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特許7179954ガスタービン燃焼部におけるフラッシュバックの音響検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼部におけるフラッシュバックの音響検出
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/00 20060101AFI20221121BHJP
   F23N 5/16 20060101ALI20221121BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20221121BHJP
   G01M 15/14 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
F02C9/00 B
F23N5/16
F23R3/28 Z
G01M15/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021502969
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2018043454
(87)【国際公開番号】W WO2020023020
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】マッコンキー,ジョシュア エス.
(72)【発明者】
【氏名】ツイ,タオ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-261434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0076698(US,A1)
【文献】特表2015-534618(JP,A)
【文献】特開2010-169384(JP,A)
【文献】特開平08-177530(JP,A)
【文献】特開2005-188514(JP,A)
【文献】特開2005-048993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/00
F02C 9/28
F23N 5/16
F23R 3/28
G01M 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(10)において燃焼器フラッシュバックを検出する方法であって、
炎管(55)を有する燃焼部(20)において火炎の圧力影響ゾーンに動圧センサ(100)を配置し、
前記ガスタービンエンジン(10)に燃料流を送り、
前記ガスタービンエンジン(10)を作動させて前記炎管(55)の出口からゼロではない間隔離れた火炎面をもつ火炎を確立し、
前記炎管(55)近傍の圧力変化を前記動圧センサ(100)により検出して圧力信号を発生し、
前記動圧センサ(100)により提供される前記圧力信号の特徴を監視し、
該圧力信号において、時間と共に周波数が増加する振幅の増加をフラッシュバック徴候として検出し、
該フラッシュバック徴候の検出に基づいて前記燃料流を変化させる、ことを含む方法。
【請求項2】
前記燃焼部(20)は、複数の別個の燃焼器バスケット(60)を含み、
前記動圧センサ(100)は、前記燃焼器バスケット(60)のうちの第1の燃焼器バスケットにおいて圧力変化を検出するように配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎管(55)は、前記第1の燃焼器バスケット(60)の中に配置されており、
前記燃焼器バスケット(60)の各々が前記炎管(55)を少なくとも1つ含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の燃焼器バスケット(60)が前記炎管(55)を複数個含んでおり、
前記動圧センサ(100)は、前記複数の炎管(55)のそれぞれから同時に圧力変化を検出する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
複数の前記燃焼器バスケット(60)のそれぞれの近傍に振動センサ(140)を配置することをさらに含み、
該振動センサ(140)の各々は、対応する前記燃焼器バスケット(60)の振動をぞれぞれ測定して該測定振動を表す信号を発生する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記振動センサ(140)の間で前記測定振動を比較し、
1つの前記振動センサ(140)による前記測定振動であって他の前記測定振動にない測定振動を特定すること、をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の燃焼器バスケット(60)の近傍に第2の動圧センサ(110)を配置して、前記第1の燃焼器バスケット(60)において複数の前記炎管(55)近傍の圧力変化を検出し、
