管の配管ルートを生成するルート生成部(21)と、前記配管ルートのそれぞれに対して、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向を示す躱し方向情報を生成する躱し方向情報生成部(23)と、前記躱し方向情報に基づいて、前記配管ルートの並び順序を設定する順序設定部(24)と、を備える。
【0116】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、固定ルート(例えば配管ラック)を有するプラント設備において、まず、固定ルートを通過するように配管ルートが生成される。そして、同じ区間を通過する他の配管ルートに対して交差を回避できる方向を示す躱し方向を導出する。このため、躱し方向情報に基づいて、交差をなるべく回避しつつ、配管ルートの並び順序を設定することができる。このように躱し方向情報を用いることで、処理量を抑制して効率的に配管ルートの並び順序を設定することができる。例えば配管ルートの並び順序を総当たり的にシミュレーションした場合と比較して、高速にルーティングすることが可能である。
【0117】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、前記ルート生成部(21)は、前記固定ルートを基準線(OL)として、前記基準線(OL)に沿って各前記配管ルートを生成することとしてもよい。
【0118】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、固定ルートを基準線(OL)で示し、基準線(OL)に沿って配管ルートの生成及び並び順序の設定を行うことで、固定ルートを例えば実際の屋外配管ラックの形状を模した3次元立体として扱う場合と比較して、効果的に処理を効率化できる。これによりルーティング処理を高速に実行することが可能となる。
【0119】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、進行方向が設定された前記配管ルートのそれぞれに対して、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートとの前記進行方向の対比関係を示す進行方向情報を生成する進行方向情報生成部(22)を備え、前記躱し方向情報生成部は、前記進行方向情報に基づいて、前記躱し方向情報を生成することとしてもよい。
【0120】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、各配管ルートにおいて、固定ルートにおける同じ区間を通過する他の配管ルートとの相対的な進行方向の状態を示す進行方向情報を生成することができる。進行方向情報によって躱し方向情報を効率的に生成することが可能となる。
【0121】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、前記進行方向情報は、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートと進行方向が同じであること、及び前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートと進行方向が逆であることが、各前記配管ルートに対応して示されていることとしてもよい。
【0122】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、固定ルートにおける同じ区間を通過する他の配管ルートと進行方向が同じであること、及び固定ルートにおける同じ区間を通過する他の配管ルートと進行方向が逆であることが進行方向情報として示されることで、進行方向に応じた躱し方向を適切に設定することができる。
【0123】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、前記躱し方向情報は、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して左右どちらに躱しても交差を回避できること、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して左に躱した場合に交差を回避できること、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して右に躱した場合に交差を回避できること、及び前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して左右どちらに躱しても交差を回避できないことが、各前記配管ルートに対応して示されていることとしてもよい。
【0124】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、固定ルートにおける同じ区間を通過する他の配管に対して左右どちらに躱しても交差を回避できること、固定ルートにおける同じ区間を通過する他の配管に対して左に躱した場合に交差を回避できること、固定ルートにおける同じ区間を通過する他の配管に対して右に躱した場合に交差を回避できること、及び固定ルートにおける同じ区間を通過する他の配管に対して左右どちらに躱しても交差を回避できないことが躱し方向情報として示されることで、躱し方向情報に応じて配管ルートの並び順序を適切に設定することができる。
【0125】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、前記順序設定部(24)は、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートによって前記躱し方向が左右いずれの場合も有する前記配管ルートを対象配管ルートとして、前記躱し方向が左である他の前記配管ルートのグループと、前記躱し方向が右である他の前記配管ルートのグループに分けて、前記対象配管ルートを配置した後に、いずれかの前記グループを配置することとしてもよい。
【0126】
固定ルートにおける同じ区間を通過する他の配管ルートによって躱し方向が左右いずれの場合も有する配管ルートは、配置順序によって、他の配管ルートと交差し易い。このため、躱し方向が左である他の前記配管ルートのグループと、躱し方向が右である他の前記配管ルートのグループに分けて、対象配管ルートを配置した後に、いずれかのグループを配置することで、交差を回避した並び順序を効率的に設定することができる。
