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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】面材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20221121BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221121BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20221121BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
E04F13/08 E
B32B27/00 E
B32B27/20 Z
B32B3/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021208543
(22)【出願日】2021-12-22
(62)【分割の表示】P 2017178426の分割
【原出願日】2017-09-16
(65)【公開番号】P2022037180
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2016182441
(32)【優先日】2016-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理人
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真人
(72)【発明者】
【氏名】砂元 美紀
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3139241(JP,U)
【文献】特開2013-240749(JP,A)
【文献】特開2000-117188(JP,A)
【文献】特開2011-140234(JP,A)
【文献】特開平04-319167(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201228(JP,U)
【文献】実開平5-80746(JP,U)
【文献】特開2015-54704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
B32B 27/00
B32B 27/20
B32B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色層を有する面材であって、
上記着色層は、異なる色調を有する複数の着色領域を有し、
上記異なる色調を有する複数の着色領域における各着色領域は、それぞれ、粒状無機質粒子によって形成されてなり、
上記粒状無機質粒子の粒径が0.01mm~0.8mmであり、
上記粒状無機質粒子は、粒状着色無機質粒子を含み、
上記各着色領域が互いに高低差を有することによって、上記着色層が表面凹凸を有し、
凹部を構成する着色領域と、凸部を構成する着色領域とでは、光沢度が異なり、
凸部を構成する着色領域の粒状無機質粒子は、凹部を構成する着色領域の粒状無機質粒子よりも、粒度が小さい、
ことを特徴とする面材。
【請求項2】
前記凸部を構成する着色領域におけるP値は、0.8以上10以下、前記凹部を構成する着色領域におけるP値は、0.1以上0.8未満であることを特徴とする請求項1記載の面材。
(P=(150μm未満の粒状無機質粒子の重量割合)/(150μm以上の粒状無機質粒子の重量割合))
【請求項3】
上記表面凹凸の高低差が3mm以下であることを特徴とする請求項1記載の面材。
【請求項4】
上記各着色領域は、2種以上の粒状無機質粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の面材。
【請求項5】
上記各着色領域は、粒状着色無機質粒子及び粒状透明性無機質粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な面材に関する。本発明面材は、建築物、土木構造物等の表面被覆に適用することができ、具体的には建築物壁面の模様仕上げ等に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
建築物壁面等においては、景観上の観点から美観性が求められている。近年、このような観点から、例えば天然の石、土、植物等をイメージした模様仕上げが注目されている。
【0003】
このような模様仕上げとして、例えば、特許文献1には、基材上に下地塗膜を設け、その上に模様転写シートを押しつけて模様を転写する方法が記載されている。また、特許文献2には、被塗装面にベース色塗装を行った後、水を吹き付け、次いで多数の塗料滴を吹き付ける方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-290769号公報
