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特許7179995電気装置、電力供給システム及び電気装置の製造方法
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  • 特許-電気装置、電力供給システム及び電気装置の製造方法 図1
  • 特許-電気装置、電力供給システム及び電気装置の製造方法 図2A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】電気装置、電力供給システム及び電気装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20221121BHJP
   H02J 9/08 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
H02P9/00 Z
H02J9/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021538464
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2019082297
(87)【国際公開番号】W WO2021098973
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ワルトン、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】プリカンティ、スリダール
(72)【発明者】
【氏名】マードック、ダスティン
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、ニコラス・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クマラン、パルタサラディ・コジパランビル
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-041931(JP,A)
【文献】特開2011-120368(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073030(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/026343(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
H02J 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機(130)に結合され、前記発電機(130)の周波数を検出するように構成される検出回路(141)と、
前記検出回路(14)に結合され、検出された周波数を示す第1の信号を受信し、前記検出された周波数が所定の周波数範囲外にあることを決定することに応答して前記発電機(130)の前記周波数を調整するように構成されるコントローラ(142)、ここにおいて、前記検出回路(141)は、さらに、負荷(120)に結合され、前記負荷(120)で消費される電力を検出するように構成され、前記コントローラ(142)は、さらに、前記負荷(120)で消費される前記電力を示す第2の信号を受信し、前記第2の信号に基づいて前記発電機(130)の前記周波数を、ある周波数量調整するように構成される、と、を含む、電気装置(140)。
【請求項2】
前記コントローラ(142)は、さらに、前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて前記発電機(130)から前記負荷(120)までの電力レベルを調整することにより、前記発電機(130)の前記周波数を調整するように構成される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項3】
前記発電機(130)及び前記コントローラ(142)に結合される整流器(144)と、
前記整流器(144)及び前記コントローラ(142)に結合されるエネルギー貯蔵装置(143)と、
前記エネルギー貯蔵装置(143)及び前記コントローラ(142)に結合されるインバータ(145)と、をさらに含み、
前記コントローラ(142)は、前記整流器(144)、前記エネルギー貯蔵装置(143)及び前記インバータ(145)により前記発電機(130)から前記負荷(120)までの前記電力レベルを調整するように構成される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項4】
前記コントローラ(142)は、さらに、
前記検出された周波数が前記所定の周波数範囲の上限閾値周波数を超えることを決定することに応答して、前記検出された周波数及び前記上限閾値周波数に基づいて、調整されるべき前記周波数量を決定し、
前記周波数量と、前記負荷(120)で消費される前記電力とに基づいて、前記電気装置(140)より供給されるべき電力の電力量を決定し、
