(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】被加工物上のボール軌道、および、そのようにして製造されたボール軌道を有するボールねじナットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B21H 3/08 20060101AFI20221121BHJP
B21J 9/02 20060101ALI20221121BHJP
B21K 1/64 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B21H3/08
B21J9/02 A
B21K1/64
(21)【出願番号】P 2021532888
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 DE2019100965
(87)【国際公開番号】W WO2020119849
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】102018131508.2
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ブシュカ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ゲシュヴィントナー
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特許第4230020(JP,B2)
【文献】特開2013-166173(JP,A)
【文献】特許第6100964(JP,B1)
【文献】特許第6013656(JP,B1)
【文献】特開2001-009637(JP,A)
【文献】特開昭63-16827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21H 3/08
B21J 9/02
B21K 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(2)
の内周面(3)にボール軌道(4)を製造する方法であって、
機械加工によって第1の軌道形状(6a)を有する予備ねじ山プロファイル(5a)
が前記被加工物(2)上に形成され、前記予備ねじ山プロファイル(5a)
を再加工することで、最終ねじ山プロファイル(5b)
を形成する
方法であって、
前記予備ねじ山プロファイル(5a)を形成する機械加工後に、前記被加工物(2)が、
長手方向軸を有するツールシャンク(7)によってねじ山転動ツールにクランプされ、ローラプロファイル(9)を有するツールヘッド(8)が、前記ツールシャンク(7)の自由端に形成され、
前記ローラプロファイル(9)は前記長手方向軸を囲う環状のローラプロファイル形状(10)を有し、
前記被加工物(2)が、回転軸(A)の周りに回転
し、前記ツールシャンク(7)が、前記被加工物(2)
の内周面(3)に沿って長手方向に移動し
て前記被加工物(2)の内周側を案内され、前記ツールヘッド(8)の前記ローラプロファイル(9)が、前記最終ねじ山プロファイル(5b)を生成するために、前記予備ねじ山プロファイル(5a)上の
第1の軌道形状(6a)が第2の軌道形状(6b)
まで径方向に伸長されるように、前記被加工物(2)上で転動
し、
前記被加工物(2)が、前記ねじ山転動ツールから取り除かれた後に、硬化され、
前記ツールヘッド(8)が前記被加工物(2)上を転動する際、前記予備ねじ山プロファイル(5a)のねじ山ピッチを手動で適合させることによって、硬化後の前記被加工物(2)の長手方向のねじ山ピッチの歪みが保証されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記予備ねじ山プロファイル(5a)が、ねじ山ピッチ(W)によって形成され、前記ローラプロファイル(9)が、前記ねじ山ピッチ(W)と同様に、前記被加工物(2)の前記回転軸(A)に対して傾斜していることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ツールシャンク(7)が、前記被加工物(2)の前記回転軸(A)に対して平行に整列していることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ツールシャンク(7)が、前記被加工物(2)の前記回転軸(A)に対して傾斜していることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ツールシャンク(7)が、前記予備ねじ山プロファイル(5a)の方向において所定の接触力で押圧されることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ローラプロファイル(9)が、前記第2の軌道形状(6b)に対応するように形成されたローラプロファイル形状(10)を有し、前記ローラプロファイル形状(10)が、半円形であるか、または、少なくとも部分的にゴシックプロファイルの形状で形成され、それにより、前記最終ねじ山プロファイル(5b)が、前記被加工物(2)上に製造されることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物上にボール軌道を製造するための方法に関する。