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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】眼内レンズ挿入器
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021179796
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2018525208の分割
【原出願日】2017-06-28
(65)【公開番号】P2022009961
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2016127294
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 義崇
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シャオシャオ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-307168(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19544119(DE,A1)
【文献】特開2016-137122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズを眼内に挿入するための眼内レンズ挿入器であって、
ノズル部を有する中空体と、
前記ノズル部の外周面から外側に張り出した状態で配置される張り出し面を有する付属部材と、
を備え、
前記付属部材は、前記中空体に対して移動可能に構成され、
前記付属部材は、前記中空体に取り付けられた状態のまま、前記中空体の軸方向に移動することにより、前記ノズル部の突き出し量を段階的に調整可能に構成され、
前記付属部材は、前記ノズル部を眼球の切開創に挿入する際の挿入量を前記張り出し面によって制限可能に構成され、
前記付属部材は、前記中空体に対して着脱可能である
眼内レンズ挿入器。
【請求項2】
前記付属部材には、前記中空体に係着される係着部が形成され、
前記中空体には、前記係着部に対応して被係着部が形成されている
請求項1に記載の眼内レンズ挿入器。
【請求項3】
前記係着部は、前記被係着部との係合により、前記中空体に対して前記付属部材を仮固定するロック機構を有する
請求項2に記載の眼内レンズ挿入器。
【請求項4】
前記係着部は、複数の係合孔が形成された舌片を含み、
前記被係着部は、前記複数の係合孔のいずれかに係合される係止爪を含む
請求項2に記載の眼内レンズ挿入器。
【請求項5】
前記付属部材に覗き窓が設けられている
請求項1~4のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入器。
【請求項6】
前記張り出し面が軟性樹脂によって形成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入器。
【請求項7】
前記ノズル部には、前記中空体の軸方向に沿って切り込み部が形成され、
前記付属部材には、前記ノズル部の外周面で、かつ、前記切り込み部が形成
された部分に接触することにより、前記ノズル部の外周径を縮小するテーパー部が形成されている
請求項1~6のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入器。
【請求項8】
前記中空体は、レンズ設置部を有し、
前記レンズ設置部に眼内レンズが設置されている
請求項1~7のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズを眼球の内部(眼内)に挿入するときに用いられる眼内レンズ挿入器に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障手術においては、超音波乳化術による混濁した水晶体の除去、および水晶体除去後の眼内への埋植が広く行われている。そして現在では、シリコーンエストラマー等の軟質な材料からなる軟性の眼内レンズを、眼内レンズ挿入器を用いて眼内に挿入することが行われている。
【0003】
眼内レンズ挿入器に関して、たとえば特許文献1には、挿入器本体に挿入筒を設けるとともに、挿入筒にノズル部を設けた構成を採用している。実際の手術時では、挿入筒のノズル部を眼球の切開創に差し込み、この状態で眼内レンズ挿入器のロッドにより眼内レンズをノズル部から放出する仕組みになっている。
【0004】
一方、特許文献2には、眼内レンズの挿入に用いるカートリッジの構成として、ノズル部の外面に周縁突起を形成したものが開示されている。このカートリッジでは、眼球の切開創にノズル部を挿入するときに周縁突起が眼球の表面に接触し、これによってノズル部が切開創に完全に挿入されることを防止する仕組みになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-177845号公報
【文献】特許第4685897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1,2に記載の技術には、それぞれに異なる長所がある。
すなわち、特許文献1に記載の技術では、ノズル部の外面に周縁突起が形成されていないため、眼球の切開創にノズル部を深く挿入することができる。そして、眼球の切開創にノズル部を深く挿入する場合は、浅く挿入する場合に比べて、より確実に眼内レンズを水晶体嚢内に導くことができる。したがって、眼内レンズ挿入器で眼内に挿入した眼内レンズを水晶体嚢に収容するためにセッシ等で操作する手間を軽減することが可能となる。
【0007】
特許文献2に記載の技術では、ノズル部の外面に周縁突起が形成されているため、眼球の切開創にノズル部を浅く挿入することができる。そして、眼球の切開創にノズルを浅く挿入する場合は、深く挿入する場合に比べて、より小さな切開創を通して眼内レンズを挿入することができる。したがって、切開創のサイズを小さくして術後の閉鎖性を良好にする、Wound-assisted法を適用することが可能となる。Wound-assisted法は、切開創のトンネル部分を眼内レンズの挿入経路に使用することにより、眼内レンズの通り抜けに必要な切開創のサイズを縮小可能とする手術法である。
【0008】
このように、上記特許文献1,2に記載の技術には、それぞれに異なる長所がある。これに対して、白内障手術を行う際に眼内レンズ挿入器を使用する使用者(主に眼科医などの術者)のなかには、眼球の切開創に対してノズル部を深く挿入する手技を好む使用者と浅く挿入する手技を好む使用者がいる。したがって、それぞれの使用者の手技の好みに対応するためには、周縁突起等が形成されたノズル部を備えるものと、周縁突起等が形成さ
れていないノズル部を備えるものの両方を取り揃えておく必要がある。
【0009】
本発明の主な目的は、眼内レンズ挿入術の手技の違いに柔軟に対応することができる眼内レンズ挿入器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1の態様)
眼内レンズを眼内に挿入するための眼内レンズ挿入器であって、
ノズル部を有する中空体と、
前記ノズル部の外周面から外側に張り出した状態で配置される張り出し面を有する付属部材と、
を備え、
前記付属部材は、前記中空体に対して移動可能に構成され、
前記付属部材は、前記中空体に取り付けられた状態のまま、前記中空体の軸方向に移動することにより、前記ノズル部の突き出し量を段階的に調整可能に構成され、
前記付属部材は、前記ノズル部を眼球の切開創に挿入する際の挿入量を前記張り出し面によって制限可能に構成され、
前記付属部材は、前記中空体に対して着脱可能である
眼内レンズ挿入器である。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記付属部材には、前記中空体に係着される係着部が形成され、
前記中空体には、前記係着部に対応して被係着部が形成されている
上記第1の態様に記載の眼内レンズ挿入器である。
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記係着部は、前記被係着部との係合により、前記中空体に対して前記付属部材を仮固定するロック機構を有する
上記第2の態様に記載の眼内レンズ挿入器である。
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記係着部は、複数の係合孔が形成された舌片を含み、
前記被係着部は、前記複数の係合孔のいずれかに係合される係止爪を含む
上記第2の態様に記載の眼内レンズ挿入器である。
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
前記付属部材に覗き窓が設けられている
上記第1~第4の態様のいずれか1つに記載の眼内レンズ挿入器である。
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
前記張り出し面が軟性樹脂によって形成されている
上記第1~第5の態様のいずれか1つに記載の眼内レンズ挿入器である。
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、
前記ノズル部には、前記中空体の軸方向に沿って切り込み部が形成され、
前記付属部材には、前記ノズル部の外周面で、かつ、前記切り込み部が形成
された部分に接触することにより、前記ノズル部の外周径を縮小するテーパー部が形成されている
上記第1~第6の態様のいずれか1つに記載の眼内レンズ挿入器である。
(第8の態様)
本発明の第8の態様は、
前記中空体は、レンズ設置部を有し、
前記レンズ設置部に眼内レンズが設置されている
上記第1~第7の態様のいずれか1つに記載の眼内レンズ挿入器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、眼内レンズ挿入術の手技の違いに柔軟に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る眼内レンズ挿入器の構成例を示す斜視図である。
図2】(A)は本発明の第1実施形態に係る眼内レンズ挿入器の構成例を示す平面図、(B)は側面図、(C)は(A)におけるE1-E1断面図である。
図3】挿入器本体の構成を示す斜視図である。
図4】(A)は挿入器本体の構成を示す側面図、(B)は(A)におけるF1-F1断面図、(C)は(B)におけるF2部拡大図である。
図5】(A)は回転規制部を開いた状態の挿入器本体を示す斜視図であり、(B)は(A)におけるG矢視図である。
図6】挿入器本体の先端部分の構造および配置を示す斜視図である。