前記動圧センサ(100)及び前記第2の動圧センサ(110)からの圧力信号に基づいて、複数の前記炎管(55)のいずれかに圧力変化が発生しているか判定する、ことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料流を変化させるときに、前記燃料流をゼロまで低減して前記ガスタービンエンジン(10)を停止させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つの燃焼器バスケット(60)と該燃焼器バスケット(60)のそれぞれにおける少なくとも1つの炎管(55)とを有する燃焼部(20)を含むガスタービンエンジン(10)においてフラッシュバックを検出する方法であって、
前記ガスタービンエンジン(10)に燃料流を送り、
前記ガスタービンエンジン(10)を作動させて各前記炎管(55)の出口(95)からゼロではない間隔離れた火炎面(85)をもつ火炎(80)を確立し、
各前記燃焼器バスケット(60)の近傍に動圧センサ(100)を配置して各前記燃焼器バスケット(60)の音響環境を監視し、
各前記燃焼器バスケット(60)の近傍に振動センサ(140)を配置して各前記燃焼器バスケット(60)の振動を測定し、
前記動圧センサ(100)による圧力信号のチャープを検出するか、又は、前記振動センサ(140)による振動信号について2つの前記燃焼器バスケット(60)間の振動信号差を検出したときに、該検出結果に基づいて前記燃料流を変化させる、ことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示するのは、概して火炎異常の検出であり、より具体的には、ガスタービンエンジンにおけるフラッシュバック等の異常の検出である。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、加圧した高温ガスを膨張させて機械的仕事を生み出す流動機械である。ガスタービンは、タービン(エキスパンダ)と、該タービンの上流に配置されたコンプレッサと、これらコンプレッサとタービンとの間の燃焼室とを含む。そのコンプレッサ部で、1つ以上のコンプレッサステージのブレード列を通して空気を圧縮する。その後、当該圧縮空気を、燃焼室において気体燃料又は液体燃料と混合し、この混合気に点火することで燃焼が始まる。燃焼により、続くタービン部で膨張する高温ガス(燃焼ガス生成物及び空気の残留成分からなる混合気)が発生し、その熱エネルギーが、軸流シャフトを駆動する過程において機械的エネルギーに変換される。該シャフトはコンプレッサに接続されておりこれを駆動する。また、シャフトは、発電機、プロペラ、又は他の回転負荷を駆動する。ジェットパワープラントの場合、熱エネルギーはさらに、ジェット推力を発生する高温ガス排気流を加速する。フラッシュバックとは、火炎面が燃料/空気流に反し逆流して炎管(又は炎筒、内筒)に接近したり接触するときにガスタービンの燃焼室で発生する異変である。
【発明の概要】
【0003】
ガスタービンエンジンにおいて燃焼器フラッシュバックを検出する方法は、炎管を有する燃焼部において火炎の圧力影響ゾーンに動圧センサを配置し、ガスタービンエンジンに燃料流を送り、ガスタービンエンジンを作動させて、炎管の出口からゼロではない間隔離れた火炎面をもつ火炎を確立する、ことを含む。本方法はさらに、炎管近傍の圧力動態を動圧センサにより検出して圧力信号を発生し、動圧センサにより提供される当該信号の特徴を監視し、この圧力信号においてフラッシュバック徴候、特に時間と共に周波数が増加する振幅の増加を検出し、該フラッシュバック徴候の検出に基づいて燃料流を変化させる、ことを含む。
【0004】
別の態様において、少なくとも2つの燃焼器バスケットと各燃焼器バスケット内の少なくとも1つの炎管とを有する燃焼部を含むガスタービンエンジンにおいてフラッシュバックを検出する方法は、ガスタービンエンジンに燃料流を送り、ガスタービンエンジンを作動させて、各炎管の出口からゼロではない間隔離れた火炎面をもつ火炎を確立し、各燃焼器バスケットの近傍に動圧センサを配置して各燃焼器バスケット内の音響環境を監視する、ことを含む。本方法はさらに、各燃焼器バスケットの近傍に振動センサを配置して各燃焼器バスケットの振動を測定し、動圧センサによる圧力信号のチャープを検出するか、又は、振動センサによる振動信号について2つの燃焼器バスケット間の振動信号差を検出したときに、該検出結果に基づいて燃料流を変化させる、ことを含む。
【0005】
別の態様において、複数の燃焼器バスケットと各燃焼器バスケット内の少なくとも1つの炎管とを有する燃焼部を含むガスタービンエンジンにおいてフラッシュバックを検出する方法は、ガスタービンエンジンを作動させて、各炎管の出口からゼロではない間隔離れた火炎面をもつ火炎を確立し、各燃焼器バスケットの近傍に振動センサを配置して各燃焼器バスケットの振動を測定する、ことを含む。本方法はさらに、複数の燃焼器バスケットの各々の測定された振動を、複数の燃焼器バスケットの残りの(その他の)各々と比較して、個々の燃焼器バスケットにおける振動現象を特定し、予め決めてある閾値を超える振動現象を含んでいる燃焼器バスケットのいずれかを識別する、ことを含む。
