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特許7179939エレベータ制御システムおよびエレベータの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】エレベータ制御システムおよびエレベータの運転方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20221121BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B66B1/14 F
B66B3/00 M
B66B1/14 K
B66B1/14 B
B66B3/00 L
B66B3/00 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021145241
(22)【出願日】2021-09-07
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩音
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特許第7059412(JP,B1)
【文献】特許第7087140(JP,B1)
【文献】特開2021-185105(JP,A)
【文献】特開2012-062163(JP,A)
【文献】特開2011-051715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/14
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉ドアを有する乗りかごと、
前記乗りかごを昇降運転させる運転部と、
乗場に設けられ、利用者に前記乗りかごへの乗車前に行き先階の登録を行わせる登録部と、
前記登録部による前記行き先階の登録に伴って、当該利用者の身体的な特徴から、当該利用者に病気感染の疑いがあるかどうかを乗車前に推定する推定部と、
前記推定部で病気感染の疑いがあると推定された疑似利用者が前記乗りかごに乗車したことを条件に、前記疑似利用者が降車するまでの間、前記運転部を制御して前記乗りかごの各階停止運転を行うとともに、各階停止時に前記乗りかごの前記開閉ドアおよび該停止階の乗場ドアを開動作させる制御部と
を備えることを特徴とするエレベータ制御システム。
【請求項2】
前記制御部によって制御され、前記各階停止運転中の前記開閉ドアの開動作時に各階停止運転中であることを案内する案内部を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【請求項3】
前記登録部は、前記行き先階を非接触で登録できる非接触スイッチを備えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【請求項4】
前記乗りかごは、かご内の空気を換気する換気部を備え、
前記制御部は、前記疑似利用者が降車するまでの間、前記換気部による強制換気を行うことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【請求項5】
前記推定部は、当該利用者の体温を検出する検温機能付きのディスプレイ装置による検出体温と、当該利用者の咳やクシャミを検知する検知部の検知出力とに基づいて、当該利用者に病気感染の疑いがあるかどうかを判定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【請求項6】
前記乗りかごは、かご荷重検知装置を備え、
前記制御部は、前記かご荷重検知装置の検知荷重に基づいて、前記乗りかご内に乗車する全利用者が乗車定員の1/3以下であると判断した場合に、通常運転から前記各階停止運転への切り替えを行わないことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【請求項7】
開閉ドアを有する乗りかごを運転部によって昇降運転させるエレベータの運転方法であって、
乗場に設けられた登録部から、利用者に前記乗りかごへの乗車前に行き先階の登録を行わせ、
前記登録部による前記行き先階の登録に伴って、検温機能付きのディスプレイ装置により当該利用者の体温の検出と検知部による当該利用者の咳やクシャミの検知とを行い、
前記検温機能付きのディスプレイ装置の検出体温と前記検知部の検知出力とに基づいて、当該利用者に病気感染の疑いがあるかどうかを乗車前に推定部により推定し、
