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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20221121BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20221121BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221121BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B7/025
B32B7/023
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022520744
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2021040493
(87)【国際公開番号】W WO2022097659
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2020185123
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】芝田 洋平
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041962(JP,A)
【文献】特開2016-056370(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116409(WO,A1)
【文献】特開2016-054261(JP,A)
【文献】特開2010-226012(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0019686(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/023ー 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド層と、接着剤層とが順に積層された電磁波シールドフィルムであって、
前記接着剤層は、接着性樹脂組成物と顔料とを含み、
前記電磁波シールドフィルムを前記接着剤層側から見た、前記接着剤層の表面のL表色系におけるa値は0.592.10であり、
前記接着剤層は、さらに金属粒子を含む導電性接着剤層であることを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記電磁波シールドフィルムを前記接着剤層側から見た、前記接着剤層の表面のL表色系におけるL値は40以下である請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記電磁波シールドフィルムを前記接着剤層側から見た、前記接着剤層の表面のL表色系におけるb値は0.01~5.00である請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記シールド層は、貫通孔を有する請求項1~3のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記顔料の重量と、前記金属粒子の重量との比は、[顔料の重量]/[金属粒子の重量]=0.05~1.0である請求項1~4のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
前記接着剤層に含まれる前記金属粒子の重量割合は、2~60wt%である請求項1~5のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項7】
前記接着剤層は、異方導電性を有する請求項1~6のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項8】
前記顔料は、導電性を有する請求項1~7のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項9】
前記顔料は、カーボンブラックからなる請求項8に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項10】
前記シールド層は、銅層、銀層及びアルミニウム層からなる群から選択される少なくとも1種からなる請求項1~9のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、小型化、高機能化が急速に進む携帯電話等のモバイル機器や、ビデオカメラ、ノートパソコン等の電子機器において、複雑な機構の中に回路を組み込むために多用されている。さらに、その優れた可撓性を生かして、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるフレキシブルプリント配線板においても、電磁波シールド対策を施したフレキシブルプリント配線板(以下、「シールドプリント配線板」とも記載する)が用いられるようになってきた。
【0003】
近年、モバイル機器の多機能化(例えば、カメラ機能搭載やGPS機能搭載等)が求められており、多機能化を実現するために、プリント配線板の高密度化も行われている。特に、近年、通信周波数が10GHz程度に高くなる5G通信規格によるモバイル機器の高性能化に対応すべく、電磁波シールドフィルムの高シールド化が求められている。
【0004】
このような高周波信号に対応した電磁波シールドフィルムは、高周波信号の送電特性を考慮して、導電性接着剤層が異方導電性であることが多い。
このような電磁波シールドフィルムとして、特許文献1には、誘電体からなる基材が、可撓性を有する厚みが3~15μmのポリイミドフィルムであり、前記基材の片面に、接着剤層、導電性ペースト層、が順に積層されてなることを特徴とするFPC用電磁波シールド材が記載されており、導電性ペースト層の上にさらに異方導電性接着剤が積層されてなるFPC用電磁波シールド材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-104710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたような異方導電性接着剤は、導電性粒子の含有量が少ないので、導電性接着剤側から目視した際に、導電性ペースト剤(シールド層)の色むらが透けて見えてしまい、美観が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、接着剤層側から電磁波シールドフィルムを見た際に、シールド層の色むらが透けて見えることを防ぐことができる電磁波シールドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の電磁波シールドフィルムは、シールド層と、接着剤層とが順に積層された電磁波シールドフィルムであって、上記接着剤層は、接着性樹脂組成物と顔料とを含み、上記電磁波シールドフィルムを上記接着剤層側から見た、上記接着剤層の表面のL表色系におけるa値は0.01~2.50であることを特徴とする。
