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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】果実由来の不溶性固形分を含む飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
A23L2/00 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021187834
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2021-11-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】豊島 明
(72)【発明者】
【氏名】山瀬 優輝
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-178053(JP,A)
【文献】特表2017-502660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0157229(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0055241(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0126193(KR,A)
【文献】特開平08-154637(JP,A)
【文献】特表2009-544544(JP,A)
【文献】特表平08-508638(JP,A)
【文献】特開2001-346557(JP,A)
【文献】特開2021-153514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0308424(US,A1)
【文献】特開平08-196250(JP,A)
【文献】特開2020-195342(JP,A)
【文献】特開2021-132546(JP,A)
【文献】特開昭53-069860(JP,A)
【文献】特開2020-039292(JP,A)
【文献】特開2010-273658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-35/00
A23F 3/00-5/50
C12G 1/00-3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分を含有し、前記果実由来の不溶性固形分の含有量が乾燥重量で0.3g/L以上20g/L以下である、前記果実由来の不溶性固形分の口残りに由来する後切れが改善された容器詰炭酸飲料。
【請求項2】
炭酸ガスボリュームが2.0VOL以上である、請求項1に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項3】
炭酸ガスボリュームが3.0VOL以上である、請求項1または2に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項4】
前記果実由来の不溶性固形分が柑橘類の果実に由来する、請求項1からのいずれか一つに記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項5】
請求項1に記載の容器詰炭酸飲料の製造方法であって、
その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分を、前記飲料に含まれる前記果実由来の不溶性固形分の含有量が乾燥重量で0.3g/L以上20g/L以下となる量で原料水に添加して分散液を得、
該分散液に炭酸ガスボリュームが2.0VOL以上となる量の炭酸ガスを含有させることを含む、前記飲料の製造方法。
【請求項6】
その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分を含有する容器詰めの飲料の前記果実由来の不溶性固形分の口残りに由来する後切れ改善方法であって、
前記飲料に炭酸ガスボリュームが2.0VOL以上となる量の炭酸ガスを含有させることを含む、後切れ改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果実由来の不溶性固形分を含む飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば果実などから得られるパルプなどの、果実に由来しており水に不溶である固形成分(以下、果実由来の不溶性固形分、または単に不溶性固形分ともいう)を配合した飲料が知られている。果実由来の不溶性固形分は例えば飲料を飲んだときに口中で感じられる食感を付与し、嗜好性を高めるのに寄与する。
パルプなどの果実由来の不溶性固形分を含有する飲料としては、例えば特許文献1~3に記載の飲料が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/146880号
【文献】特開2012-060947号公報
【文献】特開平6-335371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、果実由来の不溶性固形分を含む飲料の後切れを改善できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はパルプなどの果実由来の不溶性固形分を含有する飲料について検討を行ったところ、該飲料では、果実由来の不溶性固形分の口残りなどが原因で後切れが悪くなることに気が付いた。またそれは果実由来の不溶性固形分が大きくなるほど、その傾向が認められた。
鋭意研究の結果、発明者は、果実由来の不溶性固形分を含有する飲料を炭酸飲料とし、さらに所定の炭酸ガスボリュームとすることで後切れを改善できることを見出し、本発明を完成させた。
なお、本明細書において、後切れとは、飲料を飲用した後に感じられる、果実由来の不溶性固形分の口残りなどに由来する不快な呈味が消えていく感覚を意味する。後切れが改善されるとは、飲料を飲用した後に感じられる不快な呈味がより速く消えていくことを指す。
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分を含有する容器詰炭酸飲料。
[2]
炭酸ガスボリュームが2.0VOL以上である、[1]に記載の容器詰炭酸飲料。
[3]
炭酸ガスボリュームが3.0VOL以上である、[1]または[2]に記載の容器詰炭酸飲料。
[4]
前記炭酸飲料に含まれる前記果実由来の不溶性固形分の含有量が乾燥重量で0.3g/L以上20g/L以下である、[1]から[3]のいずれか一つに記載の容器詰炭酸飲料。
[5]
前記果実由来の不溶性固形分が柑橘類の果実に由来する、[1]から[4]のいずれか一つに記載の容器詰炭酸飲料。
[6]
