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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】吊足場
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20221121BHJP
   E04G 3/28 20060101ALI20221121BHJP
   E04G 7/02 20060101ALI20221121BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E04G3/28 301L
E04G7/02
F16B7/20 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021117758
(22)【出願日】2021-07-16
(62)【分割の表示】P 2020215263の分割
【原出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101438
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 諭
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-292619(JP,A)
【文献】特開2020-143489(JP,A)
【文献】特開2017-110437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E04G 1/00-7/34
F16B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向一端側を水平方向に回動自在に支持された複数の足場フレームを互いに水平方向に間隔をおいて平行に配置するとともに、各足場フレームの上端側に足場フレームに直交する方向に長い複数の床パネルを架け渡すように配置することにより、構造物から吊り下げられる足場本体を形成するようにした吊足場において、
前記足場フレームを、互いに上下方向に間隔をおいて平行に延びる一対の上側フレーム部材及び下側フレーム部材と、上側及び下側フレーム部材の長手方向両端にそれぞれ設けられた縦フレーム部材と、上側及び下側フレーム部材の間に設けられたトラス部材とから形成するとともに、
互いに水平方向に間隔をおいて平行に配置される足場フレームの下フレーム部材に架け渡されるように配置され、両端側を各足場フレームの下フレーム部材に係合することにより各足場フレームの下フレーム部材を互いに間隔をおいて保持する棒状の間隔保持部材を備え、
前記床パネルの長手方向両端に各足場フレームの上フレーム部材に係合する複数の係合部を設け、
複数の床パネルを長手方向に直交する方向に並べて配置するとともに、
床パネルの各係合部と各足場フレームの上フレーム部材との係合により各足場フレームの上フレーム部材を互いに間隔をおいて保持するように構成した
ことを特徴とする吊足場。
【請求項2】
前記床パネルを、足場フレームに係合した状態で上面が足場フレームの上端と同等の高さ位置になるように形成した
ことを特徴とする請求項1記載の吊足場。
【請求項3】
前記足場フレームの長手方向端部に他の新たな足場フレームの長手方向端部を水平方向に回動自在に連結可能な連結部を設けた
ことを特徴とする請求項1または2記載の吊足場。
【請求項4】
前記足場フレーム同士を連結する連結部を、足場フレームの長手方向一端側に設けられた第1の連結部と、足場フレームの長手方向他端側に設けられ、第1の連結部に上下方向に着脱自在且つ水平方向に回動自在に連結される第2の連結部とから形成した
ことを特徴とする請求項3記載の吊足場。
【請求項5】
前記第1及び第2の連結部を、一方が他方の内部に挿入される円筒状部材によって形成した
ことを特徴とする請求項4記載の吊足場。
【請求項6】
前記連結部は、第1及び第2の連結部の一方の下端と足場フレームの端部下端側とが固定された基板と、互いに連結された第1及び第2の連結部の上端と足場フレームの端部上端側とを連結する連結板とを有する
ことを特徴とする請求項5記載の吊足場。
【請求項7】
前記第1及び第2の連結部を所定の回動位置で位置決めする位置決め手段を備えた