前記エネルギー貯蔵装置(143)を放電することにより、前記電力量の前記電力を前記エネルギー貯蔵装置(143)から前記発電機(130)に供給するように構成される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項5】
前記コントローラ(142)は、さらに、
前記検出された周波数が前記所定の周波数範囲の下限閾値周波数より低いことを決定することに応答して、前記検出された周波数及び前記下限閾値周波数に基づいて、調整されるべき前記周波数量を決定し、
前記周波数量と、前記負荷(120)で消費される前記電力とに基づいて前記電気装置(140)に吸収されるべき電力の電力量を決定し、
前記エネルギー貯蔵装置(143)を充電することにより、前記電力量の前記電力を前記発電機(120)から前記エネルギー貯蔵装置(143)へ吸収するように構成される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項6】
前記インバータ(145)は、前記エネルギー貯蔵装置(143)の前記放電の間、前記エネルギー貯蔵装置(143)からの直流電圧を交流電圧に変換するように構成される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項7】
前記整流器(144)は、前記エネルギー貯蔵装置(143)の前記充電の間、前記発電機(120)からの交流電圧を直流電圧に変換するように構成される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項8】
前記発電機(130)は、前記電気装置(140)と前記負荷(120)との間に結合される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項9】
前記電気装置(140)は、前記発電機(130)と前記負荷(120)との間に結合される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項10】
他の負荷(150)は、前記発電機(130)と前記電気装置(140)との間に結合され、前記発電機(130)と前記電気装置(140)のうちの少なくとも1つから電力が供給されるように構成される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項11】
前記電気装置(140)は、前記コントローラ(142)に結合されるバイパス素子(170)をさらに含み、前記コントローラ(142)は、さらに、前記負荷(120)で消費される前記電力が発電機から伝送されることを決定することに応答して、前記電気装置(140)をバイパスするように構成される、請求項に記載の電気装置(140)。
【請求項12】
前記電気装置(140)は、無停電電力供給装置UPSである、請求項1~1のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項13】
負荷(120)と、
前記負荷(120)に結合され、前記負荷(120)に電力を供給するように構成される発電機(130)と、
前記発電機(130)及び前記負荷(120)に結合される請求項1~1のいずれか1項に記載の電気装置(140)と、を含む、電力供給システム(100)。
【請求項14】
電機(130)の周波数を検出するように構成される検出回路(141)を発電機(130)に結合することと、
出された周波数を示す第1の信号を受信し、前記検出された周波数が所定の周波数範囲外にあることを決定することに応答して前記発電機(130)の前記周波数を調整するように構成されるコントローラ(142)を前記検出回路(141)に結合すること、ここにおいて、前記検出回路(141)は、さらに、負荷(120)に結合され、前記負荷(120)で消費される電力を検出するように構成され、前記コントローラ(142)は、さらに、前記負荷(120)で消費される前記電力を示す第2の信号を受信し、前記第2の信号に基づいて前記発電機(130)の前記周波数を、ある周波数量調整するように構成される、と、を含む、電気装置(140)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、全体として電気装置、該電気装置を備えた電力供給システム及び該電気装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長時間稼働する区域に対して、グリッドが故障した場合、発電機は、常に予備電力供給として使用する。グリッドが故障すると、発電機を起動して電力を生成して負荷に供給することができる。負荷が十分に大きい場合、発電機の周波数は、顕著に変化する可能性がある。
【0003】
商業、工業及びデータセンターのような負荷を含む多くの典型的な負荷は、±5%を越えない周波数変化に対して高い感度を有すると主張するが、100%負荷ステップに対して、典型的な発電機は、25%の周波数変化を有すると主張する。したがって、発電機がグリッドから全負荷を瞬間的に引き継ぐ場合、発電機の周波数変化は、負荷の耐えられる範囲を超える可能性がある。
【0004】
