(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】冷却流体供給構造
(51)【国際特許分類】
B24B 55/02 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
B24B55/02 A
(21)【出願番号】P 2022058777
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】星 隆史
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3158872(JP,U)
【文献】特開2001-121388(JP,A)
【文献】特開平08-257922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具ユニットを装着する工具装着孔を先端面に有する主軸と、該主軸を回転自在に保持する
非回転の主軸ハウジングとを備え、前記主軸ハウジングの先端部にその基端側に凹む係合凹部が設けられ、前記工具ユニットは、前記工具装着孔に嵌合される回転出力軸と、該回転出力軸の回転に連動して回転する砥石と、該回転出力軸を回転自在に保持するケーシングと、該ケーシングに固定された共回り防止突部とを有していて、該共回り防止突部が前記係合凹部に係合することで前記主軸の回転に伴う前記ケーシングの共回りが防止される工作機械において前記砥石の表面に冷却流体を供給するための冷却流体供給構造であって、
前記主軸ハウジングの内部を通って前記係合凹部の壁面を貫通し、該係合凹部内に向けて冷却流体を供給する第1供給流路部と、
前記共回り防止突部に貫通形成され、又は、該共回り防止突部及び前記ケーシングに跨って貫通形成され、前記共回り防止突部が前記係合凹部に係合する係合状態において、一端側の開口が前記第1供給流路部の下流側開口に連通する第2供給流路部と、
前記ケーシングよりも外側に設けられ、一端側の開口が前記第2供給流路部の下流側開口に連通するとともに他端側の開口が前記砥石の表面付近に位置し、該砥石の表面に向けて冷却流体を供給する第3供給流路部とを備えていることを特徴とする冷却流体供給構造。
【請求項2】
前記係合凹部は、前記主軸ハウジングの先端面に取付けられた該主軸ハウジングとは別体の取付部材に形成されており、
前記第1供給流路部は、前記主軸ハウジングに形成された主軸内部流路と、前記取付部材に貫通形成された主軸外部流路とからなることを特徴とする請求項1記載の冷却流体供給構造。
【請求項3】
前記取付部材は、前記主軸ハウジングの先端面に形成された螺子孔に螺合する螺子を介して該先端面に着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項2記載の冷却流体供給構造。
【請求項4】
前記第1供給流路部は、前記主軸の軸線方向に延びる直線状の流路であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の冷却流体供給構造。
【請求項5】
前記第2供給流路部は、前記係合状態において、前記主軸の軸線方向に延びる直線状の流路であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の冷却流体供給構造。
【請求項6】
前記第1供給流路部と前記第2供給流路部とは、前記係合状態において、前記主軸の軸線方向に直線状に延びて互いに同軸に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の冷却流体供給構造。
【請求項7】
前記第3供給流路部は、フレキシブル配管によって形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の冷却流体供給構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石を具備する工具ユニットを着脱可能な主軸と該主軸を回転自在に保持する主軸ハウジングとを備えた工作機械において前記砥石の表面に冷却流体を供給するための冷却流体供給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工作機械の主軸の先端に着脱可能に装着される工具ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。この工具ユニットは、主軸に設けられたテーパ孔に回転一体に装着される回転出力軸と、回転出力軸に連動して回転する加工工具と、回転出力軸を回転自在に支持するケーシングと、ケーシングに固定されて主軸ハウジングの先端面に形成された係合凹部に係合する共回り防止突部とを有している。
【0003】
前記加工工具として砥石を採用した場合には、研削加工時の発熱を抑制するための冷却流体供給構造が必要になる。特許文献2には冷却流体供給構造の一例が開示されている。この冷却流体供給構造は、ケーシングに付設されて砥石の周辺を包囲する包囲体と、包囲体に取り付けられて該包囲体内にクーラントを噴射する噴射ノズルと、噴射ノズルとクーラント供給装置とを接続するクーラント配管とが開示されている。クーラント供給装置より供給されたクーラントは、クーラント配管を通って噴射ノズルから包囲体内に噴射され、この噴射されたクーラントによって加工物(ワーク)の発熱部が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-130423号公報
