IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローブライド株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図1
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図2
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図3
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図4
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図5
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図6
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図7
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図8
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図9
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図10
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図11
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/06 20150101AFI20221121BHJP
   A63B 53/04 20150101ALI20221121BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20221121BHJP
【FI】
A63B53/06 B
A63B53/04 D
A63B102:32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022090647
(22)【出願日】2022-06-03
【審査請求日】2022-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】今井 資人
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-151381(JP,A)
【文献】特表2020-531089(JP,A)
【文献】特開2019-025323(JP,A)
【文献】特開2019-017805(JP,A)
【文献】特開2018-167064(JP,A)
【文献】特開2010-252964(JP,A)
【文献】特開2012-176230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0261715(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0146370(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0192928(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0178092(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0122004(US,A1)
【文献】中国実用新案第200991549(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B49/00-60/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール部にスライド式の錘調整機構を備えたゴルフクラブヘッドにおいて、
前記錘調整機構は、
ソール部に延出形成される長溝と、
前記ソール部の表面と面一状となって前記長溝の両サイドに対向して形成される一対の棚と、
前記一対の棚に沿って移動可能であり、前記棚の露出側に配設される第1錘部と前記長溝内部側に配設される第2錘部とを具備する錘部材と、
前記第1錘部に取り付けられて、前記錘部材がスライドした際の位置を固定する固定部材と、
を有しており、
前記錘調整機構のフェース側のソール部の表面には、前記長溝に沿って壁部が形成されており、
前記壁部は、その高さが前記錘調整機構の高さ以上に形成されている、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記第1錘部と第2錘部は、それぞれ前記一対の棚を挟持するように配設され、
