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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20221121BHJP
   B60T 8/88 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B60R16/02 660G
B60T8/88
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021538904
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019073129
(87)【国際公開番号】W WO2020057934
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】18195230.0
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】ファルク ヘッカー
(72)【発明者】
【氏名】タマーシュ ラップ
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518857(JP,A)
【文献】特表2001-522331(JP,A)
【文献】特表2016-507138(JP,A)
【文献】特開昭59-155262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60T 8/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御システムであって、
第1の通信ネットワーク(14)と、
第1の操作コンポーネント(8)と、
前記通信ネットワーク(14)および前記第1の操作コンポーネント(8)に接続された第1の車両制御ユニット(1)であって、前記第1の操作コンポーネント(8)への第1の信号によって、前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の第1のデータ接続(5)を制御するように構成された第1の車両制御ユニット(1)と、
前記第1の操作コンポーネント(8)に接続された第2の車両制御ユニット(2)であって、前記第1の操作コンポーネント(8)への第2の信号によって、前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第2の車両制御ユニット(2)との間の第2のデータ接続(6)を制御するように構成された第2の車両制御ユニット(2)と、
を含み、
前記第1のデータ接続(5)および前記第2のデータ接続(6)は、前記第1のデータ接続(5)および前記第2のデータ接続(6)のうちの少なくとも1つが有効または無効になるように制御することができ
前記第1の車両制御ユニット(1)は、前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の前記第1のデータ接続(5)を無効にするように構成されている、
車両制御システム。
【請求項2】
前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の前記第1のデータ接続(5)は、オプトカプラ、ガルバニックスイッチ、または誘導結合スイッチのうちの1つを含むスイッチを含む、請求項1記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記第1の操作コンポーネント(8)は、該第1の操作コンポーネント(8)をそれぞれ前記第1および第2の車両制御ユニット(1,2)のうちの少なくとも1つに接続する1つまたは複数のトランシーバ(10,11)を含む、請求項1または2記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記第2の車両制御ユニット(2)は、前記第1の通信ネットワーク(14)から分離された第2の通信ネットワーク(15)に接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記第2の車両制御ユニット(2)は、第1の車両制御ユニット(1)に接続され、データが、前記第1および前記第2の車両制御ユニット(1,2)間の接続を介して、前記第1の通信ネットワーク(14)から前記第1の車両制御ユニット(1)および前記第2の車両制御ユニット(2)に転送され得る、請求項1から4までのいずれか1項記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記第1の車両制御ユニット(1)は、マスター車両制御ユニットであり、前記第2の車両制御ユニット(2)は、スレーブ車両制御ユニットであり、前記マスター/スレーブの役割は、少なくとも1つの制御ユニットによって決定される、請求項1から5までのいずれか1項記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記車両制御システムは、第2の操作コンポーネント(9)をさらに含み、前記第1の車両制御ユニット(1)は、前記第2の操作コンポーネント(9)に接続され、前記第1の車両制御ユニット(1)は、前記第2の操作コンポーネント(9)への第3の信号によって、前記第2の操作コンポーネント(9)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の第3のデータ接続を制御するように構成され、前記第2の車両制御ユニット(2)は、前記第2の操作コンポーネント(9)に接続され、前記第2の車両制御ユニット(2)は、前記第2の操作コンポーネント(9)への第4の信号によって、前記第2の操作コンポーネント(9)と前記第2の車両制御ユニット(2)との間の第4のデータ接続を制御するように構成され、前記第3のデータ接続および前記第4のデータ接続は、前記第3のデータ接続および前記第4のデータ接続のうちの少なくとも1つが有効または無効になるように制御することができる、請求項1から6までのいずれか1項記載の車両制御システム。
【請求項8】
第1の通信ネットワーク(14)と、第1の操作コンポーネント(8)と、前記通信ネットワーク(14)および前記第1の操作コンポーネント(8)に接続された第1の車両制御ユニット(1)と、前記第1の操作コンポーネント(8)に接続された第2の車両制御ユニット(2)と、を備えた車両制御システムを用いて車両を制御する方法であって、