【0006】
以上の説明は、当業者が以下の詳細な説明をより良く理解できるように、本開示の技術的特徴を大まかに概説したものである。以下、特許請求の範囲の主題をなす、本開示の更なる特徴及び利点を説明する。当然ながら当業者は、同じ本開示の目的を実施するために、他の構造を修正又は設計するための基礎として、ここに開示する概念及び特定の実施形態を容易に使用することができることを、理解する。また、当業者とっては、そのような等価のものが最も広い態様における本開示の思想及び範囲から逸脱しないことも、自明である。
【0007】
また、以下の詳細な説明に行く前に、本明細書を通してある種の単語及び表現に対する種々の定義が提供されるが、当業者であれば、それら定義は、その定義された単語及び表現の以前及びこれからの使用に、最多ではないにしても多くの例において当てはまることが分かる、ということが理解されねばならない。用語によっては多種多様な態様を含むことがあるが、特許請求の範囲は、当該用語を特定の実施形態に明示的に限定することもあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ガスタービンエンジンの部分断面図。
図2】音響トランスデューサを含む図1のガスタービンエンジンの要部の断面図。
図3】炎管と火炎面との間の間隙を示す、炎管及び火炎の概略図。
図4】フラッシュバック異変中に少なくとも1つの動圧センサから及び少なくとも1つの熱電対から収集されたデータを示す、一群のチャート。
図5】通常動作中に振動センサから収集されたデータを示す、一群のチャート。
図6】別のフラッシュバック異変中に振動センサから収集されたデータを示す、一群のチャート。
図7】振動センサから収集された生データと、ガスタービンの2つの燃焼器バスケットに対し配置された振動センサからの生データから抽出された徴候振動レベルと、フラッシュバック異変中のフラッシュバックによる温度上昇を表す1つの熱電対からの温度データとを示す、一群のチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、当然ながら、本願において、以下の説明に記載されるか図面に図示された構成の詳細及び要素の配置に限定されない。本発明は、他の実施形態でも可能であるし、様々な態様で実現し又は実施することができる。また、当然ながら、本明細書に使用されている表現及び用語は説明を目的としたものであり、限定的なものとみなすべきではない。
【0010】
システム及び方法に関連する種々の技術について図面を参照して説明する。図中、同様の参照符号は全体を通して同様の要素を表す。以下に説明される図面、及び、この明細書において本開示の思想を説明するために使用される様々な実施形態は、単に説明のためのものであり、いかなる場合も本開示の範囲を制限すると解釈されるべきではない。本開示の思想は、適切にアレンジされたいかなる装置であっても実施可能であることを当業者であれば理解できる。あるシステム要素によって実行されるとして説明される機能は、複数の要素によって実行され得ることが、当然理解される。同様に、例えば、1つの素子は、複数の素子によって実行されるものとして説明される機能を実行するように構成されてもよい。本願の多くの革新的教示について、例示的な非限定の実施形態を参照して説明する。
【0011】
本願で使用する単語又は表現についても、ある例において明示的に限定されない限り、広く解釈されるべきであることは、当然である。例えば、「含む」、「有する/もつ」、及び「備える/からなる」、加えてそれらの派生語は、限定のない包含を意味する。単数形「a」、「an」、そして「the」は、文脈で明示されていない限り、複数形も同時に含むように意図されている。さらに、本願で使用する「及び/又は」は、それに関連して列挙された項目の1つ以上の可能な組み合わせのいずれか及びすべてに言及し、包含する。「又は」は、文脈で明示されていない限り、及び/又はの意味を包含する。「関連/付随する/結びつく」及び「それに関連/付随する/結びつく」、加えてそれらの派生語は、次の意味をもち得る:含む;含まれる;相互接続する;含有する;含有される;接続する;結合/連結する;通信可能である;協働する;インターリーブ/相互配置する;並置する;近接する/近い;固定/結合する;有する/もつ;特性/性質を有する/もつ;その他。
【0012】