予備電池とも呼ばれる無停電電源装置(UPS)のようないくつかの補助電力供給は、電力供給システムにも用いられ、従来の電源が故障するか又は電圧が許容できないレベルに低下する場合に予備電力を供給する。補助電力供給として、UPSは、発電機が稼働し始め、負荷に電力を供給することを引き継ぐまで、エネルギー源(例えば、電池)から負荷に電力を供給する。
【0005】
同様に、1つの可能な問題は、発電機が既に起動してUPSから負荷を引き継ぐことができる場合、発電機が全負荷を瞬間的に引き継ぐと、発電機の周波数も大きな周波数変化が発生する可能性があることである。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、電気装置、該電気装置を備えた電力供給システム及び該電気装置の製造方法を提供する。
【0007】
第1の態様において、電気装置を提供する。該電気装置は、発電機に結合され、発電機の周波数を検出するように構成される検出回路を含む。該電気装置は、検出回路に結合され、検出された周波数を示す第1の信号を受信し、検出された周波数が所定の周波数範囲外にあることを決定することに応答して発電機の周波数を調整するように構成されるコントローラをさらに含む。
【0008】
第1の態様の解決手段を使用することにより、発電機の周波数が耐えられる範囲を超える場合、発電機の周波数変化を電気装置により観測し調整することができる。このような方式で、発電機の周波数が設定された制限値を超える場合、発電機への電力の変化率及び発電機からの電力の変化率に対するアクティブ制御を実現することができる。周波数制限を超える前に発電機に対応付けられた電力供給に干渉せず、周波数制限を超える時に電力の変化率を変更して周波数制限を超えることを防止する。
【0009】
いくつかの実施形態では、検出回路は、さらに、負荷に結合され、負荷で消費される電力を検出するように構成され、コントローラは、さらに、負荷で消費される電力を示す第2の信号を受信し、第2の信号に基づいて発電機の周波数を、ある周波数量調整するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、コントローラは、さらに、第1の信号及び第2の信号に基づいて、発電機から負荷までの電力レベルを調整することにより、発電機の周波数を調整するように構成される。
【0011】
負荷で消費される電力及び発電機の周波数を測定することにより、コントローラは、発電機の調整されるべき周波数量又は特定の電力レベルを決定するため、より正確で効果的な調整を行うことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、電気装置は、発電機及びコントローラに結合される整流器と、整流器及びコントローラに結合されるエネルギー貯蔵装置と、エネルギー貯蔵装置及びコントローラに結合されるインバータとをさらに含む。コントローラは、整流器、エネルギー貯蔵装置及びインバータにより、発電機から負荷までの電力レベルを調整するように構成される。
【0013】
したがって、発電機の周波数の自動調整を実現するために、UPS 140の整流器、インバータ及びエネルギー貯蔵装置を用いて、エネルギー伝送及び変換を実行してよく、これらは、いずれも該解決手段のための必要な構成要素である。
【0014】
いくつかの実施形態では、コントローラは、さらに、検出された周波数が所定の周波数範囲の上限閾値周波数を超えることを決定することに応答して、検出された周波数及び上限閾値周波数に基づいて、調整されるべき周波数量を決定し、周波数量と、負荷で消費される電力とに基づいて、電気装置からロードされるべき電力量を決定し、エネルギー貯蔵装置を放電することにより、電力量をエネルギー貯蔵装置から発電機に伝送するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、コントローラは、さらに、検出された周波数が所定の周波数範囲の下限閾値周波数より低いことを決定することに応答して、検出された周波数及び下限閾値に基づいて、調整されるべき周波数量を決定し、周波数量と、負荷で消費される電力とに基づいて電気装置にアンロードされるべき電力量を決定し、エネルギー貯蔵装置を充電することにより、電力量を発電機からエネルギー貯蔵装置へ吸収するように構成される。
【0016】
上述したように、発電機の周波数値が所定の範囲内に維持されるべきであり、耐えられない周波数変化を回避する。このような方式で、電気装置にかかる負荷を増加させるか又は減少させて、発電機の周波数を制限値に戻すことにより、発電機及び発電機に接続された負荷の安全を保証することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、インバータは、エネルギー貯蔵装置の放電の間、エネルギー貯蔵装置からの直流電圧を交流電圧に変換するように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、整流器は、エネルギー貯蔵装置の充電の間、発電機からの交流電圧を直流電圧に変換するように構成される。
【0019】