前記方法は、
前記第1の操作コンポーネント(8)への第1の信号によって、前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の第1のデータ接続(5)を有効にするステップと、
前記第1の操作コンポーネント(8)への第2の信号によって、前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第2の車両制御ユニット(2)との間の第2のデータ接続(6)を有効にするステップと、
前記第1の車両制御ユニット(1)において、前記第1の操作コンポーネント(8)からデータを受信するステップと、
前記第1の操作コンポーネント(8)から受信した前記データが誤っていることを決定するステップと、
前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の前記第1のデータ接続(5)を無効にするために、前記第1の車両制御ユニット(1)から前記第1の操作コンポーネント(8)に信号を送信するステップと、
前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の前記第1のデータ接続(5)を無効にするステップと、
を含む、
方法。
【請求項9】
前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の前記第1のデータ接続(5)を無効にする前記ステップは、前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の通信線路を物理的に分離するステップを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記第1の操作コンポーネント(8)と前記第2の車両制御ユニット(2)との間の前記第2のデータ接続(6)を介してデータを交換するステップをさらに含む、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記第1の車両制御ユニット(1)と前記第2の車両制御ユニット(2)との間でデータを交換するステップと、
前記第1の車両制御ユニット(1)と前記第2の車両制御ユニット(2)との間の前記データの交換に基づいて、前記第1かまたは前記第2のデータ接続(5,6)によって転送された前記データのエラーを決定するステップと、
エラーを含んだデータが前記第1かまたは前記第2のデータ接続(5,6)によってそれぞれ転送されたかどうかに応じて前記第1かまたは前記第2のデータ接続(5,6)を無効にするステップと、
をさらに含む、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記第1の車両制御ユニット(1)と前記第2の車両制御ユニット(2)との間でデータを交換するステップと、
前記第1の車両制御ユニット(1)または前記第2の車両制御ユニット(2)のエラーを決定するステップと、
誤りのある前記第1かまたは前記第2の車両制御ユニット(1,2)を無効にするステップと、
前記第1かまたは前記第2の車両制御ユニット(1,2)のうちの無効になっていない他の一方と前記第1の操作コンポーネント(8)との間でデータを交換するステップと、
をさらに含む、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記第1の通信ネットワーク(14)のエラーを決定するステップと、
前記第1および前記第2の車両制御ユニット(1,2)間の接続(7)を介して、前記第2の車両制御ユニット(2)に接続された第2の通信ネットワーク(15)から前記第1の車両制御ユニット(1)にデータを転送するステップと、
をさらに含む、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記第1の操作コンポーネント(8)と並列に前記第1および前記第2の車両制御ユニット(1,2)に接続された第2の操作コンポーネント(9)と、前記第1の車両制御ユニット(1)との間の第3のデータ接続を、前記第2の操作コンポーネント(9)に送信される第3の信号によって有効にするステップと、
前記第1の車両制御ユニット(1)において、前記第3のデータ接続を介して前記第2の操作コンポーネント(9)からデータを受信するステップと、
前記第2の操作コンポーネント(9)から受信した前記データが誤っていることを決定するステップと、
前記第2の操作コンポーネント(9)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の前記第3のデータ接続を無効にするために、前記第1の車両制御ユニット(1)から前記第2の操作コンポーネント(9)に信号を送信するステップと、
前記第2の操作コンポーネント(9)と前記第1の車両制御ユニット(1)との間の前記第3のデータ接続を無効にするステップと、
前記第2の操作コンポーネントと前記第2の車両制御ユニットとの間の第4のデータ接続を介してデータを交換するステップと、
をさらに含む、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ可読媒体であって、該コンピュータ可読媒体は、コンピュータによって実行されるときに、請求項9から14までのいずれか1項記載の方法を実施させる命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用車のブレーキアクチュエータなどの1つまたは複数の操作コンポーネントと共に使用するための車両制御システムに関する。現代の商用車では、ますます多くの電子制御回路が使用されている。とりわけ、電子制御回路は、車両の空気圧作動式制動システムに統合され、当該制動システムを自動化するために使用されている。今日までの到達水準の車両レイアウトのブレーキシステムで使用される多くの電子制御回路は、単一の制御回路として実装されている。安全上の理由から、電子制御回路の誤動作は、制動システムを電子制御から空気圧制御へスイッチバックさせるため、車両の運転者は制動ステムをまだマニュアル操作することができる。
【0002】