本発明はまた、この様態で製造されたボール軌道を有するボールねじナットに関する。
【0002】
DE102014225104A1は、ステアリング歯を有する歯部およびボールねじを有する支軸部を有するステアリングラックの製造方法を開示する。まず、固体金属材料から作製されたロッド状ブランクが提供される。支軸部は、深穴加工によって一方の側をくり抜かれ、支軸部を介して軸方向に突出する深い止まり穴が製造される。次いで、ボールねじが、機械加工によって中空の支軸部上に製造される。
【0003】
本発明の目的は、被加工物のための、特に、ボールねじナットのためのボール軌道の製造方法をさらに開発することである。この目的は、請求項1の主題によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項、明細書および図面に見出すことができる。
【0004】
被加工物上でボール軌道を製造するための本発明による方法において、第1の軌道形状を有する予備ねじ山プロファイルが、機械加工によって被加工物上に形成され、予備ねじ山プロファイルが、最終ねじ山プロファイルの再加工および形成のために提供され、機械加工後に、被加工物が、ツールシャンクによってねじ山転動ツールにクランプされ、ローラプロファイルを有するツールヘッドが、ツールシャンクの自由端に形成され、被加工物が、回転軸の周りに回転して設定され、ツールシャンクが、被加工物に沿って長手方向に移動し、ツールヘッドのローラプロファイルが、最終ねじ山プロファイルを生成するために、予備ねじ山プロファイル上の第2の軌道形状を有する被加工物上を転動する。すなわち、最終ねじ山プロファイルが、ローラプロファイルを予備ねじ山プロファイルに沿って1回以上誘導することによって、予備ねじ山プロファイルから形成される。ローラプロファイルが予備ねじ山プロファイルに沿って転動すること、または転動して離れることにより、結果として、予備ねじ山プロファイルの表面上に塑性変形がもたらされ、特に、予備ねじ山プロファイルの表面上で粗さのピークが平滑化される。粗さのピークの再加工または平滑化によって、予備ねじ山プロファイルの表面が再加工され、それによって最終ねじ山プロファイルが形成される。最終ねじ山プロファイルは次いで、被加工物のボール軌道の最終外形に対応する。
【0005】
予備ねじ山プロファイルは、機械加工に加えて、他の代替的な方法によっても製造され得るボール軌道の予備軌道品質を有する。ここでは、予備ねじ山プロファイルの製造時に、より大きい公差が満たされる、つまり、予備ねじ山プロファイルが、特に費用効率の高い様態で製造され得ることが有利である。次いで、ボール軌道の最終外形が、ローラプロファイルによるねじ山転動によって、被加工物上に製造される。この時点で被加工物の材料の大部分がすでに機械加工プロセスによって取り除かれているため、ボール軌道の最終品質を生み出すために、再加工または最終機械加工のみを実行する必要がある。
【0006】
ローラプロファイルは、好ましくは、第2の軌道形状に対応するように形成されたローラプロファイル形状を有する。すなわち、ローラプロファイルは、仕上げ済みのボール軌道のネガティブプロファイルとして理解され、それを利用して、最終ねじ山プロファイルが製造される。ここでは、予備ねじ山プロファイルがすでに作られており、最終ねじ山プロファイルを製造するために、ローラプロファイルがこの予め機械加工されたボール軌道に沿って転がり落ちるのみであるため、最終ねじ山プロファイルを生成するために、ねじ山転動ツールは、高いトルクをかける必要がないことが有利である。
【0007】
さらに、予備ねじ山プロファイルは、好ましくは、ねじ山ピッチによって形成され、ローラプロファイルは、ねじ山ピッチと同様に、被加工物の回転軸に対する傾斜配向を有する。すなわち、ローラプロファイルは、ローラプロファイルが予備ねじ山プロファイルに沿って転動することができるように、被加工物の回転軸に対して傾斜する長手方向軸を有する。このように、その長手方向軸を有するローラプロファイルが被加工物の回転軸に対して傾斜する角度は、ねじ山プロファイルのねじ山ピッチに対応する。