【文献】実用新案登録第3158872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示す冷却流体供給構造を採用した場合、工具ユニットを主軸のテーパ孔に装着する作業に加えて、クーラント配管(流体供給路)を噴射ノズルに接続する作業が必要になる。このため、クーラント供給準備が整うまでの作業時間が長くなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に示す冷却流体供給構造では、使用する砥石の形状に拘わらず、包囲体の位置及び噴射ノズルの位置が固定されているため、クーラント(冷却流体)を適切な位置(例えば加工物の発熱箇所)に精度良く供給することができないという問題がある。この問題に対して、クーラント配管の先端に噴射ノズルを固定しておき、使用する砥石の変更等によりその形状が変わる度にクーラント配管の配索経路を変更して、冷却流体であるクーラントの供給位置を調整することが考えられる。しかしこの場合、クーラント供給位置の調整に費やす時間が長くなり、段取り作業時間が増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであって、砥石を具備する工具ユニットの主軸への装着作業に連動して、当該砥石の形状に応じた適切な冷却流体供給路を容易に確立することができる冷却流体供給構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の一局面は、
工具ユニットを装着する工具装着孔を先端面に有する主軸と、該主軸を回転自在に保持する主軸ハウジングとを備え、前記主軸ハウジングの先端部にその基端側に凹む係合凹部が設けられ、前記工具ユニットは、前記工具装着孔に嵌合される回転出力軸と、該回転出力軸の回転に連動して回転する砥石と、該回転出力軸を回転自在に保持するケーシングと、該ケーシングに固定された共回り防止突部とを有していて、該共回り防止突部が前記係合凹部に係合することで前記主軸の回転に伴う前記ケーシングの共回りが防止される工作機械において前記砥石の表面に冷却流体を供給するための冷却流体供給構造であって、
前記主軸ハウジングの内部を通って前記係合凹部の壁面を貫通し、該係合凹部内に向けて冷却流体を供給する第1供給流路部と、
前記共回り防止突部に貫通形成され、又は、該共回り防止突部及び前記ケーシングに跨って貫通形成され、前記共回り防止突部が前記係合凹部に係合する係合状態において、一端側の開口が前記第1供給流路部の下流側開口に連通する第2供給流路部と、
前記ケーシングよりも外側に設けられ、一端側の開口が前記第2供給流路部の下流側開口に連通するとともに他端側の開口が前記砥石の表面付近に位置し、該砥石の表面に向けて冷却流体を供給する第3供給流路部とを備えている冷却流体供給構造に係る。
【0009】
この冷却流体供給構造によれば、加工工具として砥石を具備する工具ユニットを主軸に装着すると砥石表面への冷却流体供給路が自動的に確立される。すなわち、この冷却流体供給路は、第1供給流路部と第2供給流路部と第3供給流路部との3つからなり、第1供給流路部は主軸ハウジングに設けられ、第2及び第3供給流路部は工具ユニットに設けられている。ここで、第1供給流路部は主軸ハウジングの先端部に設けられた係合凹部の壁面に貫通しており、第2供給流路部は工具ユニットの共回り防止突部に貫通形成されるか、又は該共回り防止突部及びケーシングに跨って貫通形成されている。したがって、工具ユニットの主軸への装着に際して共回り防止突部を主軸ハウジングの係合凹部に係合させると、第1供給流路部の下流側開口と第2供給流路部の一端側の開口とが連通する。第2供給流路部と第3供給流路部とは共回り防止突部の係合の有無に拘わらず元から連通しているので、結果として第1~第3供給流路部が一気に繋がり、砥石表面への冷却流体供給路が形成される。
【0010】
したがって、工具ユニットの主軸への着脱作業に連動して冷却流体供給路の設置及び撤去を容易に行うことができ、段取り作業時間を短縮することができる。また、砥石に向けて冷却流体を吐出する第3供給流路部の配索経路を砥石の形状に応じて予め適切に設定しておくことで、工具ユニットの交換等により砥石の形状が変更されたとしても、当該砥石の形状に応じた適切な冷却流体供給路を確立することができる。尚、砥石の形状に応じた適切な冷却流体供給路とは、例えば、加工物の発熱箇所(加工物における砥石との接触箇所)に冷却流体を供給可能な流路と定義されるが、これに限定されず、この定義は砥石の使用状況等に応じて適宜変更される。
【0011】
しかも、第1供給流路部は主軸ハウジングの内部に形成されているので、冷却流体の配管スペースを別途確保する必要がなく、スペース効率を向上させることができる。また、工具ユニットに設けられた共回り防止突部と主軸ハウジングの係合凹部との係合により主軸側の第1供給流路部と工具ユニット側の第2供給流路部とが連通するようになっていることから、共回り防止突部は流路接続用のコネクタとしての役割も果たしている。したがって、工具ユニットに流路接続用のコネクタを別途設ける必要がなく、また主軸ハウジングの先端面に接続用のアダプタを別途設けたりする必要もない。よって部品点数を削減して製造コストを低減することができる。
【0012】
前記係合凹部は、前記主軸ハウジングの先端面に取付けられた該主軸ハウジングとは別体の取付部材に形成されており、前記第1供給流路部は、前記主軸ハウジングに形成された主軸内部流路と、前記取付部材に貫通形成された主軸外部流路とからなることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、共回り防止突部が係合する係合凹部を、主軸ハウジングとは別体の取付部材に形成するようにしたことで、例えば工具ユニットの交換により共回り防止突部の位置が変化したとしても、取付部材を、係合凹部の位置が異なる他の取付部材に交換するだけで対応することができる。また、取付部材に形成される主軸外部流路の形状を変更することで、第1供給流路部の下流側開口の位置を容易に変更することができる。よって、工具ユニットの交換に伴い共回り防止突部に形成された第2供給流路部の位置が変化したとしても、取付部材を交換するだけで第1供給流路部と第2供給流路部とを容易に連通させることができる。