電子回路の障害状況で運転者を制動システムのマニュアル操作から解放し、制動システムの電子コンポーネントが故障する状況を含めて制動システムの電子制御期間を長くすることは望ましいものであろう。
【0003】
米国特許第9195232号明細書には、故障した運用システムの一般的な障害を補償するための方法およびシステムが記載されている。システムには、推進ブレーキやステアリングなどの車両の機能を実行するように構成された一次コントローラと、該一次コントローラとの冗長的な構成で構成された二次コントローラとが含まれる。これらのコントローラは、相互のクロスチェックを実行することができ、内部セルフチェックも同様に各々実行することができる。付加的に、このシステムは、障害の検出に基づいてコントローラ間で車両の制御を移すように構成された制御モジュールを含むことができる。この制御モジュールは、一般的な障害信号を制御モジュールに出力させるコントローラの一般的な障害を検出することができる。それに応じて、システムは、当該システムが制御を一次コントローラに戻すことができるようになるまで、車両機能を実行するように構成されたセーフティコントローラに制御を移すことができる。
【0004】
米国特許第20160009257号明細書には、第1および第2の制動モジュールを含む自律的サブシステムを含んだシステムが記載されている。これらの各モジュールは、プロセッサと、障害を検出するためにプロセッサによって実行可能な命令を格納するメモリとを含んでいる。このシステムは、第2の制動モジュールからの信号に応じて制動機構を作動するようにプログラミングされたブレーキサブシステムをさらに含む。この自律的サブシステムは、障害が検出されたかどうかに依存してブレーキ機構に信号を提供するために制動モジュールの1つを選択するようにさらにプログラムされている。
【0005】
本発明の課題は、障害が起きている間も車両制御システムの電子制御が維持されるように、車両制御システムのコンポーネントのうちの1つの障害を信頼性の高い安全な方法で処理することができるように改善された車両電子制御システムを提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有する車両制御システムによって解決される。本発明の実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明によれば、第1の通信ネットワークと、第1の操作コンポーネントと、通信ネットワークおよび第1の操作コンポーネントに接続された第1の車両制御ユニットであって、ここで、第1の操作コンポーネントへの第1の信号によって、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第1のデータ接続を制御するように構成された第1の車両制御ユニットと、第1の操作コンポーネントに接続された第2の車両制御ユニットであって、ここで、第1の操作コンポーネントへの第2の信号によって、第1の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の第2のデータ接続を制御するように構成された第2の車両制御ユニットと、を含み、ここで、第1のデータ接続および第2のデータ接続は、第1のデータ接続および第2のデータ接続のうちの少なくとも1つが有効または無効になるように第1または第2の車両制御ユニットによって制御することができる、車両制御システムが提供されている。
【0008】
第1のデータ接続および第2のデータ接続のうちの少なくとも1つを無効にするためのシステムの能力は、障害の場合に、第1の操作コンポーネントを、第1および第2の車両制御ユニットのうちの少なくとも1つから物理的に分離できることを保証し、障害による影響を受ける通信線路の遮断を回避することができる。とりわけ、これは、障害が他の接続された操作コンポーネントに影響を与えるのを防ぎ、その一方で、システムおよび第1の操作コンポーネントの操作性は、第1の操作コンポーネントを第1および第2の車両制御ユニットの1つにまだ接続している他のデータ接続による冗長的もしくは並列的な制御によって維持されている。第1のデータ接続および第2のデータ接続の一方または両方は、1つまたは複数の有線もしくはデータバスを含む通信線路を含むことができる。代替的に、無線データ接続を使用することもできる。
【0009】
第1および第2の車両制御ユニットから第1の操作コンポーネントへの第1および第2の信号の転送のために、車両制御システムは、第1および第2の車両制御ユニットをそれぞれ第1の操作コンポーネントに接続する1つまたは複数の有線またはデータバスを含むそれぞれの通信または信号線路を含むことができる。第1の車両制御ユニット、第2の車両制御ユニットと、第1の操作コンポーネントもしくは他の操作コンポーネントとの間の信号線路は、第1の操作コンポーネントまたは他の操作コンポーネントのためのウェイクアップ線路であり得る。ただし、限定を意味するわけではないが無線信号線路も同様に使用することができる。第1および第2の車両制御ユニットを第1の操作コンポーネントに接続するためにシステムで使用されるデータバスは、例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN)バスであり得る。
【0010】
一実施形態によれば、第1の操作コンポーネントは、データ処理能力を有し、1つまたは複数の集積回路を含む「インテリジェント」操作コンポーネントであり得る。
【0011】
一実施形態によれば、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第1のデータ接続は、オプトカプラ、ガルバニックスイッチ、または誘導結合スイッチのうちの1つを含むスイッチを含んでいる。スイッチは、信号線路を介してまたは無線で、第1の車両制御ユニットから対応する制御信号を受信することができる第1の操作コンポーネントによって作動させることができる。スイッチは、制御信号を受信することなく、第1の操作コンポーネントによって直接または自律的に作動させることも可能である。スイッチは、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の通信線路に接続または挿入することができる。
【0012】
