(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】治具
(51)【国際特許分類】
B29C 33/48 20060101AFI20221121BHJP
B29C 33/46 20060101ALI20221121BHJP
B29C 65/64 20060101ALI20221121BHJP
B29C 70/44 20060101ALI20221121BHJP
B29C 70/46 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B29C33/48
B29C33/46
B29C65/64
B29C70/44
B29C70/46
(21)【出願番号】P 2021555724
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044740
(87)【国際公開番号】W WO2021095207
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 了太
(72)【発明者】
【氏名】益子 哲行
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-542460(JP,A)
【文献】特開2011-235635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 65/64
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形材料の筒状部の内周面に囲まれて一方向に形成された中空部に挿入される治具であって、
前記内周面に対応した形状の接触面を有し、前記一方向に対して交差する方向に並列して配設された複数の型部と、
前記型部に対して前記型部の前記接触面とは反対側に設置され、内部に流動体を収容でき、収容された前記流動体の圧力に応じて伸縮可能
とされ、前記型部の前記接触面の反対側の面を押圧可能なブラダーと、
前記複数の型部と前記ブラダーを接続する接続部と、
前記複数の型部のうち一側の型部と、前記一側の型部に隣接する他側の型部を連結し、前記一方向に対して交差する方向における前記一側の型部と前記他側の型部の間隔を所定範囲内に規制する連結部と、
を備える治具。
【請求項2】
前記複数の型部は、前記一方向に対して交差する方向に切断した断面が環状となるように前記連結部を介して互いに連結されている請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記複数の型部は、両側に配設された前記型部が自由端となるように前記連結部を介して互いに連結されている請求項1に記載の治具。
【請求項4】
前記連結部は、棒状部材であり、一端が前記一側の型部の端面において設けられた固定部にて回動可能に接続され、他端が前記他側の型部の端面において設けられたスライド溝にて前記接触面に沿う方向に移動可能に接続されている請求項1から3のいずれか1項に記載の治具。
【請求項5】
前記連結部の長さは、前記ブラダーが膨張したときの前記一側の型部の前記固定部と、前記他側の型部の前記スライド溝のうち前記固定部が設けられた端部とは反対側の幅方向端部側の端部との間の距離と等しい請求項4に記載の治具。
【請求項6】
前記接続部は、前記連結部の一端が接続された前記一側の型部の一端部とは反対の他端部に接続される請求項1から5のいずれか1項に記載の治具。
【請求項7】
前記被成形材料の前記中空部の長手方向において複数に分割されて配置される請求項1から6のいずれか1項に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治具、特に複合材の成形に用いられる治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機構造には、複合材、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなるスキンとストリンガーが一体成形されたものがある。CFRPは、母材の合成樹脂として、熱硬化性樹脂が用いられる場合と、熱可塑性樹脂が用いられる場合がある。
【0003】
従来、熱硬化性CFRPのスキンとストリンガーを一体化させる方法として、
図10に示すように、円筒状のマンドレル41の表面に形成された溝45の内部に複数のストリンガー31を設置しておき、その上からスキン32を積層しローラ42によって押圧することで一体化する方法がある。