前記第1錘部と第2錘部の対向面には、錘部材を固定する際に互いに嵌合する凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第1錘部と第2錘部の少なくとも一方には、微調整用の錘が着脱可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記固定部材は、前記第1錘部と第2錘部を締め付け固定する螺子を備え、
前記微調整用の錘は、前記螺子の周囲に複数個、配設されることを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記長溝の内面には、スライド方向と直交する方向に凹所が形成されており、
前記第1錘部と第2錘部は、それぞれ前記棚の表面と、前記凹所によって形成された屈曲部に当て付いて固定されることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記第2錘部は、前記固定部材の操作によって、前記長溝の内面に対して接近/離反する摺動部を備えており、
前記摺動部が前記長溝の内面に圧接することで、前記錘部材の位置が固定されることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記錘部材は、前記第1錘部と第2錘部が一体形成された構成であり、
前記錘部材には、前記一対の棚に沿って錘部材を摺動可能に案内する切欠きが形成されており、
前記錘部材は、回動することで、前記一対の棚と切欠きの案内関係が解除され、前記長溝から取り外し可能であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記固定部材は、前記第1錘部に被着されるキャップ部材と、前記キャップ部材に挿入される螺子を備えており、
前記螺子でキャップ部材を締め付けた際、前記キャップ部材が前記棚の周辺の表面領域に当接して前記錘部材の固定がされることを特徴とする請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
ソール部にスライド式の錘調整機構を備えたゴルフクラブヘッドにおいて、
前記錘調整機構は、
ソール部に延出形成される長溝と、
前記ソール部の表面と面一状となって前記長溝の両サイドに対向して形成される一対の棚と、
前記一対の棚に沿って移動可能な錘部材と、
前記錘部材に取り付けられて、錘部材がスライドした際の位置を固定する固定部材と、
を有しており、
前記錘部材には、前記一対の棚に沿って錘部材を摺動可能に案内する切欠きが形成されており、
前記錘部材は、回動することで、前記棚と切欠きの案内関係が解除され、前記長溝から取り外し可能であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記固定部材は、前記錘部材に被着されるキャップ部材と、前記キャップ部材に挿入される螺子を備えており、
前記螺子でキャップ部材を締め付けた際、前記キャップ部材が前記棚の周辺の表面領域に当接して前記錘部材の固定がされることを特徴とする請求項9に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関し、詳細には、重量調整が可能なゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウッド型タイプのゴルフクラブのゴルフラグヘッド(以下、ヘッドと称する)に、重量調整のための錘部材をスライド可能に装着するスライド式の錘調整機構を配設した構成が知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、ソール部の裏面に、トウ・ヒール方向に延出するように形成された溝の内部に第1の棚部と第2の棚部を対向するように配設し、これらの第1の棚部と第2の棚部を挟持するように、錘アッセンブリを配設した構成が開示されている。前記錘アッセンブリは、前記第1の棚部と第2の棚部を挟持する塊体部材(錘部材)とワッシャを備えており、締め付けボルトによって、その位置をスライドさせて、好みの位置で固定できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6715870号
【文献】特許第6989651号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の錘調整機構は、錘部材をスライドさせる棚部が溝の内部に形成されているため、このスライド機構を形成するための金型の構造が複雑になってしまい、生産性が悪いという問題がある。一方、上記したようなスライド式の錘調整機構は、打球時に錘部材がガタ付くことなく安定した支持状態となり、調整操作が容易に行える構成であることが好ましい。