いくつかの実施形態では、発電機は、電気装置と負荷との間に結合される。
【0020】
いくつかの実施形態では、電気装置は、発電機と負荷との間に結合される。
【0021】
いくつかの実施形態では、他の負荷は、発電機と電気装置との間に結合され、発電機と電気装置のうちの少なくとも1つにより電力が供給されるように構成される。
【0022】
電気装置は、様々な電力供給環境下において発電機の周波数調整を実現することができる。発電機が負荷に直接接続されても電気装置が発電機と負荷との間に結合されても、電気装置は、発電機の周波数が所定の範囲内に調整されることを確保する。
【0023】
いくつかの実施形態では、電気装置は、コントローラに結合されるバイパス素子をさらに含み、コントローラは、さらに、負荷で消費される電力が発電機から伝送されることを決定することに応答して、該電気装置をバイパスするように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、電気装置は、UPSである。
【0025】
第2の態様において、電力供給システムを提供する。電力供給システムは、負荷と、負荷に結合され、負荷に電力を供給する発電機とを含む。電力供給システムは、負荷及び発電機に結合される第1の態様に係る電気装置をさらに含む。
【0026】
第3の態様において、電気装置の製造方法を提供する。該方法は、発電機に結合され、発電機の周波数を検出するように構成される検出回路を提供することを含む。該方法は、検出回路に結合され、検出された周波数を示す第1の信号を受信し、検出された周波数が所定の周波数範囲外にあることを決定することに応答して発電機の周波数を調整するように構成されるコントローラを提供することをさらに含む。
【0027】
理解すべき点として、本開示の内容は、本開示の実施形態の重要又は本質的な特徴を識別することを意図するものではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものでもない。本開示のその他の特徴は、以下の説明により容易に理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図面を参照して本開示の例示的実施形態をより詳細に説明することで、本開示の上述及びその他の目的、特徴及び利点を、さらに明らかにする。本開示の例示的実施形態では、同一の参照符号は、一般的に同一の部品を示す。
【0029】
図1】本開示の実施形態に係る電気装置を備えた電力供給システムの概略的なブロック図を示す。
【0030】
図2A図2Aは、本開示の実施形態に係る電気装置の整流器及びインバータの実施形態を示す。
図2B図2Bは、本開示の実施形態に係る電気装置の整流器及びインバータの実施形態を示す。
【0031】
図3A図3Aは、本開示の実施形態に係る電気装置の異なる適用シーンを示す。
図3B図3Bは、本開示の実施形態に係る電気装置の異なる適用シーンを示す。
図3C図3Cは、本開示の実施形態に係る電気装置の異なる適用シーンを示す。
【0032】
図4】本開示の実施形態に係る電気装置のバイパス素子の実施形態を示す。
【0033】
図5】本開示の実施形態に係る電気装置の製造方法のフローチャートを示す。
【0034】
図中、同一又は類似の参照符号は、同一又は類似の部品を表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、いくつかの例示的実施形態を参照して、本開示を説明する。これらの実施形態は、主題の範囲に対するいかなる限定を示唆するものではなく、当業者が本開示をよりよく理解して実施することを可能にする目的でのみ説明されることを理解されたい。
【0036】
文中で使用されるように、用語「含む」及びその変形は、「…を含むが、これらに限定されない」という意味の、開放式の用語であると解釈されるべきである。用語「…に基づいて」は、「少なくとも部分的に基づく」と解釈されるべきである。用語「1つの実施形態」及び「実施形態」は、「少なくとも1つの実施形態」と解釈されるべきである。用語「別の実施形態」は、「少なくとも1つの他の実施形態」と解釈されるべきである。用語「第1」、「第2」などは、異なるか又は同一の対象を指すことができる。以下の文中では、明示又は暗黙のその他の定義も含むことができる。文脈に明確な指示がない限り、用語の定義は説明全体において一致する。
【0037】
別途明記又は限定のない限り、用語「取り付け」、「接続」、「支持」、「結合」及びこれらの変形は、広い意味で用いられ、また、取り付け、接続、支持、結合の直接的、及び、間接的なものの双方を包含する。また、「接続」及び「結合」は、物理的又は機械的な接続又は結合に制限されるものではない。以下の説明において、同一の参照符号及び記号は、図面における同一、類似又は対応する部分を説明する。以下の文中では、明示又は暗黙のその他の定義も含むことができる。
【0038】
上述したように、グリッドが故障した場合、発電機は、常に、長時間稼働するステーション用の予備電力供給として使用する。グリッドが故障すると、発電機を起動して電力を生成して負荷に供給することができる。負荷が十分に大きい場合、発電機の周波数は、顕著に変化する可能性がある。