【0004】
この方法において、一体化されたスキン32とストリンガー31によって筒状に形成される筒状部35の内部に中空の空間(中空部33)が形成される場合、ローラ42による押圧時に、中空部33に対応した部分に凹状の変形が生じないように、中空部33にブラダー43や中子を挿入しておく。例えば、下記の特許文献1~4には、中空部にブラダーが挿入される例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第10059041号明細書
【文献】米国特許第9296187号明細書
【文献】米国特許第8293051号明細書
【文献】米国特許第8500085号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブラダーは、ビニール製又はゴム製などの柔らかく伸縮性のある素材でできており、空気等の注入により膨らませることで、断面形状を変化させることができる。中子は、剛性が十分に高い素材でできている。
【0007】
中空部にブラダーが挿入されると、ブラダーが柔軟に変形可能な素材であるため、ローラによる押圧時、場所ごとに筒状部の内周面の形状を調整することが難しい。
【0008】
熱可塑性樹脂を用いたCFRPを成形する場合、合成樹脂と繊維を馴染ませるために、積層時、熱硬化性樹脂を用いた場合と比べて非常に高い圧力でローラによって材料を押圧する必要がある。熱可塑性樹脂の場合、積層時に必要な圧力が最大で20気圧程度となることがある。
【0009】
熱硬化性CFRPと同様に、上述したマンドレルを用いた方法で、熱可塑性CFRPのスキンとストリンガーを一体化する場合、ローラによって高い圧力でスキンとストリンガーを押圧するため、熱硬化性の場合よりも筒状部の内周面に対応した部分がより変形しやすくなる。凹状の変形が生じないように、ブラダー内部を高圧にすると、
図11に示すように、ブラダー43が膨らみすぎてしまい、製品の規定面からスキン32の位置が逸脱する可能性が高い。
【0010】
中子を用いる場合、一体化されたスキンとストリンガーの間の中空部から中子を取り出す脱型作業が必要である。しかし、中空部からの中子の脱型は難しく、時間や手間が多くかかるという問題がある。また、ストリンガーの長手方向が直線状又は一定曲率の形状でない限り、中子の脱型が不可能である。
【0011】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、一方向に沿って長い材料の内部の形状を所定の形状に画定することができ、成形後に内部から容易に取り出すことが可能な治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本開示の治具は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示に係る治具は、被成形材料の筒状部の内周面に囲まれて一方向に形成された中空部に挿入される治具であって、前記内周面に対応した形状の接触面を有し、前記一方向に対して交差する方向に並列して配設された複数の型部と、前記型部に対して前記型部の前記接触面とは反対側に設置され、内部に流動体を収容でき、収容された前記流動体の圧力に応じて伸縮可能とされ、前記型部の前記接触面の反対側の面を押圧可能なブラダーと、前記複数の型部と前記ブラダーを接続する接続部と、前記複数の型部のうち一側の型部と、前記一側の型部に隣接する他側の型部を連結し、前記一方向に対して交差する方向における前記一側の型部と前記他側の型部の間隔を所定範囲内に規制する連結部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、一方向に沿って長い材料の内部の形状を所定の形状に画定することができ、成形後に内部から容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態に係る治具を示す横断面図であり、ブラダーが膨張した状態を示す。
【
図2】本開示の一実施形態に係る治具を示す横断面図であり、ブラダーが収縮した状態を示す。
【
図3】本開示の一実施形態に係る治具を示す斜視図であり、ブラダーが膨張した状態を示す。
【
図4】本開示の一実施形態に係る治具が中空部の内部に設置された状態を示す横断面図である。
【
図5】マンドレル及びローラを備える成形装置を示す横断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る治具の第1変形例を示す横断面図であり、ブラダーが膨張した状態を示す。