図7】挿入筒の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。
図8図7(B)におけるH-H断面図である。
図9】付属部材の構成を示す斜視図である。
図10】付属部材の構成を示す三面図であって、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は後面図である。
図11】付属部材を挿入筒に取り付けた状態を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。
図12】付属部材を用いた場合の好ましい形態例を示すもので、(A)は軸方向から見た断面図、(B)は軸方向と直交する方向から見た断面図である。
図13】(A)~(C)はそれぞれ付属部材の取り付けおよび取り外しの手順を説明する図である。
図14図2におけるE5部拡大図である。
図15図2におけるE2-E2断面図である。
図16】(A)は図2におけるE3-E3断面図であり、(B)は図2におけるE4-E4断面図である。
図17】付属部材の機能を説明する図である。
図18】ノズル部材の突き出し量を変更する例を示す図である。
図19】本発明の第2実施形態に係る眼内レンズ挿入器において挿入筒に付属部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
図20】本発明の第2実施形態に係る挿入筒の構成を示す斜視図である。
図21】本発明の第2実施形態に係る付属部材の構成を示す斜視図である。
図22】本発明の第2実施形態に係る付属部材の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は底面図、(D)は後面図である。
図23】付属部材を挿入筒に取り付けた状態を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。
図24】(A)は図23におけるJ2-J2断面図、(B)は図23におけるJ1-J1断面図、(C)は(B)におけるK部拡大図である。
図25】(A)は後方の係合孔に係止孔を係合させた状態を示す側面図であり、(B)は中央の係合孔に係止孔を係合させた状態を示す側面図であり、(C)は前方の係合孔に係止孔を係合させた状態を示す側面図である。
図26】本発明の第3実施形態に係る眼内レンズ挿入器の構成を示す斜視図である。
図27】(A)は本実施形態の第3実施形態に係る眼内レンズ挿入器の構成を示す平面図、(B)は側面図、(C)は(A)におけるM-M断面図である。
図28】本発明の第3実施形態に係る挿入器本体の構成を示す斜視図であり、(A)は挿入器本体に設けられる回転規制部を開いた状態、(B)は回転規制部を閉じた状態を示している。
図29】本発明の第3実施形態に係る挿入筒の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。
図30】(A)は本発明の第3実施形態に係る挿入筒を斜め上方から見た斜視図であり、(B)は斜め下方から見た斜視図である。
図31】本発明の第3実施形態に係る付属部材を斜め上方から見た斜視図であり、(A)は挿入筒に取り付ける前の付属部材、(B)は挿入筒に取り付けた後の付属部材を示している。
図32】本発明の第3実施形態に係る付属部材の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。
図33図32(B)におけるN矢視図である。
図34】本発明の第3実施形態に係る付属部材の縦断面図であって、係着部を閉じた状態を示している。
図35】本発明の第3実施形態に係る付属部材の取付手順を示す斜視図(その1)である。
図36】本発明の第3実施形態に係る付属部材の取付手順を示す斜視図(その2)である。
図37】本発明の第3実施形態において挿入筒に付属部材を取り付けた状態を示す縦断面図である。
図38】本発明の第3実施形態において挿入筒に取り付けた付属部材を軸方向に移動させた状態を示す縦断面図である。
図39】(A)~(D)は本発明の第3実施形態におけるプランジャと回転規制部の配置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
<眼内レンズ挿入器の構成>
図1は本発明の第1実施形態に係る眼内レンズ挿入器の構成例を示す斜視図である。また、図2(A)は本発明の第1実施形態に係る眼内レンズ挿入器の構成例を示す平面図、(B)は側面図、(C)は(A)におけるE1-E1断面図である。
【0015】
眼内レンズ挿入器1は、眼内レンズを眼内に挿入する際に使用されるものである。本実施形態においては、眼内レンズの一例として、シリコーンエラストマーや軟性アクリルなどの軟性の材料からなるワンピースタイプの眼内レンズ4(図6を参照)であって、光学的な機能を果たす円形の光学部4aと、この光学部4aの外周部の2箇所から湾曲して外向きに延びる2つの支持部4bとを有する眼内レンズ4を取り扱うものとする。
【0016】
また、本実施形態においては、眼内レンズ挿入器1の各部の相対的な位置関係や動作の方向などを説明するにあたって、X軸方向の一方をX1方向、同他方をX2方向、Y軸方向の一方をY1方向、同他方をY2方向、Z軸方向の一方をZ1方向、同他方をZ2方向、X1方向を先端側(前方)、X2方向を後端側(後方)、Y1方向を左側(左方)、Y2方向を右側(右方)、Z1方向を上側(上方)、Z2方向を下側(下方)と定義する。このうち、X軸方向(X1方向およびX2方向)は、眼内レンズ挿入器1の長さ方向に相当し、Y軸方向(Y1方向およびY2方向)は、眼内レンズ挿入器1の幅方向に相当し、Z軸方向(Z1方向およびZ2方向)は、眼内レンズ挿入器1の高さ方向に相当する。
【0017】
眼内レンズ挿入器1は、挿入器本体5と、スライダ6と、挿入筒7と、回転部材8と、プランジャ9と、ロッド10(図2(C)参照)、付属部材16と、を備えた構成となっている。これらの構成要素は、好ましくは、それぞれ樹脂の成形品によって構成されるものである。挿入器本体5および挿入筒7は、それぞれ中空構造をなし、互いに連結されることによって中空体を構成するものである。スライダ6は、挿入器本体5に装着されている。挿入筒7は、挿入器本体5の先端部に連結されている。回転部材8は、挿入器本体5の後端部に回転自在に連結されている。プランジャ9は、挿入器本体5と同軸に配置されている。プランジャ9の一部は回転部材8を介して挿入器本体5の内部に配置され、プランジャ9の他部は回転部材8から後方に突出する状態で配置されている。ロッド10は、挿入器本体5および挿入筒7からなる中空体の内部に配置されている。付属部材16は、所定の付加機能を提供すべく中空体に付属して設けられる部材である。
【0018】
(挿入器本体)
図3は挿入器本体の構成を示す斜視図である。また、図4(A)は挿入器本体の構成を示す側面図、(B)は(A)におけるF1-F1断面図、(C)は(B)におけるF2部拡大図である。
【0019】
挿入器本体5は、全体に円筒状に形成されている。挿入器本体5の先端部にはレンズ設置部11が設けられている。眼内レンズ4はこのレンズ設置部11に設置される。レンズ設置部11は、挿入器本体5の下側の外周壁から前方に突き出すように形成されている。
【0020】
挿入器本体5の先端側の外周部には、挿入筒連結部5aが形成されている。挿入器本体5の左右両側には、それぞれスリット12が形成されている。スリット12は挿入器本体5の先端側に形成されている。スリット12は、挿入器本体5にスライダ6を装着する場合に、このスライダ6を挿入器本体5の軸方向(中心軸方向)に移動可能に支持するものである。
【0021】
挿入器本体5の後端は円形に開口し、この開口を通して挿入器本体5の内部にプランジャ9とロッド10を挿入可能になっている。挿入器本体5の後端部とその近傍には、回転規制部13と、フランジ部14と、回転支持部15とが形成されている。回転規制部13は、挿入器本体5に挿入されるプランジャ9の回転を規制するものである。
【0022】
上記図4(A)~(C)は回転規制部を閉じた状態の挿入器本体を示している。これに対して、図5(A)は回転規制部を開いた状態の挿入器本体を示す斜視図であり、(B)は(A)におけるG矢視図である。
回転規制部13は、フランジ部14よりもやや前方に形成されている。回転規制部13は、挿入器本体5の外壁の一部を構成するものであって、該外壁に形成された開口を開閉し得るように枢支部13aを中心に回転可能に設けられている。また、回転規制部13には、一対の摺動ガイド13bが形成されており、これらの摺動ガイド13bの間に凹状のガイド溝13cが形成されている。一対の摺動ガイド13bは、回転規制部13を閉じた状態としたときに挿入器本体5の筒内に配置され、回転規制部13を開いた状態としたときに挿入器本体5の筒外に配置される。回転規制部13の閉じ状態は、たとえば図示しない凹凸の嵌合により保持される。また、該凹凸の嵌合による保持力に抗して枢支部13aを中心に回転規制部13を回転させると、図5に示すように回転規制部13が開いた状態となる。各々の摺動ガイド13bの先端面は抜け止め部13d(図4(C)参照)となっている。抜け止め部13dは、プランジャ9が挿入器本体5から抜け出ることを防止するものである。
【0023】
フランジ部14は、眼内レンズ挿入器1をプッシュ方式で操作する場合に、使用者の手
の指(通常は人差し指と中指)を引っ掛けるための部分となる。回転支持部15は、フランジ部14よりもやや後方に設けられている。回転支持部15は、リング状に突出した段付き構造のリング形に形成されている。
【0024】
レンズ設置部11は、図6に示すように、底面部11aと、レンズ受け部11bと、レンズガイド部11cとを備えている。レンズ受け部11bは、眼内レンズ4を下方から受けて支持するものである。眼内レンズ4は、一方の支持部4bを前方、他方の支持部4bを後方に配置した状態でレンズ設置部11に設置される。眼内レンズ挿入器1は、予め眼内レンズ4が挿入器本体5のレンズ設置部11に設置されるプリロードタイプとなっている。このため、眼内レンズ4は、眼内レンズ挿入器1の構成要素の1つとなる。ただし、本発明を実施するにあたっては、必ずしもプリロードタイプである必要はない。
【0025】