ことを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項記載の吊足場。
【請求項8】
前記足場フレームの長手方向端部に他の新たな足場フレームの長手方向端部を連結することによって所定方向に延びるように形成され、互いに前記所定方向の直角方向に間隔をおいて設けられた複数の第1の足場部と、
各第1の足場部の足場フレームの長手方向任意の位置に前記所定方向の直角方向に延びる他の足場フレームを連結することによって各第1の足場部間に亘って形成された第2の足場部を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項記載の吊足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁等の構造物の新設、補修、床版取替施工等の作業現場に用いられ、構造物から吊り下げて設置される吊足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般道や高速道路等の橋梁において、鋼橋を建設する場合、鋼桁の架設、組立に伴い鋼桁直下に作業足場を設置して鋼桁の組立、塗装等が行われる。また、既設の鋼桁が劣化損傷した場合は、鋼桁直下に作業足場を設置し、損傷箇所の補修、補強、加工等が行われる。更に、既設の床版が老朽化した場合は、既設床版を主桁上から撤去して新たな床版を架設する床版取替施工が行われる。その際、橋梁本体には作業用の足場が設置されるが、その下方及び下方近傍には車道等がある場合が多く、地上から足場を組み上げることができない。そこで、このような橋梁においては、橋桁から吊り下げられた吊足場が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-316070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の吊足場を設置する際には、橋梁本体の下方の車道を交通規制して足場用部材(吊チェーン、単管パイプ、足場板等)の搬入及び組立作業を地上から高所作業車等を用いて行う必要があるが、交通量の多い市街地等では長時間に亘る交通規制ができないため、夜間等を利用しながら短区間ずつ行う必要がある。このため、足場の設置作業を効率よく行うことができず、足場の設置工期が長期化するという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地上からの足場の設置が困難な場合でも効率よく設置することのできる吊足場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、長手方向一端側を水平方向に回動自在に支持された複数の足場フレームを互いに水平方向に間隔をおいて平行に配置するとともに、各足場フレームの上端側に足場フレームに直交する方向に長い複数の床パネルを架け渡すように配置することにより、構造物から吊り下げられる足場本体を形成するようにした吊足場において、前記足場フレームを、互いに上下方向に間隔をおいて平行に延びる一対の上側フレーム部材及び下側フレーム部材と、上側及び下側フレーム部材の長手方向両端にそれぞれ設けられた縦フレーム部材と、上側及び下側フレーム部材の間に設けられたトラス部材とから形成するとともに、互いに水平方向に間隔をおいて平行に配置される足場フレームの下フレーム部材に架け渡されるように配置され、両端側を各足場フレームの下フレーム部材に係合することにより各足場フレームの下フレーム部材を互いに間隔をおいて保持する間隔保持部材を備え、前記床パネルの長手方向両端に各足場フレームの上フレーム部材に係合する複数の係合部を設け、複数の床パネルを長手方向に直交する方向に並べて配置するとともに、床パネルの各係合部と各足場フレームの上フレーム部材との係合により各足場フレームの上フレーム部材を互いに間隔をおいて保持するように構成している。
【0007】