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、ソール部にスライド式の錘調整機構を備えたゴルフクラブヘッドにおいて、生産性の向上が図れるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係るゴルフクラブヘッドは、ソール部にスライド式の錘調整機構を備えており、前記錘調整機構は、ソール部に延出形成される長溝と、前記ソール部の表面と面一状となって前記長溝の両サイドに対向して形成される一対の棚と、前記一対の棚に沿って移動可能であり、前記棚の露出側に配設される第1錘部と前記長溝内部側に配設される第2錘部とを具備する錘部材と、前記第1錘部に取り付けられて、前記錘部材がスライドした際の位置を固定する固定部材と、を有しており、前記錘調整機構のフェース側のソール部の表面には、前記長溝に沿って壁部が形成されており、前記壁部は、その高さが前記錘調整機構の高さ以上に形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記したヘッド構造によれば、錘部材をスライドさせる一対の棚が、ソール部に延出形成された長溝の両サイドに対向して形成されると共に、ソール部の表面と面一状に形成したことから、スライド機構を形成するための金型の構造を簡略化することができ、生産性の向上が図れる。また、棚は、溝の内部に形成されるのではなく、ソール部の表面と面一状に形成されることから、錘部材の調整操作が行ない易くなる。さらに、ソール部に、前記長溝に沿って、高さが前記錘調整機構の高さ以上となる壁部を形成したことで、打球時に錘調整機構が地面(芝)と接触することが低減され、錘部材がガタ付くことなく安定した支持状態となる。
【0008】
また、本発明に係るゴルフクラブヘッドは、ソール部にスライド式の錘調整機構を備えており、前記錘調整機構は、ソール部に延出形成される長溝と、前記ソール部の表面と面一状となって前記長溝の両サイドに対向して形成される一対の棚と、前記一対の棚に沿って移動可能な錘部材と、前記錘部材に取り付けられて、錘部材がスライドした際の位置を固定する固定部材と、を有しており、前記錘部材には、前記一対の棚に沿って錘部材を摺動可能に案内する切欠きが形成されており、前記錘部材は、回動することで、前記棚と切欠きの案内関係が解除され、前記長溝から取り外し可能であることを特徴とする。
【0009】
上記したヘッド構造によれば、錘部材をスライドさせる一対の棚が、ソール部に延出形成された長溝の両サイドに対向して形成されると共に、ソール部の表面と面一状に形成したことから、上記した構成と同様、スライド機構を形成するための金型の構造を簡略化することができ、生産性の向上が図れ、調整操作を容易に行なうことが可能となる。また、錘部材は、回動することで、前記長溝から取り外し可能であることから、錘部材の調整操作が容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ソール部にスライド式の錘調整機構を備えたゴルフクラブヘッドに関し、その生産性の向上が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るゴルフクラブヘッドの第1の実施形態を取着したゴルフクラブを示す正面図。
図2図1に示すゴルフクラブヘッドをソール部側から見た図。
図3図2に示すゴルフクラブヘッドのA-A線に沿った断面図。
図4】ゴルフクラブヘッドの第2の実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は第2錘部の構造を示す図。
図5】ゴルフクラブヘッドの第3の実施形態を示す断面図。
図6】ゴルフクラブヘッドの第4の実施形態を示す断面図、(a)は断面図、(b)はその変形例を示す断面図。
図7】ゴルフクラブヘッドの第5の実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は図(a)に示す第2錘部の平面図。
図8】ゴルフクラブヘッドの第6の実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)はその変形例を示す断面図。
図9図8に示す実施形態を示す模式図であり、(a)は錘部材の取り外し位置を示す図、(b)は錘部材の取り付け位置を示す図。
図10図8に示す実施形態において、錘部材の固定状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は裏面側(ヘッドの内部)から見た図。
図11図10に示す実施形態の変形例を示す図であり、(a)はキャップ部材の裏面図、(b)は錘部材を裏面側(ヘッドの内部)から見た図。
図12】(a)はゴルフクラブヘッドの第7の実施形態を示す図、(b)はその変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るゴルフクラブヘッド(以下、ヘッドと称する)の実施形態を説明する。
図1は、第1の実施形態のヘッドが装着されたゴルフラブを示し、図2は、図1に示すヘッドをソール部側から見た図である。これらの図で示すゴルフクラブ1は、シャフト50の先端にヘッド3を止着したドライバータイプが示されている。
【0013】
