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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】車両用制御アーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
B60R16/02 660H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021538905
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019073470
(87)【国際公開番号】W WO2020057965
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】18195299.5
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チャバ コクレヘル
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】タマーシュ ラップ
(72)【発明者】
【氏名】ペテル セル
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-016427(JP,A)
【文献】特開2018-090169(JP,A)
【文献】特開平10-031657(JP,A)
【文献】特開2011-111039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用制御アーキテクチャ(10)であって、前記制御アーキテクチャは、
複数のコントローラ(1,2)と、
複数の被指令コンポーネント(7,8)と、
を含み、
前記複数のコントローラのそれぞれは、前記複数の被指令コンポーネントの全てに通信可能に(3,4,5,6)接続されており、
前記複数のコントローラのそれぞれは、前記複数の被指令コンポーネントのうちの1つ以上の被指令コンポーネントによって実行される指令を送信するように構成され、
前記複数の被指令コンポーネントのそれぞれは、前記複数のコントローラのうちの少なくとも1つのコントローラから前記複数の被指令コンポーネントに送信された少なくとも1つの信号に基づいて、前記複数のコントローラのうちの1つのコントローラがマスタコントローラであることを判定するように構成されており、
さらに、前記少なくとも1つの信号が、前記複数のコントローラのうちの少なくとも2つのコントローラから送信された少なくとも2つの信号を含み、前記少なくとも2つのコントローラのうち、最初の信号の送信元であるコントローラが前記マスタコントローラとして判定される、
ことを特徴とする、制御アーキテクチャ。
【請求項2】
さらに、前記少なくとも1つの信号がトリガ信号を含む、請求項1記載の制御アーキテクチャ。
【請求項3】
さらに、前記少なくとも1つの信号がウェイクアップ信号を含む、請求項1および2のいずれか1項記載の制御アーキテクチャ。
【請求項4】
さらに、前記少なくとも1つの信号が、以前にマスタコントローラであると判定されたコントローラ以外のコントローラから送信された信号を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の制御アーキテクチャ。
【請求項5】
さらに、前記少なくとも1つの信号が、以前に判定されたコントローラから送信された信号を含む、請求項記載の制御アーキテクチャ。
【請求項6】
さらに、前記複数のコントローラが互いに通信可能に接続(7)されており、前記複数のコントローラのうちの1つのコントローラが前記マスタコントローラとして選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載の制御アーキテクチャ。
【請求項7】
さらに、前記マスタコントローラとして選択された前記コントローラは、前記複数のコントローラのうちの他のコントローラが前記複数の被指令コンポーネントに信号を送信する前に、前記複数の被指令コンポーネントに信号を送信するように構成されている、請求項記載の制御アーキテクチャ。
【請求項8】
車両用制御アーキテクチャの制御方法(100)であって、前記方法が、
a)複数のコントローラ(1,2)のそれぞれを複数の被指令コンポーネント(7,8)の全てに通信可能に接続するステップ(110)であって、前記複数のコントローラのそれぞれが、前記複数の被指令コンポーネントのうちの1つ以上の被指令コンポーネントによって実行される指令を送信するように構成されている、ステップと、
b)前記複数のコントローラのうちの少なくとも1つのコントローラから前記複数の被指令コンポーネントに送信された少なくとも1つの信号に基づいて、前記複数の被指令コンポーネントのそれぞれにより、前記複数のコントローラのうちの1つのコントローラがマスタコントローラであることを判定するステップ(120)と、
