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特許7179934誤り訂正装置、誤り訂正方法及び通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】誤り訂正装置、誤り訂正方法及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/45 20060101AFI20221121BHJP
   H04B 10/60 20130101ALI20221121BHJP
【FI】
H03M13/45
H04B10/60
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021137087
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 靖行
(72)【発明者】
【氏名】林田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 将之
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-520758(JP,A)
【文献】特表2017-531392(JP,A)
【文献】特開2001-274698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/00 - 13/53
H04L 1/00
H04B 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尤度情報に基づいて軟判定誤り訂正処理を行う3段以上の誤り訂正処理回路と、前記誤り訂正処理回路に前記尤度情報を供給する3段以上の尤度算出回路を備え、
前記3段以上の誤り訂正処理回路は、訂正能力の高い順に配置され、少なくとも1つの前記誤り訂正処理回路は、繰り返し復号処理を行わないように構成され、
少なくとも1つの2段目以降の前記尤度算出回路は、前段の誤り訂正処理回路の訂正処理により更新された第1の尤度情報を用いて、前記第1の尤度情報の出力ビット数よりも少ないビット数の第2の尤度情報を算出し、前記第2の尤度情報を後段に配置された前記誤り訂正処理回路に供給するように構成される
誤り訂正装置。
【請求項2】
少なくとも1つの2段目以降の前記誤り尤度算出回路は、前記第1の尤度情報の下位ビットから所定のビット分の情報を削除することにより前記第2の尤度情報を算出する
請求項1に記載の誤り訂正装置。
【請求項3】
前記誤り訂正処理回路は、前段に配置された前記尤度算出回路から供給された前記第2の尤度情報の大きさに基づいて、訂正処理を行うビットまたはシンボルを決定する
請求項1または2に記載の誤り訂正装置。
【請求項4】
前記誤り訂正処理回路は、
前記尤度情報の値の小さいものから順に所定の数のビットまたはシンボルを選択して、訂正処理を行うビットまたはシンボルを決定する
請求項3記載の誤り訂正装置。
【請求項5】
前記誤り訂正処理回路は、
前記尤度情報の値が所定の閾値よりも小さいビットまたはシンボルを選択して、訂正処理を行うビットまたはシンボルを決定する
請求項3記載の誤り訂正装置。
【請求項6】
3段の前記誤り訂正処理回路と、前記誤り訂正処理回路のそれぞれの前段に配置された3段の前記尤度算出回路を備え、
1段目の前記誤り訂正処理回路に供給される尤度情報のビット数は、3ビットであり、
2段目の前記誤り訂正処理回路に供給される尤度情報のビット数は、2ビットであり、
3段目の前記誤り訂正処理回路に供給される尤度情報のビット数は、1ビットであり、
請求項1から5の何れか1項に記載の誤り訂正装置。
【請求項7】
尤度情報に基づいて軟判定誤り訂正処理を行う3段以上の誤り訂正処理回路と、前記誤り訂正処理回路に前記尤度情報を供給する尤度算出回路を備えた誤り訂正装置における誤り訂正方法であって、
前記3段以上の誤り訂正処理回路は、訂正能力の高い順に配置され、少なくとも1つの前記誤り訂正処理回路は、繰り返し復号処理を行わないように構成され、
少なくとも1つの2段目以降の前記尤度算出回路は、前段の誤り訂正処理回路の訂正処理により更新された第1の尤度情報を用いて、前記第1の尤度情報の出力ビット数よりも少ないビット数の第2の尤度情報を算出し、前記第2の尤度情報を後段に配置された前記誤り訂正処理回路に供給する
誤り訂正方法。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の誤り訂正装置を備えた通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送特性を向上することができる誤り訂正装置、誤り訂正方法及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント光通信では、伝送特性の向上のために、伝送途中に生じる歪及び周波数/位相変動をデジタル信号処理によって補償しており、更なる伝送特性向上のために、上記の補償機能に加えて、送受間に誤り訂正装置を設けて伝送特性におけるデータ誤りの低減を図っている。一般的には、送信側でデータに対して誤り訂正用符号化を行い、受信側でその符号化に応じて誤り訂正を行うことで、伝送特性の向上を図っている。
【0003】
誤り訂正方法としては、例えば、ハミング符号、BCH符号、及びリードソロモン符号、並びに、畳み込み符号/ビタビ復号等が一般的によく知られている。特に、近年の通信装置においては、CPUの計算能力の発展によって、複雑かつ大量の処理が可能となったため、LDPC(低密度パリティ検査符号:low-density parity-check code)のような高性能な誤り訂正方法が使用されている。また、近年においては、データをn行×m列のように行列状に配置し、行方向及び列方向のデータに対して誤り訂正処理を行い、訂正能力の向上が図られている。
【0004】