これにより、各足場フレームを回動して互いに平行になるように延ばし、各足場フレームの上端側に床パネルを架け渡すように配置することにより、構造物から吊り下げられる足場本体が形成されることから、地上から足場を組み上げることなく設置することができる。その際、間隔保持部材の両端側を各足場フレームの下端側に係合することにより各足場フレームが互いに間隔をおいて保持されることから、設置状態における幅方向の変形に対する強度が間隔保持部材によって高められる。また、床パネルと各足場フレームとの係合により各足場フレームが互いに間隔をおいて保持されることから、設置状態における幅方向の変形に対する強度が床パネルによって高められる。これにより、足場の幅方向の強度を高めるために足場フレーム自体の構造を複雑化させることがない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地上から足場を組み上げることなく設置することができるので、水平方向に延びる足場を短時間で容易に形成することができる。これにより、例えば構造物としての橋梁本体の下方及び下方近傍に車道等がある場合でも、交通規制を少なくして効率よく吊足場を設置することができ、足場設置工期を大幅に短縮することができる。また、足場の幅方向の強度を高めるために足場フレーム自体の構造を複雑化させることがないので、足場フレームを簡素化及び軽量化することができ、足場フレームの取付作業を容易に行うことができるとともに、足場全体の軽量化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を示す吊足場の正面図
図2】吊足場の平面図
図3】吊足場の要部分解斜視図
図4】吊足場の要部側面図
図5】吊足場の要部正面図
図6】吊足場の要部拡大平面図
図7】吊足場の要部拡大側面図
図8】吊足場の要部拡大分解側面図
図9】第1の連結部の回動工程を示す要部正面図
図10】第1の連結部の回動工程を示す要部正面図
図11】吊足場の要部拡大分解正面図
図12】吊足場の要部拡大正面図
図13】吊足場の設置工程を示す要部平面図
図14】吊足場の設置工程を示す要部平面図
図15】吊足場の設置工程を示す要部平面図
図16】吊足場の設置工程を示す要部平面図
図17】吊足場の設置工程を示す要部平面図
図18】吊足場の設置工程を示す要部平面図
図19】吊足場の設置工程を示す要部正面図
図20】吊足場の設置工程を示す要部正面図
図21】吊足場の要部拡大平面図
図22】吊足場の要部拡大側面図
図23】吊足場の要部拡大分解側面図
図24】吊足場の要部平面図
図25】間隔保持部材の変形例を示す吊足場の要部平面図
図26】吊足場の設置工程を示す要部平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図24は本発明の一実施形態を示すもので、例えば橋梁の新設、補修、床版取替施工等の作業現場に用いられる吊足場を示すものである。
【0011】
本実施形態の吊足場1は、図1に示すように橋梁本体2の上部工の下方に吊り下げて設置され、橋軸直角方向両側にそれぞれ配置される第1の足場部1aと、各第1の足場部1aの間に亘って配置される第2の足場部1bとからなる。また、吊足場1の橋軸直角方向両側にはそれぞれ側面部1cが設けられる。
【0012】
第1の足場部1aを構成する吊足場は、互いに水平方向に間隔をおいて平行に配置される複数の足場フレーム10と、各足場フレーム10間に架け渡すように配置される複数の第1及び第2の床パネル20,30と、各足場フレーム10同士を平行に保持する間隔保持部材40とを備え、互いに平行に配置された足場フレーム10に新たな足場フレーム10を長手方向に連結しながら橋軸方向に延びる足場を形成するようになっている。
【0013】
足場フレーム10は、互いに上下方向に間隔をおいて平行に延びる上側フレーム部材11及び下側フレーム部材12と、上側及び下側フレーム部材11,12の長手方向両端にそれぞれ設けられた縦フレーム部材13と、上側及び下側フレーム部材11,12の間に設けられたトラス部材14とからなり、上側及び下側フレーム部材11,12は水平方向に延びるパイプ状の部材によって形成されている。縦フレーム部材13は、上下方向に延びるとともに、上端を閉塞され且つ下端を開口した円筒状の部材からなり、その上端側及び下端側の側面を上側及び下側フレーム部材11,12の端部に接合されている。トラス部材14は山形をなすように斜めに延びる部材からなり、その上端及び下端を上側及び下側フレーム部材11,12にそれぞれ接合されている。また、下側フレーム部材12には、間隔保持部材40が係合する複数の係合部12aが設けられている。係合部12aは、上下方向両端を開口した角筒状の部材からなり、下側フレーム部材12の長手方向一端寄り及び他端寄りに下側フレーム部材12を間にして2つずつ配置されている。
【0014】