【0009】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、接着剤層が顔料を含んでおり、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際に、上記接着剤層の表面のL表色系におけるa値が0.01~2.50である。
値が2.50以下であると、接着剤層の色が濃くなるので、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際にシールド層の色や色むらが見えにくくなる。
特に、シールド層が銅層からなる場合、銅層は赤みを帯びているので、銅層の色が接着剤層の色と一体化しやすく、銅層の色や色むらがさらに見えにくくなる。
値が0.01以上であると、接着剤層を作製するのが容易となる。
【0010】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記電磁波シールドフィルムを上記接着剤層側から見た、上記接着剤層の表面のL表色系におけるL値は40以下であることが好ましい。
値が40以下であると、接着剤層の色が黒に近くなり、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際にシールド層の色がより見えにくくなる。
【0011】
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記電磁波シールドフィルムを上記接着剤層側から見た、上記接着剤層の表面のL表色系におけるb値は0.01~5.00であることが好ましい。
値が5.00以下であると、接着剤層の色が濃くなるので、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際にシールド層の色や色むらがさらに見えにくくなる。
値が0.01以上であると、接着剤層を作製するのが容易となる。
【0012】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記シールド層は、貫通孔を有することが好ましい。
電磁波シールドフィルムは、プリント配線板に熱圧着されることになる。この際、接着剤層と、シールド層との間に揮発成分が生じることがある。
シールド層に貫通孔が形成されていない場合、この揮発成分が熱により膨張し、シールド層と接着剤層を剥離することがある。しかし、シールド層に貫通孔が形成されていると、揮発成分が貫通孔を通過することができるので、シールド層と接着剤層とが剥離することを防ぐことができる。
また、シールド層に貫通孔が形成されていると、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際にシールド層の貫通孔から光が透過してしまい、使用者が、電磁波シールドフィルムに孔が開いていると錯覚することがある。本発明の電磁波シールドフィルムでは、接着剤層に顔料を含ませて所定のパラメータとなるように着色されているので、このような錯覚が生じにくくなる。
【0013】
なお、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層に貫通孔が形成されている場合において、その開口率は0.05~30%であることが好ましく、0.1~20%がより好ましく、0.1~10%であることがさらに好ましい。また、貫通孔の開口面積は、10~80000μmであることが好ましく、50~50000μmであることがより好ましい。
【0014】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記接着剤層は、さらに金属粒子を含む導電性接着剤層であることが好ましい。
電磁波シールドフィルムを、プリント配線板に配置する場合、電磁波シールドフィルムの接着剤層を介して配置されることになる。プリント配線板のグランド回路と、電磁波シールドフィルムのシールド層とを電気的に接続すると、電磁波シールド効果が高くなる。
電磁波シールドフィルムの接着剤層が導電性接着剤層であると、当該導電性接着剤層を介して電磁波シールドフィルムのシールド層とプリント配線板のグランド回路とを電気的に接続しやすくなる。
【0015】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記顔料の重量と、上記金属粒子の重量との比は、[顔料の重量]/[金属粒子の重量]=0.05~1.0であることが好ましい。
顔料の重量と、金属粒子の重量との比が、上記範囲内であると、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際のシールド層の隠蔽性が高くなる。また、接着剤層のピール強度も高くなる。
[顔料の重量]/[金属粒子の重量]が、0.05未満であると、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際にシールド層の色が見えやすくなる。
[顔料の重量]/[金属粒子の重量]が、1.0を超えると、顔料の量が多すぎるので、接着剤層のピール強度が低下しやすくなる。
【0016】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記接着剤層に含まれる上記金属粒子の重量割合は、2~60wt%であることが好ましい。
金属粒子の重量割合が2wt%未満であると、電磁波シールドフィルムのシールド性が低下しやすくなる。
金属粒子の重量割合が60wt%を超えると、接着剤層が脆くなり、電磁波シールドフィルムが破損しやすくなる。
【0017】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記接着剤層は、異方導電性を有することが好ましい。
接着剤層が異方導電性を有すると、本発明の電磁波シールドフィルムが配置されたプリント配線板において、高周波信号の伝送特性が良好になる。
特に、シールド層の厚さが0.5μm以上の場合、接着剤層が異方導電性を有すると、高周波信号の伝送特性がより良好になる。
【0018】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記顔料は、導電性を有することが好ましい。
顔料が導電性を有すると、接着剤層の導電性がさらに向上するので、電磁波シールドフィルムのシールド性が向上する。
【0019】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記顔料は、カーボンブラックからなることが好ましい。