「第1」、「第2」、「第3」・・・なる単語は、本願において、様々な要素、情報、機能、又は作用への言及に使用され得るが、当該要素、情報、機能、又は作用がこれらの単語によって制限されることはない。さらに言えば、これら単語の数字形容詞は、互いに異なる要素、情報、機能、又は作用を区別するために使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素、情報、機能、又は作用は、第2の要素、情報、機能、又は作用と称することもでき、同様に、第2の要素、情報、機能、又は作用は、第1の要素、情報、機能、又は作用と称することもできる。
【0013】
「隣接/近傍/近辺/近接」は、文脈で明示されていない限り、要素が、別の要素の比較的近くにあるが接触はしていないという意味であり得るし、あるいは、要素が、別の要素に接触しているという意味であり得る。さらに、「基づく」は、特に言及されていない限り、「少なくとも部分的に基づく」ことを意図している。「約」又は「ほぼ/実質的に」、又は同様の単語は、寸法に対する通常の工業生産公差内にある値の変動を含んでいることを意図している。利用可能な工業標準がない場合、20%の変動も、別途言及のない限り、これらの語の意味に入ると言える。
【0014】
図1は、コンプレッサ部15と、燃焼部20と、タービン部25とを含むガスタービンエンジン10の一例を示す。コンプレッサ部15は、複数のステージ30を含み、各ステージ30に、回転ブレードのセットと静止又は調整案内ベーンのセットとが含まれる。コンプレッサ部15は、エンジン10が大気をコンプレッサ部15に吸い込めるように、吸入口部と流体連通している。エンジン作動中、コンプレッサ部15は、大気を吸引し、該空気を圧縮して燃焼部へ送るべく動作する。
【0015】
例示の形態において、燃焼部20は、燃料流をコンプレッサ部15からの圧縮空気と混合し、その空気-燃料混合気を燃焼させて高温高圧の燃焼ガス流を生成するようにそれぞれが作動する、複数の別個の燃焼器35を含む。もちろん、その他多くの燃焼部構造が可能である。
【0016】
タービン部25は、複数のステージ40を含み、各ステージ40は、複数の回転ブレード及び複数の静止ブレード又はベーンを含む。ステージ40は、燃焼部20から燃焼ガスを受け取り、そのガスを膨張させて熱及び圧力エネルギーを回転又は機械的仕事に変換するように構成されている。タービン部25は、コンプレッサ部15に接続され、コンプレッサ部15を駆動する。発電用に又は原動機として使用されるガスタービンエンジン10の場合、タービン部25は、駆動対象の発電機、ポンプ、又は他の装置にも接続される。ジェットエンジンの場合は、燃焼ガスが該エンジンから排出されて推力を発生する。
【0017】
制御システム45がガスタービンエンジン10とつながれており、種々の動作パラメータを監視してガスタービンエンジン10の種々の動作を制御するように作動する。好ましい形態では、制御システム45は、マイクロプロセッサベースであり、データを収集、分析、保存するためにメモリデバイス及びデータストレージデバイスを含む。さらに、制御システム45は、ユーザが制御システム45とインターフェースして入力や調整を行うことができるように、モニタ、プリンタ、インジケータ等の種々のデバイスに出力データを提供する。発電システムの例では、ユーザが出力電力設定値を入力して、制御システム45が、その出力電力を効率的に達成するために様々な制御入力を調整することができる。
【0018】
制御システム45は、可変吸入口案内ベーン位置、燃料流量及び圧力、エンジン速度、及び発電機負荷(これらに限定されない)を含む様々な動作パラメータを制御することができる。もちろん、より少ないか又はより多くの制御可能なデバイスに対する他の用途もあり得る。制御システム45は、様々なパラメータの監視も行って、ガスタービンエンジン10が適切に動作していることを保証する。監視されるパラメータには、吸入口空気温度、コンプレッサ出口温度及び圧力、燃焼器出口温度、タービン入口温度、燃料流量、発電機出力電力などが含まれ得る。これらの測定値の多くはユーザに表示され、それらのレビューが必要とされる後のレビューのために記録される。
【0019】
図2は、図1のガスタービンエンジン10における燃焼器35のうちの1つの拡大断面図である。各燃焼器35は、トップハット域50と、少なくとも1つの炎管55と、燃焼器バスケット60と、トランジションピース65とを含む。トップハット域50は、エンジン10と結合し、燃料を燃焼器35へ導くために必要ないくつかの配管及びバルブを支持する。燃焼器バスケット60は、トップハット域50からタービン部25に向かって延び、ガスタービンエンジン中心軸75に対して斜めの角度で配置される長軸70を画定する。燃焼器バスケット60は、燃焼器35の燃焼ゾーンをエンジン10の外壁から分離するライナーとして機能する。少なくとも1つの炎管55、多くの場合は複数の炎管55が、燃焼器バスケット60の中に配置される。炎管55は燃料及び空気流を吐出し、これが点火されて燃焼器バスケット60内に1つ以上の火炎80が形成される。通常動作中、火炎80は、炎管55の出口95からゼロではない間隔90を隔てた火炎面85(図3に示す)を形成する。燃焼器バスケット60は複数の小孔(図示せず)を含み、該小孔が、燃焼領域へ空気を追加して完全な燃焼を保証し且つ燃焼ガスがタービン部25に排出される前に冷却されるようにする。トランジションピース65は、燃焼バスケット60に隣接して配置され、燃焼ガスを受け入れてタービン部25の入口へ効率的に導く。