他の実施形態によれば、第1の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の第2のデータ接続も、オプトカプラ、ガルバニックスイッチ、または誘導結合スイッチのうちの1つを含むスイッチを含んでいる。スイッチは、信号線路を介してまたは無線で、第2の車両制御ユニットから対応する制御信号を受信することができる第1の操作コンポーネントによって作動させることができる。スイッチは、制御信号を受信することなく、第1の操作コンポーネントによって直接または自律的に作動させることも可能である。スイッチは、第1の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の通信線路に接続または挿入することができる。
【0013】
さらなる実施形態によれば、第1の操作コンポーネントは、該第1の操作コンポーネントをそれぞれ第1および第2の車両制御ユニットのうちの少なくとも1つに接続する1つまたは複数のトランシーバを含む。1つまたは複数のトランシーバの各々は、上記のようにスイッチと結合もしくは接続することができ、スイッチを介して、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の通信線路および/または第1の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の通信線路に接続することができ、それにより、データを、第1の操作コンポーネントと第1および第2の車両制御ユニットとの間で転送することができる。1つまたは複数のトランシーバの各々は、第1および第2の車両制御ユニットと並列に接続することができる1つまたは複数の他の操作コンポーネントに結合もしくは接続することもできる。さらに、1つまたは複数のトランシーバの各々は、それぞれ第1および第2の車両制御ユニットから1つまたは複数の制御信号を受信するために、信号線路によって、または無線で第1および第2の車両制御ユニットのうちの少なくとも1つに結合することができる。したがって、これらのトランシーバは、それらが接続されている車両制御ユニットから制御信号を受信するように構成されており、さらにこれらのトランシーバは、トランシーバに接続された通信線路を分離するかまたは制御信号に従って通信線路を接続するために、トランシーバに接続されたスイッチを制御するように構成されている。
【0014】
一実施形態によれば、第2の車両制御ユニットは、第1の通信ネットワークから分離された第2の通信ネットワークに接続されている。2つの別個の通信ネットワークを提供することは、冗長性または重複性を提供することができ、したがって、システムの操作コンポーネントや車両制御ユニットなどの他の重複コンポーネントに加えて、制御システムの安全性を向上させる。
【0015】
一実施形態によれば、第2の車両制御ユニットは、第1の車両制御ユニットに接続され、データが、第1および第2の車両制御ユニット間の接続を介して、第1の通信ネットワークから第1の車両制御ユニットおよび第2の車両制御ユニットに転送され得る。車両制御ユニット間の接続は、車両通信ネットワークの1つが障害を起こしているかまたはダウンしている状況を緩和させることを可能にさせる。そのような場合、無傷の車両通信ネットワークからのデータは、車両制御ユニット間の接続を介して他の車両制御ユニットに転送することができる。車両制御ユニット間の接続は、安全性を向上させるために、車両制御ユニットの一方または両方による妥当性チェックまたはクロスチェックタスクを実行するための機会も提供する。
【0016】
一実施形態によれば、第1の車両制御ユニットは、マスター車両制御ユニットであり、第2の車両制御ユニットはスレーブ車両制御ユニットであり、ここで、マスター/スレーブの役割は、少なくとも1つの制御ユニットによって決定および制御される。
【0017】
一実施形態によれば、システムは、第2の操作コンポーネントをさらに含み、ここで、第1の車両制御ユニットは、第2の操作コンポーネントに接続され、第1の車両制御ユニットは、第2の操作コンポーネントへの第3の信号によって、第2の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第3のデータ接続を制御するように構成されており、第2の車両制御ユニットは、第2の操作コンポーネントに接続され、第2の車両制御ユニットは、第2の操作コンポーネントへの第4の信号によって、第2の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の第4のデータ接続を制御するように構成されており、ここで、第3のデータ接続および第4のデータ接続は、第3のデータ接続および第4のデータ接続のうちの少なくとも1つが有効または無効になるように制御することができる。
【0018】
上記で説明した第1および第2のデータ接続と同様に、第3のデータ接続および第4のデータ接続の一方または両方を無効にするためのシステムの能力がシステム内に存在する場合、それは、障害の場合に、第2の操作コンポーネントを、第3および第4の車両制御ユニットのうちの少なくとも1つから物理的に分離できることを保証し、障害による影響を受ける通信線路の遮断を回避することができる。とりわけ、これは、障害が第1の操作コンポーネントなどの他の接続された操作コンポーネントに影響を与えるのを防ぎ、その一方で、システムおよび第2の操作コンポーネントの操作性は、第2の操作コンポーネントを第3および第4の車両制御ユニットの1つにまだ接続している他のデータ接続による冗長的な制御によって維持されている。第3のデータ接続および第4のデータ接続は、第1および第2のデータ接続と同様に構成することができる。例えば、第1および第2のデータ接続と同様に、第3および第4のデータ接続の一方または両方は、1つまたは複数の有線もしくはデータバスを含む通信線路を含むことができる。ただし、無線データ接続を使用することもできる。
【0019】
第1および第2の車両制御ユニットから第2の操作コンポーネントへの第3および第4の信号の転送のために、車両制御システムは、第1および第2の制御信号のために使用される信号線路に対応するそれぞれの信号線路を含むことができる。これらの信号線路は、第1および第2の車両制御ユニットをそれぞれ第2の操作コンポーネントに接続する1つまたは複数の有線もしくはデータバスを含むことができる。第1の車両制御ユニット、第2の車両制御ユニットと、第2の操作コンポーネントもしくは他の操作コンポーネントとの間の信号線路は、操作コンポーネントのウェイクアップ線路であり得る。ただし、限定を意味するわけではないが無線伝送線路を使用することもできる。