前記ヘッド3は、金属製のヘッド本体4を備え、ヘッド本体4は、打球面(フェース面)を有するフェース部5と、フェース部5の上縁から後方に延出するクラウン部6と、フェース部5の下縁から後方に延出するソール部7と、前記クラウン部6及びソール部7の縁部を繋ぐサイド部8とを備えた中空構造となっている。前記サイド部8は、フェース部5と対向するバック部8aと、フェース部5からバック部8aを経由するトウ部8b及びヒール部8cを備えている。なお、前記サイド部8は、クラウン部6との間、及び、ソール部7との間で稜線によって区画されてもよいし、ソール部7との間で、稜線で区画されることなくソール部から面一状(地面に接地するソール部7から立ち上がって面一状)に形成されてもよい。
【0014】
前記ヘッド本体4は、様々な位置で分割した複数の金属製の外殻部材同士を溶着、接着等によって接合することで構成される。それぞれの外殻部材については、例えば、チタン合金、ステンレス系、鉄系、アルミ系合金、マグネシウム合金等の金属を鋳造、プレス成形等で一体形成することが可能であり、それぞれの端縁領域を溶接、接着、ロウ付け、ビス止め等することによりヘッド本体4が作成される。或いは、外殻部材を、カーボン繊維、ガラス繊維等の強化繊維を含む複合材料(繊維強化プラスチック等)で作成し、これを接着等で一体化することでヘッド本体4を作成してもよく、外殻部材の構成材料や接合方法については限定されることはない。
また、ヘッド本体4を構成する各部材(外殻部材)については、サイド部8を、ソール部7と一体化したり、クラウン部6と一体化する等、複数の部材、或いは各部材の部分的な構成要素を鋳造等で一体形成しておき、それらを溶着、接着等によって接合したものであってもよい。また、サイド部8については、上記したように、ソール部7との間で稜線を形成することなく面一状に一体化した構成であってもよいし、クラウン部6との間で稜線を形成することなく面一状に一体化した構成であってもよい。
【0015】
前記フェース部5については、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス系、鉄系等の金属を、プレス加工、CNC加工、或いは鍛造等することで形成されており、溶接、レーザ溶接、プラズマ溶接、ロウ付け、接着等によって、クラウン部、ソール部及びサイド部の前方側に形成された開口に対して接合される。この場合、フェース部5は、板状に形成されて他の外殻部材に対して接合してもよいし、カップ状に形成されて、クラウン部、サイド部、ソール部の前端縁に接合され、これらの一部を構成していてもよい。
【0016】
また、ヘッド本体4には、シャフト50の先端を止着するホーゼル部9が一体形成されている。このホーゼル部9は、クラウン部6から上方に突出しており、この開口穴に前記シャフト50の先端部が嵌合されて止着される。
【0017】
前記ソール部7には、スライド式の錘調整機構10が設けられている。
以下、スライド式の錘調整機構10の構成について、図2及び図3を参照して説明するが、以下の説明において、上下(上方、下方)とは、図面内での上下を意味している。このため、図で示される下(下方)は、実際には、ヘッド本体4のクラウン部側を意味しており、上(上方)は、その反対側(地面側)を意味している。
【0018】
スライド式の錘調整機構10は、公知のように、任意の重さの錘をソール部に沿ってスライド移動し、その位置を固定することで、ヘッド本体の重量バランス(重心高さ、重心深度、重心距離などのパラメータ)を、ユーザのスイング特性等に応じて調整できるようにしたものである。錘を移動させるためのスライド孔(長溝と称する)については、ソール部の様々な位置、及び、長さで形成することが可能であり、本発明では、長溝の形状、断面の形状、長さ、形成位置について、特定構造に限定されることはない。
本実施形態の長溝11は、図2に示すように、ソール部7のバック側で、その稜線7Aから所定の間隔をおいて円弧状に形成されており、これにより、トウ・ヒール方向及びフェース・バック方向で、錘の位置を調整できるように構成されている。
【0019】
前記錘調整機構10は、ソール部7に延出形成される円弧状の長溝11と、この長溝11の開口部分の両サイド(フェース側、及び、バック側)に対向して形成される一対の棚12a,12bとを備えている。
【0020】
前記一対の棚12a,12bは、その露出面がソール部7の表面7aに対して面一に形成されている。具体的には、各一対の棚12a,12bは、長溝11内に落ち込んだ位置に形成されるのではなく、表面7aと連続して面一になっている構成であればよい。このように、一対の棚12a,12bを、ソール部7の表面7aとの間で面一状に形成することで、ソール部を型成形する際に用いられる金型が複雑になることはなく、生産性の向上が図れる。
この場合、ソール部を型成形する際に用いられる金型が複雑にならなければ、両者の間に僅かな段差が生じていてもよいし、多少、傾斜した状態になっているもの(これらを面一状と称する)であってもよい。
【0021】