カーボンブラックは、導電性を有するので接着剤層の導電性をさらに向上させることができ、電磁波シールドフィルムのシールド性を向上させることができる。
また、カーボンブラックを用いることにより、接着剤層の色を容易に調整することができる。
【0020】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記シールド層は、銅層、銀層及びアルミニウム層からなる群から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
これらの金属層は変色しやすく、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際にこれらの金属層の色が見えやすい。これらの金属層が変色したとしても、実際には電磁波シールドフィルムの性能にはほとんど影響が無いが、金属層の変色は、使用者が、電磁波シールドフィルムが劣化したと誤認する原因となる。
本発明の電磁波シールドフィルムでは、接着剤層の色が調整されているので、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見たとしても、これらの金属層の色は見えにくい。
さらに、これらの金属層は、導電性に優れるので、電磁波シールドフィルムのシールド性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、接着剤層が顔料を含んでおり、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際に、上記接着剤層の表面のL表色系におけるa値が0.01~2.50である。
値が2.50以下であると、接着剤層の色が濃くなるので、電磁波シールドフィルムを接着剤層側から見た際にシールド層の色や色むらが見えにくくなる。
値が0.01以上であると、接着剤層を作製するのが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の電磁波シールドフィルムが用いられたシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0024】
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す電磁波シールドフィルム10は、保護層20と、シールド層30と、導電性接着剤層40とが順に積層された電磁波シールドフィルムである。
【0025】
電磁波シールドフィルム10において、導電性接着剤層40は、金属粒子と顔料とを含む。
そして、電磁波シールドフィルム10を導電性接着剤層40側から見た、導電性接着剤層40の表面のL表色系におけるa値は0.01~2.50である。
値が2.50以下であると、導電性接着剤層の色が濃くなるので、電磁波シールドフィルム10を導電性接着剤層40側から見た際にシールド層30の色や色むらが見えにくくなる。
特に、シールド層が銅層からなる場合、銅層は赤みを帯びているので、銅層の色が導電性接着剤層の色と一体化しやすく、銅層の色や色むらがさらに見えにくくなる。
値が0.01以上であると、導電性接着剤層を作製するのが容易となる。
【0026】
以下、電磁波シールドフィルム10の各構成について説明する。
【0027】
(保護層)
電磁波シールドフィルム10の保護層20は充分な絶縁性を有し、シールド層30及び導電性接着剤層40を保護できれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性組成物等から構成されていることが好ましい。
なお、本発明の電磁波シールドフィルムでは、保護層が形成されていなくてもよい。
【0028】
上記熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等が挙げられる。
【0029】
上記熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等が挙げられる。
【0030】
上記活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等が挙げられる。
【0031】
保護層20は、1種単独の材料から構成されていてもよく、2種以上の材料から構成されていてもよい。
【0032】
保護層20には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填材、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0033】
保護層20の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~15μmであることが好ましく、3~10μmであることがより好ましい。
【0034】
(シールド層)
電磁波シールドフィルム10のシールド層30は、電磁波をシールドできれば、特に限定されず、例えば金属層であってもよい。
金属層は、銅層、銀層及びアルミニウム層からなる群から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
これらの金属層は、導電性が高く、好適に電磁波をシールドすることができる。
また、これらの金属層は変色しやすく、電磁波シールドフィルムを導電性接着剤層側から見た際にこれらの金属層の色が見えやすい。これらの金属層が変色したとしても、実際には電磁波シールドフィルムの性能にはほとんど影響が無いが、金属層の変色は、使用者が、電磁波シールドフィルムが劣化したと誤認する原因となる。
電磁波シールドフィルム10では、導電性接着剤層40の色が調整されているので、電磁波シールドフィルム10を導電性接着剤層40側から見たとしても、これらの金属層の色は見えにくい。
【0035】
シールド層30の厚さは特に限定されないが、0.01~10μmであることが好ましい。
シールド層の厚さが0.01μm未満では、充分なシールド効果が得られにくい。
シールド層の厚さが10μmを超えると電磁波シールドフィルムが屈曲しにくくなる。
【0036】
電磁波シールドフィルム10では、シールド層30は、貫通孔を有することが好ましい。
電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に熱圧着されることになる。この際、導電性接着剤層40と、シールド層30との間に揮発成分が生じることがある。
シールド層30に貫通孔が形成されていない場合、この揮発成分が熱により膨張し、シールド層30と導電性接着剤層40を剥離することがある。しかし、シールド層30に貫通孔が形成されていると、揮発成分が貫通孔を通過することができるので、シールド層30と導電性接着剤層40とが剥離することを防ぐことができる。