【0020】
図2を参照すると、第1のセンサ100が燃焼器バスケット60の出口端105のところに配置され、第2のセンサ110が第1のセンサ100より下流のトランジションピース65に配置される。すなわち、例示の形態において両センサ100,110は、炎管55の下流にある。センサ100,110は動圧センサで、燃焼器35内の音響変化に関連する小さくて急速な圧力変化を検出するように動作可能である。2つのセンサ100,110が例示されているが、目的とする圧力変動を検出するために必要なのは1個である。他の例では、これらのセンサ100,110は、トップハット域50又は燃焼器35の他の領域に配置することができる。少しの設計変更が音響環境に大きな影響を与えることがあるので、必要とされるセンサ100,110の実際の位置及び数は、燃焼器35の設計に従って変わり得る。
【0021】
他のセンサ、例えば、音響センサ、低周波圧力センサ、温度センサ、光センサ、又はイオン化センサを、単独で、又はいくつかの組み合せで、ガス流の少なくとも一部における物理現象を検出するように構成することができる。一実施形態では、複数のアクチュエータ又はセンサ、又はその両方があって、総称してトランスデューサと呼ばれる。一実施形態では、1つ以上のアクチュエータ及びセンサのいずれか又は両方は、音響信号を放射し検出することの両方ができる音響トランスデューサである音響トランシーバである。
【0022】
動圧センサ100,110は、火炎80により生成される振動を含めて燃焼器35内で生成される音響振動を受信し、これら振動を、プロセッサによって分析することができる信号に変換する。火炎80の状態は、センサ100,110及び火炎80の位置に関する情報と、センサ信号に含まれるスペクトル成分とを組み合わせることによって、確実に検出して監視することができる。ここに開示する様々な実施形態において、火炎面85の位置に関する情報も、動圧センサ100,110のいずれか又は両方から受信される信号のスペクトル成分に基づいて決定される。動圧センサ100,110は、ガスタービンエンジン10において燃焼器35の圧力影響ゾーン内の2つの異なる位置に配置される。この文脈において圧力影響ゾーンとは何かというと、圧力変動がそれぞれの燃焼器35の火炎80の動力学に大きく依存する領域である。環状筒形のガスタービンエンジン10の場合、この領域は、例えば燃焼器35のそれぞれの燃焼器バスケット60の中の領域であり得る。他の実施形態の場合、燃焼器バスケット60において音響現象に敏感な、同じか又は異なる1つ以上の位置にある別々の音響トランスデューサが使用される。ある形態では、圧力センサ100,110は、火炎80よりも上流に配置される。この位置は、図2に示すセンサの位置よりも低温である。これに対し図2は、センサ100,110を用いた火炎監視が、炎管55内又はその近傍のフラッシュバックを含めて問題のある現象を特定することを補助するべくどのように行われるか、を説明するために提供される。
【0023】
すなわち、環状筒形燃焼器システムの各バスケット60に取り付けられた動圧センサ100,110があり、又は、環状チャンバの場合の環内の数個がある。先進的なデータ収集システムによって得られた結果から、これらのセンサ100,110は、フラッシュバック異変などの現象によって生成される音を拾うのに十分に敏感である。
【0024】
動圧センサ100,110は、制御システム45の一部として実装されるか又は独立した監視システムであるフラッシュバック検出システムの一部として使用される。ガスタービンエンジン10の通常動作中、火炎80は、炎管55の各々からゼロではない間隔90で維持される(図3に示す)。火炎80の基端、火炎面85は、変化する動作条件(例えば、燃料圧力、燃料流、空気圧、空気容量、温度など)に応じて移動する傾向がある。ある種の条件下で、火炎面85は、炎管出口95に非常に近づくこともあり、場合によっては炎管55の中に移動することさえある。この状態はフラッシュバックと呼ばれ、炎管55及び他のタービンエンジン部品に急で重大な損傷を与える可能性がある。本フラッシュバック検出システムは、フラッシュバック異変を示す徴候信号について動圧センサ100,110を監視する。フラッシュバック異変を示す徴候は、多くの場合、特定の周波数範囲における振幅の増加である。
【0025】
図3を参照すると、炎管55は、通常動作中にその中を通過する流れにより振動する環状管形部材である。各炎管55に対する火炎面85は、対応する炎管55と協働して、固有の距離を確定する。固有距離は、個々の炎管55が振動する周波数を確立する。フラッシュバック異変が始まるとき、火炎面85は、炎管55に近づいていく。これにより、固有距離が短くなり、炎管55で生じる振動の振幅及び周波数が増大する。