また、足場フレーム10の長手方向両端には、他の足場フレーム10に連結される連結部が設けられている。この連結部は、足場フレーム10の長手方向一端側に設けられる第1の連結部15と、足場フレーム10の長手方向他端側に設けられる第2の連結部16とからなり、第1及び第2の連結部15,16は互いに上下方向に着脱自在且つ水平方向に回動自在に連結されるようになっている。
【0015】
第1の連結部15は、足場フレーム10の長手方向一端側の縦フレーム部材13によって形成されている。即ち、第1の連結部15は、上下方向に延びるように形成されるとともに、上端を閉塞し且つ下端を開口した円筒状の部材からなる。
【0016】
第2の連結部16は、足場フレーム10の長手方向他端側に設けられ、上下方向に延びるように形成されるとともに、上端を閉塞し且つ下端を開口した円筒状の部材からなる。第2の連結部16は、足場フレーム10の長手方向他端側の縦フレーム部材13と足場フレーム10の長手方向に間隔をおいて配置され、第2の連結部16と縦フレーム部材13の下端同士は平板状の基板17に接合されている。第2の連結部16は、外径が第1の連結部15の内径よりも僅かに小さい円筒状の部材からなり、第1の連結部15内に軸心回りに回動自在に挿入されるようになっている。また、第2の連結部16の下端側には基板17から上方に突出する半球状の凸部16aが設けられ、第1の連結部15の下端には凸部16aに係合する円形の切り欠き状の凹部15aが設けられている。即ち、図9に示すように第1の連結部15に第2の連結部16が挿入された状態で第1の連結部15を回動すると、図10に示すように所定の回動位置(足場フレーム10同士が長手方向に180°をなす回動位置)で凸部16aと凹部15aが互いに係合し、第1の連結部15の回動が規制されるようになっている。その際、第1の連結部15は、下端を凸部16aに当接させながら回動し、凸部16aと凹部15aが係合すると、凸部16aの高さ分だけ下降するようになっている。即ち、凸部16a及び凹部15aは、第1及び第2の連結部15,16を所定の回動位置で位置決めする位置決め手段を構成している。
【0017】
第1の連結部15と第2の連結部16が連結されると、足場フレーム10同士は連結板18によって更に連結される。連結板18は第1の連結部15の上面及び足場フレーム10の長手方向他端側の縦フレーム部材13の上面に亘って延びる平板状の部材からなり、その一端側をボルト18a及びナット18bによって第1及び第2の連結部15,16に固定され、その他端側をボルト18c及びナット18dによって縦フレーム部材13に固定されるようになっている。この場合、連結板18の一端側、第1の連結部15の上面部及び第2の連結部16の上面部には、それぞれ一方のボルト18aを挿通する孔18e,15b,16bが設けられ、連結板18の他端側及び縦フレーム部材13の上面部には、それぞれ他方のボルト18cを挿通する孔18f,13aが設けられている。また、各ナット18b,18dは、それぞれ第2の連結部16の上面部の内面及び縦フレーム部材13の上面部の内面に接合されている。
【0018】
第1の床パネル20は、互いに平行に配置された足場フレーム10の長手方向に直交する方向に長い四角形状に形成され、幅方向両端側を下方に屈曲した板状部材からなる。また、第1の床パネル20の表面には多数の滑り止め20aが設けられている。第1の床パネル20の四隅(長手方向両端及び幅方向両端)にはそれぞれ足場フレーム10の上側フレーム部材11に係合する係合部21が設けられている。各係合部21は、パイプ状の部材(上側フレーム部材11)に上方から係合可能なフック状の部材からなり、外れ止め(図示せず)を有するものが好ましい。
【0019】
第2の床パネル30は、第1の床パネル20と同様、互いに平行に配置された足場フレーム10の長手方向に直交する方向に長く且つ第1の床パネル20の略半分の幅寸法を有する四角形状に形成され、幅方向両端側を下方に屈曲した板状部材からなる。また、第2の床パネル30の表面には多数の滑り止め30aが設けられている。第2の床パネル30の四隅(長手方向両端及び幅方向両端)にはそれぞれ足場フレーム10の上側フレーム部材11に係合する係合部31が設けられている。各係合部31は、パイプ状の部材(上側フレーム部材11)に上方から係合可能なフック状の部材からなり、外れ止め(図示せず)を有するものが好ましい。
【0020】