【0039】
商業、工業及びデータセンターのような負荷を含む多くの典型的な負荷は、±5%を越えない周波数変化に対して高い感度を有すると主張するが、100%負荷ステップに対して、典型的な発電機は、25%の周波数変化を有すると主張する。したがって、発電機がグリッドから全負荷を瞬間的に引き継ぐ場合、発電機の周波数変化は、負荷の耐えられる範囲を超える可能性がある。
【0040】
予備電池とも呼ばれる無停電電力供給装置(UPS)のようないくつかの補助電力供給は、電力供給システムにも用いられ、従来の電源が故障するか又は電圧が許容できないレベルに低下する場合に予備電力を供給する。補助電力供給として、UPSは、発電機が稼働し始め、負荷に電力を供給することを引き継ぐまで、エネルギー源(例えば、電池)から負荷に電力を供給する。
【0041】
同様に、1つの可能な問題は、発電機が既に起動してUPSから負荷を引き継ぐことができる場合、発電機が全負荷を瞬間的に引き継ぐと、発電機の周波数も大きな周波数変化が発生する可能性があることである。
【0042】
発電機の周波数の問題を管理する方法がいくつか提案されている。例えば、1つの方法は、周波数独立性と呼ばれる。最も一般的なUPSタイプは、二重変換UPSであり、それが二重変換を実現するため、出力(負荷)周波数が入力(発電機)周波数から独立することを許可し、これは「周波数独立」と呼ばれてよい。周波数独立は、出力周波数が一定に保持するが、入力周波数が顕著に変化してよいことを許可する。
【0043】
しかしながら、UPSは、全て周波数独立ではないため、それらの出力周波数は、入力周波数と関連付けられる。発電機の周波数が負荷の周波数制限を超えることを許可しない場合、発電機及びUPSのいくつかの構成は、いくつかの負荷を発電機に直接接続する可能性がある。
【0044】
もう1つの一般的な方法は、発電機ウォークイン式と呼ばれる。このような方法は、UPSが負荷を発電機にゆっくりと渡し、一回限り全て渡すことではないため、発電機が負荷を引き継ぐ時間があることにより、周波数変化を最大限に減少させる。
【0045】
ウォークイン型の機能性は、一般的に出力ランプとして実施される。ランプが急になる場合、発電機の周波数が制限値を超える可能性がある。ランプが非常に緩やかになる場合、UPSは、不必要に長い時間をかけて電力を発電機に伝送し、電池切れを起こすリスクがある。異なる発電機の動作に対してランプレートを設定しなければならない。
【0046】
したがって、本開示は、UPSを用いて発電機の周波数を制御する方法を提供する。発電機を検出することにより、発電機の周波数を調整して耐えられる範囲内に保持することができる。このような方式で、電力供給システムの安全性及び性能を改善することができる。
【0047】
図1は、本開示の実施形態に係る電気装置140を備えた電力供給システム100の概略的なブロック図を示す。
【0048】
図1に示すように、電力供給システム100は、グリッド110に結合される負荷120を含んでよい。一般的に、負荷120は、グリッド110により電力が供給されてよい。電力供給システム100は、発電機130をさらに含んでよい。発電機130は、負荷120に結合され、負荷120に用いられる予備電力供給とみなされ得る。以上に言及したように、グリッドが故障した場合、発電機130は、稼働し始め、電力を生成して負荷を引き継ぐことができる。
【0049】
電力供給システム100は、電気装置140をさらに含んでよく、以下、UPS 140と呼ばれてよい。UPS 140は、発電機130に結合されて発電機130の周波数を検出することができる検出回路141を含む。UPS 140は、検出回路141に結合されるコントローラ142をさらに含む。検出回路141は、発電機130の検出された周波数を示す信号を生成し、該信号をコントローラ142に送信することができる。コントローラ142は、検出された周波数が所定の周波数範囲外にあることを決定する場合、発電機の周波数を調整する。
【0050】
例えば、コントローラ142は、検出された周波数を示す信号を受信する場合、検出された周波数を閾値周波数と比較することができ、該閾値周波数は、発電機の属性に基づいて予め設定されるか又は予め決定される。閾値周波数は、上限及び下限を含んでよい。検出された周波数が上限を超えるか又は下限を下回る場合、コントローラ142は、動作して発電機の周波数を調整することができる。
【0051】
過渡期に顕著な周波数変化が発生する可能性があり、この間に、例えば、負荷は、発電機により電力供給から引き継がれてよい。また、負荷が迅速に変化すれば、周波数変化が発生する可能性もある。UPSを用いて発電機130の周波数を検出し、発電機130の周波数が耐えられる範囲を超える場合、UPS 140により発電機130の周波数変化を調整することができる。このような方式で、発電機の周波数が設定された制限値を超える場合、発電機130への電力の変化率及び発電機からの電力の変化率に対するアクティブ制御を実現することができる。周波数制限を超える前に発電機に対応付けられた電力供給に干渉せず、周波数制限を超える時に電力の変化率を変更して周波数制限を超えることを防止する。