【0026】
図4は、動圧センサ100,110によって生成され、炎管55が振動する周波数範囲を示すスペクトログラム120を含む、一連のチャートを示す。フラッシュバック異変の発生で動圧センサ100,110は、増加した振幅125を直ちに検出する。そして、火炎面85が炎管55の出口95に近づくにつれて、振動周波数を増加させる固有距離が短くなる。これが、時間と共に周波数が増加するより高い振幅ライン130として直ちに現れる。
【0027】
従来技術の検出システムは、熱電対に依存して温度の上昇を検出していた。図4には、スペクトログラム120に示されているのと同じフラッシュバック異変の熱電対プロット135も示してある。動圧センサ100,110がフラッシュバック異変をほぼ瞬時に検出しているのに対し、熱電対のシステムでは、熱電対の加熱に少し時間がかかっている。さらに、熱電対のシステムに関しては、不必要な誤検出を抑止するために不感帯又は許容誤差が設定される。すなわち、熱電対のシステムがフラッシュバック異変を検出するよりも早く、動圧センサシステムは、フラッシュバック異変を検出して反応する。フラッシュバックをより早く検出できることは、燃焼器35への燃料流を減少させたり、ガスタービンエンジン10を停止させて損傷の可能性を減らしたりするために、オペレータや制御システムに時間の余裕をもたらす。
【0028】
複数の炎管55を含む燃焼器バスケット60を備えたエンジン10では、2つ以上の動圧センサ100,110を同時に使用して、フラッシュバック異変の渦中にある炎管55を特定することができる。複数のセンサ100,110を離間配置することで、三角測量法又は他の周知の方法を使用して、振動異変の場所を特定することができる。異変を経験している炎管55は、後の検査、保守、又は交換のときより前に特定することが可能である。
【0029】
別の形態において、振動センサ140が個々の燃焼器バスケット60に設けられ、燃焼器バスケット60の振動を検出する。エンジン10の動作中、個々の燃焼器バスケット60は同じ周波数範囲において振動する傾向がある。図5は、通常動作中に振動センサ140によって生成されたデータを示す、別のスペクトログラム145を含む。これに対し、フラッシュバック異変においては、ほとんどの場合、図6のスペクトログラム150に示されているように、フラッシュバック異変が生じている燃焼器バスケット60の特定の周波数範囲で振動の振幅が増大する。制御システム45は、全ての燃焼器バスケット60の振動レベルを一時に比較し、どの燃焼器バスケット60が異常振動を発生しているか特定する。この異変は、フラッシュバック異変のあった可能性として記録され、後の点検、保守、又は交換を可能にする。
【0030】
図7は、振動データを異なる形式で示す。図7中、複数の燃焼器バスケットの各センサ140に関する特定の周波数範囲の振動レベルが、時間に対してプロットされている。ある燃焼器バスケット60に設置された振動センサ140からの振動レベルのスパイク(突然の顕著な増加)は、その他の燃焼器バスケット60に設置された振動センサ140からの通常の振動レベルに対して、スパイクを起こしている燃焼器バスケット60のフラッシュバック異変などの異変を示唆する。図7には、同じ動作条件下での温度ベースのフラッシュバック検出システムの反応も示してある。動圧センサシステムと同様、振動センサ140は、温度ベースのシステムよりもフラッシュバック異変に対して迅速に反応する。
【0031】
一実施形態において、スペクトログラム120,145は、エンジン10の連続したリアルタイムの監視を可能にするために、コンピュータシステムのディスプレイデバイスなどのディスプレイでユーザに提示される。さらに、当該データについては、フラッシュバック異変と考えられる異変の自動アラーム又はログを可能にする自動分析が可能である。
【0032】
ここに開示した大部分は、2つの燃焼器バスケットを監視することについて説明しているが、本件フラッシュバック検出システムがどのような数の燃焼器バスケットでも同時に監視することが可能であることは、明白である。
【0033】
本開示について実施形態を例示して詳細に説明したが、当業者であれば、本明細書から示唆される様々な変更、代替、修正、及び改良を、最も広範な形態における本開示の思想及び範囲から逸脱することなく行い得るのは、当然である。
【0034】
本願における説明のいずれも、具体的な要素、過程、作用、又は機能のどれもが特許請求の範囲に含まれなければならない必須の要素であることを意味するとして、読み取られるべきではない。特許の主題の範囲は、特許請求項によってのみ決められる。さらに言えば、請求項のいずれも、正確な単語「手段」に分詞が続く場合を除き、手段プラス機能の請求項構成を想定させる目的の請求項ではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7