第1及び第2の床パネル20,30は、図11に示すように各係合部21,31を上側フレーム部材11に係合した状態で上面が上側フレーム部材11の上端と同等の高さ位置Hになるように形成されている。即ち、各係合部21,31は第1及び第2の床パネル20,30の端部から水平方向に突出するように設けられており、これにより第1及び第2の床パネル20,30の端部が上側フレーム部材11と水平方向に僅かな間隔をおいて配置され、第1及び第2の床パネル20,30の上面が上側フレーム部材11の上端と同等の高さ位置Hになる。この場合、各係合部21,31は幅方向の厚さ寸法の小さい板状に形成されており、図12に示すように上側フレーム部材11の両側方に第1及び第2の床パネル20,30を配置する際、共通の上側フレーム部材11に係合する係合部21,31を互いにその厚さ分だけ上側フレーム部材11の長手方向にずらして配置することにより、第1及び第2の床パネル20,30が他の第1及び第2の床パネル20,30と干渉することなく足場フレーム10に着脱される。
【0021】
間隔保持部材40は、互いに平行に配置された足場フレーム10に亘って延びる角棒状の部材からなり、その両端には下側フレーム部材12の係合部12aに係合する係合部40aがそれぞれ設けられている。係合部40aは間隔保持部材40の両端側から下方に屈曲するように形成され、その先端側に向かって幅寸法が徐々に小さくなる断面四角形状に形成されている。即ち、間隔保持部材40の係合部40aは、いわゆる楔作用により、下側フレーム部材12の係合部12aに圧入されるようになっている。
【0022】
以上の構成からなる吊足場は、既に設置されている吊足場から延長するようにして設置される。以下、図13乃至図18を参照し、本実施形態の吊足場の設置工程について説明する。
【0023】
まず、図13に示すように、既に設置されている吊足場の幅方向一方の足場フレーム10に新たな足場フレーム10を連結する。その際、既設の足場フレーム10の第2の連結部16に新たな足場フレーム10の第1の連結部15を連結し、第1及び第2の連結部15,16を中心に新たな足場フレーム10を水平方向に回動する。次に、図14に示すように、新たな足場フレーム10が既設の足場フレーム10に対して一直線上に位置するまで回動すると、第1及び第2の連結部15,16の回動が凸部16a及び凹部15aの係合により規制され、第1及び第2の連結部15,16が位置決めされる。次に、この状態で連結板18を取り付けることにより、互いに連結された第1及び第2の連結部15の上端及び既設側の足場フレーム10の縦フレーム部材13の上端とが連結板18によって連結される。
【0024】
この後、幅方向他方の足場フレーム10に新たな足場フレーム10を連結し、前述と同様にして、新たな足場フレーム10が既設の足場フレーム10に対して一直線上に位置するまで回動することにより、図15に示すように幅方向一対の新たな足場フレーム10を互いに平行になるように保持する。
【0025】
続いて、図16に示すように1枚の第2の床パネル30を既設の足場フレーム10と新たな足場フレーム10との連結部分を間にするように各足場フレーム10に架け渡し、間隔保持部材40を各足場フレーム10の基端側の係合部12aに係合する。
【0026】
次に、図17に示すように2枚の第1の床パネル20を新たな各足場フレーム10に順次並べて架け渡し、新たな間隔保持部材40を各足場フレーム10の先端側の係合部12aに係合する。
【0027】
そして、図18に示すように2枚目の第2の床パネル30を新たな各足場フレーム10の先端側に架け渡すとともに、吊りチェーン等の吊り部材50を各足場フレーム10に接続することにより、一つの足場ユニット1a-1が設置される。この場合、各足場フレーム10の下側フレーム部材12間に架け渡された間隔保持部材40によって各下側フレーム部材12が互いに平行に保持されるとともに、各足場フレーム10の上側フレーム部材11間に架け渡された第1及び第2の床パネル20,30によって各上側フレーム部材11が互いに平行に保持される。
【0028】
この後、前述と同様にして新たな足場ユニット1a-1を繰り返し設置することにより、橋軸方向に延びる第1の足場部1aが設置される。この場合、第1の足場部1aは足場ユニット1a-1を橋軸直角方向両側にそれぞれ2列ずつ配置することにより形成され、足場ユニット1a-1の各列間では互いに足場フレーム10が共用される。
【0029】