底面部11aの幅方向の中央部は、少し凹んで形成されている。レンズ受け部11bは、レンズ設置部11の左右両側に形成されている。レンズ受け部11bは、底面部11aよりも一段高く形成されている。これは眼内レンズ4をレンズ受け部11bに載せて支持したときに、眼内レンズ4の光学部4aを底面部11aに接触させずに、底面部11aから浮いた状態に支持するためである。レンズガイド部11cは、レンズ受け部11bと同様にレンズ設置部11の左右両側に形成されている。レンズガイド部11cは、レンズ受け部11bに支持された眼内レンズ4の光学部4aを左右両側から挟むようにガイドするものである。レンズガイド部11cは、レンズ受け部11bから垂直に起立した状態で形成されている。左右のレンズガイド部11cの上端部には、挿入器本体5の軸方向に隣接して傾斜面11dと規制部11eが形成されている。傾斜面11dは、レンズ設置部11に眼内レンズ4を受け入れやすいように外開き状に傾斜して形成されている。傾斜面11dは、挿入器本体5の軸方向において規制部11eよりもレンズ設置部11の先端側に形成されている。規制部11eは、レンズ設置部11の幅方向の中心側に迫り出す状態で形成されている。規制部11eは、レンズ受け部11bに支持された眼内レンズ4の上下方向の可動範囲を制限するものである。
【0026】
(スライダ)
スライダ6は、図1図2および図6に示すように、レンズ押さえ部6aと、一対の翼部6bと、を備えた構成となっている。レンズ押さえ部6aは、スライダ6の先端部に配置され、一対の翼部6bは、スライダ6の左右に対をなして配置されている。レンズ押さえ部6aは、スライダ6を前方に移動させたときに、上記図6に示すように、レンズ設置部11に設置されている眼内レンズ4の光学部4aの上方に進出して配置される。
【0027】
一対の翼部6bは、挿入器本体5の外壁部分よりも外側に配置されている。一対の翼部6bは、眼内レンズ挿入器1を使用するにあたって、スライダ6を挿入器本体5の軸方向に移動させる際に、使用者の指(通常は人差し指と親指)が当てられる部分となる。使用者とは、手術を行なう眼科医などの術者や、術者を補助する看護師などをいう。各々の翼部6bの外側の面には、滑り止めのための凹凸や、スライダ6の移動方向を示すマーク(本形態例では三角形の矢印)が形成されている。また、各々の翼部6bの外側の面は、使用者の指が引っかかりやすくなるように後端側から先端側に向かって湾曲し、この湾曲部分に滑り止めのための凹凸が形成されている。
【0028】
(挿入筒)
図7は挿入筒の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。また、図8図7(B)におけるH-H断面図である。
挿入筒7は、レンズ設置部11に設置された眼内レンズ4を眼内に挿入する際に、眼内レンズ4を小さく折り畳んで眼内に導くためのものである。挿入筒7は、挿入筒7の内部を移動する眼内レンズ4の様子を外部から視認できるように、透明または半透明な材料で
形成されている。
【0029】
挿入筒7は、中空の挿入筒本体7aと、細い管状のノズル部7bとを有している。挿入筒7は、挿入器本体5の先端部に装着されるものである。その際、挿入器本体5のレンズ設置部11は、そこに設置された眼内レンズ4と一緒に、挿入筒7の挿入筒本体7a内に収容して配置される。挿入筒本体7aの上面には注入孔7cが形成されている。注入孔7cは、粘弾性物質(たとえば、ヒアルロン酸ナトリウムなど)を注入するためのものである。注入孔7cから注入される粘弾性物質は、レンズ設置部11に設置される眼内レンズ4に供給される。
【0030】
一方、挿入筒本体7aの後端部は開口しており、この開口部の周囲に引っ掛け部7dとくさび部7eが形成されている。引っ掛け部7dは上下に対をなして配置され、くさび部7eは左右に対をなして配置されている。引っ掛け部7dは、挿入器本体5の先端部に挿入筒7を装着するときに、挿入器本体5の挿入筒連結部5aに引っ掛けられる部分となる。くさび部7eは、挿入器本体5に挿入筒7を装着する場合に、挿入器本体5のスリット12の入口部分に差し込まれる部分となる。
【0031】
挿入筒本体7aは、挿入筒7の軸方向で第1の部分7fと第2の部分7gに分けられる。第1の部分7fは、挿入器本体5のレンズ設置部11を収容可能な内部空間を有するもので、第2の部分7gよりも幅広に形成されている。第2の部分7gは、第1の部分7fよりも前方に位置している。挿入器本体7aの内部空間は、ロッド10で眼内レンズ4を押し出したときに、眼内レンズ4を小さく折り畳むために、第1の部分7fから第2の部分7gにかけて徐々に狭くなっている。
【0032】
挿入筒本体7aの第2の部分7gには、第1の突起7hと、第2の突起7iと、第3の突起7jとが形成されている。これら3つの突起7h,7i,7jは、挿入筒7に付属部材16を係着させるために、後述する係着部16bに対応して形成されたものであって、被係着部を構成する。第1の突起7hは、第2の部分7gの一方(左側)の側面から突出する状態で形成されている。第2の突起7iは、第1の突起7hの後方に隣接する状態で形成されている。第2の突起7iは、第1の突起7hよりも小さい突出量で、第2の突起7iの一方(左側)の側面から突出している。第3の突起7jは、第2の部分7gの下面から下方に突出する状態で形成されている。第3の突起7jは、第1の突起7hよりも後方に位置をずらして形成されている。
【0033】
ノズル部7bは、眼内レンズ挿入器1を用いて眼内レンズ4を眼内に挿入する際に、眼球の切開創に挿入される部分となる。ノズル部7bは、挿入筒7の先端部に形成されている。ノズル部7bは、挿入筒本体7aの第2の部分7gの先端から前方に突出する状態で形成されている。ノズル部7bは、挿入筒7の軸方向から見て略円形に形成されている。ノズル部7bの外周径は、ノズル部7bの全長Lnにわたってほぼ一様な寸法になっている。ノズル部7bの先端部は、上から下に向かって斜めの切り口で開口しており、この開口を通して眼内レンズ4が外部に放出されるようになっている。ノズル部7bの下側の開口縁には切り込み部7kが形成されている。切り込み部7kは、挿入筒7の軸方向に沿って形成されている。切り込み部7kは、好ましくは図例のようにV字形に形成するとよい。
【0034】
(付属部材)
図9は付属部材の構成を示す斜視図である。また、図10は付属部材の構成を示す三面図であって、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は後面図である。
付属部材16は、上述した付加機能の一例として、ノズル部7bを眼球の切開創に挿入する際に、ノズル部7bの挿入量を制限する機能(以下、「ノズル挿入量制限機能」とも
いう。)を提供する部材である。ノズル挿入量制限機能は、付属部材16が有するスリーブ部16aの先端面16dを利用して実現(詳細は後述)される。
【0035】
付属部材16は、挿入筒7とは別個の部材であって、挿入筒7に対して移動可能に構成されている。挿入筒7に対する付属部材16の移動の方向や形態は特に制限はない。たとえば、移動の方向に関しては、挿入筒7の軸方向への移動、挿入筒7の軸方向と交差(直交を含む)する方向への移動、挿入筒7の軸回り方向への移動、挿入筒7の軸方向と交差(直交を含む)する軸回り方向への移動などが考えられ、移動の形態に関しては、直線移動、回転移動、捻り移動、開閉(揺動)移動、伸縮移動、などが考えられる。本実施形態では、挿入筒7に対する付属部材16の移動により、挿入筒7に対して付属部材16が着脱可能に構成されている。ここで記述する「着脱可能」とは、「挿入筒7に付属部材16を取り付けたり、挿入筒7から付属部材16を取り外したりすることが可能」という意味である。本実施形態の眼内レンズ挿入器1において、付属部材16は、挿入筒7に取り付けた状態で提供される場合と、挿入筒7から取り外した状態で提供される場合があるが、いずれの場合も付属部材16は眼内レンズ挿入器1を構成する要素の1つとなる。また、付属部材16が提供するノズル挿入量制限機能を利用する場合は、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態とし、その機能を利用しない場合は、挿入筒7から付属部材16を取り外した状態とするが、後者の場合、すなわち眼内レンズ挿入術で付属部材16を使用しない場合でも付属部材16は眼内レンズ挿入器1を構成する要素の1つであることにかわりはない。
【0036】
付属部材16は、スリーブ部16aと、係着部16bと、を備えている。スリーブ部16aには、挿入筒7のノズル部7bを嵌め入れ可能な貫通孔16cが形成されている。貫通孔16cは、スリーブ部16aを軸方向に貫通する状態で形成されている。スリーブ部16aの先端面16dは、スリーブ部16aの中心軸に対して斜めに傾斜した状態で形成されている。スリーブ部16aの先端面16dは、付属部材16を挿入筒7に取り付けたときに、ノズル部7bの外周面から外側(径が大きくなる方向)に張り出した状態で配置される。このことから、スリーブ部16aの先端面16dは「張り出し面」に相当する部分となる。
【0037】
ただし、張り出し面の形態は、スリーブ部16aの先端面16dのように円周方向に連続した環状の平面に限らず、ノズル挿入量制限機能を発揮する形態であれば、どのような形態で形成されていてもよい。たとえば、張り出し面は、円周方向に少なくとも1箇所、好ましくは180度ピッチで2箇所、あるいは3箇所以上に分けて配置することにより、円周方向に不連続に配置されていてもよい。また、張り出し面は、曲面であってもよい。
【0038】
係着部16bは、付属部材16を挿入筒7に取り付ける場合に、挿入筒7に係着される部分となる。係着部16bは、挿入筒7に対して付属部材16を着脱可能とすべく、挿入筒7に係着可能でかつ該係着状態を解除可能に構成されている。係着部16bは、挿入筒7の挿入筒本体7a(第2の部分7g)の外周形状に対応する略台形円錐形の外壁を部分的に切り欠いたような構造になっている。係着部16bには、フック部16eと、ストッパー部16fと、覗き窓16gとが形成されている。このうち、フック部16eおよびストッパー部16fは、挿入筒7に付属部材16を位置決めして仮固定するためのロック機構を構成する。フック部16eは、挿入筒7の第1の突起7hに引っ掛けられる部分となる。フック部16eの内周側には半円形に窪んだ窪み部16hが形成されている。窪み部16hは、挿入筒7の第2の突起7iに対して挿入筒7の軸回り方向から嵌合離脱可能に構成されている。「軸回り方向」とは、ある部材の中心軸を中心に回転する方向を意味する。ストッパー部16fは、挿入筒7の第1の突起7hに対して挿入筒7の軸回り方向から突き当て可能で、かつ、挿入筒7の第3の突起7jに対して挿入筒7の軸方向から突き当て可能に構成されている。覗き窓16gは、係着部16bの上部を平面視略V字形に切
り欠いた状態で形成されている。覗き窓16gは、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態でも、挿入筒7の内部を移動する眼内レンズ4の状態を外部から視認できるようにするために形成されたものである。付属部材16の材料は、たとえば、金属、セラミック、樹脂など、特に制限はないが、挿入筒7の内部を移動する眼内レンズの様子を外部から視認できるように透明または半透明な材料が好ましい。また、付属部材16の張り出し面は、眼内レンズを眼内に挿入する際に角膜に直接接触し、これによって角膜に荷重が加わるため、その荷重を軽減すべく、たとえばシリコーンやウレタンなどの軟性樹脂で形成されていることが好ましい。