【0127】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、前記躱し方向情報に基づいて、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向が存在するように、各前記配管ルートを前記固定ルートにおける複数の層に振り分ける層設定部(25)を備え、前記順序設定部(24)は、各前記層のそれぞれにおいて、前記配管ルートの並び順序を設定することとしてもよい。
【0128】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、交差を回避できる躱し方向が存在するように各配管ルートを各層に割り振るため、配管数が多い場合やルートが複雑な場合でも、効率的に交差を回避した配管配置を行うことができる。
【0129】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、前記順序設定部(24)は、前記躱し方向情報に基づいて、交差箇所で前記配管ルートをブリッジさせることとしてもよい。
【0130】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、交差が発生する箇所については配管ルートをブリッジさせることで、物理的干渉を回避することができる。
【0131】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、前記配管ルートの並び順序、及び前記配管ルートの前記固定ルートにおける層振り分けの少なくともいずれか一方において、複数のルートパターンがある場合に、各前記ルートパターンに対して、配管径、前記固定ルートの幅、及び前記配管を支える梁にかかる曲げモーメントの少なくともいずれか1つに基づく評価を行う評価部(26)を備えることとしてもよい。
【0132】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、配管ルートの並び順序や層振り分けにおいて複数のルートパターン(組み合わせ)がある場合には、配管径や、固定ルートの幅、曲げモーメントに基づいて評価を行うことで、最適ルートを探索することができる。
【0133】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、前記固定ルートの分岐点を境目として前記固定ルートを複数のブランチに分け、前記ブランチの組み合わせパターンをブランチパターンとし、前記ブランチパターン毎に前記配管ルートをまとめる配管分類部(27)を備え、前記進行方向情報生成部(22)は、前記ブランチパターン毎に前記進行方向情報を生成し、前記躱し方向情報生成部(23)は、前記ブランチパターン毎に前記躱し方向情報を生成することとしてもよい。
【0134】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、固定ルートを複数のブランチに分けて、ブランチパターン毎に配管ルートをまとめることで、進行方向情報や躱し方向情報を整理して簡略化することができる。
【0135】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)は、配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング装置(10)であって、前記固定ルートを基準線(OL)として、前記基準線(OL)に沿って各前記配管の配管ルートを生成するルート生成部(21)と、前記配管ルートの並び順序を設定する順序設定部(24)と、を備える。
【0136】
本開示に係る配管ルーティング装置(10)によれば、固定ルートを基準線(OL)で示し、基準線(OL)に沿って配管ルートの生成及び並び順序の設定を行うことで、固定ルートを例えば実際の屋外配管ラックの形状を模した3次元立体として扱う場合と比較して、効果的に処理を効率化できる。これによりルーティング処理を高速に実行することが可能となる。
【0137】
本開示に係る配管ルーティング方法は、配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング方法であって、前記固定ルートを通過するように各前記配管の配管ルートを生成する工程と、前記配管ルートのそれぞれに対して、前記固定ルートにおける同じ区間を通過する他の前記配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向を示す躱し方向情報を生成する工程と、前記躱し方向情報に基づいて、前記配管ルートの並び順序を設定する工程と、を有する。
【0138】
本開示に係る配管ルーティング方法は、配管が通過するルートとして予め設定されている固定ルートを有するプラント設備において、複数の前記配管の配管経路を設定する配管ルーティング方法であって、前記固定ルートを基準線(OL)として、前記基準線(OL)に沿って各前記配管の配管ルートを生成する工程と、前記配管ルートの並び順序を設定する工程と、を有する。
【0139】
本開示に係る配管ルーティングプログラムは、コンピュータを上記の配管ルーティング装置(10)として機能させるための配管ルーティングプログラムである。
【符号の説明】
【0140】
1A :順序操作
1B :順序操作
2A :順序操作
2B :順序操作
3A :順序操作
3B :順序操作
10 :配管ルーティング装置
11 :CPU
12 :メインメモリ
13 :記憶部
14 :外部インターフェース
15 :通信インターフェース
16 :入力部
17 :表示部
21 :ルート生成部
22 :進行方向情報生成部
23 :躱し方向情報生成部
24 :順序設定部
25 :層設定部
26 :評価部
27 :配管分類部
M :曲げモーメント
O :配置順序
OL :アウトライン(基準線)
α1 :評価係数
α2 :評価係数
α3 :評価係数
α4 :評価係数
α5 :評価係数
【要約】
【課題】固定ルートを有するプラント設備において効率的に配管のルーティングを行うことのできる配管ルーティング装置及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】配管ラックを有するプラント設備において、複数の配管の配管経路を設定する配管ルーティング装置10であって、配管ラックを通過するように各配管の配管ルートを生成するルート生成部21と、配管ルートのそれぞれに対して、配管ラックにおける同じ区間を通過する他の配管ルートに対して交差を回避できる躱し方向を示す躱し方向情報を生成する躱し方向情報生成部23と、躱し方向情報に基づいて、配管ルートの並び順序を設定する順序設定部24とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41