【
図7】本開示の一実施形態に係る治具の第1変形例が中空部の内部に設置された状態を示す横断面図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る治具の第2変形例を示す横断面図であり、ブラダーが膨張した状態を示す。
【
図9】本開示の一実施形態に係る治具の第2変形例が中空部の内部に設置された状態を示す横断面図である。
【
図10】マンドレル及びローラを備える従来の成形装置を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本開示の一実施形態に係る治具1は、複合材、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなるスキンとストリンガーを一体化させる際に、スキンとストリンガーの間に形成される中空部に配置される。中空部は、スキンとストリンガーによって筒状に形成される筒状部の内周面に囲まれて一方向に形成される。スキンとストリンガーは、被成形材料の一例である。
【0016】
複合材の成形装置は、
図5に示すように、マンドレル41とローラ42を備える。円筒状のマンドレル41の表面に形成された溝45の内部に複数のストリンガー31を設置しておき、その上からスキン32を積層しローラ42によって押圧する方法において、中空部33に対応した部分に凹状の変形が生じないように、中空部33に本実施形態に係る治具1が配置される。熱硬化性CFRPのスキン32とストリンガー31を一体化させる際、一体化されたスキン32とストリンガー31によって筒状に形成される筒状部35(
図4参照)の内部に中空の空間(中空部33)が形成されるため、ローラ42による押圧時に、中空部33に対応した部分に凹状の変形が生じないように、中空部33に治具1が挿入される。
【0017】
スキン32は、例えば航空機の胴体を構成する円弧状の断面を有する板状部材である。ストリンガー31は、一方向沿って長い長尺状部材であり、断面形状がハット型、Z型などを有する。以下では、ストリンガー31の断面がハット型を有する場合について説明するが、本開示はこの例に限定されない。スキン32とストリンガー31が一体的に成形されることによって、航空機構造が構成される。
【0018】
本実施形態に係る治具1は、
図1~
図4に示すように、複数の型部2と、ブラダー3、接続部4と、連結部5などを備える。
【0019】
複数の型部2は、一方向に沿って長い長尺状の部品である。複数の型部2はそれぞれ、
図4に示すように、スキン32とストリンガー31によって筒状に形成される筒状部35の内周面34に対応した形状の接触面2aを有する。これにより、スキン32とストリンガー31が一体的に成形されて航空機部品(例えば胴体)が形成される際、複数の型部2の接触面2aによって筒状部35の内周面34の形状を画定できる。
【0020】
複数の型部2は、中空部33が延設された長手方向に対して交差する方向に並列して配設される。複数の型部2は、
図1及び
図2に示すように、断面が環状となるように連結部5を介して互いに連結されている。これにより、
図4に示すように、ブラダー3が膨らんだとき、内周面34の全てにわたって複数の型部2の接触面2aが接触する。
【0021】
型部2は、ブラダー3よりも剛性が高い素材であり、例えば、アルミニウム合金などの金属材料、合成樹脂材料などである。
【0022】
図1に示すように、型部2は、内周面34の隅部に対応して配置されるコーナ部品2Aと、二つのコーナ部品2Aの間であって、内周面34の平面部に対応して配置される平面部品2Bとを有する。コーナ部品2Aは、例えば、断面が三角形の一つの頂点を欠いた四角形形状を有する。平面部品2Bは、例えば断面が平行四辺形形状を有する。
【0023】
型部2の長手方向は、形成するストリンガー31の長さと同等の長さを有してもよいし、または、
図3に示すように、治具1は、ストリンガー31の長手方向において複数に分割されて中空部33に配置されてもよい。これにより、ストリンガー31が長手方向において湾曲している場合でも、治具1を中空部33に配置できる。
【0024】
ブラダー3は、例えば、ビニール製又はゴム製などの柔らかく伸縮性のある素材であり、内部に流動体10を収容できる袋状の部材である。ブラダー3の内部に収容される流動体10は、例えば、流体(例えば空気、液体など)又は粉体である。ブラダー3は、環状の複数の型部2の内部、すなわち、各型部2に対して、内周面34と接する型部2の接触面2a側とは反対側に設置される。ブラダー3は、収容された流動体10の圧力(例えば空気圧、液圧、粉体圧など)に応じて伸縮可能である。ブラダー3は、型部2の長手方向にわたって設けられる。