前記一対の棚12a,12bは、それぞれ長溝11の上端開口のフェース側、及び、バック側から長溝の中心位置に向けて張り出すように形成されており、両先端の間には、長溝方向に沿って開口12Aが形成されている。
【0022】
また、前記錘調整機構10は、一対の棚12a,12bに沿って移動可能な錘部材14と、錘部材14をスライドさせた際の位置を固定する固定部材15とを備えている。
本実施形態の錘部材14は、上下に分割して構成されており、棚の露出側に配設される第1錘部14Aと、長溝11の内部側(内部空間S)に配設される第2錘部14Bとを具備している。これら第1錘部14Aと第2錘部14Bは、固定部材15によって、一対の棚12a,12bを挟持するように固定される。本実施形態の固定部材15は、螺子(止めビス)15aで構成されており、第1錘部14Aと第2錘部14Bには、前記螺子15aが螺合される雌螺子部14a,14bが形成されている。このため、第1錘部14Aと第2錘部14Bを位置合わせして、螺子15aを螺入して締め付けることで、第1錘部14Aと第2錘部14Bは、前記一対の棚12a,12bを挟持した状態で錘部材14の位置が固定される。
【0023】
また、螺子15aを緩めることで、第1錘部14Aと第2錘部14Bは、前記一対の棚12a,12bから上下方向に離反し、これにより、錘部材14は、長溝11に沿って移動することができ、再び、好ましい位置で螺子15aを締め付けることで、その位置が固定される。
【0024】
前記第1錘部14Aと第2錘部14B、及び、前記固定部材15は、例えば、アルミ、SUS、チタン、タングステン合金等、様々な比重のものを用いることができ、これらの部材は、錘調整機能を有する。すなわち、長溝11の固定位置、重量を変えることで、重心バランスを調整することが可能となる。
前記第1錘部14Aと第2錘部14Bの形状は、特に限定されることはないが、調整作業が行い易い形状にすることが好ましい。例えば、第1錘部14Aは、操作中に長溝11内に落下しないように、最小長さが前記一対の棚12a,12bの先端の間の開口12Aの長さよりも長い形状(例えば、開口12Aの長さよりも大径の円形状)のものを用いることが好ましい。また、第2錘部14Bについては、長溝11内に容易に挿入することができると共に、取り外しができるような形状にすることが好ましい。例えば、長辺が開口12Aの長さよりも長く、短辺が開口12Aの長さよりも短い矩形形状にすることで、長溝11からの取り外し、及び、挿入操作が容易に行えるようになる。
【0025】
前記錘調整機構10に対してフェース側のソール部7の表面には、長溝11に沿って壁部18を形成しておくことが好ましい。この壁部18は、ゴルフラブをスイングした際、前記錘調整機構10が地面(芝)と接触して、錘調整機構10の緩み、ガタ付き、損傷などを抑制する機能を果たすものであり、その高さHは、錘調整機構10の最大高さ(ソール部からの突出高さH1)以上に形成しておくことが好ましい。
【0026】
なお、壁部18の形成位置や形状については、上記した機能が発揮されるものであればよく、デザイン等を考慮して適宜変形することが可能である。例えば、錘調整機構10のフェース側で立ち上がって、そのままフェース部5の下縁に連続するものであってもよいし、フェース側で、トウ・ヒール方向で所定の範囲内で膨らんだ状態で形成する等、適宜変形することが可能である。或いは、壁部18によって形成される膨出面が、次第にフェース部に移行するに連れて高くなり、その最大高さが、錘調整機構10の最大高さ(ソール部からの突出高さH1)以上となるような形状であってもよい。
【0027】
上記したヘッド構造によれば、錘調整機構10の固定部材15を操作して、錘部材14の重さを変更したり、その固定位置をスライドさせて調整することができ、これにより、ヘッド本体4の重量バランス(重心高さ、重心深度、重心距離などのパラメータ)を、ユーザのスイング特性等に応じて調整することができる。
【0028】
また、錘部材14をスライドさせる一対の棚12a,12bが、ソール部7の表面と面一状(略面一)に形成されているため、スライド機構を形成するための金型の構造を簡略化することができ、ヘッド本体の生産性の向上が図れるようになる。また、一対の棚12a,12bが長溝11の開口部分に形成されているため、錘部材の操作がし易くなる。さらに、長溝11のフェース側に壁部18を形成したことで、錘調整機構10の緩み、ガタ付き、損傷などが抑制され、錘部材14の支持(固定)状態の安定化が図れるようになる。
【0029】
次に、本発明に係るゴルフクラブヘッドの別の実施形態について説明する。
なお、以下に説明する実施形態では、上記した実施形態と同様な構成については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0030】
図4は、第2の実施形態を示す図であり、(a)は、図3と同様な断面図、(b)は、第2錘部の構造を示す図である。