【0008】
被加工物は、好ましくは、ねじ山転動ツールから取り除かれた後に、硬化する。これは特に、被加工物の構造における目標とされた変化および変質により、ボール軌道の弾性を増大させる。さらなる処理はここでは提示されない。ねじ山プロファイルのねじ山ピッチを手動で適合させることによって、硬化の結果としての被加工物の幾何学的歪みが防止され得ることが考えられる。すなわち、ツールシャンクには長手方向補償が提供され、それによって、被加工物の歪みは、ねじ山ピッチを適合させることにより保証され得る。
【0009】
第1の例示的な実施形態により、ツールシャンクは、被加工物の回転軸に対して平行に整列する。すなわち、ローラプロファイルの長手方向軸はまた、ツールシャンクの長手方向軸に対して傾斜する。
【0010】
代替的に、第2の例示的な実施形態により、ツールシャンクは、被加工物の回転軸に対して傾斜する。この場合、ツールシャンクの長手方向軸およびローラプロファイルの長手方向軸が、互いに基本的に同軸上に配設され、したがって、ツールシャンクおよびローラプロファイルが、被加工物の回転軸に対して同じ角度で共に傾斜することが有利である。これは特に、ツールシャンクの製造を簡素化する。
【0011】
さらに、代替的に、それぞれに長手方向軸を有する転動プロファイルおよびツールシャンクの両方は、被加工物の回転軸に対して同軸上に、かつ平行に整列し得る。この場合、ローラプロファイルは、歪んだ転動形状を有する。すなわち、ローラプロファイルは、最終ねじ山プロファイルを形成するために、被加工物の回転およびツールシャンクの同時の軸方向移動中に、ローラプロファイルが予備ねじ山プロファイルを転動し、かつ滑り落ちるように構成される。予備ねじ山プロファイルの表面はこのように、第2の軌道形状を有する最終ねじ山プロファイルが形成されるまで、いわば、一部研削することによって、かつ、一部転動することによって、ローラプロファイルによって平滑化される。
【0012】
3つのすべての場合に、ツールシャンクは、被加工物が回転軸の周りを回転する間、最終ねじ山プロファイルを形成するために、被加工物の回転軸に対して平行に移動する。
【0013】
ツールシャンクは、好ましくは、予備ねじ山プロファイルの方向の接触力で押圧される。被加工物は、したがって、その位置に固定され、それ自体の回転軸の周りを回転可能であるのみである。これは、被加工物上で最終ねじ山プロファイルを均一に作り出す。接触力は、代替的に、または追加的に、ばね力を介して調整され得る。
【0014】
ローラプロファイル形状は、好ましくは、半円形であるか、または、少なくとも部分的にゴシックプロファイルの形状で形成され、それにより、最終ねじ山プロファイルが被加工物上に製造される。これは、最終ねじ山プロファイルが、発生する負荷または接触領域などの被加工物の要件に適合され得ることを意味する。接触領域は、動作中にそれらの上を転動する転動要素と接触するボール軌道の領域である。
【0015】
この様態で製造されたボール軌道は、例えば、ボールねじ駆動装置のためのボールねじナット内で提供され得、ボール軌道は、ボールねじナットの内周面上に形成される。ボール軌道は、ねじ山ピッチを有する最終ねじ山プロファイルを有する。
【0016】
最終ねじ山プロファイルの形成中、被加工物は、予備ねじ山プロファイルの領域内で平滑化される。予備ねじ山プロファイルの第1の軌道形状は、最終ねじ山プロファイルの第2の軌道形状まで、径方向に伸張される、または拡大される。ねじ山プロファイルの径方向の拡幅または拡大は、軽微にすぎず、好ましくはマイクロメートルの範囲にある。すなわち、ツールヘッドのローラプロファイルは、予備ねじ山プロファイルの内径よりも大きい外径を有する。外径の半分、すなわち、ローラプロファイルの半径と、内径の半分、すなわち、予備ねじ山プロファイルの半径との間の差異は、平滑化深度と称される。平滑化深度の厚さは予備ねじ山プロファイルが形成される形状に、かつ一方で、予備ねじ山プロファイルから続いて製造された最終ねじ山プロファイルが形成される形状に依存する。さらに、平滑化深度の厚さは、予備ねじ山プロファイルが製造された表面品質、および、その結果、それらの塑性変形前に粗さのピークが形成される方法に依存する。したがって、平滑化深度は一定または可変であることが考えられる。可変平滑化深度の場合、ヘルツ圧力などのボールねじ駆動装置の要件が考慮され得る。平滑化深度が大きいほど、最終ねじ山プロファイルの形成中の塑性変形は大きくなり、この領域内での被加工物の固化は大きくなる。代替的に、部分的に一定であり、かつ、部分的に可変である平滑化深度がまた、考えられる。この場合、平滑化深度は、接触角度に最適化される。結果として、ボール軌道は、より大きい塑性変形のために、接触領域内での機械的応力に対するより高い抵抗を有する。