を含
さらに、ステップb)が、前記複数のコントローラのうちの少なくとも2つのコントローラから送信された少なくとも2つの信号を送信するステップと、前記少なくとも2つのコントローラのうち、最初の信号の送信元であるコントローラを前記マスタコントローラとして判定するステップとを含む、
方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御アーキテクチャおよび車両用制御アーキテクチャの制御方法に関する。
【0002】
発明の背景
冗長的な制御アーキテクチャは、故障率を低下させてこれにより安全性レベルを向上させる、安全性に関連する用途のための共通の解決策である。自動運転(AD)の適用が普及したことによって、冗長的な制御アーキテクチャが、目標となる安全性レベルの達成のために、種々の機能(例えば、環境センシング、知覚、行動計画、追尾計画、アクチュエータ制御など)に広く用いられている。しかしながら、冗長的な制御アーキテクチャの用途においては、コントローラのマスタ‐スレーブの役割の決定および伝達の問題が生じる。
【0003】
米国特許第9195232号明細書には、故障作動システムの共通故障(common failure)を補償するための方法およびシステムが記載されている。例示的なシステムは、推進制動および操舵などの車両の機能を実行するように構成された1次コントローラと、1次コントローラに対する冗長の構成として構成された2次コントローラとを含みうる。コントローラは、互いにクロスチェックを行うとともに、それぞれ内部セルフチェックを行いうる。加えて、システムは、故障の検出に基づいてコントローラ間で車両の制御を移行させるように構成された制御モジュールを含みうる。制御モジュールは、コントローラの共通故障を検出することができ、これにより、制御モジュールが、共通故障信号を出力する。これに応じて、システムは、1次コントローラに制御を戻せるようになるまで車両機能を実行するように構成された安全コントローラに制御を移行させることができる。
【0004】
米国特許出願公開第20160009257号明細書には、システムが、第1および第2の制動モジュールを含む自律的なサブシステムを含むことが記載されている。各モジュールは、プロセッサおよびメモリを含み、メモリは、故障の検出のためにプロセッサによって実行可能な命令を記憶している。システムは、第2の制動モジュールからの信号に応じてブレーキ機構を作動させるようにプログラムされたブレーキサブシステムをさらに含む。自律的なサブシステムは、故障が検出されたか否かに応じて、ブレーキ機構に信号を供給する制動モジュールの1つを選択するようにさらにプログラムされている。
【0005】
しかしながら、被指令コンポーネント用のコントローラのマスタ‐スレーブ関係の役割を識別する手段の提供への需要が存在する。
【0006】
発明の概要
したがって、被指令コンポーネント用のコントローラのマスタ‐スレーブ関係の役割を識別するための改善された技術があれば有利である。
【0007】
本発明の目的は独立請求項の主題によって達成され、他の実施形態は各従属請求項に組み込まれている。本発明の以下に記載する各態様は、車両用制御アーキテクチャ、さらに車両用制御アーキテクチャの制御方法にも適用されることに留意されたい。
【0008】
第1の態様では、車両用制御アーキテクチャが設けられ、当該制御アーキテクチャは、
‐複数のコントローラと、
‐複数の被指令コンポーネントと
を含む。
【0009】
複数のコントローラのそれぞれは、複数の被指令コンポーネントの全てに通信可能に接続されている。複数のコントローラのそれぞれは、複数の被指令コンポーネントのうち1つ以上によって実行される指令を送信するように構成されている。複数の被指令コンポーネントのそれぞれは、複数のコントローラの少なくとも1つから複数の被指令コンポーネントに送信された少なくとも1つの信号に基づいて、複数のコントローラのうち1つがマスタコントローラであることを判定するように構成されている。
【0010】
このように、冗長的な制御アーキテクチャ内で、ウェイクアップタイミング情報などの適切な送信情報の伝達を通じて被指令コンポーネント用のコントローラのマスタ‐スレーブの役割を識別する機構が提供される。
【0011】
これにより、送信可能なコントローラが1つのみであっても、当該コントローラがマスタコントローラであると判定することができる。
【0012】
このようにして、コントローラのマスタ‐スレーブの役割を、各コントローラからの専用のウェイクアップ線情報によって被指令コンポーネントに伝達することができる。
【0013】
一実施例では、少なくとも1つの信号は、トリガ信号を含む。
【0014】
一実施例では、少なくとも1つの信号は、ウェイクアップ信号を含む。
【0015】
これにより、システムの起動時にコントローラのマスタ‐スレーブの役割を判定することができる。
【0016】