前記推定部で病気感染の疑いがあると推定された疑似利用者が前記乗りかごに乗車したことを条件に、制御部は、前記疑似利用者が降車するまでの間、前記運転部を制御して前記乗りかごの各階停止運転を行うとともに、各階停止時に前記乗りかごの前記開閉ドアおよび該停止階の乗場ドアを開動作させることを特徴とするエレベータの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御システムおよびエレベータの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、不特定多数の乗客が利用する公共性の高い輸送手段であって、快適な乗り心地を確保する観点から、多くの対策が講じられている。
【0003】
例えば、エレベータは、その運転中に乗りかご内が完全に閉じられた密室の状態(密閉空間)となる。そのため、乗りかご内にインフルエンザなどの感染者、特に、発熱や咳を伴う病気発症者が乗っている場合、乗りかご内に乗り合わせた非発症者にも病気が感染する恐れがある。
【0004】
そこで、従来は、乗りかご内に乗り込んできた乗客から発症者を特定し、乗りかごから降りるように警告したり、発症者の乗車が認められた際に、空気清浄装置を制御して乗りかご内の空気清浄能力を高くしたりといった対策を取っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-236020号公報
【文献】特開2014-240313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したように、エレベータは公共性が高いため、発症者の利用を完全に排除することは困難である。そもそも、病院内のエレベータやビル内の診療所などに通院する発症者のエレベータの利用を禁止することはできない。そのため、不特定多数が乗車するエレベータの利用に際しては、どうしても発症者から非発症者への病気の感染を避けることができないという課題があった。
【0007】
本発明の実施形態は、病気発症の疑いがある疑似利用者と同乗した場合にも他の利用者が病気に感染するリスクを抑制でき、不特定多数が乗車するエレベータを利用する際の不安を解消することが可能なエレベータ制御システムおよびエレベータの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、開閉ドアを有する乗りかごと、前記乗りかごを昇降運転させる運転部と、乗場に設けられ、利用者に前記乗りかごへの乗車前に行き先階の登録を行わせる登録部と、前記登録部による前記行き先階の登録に伴って、当該利用者の身体的な特徴から、当該利用者に病気感染の疑いがあるかどうかを乗車前に推定する推定部と、前記推定部で病気感染の疑いがあると推定された疑似利用者が前記乗りかごに乗車したことを条件に、前記疑似利用者が降車するまでの間、前記運転部を制御して前記乗りかごの各階停止運転を行うとともに、各階停止時に前記乗りかごの前記開閉ドアを開動作させる制御部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の実施形態は、開閉ドアを有する乗りかごを運転部によって昇降運転させるエレベータの運転方法であって、乗場に設けられた登録部から、利用者に前記乗りかごへの乗車前に行き先階の登録を行わせ、前記登録部による前記行き先階の登録に伴って、検温機能付きのディスプレイ装置により当該利用者の体温の検出と検知部による当該利用者の咳やクシャミの検知とを行い、前記検温機能付きのディスプレイ装置の検出体温と前記検知部の検知出力とに基づいて、当該利用者に病気感染の疑いがあるかどうかを乗車前に推定部により推定し、前記推定部で病気感染の疑いがあると推定された疑似利用者が前記乗りかごに乗車したことを条件に、制御部は、前記疑似利用者が降車するまでの間、前記運転部を制御して前記乗りかごの各階停止運転を行うとともに、各階停止時に前記乗りかごの前記開閉ドアを開動作させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るエレベータ制御システムが適用されるエレベータの概略構成図。
図2】エレベータの乗りかごの内部を透過して示す斜視図。
図3】エレベータ乗場の構成例を示す正面図。
図4】エレベータ乗場で行き先階登録を行う登録装置の概略図。
図5】エレベータの制御装置の構成例を示すブロック図。