【0014】
前記取付部材は、前記主軸ハウジングの先端面に形成された螺子孔に螺合する螺子を介して該先端面に着脱可能に固定されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、取付部材の交換作業を容易に行うことができる。
【0016】
前記第1供給流路部は、前記主軸の軸線方向に延びる直線状の流路であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第1供給流路部を直線状に形成することで該第1供給流路部にて冷却流体に作用する管路抵抗を低減することができる。これにより、冷却流体を、第1供給流路部からその下流側に接続される第2供給流路部に向けて勢い良く供給することができる。
【0018】
前記第2供給流路部は、前記係合状態において、前記主軸の軸線方向に延びる直線状の流路であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第2供給流路部を直線状に形成することで該第2供給流路部にて冷却流体に作用する管路抵抗を低減することができる。これにより、冷却流体を、第2供給流路部からその下流側に接続される第3供給流路部に向けて勢い良く供給することができる。
【0020】
前記第1供給流路部と第2供給流路部とは、前記係合状態において、前記主軸の軸線方向に直線状に延びて互いに同軸に配置されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、前記第1供給流路部と第2供給流路部とが同軸に配置されているので、冷却流体が第1供給流路部から第2供給流路部に流入する際の管路抵抗を低減することができる。また、第1供給流路部と第2供給流路部とが協働して主軸の軸線方向に延びる1つの直線状の流体供給路を形成するので、流体供給路が屈曲している場合に比べて冷却流体に作用する管路抵抗を格段に低減することができる。
【0022】
前記第3供給流路部は、フレキシブル配管によって形成されることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、フレキシブル配管の湾曲形状を変更することで、砥石に対する冷却流体の供給箇所を自由に調整することができる。よって、冷却流体を、例えば加工物の発熱箇所に向けて精度良く供給することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、主軸ハウジングの内部を通ってその先端部の係合凹部の壁面を貫通する第1供給流路部と、砥石を加工工具として具備する工具ユニットの共回り防止突部に貫通形成され、又は、該工具ユニットの共回り防止突部及びケーシングに跨って貫通形成され、共回り防止突部が前記係合凹部に係合する係合状態において、一端側の開口が前記第1供給流路部の下流側開口に連通する第2供給流路部と、工具ユニットのケーシングよりも外側に設けられ、一端側の開口が前記第2供給流路部の下流側開口に連通するとともに他端側の開口が前記砥石の表面付近に位置する第3供給流路部とを備えるようにしたことで、前記工具ユニットの主軸への装着作業に連動して、砥石の形状に応じた適切な冷却流体供給路を容易に確立することができる。よって、工具ユニットの交換に伴う段取り作業時間を可及的に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係るクーラント供給構造(冷却流体供給構造の一例)を備えた工作機械を示す概略側面図である。
【
図2】主軸頭をその軸線に沿って水平に切断した部分断面図である。
【
図3】砥石を具備した工具ユニットを示す外観斜視図である。
【
図4】工具ユニットを装着した主軸頭をその軸線に沿って水平に切断した部分断面図である。
【
図6】(a)は取付部材の側面図であり、(b)は取付部材を係合凹部側から見た正面図である。
【
図7】他の実施形態に係る取付部材を説明するための説明図である。
【
図8】他の実施形態に係る第2供給流路部の構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
《実施形態》
図1は、実施形態におけるクーラント供給構造(冷却流体供給構造の一例)を備えた工作機械1を示す右側面図である。この工作機械1は、横型のマシニングセンタであって、ベッド2、コラム3、主軸頭4、主軸5、及びテーブル6などを備えている。工作機械1は、その外観を構成するスプラッシュガード7により機械全体が覆われている。尚、工作機械1の全体を示す
図1では、工作機械1の主要な構成要素となる要部のみを示している。
【0028】
ベッド2は全体として平面視略T字状に形成されており、前記テーブル6は前記ベッド2上に配設され、不図示のガイドレールに案内されてベッド2の前後方向、即ち、水平な矢示Z軸方向に移動するように設けられている。テーブル6上には、加工対象となるワークW(
図1にのみ示す)がパレットPを介してセットされる。
【0029】
前記コラム3は、ベッド2上に配設され、ガイドレール8に案内されて、前記Z軸と水平に直交するX軸方向(
図1の紙面垂直方向)に移動するように設けられている。コラム3には主軸頭4が支持されている。前記主軸頭4は主軸ハウジング4a(
図2参照)を有している。主軸ハウジング4aには、主軸5が軸受11を介して回転自在に保持されている。主軸5には加工工具Kが、ツールホルダを介して又は後述する工具ユニット20(
図3参照)の一部として、着脱可能に装着される。以下では、特に断らない限り、後者のように加工工具Kが工具ユニット20の一部として主軸5に装着される場合について説明する。
【0030】
主軸頭4は、前記X軸及びZ軸に直交する鉛直な矢示Y軸方向に移動可能に前記コラム3に保持されている。斯くして、主軸頭4はX軸-Y軸平面内で移動する。
【0031】