誤り訂正の処理においては、"1"や"0"に復号した結果をもとに訂正処理を行う硬判定と、受信信号の複素平面上での座標("1"や"0"に復号される前)をもとに訂正処理を行う軟判定とがある。後者の方法は前者の方法と比較して訂正能力は上がるが、回路規模や処理規模は増え消費電力も大きくなる。そのため、従来から軟判定を用いた訂正処理において、回路規模や処理規模の増大を抑えつつ訂正能力を向上させる方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、LDPC符号の反復復号方法において、復号処理の繰り返し処理時に対数尤度比を更新することで、復号完了までの繰り返し回数を減らす方法が提案されている。また、特許文献2では、畳み込み符号を含む連接符号を用いた繰り返し復号において、繰り返し時に尤度を変更することで、回路規模の増大を抑制する方法が提案されている。さらに、特許文献3では、2つの軟判定による誤り訂正処理を行うことで、伝送速度が増大した場合において、誤り訂正能力を向上させることができる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-225164号公報
【文献】特開2011-205511号公報
【文献】特開2003-069535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2では、1つの誤り訂正処理の中で繰り返し処理を行うために、繰り返し処理のために必要な回路による回路規模の増大が抑えられないという問題があった。また、特許文献3では、それぞれの誤り訂正処理における軟判定値の出力ビット数は同じであるため、それに伴う回路規模の増大を抑制することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、回路規模を抑えつつ伝送特性を向上することができる誤り訂正装置、誤り訂正方法及び通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明の誤り訂正装置は、尤度情報に基づいて軟判定誤り訂正処理を行う3段以上の誤り訂正処理回路と、前記誤り訂正処理回路に前記尤度情報を供給する3段以上の尤度算出回路を備え、前記3段以上の誤り訂正処理回路は、訂正能力の高い順に配置され、少なくとも1つの前記誤り訂正処理回路は、繰り返し復号処理を行わないように構成され、少なくとも1つの2段目以降の前記尤度算出回路は、前段の誤り訂正処理回路の訂正処理により更新された第1の尤度情報を用いて、前記第1の尤度情報の出力ビット数よりも少ないビット数の第2の尤度情報を算出し、前記第2の尤度情報を後段に配置された前記誤り訂正処理回路に供給するように構成される。
【0010】
上述したような課題を解決するために、本発明の誤り訂正方法は、尤度情報に基づいて軟判定誤り訂正処理を行う3段以上の誤り訂正処理回路と、前記誤り訂正処理回路に前記尤度情報を供給する尤度算出回路を備えた誤り訂正装置における誤り訂正方法であって、前記3段以上の誤り訂正処理回路は、訂正能力の高い順に配置され、少なくとも1つの前記誤り訂正処理回路は、繰り返し復号処理を行わないように構成され、少なくとも1つの2段目以降の前記尤度算出回路は、前段の誤り訂正処理回路の訂正処理により更新された第1の尤度情報を用いて、前記第1の尤度情報の出力ビット数よりも少ないビット数の第2の尤度情報を算出し、前記第2の尤度情報を後段に配置された前記誤り訂正処理回路に供給する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路規模を抑えつつ伝送特性を向上することができる誤り訂正装置、誤り訂正方法及び通信装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置を含む通信装置の構成例を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号化装置の構成例を示す図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置の構成例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る尤度情報を説明するための図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号化装置の動作を説明するための図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置の動作を説明するための図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正方法の符号化動作を説明するためのフロー図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正方法の誤り訂正動作を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。但し、本発明は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に説明する実施の形態に限定して解釈すべきではない。
【0014】
<本発明の概要>
本発明の目的は回路規模を抑えつつ伝送特性を向上することができる誤り訂正装置を提供することである。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような特徴を有している。
(a)誤り訂正処理では、繰り返し復号処理を行わない。
(b)3段以上の訂正能力の異なる軟判定による誤り訂正処理を連続的に接続して、復号処理をする。
(c)前段の誤り訂正処理で求めた尤度情報を、後段の誤り訂正処理において利用する。
(d)尤度情報の量子化ビット数を、誤り訂正処理の処理順に減らす。
【0016】
本発明は、上記特徴を有することにより以下のような作用効果を奏する。
(A)誤り訂正処理で繰り返し復号処理を行わないため、回路規模を小さくすることができる。
(B)誤り訂正処理の内部で繰り返し復号処理をしない代わりに、3段以上の訂正能力の異なる軟判定処理を組み合わせることにより訂正能力を向上させる
(C)前段の尤度処理の結果を後段で利用するため、回路規模を小さくすることができる。
(D)後段の誤り訂正処理で利用する尤度情報のビット数を前段より小さくすることで回路規模を小さくすることができる。
【0017】
冗長ビット数を減らすことで回路規模は小さくなるが、異なる軟判定処理による誤り訂正を3段以上組み合わせることにより訂正能力は向上するので、回路規模を小さくしつつ、誤り訂正能力の低下を抑えることができる。さらに、前段の誤り訂正処理で求めた尤度情報を後段の誤り訂正処理において利用し、尤度情報のビット数を減らすことにより、回路規模を小さくすることができる。