次に、第2の足場部1bを構成する吊足場について説明する。第2の足場部1bの吊足場は、互いに水平方向に間隔をおいて平行に配置される複数の足場フレーム60と、足場フレーム60を第1の足場部1aの足場フレーム60の長手方向任意の位置に連結する連結フレーム70と、前記第1の足場部1aと同等の第1の床パネル20、第2の床パネル30及び間隔保持部材40とを備え、互いに平行に配置された足場フレーム60を各第1の足場部1aに亘って架け渡すことにより橋軸直角方向に延びる足場を形成するようになっている。
【0030】
足場フレーム60は、前記第1の足場部1aの足場フレーム10と一部を除いて同等の構成を有し、第1の足場部1aの足場フレーム10よりも長く形成されている。即ち、足場フレーム60は、互いに上下方向に間隔をおいて平行に延びる上側フレーム部材61及び下側フレーム部材62と、上側及び下側フレーム部材61,62の長手方向両端にそれぞれ設けられた縦フレーム部材63と、上側及び下側フレーム部材61,62の間に設けられたトラス部材64とを備え、下側フレーム部材62には間隔保持部材40が係合する複数の係合部62aが長手方向3箇所に設けられている。尚、これらの詳細については第1の足場部1aの足場フレーム10と同様であるため省略する。
【0031】
また、足場フレーム60の長手方向両端には、連結フレーム70に連結される連結部65が設けられ、連結部65は、第1の足場部1aの足場フレーム10と同様、足場フレーム60の縦フレーム部材63によって形成されている。即ち、連結部65は、上下方向に延びるように形成されるとともに、上端を閉塞し且つ下端を開口した円筒状の部材からなる。
【0032】
連結フレーム70は、足場フレーム60の縦フレーム部材63と同一形状の円筒状部材からなる縦フレーム部材71と、第1の足場部1aの足場フレーム10に連結される上下一対の第1の連結部72と、足場フレーム60に連結される第2の連結部73とからなる。各第1の連結部72は縦フレーム部材71に互いに上下方向に間隔をおいて設けられており、上方の第1の連結部72は第1の足場部1aの足場フレーム10の上側フレーム部材11に連結され、下方の第1の連結部72は下側フレーム部材12に連結されるようになっている。各第1の連結部72は、例えば周知の足場用クランプによって構成することができる。即ち、第1の連結部72は回動自在な開閉部72aを有し、開閉部72aを開いて上側または下側フレーム部材11,12を挿入し、開閉部72aを閉じてネジを締めることにより上側または下側フレーム部材11,12に固定されるようになっている。第2の連結部73は縦フレーム部材71と足場フレーム60の長手方向に間隔をおいて配置され、第2の連結部73と縦フレーム部材71の下端同士は平板状の基板74に接合されている。第2の連結部73は、外径が足場フレーム60の連結部65の内径よりも僅かに小さい円筒状の部材からなり、連結部65内に軸心回りに回動自在に挿入されるようになっている。
【0033】
足場フレーム60の連結部65と連結フレーム70の第2の連結部73が連結されると、足場フレーム60と連結フレーム70は連結板66によって更に連結される。連結板66は連結部65の上面及び連結フレーム70の縦フレーム部材71の上面に亘って延びる平板状の部材からなり、その一端側をボルト66a及びナット66bによって連結部65及び第2の連結部73に固定され、その他端側をボルト66c及びナット66dによって縦フレーム部材71に固定されるようになっている。この場合、連結板66の一端側、連結部65の上面部及び第2の連結部73の上面部には、それぞれ一方のボルト66aを挿通する孔66e,65a,73aが設けられ、連結板66の他端側及び縦フレーム部材71の上面部には、それぞれ他方のボルト66cを挿通する孔66f,71aが設けられている。また、各ナット66b,66dは、それぞれ第2の連結部73の上面部の内面及び縦フレーム部材71の上面部の内面に接合されている。
【0034】
以上の構成からなる吊足場は、既に設置されている第1の足場部1aの吊足場から橋軸直角方向に延びるように設置される。
【0035】
まず、図19に示すように各第1の足場部1aの足場フレーム10にそれぞれ連結フレーム70を連結した後、各連結フレーム70の第2の連結部73に足場フレーム60の長手方向両端の連結部65をそれぞれ連結することにより、図20に示すように各第1の足場部1aの足場フレーム10に足場フレーム60が架け渡される。