【0020】
一実施形態によれば、第2の操作コンポーネントも、データ処理能力を有し、1つまたは複数の集積回路を含む「インテリジェント」な操作コンポーネントであり得る。
【0021】
一実施形態によれば、第2の操作コンポーネントと第1および第2の車両制御ユニットとの間の第3のデータ接続および第4のデータ接続の一方または両方は、それぞれ、オプトカプラ、ガルバニックスイッチ、または誘導結合スイッチのうちの1つを含むスイッチを含んでいる。このスイッチもしくはこれらのスイッチは、信号線路を介してまたは無線で、第1の車両制御ユニットまたは第2の車両制御ユニットから1つまたは複数の対応する制御信号を受信できる第2の操作コンポーネントによって作動させることができる。このスイッチもしくはこれらのスイッチは、第2の操作コンポーネントが対応して構成されている場合、制御信号を受信することなく、第2の操作コンポーネントによって直接または自律的に作動させることも可能な場合がある。スイッチは、第2の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の通信線路、または第2の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の対応する通信線路に接続または挿入することができる。
【0022】
さらなる実施形態によれば、第2の操作コンポーネントは、該第2の操作コンポーネントをそれぞれ第1および第2の車両制御ユニットのうちの少なくとも1つに接続する1つまたは複数のトランシーバを含む。1つまたは複数のトランシーバの各々は、上記のようにスイッチと結合もしくは接続することができ、第2の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の通信線路または第2の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の通信線路に接続することができ、それにより、データを、第2の操作コンポーネントと第1および第2の車両制御ユニットとの間でそれぞれ転送することができる。1つまたは複数のトランシーバの各々は、第1の操作コンポーネントまたはその対応するトランシーバのような1つまたは複数の他の操作コンポーネントに結合もしくは接続することもできる。さらに、1つまたは複数のトランシーバの各々は、それぞれ第1および第2の車両制御ユニットから1つまたは複数の制御信号を受信するために、信号線路のようなさらなる線路によって、または無線で第1および第2の車両制御ユニットのうちの少なくとも1つに結合することができる。
【0023】
一実施形態によれば、第1および第2の操作コンポーネントのうちの少なくとも1つは、車両のブレーキアクチュエータ、ステアリングアクチュエータ、または推進アクチュエータのうちの1つである。
【0024】
他の実施形態によれば、車両制御システムは、上記で説明した第1および第2の操作コンポーネントならびに第1および第2の制御ユニットと同じかまたは同様の特徴を備える1つまたは複数の付加的操作コンポーネントならびに1つまたは複数の付加的車両制御ユニットを含むことができる。
【0025】
本発明によれば、車両制御システムを用いて車両を制御する方法が提供される。この車両制御システムは、第1の通信ネットワークと、第1の操作コンポーネントと、通信ネットワークおよび第1の操作コンポーネントに接続された第1の車両制御ユニットと、第1の操作コンポーネントに接続された第2の車両制御ユニットと、を備え得る。この方法は、第1の操作コンポーネントへの第1の信号によって、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第1のデータ接続を有効にするステップと、第1の車両制御ユニットにおいて、第1のデータ接続を介して第1の操作コンポーネントからデータを受信するステップと、第1の操作コンポーネントから受信したデータが誤っていることを決定するステップと、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第1のデータ接続を無効にするために、第1の車両制御ユニットから第1の操作コンポーネントに信号を送信するステップと、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第1のデータ接続を無効にするステップと、を含む。
【0026】
第1のデータ接続を無効にすることは、データ障害の場合に、第1の操作コンポーネントが第1の車両制御ユニットから分離されることを保証し、ひいては障害による影響を受ける通信線路の遮断を回避することができる。これは、障害が他の接続された操作コンポーネントに影響を与えるのを防ぐことができ、その一方で、車両制御システムおよび第1の操作コンポーネントの操作性は、第1の操作コンポーネントを第2の車両制御ユニットにまだ接続している他のデータ接続による冗長的な制御によって維持されている。
【0027】
一実施形態によれば、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第1のデータ接続を無効にするステップは、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の通信線路を物理的に分離するステップを含む。第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第1のデータ接続は、オプトカプラ、ガルバニックスイッチまたは誘導結合スイッチのうちの1つを含む通信ラインに接続されたスイッチを含むことができる。スイッチは、信号線路を介してまたは無線で、第1の車両制御ユニットから対応する制御信号を受信することができる第1の操作コンポーネントによって作動させることができる。スイッチを作動させることにより、通信線路は物理的に分離される。制御信号は、例えば論理的ローレベルに引き込むことによって第1の車両制御ユニットと第1の操作コンポーネントとの間のウェイクアップ線路を制御する第1の車両制御ユニットによって、第1の車両制御ユニットから第1の操作コンポーネントに送信することができる。ただし、この信号は、異なるやり方で、例えば無線で転送することもできる。