図6】エレベータの動作の流れを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(一実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータ制御システムが適用されるエレベータ1の構成例を概略的に示すものである。なお、以下では、地下1階、地上6階建てのビル(建屋)内に設置された1機のエレベータを例示して説明するが、複数機のエレベータが設置されてなる場合にも適用可能であり、少なくとも3階以上を移動するエレベータへの適用が好適である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るエレベータ1は、建屋内に設けられた昇降路3を備えており、この昇降路3は、上下方向へ延びている。
【0014】
建屋の各階のエレベータ乗場5には、昇降路3に通じる昇降口7が設けられており、各昇降口7には、開閉可能なように乗場ドア11が取り付けられている。
【0015】
昇降路3の上側には、機械室17が設けられており、機械室17内には、運転部としての巻上機19が配設されている。この巻上機19は、回転可能なトラクションシーブを有している。
【0016】
また、機械室17内には、巻上機19の駆動を制御する制御盤23が配設されており、この制御盤23は、後述する制御装置(図5参照)を備え、エレベータ1の運転モードを通常運転モードと各階停止運転モードとに切り替えることが可能な構成とされている。
【0017】
ここで、通常運転モードとは、エレベータ1の通常運転を行うためのモードのことをいう。各階停止運転モードとは、詳細については後述するが、病気感染の疑いがあると推定された利用者(以下、疑似利用者ともいう)が乗りかご27に乗車したことを条件に、疑似利用者が降車するまでの間、乗りかご27の各階停止運転を行うモードのことをいう。
【0018】
本実施形態においては、エレベータ1の運用として、通常運転モードから各階停止運転モードに切り替えられると、後述する乗りかご27の各階のエレベータ乗場5での強制停止と、かごドア31や乗場ドア11の開動作と、が行われる。また、かご内換気扇271による強制換気が行われるとともに、例えば、現在は各階停止運転中であり、乗りかご27内を換気中であることが乗客にアナウンスなどによって報知される。
【0019】
図1において、巻上機19には、メインロープ25が巻き掛けられている。そして、メインロープ25の一端には、乗りかご27が連結されており、この乗りかご27は、昇降路3内に立設したかご用ガイド(図示省略)に昇降可能に案内される構成になっている。また、メインロープ25の他端には、釣合重り29が連結されており、この釣合重り29は、昇降路3内に立設した重り用ガイド(図示省略)に昇降可能に案内される構成となっている。
【0020】
乗りかご27の前側(正面側)には、開閉ドアとしてのかごドア31が開閉可能なように設けられている。乗りかご27は、ボックス構造の昇降体であって、かごドア31の閉動作によって運転中は完全に閉じられた密室の状態(密閉空間)となる。
【0021】
昇降路3の最下部のピット37は、最下階(例えば、B1階)のエレベータ乗場5の床面よりも低くなっており、メンテナンスする際には、ピット37内に作業員が下りて作業することが可能となっている。
【0022】
図2は、乗りかご27の内部を透過して示すものである。
【0023】
図2に示すように、乗りかご27は、かご内操作パネル28と、この乗りかご27の停止階を示す行き先階表示器30と、かごドア31と、乗りかご27内の荷重を検出するかご荷重検知装置274と、かご内換気扇(換気部)271と、を備えている。また、乗りかご27は、案内部としてのかご内ディスプレイ272を備えている。かご内ディスプレイ272の一画には、例えば、スピーカ(案内部)29が配置されている。
【0024】
本実施形態のエレベータ1の場合、かご内操作パネル28は、主に、利用者が乗車前に登録した行き先階を変更する際に用いられる。かご内操作パネル28としては、非接触によるスイッチ操作が可能なセンサを備えることが望ましいが、行き先階の変更時のみの操作とすることで、かご内操作パネル28の操作に伴う病気感染の可能性を抑制可能となる。
【0025】
かご荷重検知装置274は、乗客数に応じて変化する、かご荷重を検知するために設けられている。なお、このかご荷重検知装置274によって、例えば、全利用者数が乗車定員の1/3に満たないと判断される場合には、運転効率の低下を防ぐため、通常運転モードでの運用が優先されるようにしても良い。