【0017】
本発明を改善させるさらなる手段が、同一または同様の要素が同じ参照記号で印が付けられている図を使用して、本発明の3つの好ましい例示的な実施形態の説明と一緒に、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるボールねじナットおよび第1の例示的な実施形態によるねじ山転動ツールの概略長手方向断面図を示す。
【
図2】第2の例示的な実施形態によるツールシャンクを有する、本発明によるボールねじナットの概略長手方向断面図を示す。
【
図3】第2の例示的な実施形態によるツールシャンクを有する、本発明によるボールねじナットの概略長手方向断面図を示す。
【
図4a】
図2によるツールシャンクの部分的に図示されたローラプロファイルの概略断面図を示す。
【
図4b】部分的に図示されたローラプロファイルの代替的な例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図5a】第1の例示的な実施形態による最終ねじ山プロファイルが形成される前の被加工物の概略部分断面図を示す。
【
図5b】最終ねじ山プロファイルの形成前の被加工物の第1の代替例の概略部分断面図を示す。
【
図5c】最終ねじ山プロファイルが形成される前の被加工物の第2の代替例の概略部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~3によると、ねじ山転動ツール(図示せず)の3つの例示的な実施形態が示される。ねじ山転動ツールは、ローラプロファイル9を有するツールヘッド8が形成される自由端で、ツールシャンク7を有する。ローラプロファイル9によって、被加工物2上でボール軌道4を製造する方法を使用して、ここではボール軌道4がスリーブ状ボールねじナット1上に製造される。第1の方法ステップにおいて、予備ねじ山プロファイル5aがまず、機械加工プロセスによって、被加工物2上に形成され、
図1~3において、ボールねじナット1の内周面3上に配設され、最終ねじ山プロファイル5bの再加工および形成が意図される予備ねじ山プロファイル5aが提供される。予備ねじ山プロファイル5aは、ねじ山ピッチWを有する。最終ねじ山プロファイル5bの形成について、特に
図5a~5cを参照して、以下により詳細に記載する。
【0020】
機械加工後に、被加工物2が、ツールシャンク7によって、ねじ山転動ツール内でクランプされ、被加工物2が、第2の方法ステップにおいて、回転軸Aの周りで回転移動して設定され、ツールシャンク7が、第1の移動方向11で被加工物2に沿って長手方向に移動し、ボールねじナット1を通過する。最終ねじ山プロファイル5bは、ツールヘッド8のローラプロファイル9を予備ねじ山プロファイル5a上で、1回以上転動させることによって、予備ねじ山プロファイル5aから製造される。最終ねじ山プロファイル5bの形成後に、被加工物2はねじ山転動ツールから取り除かれ、次いで、任意選択的に、硬化され得る。
【0021】
ツールシャンク7は、好ましくは、予備ねじ山プロファイル5aの方向の所定の接触力で押圧される。これは、力の均一な導入および最終ねじ山プロファイル5bの寸法精度が高い形成を保証する。
【0022】
図1および2によると、ローラプロファイル9は、ねじ山ピッチWと同様に、被加工物2の回転軸Aに対して傾斜して配向される。ローラプロファイル9は、したがって、ボール軌道4のねじ山ピッチWの角度に対応する角度W1で傾斜している長手方向軸L1を有する。
【0023】
図1および2による2つの実施形態間の唯一の差異は、
図1によると、ツールシャンク7が被加工物2の回転軸Aに対して平行に整列していることである。このように、ローラプロファイル9はまた、ツールシャンク7の長手方向軸L2に対する角度W1、または、ねじ山ピッチWの角度で傾斜する。対照的に、
図2によると、その長手方向軸L2を有するツールシャンク7は、ローラプロファイル9の長手方向軸L1と同軸上に整列し、その結果、ツールシャンク7は、ツールヘッド8およびローラプロファイル9と一緒に、回転軸Aに対して角度W2で傾斜し、角度W2はまた、ボール軌道4のねじ山ピッチWの角度に対応する。
【0024】
図3によると、それぞれに長手方向軸L1およびL2を有するツールシャンク7およびローラプロファイル9の両方が、被加工物2の回転軸Aに対して同軸上に、かつ平行に整列する。ローラプロファイル9は、歪むように構成され、その結果、ローラプロファイル9が予備ねじ山プロファイル5a上を転動および滑動して、最終ねじ山プロファイル5bを形成する。
【0025】