【文献】特開2005-238138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、特許文献2のような方法によれば、複数の異なる色の着色材を使用することができるため、多色模様を形成することが可能である。しかしながら、形成された多色模様は平面的であり、変化に乏しく、立体感等を表現することは難しい。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、立体感等による美観性を有する面材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、着色層として特定の着色領域を複数備えた面材に想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.着色層を有する面材であって、
上記着色層は、異なる色調を有する複数の着色領域を有し、
上記異なる色調を有する複数の着色領域における各着色領域は、それぞれ、粒状無機質粒子によって形成されてなり、
上記粒状無機質粒子の粒径が0.01mm~0.8mmであり、
上記粒状無機質粒子は、粒状着色無機質粒子を含み、
上記各着色領域が互いに高低差を有することによって、上記着色層が表面凹凸を有し、
凹部を構成する着色領域と、凸部を構成する着色領域とでは、光沢度が異なり、
凸部を構成する着色領域の粒状無機質粒子は、凹部を構成する着色領域の粒状無機質粒子よりも、粒度が小さい、
ことを特徴とする面材。
2.前記凸部を構成する着色領域におけるP値は、0.8以上10以下、前記凹部を構成する着色領域におけるP値は、0.1以上0.8未満であることを特徴とする1.記載の面材。
(P=(150μm未満の粒状無機質粒子の重量割合)/(150μm以上の粒状無機質粒子の重量割合))
3.上記表面凹凸の高低差が3mm以下であることを特徴とする1.記載の面材。
4.上記各着色領域は、2種以上の粒状無機質粒子を含むことを特徴とする1.記載の面材。
5.上記各着色領域は、粒状着色無機質粒子及び粒状透明性無機質粒子を含むことを特徴とする1.記載の面材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、立体感等による美観性を有する面材が得られる。本発明では、筋状、島状等の着色模様を表現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明面材の一例を示す平面模式図である。
図2】本発明面材の一例を示す断面模式図である。
図3】本発明面材の一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0011】
1:着色層
11:第1着色層
12:第2着色層
A:着色領域A
B:着色領域B
2:透明被膜層
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明面材の一例を示す平面模式図であり、本発明面材を表側(正面)から見た状態を示している。図2は、本発明面材の一例を示す断面模式図である。
【0014】
図1及び2に示すように、本発明面材は、着色層1を有しており、この着色層1を表側から見ると、異なる色調を有する複数の着色領域(着色領域A、着色領域B)を有している。各着色領域は、それぞれ、粒状無機質粒子によって形成されてなるものである。そして、図2に示すように、各着色領域(着色領域A、着色領域B)は、互いに高低差を有しており、これにより着色層1は表面凹凸を有するものとなる。さらに、本発明では、凹部を構成する着色領域(着色領域A)と、凸部を構成する着色領域(着色領域B)とで、光沢度が異なっている。
【0015】
このような特徴を有する本発明面材では、凹部と凸部との色調及び光沢度の相違によって、実際の凹凸よりも強調されたコントラスト、凹凸感、立体感等を表現することができる。
【0016】
着色層は、異なる色調を有する複数の着色領域を有する。図1及び2では、着色領域Aと、着色領域Bが形成されており、これら着色領域の色調が異なっている。これにより、着色領域Aと着色領域Bとの間に、コントラストを付与することができる。各着色領域の色差は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。なお、本発明において、各着色領域の色調は、色彩色差計で測定したL、a、b値(無作為に選定した10点の平均)で表される。色差は、各部位のL、a、b値から算出される△E値である。
【0017】
各着色領域は、それぞれ、粒状無機質粒子によって形成されてなる。すなわち、各着色領域の色調は、それぞれの着色領域を構成する粒状無機質粒子の色調にもとづくものとなる。このような着色領域は、例えば、粒状無機質粒子、及び樹脂を含む組成物(着色領域A用組成物、着色領域B用組成物等)を硬化させることより形成できる。これにより、粒状無機質粒子が樹脂によって固定化され、粒状無機質粒子にもとづく色調を呈する着色層が得られる。
【0018】