【0039】
図11は付属部材を挿入筒に取り付けた状態を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。
図示のように付属部材16を挿入筒7に取り付けた状態では、スリーブ部16aの貫通孔16cにノズル部7bが嵌め入れられる。このとき、スリーブ部16aの先端面16dは、ノズル部7bの外周面から外側に張り出した状態で配置されるとともに、挿入筒7の軸方向に対してノズル部7bの切り口と同じ方向に傾斜した状態で配置される。
【0040】
その場合、スリーブ部16aの貫通孔16cの内径は、そこに嵌め入れられるノズル部7bの形状を変形させないよう、スリーブ部16aの軸方向の全長にわたってノズル部7bの外径と同じか、それよりも若干大きく設定してもよい。また、他の好ましい形態例として、図12(A),(B)に示すように、スリーブ部16aの貫通孔16cの一部にテーパー部16iを形成してもよい。テーパー部16iは、スリーブ部16aの先端側において、貫通孔16cの径がスリーブ部16aの先端に向かって徐々に小さくなるように形成されている。テーパー部16iにおける貫通孔16cの最小径は、ノズル部7bの外周径よりも小さく設定されている。これにより、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態では、テーパー部16iが、ノズル部7bの外周面で、かつ、切り込み部7kが形成された部分に接触する。このため、スリーブ部16aの先端側において、スリーブ部16aの外周径は、テーパー部16iとの接触によって縮小する。
【0041】
一方、係着部16bのフック部16eは第1の突起7hに引っ掛けられる。このとき、窪み部16hは第2の突起7iに嵌合した状態となる(図12(A)参照)。また、係着部16bのストッパー部16fは、挿入筒7の第3の突起7jに近接または当接した状態となる。その際、挿入筒7に対する付属部材16の位置決めは次のようになされる。すなわち、挿入筒7の軸回り方向においては、窪み部16hが挿入筒7の第2の突起7iに嵌合し、かつ、フック部16eが挿入筒7の第1の突起7hに引っ掛けられることにより、付属部材16の位置が決まる。また、挿入筒7の軸方向においては、ストッパー部16fが第3の突起7jに突き当たることにより、付属部材16の位置が決まる。
【0042】
ここで、挿入筒7から付属部材16を取り外す場合は、付属部材16を挿入筒7の軸回り方向に回転移動させた後、付属部材16を挿入筒7の軸方向に移動させることにより、挿入筒7に対する付属部材16の係着状態を解除する。具体的には、まず図13(A)に示すように、付属部材16を矢印の方向に回すことにより、図13(B)に示すように、係着部16bのストッパー部16fを挿入筒本体7aの第1の突起7hに接触または近接させる。これにより、係着部16bのフック部16eが挿入筒7の第1の突起7hから外れるとともに、フック部16e内側の窪み部16h(図10図12参照)が第2の突起7iから離脱する。次に、図13(C)に示すように、挿入筒7の軸方向に沿って付属部材16を矢印方向に引き抜く。これにより、挿入筒7から付属部材16を取り外すことができる。
【0043】
一方、挿入筒7に付属部材16を取り付ける場合は、上記とは逆の手順、すなわち付属部材16を挿入筒7の軸方向に移動させた後、付属部材16を挿入筒7の軸回り方向に回
転移動させることにより、挿入筒7に対して付属部材16を係着させる。具体的には、図13(C)において付属部材16を矢印とは反対方向から挿入筒7に嵌め込むことにより、図13(B)に示すように、係着部16bのストッパー部16fを挿入筒7の第3の突起7jに接触または近接させる。次に、付属部材16を取り外し時とは反対方向に回すことにより、係着部16bのフック部16eを挿入筒7の第1の突起7hに引っ掛けるとともに、窪み部16hを第2の突起7iに嵌合させる。これにより、挿入筒7に付属部材16を取り付けることができる。このように、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態では、挿入筒7の軸方向に対する付属部材16の移動が、第1の突起7hとフック部16eの係合(接触)、および、第3の突起7jとストッパー部16fの係合(接触)により規制される。このため、挿入筒7の軸方向に付属部材16を動かすことはできない。言い換えると、挿入筒7の軸方向において、付属部材16の位置は固定されている。また、付属部材16の係着部16bと挿入筒7の係着部(7h,7i,7j)の係着状態は、上述したように挿入筒7の軸方向に付属部材16を動かすことができないことから、挿入筒7に取り付けた付属部材16を挿入筒7の軸回り方向に回転させないかぎり解除されることはない。
【0044】
(回転部材)
回転部材8は、図14に示すように、挿入器本体5の後端部に取り付けられるものである。この取り付け状態において、回転部材8は、挿入器本体5と同軸に配置されるとともに、挿入器本体5の軸回り方向に回転自在に支持される。回転部材8は円筒状に形成されている。回転部材8の先端と後端は、それぞれ円形に開口している。回転部材8の外周面には、上記図1および図2に示すように、複数の突条部8aが形成されている。各々の突条部8aは、回転部材8の軸方向と平行に形成されている。回転部材8は、眼内レンズ挿入器1をスクリュー方式で使用する際に使用者によって回転操作される部分となる。その際、回転部材8の外周面に複数の突条部8aが形成されていると、使用者の指が突条部8aに引っ掛かるため回転部材8を回転操作しやすくなる。
【0045】
回転部材8の内周面には、第1のネジ部8bが形成されている。第1のネジ部8bは、所定のピッチで形成されている。また、回転部材8の先端部には2つの窓部8cが形成されている。2つの窓部8cは、円周方向に180度の間隔を隔てて形成されている。これらの窓部8cは、挿入器本体5と回転部材8とが正しく連結されているかどうかを目視で確認するためのものである。回転部材8の先端内周部には、一対の引っ掛け爪8dが形成されている。一対の引っ掛け爪8dは、挿入器本体5の後端部に回転部材8を連結するときに、挿入器本体5の回転支持部15に引っ掛けられるものである。各々の引っ掛け爪8dは、窓部8cに隣接して回転部材8の先端側の開口近傍に形成されている。回転部材8は、一対の引っ掛け爪8dを回転支持部15に引っ掛けた状態で、挿入器本体5の軸回り方向に回転自在に支持されている。また、一対の引っ掛け爪8dは、挿入器本体5のフランジ部14と回転支持部15の間に嵌り込んでいる。このため、回転部材8は、挿入器本体5の軸回り方向には回転自在であるが、挿入器本体5の軸方向に移動することはない。
【0046】
(プランジャ)
プランジャ9は、挿入器本体5と同軸に配置されている。プランジャ9は、挿入器本体5の軸方向に移動可能に設けられている。プランジャ9は、棒状のプランジャ軸9aを有している。プランジャ9の先端部は図15に示すようにシール材取付部9bとなっている。図15図2におけるE2-E2断面図である。シール材取付部9bは、挿入器本体5の内径よりも僅かに小さい外径を有する2つの円板部で構成され、これら2つの円板部の間にシール材17が取り付けられている。シール材17としては、たとえばOリングを用いることができる。シール材17は、プランジャ9を挿入器本体5の軸方向(前方)に移動させる際に、挿入器本体5の内周面と接触して適度な摺動抵抗を発生させる。
【0047】
プランジャ軸9aの縦断面形状は、図16(A),(B)に示すように略十字形になっている。図16(A)は図2におけるE3-E3断面図であり、図16(B)は図2におけるE4-E4断面図である。プランジャ軸9aの上面および下面には、上記図1および図2に示すように、それぞれ第2のネジ部9cが形成されている。第2のネジ部9cは、回転部材8の第1のネジ部8bに対応して形成されたものである。このため、第2のネジ部9cは、第1のネジ部8bと同じピッチで形成されている。第2のネジ部9cは、回転部材8の第1のネジ部8bと常に噛み合う状態に保持されている。このため、回転部材8を回転させると、その回転方向および回転量に応じてプランジャ9が挿入器本体5の軸方向に移動する。プランジャ9は、眼内レンズ挿入器1をプッシュ方式で使用する際に使用者によって押し込み操作される部分となる。ここで、プランジャ9の第2のネジ部9cとこれに対応する回転部材8の第1のネジ部8bは、ネジ溝とネジ山の関係で噛み合うとともに、その噛み合い部分において、第1のネジ部8bと第2のネジ部9cは図14に示すようにZ軸(図の上下方向)に対して所定のテーパー角度で傾斜している。これらのネジ部8b,9cのテーパー角度を適度な角度に調整(設定)すると、プランジャ9を押し込み操作するときに、ほとんど抵抗を感じることなく回転部材8を回転させることが可能である。特に、プランジャ9を押し込み操作したときに回転部材8の第1のネジ部8bに接触する第2のネジ部9cの後方のテーパー角度θが5°以上15°以下であると、押し込み操作によってプランジャ9が前方に移動するときに、ネジ部8b,9cどうしが引っ掛かることなく回転部材8が空転するため、好ましいものとなる。また、押し込み操作によってプランジャ9を前方に移動する際に必要な荷重を効率良く回転部材8に与えるためには、プランジャ9におけるネジ部9cの溝幅(Y軸方向の寸法)を1.0mm以上4.0mm以下に設定することが望ましい。また、ネジピッチに関しては、設定された眼内レンズの放出荷重に応じて調整することが望ましい。
【0048】
プランジャ9の先端側は、シール材取付部9bを含めて、挿入器本体5の内部に挿入して配置され、プランジャ9の後端側は、回転部材8よりも後方に突き出した状態で配置される。使用前の初期状態では、回転部材8の後端位置を基準としたプランジャ9の突き出し寸法Lp(図2(B)参照)が、挿入筒7の先端から眼内レンズ4を押し出すために必要なロッド10の移動寸法以上に設定されている。ここで、使用前の初期状態とは、眼内レンズ挿入器1を使用するにあたって、眼内レンズ4をロッド10で押し出すための操作を行う前の状態をいう。本実施形態の眼内レンズ挿入器1は、回転部材8の回転操作、および、プランジャ9の押し込み操作のうち、どちらの操作でもロッド10を前方に移動させることができる。このため、使用前の初期状態は、回転部材8の回転操作も、プランジャ9の押し込み操作も行われていない状態となる。
【0049】