【0018】
<誤り訂正装置を含む通信装置>
図1は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置を含む通信装置の構成例である。図1は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号化装置10および誤り訂正装置20をコヒーレント光通信方式の通信装置に適用した構成例である。
【0019】
図1のコヒーレント光通信方式の通信装置において、送信側装置は、送信信号処理装置100と光送信モジュール300とを含み、受信側装置は、光受信モジュール400と受信信号処理装置200とを含む。送信信号処理装置100は、誤り訂正符号化装置10を備える。受信信号処理装置200は、誤り訂正装置20を備える。送信側装置と受信側装置とは、光ファイバ伝送路500を介して接続されている。
【0020】
送信信号処理装置100における誤り訂正符号化装置10は、送信データに対して誤り訂正用の符号化を行う。光送信モジュール300は、誤り訂正用の符号化が行われた送信データによって光信号を生成する。一般的なコヒーレント光通信では、水平偏波光信号Xと垂直偏波光信号とが合成されて伝送される。変調方式としてQPSKを用いた場合、送信データは、水平偏波光信号用データ(XI、XQ)と、垂直偏波光信号用データ(YI、YQ)とに分けられる。
【0021】
XI及びXQは、それぞれ、水平偏波光信号用データの複素平面上での水平軸及び直交軸上の座標、即ち水平成分及び直交成分を示す。また、YI及びYQは、それぞれ、垂直偏波光信号用データの複素平面上での水平軸及び直交軸上の座標、即ち水平成分及び直交成分を示す。送信データは、搬送波の複素平面上の座標にマッピングされ、光ファイバ伝送路500を経由して受信側に伝送される。
【0022】
光受信モジュール400は、受信した光信号から受信データを生成する。この光受信モジュール400は、水平偏波光信号用データ(XI、XQ)と、垂直偏波光信号用データ(YI、YQ)を出力できる。これらのデータ(XI、XQ、YI、YQ)は、受信信号処理装置200において、デジタル信号に変換され、誤り訂正装置20においてデータ誤りの訂正処理が行われる。
【0023】
尚、コヒーレント光通信装置では、送信データが、水平偏波光信号と垂直偏波光信号とで送信されるが、片方の偏波信号のみで送ることも可能である。その場合でも、本発明の実施形態に係る誤り訂正装置20を使用することができる。
【0024】
また、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置20を使用できる通信装置は、上述したコヒーレント光通信装置に限定されない。無線通信を含めた他の通信装置においても本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置20を使用することができる。そのような通信装置も本発明の範囲内であることは言うまでもない。
【0025】
<誤り訂正符号化装置の構成>
図2は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号化装置の構成例を示す図である。図2の構成例においては、受信側で3段の軟判定による誤り訂正処理を行うことに応じて、送信側の誤り訂正符号化装置10は、3段の冗長ビット付加回路(11、12、13)から構成されている。以下の説明では、3段の軟判定による誤り訂正処理を行う場合を説明するが、本発明は、3段の軟判定による誤り訂正処理に限定されるものではない。
【0026】
図2の構成例では、1段目には冗長度の低い冗長ビット付加回路#3(第3の冗長ビット付加回路)が配置され、2段目には1段目よりも冗長度が高い冗長ビット付加回路#2(第2の冗長ビット付加回路)が配置され、3段目には、2段目よりも冗長度の高い冗長ビット付加回路#1(第1の冗長ビット付加回路)が配置されている。
【0027】
冗長ビット付加回路#3には、送信データが供給され第3の誤り訂正を行うための冗長ビットが付加される。冗長ビット付加回路#3において冗長ビットが付加された信号は、冗長ビット付加回路#2に供給され、第2の誤り訂正を行うための冗長ビットが付加される。冗長ビット付加回路#2において冗長ビットが付加された信号は、冗長ビット付加回路#1に供給され、第1の誤り訂正を行うための冗長ビットが付加される。
【0028】
図2の構成例では、複数の冗長ビット付加回路を配置することで、誤り訂正能力の向上を図り、1段目、2段目の符号長(情報ビット+冗長ビット)を短くすることで回路規模を低減することができる。
【0029】
本実施の形態における軟判定の誤り訂正符号としては、例えば、LDPC符号を用いることができる。3段の軟判定の誤り訂正符号を全てLDPC符号としてもよい。各段の軟判定の誤り訂正符号としては、LDPC符号以外に、リードソロモン符号、BCH符号、ハミング符号、畳み込み符号、ターボ符号、さらに複数の符号を組み合わせた符号(連接符号)等を使用してもよい。各段の誤り訂正符号の符号長についても、伝送路の状態等に応じて適宜定めることができる。
【0030】
<誤り訂正装置の構成>
図3は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置の構成例を示す図である。本実施の形態では、3段の軟判定による誤り訂正処理を行うため、それに応じて、受信側の誤り訂正装置20は、3段の誤り訂正処理回路(31、32、33)から構成されている。各段の訂正処理回路の前段には、軟判定誤り訂正を行うための尤度情報を算出する尤度算出回路(21、22、23)が設置されている。
【0031】
<尤度情報について>