その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分を含有する容器詰めの飲料の製造方法であって、
その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分を原料水に添加して分散液を得、
該分散液に炭酸ガスボリュームが2.0VOL以上となる量の炭酸ガスを含有させることを含む、前記飲料の製造方法。
[7]
その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分を含有する容器詰めの飲料の後切れ改善方法であって、
前記飲料に炭酸ガスボリュームが2.0VOL以上となる量の炭酸ガスを含有させることを含む、後切れ改善方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、果実由来の不溶性固形分を含む飲料の後切れを改善できる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態は、果実由来の不溶性固形分を含む飲料の、飲んだときの後切れの改善に関する。
【0009】
本実施形態に係る果実由来の不溶性固形分とは、果物の果肉や果皮などに由来する水に不溶である成分をいい、特にその形状等は限定されない。果実由来の不溶性固形分は、例えば、果皮(柑橘類果実の場合、アルベドやフラベドなど)や果肉(柑橘類果実の場合、さのう、じょうのう、じょうのう膜など)等に由来する。
好ましい果実由来の不溶性固形分としては、パルプを挙げることができる。パルプとは果実から破砕処理を経て得られる固形分をいう。パルプとして、例えば、果実を破砕し、果汁等の液状成分を篩別及び/又は遠心分離により分離して得られる果汁中に含まれる水に不溶の固形分や、果実から果汁を搾汁した後に得られる果汁残渣を細砕して得られる水に不溶の固形分等を挙げることができる。具体的なパルプの例としては、果実が柑橘類果実の場合には、上述のアルベド、フラベド、さのう、じょうのう、じょうのう膜等を破砕したものなどが挙げられる。
【0010】
本実施形態においては、飲料を炭酸飲料とし、その炭酸ガスボリュームを2.0以上とすることが好ましい。本明細書において炭酸飲料とは、飲料中に溶存している二酸化炭素(炭酸ガス)を含有する飲料をいう。
【0011】
ここで、炭酸ガスボリューム[vol]とは、1気圧、20℃における、炭酸飲料の体積に対する、炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの体積の比を指す。炭酸ガスボリュームは、例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500A)を用いて測定することができる。具体的には、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値から算出することで炭酸ガスボリュームを得ることができる。
【0012】
本実施形態においては、炭酸ガスボリュームは2.0以上であればよいが、後切れのさらなる改善の観点から、3.0以上が好ましく、3.0以上5.0以下であることがより好ましく、4.0以上5.0以下であることがさらにより好ましい。
【0013】
本実施形態によれば、上述のとおり飲んだときの後切れが改善されるので、例えば、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分を含有する炭酸飲料の提供が可能となる(以下、該飲料を本実施形態に係る飲料、ともいう)。
【0014】
本明細書において、目開きとは、メッシュ(金属製網ふるい)に係るJIS Z8801-1:2019に基づく公称目開きを意味する。
【0015】
また、本明細書において、90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過する、とは、飲料に含まれる果実由来の不溶性固形分を目開き4.75mm、Φ150mmのメッシュに均等に広げ、シャワー状の流水をパルプに均等に当たるよう70ml/秒の流量で60秒間流した際に、乾燥重量換算で90重量%以上の不溶性固形分が通過することをいう。
また、本明細書において、50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない、とは、同様に、飲料に含まれる果実由来の不溶性固形分を目開き1.7mm、Φ150mmのメッシュに均等に広げ、シャワー状の流水をパルプに均等に当たるよう70ml/秒の流量で60秒間流した際に、乾燥重量換算で50重量%以上(好ましくは70重量%以上)の不溶性固形分が通過せずメッシュ上に残っていることをいう。
なお、上記測定に行うにあたっては、まず、十分に網目の細かいメッシュ(例えば、目開き425μm、Φ150mmのメッシュ)を用いて果実由来の不溶性固形分を飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこんで、残付着している糖分などを完全に洗い流してから測定に供する。
【0016】
本実施形態の構成を適用することで後切れをより改善することができるため、本実施形態に係る飲料に含まれる果実由来の不溶性固形分の含有量は、乾燥重量で0.3g/L以上20g/L以下であることが好ましく、より好ましくは3.0g/L以上12g/L以下である。
なお、飲料に含まれる果実由来の不溶性固形分の含有量は、上述の方法で得ることができる。すなわち、果実由来の不溶性固形分を十分に網目の細かいメッシュ(例えば、目開き425μm、Φ150mmのメッシュ)を用いて飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこみ、次いで乾燥させ、この重量を測定して得ることができる。
また、本明細書において、不溶性固形分の乾燥とは、不溶性固形分から水分を100%除去した状態にすることをいい、例えば、不溶性固形分を60℃4日間静置する方法が挙げられる。
【0017】
その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分は公知の方法により調製することができる。また、本実施形態の構成を適用することでより後切れを改善することができるため、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分は柑橘類の果実に由来することが好ましい。
【0018】