粒状無機質粒子としては、その母体の材質が無機質であれば、天然品、人工品のいずれも使用することができる。この粒状無機質粒子としては、少なくとも粒状着色無機質粒子を含む態様である。このような粒状着色無機質粒子としては、特に、光透過率が3%未満の不透明なものが好適であり、光透過率が2%以下のものがより好適である。このような粒状着色無機質粒子として、具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、砂岩、粘板岩、玄武岩、斑れい岩、閃緑岩、安山岩、石灰岩及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、金属粒等が挙げられる。また、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂、及びこれらの粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ等を、上記条件を満たすように着色したもの等も使用できる。
【0019】
上記光透過率とは、濁度計による全光線透過率の値である。この測定では、粒状無機質粒子の試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
【0020】
各着色領域は、上記粒状着色無機質粒子に加えて、粒状透明性無機質粒子を含む形態とすることもできる。このような粒状透明性無機質粒子の使用は、美観性向上の点で好適である。粒状透明性無機質粒子としては、光透過率が3%以上(より好ましくは3~50%、さらに好ましくは10~30%)であるものが好適である。粒状透明性無機質粒子としては、例えばシリカ、寒水石、長石、珪石等及びこれらの粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ等が挙げられ、上記光透過率を満たすものであれば、無色、有色のいずれのタイプも使用できる。
【0021】
粒状無機質粒子の粒径は、好ましくは0.01mm~5mm、より好ましくは0.02mm~2mm、さらに好ましくは0.03~0.8mmである。粒径が異なる粒状無機質粒子を種々組み合せることによって、意匠性の幅を広げることもできる。なお、粒状無機質粒子の粒径は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いたふるい分けによって測定される。
【0022】
粒状無機質粒子を固定化する樹脂は、その被膜が透明性を有するものが好適である。このような樹脂の形態としては、例えば、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、水分散型樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。このような樹脂は、架橋反応を生じる性質を有するものであってもよい。
【0023】
上記樹脂の比率は、固形分換算で、粒状無機質粒子の合計量100重量部に対し、好ましくは3重量部以上50重量部以下、より好ましくは4重量部以上30重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上20重量部以下、特に好ましくは6重量部以上19重量部以下である。このような比率であれば、粒状無機質粒子の連接(凝集)による美観を活かした意匠性が付与されやすい。すなわち、粒状無機質粒子の連接体(凝集体)からなる着色領域が得られやすい。
【0024】
各着色領域を形成する組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、必要に応じ、上記以外の成分(添加剤)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、吸着剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、架橋剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料、骨材、繊維、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0025】
各着色領域は、それぞれ、並置混色による色調を呈することが望ましい。並置混色とは、観察者が一定距離以上離れて色を見た場合に、並置させた複数の色が個々に識別されずに混じり合って見えることである。本発明では、顔料、染料等を用いた混色ではなく、2種(2色)以上の粒状無機質粒子による並置混色を採用することで、自然感等を高めることができる。
【0026】
本発明面材は、上記各着色領域が互いに高低差を有することによって、着色層が表面凹凸を有する。図2では、着色領域Aを構成する第1着色層11の上に、着色領域Bを構成する第2着色層12が非連続的に積層されている。これにより、着色領域Aが凹部、着色領域Bが凸部を形成している。
【0027】
各着色領域の間に生じる高低差は、所望の美観性に応じ適宜設定すればよく、好ましくは3mm以下、より好ましくは0.05~2mm、さらに好ましくは0.1~1mmである。本発明では、このように比較的小さな高低差であっても、十分な凹凸感、立体感等を得ることができる。なお、上記高低差は、凹部の底面から、凸部頂点までの平均高低差(無作為に選定した10点の平均)を算出した値である。