この実施形態では、第1錘部14Aと第2錘部14Bは、それぞれ前記一対の棚12a,12bを挟持するように配設され、第1錘部14Aと第2錘部14Bの対向面には、錘部材14を固定する際に互いに嵌合する凹凸部が形成されている。
【0031】
本実施形態の凹凸部は、第1錘部14Aの裏面に形成される凹部14eと、第2錘部14Bの表面に形成される凸部14fによって構成されている。これらは、前記固定部材15である螺子15aを締め付けることで、第1錘部14Aと第2錘部14Bが一対の棚12a,12bを挟持した状態で嵌合するようになっている。
【0032】
なお、前記凹凸部が形成される位置、大きさ(深さ)、形成個数等については、特に限定されることはないが、本実施形態では、図4(b)に示すように、前記固定部材15(螺子15a)の両サイドの対称となる位置(螺子15aの中心位置から等距離となる対称位置に複数個)に設けられている。
このような構成によれば、錘部材の固定時において、一対の棚12a,12bを挟持する第1錘部14Aと第2錘部14Bのガタ付きが少なくなり、締め付け状態が安定する。特に、螺子15aに対し、その両サイドに対称となるように複数個(図では2個)設けることで、ガタ付き等を効果的に抑制することが可能となる。
【0033】
図5は、第3の実施形態を示す断面図である。
この実施形態では、第1錘部14Aの裏面に凸部14fが形成されており、第2錘部14Bの表面に、凸部14fが嵌合する凹部14eが形成されている。前記凸部14fは、固定部材15(螺子15a)の領域で、螺子の断面積よりも大きい形状で形成されており、螺子15aの頭部が、下方に(凸部14fの内部になってもよい)位置できるように構成されている。
【0034】
このような構成によれば、第1錘部14Aの薄肉厚化が図れると共に、錘部材14を固定する螺子15aの頭部を低い位置に固定することができ、結果として、錘調整機構の錘部材14の突出高さH1を抑えることが可能となる。
【0035】
図6は、第4の実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)はその変形例を示す断面図である。
この実施形態では、長溝11の内部空間Sを規定する内面(フェース側の内面11eとバック側の内面11f)に、スライド方向と直交する方向に凹所20が形成されている。この凹所20内には、前記第2錘部14Bが入り込むように構成されており、入り込んだ第2錘部14Bは、前記螺子15aを締め付けた際、凹所20によって形成された屈曲部(凹所の段部)20aに対して当て付くように構成されている。このため、第1錘部14Aと第2錘部14Bは、螺子15aを締め付けた際、図の矢印で示すように、第1錘部14Aが棚12a,12bの表面に当て付き、第2錘部14Bが屈曲部20aに当て付き、錘部材14を固定する状態となる。
【0036】
このような構成によれば、第1錘部14Aと第2錘部14Bの間には、空隙S1が生じるため、(b)の変形例で示すように、長溝内(空隙S1内)に突出する凸部14fを形成し易くなる。すなわち、凸部14fを形成することで、調整機構10の突出高さH1を抑え易くすることが可能となる。また、スライド機構部分については、金型で対応することができ、凹所20を追加工しなくてもよいため、生産性の向上とコストダウンが図れるようになる。
【0037】
さらに、第1錘部14A及び第2錘部14Bは、一対の棚12a,12bを上下方向で挟持するのではなく、第1錘部14Aの棚12a,12bに対する押圧位置(下向きの矢印)と、第2錘部14Bの屈曲部20aに対する押圧位置(上向きの矢印)がずれた状態(オフセットした状態)となるので、錘部材14の固定状態が安定し、ガタ付き等が発生し難くなる。
【0038】
図7は、第5の実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は図(a)に示す第2錘部の平面図である。
本実施形態の第2錘部14Dは、固定部材15(螺子15a)の回転操作によって長溝11の内面11e,11fに対して接近/離反する摺動部24a,24bを備えている。各摺動部24a,24bの中央側の表面には、下方に移行するに連れて縮径するテーパ24a1,24b1が形成されている。また、第2錘部14Dは、各摺動部24a,24bの間に押圧部24cを備えており、押圧部24cの表面には、下方に移行するに連れて縮径するテーパ24c1が形成されている。このテーパ24c1は、前記摺動部24a,24bのテーパ24a1,24b1とテーパ率が異なっており、前記押圧部24cが下方に移動すると、各摺動部24a,24bを、図の矢印方向で示すように、長溝11の内面11e,11fに対して接近(圧接)させるようにテーパが形成されている。
【0039】
前記摺動部24a,24b、及び、押圧部24cは、前記溝11内に配設される上下プレート25a,25b内に収容されており、第2錘部14Dと上下プレート25a,25bは、一体的に長溝内をスライドするように構成されている。
【0040】