一実施例では、少なくとも1つの信号は、複数のコントローラの少なくとも2つから送信された少なくとも2つの信号を含む。少なくとも2つのコントローラのうち、最初の信号の送信元であるコントローラがマスタコントローラとして判定される。
【0017】
このように、他のコントローラから信号が受信される前に(受信の必要がない場合もある)、当該コントローラから受信された信号に基づいて、どのコントローラがマスタコントローラであるかを判定できる簡単な方式が提供される。これによりさらに、複数のコントローラのうち、最初に信号を送信するコントローラをマスタコントローラとする選択を行うことができる簡単な方式が提供される。
【0018】
したがって、コントローラのマスタ‐スレーブの役割は、最初にトリガイベントを送信したコントローラがマスタコントローラとして判定される方式で、起動時のトリガイベントにより、ウェイクアップ線上で伝達可能である。
【0019】
一実施例では、少なくとも1つの信号は、以前にマスタコントローラであると判定されたコントローラ以外のコントローラから送信された信号を含む。
【0020】
言い換えれば、マスタ‐スレーブの役割は、運用中、スレーブコントローラからのウェイクアップ線上の新しいトリガイベントでの伝達によって、変更可能である。
【0021】
一実施例では、少なくとも1つの信号は、以前に判定されたコントローラから送信された信号を含む。
【0022】
言い換えれば、ウェイクアップ線上の新しいトリガイベントを発出している、これまでに判定されたマスタコントローラによって、運用中のマスタ‐スレーブの役割の変化を無効にすることができる。
【0023】
一実施例では、複数のコントローラが互いに通信可能に接続されて、複数のコントローラのうちの1つのコントローラがマスタコントローラとして選択される。
【0024】
一実施例では、マスタコントローラとして選択されたコントローラは、複数のコントローラのうちの他のコントローラが複数の被指令コンポーネントに信号を送信する前に、複数の被指令コンポーネントに信号を送信するように構成されている。
【0025】
これにより、複数のコントローラのうち、最初に信号を送信するコントローラをマスタコントローラとする選択を行うことができる簡単な方式が提供される。しかしながら、他のコントローラもそれぞれの信号を送信しているため、何らかの理由でマスタコントローラとして選択されたコントローラが故障した場合、またはマスタコントローラと被指令コンポーネントとの間の接続に障害が発生した場合には、被指令コンポーネントにより、他のコントローラが自動的にマスタコントローラとして判定される。これは、被指令コンポーネントが次いでマスタコントローラと判定されるコントローラから最初にメッセージを受信するからであり、これにより、効果的な冗長性が提供される。
【0026】
第2の態様では、車両用制御アーキテクチャの制御方法が設けられ、当該制御方法は、
a)複数のコントローラのそれぞれを被指令コンポーネントの全てに通信可能に接続するステップであって、複数のコントローラのそれぞれは、複数の被指令コンポーネントのうちの1つ以上の被指令コンポーネントによって実行される指令を送信するように構成されている、ステップと、
b)複数のコントローラのうちの少なくとも1つのコントローラから複数の被指令コンポーネントに送信された少なくとも1つの信号に基づいて、複数の被指令コンポーネントのそれぞれにより、複数のコントローラのうちの1つコントローラがマスタコントローラであることを判定するステップと
を含む。
【0027】
このようにして、(各被指令コンポーネントがハードウェアおよびソフトウェアにおいて同一であっても)より低いレベルの被指令コンポーネントのためにコントローラのマスタ‐スレーブの役割を判定する方法が提供される。当該方法は、被指令コンポーネントのそれぞれへの通信線を有する各コントローラを基礎としており、通信線は被指令コンポーネントへの専用のウェイクアップ線であってよく、マスタ‐スレーブの役割はコントローラのウェイクアップ時系列にしたがって判定することができる。
【0028】
一実施例では、ステップb)は、複数のコントローラのうちの少なくとも2つのコントローラから送信された少なくとも2つの信号を送信することと、少なくとも2つのコントローラのうち、最初の信号の送信元であるコントローラをマスタコントローラとして判定することとを含む。
【0029】
上記の態様および実施例は、以下に記載の実施形態を参照することで明確になり理解されるであろう。
【0030】
以下に、図面を参照しながら、例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】車両用制御アーキテクチャの一実施例を示す模式図である。
図2】車両用制御アーキテクチャの制御方法を示す図である。
【0032】
実施形態の詳細な説明