【0025】
接続部4は、例えばブラダー3と同一の素材、ビニール製又はゴム製などの柔らかく伸縮性のある素材であり、複数の型部2とブラダー3を接続する。接続部4は、型部2ごとに一つずつ設けられ、一端が型部2と接続され、他端がブラダー3と接続される。
【0026】
連結部5は、型部2の長手方向端部に設置される棒(バー)状部品である。連結部5は、互いに隣接して配置された二つの型部2同士を連結する。すなわち、連結部5は、複数の型部2のうち一側の型部2と、一側の型部2に隣接する他側の型部2を連結し、一側の型部2と他側の型部2の間隔を所定範囲内に規制する。
【0027】
型部2の長手方向端部の端面には、連結部5が接続される固定部6とスライド溝7が形成されている。固定部6は、例えば円形状の孔であり、型部2の幅方向端部2b(一端部)に設けられる。ここで、型部2の幅方向とは、型部2の長手方向に対して交差する方向であり、中空部33に沿って型部2が配置されたとき、内周面34に沿った方向である。型部2の固定部6において、連結部5の一端が回動可能に接続される。
【0028】
また、スライド溝7は、例えば、
図1に示すように、一端7aから他端7bにわたって設けられた一方向に長い溝であり、型部2の長手方向端部の端面において、固定部6の近傍の一端7aから、固定部6が設けられた端部2bとは反対側の幅方向端部2c近傍の他端7bにわたって、型部2の接触面2aに沿う方向に形成される。型部2のスライド溝7において、連結部5の他端が型部2の端面において接触面2aに沿う方向に移動可能に接続される。
【0029】
ブラダー3が膨張すると、連結部5の他端がスライド溝7の他端7b側に移動する。連結部5の長さは、ブラダー3が膨張したときの一側の型部2の固定部6と、他側の型部2のスライド溝7の他端7bとの間の距離と等しいか、又は、隣り合う型部2同士が摺動可能な程度にわずかに長い。これにより、ブラダー3が膨張したとき、一側の型部2と他側の型部2の間隔が所定範囲内に規制される。
【0030】
型部2のうち平面部品2Bが有する平行四辺形の断面において、接触面2aとは反対側のブラダー3が設けられた側に設けられた頂点は、固定部6側、すなわち端部2b側が鈍角であり、固定部6とは反対側の幅方向端部2c側が鋭角である。
【0031】
ブラダー3と接続された接続部4は、
図2に示すように、連結部5の一端が接続された型部2の固定部6とは反対側の幅方向端部2c(他端部)において、型部2と接続される。接続部4が型部2の図心とは異なる位置で接続されているため、ブラダー3がしぼむとき、型部2は回転しながら内側に引き込まれる。
【0032】
以上、本実施形態によれば、複数の型部2は、内周面34に対応した形状の接触面2aを有することから、航空機胴体などの成形品が形成される際、複数の型部2の接触面2aによって内周面34の形状を画定できる。ブラダー3の内部に流動体10が収容されると、流動体10の圧力に応じてブラダー3が伸張し膨らむ。膨らんだブラダー3は、型部2に対して型部2の接触面2aとは反対側、すなわち、環状の複数の型部2の内部側から複数の型部2を押圧する。連結部5は、複数の型部2のうち一側の型部2と他側の型部2の間隔を所定範囲内に規制することから、ブラダー3の押圧力によって複数の型部2間の間隔が広がりすぎることがない。その結果、ブラダー3の膨らみ量を所定範囲内に抑制できるため、ブラダー3の膨らみすぎを防止できる。
【0033】
他方、ブラダー3の内部から流動体10が排出されると、流動体10の圧力に応じてブラダー3が収縮ししぼむ。しぼんだブラダー3は、複数の型部2とブラダー3を接続する接続部4を介して、複数の型部2を、型部2に対して型部2の接触面2aとは反対側のブラダー3側に引き寄せる。その結果、複数の型部2の接触面2aが内周面34から離れて、外形が中空部33よりも小さくなるため、治具1を中空部33から容易に取り外すことができる。
【0034】
型部2同士を連結する連結部5の一端が一側の型部2の端部2bにおいて回動可能に接続されていることから、互いに隣接する一側の型部2と他側の型部2の位置が変化すると、連結部5の一端を中心にして連結部5が回動する。また、連結部5の他端が他側の型部2において、型部2の幅方向に沿って移動可能に接続されていることから、互いに隣接する一側の型部2と他側の型部2の位置が変化すると、連結部5の他端が他側の型部2の幅方向に沿って移動する。ブラダー3が膨らんだとき、連結部5の他端は他側の型部2の端部2c側に移動し、ブラダー3がしぼんだとき、連結部5の他端は他側の型部2の中間部側に向けて移動する。