前記コラム3は、X軸送り機構(図示省略)によってX軸方向に送り駆動され、主軸頭4は、Y軸送り機構(図示省略)によってY軸方向に送り駆動され、テーブル6は、Z軸送り機構(図示省略)によってZ軸方向に送り駆動される。これらX軸送り機構、Y軸送り機構、及びZ軸送り機構は、例えばボール螺子とモータとの組み合せによって構成される。そして、各送り機構と前記主軸5と該主軸5を駆動する主軸モータ(図示省略)とが加工機構部9として機能する。
【0032】
加工機構部9は、制御装置50(
図2参照)による制御の下、主軸5に装着された加工工具Kと、テーブル6上にセットされたワークWとの相対位置を変化させることでワークWを所望の形状に加工する。制御装置50は、CPU、ROM及びRAMを有するコンピュータであって、ハードディスク等に記憶されたNCプログラムに基づいて加工機構部9の作動を制御する。
【0033】
前記工作機械1は、加工部位の冷却及び潤滑並びに切屑の排出などの目的でクーラント液を加工エリア内に供給するクーラント供給装置10(
図2参照)をさらに有している。
【0034】
クーラント供給装置10は、貯留タンクに貯留されたクーラント液を供給ポンプ(図示省略)により吸引して、吸引したクーラント液をワークWの加工部位に供給する。供給後のクーラント液は、ベッド2の下部に接続された戻り管を介して前記貯留タンクに回収される。クーラント供給装置10は前記制御装置50により作動制御される。
【0035】
[主軸構造の詳細]
図2に示すように、主軸ハウジング4aは、略円筒状のハウジング本体部4bと、ハウジング本体部4bの先端側を覆う先端カバー部4cとで構成されている。先端カバー部4cは、インロー部を有していてハウジング本体部4bの先端部に軸方向の外側から装着されている。
【0036】
主軸ハウジング4aには貫通孔4eが形成されている。貫通孔4eは、主軸ハウジング4aにおける軸受11よりも径方向外側に位置していて、ハウジング本体部4bと先端カバー部4cとに跨って主軸5の軸線と平行に延びている。貫通孔4eは、一端が前記クーラント供給装置10に電磁弁51を介して接続され、他端が主軸ハウジング4aの先端面に開口している。電磁弁51は前記制御装置50により開閉駆動される。電磁弁51が開方向に励磁駆動されると、クーラント供給装置10より貫通孔4e内にクーラント液が供給される。ハウジング本体部4bにおける先端カバー部4cとの当接面には、貫通孔4eを囲むようにOリング溝4fが形成されており、Oリング溝4fにはOリング35が嵌め込まれている。
【0037】
主軸5は、ハウジング本体部4b及び先端カバー部4cの径方向内側に配置されている。主軸5は、ハウジング本体部4bの内周面に嵌装された軸受11により回転自在に支持されている。軸受11は、ハウジング本体部4bの先端側と基端側とにそれぞれ2つずつ配置されている。
図2では、図面を簡略化して先端側の2つの軸受11のみを示している。軸受11の個数及び配置構成はこれに限定されない。また、軸受11の種類は転がり軸受に限定されず、例えば滑り軸受であってもよい。
【0038】
主軸5は、工具ユニット20(
図3参照)が装着される工具装着孔5aと、工具ユニット20を主軸5に保持するためのコレット12が収容された貫通孔5bとを有している。
【0039】
工具装着孔5aは、主軸5の先端面に開口していて、主軸5の先端側から基端側に向かってテーパ状に縮径している。工具ユニット20を主軸5に装着する際には、工具ユニット20のシャンク21aが工具装着孔5aに嵌合される。本例では、工具装着孔5aへの工具ユニット20の着脱作業は、工作機械1に搭載されたATC(Automatic tool changer)装置によって自動で行われるが、これに限ったものではなく、例えば作業者が手動で行うようにしてもよい。
【0040】
貫通孔5bは、主軸5と同軸にその軸線方向に延びていて、工具装着孔5aの基端部に連通している。コレット12は、貫通孔5b内において主軸5の軸線方向に移動可能に収容されている。コレット12は、不図示のドローバ機構に接続されている。このドローバ機構によりコレット12を主軸5の基端側に移動させると、コレット12が閉じられて、当該コレット12により工具ユニット20のプルスタッド21gが把持され、プルスタッド21gが主軸5の基端側に引き込まれる。これにより、工具ユニット20のシャンク21aが工具装着孔5aに強固に嵌合し、工具ユニット20が主軸5に固定される。工具ユニット20を主軸5から取り外す際には、ドローバ機構によりコレット12を主軸5の先端側に移動させる。これにより、コレット12が開かれて、コレット12によるシャンク21aの把持が開放され、工具ユニット20を工具装着孔5aから引き抜くことが可能になる。
【0041】
図3は、主軸5に装着される工具ユニット20の一例を示す斜視図であり、
図4は、当該工具ユニット20を主軸5に装着した状態を示す縦断面図である。
図3及び
図4では、ワークWを省略して描いている。尚、以下の説明におおいて、工具ユニット20の軸線方向の先端側及び基端側をそれぞれユニット前方側及びユニット後方側と定義する。
【0042】
この工具ユニット20は、加工工具Kとして砥石22を具備している。
図3及び
図4では、砥石22が円板状である例を示しているが、砥石22の形状はこれに限定されず、例えば円錐状等であってもよい。工具ユニット20を主軸5に装着した状態では、砥石22に冷却用のクーラント液を供給するための冷却流路(
図4の白抜き矢印参照)が形成される。この冷却流路は、第1供給流路部101と第2供給流路部102と第3供給流路部103とで構成される。各供給流路部101~103の詳細は後述する。
【0043】
前記工具ユニット20は、回転出力軸21と、回転出力軸21の先端部に固定された前記砥石22と、回転出力軸21を回転可能に支持する一対の軸受23と、一対の軸受23を内部に収容するケーシング24と、ケーシング24に連結された共回り防止ピン25とを有している。