前記第1錘部14Aには、上記した実施形態と同様、固定部材15(螺子15a)が螺入されており、固定部材15は、上下プレート25a,25b及び押圧部24cに設けられた螺子孔(図7(b)では、押圧部24cに設けられた螺子孔24eが示される)を貫通している。また、上プレート25aと一対の棚12a,12bの間には、ワッシャ26が介在されている。
【0041】
このような構成によれば、前記固定部材15を締め付けると、第1錘部14Aと第2錘部14Dは、一対の棚12a,12bを挟持すると共に、前記押圧部24cが下向きに移動することで、第2錘部14Dの各摺動部24a,24bは、上記したテーパの係合関係によって、矢印で示すように、長溝11の内面11e,11fに対して圧接し、錘部材14の位置が固定される。この場合、前記固定部材15を緩めると、一対の棚12a,12bから第1錘部14Aと第2錘部14Dの挟持が解除されると共に、第2錘部14Dの各摺動部24a,24bが、長溝11の内面11e,11fから離反し、錘部材14の固定状態が解除される。
【0042】
このように、錘部材14は、一対の棚12a,12bを上下方向で挟持するように固定されると共に、第2錘部14Dの各摺動部24a,24bが長溝の内面に圧接して、フェース・バック方向で固定される状態となるため、固定状態の安定化が図れるようになる。
【0043】
図8から図10は、第6の実施形態を示す図であり、図8(a)は断面図、図8(b)はその変形例を示す断面図、図9は、図8に示す実施形態を示す模式図であり、図9(a)は錘部材の取り外し位置を示す図、図9(b)は錘部材の取り付け位置を示す図、そして、図10は、図8に示す実施形態において、錘部材の固定状態を示す図であり、図10(a)は斜視図、図10(b)は裏面側(ヘッドの内部)から見た図である。
【0044】
この実施形態の錘部材14は、上記した実施形態と異なり、第1錘部14Aと第2錘部14Bが一体形成された構成となっている(便宜上、一対の棚12a,12bから上方に露出する部分を第1錘部14A、長溝11内に位置する部分を第2錘部14Bとする)。前記錘部材14は、略直方体形状に形成されており、その両方の短辺側には、一対の棚12a,12bに沿って錘部材14を摺動可能に案内するように、切欠き14Hが形成されている。
【0045】
前記錘部材14は、前記実施形態と同様、固定部材15(螺子15a)を緩めるように回転操作することで、固定状態が解除されて長溝11内でスライド可能となっており、固定部材15を締め付けるように回転操作することで、その位置を固定できるように構成されている。
また、本実施形態の固定部材15は、第1錘部14Aに被着される略長方形状のキャップ部材15bを備えており、キャップ部材15bの中央領域に、前記螺子15aを螺入する構成となっている。前記キャップ部材15bの中央領域には、螺子孔15cが形成されており、螺子15aでキャップ部材15bを締め付けた際、キャップ部材15bの周囲の垂下部の先端が、一対の棚12a,12bの周辺の表面領域に当接して、錘部材14が固定できるようになっている(図8(a)、図10(a)参照)。このようなキャップ部材15bを配設することで、長溝の内部に異物を入り難くすることができ、外観の向上が図れるようになる。
【0046】
この場合、第1錘部14Aとキャップ部材15bには、上記した図4図5で示した構成と同様、凹凸部を形成してもよい。例えば、図8(b)に示すように、キャップ部材15bの裏面の螺子15aが配設される領域に凸部15fを形成すると共に、第1錘部14Aの表面に凹部14gを形成しておき、前記固定部材15である螺子15aを締め付けることで、両者を嵌合状態にするようにしている。
このような構成によれば、締め付け状態(固定状態)の安定化と緩みを防止することができ、かつ、螺子15aの頭部の突出高さを低減することができ、打球時の抵抗を減らすと共に、外観の向上が図れるようになる。
【0047】
また、錘部材14は、図9に示すように、略直方体形状に形成されており、その短辺側は、一対の棚12a,12bの各先端の間の開口12Aよりも短く形成されている(図9(a)参照)。また、長辺側は、前記開口12Aよりも長く形成されている(図9(b)参照)。
このような錘部材14によれば、図9(a),(b)に示すように、錘部材14を回動することで、一対の棚12a,12bと切欠き14Hの案内関係が解除され、長溝11から一体となった錘部材14を取り外したり、挿入することが容易に行えるようになる。
【0048】
本実施形態における錘部材14は、長溝11に対する着脱構造に特徴があり、錘部材14の形状については、上記したような回動操作によって着脱できれば、適宜変形することが可能である。このため、図に示した構成では、フェース側のソール部7の表面に、長溝11に沿って壁部18が形成されているが、このような壁部18を形成しない構成であってもよい。また、錘部材14については、一体形成されるのではなく、上記した実施形態と同様、第1錘部14A及び第2錘部14Bが分割された構造であってもよい。