【0035】
型部2とブラダー3を接続する接続部4は、連結部5の一端が接続された一側の型部2の端部2bとは反対の端部2cに接続される。これにより、接続部4が型部2の図心とは異なる位置で接続されているため、ブラダー3がしぼむとき、型部2は回転しながら内側に引き込まれる。
【0036】
次に、ストリンガーとスキンを成形する際の本実施形態に係る治具1の使用方法について説明する。
【0037】
まず、断面が円弧状を有するマンドレル41の表面に形成された溝45の内部に、ストリンガー31が設置される。
【0038】
そして、ストリンガー31の内部、すなわち、スキン32とストリンガー31の間で中空部33となる部分に、本実施形態に係る治具1が設置される。このとき、治具1が挿入可能な程度にブラダー3を膨らませ、複数の型部2の接触面2aをスキン32とストリンガー31の間に形成される内周面34に沿わせることが可能なようにしておくことが望ましい。
【0039】
治具1が設置された後、スキン32をストリンガー31又は治具1の上に積層する。このとき、例えばローラ42を用いて、スキン32とストリンガー31を押圧しながらスキン32を積層していく。したがって、ローラ42による押圧前に、ローラ42による押圧力に耐えうるように、ブラダー3の内部圧力を上昇させておく。また、ローラ42を用いた積層工程において、剛性の高い型部2は変形しにくいため、内周面34の形状を画定できる。
【0040】
次に、ストリンガー31に対するスキン32の積層作業が完了し、ストリンガー31とスキン32が一体化した後、ブラダー3の内部圧力を低下させて、ブラダー3をしぼませる。そして、治具1の接触面2aが内周面34から離れた後、治具1を中空部33から取り外すことができる。
【0041】
上述した実施形態では、複数の型部2が連結部5によって連結されて断面が環状となる場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0042】
複数の型部2は、例えば
図6及び
図8に示すように、両側に配設された型部2が自由端となるように連結部5を介して互いに連結されてもよい。すなわち、両側に配設された型部2の片側は、他の型部2に連結されず、自由端となる。この場合、
図7及び
図9に示すように、ブラダー3が膨らんだとき、内周面34の一部において複数の型部2の接触面2aが接触する。
【0043】
例えば、
図7に示すように、
図6に示した治具1が中空部33に配置されたとき、スキン32側のみに型部2が接するように、ブラダー3に対して一方のみに複数の型部2が設置されてもよい。この場合、内周面34において、スキン32側の形状を画定できる。また、
図9に示すように、
図7に示した治具1が中空部33に配置されたとき、ストリンガー31側のみに型部2が接するように、ブラダー3に対して一方のみに複数の型部2が設置されてもよい。この場合、内周面34において、ストリンガー31側の形状を画定できる。
【0044】
本開示に係る治具1は、熱硬化性樹脂を用いた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の成形品を形成する場合と、熱可塑性樹脂を用いたCFRPの成形品を形成する場合のいずれにおいても適用可能である。特に、熱可塑性樹脂を用いたCFRPを成形するため、積層時、熱硬化性樹脂を用いた場合と比べて非常に高い圧力でローラ42によって材料を押圧する場合であっても、規定の形状以上に膨らむことを防止することで、スキン32とストリンガー31の間の内周面34の形状を画定できる。また、ブラダー3をしぼませることによって、中空部33から治具1を容易に取り外すことができる。
【0045】
以上説明した実施形態に記載の治具は例えば以下のように把握される。
本開示に係る治具(1)は、被成形材料の筒状部(35)の内周面(34)に囲まれて一方向に形成された中空部(33)に挿入される治具であって、前記内周面に対応した形状の接触面(2a)を有し、前記一方向に対して交差する方向に並列して配設された複数の型部(2)と、前記型部に対して前記複数の型部の前記接触面とは反対側に設置され、内部に流動体(10)を収容でき、収容された前記流動体の圧力に応じて伸縮可能なブラダー(3)と、前記複数の型部と前記ブラダーを接続する接続部(4)と、前記複数の型部のうち一側の型部と、前記一側の型部に隣接する他側の型部を連結し、前記一方向に対して交差する方向における前記一側の型部と前記他側の型部の間隔を所定範囲内に規制する連結部(5)とを備える。