【0026】
かご内換気扇271は、乗りかご27内の空気を換気するために乗りかご27の後側に設けられ、通常運転モード時には平常モードにより換気し、各階停止運転モード時には強制換気モードによって平常モードよりも強力な強制換気を行うようになっている。
【0027】
かご内ディスプレイ272は、各種の案内などを、目視可能なメッセージとして表示することにより、スピーカ29は、各種の案内などを、音声によってアナウンスすることにより、それぞれ、利用者(特に、乗客)に報知するものである。
【0028】
図3は、各階のエレベータ乗場5の構成を例示するものである。
【0029】
図3に示すように、各階のエレベータ乗場5において、昇降口7が設けられる壁面15には乗場ドア11が開閉可能に設けられるとともに、行き先階登録装置(登録部)41とモニタ装置42とが配設されている。また、乗場ドア11の上方には、乗りかご27の到着を示す表示器12とスピーカ13とが設けられている。
【0030】
行き先階登録装置41は、利用者が乗車前に行き先階を登録するためのもので、例えば図4に示すように、複数の表示器41aと複数のセンサ41bとが1対1となるように対応付けられて設けられている。複数の表示器41aとしては、例えば、行き先階(B1階、1階、2階、3階、4階、5階,6階)を選択するためのものと、登録を決定するためのもの(決)と、登録をキャンセルするためのもの(C)とが用意されている。
【0031】
複数のセンサ41bは、いずれも非接触式のスイッチであって、利用者が手などをかざすことによって行き先階の登録が可能となっている。これにより、行き先階登録装置41により行き先階を登録するための操作に伴う病気感染の可能性を抑制することができる。
【0032】
なお、この行き先階登録装置41には、乗場呼びのための乗場ボタンと登録済の行き先階を表示する行き先階表示器とが設けられていない。このように、行き先階登録装置41に乗場ボタンと行き先階表示器とを設けないようにすることによって、乗車前に行き先階の登録を必ず行うように、利用者を誘導することが可能となる。
【0033】
即ち、本実施形態のエレベータ1の場合、各階のエレベータ乗場5に行き先階登録装置41が用意される。そして、その行き先階登録装置41には乗場ボタンと行き先階表示器とが設けられていないことから、利用者が目的の行き先階までエレベータ1を利用するためには、必ず行き先階登録装置41を操作しなければならない。
【0034】
ただし、乗場ドア11が開いている場合には、行き先階登録装置41を操作することなく、乗りかご27に乗車することは可能である。しかしながら、かご内操作パネル28からの行き先階の登録を行っていないため、必ずしも目的の行き先階までエレベータ1を利用できるとは限らない。つまり、行き先階登録装置41を操作した行き先階が同じである先客がいない場合、目的の行き先階でエレベータ1を降車することはできない可能性がある。
【0035】
このように、行き先階登録装置41を操作せずに乗りかご27に乗車した際には、目的の行き先階までエレベータ1を利用できない場合があるため、利用者は、乗車前に行き先階登録装置41から行き先階の登録を行う必要がある。
【0036】
これにより、たとえ建屋の入口などに設置された検温装置を利用しない利用者の場合であっても、エレベータ1の利用を制限できるようになる。
【0037】
モニタ装置42は、乗車前に行き先階登録装置41から行き先階の登録を行うように利用者を誘導(案内)するためのもので、例えば図4に示すように、サーマルカメラからなる体温測定器44を備えた検温機能付きのディスプレイ装置である。また、モニタ装置42の一画には、検知部としてのマイク45が設けられている。
【0038】
モニタ装置42は、そのモニタ画面上に、利用者を誘導するための目視可能なメッセージ(例えば、「行き先階を登録してください。」)を表示する。
【0039】
また、モニタ装置42は、ディスプレイ(ディスプレイ画面)43を有し、そこに利用者によって登録される行き先階を一時的に表示する。
【0040】
体温測定器44は、行き先階登録装置41から行き先階の登録を行わせる際に、非接触により利用者の体温を測定する。
【0041】
マイク45は、行き先階登録装置41から行き先階の登録を行う利用者の咳やクシャミを収音するようなっている。
【0042】
モニタ装置42には、サーマルカメラとは別に、利用者の顔色や体調(具合の悪さ)などを読み取るためのビデオカメラを備えることも可能であり、このビデオカメラによって疑似利用者が乗りかご27に乗車したか否かを追跡するようにしても良い。