【0052】
いくつかの実施形態では、UPS 140の検出回路141は、さらに、負荷120に結合され、負荷120で消費される電力を検出するように構成される。検出回路141は、負荷120で消費される電力を示す他の信号を生成し、当該他の信号をコントローラ142に送信することができる。
【0053】
コントローラ142は、第2の信号を受信する場合、第2の信号に基づいて発電機130の周波数を、ある周波数量調整することができる。すなわち、コントローラ142は、負荷120で消費される電力に基づいて、調整されるべき周波数量を決定することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、コントローラ142は、第1の信号及び第2の信号に基づいて、発電機130から負荷120までの電力レベルを調整することにより、発電機130の周波数をさらに調整することができる。
【0055】
負荷で消費される電力及び発電機の周波数を測定することにより、コントローラは、発電機の調整されるべき周波数量又は特定の電力レベルを決定するため、より正確で効果的な調整を行うことができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、UPS 140は、コントローラ142に結合され得るエネルギー貯蔵装置143をさらに含んでよい。コントローラ142は、さらに、エネルギー貯蔵装置143により、発電機130から負荷120までの電力レベルを調整することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、コントローラ142は、検出された周波数が所定の周波数範囲の上限閾値周波数を超えることを決定する場合、検出された周波数及び上限閾値周波数に基づいて、調整されるべき周波数量を決定することができる。また、コントローラ142は、周波数量と、負荷で消費される電力とに基づいて、UPS 140からロードされるべき電力量を決定することができる。その後、決定された電力量をUPS 140から発電機130に伝送することができる。この過程の間に、エネルギー貯蔵装置143は、放電して、決定された電力量を供給することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、コントローラ142は、検出された周波数が所定の周波数範囲の下限閾値周波数より低いことを決定する場合、検出された周波数及び下限閾値周波数に基づいて、調整されるべき周波数量を決定することができる。また、コントローラ142は、周波数量と、負荷で消費される電力とに基づいて、電気装置にアンロードされるべき電力量を決定することができる。そして、決定された電力量を発電機130からUPS 140に吸收することができる。この過程の間に、吸収された電力によりエネルギー貯蔵装置143を充電することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、UPS 140は、エネルギー貯蔵装置143に結合される電力電子装置146をさらに含んでよい。電力電子装置146は、電力を負荷140に伝送するように構成されてよい。例えば、電力電子装置146は、任意の適切な電力変換素子を含んでよい。
【0060】
上述したように、発電機の周波数値が所定の範囲内に維持されるべきであり、耐えられない周波数変化を回避する。このような方式で、電気装置にかかる負荷を増加させるか又は減少させて、発電機の周波数を制限値に戻すことにより、発電機及び発電機に接続された負荷の安全を保証することができる。
【0061】
UPS 140は、整流器又はインバータのような他の部品をさらに含んでよい。図2A及び図2Bは、本開示の実施形態に係る電気装置の整流器及びインバータの実施形態を示す。
【0062】
図に示すように、整流器144とインバータ145は、それぞれエネルギー貯蔵装置143に結合されてよい。例えば、整流器144は、エネルギー貯蔵装置143の充電の間、発電機130からの交流電圧を直流電圧に変換するように構成されてよい。インバータ145は、エネルギー貯蔵装置143の放電の間、エネルギー貯蔵装置143からの直流電圧を交流電圧に変換するように構成されてよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、整流器144及びインバータ145は、発電機130に結合されて電力を伝送することができる。整流器144及びインバータ145は、コントローラ142に結合されてコントローラから受信した指令に基づいて変換を行うことができる。
【0064】
したがって、発電機の周波数の自動調整を実現するために、UPS 140の整流器、インバータ及びエネルギー貯蔵装置を用いて、エネルギー伝送及び変換を実行してよく、これらは、いずれも該解決手段のための必要な構成要素である。
【0065】
UPS 140や発電機の周波数の調整方法は、様々な適用シーンで利用可能である。図3A図3Cは、本開示の実施形態に係る電気装置の異なる適用シーンを示す。
【0066】