【0044】
一対の軸受23は、回転出力軸21の軸線方向に間隔を空けて配置されている。一対の軸受23の間には、両者の間隔を規制する間座26が配置されている。軸受23の個数及び配置構成はこれに限定されない。また、軸受23の種類は転がり軸受に限定されず、例えば滑り軸受であってもよい。
【0045】
前記回転出力軸21は、主軸5の工具装着孔5aに嵌合可能なテーパ状のシャンク21aと、シャンク21aの先端部にフランジ部21bを挟んで接続され、一対の軸受23が外嵌される軸本体部21cと、該一対の軸受23を固定するためのナット27が螺合されるナット係合軸部21dと、ナット係合軸部21dの軸先端側に接続されて砥石22が装着されるテーパ状の工具装着軸部21eと、工具装着軸部21eの先端部に接続された先端螺子部21fとを有している。先端螺子部21fには、砥石22を固定するためのナット28が螺合される。
【0046】
シャンク21aの基端部には、前記コレット12によって係脱自在に把持されるプルスタッド21gが連結されている。シャンク21aの形状としては様々な規格が用意されているが、
図3の例ではBBT規格を採用している。尚、シャンク21aの規格はBBT規格に限ったものではなく、例えば、BT規格やHSK規格等の他の規格を採用してもよい。
【0047】
フランジ部21bは、外周面の全周に亘って延びる断面略V字状の溝部21hを有している。溝部21hは、前記ATC装置により工具ユニット20を自動交換する際に利用される。具体的には、工具ユニット20の自動交換時にはATCアームの爪部がこの溝部21hに係合することで工具ユニット20がATCアームに保持される。
【0048】
前記ケーシング24は、一対の軸受23を収容する円筒状の軸受収容筒部24aと、軸受収容筒部24aの軸方向の一端側に装着される先端カバー部24bと、軸受収容筒部24aに対して径方向外側に離間して配置され、前記共回り防止ピン25を保持するピン保持部24cと、ピン保持部24cと前記軸受収容筒部24aとを互いに連結する連結部24dとを有している。
【0049】
ピン保持部24cは外観視が略円柱状をなしている。ピン保持部24cは、
図5に示すように、共回り防止ピン25をスライド可能にガイドするガイド穴24eを有している。ガイド穴24eの軸線は、回転出力軸21の軸線と平行に延びており、この2つの軸線の離間距離は、主軸5の軸線と主軸ハウジング4aに形成された貫通孔4e(
図4参照)の軸線との離間距離に等しい。ガイド穴24eは、ユニット後方側に開口する止まり穴からなる。共回り防止ピン25は、先端側の一部がユニット後方側に突出するようにガイド穴24eに嵌挿されている。そして、共回り防止ピン25は、ガイド穴24eによってその軸線方向に進退自在にガイドされている。共回り防止ピン25の先端部のエッジは略45度に面取りされている。
【0050】
共回り防止ピン25の内部には、小径孔25aと該小径孔25aに段差面25bを介して接続された大径孔25cとがピン軸線方向に貫通形成されている。小径孔25aは、共回り防止ピン25の先端面25g(突出側の端面)に開口し、大径孔25cは共回り防止ピン25の基端面25fに開口している。前記段差面25bと、ガイド穴24eの奥側端面24iとの間には圧縮コイルスプリング34が圧縮状態で配置されている。共回り防止ピン25は、この圧縮コイルスプリング34によってユニット後方側に付勢されている。
【0051】
図5に示すように、共回り防止ピン25の内側の空間、及び、ガイド穴24eにおける共回り防止ピン25の基端面25fよりも穴底側の空間は、後述するように研削加工時には冷却用のクーラント液で満たされる。共回り防止ピン25は、このクーラント液の圧力によってユニット後方側に進出するように表面寸法が設定されている。すなわち、共回り防止ピン25の段差面25bの面積をA1とし、基端面25fの面積をA2とし、先端面25gの面積をA3としたとき、A1+A2>A3の関係を満たしている。これによれば、共回りピンの段差面25b及び基端面25fにクーラント圧が作用することで生じるユニット後方側への推力が、共回り防止ピン25の先端面25gにクーラント圧が作用することで生じるユニット前方側への推力を上回る。したがって、共回り防止ピン25を、そのユニット後方側に位置する取付部材30の係合凹部30dにしっかりと密着させてクーラント液の漏れを防止することができる。
【0052】
共回り防止ピン25の外周面におけるガイド穴24eに嵌合する面部にはOリング溝25dが形成されている。Oリング溝25dにはOリング33が嵌め込まれている。
【0053】
ピン保持部24cのうちガイド穴24eの奥側端面24iを形成するガイド端壁24jには、貫通孔24fが形成されている。貫通孔24fは、共回り防止ピン25の小径孔25a及び大径孔25cと同軸に形成されている。貫通孔24fは、ガイド穴24eの奥側端面24iに開口する細孔部24mと、該細孔部24mよりもユニット前方側に位置して内周面に配管接続用の雌螺子部が形成された螺子孔部24nとからなる。螺子孔部24nには、後述するフレキシブル配管36の一端部が螺合している。
【0054】
共回り防止ピン25の外周面には、工具ユニット20の回転中心側(軸受収容筒部24a側)に突出する突出板25eが形成されている。共回り防止ピン25は、突出板25eを貫通する抜止めピン29によってガイド穴24eの軸線と平行な方向にガイドされている。抜止めピン29は、その先端部の螺子部を、連結部24dのユニット後方側面に形成された螺子孔24kに螺合して固定されている。この抜止めピン29の頭部が突出板25eに当接することで、共回り防止ピン25のユニット後方側への移動量が規制され、共回り防止ピン25がガイド穴24eから抜け出さないようになっている。
【0055】