【0028】
第1の操作コンポーネントは、システムに関連して上記で説明したように、該第1の操作コンポーネントをそれぞれ第1および第2の車両制御ユニットのうちの少なくとも1つに接続する1つまたは複数のトランシーバを含むことができる。1つまたは複数のトランシーバの各々は、上記のスイッチと結合もしくは接続することができ、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の通信線路または第1の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の通信線路に接続することができ、それにより、データを、第1の操作コンポーネントと第1および第2の車両制御ユニットとの間で転送することができる。1つまたは複数のトランシーバの各々は、1つまたは複数の他の操作コンポーネントに結合もしくは接続することもできる。付加的に、1つまたは複数のトランシーバの各々は、それぞれ第1および第2の車両制御ユニットから1つまたは複数の制御信号を受信するために、ウェイクアップ線路もしくは他の信号線路によって、または無線で第1および第2の車両制御ユニットのうちの少なくとも1つに結合することができる。
【0029】
第1の操作コンポーネントは、第1の車両制御ユニットと同じやり方で第2の車両制御ユニットに接続することができ、第2のデータ接続は、第1のデータ接続に関連して説明したのと同じやり方で構成および制御することができる。
【0030】
これは、第1の操作コンポーネントが誤って動作するかまたは障害のあるデータを提供することを第1および第2の車両制御ユニットのうちの1つが識別した場合に、対応する制御信号を第1の操作コンポーネントに送信することによって、エラーの伝播を回避するために、第1の操作コンポーネントを、該第1の操作コンポーネントがそれに接続される対応する第1または第2のデータ接続から分離できることを意味する。
【0031】
一実施形態によれば、本方法は、第1の操作コンポーネントへの第2の信号によって、第1の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の第2のデータ接続を有効にするステップを含む。この第2のデータ接続は、誤ったデータが第1のデータ接続によって転送されていることを決定した瞬間にもしくは決定した後に有効にすることができる。代替的に、それが少なくとも部分的に第1のデータ接続と同時に有効になるように第2のデータ接続を継続的に有効にすることができる。
【0032】
さらなる実施形態によれば、本方法は、第1の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の第2のデータ接続を介してデータを交換するステップをさらに含む。
【0033】
第2のデータ接続を介してデータを転送することは、適正なデータを、第1の操作コンポーネントから第1または第2の車両制御ユニットのうちの1つに転送することを可能にし、障害のあるデータ接続をバイパスすることによって、あるいはこのデータ接続に接続されたトランシーバをバイパスすることによって第1の操作コンポーネントの動作を維持することを可能にする。
【0034】
さらに、第1のデータ接続および第2のデータ接続は、少なくともある期間の間に同時に有効にすることができるので、同じデータを、第1の操作コンポーネントから第1および第2のデータ接続を介して転送することができる。これは、第1および第2の車両制御ユニット間でデータを交換し、妥当性チェックまたはクロスチェックタスクを実行し、障害のあるデータが受信されたかどうかを決定することを可能にし、したがって車両制御システムの安全性を向上させる。
【0035】
一実施形態によれば、本方法は、第1の車両制御ユニットと第2の車両制御ユニットとの間でデータを交換するステップと、第1の車両制御ユニットと第2の車両制御ユニットとの間のデータの交換に基づいて、第1かまたは第2のデータ接続によって転送されたデータのエラーを決定するステップと、エラーを含んだデータが第1かまたは第2のデータ接続によってそれぞれ転送されたかどうかに依存して第1かまたは第2のデータ接続を無効にするステップと、をさらに含む。
【0036】
一実施形態によれば、本方法は、第1の車両制御ユニットと第2の車両制御ユニットとの間でデータを交換するステップと、第1の車両制御ユニットまたは第2の車両制御ユニットのエラーを決定するステップと、誤りのある第1かまたは第2の車両制御ユニットを無効にするステップと、第1かまたは第2の車両制御ユニットのうちの無効になっていない他の一方と第1の操作コンポーネントとの間でデータを交換するステップと、をさらに含む。
【0037】
一実施形態によれば、本方法は、第1の通信ネットワークのエラーを決定するステップと、第1および第2の車両制御ユニット間の接続を介して、第2の車両制御ユニットに接続された車両制御システムの第2の通信ネットワークから第1の車両制御ユニットにデータを転送するするステップと、をさらに含む。第2の通信ネットワークから第1の車両制御ユニットに転送されたデータは、第1の通信ネットワークの障害またはダウンタイムのために、第1の通信ネットワークから第1の車両制御ユニットに転送されなかったデータに対応し得る。したがって、これらのデータは、車両制御システムの動作が維持できるように置き換えることができる。
【0038】
上記の実施形態は、第1の通信ネットワークの障害が検出されたかまたは第1の通信ネットワークがダウンしている状況において、第1の車両制御ユニットから、第1および第2の通信ネットワークの両方に接続されている車両制御システムのコンポーネントにデータを転送するために逆方向に実行されてもよい。次いで、データは、第2の車両制御ユニットおよび第2の通信ネットワークを介してコンポーネントに転送することができ、車両制御システムの適正な動作を維持することができる。
【0039】