まず、本実施の形態の誤り訂正で用いる尤度情報について説明する。尤度情報とはビット(またはシンボル)毎の確からしさ(信頼度)を表すものである。本実施の形態の尤度算出回路#1、尤度算出回路#2、尤度算出回路#3の尤度情報は、それぞれ、受信側の受信データのビット(またはシンボル)毎の確からしさ、第1の誤り訂正後のビット(またはシンボル)毎の確からしさ、第2の誤り訂正後のビット(またはシンボル)毎の確からしさを表している。後述する座標情報に基づいた尤度情報を求める場合は、座標情報はシンボル毎(シンボル:通信において一回の変調で送られる1まとまりのデータ)となるので、複数ビットで1シンボルとなる場合は、ビット毎に尤度情報を求めることもできるし、シンボル毎に尤度算出してシンボル内の各ビットを共通の尤度情報とすることもできる。複数ビットで1シンボルとなる変調方式の例としては、QPSKは1シンボルで2ビット、16QAMは1シンボルで4ビットの情報を持ち、直交偏波多重によりさらに2倍(QPSKならば4ビット、16QAMならば8ビット)のビット数の情報を伝送できるものとなっている。
【0032】
信号ビットの信頼度を表す尤度情報の尤度値は、元々アナログ値であるため、何ビットで表現するかは適宜設定可能である。入力の尤度値が大きい場合は、誤りが少ない状態であり、誤訂正する確率が低くなるので、出力の尤度値は大きくなる。逆に、入力の尤度値が小さい場合は、誤りが多い状態であり、誤訂正する確率が高くなるので、出力の尤度値は小さくなる。誤り訂正処理後の尤度値は、実質的に残存誤り確率を示していることになる。
【0033】
尤度値は、複素平面上で、送信する理想点の座標値と、受信した座標値の間の距離に基づいて算出することができる。対象とするビット(またはシンボル)の尤度値が大きいほどそのビット(またはシンボル)の信頼度(確からしさ)が高いと判定して、尤度値に基づく誤り訂正処理を行えばよい。また、算出した尤度情報を次の段の誤り訂正処理回路に送信することにより、次の段の誤り訂正に用いることができる。
【0034】
複素平面上の座標間の距離の算出方法としては、各軸上の座標値の差分の絶対値の和を用いて算出する方法などが考えられる。受信した座標が、理想の座標点と重なった場合が最大の尤度値をもつ場合であり、理想の座標点からの差分が増えるほど尤度値は減少する。複数の理想の座標点がある場合、理想の座標点の中間座標が最小の尤度値を持つこととなる。
【0035】
<尤度情報の具体例>
本実施の形態では、尤度情報として対数尤度比を用いる。尤度情報は、対数尤度比に限定されるものではなく、他の尤度情報を用いてもよい。以下では、尤度情報として対数尤度比を用いた場合の対数尤度比の具体例を、変調方式としてQPSKを用いた場合について説明する。
【0036】
図4は、本発明の実施の形態に係る尤度情報を説明するための図である。送信側で設定した理想の座標点をXt1(XIt1、XQt1)、座標点Xt1と異なる隣接の信号点の座標点をXt2(XIt2、XQt2)、受信側の座標点Xr(XIr、XQr)とする。
【0037】
Arは受信側の誤り訂正前の振幅、At1は理想の座標点Xt1の理想的な振幅、At2は座標点Xt1と異なる隣接の座標点Xt2の振幅であり、φ1、φ2は、各々受信側の座標点XrとXt1、Xt2との位相差である。
【0038】
複素平面上で表すと、座標点と振幅及び位相の間には以下の関係式が成り立つ。
(XIr-XIt1)+j(XQr-XQt1)=(Ar/At1)exp(jφ1)
(XIr-XIt2)+j(XQr-XQt2)=(Ar/At2)exp(jφ2)
【0039】
尤度値としては、例えば、送信側の座標と、受信側の座標における座標値の差の絶対値を用いて以下のように求めることができる。
L1=|XIr-XIt1|+|XQr-XQt1|
L2=|XIr-XIt2|+|XQr-XQt2|
【0040】
尤度比はこの2つの比であり、対数尤度比(LLR:Log-Likelihood Ratio)は、尤度比を対数変換することにより以下のように求めることができる。
LLR=ln(L1/L2)
【0041】
尤度情報としては、尤度比を対数変換せず、LLR=L1/L2の値を尤度情報として用いることもできる。この場合、対数演算による演算処理量を削減し、それに必要な回路規模を削減することができる。また、尤度情報としては、座標値の差に基づく情報に限られず、確からしさを示す指標であれば他の情報を用いてもよい。
【0042】
上記では、1つの偏波信号(水平偏波光信号X)についての対数尤度比の算出例を説明したが、直交偏波多重伝送の場合の他方の偏波信号(垂直偏波光信号Y)においても同様にして対数尤度比を算出することができる。
【0043】
対数尤度比を求めるための対数変換の方法としては、演算器を用いて尤度比の対数値を求める方法があるが、ルックアップテーブルとして対数変換テーブルをメモリに保持しておき、このルックアップテーブルを参照して対応付けすることで対数値を求めてもよい。対数変換テーブルを用いることで対数変換のための演算器が不要となり、処理の高速化や回路規模削減の効果が得られる。
【0044】
対数変換テーブルについては、多くのパターンの変換表を持っておいてもよいし、部分的な対応表を保持しておき、対数関数の対称性や相似性等を利用して、任意の定数倍や任意の定数加算を組み合わせて対数値を求めてもよい。このようなハードウェア向けの簡略化した方法を用いることで、処理時間、回路規模、消費電力の削減効果が得られる。
【0045】
図4では、変調方式としてQPSKを用いた場合の尤度情報の算出方法を説明したが、変調方式として他の変調方式を用いた場合においても、同様の方法で尤度情報を求めることができる。本実施の形態における誤り訂正は、変調方式に依存しないため、BPSK、8QAM、16QAM、64QAMや他の変調方式を用いた場合にも、同様の誤り訂正方法を適用することができる。
【0046】
例えば、BPSKを用いた場合には、送信側の理想の座標点をXt1(XIt1、0)、Xt2(XIt2、0)、受信側の誤り訂正前の座標Xr(XIr、0)として、Xrと、送信側の理想の座標点(Xt1、XIt2)との差分の絶対値の和等を用いて尤度情報を求めることができる。直交偏波多重伝送の場合の他方の偏波信号(垂直偏波光信号Y)においても同様にして尤度情報を算出することができる。
【0047】
<1段目の誤り訂正処理>
図3における1段目の尤度算出回路#1(第1の尤度算出回路)には、光受信モジュール400から受信信号XI/XQ/YI/YQが供給される。尤度算出回路#1では、受信信号のビット(またはシンボル)毎に尤度情報#1として対数尤度比が算出される。出力する尤度情報#1はN1ビットとする。
【0048】