使用前の初期状態では、プランジャ軸9aの突き出し寸法Lpがほぼ最大またはそれに近い寸法となるように、プランジャ9が大きく引き出された状態で配置される。この状態では、プランジャ9のシール材取付部9bが挿入器本体5の回転規制部13に近接または接触した状態に配置される。このとき、プランジャ9のシール材取付部9bは、回転規制部13の抜け止め部13dに対向する。このため、使用前の初期状態からプランジャ9を後方に移動させようとすると、シール材取付部9bが抜け止め部13dに突き当たる。これにより、挿入器本体5からのプランジャ9の抜けが阻止される。
【0050】
また、プランジャ9の先端側をロッド10と一緒に挿入器本体5の内部に挿入する場合は、上記図5に示すように回転規制部13を開いた状態にする。これにより、回転規制部13との干渉を避けてプランジャ9の先端側をシール材17付きで挿入器本体5の内部に挿入することができる。また、その状態からプランジャ9のプランジャ軸9aに嵌合するように回転規制部13を閉じると、図16(A),(B)に示すように、プランジャ軸9aの一部(第2のネジ部9cが形成されている部分)が摺動ガイド13bのガイド溝13cに嵌り込む。このとき、ガイド溝13cの相対向する2つの面は、図16(B)に示す
ように、プランジャ軸9aの一部を両側から挟んで支持するように配置される。これにより、プランジャ9は、挿入器本体5の軸方向に移動自在に支持される。ただし、挿入器本体5の軸回り方向に対するプランジャ9の回転は、回転規制部13によって規制される。
【0051】
(ロッド)
ロッド10は、レンズ設置部11に設置された眼内レンズ4を前方に押し出すことにより、眼内レンズ4を挿入筒7の先端部(ノズル部7bの開口)から放出させるものである。ロッド10は、細長い棒状に形成されている。ロッド10は、プランジャ9の先端部に連結され、プランジャ9と一体に中空体の軸方向に移動するものである。
【0052】
<眼内レンズ挿入器の使用方法>
次に、眼内レンズ挿入器1の使用方法について説明する。
【0053】
まず、使用者は、挿入筒7の注入孔7cに粘弾性物質を注入する。これにより、挿入器本体5のレンズ設置部11に設置されている眼内レンズ4に粘弾性物質が供給される。
【0054】
次に、使用者は、スライダ6を前方に移動させる。これにより、スライダ6の先端部に形成されているレンズ当接部(不図示)が眼内レンズ4に当接し、そのまま眼内レンズ4を押し出す。そうすると、眼内レンズ4が所定の形状に変形する。このようにスライダ6の移動によって眼内レンズ4を変形させると、その後の操作でロッド10により眼内レンズ4を押し出す際に、眼内レンズ4を所望の形状に折り畳みやすくなる。
【0055】
次に、使用者は、眼内レンズ挿入器1をプッシュ方式またはスクリュー方式で操作することにより、プランジャ9と一緒にロッド10を前方に移動させ、挿入筒7のノズル部7bから眼内レンズ4を放出させる。このとき、ロッド10は前方への移動中に眼内レンズ4に接触し、そのまま眼内レンズ4を押し出す。そうすると、眼内レンズ4は、所定の形状に折り畳まれながら挿入筒7内を移動し、ノズル部7b先端の開口から放出される。したがって、眼球の切開創に挿入筒7のノズル部7bを挿入した状態で眼内レンズ4を放出させることにより、眼内レンズ4を小さく折り畳んだ状態で眼内に挿入することができる。また、眼内挿入後は眼内レンズ4自身の復元力により、眼内レンズ4を元の形状に復元させることができる。
【0056】
<第1実施形態の効果>
次に、本発明の第1実施形態に係る眼内レンズ挿入器1が奏する効果について説明する。
【0057】
本実施形態の眼内レンズ挿入器1は、2つの異なる操作方式、すなわちスクリュー方式とプッシュ方式の両方に対応することができる。スクリュー方式は、回転部材8の回転操作によって眼内レンズ4を押し出す方式であり、プッシュ方式は、プランジャ9の押し込み操作によって眼内レンズ4を押し出す方式である。このため、眼内レンズ挿入器1を使用するにあたって、スクリュー方式を好む使用者は、回転部材8の回転操作によって眼内レンズ4を押し出すことができ、プッシュ方式を好む使用者は、プランジャ9の押し込み操作によって眼内レンズ4を押し出すことができる。以下、各々の操作方式について説明する。
【0058】
(スクリュー方式)
眼内レンズ挿入器1をスクリュー方式で使用する場合、使用者は、回転部材8を回転操作する。具体的には、挿入器本体5を片方の手で支えながら、もう片方の手で回転部材8を回転させる。このとき、使用前の初期状態を含めて、回転部材8の第1のネジ部8bとプランジャ9の第2のネジ部9cとは常に噛み合った状態に保持されている。このため、
回転部材8を所定の方向(眼内レンズ挿入器1の後端側から見て時計回り方向)に回転させると、回転部材8の回転にしたがってプランジャ9が前方に移動し、それと一緒にロッド10も前方に移動する。また、挿入器本体5の軸回り方向におけるプランジャ9の回転は回転規制部13によって規制されているため、プランジャ9とロッド10は、挿入器本体5の軸回り方向に回転することなく前方に移動する。これにより、挿入器本体5のレンズ設置部11に設置された眼内レンズ4は、ロッド10の移動によってノズル部7bの先端から押し出される。
【0059】
(プッシュ方式)
眼内レンズ挿入器1をプッシュ方式で使用する場合、使用者は、プランジャ9を押し込み操作する。具体的には、挿入器本体5のフランジ部14に人差し指と中指を引っ掛けた状態で親指をプランジャ9の後端部に押し当てる。そして、その状態でプランジャ9を前方に押し込む。そうすると、プランジャ9に加えられた押し込み力が、第1のネジ部8bと第2のネジ部9cの噛み合いにより、回転部材8を回転させる力に変換される。このため、プランジャ9を前方に押し込むと、プランジャ9がロッド10と一緒に前方に移動するとともに、プランジャ9の移動にしたがって回転部材8が回転する。また、挿入器本体5の軸回り方向におけるプランジャ9の回転は回転規制部13によって規制されているため、プランジャ9とロッド10は、挿入器本体5の軸回り方向に回転することなく前方に移動する。これにより、挿入器本体5のレンズ設置部11に設置された眼内レンズ4は、ロッド10の移動によってノズル部7bの先端から押し出される。
【0060】
このように、本実施形態の眼内レンズ挿入器1は、スクリュー方式およびプッシュ方式のいずれの操作方式にも対応可能である。したがって、眼内レンズ挿入器1の使用者は、自身の好みに応じて、あるいはそれ以外の理由、事情等に応じて、いずれか一方の操作方式を選択することができる。これにより、1つの眼内レンズ挿入器1で、眼内レンズ挿入術の手技の違いに柔軟に対応することが可能となる。また、スクリュー方式を好む使用者とプッシュ方式を好む使用者の両方に対応することが可能となる。また、回転部材8の第1のネジ部8bとプランジャ9の第2のネジ部9cとは、使用前の初期状態を含めて、常に噛み合った状態になっているため、スクリュー方式で操作する場合は、回転部材8の回転操作のみで眼内レンズ4を押し出すことができる。また、プッシュ方式で操作する場合は、操作の開始から終了まで第1のネジ部8bと第2のネジ部9cが噛み合った状態に保持されるため、プランジャ9の押し込み操作の途中で振動等が発生しにくくなる。
【0061】
(付属部材のノズル挿入量制限機能)
本実施形態の眼内レンズ挿入器1は、付属部材16が提供するノズル挿入量制限機能を利用したり、その利用を回避したりすることができる。具体的には、挿入筒7に対して付属部材16を移動可能に構成し、これによって付属部材16を挿入筒7に着脱可能としている。このため、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態では、ノズル挿入量制限機能を利用することができ、挿入筒7から付属部材16を取り外した状態では、ノズル挿入量制限機能の利用を避けることができる。以下、ノズル挿入量制限機能を利用する場合と利用しない場合に分けて説明する。
【0062】
(ノズル挿入量制限機能を利用する場合)
付属部材16が提供するノズル挿入量制限機能を利用する場合は、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態にする。これにより、挿入筒7のノズル部7bが付属部材16のスリーブ部16aによって部分的に覆われた状態になる。ノズル挿入量制限機能は、白内障手術に際して、図17に示すように、眼球の角膜50の周辺部に切開創50aを形成し、この切開創50aに挿入筒7のノズル部7bを挿入するときに、スリーブ部16aの先端面16dが、角膜50の外表面50bに接触することにより発揮される。その際、スリーブ部16aの先端面16dは、角膜50の外表面50bに接触することにより、それ以上
のノズル部7bの挿入を抑制するストッパーとして機能し、このストッパー機能によってノズル部7bの挿入量が制限される。
【0063】
ここで、Wound-assisted法を適用する場合は、スリーブ部16aの先端面16dを基準としたノズル部7bの突き出し量(最大値)L1が1.0mm以上1.2mm以下となるように、挿入筒7と付属部材16の相対位置を設定することが望ましい。これにより、角膜50の切開創50aに対するノズル部7bの挿入量を、上記突き出し量L1相当に制限することができる。したがって、角膜50の切開創50aにノズル部7bを浅く挿入した状態でノズル部7bの先端から眼内レンズ4を放出させることができる。また、ノズル挿入量制限機能を利用すべく、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態では、挿入筒7の軸方向に対する付属部材16の移動が、第1の突起7hとフック部16eの係合、および、第3の突起7jとストッパー部16fの係合により規制される。このため、ノズル部7bの先端から眼内レンズ4を放出させた後は、角膜50の切開創50aからノズル部7bを引き抜くと同時に、付属部材16の先端面16dを角膜50の外表面50bから離間させることができる。また、ノズル挿入量制限機能を利用する場合は、上述のように挿入筒7と付属部材16が一体に組み合わさった状態で使用される。このため、付属部材16の係着部16bと挿入筒7の係着部(7h,7i,7j)は常に係着状態に維持され、係着状態が解除されることはない。
【0064】
(ノズル挿入量制限機能を利用しない場合)
一方、付属部材16が提供するノズル挿入量制限機能を利用しない場合は、挿入筒7から付属部材16を取り外した状態にする。これにより、挿入筒7のノズル部7bは、付属部材16のスリーブ部16aで覆われることなく、ノズル部7b全体が外部に露出した状態となる。このため、角膜50の切開創50aに挿入筒7のノズル部7bを挿入する場合は、上述したノズル挿入量制限機能を利用する場合よりも深くノズル部7bを挿入することができる。したがって、角膜50の切開創50aにノズル部7bを深く挿入した状態でノズル部7bの先端から眼内レンズ4を放出させることができる。
【0065】