一実施形態によれば、本方法は、第1の操作コンポーネントと並列に第1および第2の車両制御ユニットに接続された第2の操作コンポーネントと、第1の車両制御ユニットとの間の第3のデータ接続を、第1の操作コンポーネントに送信される第3の信号によって有効にするステップと、第1の車両制御ユニットにおいて、第3のデータ接続を介して第2の操作コンポーネントからデータを受信するステップと、第2の操作コンポーネントから受信したデータが誤っていることを決定するステップと、第2の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第3のデータ接続を無効にするために、第1の車両制御ユニットから第2の操作コンポーネントに信号を送信するステップと、第2の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第3のデータ接続を無効にするステップと、をさらに含む。
【0040】
一実施形態によれば、本方法は、第2の車両制御ユニットから第1の操作コンポーネントへの第4の信号により、第2の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の第4のデータ接続を有効にするステップをさらに含む。他の実施形態によれば、本方法は、第2の操作コンポーネントと第2の車両制御ユニットとの間の第4のデータ接続を介してデータを交換するステップを含むこともできる。本方法は、第4のデータ接続を無効にするステップを含むこともできる。限定を意味するわけではないが、本方法は、第4のデータ接続を介して誤ったデータが交換または転送された場合に、第1の車両制御ユニットおよび第2の車両制御ユニットを交換することによって、すなわち、第4のデータ接続を無効にして代わりに第3のデータ接続を介してデータを転送することによって同様に実行することができる。
【0041】
第3または第4のデータ接続を有効または無効にすることは、システムの冗長性および安全性に関し、第1および第2のデータ接続に関連して上記で説明したのと同じ効果や利点をもたらすことができる。さらに、第3および第4のデータ接続は、第1または第2のデータ接続と同じやり方で実装および操作することができる。
【0042】
本発明によれば、コンピュータによって実行されるときに、上記で説明したステップの1つまたは複数を含む方法を実施させる命令を含むコンピュータ可読媒体も提供される。
【0043】
本出願のさらなる特徴、態様、および利点は、添付の図面に関連して説明される以下の実施形態からもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】一実施形態による車両制御システムの一例を示した図
図2】さらなる実施形態による、車両制御システムを操作する方法の第1実施例を示した図
図3】別の実施形態による、車両制御システムを操作する方法の第2実施例を示した図
【0045】
以下では、車両制御システムの実施形態を図1に関連して説明する。この冗長的な制御システムは、2つの車両制御ユニット1および2を含む。2つの車両制御ユニット1および2の各々は、ICまたはマイクロプロセッサを含むことができる。これらの車両制御ユニットの各々は、冗長的な車両通信ネットワーク14および15のうちの1つに接続されている。各々がデータバスを含み得る車両通信ネットワーク14および15は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、メモリ、またはインタフェースを含む車両制御システムの他のコンポーネントに接続することができる。インターリンク通信線路7は、これらの車両制御ユニット間に設けられている。これらの車両制御ユニットのうちの一方はマスターコントローラで、それに対して他方はスレーブコントローラである。マスター/スレーブの役割の決定は、適切なアルゴリズムに従ってこれらの車両制御ユニットのうちの少なくとも1つによって実行され、インターリンク通信線路7によって調整される。
【0046】
車両制御ユニット1,2間のインターリンク通信線路7は、車両通信ネットワーク14または15の1つが障害を起こしているかまたはダウンしている状況を緩和させることを可能にさせる。そのような場合、無傷の車両通信ネットワークからのデータは、第2の車両制御ユニットおよびインターリンク通信線路7を介して、障害のある通信ネットワークに接続された第1の車両制御ユニットに転送することができる。インターリンク通信線路7は、安全性を向上させるために、第1および/または第2の車両制御ユニットによる妥当性チェックまたはクロスチェックタスクを実行するための機会も提供する。
【0047】
各車両制御ユニット1,2は、冗長的な通信線路5および6によって少なくとも2つの操作コンポーネント8および9に接続されている。これらの操作コンポーネント8および9は、ホイールブレーキアクチュエータ、ステアリングアクチュエータ、または推進アクチュエータなどのアクチュエータか、または他のアクチュエータあるいは車両、特に商用車のコンポーネントであり得る。
【0048】
各操作コンポーネント8,9は、車両制御ユニット1,2の各々から各操作コンポーネント8,9をウェイクアップすることができる専用のウェイクアップ線路3a,3b,4a,4bを有している。車両制御ユニット1は、操作コンポーネント8用のウェイクアップ線路3aと、操作コンポーネント9用の他のウェイクアップ線路3bとに接続されている。同様に、車両制御ユニット2は、コマンド操作コンポーネント8用のウェイクアップ線路4aと、コマンド操作コンポーネント9用の他のウェイクアップ線路4bとに接続されている。
【0049】
操作コンポーネントは、通信線路5,6に接続するためのトランシーバ対10,11および12,13を有する。各トランシーバは、1つの操作コンポーネント8,9にアクセスするように構成されている。示されているような実施形態の操作コンポーネント8,9は、冗長的ではない可能性があり、それら自体の内部リソース、例えば電源、マイクロコントローラーなどのいくつかを共有している可能性があるので、コマンド操作コンポーネントの誤動作は、他のコマンドユニットにも影響を与える通信線路上の問題につながる可能性がある。
【0050】
コマンドユニット8,9のトランシーバ10,11および12,13は、操作コンポーネントを車両制御ユニットに接続するウェイクアップ線路を制御することによって例えば信号レベルを論理的ローレベルに引き込むことによって、車両制御ユニットにより、操作コンポーネント8,9を通信線路から物理的に分離できるように構成されている。これは、動的な車両制御ユニット1,2が、操作コンポーネント8,9のうちの1つに誤りがあることを識別した場合に、エラーの伝播を回避するために、操作コンポーネント8,9を、対応する通信線路5,6から分離できることを意味する。