【0036】
次に、図24に示すように平行一対の足場フレーム60に第1の床パネル20及び第2の床パネル30を並べて架け渡すとともに、間隔保持部材40を各足場フレーム60の係合部62aに係合することにより、一つの足場ユニット1b-1が設置される。この場合、足場フレーム60の長手方向両端側には第2の床パネル30が一枚ずつ、他の部分には複数の第1の床パネル20が配置される。これにより、各足場フレーム60の下側フレーム部材62間に架け渡された間隔保持部材40によって各下側フレーム部材62が互いに平行に保持されるとともに、各足場フレーム60の上側フレーム部材61間に架け渡された第1及び第2の床パネル20,30によって各上側フレーム部材61が互いに平行に保持される。
【0037】
この後、前述と同様にして新たな足場ユニット1b-1を幅方向(橋軸方向)に設置することにより、第2の足場部1aが橋軸方向に増設される。この場合、互いに隣り合う足場ユニット1b-1間では互いに足場フレーム60が共用される。
【0038】
以上のように、橋軸直角方向両側にそれぞれ第1の足場部1aを設置しながら各第1の足場部1bの間に第2の足場部1bを設置することにより、各第1の足場部1b及び第2の足場部1bによって全体として連続した吊足場1を橋梁本体1の橋軸方向に沿って順次拡張しながら設置することが可能となる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、各足場フレーム10を回動自在に支持する既設の足場側から各足場フレーム10を回動して互いに平行になるように延ばし、各足場フレーム10の上端側に第1及び第2の床パネル20,30を架け渡すように配置することにより、橋梁本体2から吊り下げられる足場本体を形成するようにしたので、地上から足場を組み上げることなく橋梁本体2に沿って延長しながら設置することができ、水平方向に延びる吊足場1を短時間で容易に形成することができる。これにより、例えば橋梁本体2の下方及び下方近傍に車道等がある場合でも交通規制を少なくして効率よく吊足場を設置することができ、足場設置工期を大幅に短縮することができる。
【0040】
また、互いに水平方向に間隔をおいて平行に配置される足場フレーム10の下端側に架け渡されるように配置される間隔保持部材40を備え、間隔保持部材40の両端側を各足場フレーム10の下端側に係合することにより各足場フレーム10を互いに間隔をおいて保持するようにしたので、設置状態における幅方向の変形に対する強度を間隔保持部材40によって高めることができる。
【0041】
更に、第1及び第2の床パネル20,30に各足場フレーム10の上端側に係合する複数の係合部21,31を設け、第1及び第2の床パネル20,30と各足場フレーム10との係合により各足場フレーム10を互いに間隔をおいて保持するようにしたので、設置状態における幅方向の変形に対する強度を第1及び第2の床パネル20,30によって高めることができる。
【0042】
これにより、足場の幅方向の強度を高めるために足場フレーム10自体の構造を複雑化させることがないので、足場フレーム10を簡素化及び軽量化することができ、足場フレーム10の取付作業を容易に行うことができるとともに、足場全体の軽量化を図ることもできる。
【0043】
更に、第1及び第2の床パネル20,30が足場フレーム10に係合した状態で上面が足場フレーム10の上端と同等の高さ位置になるように形成されているので、第1及び第2の床パネル20,30の上面と足場フレーム10の上端との間に段差を生ずることがなく、足場全体の上面を平坦に形成することができる。この場合、各第1及び第2の床パネル20,30を他の第1及び第2の床パネル20,30と干渉することなく足場フレーム10に着脱することができるので、例えば床パネルの端部が重なり合うように設置した場合に比べ、第1及び第2の床パネル20,30の設置順序や撤去順序を考慮する必要がなく、足場の設置作業及び撤去作業を容易に行うことができる。
【0044】
また、足場フレーム10の長手方向端部に他の新たな足場フレーム10の長手方向端部を水平方向に回動自在に連結可能に構成したので、新たな足場フレーム10を長手方向に順次連結することにより、足場本体を延長しながら現場に応じた長さの足場を容易に形成することができる。その際、既設の足場側から新たな足場フレーム10の連結作業を行うことができるので、足場の設置作業を効率よく行うことができる。