【0049】
上記したキャップ部材15bの裏面には、錘部材14(第1錘部14Aの表面)が嵌まり込むように、図11(a)(b)に示すように、固定部(図では、一対のリブ15gで構成される)を形成しておくことが好ましい。
このような固定部(リブ15g)を形成しておくことで、錘部材14に対するキャップ部材15bの固定操作が容易に行えるようになる。
【0050】
図12(a)は第7の実施形態を示す図であり、図12(b)はその変形例を示す図である。
上述した各実施形態の構成において、錘部材14(第1錘部14A、及び/又は、第2錘部14B)に、微調整用の錘を着脱できるようにしてもよい。例えば、図12(a)は、図3に示した実施形態において、第1錘部14Aの表面に、微調整用の錘40が着脱できるような凹部14hを形成している。微調整用の錘40については、凹部14hとの間で螺合構造によって構成することが可能であり、例えば、アルミ、SUS、チタン、タングステン合金等、様々な比重のものを用いることが可能である。
このような構成によれば、錘40を着脱することで、より細かく重量バランスを微調整することが可能となり、錘部材14を長溝11から取り外さなくても、重量バランスの微調整が行なえるようになる。
【0051】
なお、微調整用の錘40(凹部14h)については、固定部材である螺子15aの周囲に複数個、配設しておくことが好ましく、更に、螺子15aの中心に対して対称となる位置に配設しておくことが好ましい。このような構成によれば、第1錘部14Aを回動させて固定することで、トウ・ヒール方向及びフェース・バック方向の重量の微調整が行い易くなる。
【0052】
なお、微調整用の錘40は、第2錘部14Bに着脱できるように構成してもよい。例えば、図4(a)に示した構成において、第2錘部14Bの表面に形成される凸部14fを微調整用の錘として構成してもよい。また、本実施形態では、長溝11は、上述したように、稜線7Aから所定の間隔をおいて円弧状に形成されているため、そのような形状に合わせて、第1錘部14Aの形状を、図12(b)に示すように円弧状に形成しておいてもよい。このように、長溝11の形状と露出される部分(第1錘部14A)の形状を略一致させることで、隙間を少なくすることができ、スライド操作性の向上、及び、外観の向上を図ることが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0054】
例えば、錘部材14の形状については、適宜変形することができ、固定部材15の構造や配設位置等についても、種々変形することが可能である。この場合、固定部材を構成する螺子15aは、その回転操作方法の仕方は適宜変形することができ、その頭部については、第1錘部14Aから突出していてもよいし、内部に埋没していてもよい。
【0055】
また、前記長溝11については、トウ・ヒール方向に直線状に延出していたり、フェース・バック方向に直線状、湾曲状に延出する構造であってもよく、更には、環状に形成されていてもよい。また、長溝11は、両端部が解放されていてもよいし、閉じた状態になっていてもよい。さらに、長溝の開口領域に形成される棚12a,12bについては、各張り出し量や肉厚等、同一の構成に形成されていなくてもよい。
【0056】
また、本発明は、ボールをティーアップして打球しないウッド型のゴルフクラブ(フェアウェイウッド、ユーティリティ)であってもよく、壁部18については、形成しない構成であってもよいし、錘調整機構10の高さよりも低い構成であってもよい。さらに、上述した実施形態では、各実施形態の構成要素を、他の実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 ゴルフクラブ
3 ゴルフクラブヘッド
4 ヘッド本体
7 ソール部
10 スライド式の錘調整機構
11 長溝
12a,12b 棚
14 錘部材
14A 第1錘部
14B,14D 第2錘部
15 固定部材
18 壁部
40 微調整用の錘
【要約】
【課題】ソール部にスライド式の錘調整機構を備えたゴルフクラブヘッドにおいて、生産性の向上が図れるゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】ソール部7に設けられるスライド式の錘調整機構10は、ソール部に延出形成される長溝11と、ソール部の表面と面一状となって長溝の両サイドに対向して形成される一対の棚12a,12bと、一対の棚に沿って移動可能であり、棚の露出側に配設される第1錘部14Aと長溝内部側に配設される第2錘部14Bとを具備する錘部材14と、第1錘部14Aに取り付けられて、錘部材14がスライドした際の位置を固定する固定部材15とを有する。錘調整機構10のフェース側のソール部の表面には、長溝11に沿って壁部18が形成されており、その高さHが錘調整機構10の高さH1以上に形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12