1段目の誤り訂正処理回路#1(第1の誤り訂正処理回路)は、尤度情報#1を用いて入力されたデータ#1の誤り訂正を行う。誤り訂正処理回路#1は、尤度情報#1の大きさに基づいて、訂正処理を行うビット(またはシンボル)を決定する。例えば、誤り訂正すべきビット(またはシンボル)の候補のうち、対数尤度比の値が他の候補ビット(またはシンボル)より小さいビット(またはシンボル)について、誤り訂正を行う。確率的には尤度値が大きいビット(またはシンボル)は正しい可能性が高いビット(またはシンボル)なので、尤度値が小さいビット(またはシンボル)を訂正するのがよい。
【0049】
誤り訂正を行うかどうかの判定は、尤度情報の値の小さいものから順に所定の数のビット(またはシンボル)を選ぶ方法や、尤度情報の値が所定の閾値より小さいビット(またはシンボル)を選ぶ方法など様々な方法が考えられる。誤り訂正処理回路#1では、尤度情報に基づいて選択したビット(またはシンボル)の誤り訂正を行い、繰り返し復号を行わない。繰り返し復号を行わないことで、回路規模を小さくすることができる。
【0050】
誤り訂正処理回路#1は、訂正したビット(またはシンボル)の尤度情報を更新し、冗長ビットに対応する尤度情報を削除して、誤り訂正後尤度情報#1を出力し、訂正したデータ#1から冗長ビットを削除してデータ#2を出力する。
【0051】
<2段目の誤り訂正処理>
図3における2段目の尤度算出回路#2(第2の尤度算出回路)には、誤り訂正処理回路#1の誤り訂正後のデータ#2と更新された訂正後の尤度情報#1が供給される。
【0052】
尤度算出回路#2は、入力されるすべてのデータ#2に対して、ビット(またはシンボル)毎に尤度情報#2を作成する。出力する尤度情報#2はN2ビットとする。尤度算出回路#2は、誤り訂正処理回路#1で更新した後の誤り訂正後尤度情報#1(第1の尤度情報)を用いて、訂正後尤度情報#1の最下位から(N1-N2)ビット分の情報を削除することでN2ビットの尤度情報#2(第2の尤度情報)を作成する。
【0053】
尤度算出回路#2では、出力ビット数を、訂正後尤度情報#1の最下位から(N1-N2)ビット分の情報を減らすだけの処理を行うので、個別の尤度算出回路が不要となり、個別の算出回路を設ける場合に比べて大幅に回路規模を削減することができる。
【0054】
2段目の誤り訂正処理回路#2(第2の誤り訂正処理回路)は、尤度情報#2を用いて入力されたデータ#2の誤り訂正を行う。本実施の形態では、誤り訂正処理回路#1と同様に誤り訂正すべきビット(またはシンボル)の候補のうち、尤度情報の値が他の候補ビット(またはシンボル)より小さいビット(またはシンボル)について、誤り訂正を行う。
【0055】
誤り訂正を行うかどうかの判定は、誤り訂正処理回路#1と同様に、尤度情報の値の小さいものから順に所定の数のビット(またはシンボル)を選ぶ方法や、尤度情報の値が所定の閾値より小さいビット(またはシンボル)を選ぶ方法など様々な方法が考えられる。誤り訂正処理回路#2においても、誤り訂正処理回路#1と同様に、尤度情報に基づいて選択したビットの誤り訂正を行い、繰り返し復号処理を行わない。繰り返し復号処理を行わないことで、回路規模を小さくすることができる。
【0056】
誤り訂正処理回路#2は、訂正が生じたビット(またはシンボル)の尤度情報を更新し、冗長ビットに対応する尤度情報を削除して、誤り訂正後尤度情報#2を出力し、訂正したデータ#2から冗長ビットを削除してデータ#3を出力する。
【0057】
<3段目の誤り訂正処理>
図3における3段目の尤度算出回路#3(第3の尤度算出回路)には、誤り訂正処理回路#2の訂正後のデータ#3と更新された訂正後の尤度情報#2が供給される。
【0058】
尤度算出回路#3は、入力されるすべてのデータ#3に対して、ビット(またはシンボル)毎に尤度情報#3を作成する。出力する尤度情報#3はN3ビットとする。尤度算出回路#3は、誤り訂正処理回路#2で更新した後の誤り訂正後尤度情報#2を用いて、訂正後尤度情報#2の最下位から(N2-N3)ビット分の情報を削除することでN3ビットの尤度情報#3を作成する。
【0059】
尤度算出回路#3では、出力ビット数を、訂正後尤度情報#2の最下位から(N2-N3)ビット分減らすだけの処理を行うので、個別の尤度算出回路が不要となり、個別の算出回路を設ける場合に比べて大幅に回路規模を削減することができる。
【0060】
3段目の誤り訂正処理回路#3(第3の誤り訂正処理回路)は、尤度情報#3を用いて入力されたデータ#3の誤り訂正を行う。本実施の形態では、誤り訂正処理回路#1、誤り訂正処理回路#2と同様に誤り訂正すべきビット(またはシンボル)の候補のうち、尤度情報の値が他の候補ビット(またはシンボル)より小さいビット(またはシンボル)について、誤り訂正を行う。
【0061】
誤り訂正を行うかどうかの判定は、誤り訂正処理回路#1、誤り訂正処理回路#2と同様に、尤度情報の値の小さいものから順に所定の数のビット(またはシンボル)を選ぶ方法や、尤度情報の値が所定の閾値より小さいビット(またはシンボル)を選ぶ方法など様々な方法が考えられる。誤り訂正処理回路#3においても、誤り訂正処理回路#1、誤り訂正処理回路#2と同様に、尤度情報に基づいて選択したビットの誤り訂正を行い、繰り返し復号処理を行わない。繰り返し復号処理を行わないことで、回路規模を小さくすることができる。
【0062】
誤り訂正処理回路#3は、訂正したデータ#3から冗長ビットを削除して、最終の受信データを出力する。最終段であるため、誤り訂正後尤度情報を出力しなくてもよいが、誤り訂正の状態の解析等をするために、誤り訂正後尤度情報を出力するようにしてもよい。
【0063】
上述した本実施の形態の誤り訂正処理回路#1、誤り訂正処理回路#2、誤り訂正処理回路#3では、繰り返し復号を行わない構成を例として説明したが、全ての誤り訂正処理回路で、繰り返し復号を行わないように構成する必要はなく、少なくとも1つの誤り訂正処理回路で、繰り返し復号を行わないように構成してもよい。
【0064】
また、冗長度が大きく繰り返し復号を行う従来の誤り訂正処理の符号と冗長度の低い繰り返し復号処理無しの符号を組み合わせる構成例も考えられる。このような構成は、回路規模を低減させることはできないが、既存の繰り返し復号処理を行う回路に、回路規模の小さい回路を追加することで、誤り訂正能力の性能改善が期待できる。例えば、冗長度1%の場合、繰り返し演算しても誤り訂正能力が向上しない可能性が高いので、既存の繰り返し復号処理有りの回路に、冗長度1%程度と低く繰り返し復号処理無しの回路を追加するような構成も考えられる。