図1は、車両用制御アーキテクチャ10の一実施例を示す。制御アーキテクチャ10は、複数のコントローラ1,2および複数の被指令コンポーネント7,8を含む。複数のコントローラのそれぞれは、複数の被指令コンポーネントの全てに通信可能に接続3,4,5,6されている。当該接続は、有線通信または無線通信を介して実現可能である。複数のコントローラのそれぞれは、複数の被指令コンポーネントのうちの1つ以上の被指令コンポーネントによって実行される指令を送信するように構成されている。複数の被指令コンポーネントのそれぞれは、複数のコントローラのうちの少なくとも1つのコントローラから複数の被指令コンポーネントに送信された少なくとも1つの信号に基づいて、複数のコントローラのうちの1つのコントローラがマスタコントローラであることを判定するように構成されている。
【0033】
一実施例では、各コントローラは、専用のウェイクアップ線を介して、各被指令コンポーネントに通信可能に接続されている。
【0034】
一実施例では、各コントローラは、通信線を介して、各被指令コンポーネントに通信可能に接続されている。
【0035】
一実施例では、複数の被指令コンポーネントは、判定されたマスタコントローラによって自身に送信された指令を実行するように構成されている。
【0036】
一実施例によれば、少なくとも1つの信号はトリガ信号を含む。
【0037】
一実施例によれば、少なくとも1つの信号はウェイクアップ信号を含む。
【0038】
一実施例では、送信される信号は、ウェイクアップ線に送信されたウェイクアップ線の状態変化と、対応する通信線に送信された付加的な情報との組み合わせであるトリガ信号であってよい。
【0039】
一実施例によれば、少なくとも1つの信号は、複数のコントローラのうちの少なくとも2つのコントローラから送信された少なくとも2つの信号を含む。少なくとも2つのコントローラのうち、最初の信号の送信元であるコントローラがマスタコントローラとして判定される。
【0040】
一実施例によれば、少なくとも1つの信号は、以前にマスタコントローラであると判定されたコントローラ以外のコントローラから送信された信号を含む。
【0041】
一実施例によれば、少なくとも1つの信号は、以前に判定されたコントローラから送信された信号を含む。
【0042】
一実施例によれば、複数のコントローラが互いに通信可能に接続7されて、複数のコントローラのうちの1つのコントローラがマスタコントローラとして選択される。
【0043】
一実施例では、コントローラのマスタ‐スレーブの役割は、コントローラ間の接続を介して調整可能な適切なアルゴリズムを用いて、コントローラ内で判定される。
【0044】
一実施例では、複数のコントローラは、例えば車両のイグニション線によってトリガ可能な適切な信号の受信によりウェイクアップされるように構成されている。
【0045】
一実施例によれば、マスタコントローラとして選択されたコントローラは、複数のコントローラのうちの他のコントローラが複数の被指令コンポーネントに信号を送信する前に、複数の被指令コンポーネントに信号を送信するように構成されている。
【0046】
図2は、車両用制御アーキテクチャの制御方法100を基本ステップとして示す。当該方法は、
ステップa)とも称される接続ステップ110において、複数のコントローラ1,2のそれぞれを、複数の被指令コンポーネント7,8の全てに通信可能に接続することであって、複数のコントローラのそれぞれは、複数の被指令コンポーネントのうちの1つ以上の被指令コンポーネントによって実行される指令を送信するように構成されている、ことと;
ステップb)とも称される判定ステップ120において、複数のコントローラのうちの少なくとも1つのコントローラから複数の被指令コンポーネントに送信された少なくとも1つの信号に基づいて、複数の被指令コンポーネントのそれぞれにより、複数のコントローラのうちの1つのコントローラがマスタコントローラであることを判定することと、
を含む。
【0047】
一実施例では、少なくとも1つの信号は、トリガ信号を含む。
【0048】
一実施例では、少なくとも1つの信号は、ウェイクアップ信号を含む。
【0049】
一実施例によれば、ステップb)は、複数のコントローラのうちの少なくとも2つのコントローラから送信された少なくとも2つの信号を送信することと、少なくとも2つのコントローラのうち、最初の信号の送信元であるコントローラをマスタコントローラとして判定することとを含む。
【0050】
一実施例では、少なくとも1つの信号は、以前にマスタコントローラであると判定されたコントローラ以外のコントローラから送信された信号を含む。
【0051】
一実施例では、少なくとも1つの信号は、以前に判定されたコントローラから送信された信号を含む。
【0052】
一実施例では、複数のコントローラが互いに通信可能に接続されて、複数のコントローラのうちの1つのコントローラがマスタコントローラとして選択される。
【0053】