本明細書において柑橘類とは、ミカン科ミカン亜科に属する植物の果実を意味する。具体的な柑橘類としては、オレンジ(ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、ブラッドオレンジなど)、うんしゅうみかん、マンダリンオレンジ、ぽんかん、紀州みかん、アンコール、ダンゼリン、コウジ、シークワーサー、タチバナ、不知火などのみかん類、ナツダイダイ、はっさく、ヒュウガナツ、サンボウカン、河内晩柑、キヌカワ、ナルトなどの雑柑類、タンカン、いよかん、マーコット、清見、オーランド、ミネオラ、セミノール等のタンゴール・タンゼロ類、メキシカンライム、タヒチライム等のライム類、リスボンレモン、ユーレカレモン、ディアマンテ、エトローグ等のレモン類、バンペイユ、土佐ブンタン等のブンタン、ダンカン、マーシュ、トムソン、ルビーレッド等のグレープフルーツ類、ゆず、カボス、スダチ、ハナユ、キズ等のユズ類、キンカン、カラタチが挙げられる。
【0019】
本実施形態に係る炭酸飲料は、本発明の目的を達成できる範囲で他の成分を含有してもよく、特に限定されない。例えば、本実施形態の飲料は果汁を含有してもよい。果汁を含む場合の果汁含有率については特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
なお、本明細書において、果汁とは、果実を破砕して搾汁又は裏ごし等をし、必要に応じて皮、種子等を除去した液体成分をいう。また、本明細書に係る果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれる概念である。また、果汁を含有したフルーツソース等の加工品を用いることもできる。
また、果汁含有率とは、果実等の食用部分を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない搾汁(ストレート果汁)のBrix値または酸度を100%としたときの相対濃度である。また、Brix値は、JAS規格に基づき、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。Brix値の測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。また、酸度は、100g中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100g)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。果汁含有率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果物の種類ごとに定められている。例えば、オレンジやグレープフルーツはBrix値に基づいて算出され、レモンは酸度に基づいて算出される。果汁含有率をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。
【0020】
また、果汁以外のその他の原料としては、例えば、糖類および高甘味度甘味料といった甘味料、食塩、抗酸化剤、酸味料、pH調整剤、香料、色素、エキス、ビタミン類、アミノ酸、食物繊維、消泡剤などが挙げられる。
なお、本実施形態に係る飲料においてpHは特に限定されず、例えば2.0~6.0であり、好ましくは2.5~4.0とすることができる。
【0021】
本実施形態に係る飲料は、例えば、原料水に、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しないパルプなどの果実由来の不溶性固形分、必要に応じて加えられるその他の成分を添加するとともに、飲料中に二酸化炭素を溶存させ、炭酸ガスボリュームを2.0以上とする処理を行うことで製造することができる。不溶性固形分その他必要に応じて添加される成分を添加する方法や順序などは特に限定されず、当行者が適宜設定できる。上記の原料水は、水自体のほか、含有されるその他の成分の溶液等であってもよい。
また、不溶性固形分は、単独で配合されても、また、他の含有成分と共に配合されるようにしてもよく、特に限定されない。
また、飲料中に二酸化炭素を溶存させる処理も特に限定されず、例えば、原料水にパルプを分散させて分散液を調製し、該分散液に二酸化炭素を溶存させた水を混合して炭酸飲料とする方法(ポストミックス法)や、上述の分散液に二酸化炭素を直接噴き込んで溶解させる方法(プレミックス法)が挙げられる。炭酸ガスボリュームを2.0以上とするにあたっては飲料中に溶存させる二酸化炭素量を調整するなどすればよい。
【0022】
本実施形態に係る飲料は、容器に封入された容器詰飲料とすることができる。
容器への封入方法などは特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。
容器も炭酸飲料に用いられる公知のものを適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、ビン、ペットボトル等のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶などが挙げられる。
【0023】
以上、本実施形態によれば、パルプを含む飲料を飲んだときの後切れを改善することができる。そのため、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しないパルプを含む新規な飲料についても提供することができる。
【実施例
【0024】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
[第1の試験(参考)]
糖酸液(果糖ぶどう糖液糖、クエン酸に加水して得られる溶液)に製造過程で目開き5mmのメッシュを通過させたオレンジの果実由来のパルプを表1に示す含有量(乾燥重量)で分散させた。該分散液を500ml用のペットボトルに封入し、参考例1~4の容器詰飲料(500ml)を得た。
また、糖酸液については、表中に示す所定の糖度(Bx)、酸度となるようにパルプ量に応じて果糖ぶどう糖液糖、クエン酸の量を調整した。
【0026】
各飲料に含まれるパルプについて、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、その50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しないパルプであることを確認した。
具体的には、まず、目開き425μm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径0.28mm)を用いてパルプを飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこみ、残付着している糖分などを洗い流した。次いで該パルプを乾燥させ、各飲料に含まれるパルプの乾燥重量を得た。