【0028】
本発明面材は、上記凹部を構成する着色領域と、上記凸部を構成する着色領域との光沢度が異なる。図1及び2では、着色領域Aと着色領域Bとの光沢度が異なっている。これにより、凹凸感、立体感等を強調することができる。具体的な態様としては、例えば、相対的に、凹部が高光沢度であって、凸部が低光沢度である態様、あるいは、凹部が低光沢度であって、凸部が高光沢度である態様、等が挙げられる。このような相対的な光沢度の差は、例えば、各着色領域におけるミクロンオーダーの表面状態が異なるように調整すること等によって設けることができる。
【0029】
具体的に、各着色領域の光沢度は、例えば、各着色領域において、粒状無機質粒子の粒度を調整する方法、粒状無機質粒子に対する樹脂の比率を調整する方法、粒状無機質粒子上(着色領域表面側)の樹脂厚みを調整する方法等によって設定することができる。
【0030】
各着色領域の光沢度の差は、立体感表出等の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。光沢度の差の上限値は、特に限定されないが、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下である。光沢度の差の上限値がこのような範囲内であれば、立体感等を表出しつつ、落ち着きがあり、上品な美観性を付与することができる。なお、各着色領域の光沢度が同じであると、凹凸による意匠性が表出されるのみとなり、本発明のような効果は得られ難い。
【0031】
各着色領域のうち、低光沢度の着色領域は、その光沢度が好ましくは10以下、より好ましくは0.1以上8以下である。高光沢度の着色領域は、低光沢度の着色領域よりも相対的に光沢度が高い状態であればよいが、その光沢度は3以上であることが好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上30以下である。なお、本発明における光沢度は、光沢度計によって測定される85度鏡面光沢度の値である。
【0032】
本発明において、凸部を構成する着色領域(図1及び2では着色領域B)の粒状無機質粒子は、凹部を構成する着色領域(図1及び2では着色領域A)の粒状無機質粒子よりも、粒度が小さいことが望ましい。このような態様であれば、着色領域Bの厚みが小さい場合であっても、十分な発色性、隠蔽性等を得ることができる。すなわち、着色領域Bが薄い場合であっても、着色領域Aとのコントラストを十分に表現することができる。また、着色領域Aと着色領域Bとの光沢度差が設けやすくなり、凹凸感、立体感等表出の点で好適である。さらに、非連続的な着色領域B(第2着色層12)に対し、連続的な着色領域A(第1着色層11)を相対的に柔軟にすることができ、面材の可とう性向上等の点でも有利である。
【0033】
ここで「粒度が小さい」とは、小粒径の粒子が相対的に多く存在する状態を示す。この状態は、「150μm未満の粒状無機質粒子の重量割合」を「150μm以上の粒状無機質粒子の重量割合」で除した値「P」(以下単に「P」または「P値」ともいう)、すなわち、P=(150μm未満の粒状無機質粒子の重量割合)/(150μm以上の粒状無機質粒子の重量割合)にて示すことができる。本発明では、凸部を構成する着色領域(図1及び2では着色領域B)におけるP値が、凹部を構成する着色領域(図1及び2では着色領域A)のP値よりも大きいことが望ましい。凸部を構成する着色領域におけるP値は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上10以下である。凹部を構成する着色領域におけるP値は、好ましくは0.8未満、より好ましくは0.1以上0.7以下である。
【0034】
本発明では、例えば、筋状、島状等の各種模様を形成することができる。各着色領域の形状、配置、数、幅、高低差、厚み、面積等は、所望の模様に応じて適宜設定すればよい。図1及び2では、着色領域Bによって筋状の模様が形成されている。本発明では、例えば、岩石や木材等の模様を表現することもできる。
【0035】
着色層の厚みは、好ましくは、好ましくは0.3~6mm、より好ましくは0.5~5mmである。
【0036】
本発明面材は、図3に示すように透明被膜層を有するものであってもよい。このような透明被膜層は、着色層の表面(好ましくは着色層の表面全体)に設けることができる。透明被膜層は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂等、あるいはこれらの複合物等の樹脂を含む透明被覆材によって形成できる。このような透明被覆材は、例えば、撥水剤、親水化剤、艶消し剤、着色顔料等を含むものであってもよい。透明被覆材が着色顔料を含む場合は、着色透明被膜層が形成できる。
【0037】