【0045】
この場合、足場フレーム10同士を連結する連結部を、足場フレーム10の長手方向一端側に設けられた第1の連結部15と、足場フレーム10の長手方向他端側に設けられ、第1の連結部15に上下方向に着脱自在且つ水平方向に回動自在に連結される第2の連結部16から形成したので、図13に示すように新たな足場フレーム10を横向きにした状態で既設の足場側の足場フレーム10の第2の連結部16に新たな足場フレーム10の第1の連結部15を上方から装着して連結した後、新たな足場フレーム10を回動することができ、新たな足場フレーム10の連結作業を既設の足場側から容易に行うことができる。
【0046】
また、第1及び第2の連結部15,16を一方が他方の内部に挿入される円筒状部材によって形成したので、上下方向に着脱自在且つ水平方向に回動自在な連結部を簡単な構成により形成することができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0047】
更に、前記連結部は、第1及び第2の連結部15,16の一方の下端と足場フレーム10の縦フレーム部材13の下端側とが固定された基板17と、互いに連結された第1及び第2の連結部15,16の上端と足場フレーム10の縦フレーム部材13の上端側とを連結する連結板18とを有しているので、上下方向の曲げに対する足場フレーム10同士の連結強度を高めることができ、足場全体の安定性を向上させることができる。
【0048】
また、第1の連結部15の凸部16aと第2の連結部16の凹部15aとを係合させることにより、第1及び第2の連結部15,16を所定の回動位置で位置決めするようにしたので、新たな足場フレーム10同士を平行に保持した状態で第1及び第2の床パネル20,30及び間隔保持部材40の取付作業を行うことができ、作業性の向上を図ることができる。
【0049】
更に、本実施形態の吊足場1は、足場フレーム10の長手方向端部に他の足場フレーム10の長手方向端部を連結することによって橋梁本体2の橋軸方向に延びるように形成され、互いに橋梁本体2の橋軸直角方向に間隔をおいて設けられた複数の第1の足場部1aと、各第1の足場部1aの足場フレーム10の長手方向任意の位置に橋梁本体2の橋軸直角方向に延びる他の足場フレーム60を連結することによって各第1の足場部1a間に亘って形成された第2の足場部1bとから構成したので、各第1の足場部1aを設置した後、第2の足場部1bを設置することにより、効率よく吊足場1の足場全体を設置することができる。
【0050】
特に、本実施形態の橋梁本体2の場合、まず幅方向一対の主桁3の下方に主桁3に吊り下げられる第1の足場部1aをそれぞれ設置した後、吊り下げの困難な橋軸直角方向中央部分(各主桁3の間部分)に各第1の足場部1a側から第2の足場部1bを設置することにより、吊足場全体を容易に設置することができる。
【0051】
尚、前記実施形態では、2本の間隔保持部材40を各足場フレーム10の長手方向に直交するように配置して各間隔保持部材40同士を平行に設けたものを示したが、図25及び図26に示す変形例のように2本の間隔保持部材80を互いにX状に交差するように設ければ、各足場フレーム10の平行状態をより強固に保持することができる。その際、図26に示すように、間隔保持部材80の一端を足場フレーム10の先端側の係合部12aに係合して間隔保持部材80を押しながら足場フレーム10を回動させるようにすれば、足場フレーム10の回動作業を容易に行うことができる。この場合、図示していないが、間隔保持部材80の係合部は、足場フレーム10の係合部12aに対して回動可能となるように断面円形状に形成される。
【0052】
また、前記各実施形態は本発明の一実施例であり、本発明は前記各実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1…吊足場、1a…第1の足場部、1b…第2の足場部、2…橋梁本体、10…足場フレーム、15…第1の連結部、15a…凸部、16…第2の連結部、16a…凹部、20…第1の床パネル、30…第2の床パネル、40,80…間隔保持部材。
図1
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図5
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