同じ飲料を用意し、目開き425μm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径0.28mm)を用いてパルプを飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこみ、残付着している糖分などを洗い流した。分離されたパルプを目開き4.75mm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径1.6mm)に均等に広げ、シャワー状(339穴のシャワーヘッドを使用)の流水をパルプに均等に当たるよう70ml/秒の流量で60秒間流した後、乾燥させた。乾燥重量換算で各飲料に含まれるパルプの乾燥重量に対して、90重量%以上のパルプが通過したことを確認した。
また、同様に、同じ飲料を用意し、目開き425μm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径0.28mm)を用いてパルプを飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこみ、残付着している糖分などを洗い流した。分離されたパルプを目開き1.7mm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径0.8mm)に均等に広げ、シャワー状(339穴のシャワーヘッドを使用)の流水をパルプに均等に当たるよう70ml/秒の流量で60秒間流した後、乾燥させた。乾燥重量換算で各飲料に含まれるパルプの乾燥重量に対して、80重量%以上のパルプが通過せずメッシュ上に残っていたことを確認した。
なお、上記確認においては3回測定した平均値に基づき確認を行った。また、乾燥は60℃、4日間の条件下に得られたパルプを置くことによって行った。
表1中、乾燥重量(g/L)とは、飲料から上述の目開き425μm、Φ(内径)150mmのメッシュを用いた分離処理、洗いこみ処理および乾燥処理を経て得られた、乾燥している状態にある不溶性固形分の重量を意味する(表7、9も同様である)。この値を上記確認において乾燥重量換算での100重量%とした。
【0027】
得られた飲料について、「おいしさ」「後切れの良さ」「果実感の強さ」および「果実の食感の強さ」の4項目を、評価パネル6名による官能試験で評価した。コントロールの点数を4点とし、1~7点の7段階で評点をつけた。7段階評価の採点基準は以下の通りである。
なお、本明細書において、果実感の強さとは果実を食べたときの食感や味、香りなどを想起させる感覚をいい、果実の食感の強さとは果実由来の成分に由来する、食べたときの食感(口の中や喉で得られる感覚)の強さをいう。
【0028】
7段階評価 1点:コントロールと比べ非常に弱い(非常に悪い)、2点:コントロールと比べ弱い(悪い)、3点:コントロールと比べ少し弱い(少し悪い)、4点:コントロールと同等、5点:コントロールと比べ少し強い(少し良い)、6点:コントロールと比べ強い(良い)、7点:コントロールと比べ非常に強い(非常に良い)
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表2に示した試験例1の結果から、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、その50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しないパルプを含有すると、飲料の後切れが低下することが理解できる。
【0032】
[第2の試験(参考)]
糖酸液にオレンジ混濁果汁(添加前に目開き0.8mmのメッシュを通過させた)を添加し、得られた混合液を500ml用のペットボトルに封入して参考例5の容器詰飲料(500ml)を得た。得られた飲料について第1の試験と同様の官能試験を行った。
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
[第3の試験(参考)]
糖酸液にオレンジ透明果汁(添加前に目開き75μmのメッシュを通過させた)を添加し、得られた混合液を500ml用のペットボトルに封入して参考例6の容器詰飲料(500ml)を得た。得られた飲料について第1の試験と同様の官能試験を行った。
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
[第4の試験]
糖酸液にオレンジの果実由来のパルプを添加するとともに、ポストミックス法により炭酸ガスを含有させ、500ml用のペットボトルに封入して実施例1~3の容器詰飲料(500ml)を得た。
なお、第1の試験と同様の方法で、使用したパルプについて、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、その80重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しないパルプであることを確認した。
【0039】
得られた飲料について第1の試験と同様の官能試験を行った。
【0040】
【表7】
【0041】
【表8】
【0042】
表8から理解できるとおり、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、その50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しないパルプを含有する場合にも、炭酸ガスボリュームが2.0以上である炭酸飲料とすることで、後切れを改善することができる。
【0043】
[第5の試験]
糖酸液にオレンジの果実由来のパルプを添加するとともに、ポストミックス法により炭酸ガスを含有させ、500ml用のペットボトルに封入して実施例4~6の飲料を得た。パルプの含有量は表9に示す量とした。
なお、第1の試験と同様の方法で、使用したパルプについて、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、その80重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しないパルプであることを確認した。
【0044】
得られた飲料について、第1の試験と同様の官能試験を行った。また、パルプが同じ含有量であり、炭酸ガス添加を行っていない比較例の飲料を対照として用いた。
【0045】
【表9】
【0046】
【表10】
【0047】
表10から理解できるとおり、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、その50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しないパルプを含有しており、且つパルプを乾燥重量で0.3g/L以上20g/L以下含有することで、後切れについて改善でき、おいしさも高めることができる。
【要約】
【課題】果実由来の不溶性固形分を含む飲料の後切れを改善できる新規な技術を提供する。
【解決手段】 その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分を含有する容器詰炭酸飲料。
【選択図】なし