本発明では、このような透明被膜層を設けることにより、着色層の表面凹凸を保持しつつ、耐候性、耐久性等を高めることができ、各着色領域の光沢度を調整することも可能である。透明被膜層の単位面積当たりの重量は、好ましくは5~200g/m、より好ましくは10~100g/mである。透明被膜層の単位面積当たりの重量は、各着色領域で異なっていてもよく、これにより、粒状無機質粒子上(着色領域表面側)の樹脂厚み、各着色領域の光沢度等を調整することもできる。
【0038】
本発明では、上記凸部を構成する着色領域(図1及び2では着色領域B)の粒状無機質粒子が、上記凹部を構成する着色領域(図1及び2では着色領域A)の粒状無機質粒子よりも粒度が小さくなるように設定し、かつ、着色層全面に上記透明被膜を設けた態様が、好適な態様として挙げられる。
【0039】
本発明面材は、補強材を有するものであってもよい。このような補強材は、着色層の内部及び/または裏面に設けることができる。補強材としては、例えば、織布、不織布、セラミックペーパー、合成紙、メッシュ、クロス、石膏ボード、合板、スレート板、金属板等が挙げられる。補強材は、上記2種以上の材料からなるものでもよい。このような補強材を用いることにより、面材の強度等を高めることができる。
【0040】
本発明面材の製造方法は特に限定されず、種々の方法を採用することができる。一例として、型枠を用いた方法が挙げられる。この方法では、まず所望の模様に対応した凹凸を形成した型枠を用意する。そして、この型枠内に、着色領域B用組成物、着色領域A用組成物を順に充填または塗付し、硬化後に脱型すればよい。各組成物の充填または塗付においては、公知の器具、例えば、スプレー、ローラー、鏝、レシプロ、コーター等が使用できる。透明被膜層を設ける場合は、例えば、脱型後の着色層表面に透明被覆材を塗装すればよい。補強材を導入する場合は、例えば、着色領域A用組成物(第1着色層11)の硬化前に、着色層内部に補強材を埋め込んだり、着色層裏面に補強材を積層したりすればよい。
【0041】
具体的に、図2に示す面材は、例えば以下の方法によって製造できる。
(1)粒状無機質粒子と、樹脂と、必要に応じ添加剤とを常法により混合・攪拌することによって、着色領域A用組成物、着色領域B用組成物をそれぞれ製造する。
(2)内面に所望の凹凸模様を有する型枠を用意し、その凹部に着色領域B用組成物を充填し、次いで全体に着色領域A用組成物を充填し、硬化後に脱型する。
【0042】
図3に示す面材は、上記(1)、(2)の後、例えば(3)として、脱型後の着色層表面に透明被覆材を塗付・乾燥し透明被膜層を設ける、ことによって製造できる。
【0043】
以上の方法で得られた面材は、型枠内面の凹凸が反転し、着色領域A用組成物による着色領域Aが凹部、着色領域B用組成物による着色領域Bが凸部を形成し、コントラスト、立体感等を備えた美観性を発揮することができる。
【0044】
例えば、着色領域A用組成物として、粒状着色無機質粒子の混合物(茶色珪砂と赤褐色珪砂の混合物、粒径0.03~0.6mm、光透過率1%未満)80重量部、粒状透明性無機質粒子(寒水石;粒径0.1~0.4mm、光透過率16%)20重量部、樹脂成分(アクリル樹脂エマルション、固形分50重量%)30重量部を含み、粒状無機質粒子のP値が0.3である組成物、着色領域B用組成物として、粒状着色無機質粒子の混合物(黄色珪砂と淡褐色珪砂の混合物、粒径0.03~0.4mm、光透過率1%未満)80重量部、粒状透明性無機質粒子(寒水石;粒径0.03~0.3mm、光透過率16%)20重量部、樹脂成分(アクリル樹脂エマルション、固形分50重量%)30重量部を含み、粒状無機質粒子のP値が1.5である組成物を使用する。型枠として、複数の筋状の凹凸(高低差0.5mm)を有する方形の型枠を使用する。そして、アクリルシリコン樹脂系透明被覆材によって、透明被膜層(単位面積当たりの重量40g/m)を設ける。このような場合、着色領域Aと着色領域Bとの色差18、着色領域Aと着色領域Bとの高低差0.5mm、着色領域Bの最大厚み0.5mm、着色領域Aの光沢度4、着色領域Bの光沢度11である面材が得られ、優れたコントラスト、立体感等を表出することができる。
【0045】
ここで、粒状無機質粒子の種類、粒径、光透過率、樹脂の種類、粒状無機質粒子と樹脂との比率、各着色領域におけるP値、透明被覆層の種類、単位体積当たりの重量等は、本発明における前述の条件(着色領域Aと着色領域Bの色調、光沢度等)を満たす限り、適宜変更することができる。
【0046】
本発明面材は、建築物壁面等を装飾する材料として使用できる。本発明面材を壁面等に固定する際には、例えば、接着材、接着テープ、釘、ネジ、ボルト、レール等を使用すればよい。建築物壁面等を構成する基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、合板、煉瓦、プラスチック板、金属板、ガラス、磁器タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜(既存被膜、下塗被膜等)が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
図1
図2
図3