このように、本実施形態の眼内レンズ挿入器1は、挿入筒7に付属部材16を取り付けてノズル挿入量制限機能を利用できるだけでなく、挿入筒7から付属部材16を取り外してノズル挿入量制限機能の利用を回避することができる。したがって、眼内レンズ挿入器1の使用者は、自身の好みに応じて、あるいはそれ以外の理由、事情等に応じて、ノズル挿入量制限機能を利用したり、その利用を回避したりすることができる。これにより、眼球の切開創50aに対してノズル部7bを深く挿入する手技を好む使用者と浅く挿入する手技を好む使用者がいても、それぞれの使用者の手技の好みに柔軟に対応することが可能となる。
【0066】
また、スリーブ部16aのサイズ(特に長さ)が異なる複数の付属部材16を用意しておけば、ノズル挿入量制限機能を利用する場合に、いずれのサイズの付属部材16を挿入筒7に取り付けるかによって、スリーブ部16aの先端面16dを基準としたノズル部7bの突き出し量を変更(増減)することができる。たとえば、上記図17に示すノズル部7bの突き出し量L1よりも大きな突き出し量(たとえば、5.0mm以上6.5mm以下)に変更したい場合は、図18に示すように、それに適合するサイズの付属部材16を挿入筒7に取り付けることにより、ノズル部7bの突き出し量(最大値)L2を、上記突き出し量L1よりも大きく確保することができる。これにより、角膜50の切開創50aにノズル部7bを挿入するときの挿入量を変更することができる。
【0067】
なお、本実施形態の眼内レンズ挿入器1は、眼内レンズ挿入器1の操作方式をスクリュー方式とプッシュ方式から選択可能となる効果(以下、「第1の効果」という。)と、ノズル挿入量制限機能を利用するかどうかを選択可能となる効果(以下、「第2の効果」と
いう。)を奏するものである。ただし、第1の効果と第2の効果は、それぞれ異なる構成によって得られるものである。すなわち、第1の効果は、上述した挿入器本体5と、回転部材8と、プランジャ9と、ロッド10とを備えた構成(以下、「第1の構成」という。)によって得られ、第2の効果は、上述した挿入筒7と、付属部材16とを備えた構成(以下、「第2の構成」という。)によって得られる。よって、第1の効果は、第2の構成を備えていないものでも得られ、第2の効果は、第1の構成を備えていないものでも得られる。
【0068】
また、本実施形態においては、付属部材16の貫通孔16cにテーパー部16iを形成し、このテーパー部16iをノズル部7bの外周面に接触させることにより、ノズル部7bの外周径を縮小可能な構成を採用している。これにより、眼球に形成する切開創のサイズを小さくしても、この切開創にノズル部7bの先端部を容易に挿入することができる。また、眼内レンズ4を所定の形状に折り畳んだ状態でノズル部7bを通過させる場合、ノズル部7bは内側から眼内レンズ4に押されて変形する。このとき、ノズル部7bに切り込み部7kを形成しておけば、ノズル部7bが眼内レンズ4に押されて変形しても、ノズル部7bに亀裂等のダメージが入りにくくなる。また、ノズル部7bの変形量は、眼内レンズ4の放出に必要な最小限に抑えられる。このため、より小さな切開創から眼内レンズ4を挿入することができる。
【0069】
また、本実施形態においては、付属部材16に覗き窓16gが形成された構成を採用している。このため、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態で眼内レンズ挿入器1を使用する場合でも、挿入筒7の内部を移動する眼内レンズ4の状態を、覗き窓16gを通して外部から視認することができる。したがって、眼内レンズ挿入器1の使用者は、付属部材16が取り付いた状態でも、ロッド10によって押し出される眼内レンズ4の様子を目視で確認しながら眼内レンズ挿入器1の操作を行うことができる。
【0070】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図19は本発明の第2実施形態に係る眼内レンズ挿入器において挿入筒に付属部材を取り付けた状態を示す斜視図である。以下、本発明の第2実施形態に係る挿入筒と付属部材の構成について詳しく説明する。
【0071】
(挿入筒)
図20は本発明の第2実施形態に係る挿入筒の構成を示す斜視図である。
挿入筒7は、上記第1実施形態と比較して被係着部の構成だけが異なる。すなわち、上記第1実施形態においては、3つの突起7h,7i,7jによって被係着部を構成したが、第2実施形態においては、1つの係止爪7mによって被係着部を構成している。係止爪7mは、挿入筒本体7aの第2の部分7gの両側面から下面にかけて正面視略U字形に形成されている。また、係止爪7mは、第2の部分7gの下面から下方に突出する状態で形成されている。
【0072】
(付属部材)
図21は本発明の第2実施形態に係る付属部材の構成を示す斜視図である。また、図22は本発明の第2実施形態に係る付属部材の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は底面図、(D)は後面図である。
付属部材16は、上記第1実施形態と同様にスリーブ部16aおよび係着部16bを備えているが、係着部16bの構成は異なっている。すなわち、係着部16bには、覗き窓16gに加えて舌片16jが一体に形成され、フック部16eやストッパー部16fは形成されていない。舌片16jは、係着部16bの下部から付属部材16の軸方向に延びるように形成されている。舌片16jは、3つの係合孔16kを有する梯子形状に形成され
ている。以降の説明では、3つの係合孔16kをそれぞれ16k-1,16k-2,16k-3といった識別符号によって区別する。3つの係合孔16k-1,16k-2,16k-3は、付属部材16の軸方向に所定の間隔をあけて互いに隣り合うように並んで形成されている。また、3つの係合孔16k-1,16k-2,16k-3は、付属部材16の軸方向において前方から後方から向かって順に配置されている。付属部材16は、3つの係合孔16k-1,16k-2,16k-3のいずれかに挿入筒7の係止爪7mが係合することにより、挿入筒7に係着される構成になっている。
【0073】
図23は付属部材を挿入筒に取り付けた状態を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。また、図24(A)は図23におけるJ2-J2断面図、(B)は図23におけるJ1-J1断面図、(C)は(B)におけるK部拡大図である。
図示のように付属部材16を挿入筒7に取り付けた状態では、スリーブ部16aの貫通孔16cにノズル部7bが嵌め入れられる。また、挿入筒7に形成された係止爪7mは、付属部材16の舌片16jに形成された3つの係合孔16k-1,16k-2,16k-3のうち、中央の係合孔16k-2に係合されている。このとき、スリーブ部16aの先端面16dは、ノズル部7bの外周面から外側に張り出した状態で配置されるとともに、挿入筒7の軸方向に対してノズル部7bの切り口と同じ方向に傾斜した状態で配置される。
【0074】
ノズル挿入量制限機能を利用する場合は、3つの係合孔16k-1,16k-2,16k-3のいずれか1つに係止爪7mを係合させる。その場合、いずれの係合孔16kに係止爪7mを係合させるかによって、スリーブ部16aの先端面16dを基準としたノズル部7bの突き出し量が変わる。図25(A)は後方の係合孔16k-3に係止孔7mを係合させた状態を示す側面図である。この状態では挿入筒7の軸方向で付属部材16が相対的に前方寄りに配置される。このため、ノズル部7bの突き出し量は相対的に小さくなる。これに対して、図25(B)は中央の係合孔16k-2に係止孔7mを係合させた状態を示す側面図である。この状態では図25(A)の状態に比べてノズル部7bの突き出し量が大きくなる。図25(C)は前方の係合孔16k-1に係止孔7mを係合させた状態を示す側面図である。この状態では挿入筒7の軸方向で付属部材16が相対的に後方寄りに配置される。このため、図25(B)の状態に比べてノズル部7bの突き出し量が大きくなる。
【0075】
このように本発明の第2実施形態においては、挿入筒7の軸方向に付属部材16を適宜移動させて舌片16jのいずれかの係合孔16kに係止片7mを係合させることにより、ノズル部7bの突き出し量を大中小の三段階に変更(調整)することができる。また、付属部材16の舌片16jにさらに多くの係合孔16kを形成すれば、より多段階にノズル部7bの突き出し量を変更することができる。また、挿入筒7の係止片7mが中央の係合孔16k-2に係合している状態で、付属部材16を挿入筒7の軸方向に押圧すると、その押圧力を受けて付属部材16の舌片16jが弾性変形(撓み変形)し、これによって係止片7mが隣の係合孔16k-1または16k-3に係合した状態になる。このため、挿入筒7に付属部材16を取り付けたままで、ノズル部7bの突き出し量を変更することができる。これにより、挿入筒7に対して付属部材16を着脱しなくても、ノズル部7bの突き出し量を変更することが可能となる。このため、挿入筒7から付属部材16を取り外す手間や、取り外した付属部材16をトレイ等に置いたりする手間を省くことができる。また、挿入筒7から取り外した付属部材16を使用者の不注意で落下したり紛失したりするおそれもない。
【0076】
また、ノズル挿入量制限機能を利用しない場合は、たとえば、係止片7mと舌片16jとの係合状態を解除して挿入筒7から付属部材16を抜き取ることにより、ノズル部7b
全体を露出させることができる。あるいは、挿入筒7に付属部材16を取り付けたまま、付属部材16を所定量だけ後方に移動させたときに、ノズル部7b全体が露出するようにし、その状態で係止片7mと係合孔16kとの係合により付属部材16が挿入筒7に係着される構成としてもよい。この構成を採用した場合は、挿入筒7から付属部材16を取り外さなくても、ノズル挿入量制限機能を利用するかどうかを切り替えることが可能となる。このため、付属部材16は挿入筒7に対して着脱可能になっていなくてもよい。
【0077】
<第3実施形態>
図26は本発明の第3実施形態に係る眼内レンズ挿入器の構成を示す斜視図である。また、図27(A)は本実施形態の第3実施形態に係る眼内レンズ挿入器の構成を示す平面図、(B)は側面図、(C)は(A)におけるM-M断面図である。
本発明の第3実施形態に係る眼内レンズ挿入器1は、上記第1実施形態と比較して、回転規制部13の位置と構造、プランジャ9の一部の構造と、挿入筒7の構造と、付属部材16の構造が異なる。
【0078】
(回転規制部の位置と構造)
図28は本発明の第3実施形態に係る挿入器本体の構成を示す斜視図であり、(A)は挿入器本体に設けられる回転規制部を開いた状態、(B)は回転規制部を閉じた状態を示している。
【0079】
回転規制部13は、挿入器本体5の軸方向において、フランジ部14よりもやや後方に位置する、挿入器本体5の後端部に形成されている。挿入器本体5の後端部に回転部材8を取り付けると、回転規制部13は回転部材8の内側に配置される(図27(C)参照)。このため、回転規制部13全体が回転部材8によって遮蔽される。回転規制部13の機能や構造等は、基本的に上記第1実施形態と同様である。