【0043】
スピーカ13は、乗りかご27の当エレベータ乗場5への到着など、各種の案内を音声によってアナウンスするためのものである。なお、スピーカ13としては、例えば、行き先階登録装置41からの行き先階の登録時に、病気に感染している疑いがあると判定された疑似利用者に対して、エレベータ1の利用を差し控えるように警告するようにしても良い。このスピーカ13は、モニタ装置42の一画に設けることも可能である。
【0044】
図5は、本実施形態に係るエレベータ1の制御装置の構成例を示すものである。
【0045】
図5に示すように、制御装置は、エレベータ制御部(制御部)57を有して構成されている。エレベータ制御部57には、例えば、モニタ装置42の表示制御部53と体温検出部54と入力制御部55とともに、音声案内部58、かご内換気扇271、かご内ディスプレイ272、および、扉制御部273などが接続されている。また、エレベータ制御部57は、推定部としての判定部56を備えている。
【0046】
表示制御部53は、モニタ装置42やディスプレイ43の画面表示を制御するもので、エレベータ制御部57によって制御される。
【0047】
体温検出部54は、体温測定器44を制御するもので、エレベータ制御部57によって制御されて、体温測定器44により測定される利用者の体温が規定値(例えば、37.5℃)よりも高いか否かを検出する。そして、この体温検出部54では、疑似利用者を追跡することで、疑似利用者が乗りかご27に乗車したか否かを検出することが可能である。
【0048】
入力制御部55は、マイク45を制御するもので、エレベータ制御部57によって制御されて、マイク45により収音される利用者の咳やクシャミを検出する。
【0049】
判定部56は、体温検出部54による検出体温と入力制御部55による抽出の結果(検知出力)とに基づいて、当該利用者が咳、くしゃみ、発熱を伴う病気感染の疑いがある疑似利用者かどうかを判定するものである。この判定部56によって疑似利用者と判定された利用者が乗りかご27に乗車したことを条件に、エレベータ制御部57により通常運転モードが各階停止運転モードに切り替えられる。
【0050】
音声案内部58は、スピーカ29を制御するもので、エレベータ制御部57によって制御されて、各階停止運転モード時に各階停止運転中であることなどをスピーカ29より利用者に報知させる。
【0051】
かご内換気扇271は、エレベータ制御部57によって制御されて、各階停止運転モード時に乗りかご27内の空気を強制換気させる。
【0052】
かご内ディスプレイ272は、エレベータ制御部57によって制御されて、各階停止運転モード時に各階停止運転中であることなどを利用者に報知する。
【0053】
扉制御部273は、エレベータ制御部57によって制御されて、乗場ドア11やかごドア31の開閉動作を制御する。
【0054】
この他、図示していないが、巻上機19や各表示器などがエレベータ制御部57によって制御されるように構成されている。
【0055】
次に、上記したエレベータ1の動作について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0056】
図6に示すように、まず、エレベータ1の利用者は、乗車前に行き先階登録装置41から行き先階の登録を行うように案内される(ステップS01)。
【0057】
行き先階の登録が行われるまで待機し(ステップS02のNO)、登録が行われると(ステップS02のYES)、処理がステップS03に移行される。
【0058】
ステップS03では、制御装置の判定部56において、この利用者は、咳、くしゃみ、発熱を伴う病気感染の疑いがある疑似利用者かどうかが判定される。即ち、判定部56によって、体温検出部54より供給される、体温測定器44により測定される利用者の体温や、入力制御部55より提供される、マイク45により収音される利用者の咳やクシャミなどに基づいて、疑似利用者の特定(推定)が行われる。
【0059】
判定部56において、疑似利用者として推定されると(ステップS03の乗車拒否)、例えば、スピーカ13からエレベータ1の利用を差し控えるように警告される(ステップS04)。
【0060】
一方、判定部56において、疑似利用者でないと判定された利用者に対しては、エレベータ1の利用が許可される(ステップS03の乗車許可)。
【0061】