共回り防止ピン25は、工具ユニット20を主軸5に装着した状態で、主軸ハウジング4aに固定された取付部材30の係合凹部30dに係合する。この係合により、工具ユニット20のケーシング24が、共回り防止ピン25及び取付部材30を介して静止部材である主軸ハウジング4aに連結される。これにより、主軸5の回転時におけるケーシング24の共回りが防止される。こうして共回り防止ピン25は共回り防止突部として機能する。
【0056】
共回り防止ピン25の外周面に接続された突出板25eの先端部は、
図3に示すように、工具ユニット20が主軸5に装着されていない状態では、回転出力軸21のフランジ部21bに形成された係合溝21iに係合している。この係合溝21iは、フランジ部21bの外周部に位置していて、当該フランジ部21bの径方向外側及びユニット前方側に開放している。そうして突出板25eの先端部が回転出力軸21の係合溝21iに係合することで、ケーシング24が回転出力軸21に対して回り止めされる。よって、例えば工具ユニット20をATC装置の工具マガジンに収容した状態において、ケーシング24が回転出力軸21に対して不必要に回転してしまうのを防止することができる。
【0057】
一方、
図4に示すように工具ユニット20が主軸5に装着されると、共回り防止ピン25が、取付部材30の係合凹部30dに係合するとともに、該係合凹部30dからの当接反力を受けて、圧縮コイルスプリング34の付勢力に抗しながらユニット前方側(
図4の右側)に僅かに移動する。この結果、共回り防止ピン25に接続された突出板25eの先端部が、回転出力軸21の係合溝21iの外側に移動して、上述した突出板25eによる回り止め機能が解除される。これにより、回転出力軸21は、ケーシング24に支持された状態で当該ケーシング24とは独立に回転可能になる。
【0058】
[取付部材の構成]
図5及び
図6に示すように、取付部材30は、取付座面を形成するブラケット部30aと、ブラケット部30aにおける取付座面側とは反対側面に突設された円筒ボス部30bとを有している。
【0059】
取付部材30は、円筒ボス部30bの端面に開口する係合凹部30dと、係合凹部30dに連接されて取付座面に開口する連通孔30gとを有している。連通孔30gは、取付部材30を主軸ハウジング4aの先端面に取り付けた状態で、該主軸ハウジング4aの貫通孔4eと前記係合凹部30dとを連通させるように形成されている。
【0060】
係合凹部30dは、円筒ボス部30bと同軸をなす円筒孔部30eと、円筒孔部30eに連接されて取付座面側ほど縮径するテーパ孔部30fとからなる。円筒孔部30eは、共回り防止ピン25の外周面に嵌合するように形成されている。テーパ孔部30fは、共回り防止ピン25の先端側の面取り部に嵌合するように形成されている。
【0061】
取付部材30の取付座面には、連通孔30gを囲むようにOリング溝30hが形成されている。このOリング溝30hにはOリング32が嵌め込まれている。
【0062】
ブラケット部30aには、厚さ方向に貫通する一対の取付孔30cが形成されている。一対の取付孔30cは、ブラケット厚さ方向から見て円筒ボス部30bを挟んで対称に配置されている。取付部材30は、各取付孔30cを貫通するボルト31によって主軸ハウジング4aの先端面に固定されている。主軸ハウジング4aの先端面には、このボルト31に螺合する螺子孔4dが形成されている。螺子孔4dは、主軸ハウジング4aの先端面に形成された既存の螺子孔を流用することができる。取付部材30を主軸ハウジング4aの先端面に固定した状態では、主軸ハウジング4aに形成された貫通孔4eが、取付部材30の連通孔30gを介して係合凹部30dに連通する。
【0063】
[クーラント供給構造]
次に、砥石22の表面に冷却流体であるクーラント液を供給するためのクーラント供給構造について説明する。尚、各図に示す白抜き矢印はクーラント液の流れを模式的に示している。
【0064】
このクーラント供給構造は、
図4に示すように、第1供給流路部101と、第2供給流路部102と、第3供給流路部103とを含んでいる。
【0065】
第1供給流路部101は、
図4に示すように、主軸ハウジング4aに形成された貫通孔4eと、取付部材30に形成された連通孔30gとで構成される。貫通孔4eが主軸内部流路に相当し、連通孔30gが主軸外部流路に相当する。
【0066】
第2供給流路部102は、
図4及び
図5に示すように、工具ユニット20の共回り防止ピン25とケーシング24のガイド端壁24jとに跨って貫通している。具体的には、第2供給流路部102は、共回り防止ピン25の内部に形成された小径孔25a及び大径孔25cと、ガイド端壁24jに形成された貫通孔24fとで構成されている。これら小径孔25a、大径孔25c及び貫通孔24fは、主軸5の軸線方向に沿って互いに同軸に直線状に配置されている。すなわち、第2供給流路部102は、主軸5の軸線方向と平行に延びる直線状の流路である。第2供給流路部102の一端側の開口は、第1供給流路部101の下流側開口(つまり連通孔30gの下流側開口)に連通している。第2供給流路部102の他端側の開口は、後述する第3供給流路部103に連通している。
【0067】
第3供給流路部103は、
図4に示すように、貫通孔24fに接続されたフレキシブル配管36内の流路と、フレキシブル配管36の先端に接続された末広ノズル37内の流路とで構成されている。フレキシブル配管36は、貫通孔24fからユニット前側に向かって延びた後、砥石22の側面に沿って径方向外側に屈曲し、その後、ユニット前側に屈曲して砥石22の外周面に近接する位置まで延びている。フレキシブル配管36の砥石22側の端部には末広ノズル37が接続されている。末広ノズル37は、下流側ほど流路幅が広くなる扁平なノズルであって、吐出開口が砥石22の表面付近に位置するように配置されている。具体的には、末広ノズル37は、その吐出口が、砥石外周面に所定間隔を空けて対向するように配置されている。ここで、所定間隔は、ワークWの発熱箇所(ワークWにおける砥石22との当接箇所)に向けてクーラント液を供給可能な範囲に設定される。本例では、末広ノズル37の吐出口は、砥石22の外周面に対向しているが、これに限ったものではなく、砥石22の側面に対向していてもよいし、砥石22の表面に対向せずにオフセットしていてもよい。