【0065】
また、上述した本実施の形態の尤度算出回路#2、尤度算出回路#3では、前段から送信された尤度情報を利用して尤度情報を生成したが、2段目以降の全ての復号処理で前段の尤度情報を利用するように構成する必要はなく、少なくとも1つの復号処理で、前段の復号処理の尤度情報を利用するようにしてもよい。
【0066】
また、各段の誤り訂正処理では、訂正候補が1つだけであれば無条件で訂正すると判断してもよいし、尤度情報に基づき閾値判定して訂正するかどうかを判断してから訂正してもよい。訂正候補が複数ある場合は、誤って訂正する可能性が高くなってしまうので、訂正するかしないかは、そのビットの尤度情報に基づいて判断することができる。例えば、尤度値が所定の閾値より小さければ訂正して、所定の閾値より大きければ訂正しないようにすればよい。
【0067】
このように、本実施の形態の尤度算出回路#1、尤度算出回路#2、尤度算出回路#3では、ビット(またはシンボル)毎に尤度情報を出力するが、2段目、3段目の誤り訂正処理では、前段で求められた尤度情報を利用して、誤り訂正が行われたビットにおいてのみ尤度情報が更新される。また、後段へ尤度情報を送信する場合に、訂正後尤度情報の出力ビット数を、最下位ビットからビット数を減らしていくので、結果的に、1段目の尤度情報を再利用することになる。
【0068】
実際の回路では、3段の場合の最小のビット数の設定である、N1、N2、N3=3、2、1ビットとした時に、尤度情報のビット幅は最小限(3、2、1ビットの組み合わせ)でも十分であり、十分に性能があることが分かっている。また、誤り訂正を3段にした場合でも、2段目、3段目の尤度算出処理は、1段目に比べて大幅に算出処理数が少ないため、各段で尤度情報をすべて算出する場合に比べ、処理時間、回路規模、消費電力とも小さくすることができる。
【0069】
尤度情報とはビット毎の信頼度を表すものである。受信データの信頼度は、理想の座標点からの差分が大きくなるほど減少するので、第1の誤り訂正が正しい確率が高い場合は、第1の誤り訂正において訂正する対象となったビットの信頼度は増加することになる。
【0070】
一方で、第1の誤り訂正が正しい確率が低い場合は、第1の誤り訂正で訂正する候補となったビット(またはシンボル)の確からしさを減少させるだけとし、当該ビット(またはシンボル)の誤り訂正は行わないようにすればよい。第2の誤り訂正についても同様である。
【0071】
本実施の形態では、尤度情報の出力ビット数を減らすことにより、各段の誤り訂正処理で誤っている可能性が高いと推測されるビットの確からしさを減少させることで、次の段の誤り訂正処理で訂正できる確率を高めることができるので、少ない冗長度、及び少ない尤度情報のビット数であっても、誤り訂正の性能を向上させ、高い性能を維持することができる。
【0072】
<誤り訂正符号化装置の動作>
図5は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号化装置の動作を説明するための図である。図5の構成例における符号長及び冗長度は、以下に説明する符号長及び冗長度に限定されるものではなく、適用される伝送路の状態や通信装置の回路規模に応じて適宜定めることができる。
【0073】
図5の構成例では、軟判定の誤り訂正符号として、LDPC符号を採用している。LDPC符号は符号長が短いため回路規模は非常に小さくすることができる。LDPCのように高性能な誤り訂正では、符号長が大きくなるほど回路規模は大きくなるので、図5に示すように、冗長ビット付加回路#3、冗長ビット付加回路#2の符号長を短くすることで、回路規模を小さくすることができる。
【0074】
図5において、冗長ビット付加回路#3では、1028ビット×145行の送信データ(情報ビット)の各行に対して10ビットの冗長ビットが付加され、結果的に1038(1028+10)ビット×145行のデータ#3が出力される。冗長ビット付加回路#3における符号長は、1038ビット、冗長度は、1038/1028=1.010である。
【0075】
冗長ビット付加回路#2では、18ビットのPAD(桁数を揃えるための付加ビット。パディングビット)が付加され、224ビット×672行のデータの各行に対して8ビットの冗長ビットが付加され、結果的に232(224+8)ビット×672行のデータ#2が出力される。冗長ビット付加回路#2における符号長は、232ビット、冗長度は、232/224=1.036である。
【0076】
冗長ビット付加回路#1では、入力されたデータがX偏波とY偏波に分配され、X偏波、Y偏波のそれぞれにおいて、77952ビットのデータに対して8000ビットの冗長ビットが付加され、X偏波、Y偏波のそれぞれにおいて、85952ビットのデータ#1が出力される。冗長ビット付加回路#3における符号長は、85952ビット、冗長度は、85952/77952=1.102である。ここで、冗長ビット付加回路#3、#2、#1において付加する冗長ビット数の値、及びデータのビット数・行数等の値は1例であり、いずれも任意のビット数でよい。
【0077】
誤り訂正符号化装置から、X偏波光信号用データの複素平面上での水平成分及び直交成分を示すXI及びXQ、及びY偏波光信号用データの複素平面上での水平成分及び直交成分を示すYI及びYQが出力される。XI及びXQ、YI及びYQは、光送信モジュール300において搬送波の複素平面上の座標にマッピングされ、光ファイバ伝送路500を経由して受信側に伝送される。
【0078】
<誤り訂正装置の動作>
図6は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正装置の動作を説明するための図である。図6の構成例における符号長及び冗長度は、図5の構成例に対応させたものである。
【0079】
尤度算出回路#1には、光受信モジュール400から、受信信号XI/XQ/YI/YQが供給される。尤度算出回路#1では、受信信号のビット(またはシンボル)毎に対数尤度比(LLR)が算出される。ここで、対数尤度比はN1ビットで構成されている。
【0080】