例えば、図3Aにおいて、発電機130は、UPSの出力に結合され、負荷120に直接結合され、図3Bにおいて、発電機130は、UPS 140の入力に結合され、UPSは、図3Bにおける負荷120に直接結合される。図3Cにおいて、他の負荷150も発電機130に結合される。負荷が発電機に直接結合される場合、図3B及び図3Cに示すように、発電機の周波数が負荷の周波数制限を超えることは許可されていない。本開示のUPSに対するアクティブ制御によれば、UPSのタイプに関わらず、発電機の周波数が耐えられない周波数値に達することを防止することができる。例えば、UPSは、二重変換UPSとして実施することができない。
【0067】
したがって、本開示に係るUPSは、様々な電力供給環境下において発電機の周波数調整を実現することができる。発電機が負荷に直接接続されても電気装置が発電機と負荷との間に結合されても、電気装置は、発電機の周波数が所定の範囲内に調整されることを確保する。
【0068】
図4は、本開示の実施形態に係る電気装置のバイパス素子の実施形態を示す。図に示すように、UPS 140は、バイパス素子170をさらに含んでよい。バイパス素子170は、コントローラ(図示せず)に結合されてよい。負荷で消費される電力が完全に発電機から伝送される場合、コントローラは、UPS 140をバイパスすることができる。
【0069】
該解決手段において、発電機の周波数が設定された制限値を超える場合、UPSは、発電機への電力の変化率及び発電機からの電力の変化率をアクティブに制御する。周波数制限を超える場合のみに干渉することは有利であり、この場合に電力の変化率を変更して周波数制限を超えることを防止する。このような方式で、UPSは、発電機の周波数が周波数制限を超えない場合、発電機の処理可能な速度で発電機へ、又は発電機から電力をできるだけ早く伝送する。
【0070】
また、電力の変化率を自動的に変更することにより、システムは、異なる発電機の動作に対して校正を行う必要がない。発電機の周波数が決して設定可能な制限値を超えることがないため、UPSは、周波数に関連するUPSであってよく、発電機に直接接続された負荷も安全である。
【0071】
本開示は、さらに、UPS 140を備えた電力供給システムを提供する。電力供給システムは、図1及び図3A図3Cに示す電力供給システム100のうちのいずれか1つであってよいが、これに限定されない。
【0072】
また、理解すべき点として、コントローラ142は、UPS 140に集積されてよく、例えば、UPS 140に埋め込まれたチップである。コントローラ142は、UPS 140とは別体の任意の装置、素子、部品として実施されてよい。
【0073】
さらに、本開示は、UPSの製造方法を提供する。図5は、本開示の実施形態に係る電気装置の製造方法のフローチャートを示す。
【0074】
610では、発電機に結合され、発電機の周波数を検出するように構成される検出回路を提供する。620では、検出回路に結合され、検出された周波数を示す第1の信号を受信し、検出された周波数が所定の周波数範囲外にあることを決定することに応答して発電機の周波数を調整するように構成されるコントローラを提供する。
【0075】
本開示の解決手段において、UPSは、発電機の電圧周波数及び負荷の電力を測定することができる。UPSは、任意の負荷ステップ(増加又は減少)をサポートするように構成されて、負荷の増加及び減少により、それぞれエネルギー貯蔵装置を放電するか又は充電する。ランプ又はフィルタリングの方式で、UPSは、負荷を発電機に渡すことにより、そのエネルギー貯蔵のゼロ充電又はゼロ放電を実現する。しかし、発電機の電圧周波数が設定された周波数上限又は下限に達する場合、UPSは、現在の電力設定値を保持する。発電機の電圧周波数が設定された周波数制限を超える場合、UPSは、その負荷を増加させるか又は減少させることにより、発電機の周波数を制限値に戻す。
【0076】
理解されるように、本開示の上記詳細な実施形態は、本開示の原理を例示するか又は解釈するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではない。したがって、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、任意の修正、同等の置換及び改善などは、いずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。同時に、本開示の添付の特許請求の範囲は、特許請求の範囲及び境界又はその範囲及び境界の均等物に入る全ての変形及び修正をカバーすることを目的としている。

以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
発電機(130)に結合され、前記発電機(130)の周波数を検出するように構成される検出回路(141)と、
前記検出回路(143)に結合され、検出された周波数を示す第1の信号を受信し、前記検出された周波数が所定の周波数範囲外にあることを決定することに応答して前記発電機(130)の前記周波数を調整するように構成されるコントローラ(142)と、を含む、電気装置(140)。