【0068】
以上のように構成された工作機械1において、主軸5に工具ユニット20を装着していない状態では、
図2に示すように、第1供給流路部101は主軸5の先端部付近に開口しているだけでクーラント液の供給路としては機能していない。一方、
図4に示すように、工具ユニット20を主軸5に装着した状態では、共回り防止ピン25が取付部材30の係合凹部30dに係合する。共回り防止ピン25が係合凹部30dに係合すると、第1供給流路部101の下流側開口(取付部材30の連通孔30gの下流側開口)と、第2供給流路部102の上流側開口(共回り防止ピン25の小径孔25aの上流側開口)とが連通する。第2供給流路部102と第3供給流路部103とは、工具ユニット20に設けられて元々連通しているので、結局、3つの供給流路部101~103が一気に繋がり、クーラント供給装置10から砥石22の表面付近に至るクーラント液の供給流路(
図4の白抜き矢印で示す流路)が形成される。
【0069】
そして、砥石22による研削加工時には、制御装置50による制御の下、電磁弁51が開方向に励磁駆動されて、クーラント供給装置10から吐出されたクーラント液が第1供給流路部101に流入した後、工具ユニット20に設けられた第2供給流路部102及び第3供給流路部103を経由してワークWの発熱箇所(ワークWにおける砥石22との当接箇所)に供給される。
【0070】
尚、共回り防止ピン25を有さない通常のツールホルダを主軸5に装着した加工動作では、制御装置50がNCプログラムの解析内容を基にそのことを認識して電磁弁51を閉方向に励磁駆動する。したがって、共回り防止ピン25を必要としない通常の加工動作時には第1供給流路部101の先端からクーラント液が不必要に噴射されることはない。
【0071】
[本実施形態の作用効果]
以上説明したように、本実施形態のクーラント供給構造によれば、主軸ハウジング4aの内部を通ってその先端部の係合凹部30dの壁面を貫通する第1供給流路部101と、工具ユニット20の共回り防止ピン25及びケーシング24に跨って貫通形成され、共回り防止ピン25が前記係合凹部30dに係合する係合状態において、一端側の開口が前記第1供給流路部101の下流側開口に連通する第2供給流路部102と、工具ユニット20のケーシング24よりも外側に設けられ、一端側の開口が前記第2供給流路部102の下流側開口に連通するとともに他端側の開口が前記砥石22の表面付近に位置する第3供給流路部103とを備えるようにしたことで、工具ユニット20の主軸5への着脱作業に連動して砥石22へのクーラント供給路の設置及び撤去を容易に行うことができる。よって、工具ユニット20の交換に伴う段取り作業時間を可及的に短縮することができる。また、砥石22に向けてクーラント液を吐出する第3供給流路部103の配索経路を砥石22の形状に応じて予め適切に設定しておくことで、工具ユニット20の交換等により砥石22の形状が変更されたとしても、当該砥石22の形状に応じた適切なクーラント供給路を確立することができる。
【0072】
しかも、第1供給流路部101はその殆どが主軸ハウジング4aの内部に形成されているので、クーラント液の配管スペースを別途確保する必要がなく、スペース効率を向上させることができる。また、工具ユニット20に設けられた共回り防止ピン25と前記係合凹部30dとの係合により主軸5側の第1供給流路部101と工具ユニット20側の第2供給流路部102とが連通するようになっており、共回り防止ピン25は流路接続用のコネクタとしての役割も果たしている。したがって、部品の共通化を図ってコストを低減することができる。
【0073】
また、前記係合凹部30dは、主軸ハウジング4aの先端面に取付けられた該主軸ハウジング4aとは別体の取付部材30に形成されており、第1供給流路部101は、主軸ハウジング4aに形成された主軸内部流路としての貫通孔4eと、取付部材30に貫通形成された主軸外部流路しての連通孔30gとからなる。
【0074】
これによれば、共回り防止ピン25が係合する係合凹部30dを、主軸ハウジング4aとは別体の取付部材30に形成するようにしたことで、例えば工具ユニット20の交換により共回り防止ピン25の位置が変化したとしても、取付部材30に形成される係合凹部30d及び連通孔30gの形状を変更するだけで対応することができる(後述する
図7参照)。
【0075】
前記取付部材30は、主軸ハウジング4aの先端面に形成された螺子孔4dに螺合するボルト31により該先端面に着脱可能に固定されている。
【0076】
これによれば、取付部材30の交換作業を容易に行うことができる。この螺子孔4dとしては、主軸ハウジング4aの先端面に形成された既存の螺子孔を利用することができる。
【0077】
第1供給流路部101は、主軸5の軸線方向に延びる直線状の流路とされている。
【0078】
この構成によれば、第1供給流路部101を直線状に形成することで第1供給流路部101内の管路抵抗を低減することができる。これにより、クーラント液を、第1供給流路部101からその下流側に接続される第2供給流路部102に向けて勢い良く供給することができる。
【0079】
第2供給流路部102は、共回り防止ピン25が取付部材30の係合凹部30dに係合した状態では、主軸5の軸線方向に直線状に延びるように形成されている。
【0080】
この構成によれば、第2供給流路部102を直線状に形成することで該第2供給流路部102内の管路抵抗を低減することができる。これにより、クーラント液を、第2供給流路部102からその下流側に接続される第3供給流路部103に向けて勢い良く供給することができる。