誤り訂正処理回路#1では、尤度算出回路#1から供給された尤度情報#1を用いて入力データ#1に対する誤り訂正処理が実行される。誤り訂正すべきビット(またはシンボル)の候補のうち、対数尤度比の値が他の候補ビット(またはシンボル)より小さいビット(またはシンボル)について、誤り訂正を行う。誤り訂正を行うかどうかの判定は、尤度情報の値の小さいものから順に所定の数のビット(またはシンボル)を選ぶ方法や、尤度情報の値が所定の閾値より小さいビット(またはシンボル)を選ぶ方法など様々な方法が考えられる。誤り訂正処理回路#1では、繰り返し復号を行わない。
【0081】
誤り訂正処理回路#1は、訂正したビット(またはシンボル)の尤度情報を更新し、冗長ビットに対応する尤度情報を削除して、誤り訂正後尤度情報#1を出力し、訂正したデータ#1から冗長ビットを削除してデータ#2を出力する。
【0082】
尤度算出回路#2には、X偏波用のデータとY偏波用のデータが合体され、誤り訂正処理回路#1の訂正後のデータ#2と訂正後の尤度情報#1(LLR)が供給される。尤度算出回路#2では、受信信号のビット(またはシンボル)毎に尤度情報#2(LLR)が作成される。ここで、尤度情報#2はN2ビットで構成されている。尤度算出回路#2では、訂正後尤度情報#1の最下位から1ビット分の情報を減らす処理により尤度情報#2を作成する。
【0083】
誤り訂正処理回路#2では、尤度算出回路#2から供給された尤度情報を用いて、訂正処理回路#1の出力データ#2に対する誤り訂正処理が実行される。誤り訂正処理回路#1と同様に誤り訂正すべきビット(またはシンボル)の候補のうち、尤度情報の値が他の候補ビット(またはシンボル)より小さいビット(またはシンボル)について、誤り訂正を行う。誤り訂正を行うかどうかの判定は、尤度情報の値の小さいものから順に所定の数のビット(またはシンボル)を選ぶ方法や、尤度情報の値が所定の閾値より小さいビット(またはシンボル)を選ぶ方法など様々な方法が考えられる。誤り訂正処理回路#2では、繰り返し復号を行わない。
【0084】
誤り訂正処理回路#2は、訂正が生じたビット(またはシンボル)の尤度情報を更新し、冗長ビットに対応する尤度情報を削除して、誤り訂正後尤度情報#2を出力し、訂正したデータ#2から冗長ビットを削除してデータ#3を出力する。
【0085】
尤度算出回路#3には、訂正処理回路#2の訂正後のデータ#3と訂正後の尤度情報#2(LLR)からPADデータが除去されたデータが供給される。尤度算出回路#3では、受信信号のビット(またはシンボル)毎に尤度情報#3(LLR)が算出される。ここで、対数尤度比はN3ビットで構成されている。尤度算出回路#3では、訂正後尤度情報#2の最下位から1ビット分の情報を減らす処理により尤度情報#3を作成する。
【0086】
誤り訂正処理回路#3では、尤度算出回路#3から供給された尤度情報#3を用いて、訂正処理回路#2の出力データ#3に対する誤り訂正処理が実行される。誤り訂正処理回路#1、誤り訂正処理回路#2と同様に誤り訂正すべきビット(またはシンボル)の候補のうち、尤度情報の値が他の候補ビット(またはシンボル)より小さいビット(またはシンボル)について、誤り訂正を行う。誤り訂正処理回路#3では、繰り返し復号を行わない。
【0087】
<誤り訂正符号化方法の動作>
図7は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正方法の符号化動作を説明するためのフロー図である。本実施の形態の符号化動作は、冗長ビット付加回路#3、冗長ビット付加回路#2、冗長ビット付加回路#1を備えた誤り訂正符号化装置10において実行される。
【0088】
誤り訂正符号化装置10に、送信データが入力されると(ステップS1-1)、冗長ビット付加回路#3において、冗長ビットが付加される(ステップS1-2)。
【0089】
冗長ビット付加回路#3の出力データに対してPADが付加され(ステップS1-3)、冗長ビット付加回路#2において冗長ビットが付加される(ステップS1-4)。
【0090】
冗長ビット付加回路#2の出力データがX偏波、Y偏波用のデータとして分配され(ステップS1-5)、冗長ビット付加回路#1において冗長ビットがX偏波、Y偏波のそれぞれのデータに付加される(ステップS1-6)。
【0091】
冗長ビット付加回路#1において冗長ビットが付加されたデータは、XI/XQ/YI/YQデータとして出力される(ステップS1-7)。
【0092】
<誤り訂正方法の動作>
図8は、本発明の実施の形態に係る誤り訂正方法の誤り訂正動作を説明するためのフロー図である。本実施の形態の誤り訂正動作は、尤度算出回路#1、誤り訂正処理回路#1、尤度算出回路#2、誤り訂正処理回路#2、尤度算出回路#3、誤り訂正処理回路#3を備えた誤り訂正装置20において実行される。
【0093】
誤り訂正装置20に、光受信モジュール400から、受信信号XI/XQ/YI/YQが供給されると(ステップS2-1)、尤度算出回路#1では、X偏波/Y偏波のデータのビット(またはシンボル)毎に尤度情報#1が算出される(ステップS2-2)。
【0094】
誤り訂正処理回路#1では、尤度算出回路#1から供給された尤度情報#1を用いて、X偏波/Y偏波のデータ#1に対する誤り訂正処理が実行される(ステップS2-3)。
【0095】
尤度算出回路#2には、X偏波用のデータとY偏波用のデータが合体され、誤り訂正処理回路#1の訂正後のデータ#2と訂正後の尤度情報#1が供給され(ステップS2-4)、訂正後尤度情報#1の最下位から1ビット分の情報を減らす処理により尤度情報#2を作成される(ステップS2-5)。
【0096】
誤り訂正処理回路#2では、尤度算出回路#2から供給された尤度情報#2を用いて、訂正処理回路#1の出力データ#2に対する誤り訂正処理が実行される(ステップS2-6)。
【0097】
尤度算出回路#3には、訂正処理回路#2の訂正後のデータ#3と訂正後の尤度情報#2からPADデータが除去されたデータが供給され(ステップS2-7)、訂正後尤度情報#2の最下位から1ビット分の情報を減らす処理により尤度情報#3が作成される(ステップS2-8)。
【0098】
誤り訂正処理回路#3では、尤度算出回路#3から供給された尤度情報#3を用いて、訂正処理回路#2の出力データ#3に対する誤り訂正処理が実行され(ステップS2-9)、受信データが出力される(ステップS2-10)。
【0099】