【0080】
上述のように回転規制部13を挿入器本体5の後端部に形成し、そこに取り付けられる回転部材8によって回転規制部13を遮蔽する構成を採用することにより、上記第1実施形態と比較して、挿入器本体5の長さを短くし、眼内レンズ挿入器1の小型化を図ることができる。また、眼内レンズ挿入器1を組み立てた後は、回転部材8の内側に回転規制部13が隠れるため、回転規制部13を開くことができなくなる。このため、術者等が眼内レンズ挿入器1を分解するリスクを低減することができる。また、フランジ部14の前方に回転規制部13を形成する必要がなくなるため、挿入器本体5の外周面に補強リブ18を形成してフランジ部14を補強することができる。これにより、プッシュ方式の操作でフランジ部14に強い力が加わる場合でも、フランジ部14の変形を抑制することができる。
【0081】
なお、本第3実施形態では、回転規制部13の全部が回転部材8によって遮蔽される構成になっているが、これに限らず、回転規制部13の少なくとも一部が回転部材8によって遮蔽される構成になっていれば、術者等が眼内レンズ挿入器1を分解するリスクを低減することができる。また、本第3実施形態で採用している回転規制部13の位置は、上記第1実施形態や上記第2実施形態でも採用することが可能である。
【0082】
また、本第3実施形態では、回転規制部13を閉じ状態に保持するために、フック機構を採用している。フック機構は、たとえば図39(A)に示すように、回転規制部13に形成された第1フック爪13eと、挿入器本体5の外周面に形成された第2フック爪19とを備える。図39(A)~(D)はいずれも挿入器本体5の後方から回転規制部13を見た場合を示している。
【0083】
第1フック爪13eは、回転規制部13において、枢支部13aの反対側に形成されて
いる。枢支部13aは、回転規制部13と挿入器本体5とを繋ぐとともに、回転規制部13を回転可能(開閉可能)に支持する。第2フック爪19は、左右方向において、枢支部13aの反対側に形成されている。
【0084】
上記構成からなるフック機構においては、回転規制部13を開いた状態から閉じるようにすると、回転規制部13の第1フック爪13eが挿入器本体5の第2フック爪19に引っ掛かって係止される。このとき、挿入器本体5の径方向において、第1フック爪13eは相対的に外側に配置され、第2フック爪19は相対的に内側に配置される。また、プランジャ9は、回転規制部13の一対の摺動ガイド13b間に形成されるガイド溝13cに嵌まり込む。このため、眼内レンズ挿入器1をスクリュー方式で使用すべく回転部材8を回転操作した場合は、挿入器本体5の軸回り方向におけるプランジャ9の回転が回転規制部13によって規制される。
【0085】
また、回転部材8の第1のネジ部8bとプランジャ9の第2のネジ部9cは互いに噛み合っているため、プランジャ9を前方に移動させるべく回転部材8を回転操作すると、回転部材8の回転によってプランジャ9に回転力Frが加わる。プランジャ9に回転力Frが加わると、回転規制部13がプランジャ9によって押される。その結果、回転規制部13の第1フック爪13eが第2フック爪19に押し付けられる。よって、第1フック爪13eと第2フック爪19を係止状態に保持することができる。したがって、回転部材8の回転操作中に第1フック爪13eと第2フック爪19が外れるおそれがない。
【0086】
これに対して、たとえば図39(B)に示すように、回転規制部13の枢支部13aと第1フック爪13eの位置関係を左右反転し、これにあわせて挿入器本体5に第2フック爪19を形成した場合は、回転部材8の回転操作中に第1フック爪13eと第2フック爪19が外れるおそれがある。具体的には、回転部材8の回転操作によってプランジャ9に回転力Frが加わると、挿入器本体5(回転規制部13を含む)を構成する材料の特性によっては、上記回転力Frに押されて回転規制部13が変形したり変位したりする場合がある。その結果、第1フック爪13eが外側に変位して第2フック爪19から外れるおそれがある。このため、上記図39(A)に示すように、回転部材8の回転操作によってプランジャ9に加わる回転力Frが、第1フック爪13eを第2フック爪19に押し付ける方向に加わる構成としたほうが好ましい。
【0087】
また、図39(C)に示すように、回転規制部13の第1フック爪13eを相対的に内側に配置するとともに、挿入器本体5の第2フック爪19を相対的に外側に配置した構成を採用することも可能である。この構成においても、回転部材8の回転操作によってプランジャ9に加わる回転力Frが、第1フック爪13eを第2フック爪19に押し付ける方向に加わる。このため、回転部材8の回転操作中に第1フック爪13eと第2フック爪19が外れるおそれがない。ちなみに、図39(D)に示すように、回転規制部13の枢支部13aと第1フック爪13eの位置関係を左右反転し、これにあわせて挿入器本体5に第2フック爪19を形成した場合は、プランジャ9に加わる回転力Frに押されて回転規制部13が変形したり変位したりする場合がある。その結果、第1フック爪13eが外側に押し出されて第2フック爪19から外れるおそれがある。よって、図39(C)に示す構成を採用するほうが好ましい。
【0088】
なお、図39(A)~(D)に示すフック機構は、上記の第1実施形態および第2実施形態にも適用可能であり、その場合にも上記図39(A)または(C)に示す構成を採用するほうが好ましい。
【0089】
(プランジャの一部の構造)
プランジャ9の後端部には押圧板部9dが形成されている。押圧板部9dは、プッシュ
方式で操作するときに術者の親指を押し当てるための部分で、プランジャ軸9aよりも径方向に突出するように形成されている。押圧板部9dにおいて、術者の親指が押し当てられる面には、滑り止め用に凹凸が設けられていてもよい。
【0090】
上述のようにプランジャ9の後端部に押圧板部9dを設けた場合は、プッシュ方式での操作が容易になる。また、上記第1実施形態と比較すると、より広い面でプランジャ9の後端部が親指に接触するため、プランジャ9を押し込むときに親指に加わる荷重が分散する。よって、親指への負担を軽減することができる。
【0091】
なお、プランジャ9の後端部に押圧板部9dを設ける構成は、上記第1実施形態や上記第2実施形態でも採用することが可能である。
【0092】
(挿入筒の構成)
図29は本発明の第3実施形態に係る挿入筒の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。また、図30(A)は本発明の第3実施形態に係る挿入筒を斜め上方から見た斜視図であり、(B)は斜め下方から見た斜視図である。
【0093】
挿入筒7は、中空の挿入筒本体7aと、細い管状のノズル部7bとを有し、挿入筒本体7aの上面に注入孔7cが形成されている。挿入筒本体7aは、第1の部分7fと第2の部分7gに分けられる。また、挿入筒本体7aの後端部は開口し、この開口部の周囲に引っ掛け部7dとくさび部7eが形成されている。ノズル部7bには切り込み部7kが形成されている。以上の点は上記第1実施形態と同様である。
【0094】
挿入筒本体7aの第1の部分7fの下面側には被係着部71が形成されている。被係着部71には、2つの小突起71a,71bと、凹溝71cが形成されている。挿入筒7の軸方向において、小突起71bは、小突起71aと凹溝71cの間に配置されている。小突起71aは、スロープ71dを有する。スロープ71dは、挿入筒7の先端側に向かって小突起71aの突出量が徐々に大きくなるような傾斜を有する。
【0095】
挿入筒本体7aの第2の部分7gの両側には、左右一対のガイドリブ72が形成されている。一対のガイドリブ72は、挿入筒7に付属部材16を取り付けるときに、挿入筒7の軸回り方向において、挿入筒7と付属部材16を相対的に位置決めするためのガイド機能を果たす。一対のガイドリブ72は、挿入筒本体7a(第2の部分7g)の両側から翼状に突出するように形成されている。
【0096】
(付属部材の構成)
図31は本発明の第3実施形態に係る付属部材を斜め上方から見た斜視図であり、(A)は挿入筒に取り付ける前の付属部材、(B)は挿入筒に取り付けた後の付属部材を示している。また、図32は本発明の第3実施形態に係る付属部材の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は下面図である。また、図33図32(B)におけるN矢視図である。なお、図32は、挿入筒に取り付ける前の付属部材を示している。
【0097】
付属部材16は、上記第1実施形態と同様に、ノズル挿入量制限機能を提供する部材である。付属部材16の材料は、好ましくは樹脂であり、さらに好ましくは透明または半透明な樹脂である。付属部材16は、樹脂の一体成形品で構成されることが望ましい。付属部材16は、挿入筒7とは別個の部材であって、挿入筒7に対して移動可能に構成されている。挿入筒7に対する付属部材16の移動可能方向は、挿入筒7の軸方向となっている。また、本第3実施形態においては、挿入筒7に付属部材16を取り付けた後は、挿入筒7から付属部材16を取り外すことはできないが、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態のまま、付属部材16を挿入筒7の軸方向に移動可能な構成になっている(詳細は後述)。
【0098】
付属部材16の先端部には、張り出し面としての先端面161が形成されている。付属部材16の張り出し面は、眼内レンズを眼内に挿入する際に角膜に直接接触する部分となる。このため、角膜にできるだけダメージを与えないよう、付属部材16の本体部分(張り出し面の部分を除く)を硬性樹脂で形成し、張り出し面の部分はシリコーンやウレタンなどの軟性樹脂で形成してもよい。張り出し面としての先端面161は、円環の上部を切り欠いた形状(C字形)に形成されている。
【0099】
付属部材16の上部には覗き窓162が形成されている。付属部材16の底部には抜き孔163が形成されている。覗き窓162は、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態でも、挿入筒7の内部を移動する眼内レンズ4の状態を外部から視認できるようにするために形成されたものである。覗き窓162の幅は、挿入筒7の幅の変化に対応して、付属部材16の後端側から先端側に向かって徐々に狭くなっている。覗き窓162の先端側は閉じることなく開放され、先端面161の切り欠き部分まで連通している。このため、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態でも、挿入筒7の挿入筒本体7aからノズル部7bに至る部分全体を覗き窓162を通して外部から視認することができる。したがって、挿入筒7のノズル部7bを通して眼内レンズ4を押し出す場合に、挿入筒7の内部を移動する眼内レンズ4の状態を、付属部材16に邪魔されることなく視認することが可能となる。