【0081】
前記第1供給流路部101と第2供給流路部102とは、共回り防止ピン25が取付部材30の係合凹部30dに係合した状態では、主軸5の軸線方向に直線状に延びて互いに同軸に配置される。
【0082】
これによれば、第1供給流路部101と第2供給流路部102とが同軸に配置されているので、クーラント液が第1供給流路部101から第2供給流路部102に流入する際の管路抵抗を低減することができる。また、第1供給流路部101と第2供給流路部102とが協働して1つの直線状の流体供給路を形成するので、クーラント液に作用する管路抵抗を可及的に低減することができる。
【0083】
また、第3供給流路部103は、フレキシブル配管36によって形成されている。
【0084】
これによれば、フレキシブル配管36の湾曲形状を変更することで、砥石22に対するクーラント液の供給箇所を自由に調整することができる。よって、クーラント液をワークWの発熱箇所に精度良く供給してその冷却効率を向上させることができる。
【0085】
《他の実施形態》
前記実施形態では、工具ユニット20は、主軸5の軸線と砥石22の軸線とが同方向を向くように構成されているが、これに限ったものではなく、主軸5の軸線と砥石22の軸線とが所定角度(例えば90°)で交差するように構成されていてもよい。この場合、ケーシング24内には、回転軸線を交差させるためのギア機構を追加すればよい。
【0086】
前記実施形態では、砥石22を冷却するための冷却流体はクーラント液とされているが、これに限ったものではない。冷却流体は、例えば、冷却空気や不活性ガス等であってもよい。
【0087】
前記実施形態では、主軸ハウジング4aに形成された貫通孔4eと、工具ユニット20の共回り防止ピン25とが同軸に位置する例を説明したが、例えば、
図7に示すように、共回り防止ピン25の軸線が、貫通孔4eの軸線に対して主軸ハウジング4aの径方向外側(
図7の下側)にオフセットしていてもよい。この場合、取付部材30に形成される連通孔30gの位置を、このオフセットを吸収する方向、つまり主軸ハウジング4aの径方向内側に(
図6の上側)にずらすことで、貫通孔4eと共回り防止ピン25内の小径孔25aとが連通孔30gを介して連通する。よって、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0088】
前記実施形態では、第2供給流路部102は、共回り防止ピン25とケーシング24のガイド端壁24jとに跨がって貫通形成されているが、これに限ったものでなく、例えば、
図8に示すように、共回り防止ピン25のみを貫通していてもよい。
図8の例では、共回り防止ピン25はケーシング24に固定され、フレキシブル配管36は共回り防止ピン25に対して径方向外側(側方)から接続され、共回り防止ピン25内の小径孔25aとフレキシブル配管36内の流路とが連通している。
【0089】
前記実施形態において、第1供給流路部101は、加工工具Kとしてドリルなどの切削工具を具備した工具ユニットに対しても使用することができる。この場合、第1供給流路部101に供給されたクーラント液は、ケーシング内の流路及び回転出力軸の内部に形成された流路を通ってセンタースルー方式やサイドスルー方式など周知の方式により加工工具Kの先端部に供給される。このように、センタースルー方式やサイドスルー方式を採用した工具ユニットと、砥石22を具備した前記実施形態の工具ユニット20とで、第1供給流路部101を兼用することでクーラント供給構造を簡素化してコストを低減することができる。
【0090】
前記実施形態では、共回り防止ピン25は、ケーシング24とは別部材で構成されているが、これに限ったものではなく、ケーシング24に一体形成されていてもよい。
【0091】
前記実施形態では、係合凹部30dは、主軸ハウジング4aとは別体の取付部材30に形成されているが、これに限ったものではなく、主軸ハウジング4aの先端面に直接形成するようにしてもよい。
【0092】
前記実施形態では、第3供給流路部103を形成するためにフレキシブル配管36を使用しているが、必ずしもフレキシブル配管36を使用する必要はなく、形状が固定された固定配管を使用するようにしてもよい。また、末広ノズル37は廃止してもよい。
【0093】
前記実施形態では、工作機械1は横型のマシニングセンタとされているが、これに限ったものではなく、例えば縦型のマシニングセンタや複合加工機であってもよい。
【0094】
尚、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 工作機械
4a 主軸ハウジング
4d 螺子孔
5 主軸
5a 工具装着孔
20 工具ユニット
21 回転出力軸
22 砥石
24 ケーシング
25 共回り防止ピン(共回り防止突部)
30 取付部材
30d 係合凹部
36 フレキシブル配管
101 第1供給流路部
102 第2供給流路部
103 第3供給流路部
【要約】
【課題】砥石を具備する工具ユニットの主軸への装着作業に連動して、当該砥石の形状に応じた適切な冷却流体供給路を容易に確立することができる冷却流体供給構造を提供する。
【解決手段】冷却流体供給構造は、主軸ハウジング4aの内部を通ってその先端部の係合凹部30dの壁面を貫通する第1供給流路部101と、砥石22を具備する工具ユニット20の共回り防止突部25に貫通形成され、又は、該工具ユニット20の共回り防止突部25及びケーシング24に跨って貫通形成され、共回り防止突部25が係合凹部30dに係合する係合状態において、一端側の開口が第1供給流路部101の下流側開口に連通する第2供給流路部102と、工具ユニット20のケーシング24よりも外側に設けられ、一端側の開口が第2供給流路部102の下流側開口に連通するとともに他端側の開口が砥石22の表面付近に位置する第3供給流路部103と備えている。
【選択図】
図4