<本発明の実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、冗長ビット数を減らすことで回路規模は小さくなるが、誤り訂正が3段以上とすれば訂正能力は上がるので、回路規模を小さくしつつ、誤り訂正能力の低下を抑えることができる。また、最終段の誤り訂正処理における尤度情報のビット数を1ビット程度まで減らせるので、回路規模を小さくしつつ、誤り訂正能力の低下を抑えることができる。
【0100】
<冗長度、および尤度情報のビット数と回路規模の関係>
尤度値のビット数が多い方が、訂正能力は高くなるが、尤度情報のビット数を大きくすると回路規模が増えてしまうので、現実的には 4ビット程度が上限と考えられる。
【0101】
尤度情報のビット数は、誤っている可能性が高いと推測されるビットが多い場合に多くのビット数が必要であり、通常は、訂正毎に誤っている可能性の高いビットが減っていくことから、前段側の誤り訂正と比較して後段側の誤り訂正の方が、少ないビット数の尤度情報で誤っている可能性の高いビットを特定することができる。
【0102】
また、前段の尤度情報のビット数は、多くの誤っている可能性の高いビットを表現できるので、例えば、1段目の尤度情報#1を使うデータ#1は、冗長度10%程度の訂正能力の高い符号にする必要があるが、最終段の尤度情報#3を使うデータ#3は、少ないビットしか表現できないので、冗長度1%程度の訂正能力の低い符号が演算と結果のバランスがよくなる。
【0103】
本実施の形態のように3段の軟判定誤り訂正処理を行う場合、3段の誤り訂正処理における冗長度の組み合わせとして、誤り訂正処理回路#1,#2,#3の冗長度を、それぞれおよそ、10%、4%、1%とした構成を例として説明する。これは、冗長度15%の1段(1種類)の誤り訂正のみの場合よりも、合計の冗長度が同程度(15%程度)となる冗長度10%+4%+1%のような3段構成(異なる3種類)の誤り訂正とした場合の方が、誤り訂正処理の性能がよくなることに基づいている。
【0104】
また、復号時に複数段の誤り訂正処理を行うため、前段より後段の方が誤りが少なくなっている可能性が高いと考えられることから、復号時の前段より後段の冗長度が小さくなるように組み合わせた構成とすることにより、全体の誤り訂正の性能を向上させることができる。これらから、冗長度と尤度値の組み合わせは、冗長度10%(尤度情報#1のN1=3ビット)、冗長度4%(尤度情報#2のN2=2ビット)、冗長度1%(尤度情報#3のN3=1ビット)の組み合わせを、誤り訂正の性能が良い条件の1例として構成することができる。
【0105】
尤度情報のビット数を1ビット減らすと尤度値がとれる最大値は半減することから、各段の誤り訂正処理では訂正される誤りの数が、後段に進むにしたがって半減する程度となるような誤り訂正回路とする(冗長度等を設定する)ことにより尤度情報の利用効率を高くすることができる。そのため、前述の冗長度と尤度値の組み合わせ例(冗長度10%、4%、1%、尤度情報ビット数3、2、1)は、尤度情報の利用効率を高くできる条件の1例となっている。
【0106】
シミュレーション結果によれば、尤度情報のビット数を3、2、1とした場合は、尤度情報のビット数を3、3、3とした場合と比較して、ほぼ同程度の性能が維持されていることが確認できた。本実施形態のように、複数の誤り訂正処理を能力の高い順に並べることで、前段から順に尤度情報のビット数を3→2→1ビットにした場合でも、高い性能が維持される。
【0107】
一方、回路規模に関しては、尤度情報のビット数を、前段から後段へ減らす(3→2→1)際は、単純に下位のビット分の情報を削除するだけでよく、ビット数を変えるための余分な回路は必要ない。さらに、尤度情報のビット数が3ビットの回路規模に対し、尤度情報のビット数を2ビットにすると回路規模は1/2に、尤度情報のビット数を1ビットにすると回路規模は1/4程度になると見積もられる。
【0108】
例えば、3段の軟判定処理における尤度情報のビット数を3ビット→3ビット→3ビットにした場合に比べて、尤度情報のビット数を3ビット→2ビット→1ビットにすると、回路規模は、1.75/3=0.58倍となり、誤り訂正の性能を落とすことなく4割以上の回路規模の削減効果を得ることができる。
【0109】
トータルの訂正能力を落とさずに、尤度情報のビット数を減らすには、誤り訂正処理毎に訂正能力(冗長度)の調整が必要になる。誤りが多い状態であれば、尤度情報のビット数を増やすことで訂正能力が向上するが、誤りが少ない状態では、少ない尤度情報のビット数でも誤り状態を表現できるので、尤度情報のビット数を増やしたとしても訂正能力は向上しない可能性がある。本実施の形態では、最初の段の誤り訂正において、大部分の誤りは訂正しているので、後段の誤り訂正では、誤りが少ない状態になっていることから、尤度情報のビット数を減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、光通信等における誤り訂正装置及び通信装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
100…送信信号処理装置、200…受信信号処理装置、300…光送信モジュール、400…光受信モジュール、10…誤り訂正符号化装置、11、12、13…冗長ビット付加回路、20…誤り訂正装置、21、22、23…尤度算出回路、31、32、33…誤り訂正処理回路。
【要約】
【課題】回路規模を抑えつつ伝送特性を向上することができる誤り訂正装置を提供する。
【解決手段】本発明の誤り訂正装置(20)は、尤度情報に基づいて軟判定誤り訂正処理を行う3段以上の誤り訂正処理回路(31、32、33)と、誤り訂正処理回路に尤度情報を供給する3段以上の尤度算出回路(21、22、23)を備え、3段以上の誤り訂正処理回路(31、32、33)は、訂正能力の高い順に配置され、少なくとも1つの誤り訂正処理回路(31、32、33)は、繰り返し復号処理を行わないように構成され、少なくとも1つの2段目以降の尤度算出回路(22、23)は、前段の誤り訂正処理回路の訂正処理により更新された第1の尤度情報を用いて、第1の尤度情報の出力ビット数よりも少ないビット数の第2の尤度情報を算出し、第2の尤度情報を後段に配置された誤り訂正処理回路に供給するように構成される。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8