【0100】
付属部材16の両側には、左右一対の側板部164が設けられている。各々の側板部164の内面には、図34に示すように、スリット溝164aが形成されている。スリット溝164aは、挿入筒7のガイドリブ72に対応して形成されたものである。なお、図34は係着部167を閉じた状態の付属部材16の縦断面図である。各々の側板部164の外面には把持部165が形成されている。把持部165は、術者等が付属部材16を取り扱うときに、人差し指と親指で付属部材16を把持できるようにするために、付属部材16の左右両側に設けられている。把持部165は、術者等が付属部材16を把持しやすいように凹凸構造になっている。
【0101】
付属部材16の後部には、架橋部166と係着部167が設けられている。架橋部166は、一対の側板部164の間に架け渡すように付属部材16の上部に形成されている。架橋部166の一部は、挿入筒7に付属部材16を取り付けたときに注入孔7cを塞がないよう、波形に曲げて形成されている。架橋部166は、繋ぎ部168で係着部167と繋がっている。繋ぎ部168は、左右方向の一方に設けられている。繋ぎ部168は、適度な可撓性を有するように薄く形成されている。係着部167は、繋ぎ部168の可撓性を利用して、繋ぎ部168を中心(支点)に回転可能に支持されている。図33は係着部167を開いた状態を示しており、この状態から図中二点鎖線の矢印で示す方向に係着部167を回転させることで、係着部167を閉じることができる。挿入筒7に付属部材16を取り付ける場合は、係着部167を閉じるように回転させることにより、係着部167を被係着部71に係着させることができる。
【0102】
架橋部166には、結合用爪169が形成されている。結合用爪169は、左右方向で繋ぎ部168の反対側に突状に形成されている。一方、係着部167には、結合用爪169に対応して結合用孔170が形成されている。結合用爪169と結合用孔170は、繋ぎ部168と反対側で架橋部166と係着部167を接続することにより、架橋部166と係着部167を環状に結合するものである。具体的には、繋ぎ部168を中心に係着部167を閉じるように回転させることにより、結合用爪169と結合用孔170を相互に嵌合させて接続する。これにより、架橋部166と係着部167を環状に結合することができる。挿入筒7に付属部材16を取り付ける場合、架橋部166は挿入筒本体7a(第1の部分7f)の上側に配置され、係着部167は挿入筒本体7aの下側に配置される。このため、挿入筒本体7aは、架橋部166と係着部167によって囲まれる。また、架橋部166と係着部167を結合した状態では、それらの内周面が挿入筒本体7aの外周面に対応した形状になる。
【0103】
係着部167には、固定片171と、固定片171から前方に延出する可動片172とを有する。可動片172は、固定片171との間に孔173を形成している。可動片172は、固定片171と可動片172との接続部分を固定端、可動片172の先端部172aを自由端として撓むことができる性質(以下、「板バネ性」という。)を有する。固定片171および可動片172は、挿入筒7の被係着部71を構成する小突起71a,71bおよび凹溝71cに対応して形成されたものである。可動片172の先端部172aは、小突起71aのスロープ71dに沿って移動することにより、小突起71aを乗り越え可能に構成されている。そして、可動片172の先端部172aがスロープ71dに沿って小突起71aを乗り越えることで付属部材16が前方に移動し、ノズル部7bの突き出し量が変化する構成になっている。
【0104】
付属部材16の下部には、一対の側板部164の間に架け渡すように連結バー174が形成されている。連結バー174は、係着部167を閉じた場合に、可動片172の先端部172aと対向するように配置される。付属部材16の軸方向においては、連結バー174の前方に抜き孔163が形成されている。
【0105】
(付属部材の取付手順)
次に、挿入筒7に付属部材16を取り付ける場合の手順について説明する。なお、付属部材16の取り付けは、眼内レンズ挿入器1の製造工程(組立工程)で行われる。
【0106】
まず、図35に示すように、係着部167を開いた状態の付属部材16を、挿入筒7のノズル部7bの前方に配置する。
【0107】
次に、付属部材16と挿入筒7を相対的に近づけることにより、図36に示すように、挿入筒7の外側に付属部材16を被せる。このとき、付属部材16を挿入筒7の後端部まで差し込むようにする。そうすると、付属部材16の先端面161からノズル部7bが所定量だけ突き出した状態になる。また、付属部材16を挿入筒7に差し込む場合は、挿入筒7に形成された一対のガイドリブ72を、これに対応して付属部材16に形成された一対のスリット溝164aに嵌合させる。これにより、挿入筒7の軸回り方向で挿入筒7と付属部材16の位置決めがなされる。
【0108】
次に、付属部材16の繋ぎ部168を中心に係着部167を閉じるように回転させることにより、係着部167の結合用孔170と架橋部166の結合用爪169を相互に嵌合させて接続する。これにより、架橋部166と係着部167が環状に結合される。
【0109】
以上の手順により、挿入筒7に付属部材16を取り付けることができる。付属部材16を挿入筒7に取り付けた後は、挿入筒7から付属部材16を取り外すことはできない。すなわち、本第3実施形態においては、付属部材16が挿入筒7から取り外し不可となっている。ただし、付属部材16は、挿入筒7に対して移動可能に構成されている。以下、この点について説明する。
【0110】
まず、上述のように付属部材16を挿入筒7に取り付けると、挿入筒7の小突起71a、小突起71b、凹溝71cと、付属部材16の固定片171、可動片172、連結バー174との位置関係は、図37のようになる。すなわち、挿入筒7の軸方向において、小突起71aは、可動片172の先端部172aと連結バー174との間に配置され、小突
起71bは、可動片172の先端部172aと固定片171との間に配置される。また、可動片172の先端部172aは、小突起71aのスロープ71dに隣り合う小突起71bの前面に接触(または近接)して配置され、連結バー174は、小突起71aの全面に接触(または近接)して配置される。
【0111】
その状態から付属部材16を移動させる場合は、まず、付属部材16の両側に形成されている一対の把持部165を術者等が2本の指(通常は人差し指と親指)で把持する。次に、一対の把持部165を指で把持しながら、付属部材16にP方向の力を加える。そうすると、付属部材16の下部に形成されている可動片172が、挿入筒7の小突起71aのスロープ71dに接触しつつ、可動片172自身のもつ板バネ性によって変形する。そして、可動片172の先端部172aがスロープ71dに沿って移動し、小突起71aの突端部を乗り越えたところで、可動片172が自身の板バネ性によって元の形状に戻る。
【0112】
これにより、挿入筒7の小突起71a、小突起71b、凹溝71cと、付属部材16の固定片171、可動片172、連結バー174との位置関係は、図38のようになる。すなわち、挿入筒7の軸方向において、小突起71aは、可動片172の先端部172aと固定片171との間に配置され、小突起71bも、可動片172の先端部172aと固定片171との間に配置される。また、可動片172の先端部172aは、小突起71aの前面に接触(または近接)して配置され、固定片171は、小突起71bの後面に接触(または近接)して配置される。
【0113】
このように、本実施形態においては、挿入筒7に付属部材16を取り付けた状態のままで、挿入筒7の軸方向に付属部材16を移動可能な構成になっている。このため、挿入筒7に付属部材16を取り付けたままで、ノズル部7bの突き出し量を変更することができる。これにより、眼球の切開創に対してノズル部7bを深く挿入する手技を好む術者は、図37に示す状態で眼内レンズ挿入器1を使用し、ノズル部7bを浅く挿入する手技を好む術者は、図38に示す状態で眼内レンズ挿入器1を使用することができる。したがって、白内障手術を行う術者は好みの手技にあわせて眼内レンズ挿入器1を使い分けることができる。
【0114】
なお、本第3実施形態においては、挿入筒7の軸方向に付属部材16を移動可能とすることで、ノズル部7bの突き出し量を2段階で調整可能な構成としたが、これに限らず、3段階以上の多段階に調整可能な構成としてもよい。
【0115】
また、本第3実施形態においては、挿入筒7に取り付けられた付属部材16を前方に移動させた後は、可動片172の先端部172aと小突起71aとの接触により、付属部材16を移動前の位置(後方)に戻せない構成になっているが、これに限らず、付属部材16を元の位置に戻せる構成にしてもよい。
【0116】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0117】
たとえば、上記実施形態においては、プランジャ9とロッド10を別部材で構成しているが、これらを一体構造とすることも可能である。
【0118】
また、上記実施形態においては、付属部材16の一部を切り欠いた状態で覗き窓16gを形成したが、これに限らず、付属部材16の一部に適度な大きさで孔(不図示)をあけ、この孔を覗き窓としてもよい。
【0119】
また、上記実施形態においては、挿入器本体5と挿入筒7を相互に組み付けて中空体を構成したが、中空体は一体構造(樹脂の一体成形品など)になっていてもよい。
【0120】
また、上記実施形態においては、眼内レンズ挿入器1の構成要素の1つにスライダ6を含めるようにしたが、このスライダ6は、眼内レンズ4を所望の形状に折り畳むための補助的な部材であって、眼内レンズ4を眼内に挿入するために必ずしも必要となるものではない。このため、たとえば、挿入器本体5におけるレンズ設置部11の構造やロッド10の先端構造を工夫することにより、ロッド10で眼内レンズ4を押し出すだけで所望の形状に折り畳むことができるようであれば、スライダ6を設ける必要はない。
【符号の説明】
【0121】
1…眼内レンズ挿入器
4…眼内レンズ
5…挿入器本体
7…挿入筒
7b…ノズル部
7k…切り込み部
7m…係止爪
8…回転部材
8b…第1のネジ部
9…プランジャ
9c…第2のネジ部
10…ロッド
11…レンズ設置部
13…回転規制部
13d…抜け止め部
16…付属部材
16a…先端面
16b…係着部
16g…覗き窓
16i…テーパー部
16j…舌片
16k…係合孔
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