[C2]
前記検出回路(141)は、さらに、負荷(120)に結合され、前記負荷(120)で消費される電力を検出するように構成され、前記コントローラ(142)は、さらに、前記負荷(120)で消費される前記電力を示す第2の信号を受信し、前記第2の信号に基づいて前記発電機(130)の前記周波数を、ある周波数量調整するように構成される、C1に記載の電気装置(140)。
[C3]
前記コントローラ(142)は、さらに、前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて前記発電機(130)から前記負荷(120)までの電力レベルを調整することにより、前記発電機(130)の前記周波数を調整するように構成される、C2に記載の電気装置(140)。
[C4]
前記発電機(130)及び前記コントローラ(142)に結合される整流器(144)と、
前記整流器(144)及び前記コントローラ(142)に結合されるエネルギー貯蔵装置(143)と、
前記エネルギー貯蔵装置(143)及び前記コントローラ(142)に結合されるインバータ(145)と、をさらに含み、
前記コントローラ(142)は、前記整流器(144)、前記エネルギー貯蔵装置(143)及び前記インバータ(145)により前記発電機(130)から前記負荷(120)までの前記電力レベルを調整するように構成される、C3に記載の電気装置(140)。
[C5]
前記コントローラ(142)は、さらに、
前記検出された周波数が前記所定の周波数範囲の上限閾値周波数を超えることを決定することに応答して、前記検出された周波数及び前記上限閾値周波数に基づいて、調整されるべき前記周波数量を決定し、
前記周波数量と、前記負荷(120)で消費される前記電力とに基づいて、前記電気装置(140)よりロードされるべき電力量を決定し、
前記エネルギー貯蔵装置(143)を放電することにより、前記電力量を前記エネルギー貯蔵装置(143)から前記発電機(130)に伝送するように構成される、C4に記載の電気装置(140)。
[C6]
前記コントローラ(142)は、さらに、
前記検出された周波数が前記所定の周波数範囲の下限閾値周波数より低いことを決定することに応答して、前記検出された周波数及び前記下限閾値周波数に基づいて、調整されるべき前記周波数量を決定し、
前記周波数量と、前記負荷(120)で消費される前記電力とに基づいて前記電気装置(140)にアンロードされるべき電力量を決定し、
前記エネルギー貯蔵装置(143)を充電することにより、前記電力量を前記発電機(120)から前記エネルギー貯蔵装置(143)へ吸収するように構成される、C4に記載の電気装置(140)。
[C7]
前記インバータ(145)は、前記エネルギー貯蔵装置(143)の前記放電の間、前記エネルギー貯蔵装置(143)からの直流電圧を交流電圧に変換するように構成される、C5に記載の電気装置(140)。
[C8]
前記整流器(144)は、前記エネルギー貯蔵装置(143)の前記充電の間、前記発電機(120)からの交流電圧を直流電圧に変換するように構成される、C6に記載の電気装置(140)。
[C9]
前記発電機(130)は、前記電気装置(140)と前記負荷(120)との間に結合される、C2に記載の電気装置(140)。
[C10]
前記電気装置(140)は、前記発電機(130)と前記負荷(120)との間に結合される、C2に記載の電気装置(140)。
[C11]
他の負荷(150)は、前記発電機(130)と前記電気装置(140)との間に結合され、前記発電機(130)と前記電気装置(140)のうちの少なくとも1つから電力が供給されるように構成される、C10に記載の電気装置(140)。
[C12]
前記電気装置(140)は、前記コントローラ(142)に結合されるバイパス素子(170)をさらに含み、前記コントローラ(142)は、さらに、前記負荷(120)で消費される前記電力が発電機から伝送されることを決定することに応答して、前記電気装置(140)をバイパスするように構成される、C2に記載の電気装置(140)。
[C13]
前記電気装置(140)は、無停電電力供給装置UPSである、C1~12のいずれか1項に記載の電力供給システム。
[C14]
負荷(120)と、
前記負荷(120)に結合され、前記負荷(120)に電力を供給するように構成される発電機(130)と、
前記発電機(130)及び前記負荷(120)に結合されるC1~13のいずれか1項に記載の電気装置(140)と、を含む、電力供給システム(100)。
[C15]
発電機(130)に結合され、前記発電機(130)の周波数を検出するように構成される検出回路(141)を提供することと、
前記検出回路(143)に結合され、検出された周波数を示す第1の信号を受信し、前記検出された周波数が所定の周波数範囲外にあることを決定することに応答して前記発電機(130)の前記周波数を調整するように構成されるコントローラ(142)を提供することと、を含む、電気装置(140)の製造方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5