図4aおよび4bにおいて、ローラプロファイル9の2つの可能な実施形態が示される。ローラプロファイル9は、最終ねじ山プロファイル5bのためのネガティブプロファイルとして理解される。ローラプロファイル9は、このように、
図5aおよび5bに示される最終ねじ山プロファイル5bの第2の軌道形状6bに対応するように形成される、円周ローラプロファイル形状10を有する。
【0026】
図4aによると、ローラプロファイル形状10は半円形である。これは、最終ねじ山プロファイル5bの第2の軌道形状6bがまた、予備ねじ山プロファイル5aに沿ってローラプロファイル9を転がり落ちる間、半円形であることを意味する。ローラプロファイル9のローラプロファイル形状10はしたがって、ローラプロファイル9の長手方向軸L1から半径距離14に配設される、中心点13aを有し、ローラプロファイル形状10は、中心点13aから開始し、半径R1を有する半円形である。
【0027】
代替的に、
図4bによるローラプロファイル形状10は、部分的にゴシックプロファイルの形状で形成される。これは、次に、最終ねじ山プロファイル5bの第2の軌道形状6bがまた、予備ねじ山プロファイル5aに沿ってローラプロファイル9を転がり落ちる間、ゴシックプロファイルの形状で同様に形成されることを意味する。ローラプロファイル9のローラプロファイル形状10は、各々がローラプロファイル9の長手方向軸L1から同じ半径距離14で配設され、ローラプロファイル9の軸方向に互いに離間して形成される、第1の中心点13aおよび第2の中心点13bを有する。特定の中心点13a、13bから開始して、ローラプロファイル形状10は、特定の半径R1、R2を伴って形成される。ローラプロファイル形状10は、半径R1、R2および中心点13a、13b間の軸方向距離15を介して設定される。
【0028】
図5a、5b、および5cによると、ボールねじナット1のボール軌道4のねじ山プロファイルの3つの可能な実施形態が示される。実線は、予備ねじ山プロファイル5aの第1の軌道形状6aを示し、破線は、ローラプロファイル9を予備ねじ山プロファイル5aに沿って転動させることによって製造される、最終ねじ山プロファイル5bの第2の軌道形状6bを示す。
【0029】
予備ねじ山プロファイル5aに沿ってローラプロファイル9を転動させることによって、ボール軌道4の粗さのピークは特に、平滑化され、結果的に、ボール軌道4の表面上で発生する塑性変形をもたらす。第1の軌道形状6aは、第2の軌道形状6bまで径方向に伸張される。すなわち、ローラプロファイル9は、予備ねじ山プロファイル5aの内径よりも大きい外径を有する。さらに、
図5a~5cを参照してここで示されるように、第1および第2の軌道形状6a、6bが異なる形状を有することが考えられる。すなわち、ローラプロファイル9が予備ねじ山プロファイル5aに沿って転がり落ちる間に、塑性変形される2つの軌道形状6a、6b間の断面領域が存在し、その結果、ボール軌道4または最終ねじ山プロファイル5bの表面上で、固化が発生する。
【0030】
軌道形状6a、6b間のこの半径距離は、平滑化深度16と称される。
図5aによると、平滑化深度16は、一定である。すなわち、平滑化深度16は、一定の厚さでボール軌道4の半円形の円周上に延在する。
【0031】
図5bにおいて、平滑化深度16は、可変であるように構成され、平滑化深度16は、ボール軌道4の頂点からボールねじナット1の内周面3へと増大する。すなわち、最終ねじ山プロファイル5bが形成されると、頂点よりも、より多くの材料が、ボール軌道4の側面上で変形し、その結果として特にボール軌道4の縁領域において、ボール軌道4のより高い力が達成される。
【0032】
図5cによると、平滑化深度16は、部分的に一定であり、かつ一部可変であり、平滑化深度16は、ボール軌道4の接触領域17内で一定であり、すなわち、均一な平滑化深度16を提供され、次いで、ボールねじナット1の内周面3に向かって一定に減少する。
【符号の説明】
【0033】
1 ボールねじナット
2 被加工物
3 内周面
4 ボール軌道
5a 予備ねじ山プロファイル
5b 最終ねじ山プロファイル
6a 第1の軌道形状
6b 第2の軌道形状
7 ツールシャンク
8 ツールヘッド
9 転動されたプロファイル
10 転動されたプロファイル形状
11 第1の移動方向
12 第2の移動方向
13a、13b 中心点
14 転動されたプロファイルの長手方向軸への距離
15 軸方向距離
16 平滑化深度
A 回転軸
L1 ローラプロファイルの長手方向軸
L2 ツールシャンクの長手方向軸
R1 ローラプロファイル形状の第1の半径
R2 ローラプロファイル形状の第2の半径
W ねじ山プロファイルのねじ山ピッチ
W1 ツールヘッドの角度
W2 ツールシャンクの角度