【0051】
図2は、この例に対する何らかの限定を意味するわけではないが、図1に示された車両制御システムによって実行することができる車両制御システムを操作する方法100の一例を示している。この例示的な方法100によれば、ステップ110では、第1の車両制御ユニットにおいて、第1の操作コンポーネントからデータが受信される。第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の対応するデータ接続が有効にされている。ステップ120では、第1の車両制御ユニットは、第1の操作コンポーネントから受信したデータが誤っているかどうかを決定する。データが適正であることが決定された場合、そのデータは車両制御システムによって適正なデータとして処理される。データが適正でないこと、すなわち誤っていると決定された場合、本方法はステップ130に継続され、そこで、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第1のデータ接続を無効にするために、第1の車両制御ユニットから第1の操作コンポーネントに信号が送信される。この信号は、第1の操作コンポーネントによって、特に、該第1の操作コンポーネント内に配置されたトランシーバによって受信することができる。その後、ステップ140では、この信号に応じて、第1の操作コンポーネントと第1の車両制御ユニットとの間の第1のデータ接続が無効にされる。この第1のデータ接続は、データ接続または対応する通信線路に含まれるオプトカプラなどのスイッチを操作または作動させることによって物理的に分離することができる。これには、エラーが車両制御ユニットに、または第1の操作コンポーネントに接続された他の操作コンポーネントに伝播するのを阻止する効果がある。
【0052】
しかしながら、第1の操作コンポーネントからのデータは、第1の操作コンポーネントから冗長的な第2のデータ接続を介して、第1の車両制御ユニットに代わってデータを処理できる第2の車両制御ユニットに転送することができ、それによって、第1の操作コンポーネントの操作を維持することができる。したがって、車両制御システムの安全性が向上する。
【0053】
冗長的な第2のデータ接続は、第1のデータ接続と同時に有効にすることができ、少なくとも部分的に同じデータを、第1の操作コンポーネントから第1の車両制御ユニットに、および第1の操作コンポーネントから第2の車両制御ユニットに同時に転送することができる。第1の車両制御ユニットと第2の車両制御ユニットとの間のデータ接続を用いることにより、第1および第2のデータ接続を介して同時に転送されるデータセットを、車両制御ユニット間で交換するかまたは車両制御ユニットの一方から他方に転送することができ、そのため、同時に転送されたデータセットの一方のデータエラーは、例えば比較によって検出することができる。第1および第2の車両制御ユニットの一方または両方において、妥当性チェックまたはクロスチェックを実行することができる。
【0054】
代替的に、冗長的な第2のデータ接続は、開始時点では無効にされ、その後、第1の車両制御ユニットのデータエラーもしくは障害の決定に応じて有効にされ得る。
【0055】
図3の例に従って方法200が説明されるが、本方法200は、この例になんら限定されることなく図1に記載の車両制御システムによって実行することができ、さらに本方法200によって、車両制御システムが安全性に関して強化される。本方法は、図1による方法と組み合わせて、またはそれとは別個に実施することができる。本方法によれば、ステップ210において、データが、第1の車両制御ユニットにおいて、車両制御システムのコンポーネントから第1の通信ネットワークを介して受信される。次いで、ステップ220では、第1の車両制御ユニットによって、第1の通信ネットワークから第1の車両制御ユニットに転送されたデータが誤っているか、または第1の通信ネットワークがダウンしていることが決定される場合もある。したがって、第1の通信ネットワークから転送されたデータは信頼できないかまたは第1の通信ネットワークからデータを全く転送できないことが決定される。この問題を克服するために、ステップ230では、データが、第2の車両制御ユニットにおいて、これも車両制御システムのコンポーネントに接続された第2の通信ネットワークを介して受信される。ここで、このデータは、第1の通信ネットワークを介して第1の車両制御ユニットに転送されるべきであった適正なデータに対応するか、または第1の通信ネットワークがダウンしていなかったならば、第1の通信ネットワークを介して転送されたであろうデータに対応する。ステップ240では、データが、第2の車両制御ユニットから第1の車両制御ユニットに、第1および第2の車両制御ユニット間のデータ接続を介して転送され、それによって、第1の通信ネットワークによって提供されるのと同じ適正なデータを、第2の通信ネットワークおよび第2の車両制御ユニットを介して、第1の車両制御ユニットに提供することができ、したがって、第1の通信ネットワークからデータが転送できないような場合でさえも、車両制御システムの適正な動作を維持することができる。
【0056】
図3に関連して説明された方法は、第1の通信ネットワークの障害が検出されたかまたは第1の通信ネットワークがダウンしている状況において、第1の車両制御ユニットから、第1および第2の通信ネットワークの両方に接続されている車両制御システムのコンポーネントにデータを転送するために同様に実行されてもよい。次いで、データは、第2の車両制御ユニットおよび第2の通信ネットワークを介してコンポーネントに転送することができ、車両制御システムの適正な動作を維持することができる。
【0057】
上記で説明した例示的な実施形態には、本出願の考察から逸脱することなく様々な変更を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 第1の車両制御ユニット
2 第2の車両制御ユニット
3a,3b ウェイクアップ線路
4a,4b ウェイクアップ線路
5 第1のデータ接続
6 第2のデータ接続
7 インターリンク通信線路
8 第1の操作コンポーネント
9 第2の操作コンポーネント
10 トランシーバ
11 トランシーバ
12 トランシーバ
13 トランシーバ
14 第1の通信ネットワーク
15 第2の通信ネットワーク
図1
図2
図3