【0046】
この構成によれば、複数の型部は、内周面に対応した形状の接触面を有することから、成形品が形成される際、複数の型部の接触面によって内周面の形状を画定できる。ブラダーの内部に流動体が収容されると、流動体の圧力に応じてブラダーが伸張し膨らむ。膨らんだブラダーは、型部に対して型部の接触面とは反対側から複数の型部を押圧する。連結部は、複数の部品のうち一側の型部と他側の型部の間隔を所定範囲内に規制することから、ブラダーの押圧力によって複数の型部間の間隔が広がりすぎることがない。その結果、ブラダーの膨らみ量を所定範囲内に抑制できるため、ブラダーの膨らみすぎを防止できる。
【0047】
他方、ブラダーの内部から流動体が排出されると、流動体の圧力に応じてブラダーが収縮ししぼむ。しぼんだブラダーは、複数の型部とブラダーを接続する接続部を介して、複数の型部を、型部に対して型部の接触面とは反対側のブラダー側に引き寄せる。その結果、複数の型部の接触面が内周面から離れて、外形が中空部よりも小さくなるため、治具を中空部から容易に取り外すことができる。
【0048】
本開示に係る治具において、前記複数の型部は、前記一方向に対して交差する方向に切断した断面が環状となるように前記連結部を介して互いに連結されてもよい。
【0049】
この構成によれば、ブラダーが膨らんだとき、内周面の全てにわたって複数の型部の接触面が接触する。
【0050】
本開示に係る治具において、前記複数の型部は、両側に配設された前記型部が自由端となるように前記連結部を介して互いに連結されてもよい。
【0051】
この構成によれば、並列して配設された複数の型部のうち両側に配設された型部の片側は、他の前記型部に連結されず、自由端となるように連結部を介して互いに連結される。この場合、ブラダーが膨らんだとき、内周面の一部において複数の型部の接触面が接触する。
【0052】
本開示に係る治具において、前記連結部は、棒状部材であり、一端が前記一側の型部の端面において設けられた固定部(6)にて回動可能に接続され、他端が前記他側の型部の端面において設けられたスライド溝(7)にて前記接触面に沿う方向に移動可能に接続されてもよい。
【0053】
この構成によれば、連結部の一端が一側の型部の端面において設けられた固定部にて回動可能に接続されていることから、互いに隣接する一側の型部と他側の型部の位置が変化すると、連結部の一端を中心にして連結部が回動する。また、連結部の他端が他側の型部の端面において設けられたスライド溝にて、幅方向に沿って移動可能に接続されていることから、互いに隣接する一側の型部と他側の型部の位置が変化すると、連結部の他端が他側の型部の幅方向に沿って移動する。ブラダーが膨らんだとき、連結部の他端は他側の型部の端部側に移動し、ブラダーがしぼんだとき、連結部の他端は他側の型部の中間部側に向けて移動する。
【0054】
本開示に係る治具において、前記連結部の長さは、前記ブラダーが膨張したときの前記一側の型部の前記固定部と、前記他側の型部の前記スライド溝のうち前記固定部が設けられた端部とは反対側の幅方向端部側の端部との間の距離と等しくてもよい。
【0055】
この構成によれば、ブラダーが膨張したとき、一側の型部と他側の型部の間隔が所定範囲内に規制される。
【0056】
本開示に係る治具において、前記接続部は、前記連結部の一端が接続された前記一側の型部の一端部とは反対の他端部に接続されてもよい。
【0057】
この構成によれば、接続部が一側の型部の図心とは異なる位置で接続されているため、ブラダーがしぼむとき、一側の型部は回転しながら内側に引き込まれる。
【0058】
本開示に係る治具は、前記被成形材料の前記中空部の長手方向において複数に分割されて配置されてもよい。
【0059】
この構成によれば、被成形材料が長手方向において湾曲している場合でも、治具を中空部に配置できる。
【符号の説明】
【0060】
1 :治具
2 :型部
2A :コーナ部品
2B :平面部品
2a :接触面
2b,2c:端部
3 :ブラダー
4 :接続部
5 :連結部
6 :固定部
7 :スライド溝
10 :流動体
31 :ストリンガー
32 :スキン
33 :中空部
34 :内周面
35 :筒状部
41 :マンドレル
42 :ローラ
43 :ブラダー
45 :溝