一実施例では、マスタコントローラとして選択されたコントローラは、複数のコントローラのうちの他のコントローラが複数の被指令コンポーネントに信号を送信する前に、複数の被指令コンポーネントに信号を送信するように構成されている。
【0054】
再び図1を用いて、詳細な実施例を示す。当該詳細な実施例では、少なくとも2つのコントローラ(これは、マイクロコントローラまたは完全なECUであってよい)1,2が設けられており、専用のウェイクアップ線3,4が被指令コンポーネント7,8に接続されている、冗長的なコントローラアーキテクチャが示されている。コントローラはさらに被指令コンポーネントへの専用の通信線5,6も有しており、コントローラ間にはインターリンク通信7が設けられている。被指令コンポーネントは、両ウェイクアップ線3,4ならびに両通信線5,6に同時にアクセスして、マスタコントローラの役割が変化した場合に、コントローラ1,2のいずれかの指令を受けることができる。
【0055】
システムを起動する際、最初に、コントローラ1,2が、例えば車両のイグニション線によって、ウェイクアップするようにトリガされる。コントローラ1,2間のマスタ‐スレーブの役割は、初期設定のフェーズにおいて、インターリンク線7を通じて調整可能な適切なアルゴリズムによって判定される。その後、被指令コンポーネントは、ウェイクアップ線3,4を用いて、ウェイクアップするようにトリガされる。各コントローラは、被指令コンポーネントへのウェイクアップ線を、優先レベル(すなわちマスタが1番目であり、スレーブが2番目であること)にしたがってタイミング順でトリガする。ウェイクアップ線でのトリガは適切な状態変化によって伝達可能であり、この状態変化は、誤動作(例えば、特定のタイミングでの状態変化のシーケンス)が生じているコントローラによっては発生しえない程度に充分に複雑である。被指令コンポーネントは各ウェイクアップ線を並列に待ち受け、マスタは、最初にトリガされたウェイクアップ線によって、すなわち信号を最初に受信した線によって、識別される。マスタ‐スレーブの役割を変更する必要がある場合(他のコントローラが故障した場合)、スレーブコントローラは新たなウェイクアップトリガを発出することができる。この場合、マスタが別のウェイクアップトリガによる役割変更を禁じていなければ、スレーブがマスタの役割を引き継ぐ。イグニション時に起動可能なコントローラが1つのみであれば、この場合には、対応するウェイクアップ線のみが(スレーブのトリガなしで)トリガされ、関連付けられたコントローラがマスタコントローラであると判定される。代替的に、トリガ信号は、ウェイクアップ線の状態変化と、対応する通信線に送信された付加的な情報との組み合わせであってもよい。その後、被指令コンポーネントは、マスタの通信線5または6に送信された指令を実行することができる。
【0056】
本発明の実施形態は、異なる主題に沿って記載されていることに留意しなければならない。特に、幾つかの実施形態は方法形式の請求項に沿って記載されており、他の実施形態は装置形式の請求項に沿って記載されている。ただし、当業者であれば、上述および下述の説明から、別様の注記がないかぎり、一方の形式の主題についての特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題についての特徴の任意の組み合わせも本出願に開示されているものとみなされることを理解するであろう。なお、全ての特徴を組み合わせることで、特徴の単純な加算を超える相乗効果も提供されうる。
【0057】
本発明を図面および上記の説明において詳細に図示し説明したが、これらの図示および説明は、図示のためまたは例示のためであって限定ではないとみなされるべきである。本発明は開示した実施形態に限定されない。当業者であれば、開示した実施形態の他の変形形態も、図面、本開示および各従属請求項の理解から、特許請求の範囲に係る発明を実施する際に理解可能かつ実行可能である。
【0058】
特許請求の範囲において、「含む(comprising)」なる語は他の要素または他のステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、特許請求の範囲において再引用される複数の項目の機能を実行することもできる。互いに異なる従属請求項において特定の措置が再引用されているという事実のみから、これらの措置の組み合わせを活用できないことが示唆されるものではない。特許請求の範囲における参照符号はいずれも、発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0059】
10 車両用制御アーキテクチャ
1,2 コントローラ
3,4 ウェイクアップ線
5,6 通信線
7,8 被指令コンポーネント
100 車両用制御アーキテクチャの制御方法
110 コントローラのそれぞれを被指令コンポーネントの全てに通信可能に接続する
120 複数の被指令コンポーネントのそれぞれによって、複数のコントローラのうちの1つのコントローラがマスタコントローラであると判定する
図1
図2