ここで、エレベータ1の利用に際しては、公共性が高いなどの理由から、疑似利用者として推定されたからといって、乗りかご27への乗車を完全に拒否することはできない。
【0062】
そこで、ステップS05において、例えば判定部56により、体温検出部54の検出出力から疑似利用者が乗りかご27に乗車したか否かがチェックされる。
【0063】
そして、疑似利用者が乗りかご27に乗車していないと判定される場合には(ステップS05のNO)、後の乗りかご27の運転が通常運転モードで行われる(ステップS08)。
【0064】
これに対し、疑似利用者が乗りかご27に乗車していると判定される場合には(ステップS05のYES)、後の乗りかご27の運転が各階停止運転モードで行われる(ステップS06)。
【0065】
即ち、ステップS06においては、例えばエレベータ制御部57によって、通常運転モードが各階停止運転モードに切り替えられる。この各階停止運転モードでは、乗りかご27の各階のエレベータ乗場5での強制停止と、かごドア31や乗場ドア11の開動作と、が行われる。また、かご内換気扇271による強制換気が行われるとともに、例えば、現在は各階停止運転中であり、乗りかご27内を換気中であることが、スピーカ29やかご内ディスプレイ272から乗客に報知される。
【0066】
各階停止運転モード(ステップS06)は、乗りかご27からの全疑似利用者の降車が確認されるまで繰り返される(ステップS07のNO)。
【0067】
そして、乗りかご27からの全疑似利用者の降車が確認されると(ステップS07のYES)、各階停止運転モードから通常運転モードに切り替えられる(ステップS08)。
【0068】
上記したように、本実施形態によれば、病気感染の疑いがある疑似利用者や発症者が乗りかご27より降車するまでの間、通常運転モードに代えて各階停止運転モードにより運転することによって、同乗した利用者が病気に感染するリスクを抑制できるようになる。
【0069】
即ち、エレベータ1の利用に際しては、乗りかご27への乗車前に、利用者に行き先階を登録させることに伴って、当該利用者の、咳、くしゃみ、発熱を伴う感染症などの病気感染の疑いを推定するようにしている。これにより、感染の疑いがある疑似利用者や発症者のエレベータ1の利用を事前に防ぐことができる。しかも、疑似利用者や発症者が乗りかご27に乗車した際には、疑似利用者や発症者の乗車中、乗りかご27を各階のエレベータ乗場5に強制的に停止させるとともに、かごドア31や乗場ドア11の開動作とかご内換気扇271による強制換気とを行うようにしている。したがって、疑似利用者や発症者と同乗した場合にも非発症者である他の利用者が病気に感染するリスクをより軽減し得るなど、不特定多数が乗車するエレベータを利用する際の不安を容易に解消することが可能となるものである。
【0070】
なお、咳、くしゃみ、発熱のほか、顔色が悪い、呼吸が苦しそう、極端に疲れているように見えるなど、利用者の挙動や身体的な特徴に基づいて、病気感染の疑いがある疑似利用者かどうかを推定するようにしても良い。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…エレベータ、5…エレベータ乗場、11…乗場ドア、19…巻上機(運転部)、27…乗りかご、29…スピーカ(案内部)、31…かごドア(開閉ドア)、41…行き先登録装置(登録部)、41b…センサ(非接触スイッチ)、42…モニタ装置(検温機能付きのディスプレイ装置)、45…マイク(検知部)、56…判定部(推定部)、57…エレベータ制御部、271…かご内換気扇(換気部)、272…かご内ディスプレイ(案内部)、274…かご荷重検知装置。
【要約】
【課題】病気感染の疑似利用者と同乗した場合にも非感染者が病気に感染するリスクを抑制でき、不特定多数が乗車するエレベータを利用する際の不安を解消できるようにする。
【解決手段】エレベータ1は、かごドア31を有する乗りかご27と、乗りかご27を昇降運転させる巻上機19と、エレベータ乗場5に設けられ、利用者に乗りかご27への乗車前に行き先階の登録を行わせる行き先階登録装置41と、行き先階の登録に伴って、当該利用者に病気感染の疑いがあるかどうかを推定する判定部56と、病気感染の疑いがあると推定された疑似利用者が乗りかご27に乗車したことを条件に、疑似利用者が降車するまでの間は各階停止運転モードに切り替えて、各階停止時に乗りかご27のかごドア31を開動作させるエレベータ制御部57を備える。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6