また、シールド層30に貫通孔が形成されていると、電磁波シールドフィルム10を導電性接着剤層40側から見た際にシールド層30の貫通孔から光が透過してしまい、使用者が、電磁波シールドフィルム10に孔が開いていると錯覚することがある。電磁波シールドフィルム10では、導電性接着剤層40に顔料を含ませて所定のパラメータとなるように着色されているので、このような錯覚が生じにくくなる。
【0037】
なお、電磁波シールドフィルム10のシールド層30に貫通孔が形成されている場合において、その開口率は0.05~30%であることが好ましく、0.1~20%がより好ましく、0.1~10%であることがさらに好ましい。また、貫通孔の一つあたりの開口面積は、10~80000μmであることが好ましく、50~50000μmであることがより好ましい。
【0038】
(導電性接着剤層)
上記の通り、電磁波シールドフィルム10では、電磁波シールドフィルム10を導電性接着剤層40側から見た、導電性接着剤層40の表面のL表色系におけるa値の上限は2.50であるが、2.10以下が好ましく、2.00以下がより好ましく、1.70以下がさらに好ましい。また、a値の下限は、0.01である。
値が2.50以下であると、導電性接着剤層の色が濃くなるので、電磁波シールドフィルムを導電性接着剤層側から見た際にシールド層の色や色むらが見えにくくなる。
特に、シールド層が銅層からなる場合、銅層は赤みを帯びているので、銅層の色や色むらがさらに見えにくくなる。
また、a値が0.01以上であると導電性接着剤層を作製するのが容易となる。
特に、シールド層が銅層からなる場合、銅層は赤みを帯びているので、銅層の色が導電性接着剤層の色と一体化しやすく、銅層の色や色むらがさらに見えにくくなる。
【0039】
また、電磁波シールドフィルム10を導電性接着剤層40側から見た、導電性接着剤層40の表面のL表色系におけるL値は40以下であることが好ましく、33以下がより好ましく、32以下がさらに好ましい。
値が40以下であると、導電性接着剤層の色が黒に近くなり、電磁波シールドフィルムを導電性接着剤層側から見た際にシールド層の色がより見えにくくなる。
L値の下限は、0.01であることが好ましい。L値が0.01以上であると、導電性接着剤層を作製するのが容易となる。
【0040】
また、電磁波シールドフィルム10を導電性接着剤層40側から見た、導電性接着剤層40の表面のL表色系におけるb値は5.00以下であることが好ましく、4.00以下であることがより好ましく、3.50以下であることがさらに好ましい。
値が5.00以下であると、導電性接着剤層の色が濃くなるので、電磁波シールドフィルムを導電性接着剤層側から見た際にシールド層の色や色むらがさらに見えにくくなる。
また、b値の下限は、0.01であることが好ましい。b値が0.01以上であると、導電性接着剤層を作製するのが容易となる。
【0041】
なお、本明細書において、電磁波シールドフィルムを導電性接着剤層側から見た、導電性接着剤層の表面のL表色系における、L値、a値及びb値は、光源としてF2光源を用い、ポータブル積分球分光測色計(X-Rite社製、Ci64)により測定した値を意味する。
【0042】
導電性接着剤層40は、接着性樹脂組成物と金属粒子と顔料とを含む。
なお、導電性接着剤層40は、さらに、難燃剤、難燃助剤、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填材、粘度調節剤等を含んでいてもよい。
【0043】
導電性接着剤層40に含まれる接着性樹脂組成物の材料としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。
これらの中では、ポリエステル系樹脂組成物であることが好ましい。
接着性樹脂組成物の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0044】
導電性接着剤層40に含まれる金属粒子としては、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、銅に銀めっきを施した銀コート銅等が挙げられる。
これらの金属粒子は導電性に優れるので、導電性接着剤層40に好適に導電性を付与することができる。
これらの金属粒子は、導電性接着剤層40に一種単独で含まれていてもよく、複数種類が含まれていてもよい。
【0045】
金属粒子の大きさは特に限定されないが、平均粒子径(d50)が0.5~20μmであることが好ましい。
【0046】
導電性接着剤層40に含まれる金属粒子の重量割合は、2~60wt%であることが好ましく、10~40wt%であることがより好ましい。
金属粒子の重量割合が2wt%未満であると、電磁波シールドフィルムのシールド性が低下しやすくなる。
金属粒子の重量割合が60wt%を超えると、導電性接着剤層が脆くなり、電磁波シールドフィルムが破損しやすくなる。
また、金属粒子の重量割合が40wt%以下であると、導電性接着剤層が、異方導電性を得ることができる。
【0047】
導電性接着剤層40に含まれる顔料としては、特に限定されないが、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、ペリレンブラック、チタンブラック、鉄黒、及びアニリンブラック等のいずれか又はこれらの組み合わせとすることができる。また、必要に応じて赤色、緑色、青色、黄色、紫色、シアン及びマゼンタ等の顔料を混合して用いることができる。
これらの中では、カーボンブラックであることが好ましい。
カーボンブラックは、導電性を有するので導電性接着剤層40の導電性を向上させることができ、電磁波シールドフィルム10のシールド性を向上させることができる。
また、カーボンブラックを用いることにより、導電性接着剤層40の色を容易に調整することができる。
【0048】
導電性接着剤層40に含まれる顔料は、導電性を有することが好ましい。
顔料が導電性を有すると、導電性接着剤層40の導電性が向上するので、電磁波シールドフィルムのシールド性が向上する。
【0049】
導電性接着剤層40に含まれる顔料の平均粒子径は、1nm~50μmであることが好ましく、20nm~30μmであることがより好ましい。
顔料がカーボンブラックである場合には、顔料の平均粒子径は20nm~100nmであることが好ましい。顔料の平均粒子径が上記範囲であると、顔料の分散性が良好になり、導電性接着剤層40を斑なく着色することができる。
【0050】
電磁波シールドフィルム10では、導電性接着剤層40の厚さは、12μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。また、導電性接着剤層40の厚さは、100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
導電性接着剤層の厚さが12μm未満であると、シールド層を見えにくくするために導電性粒子の充填量が上がり、柔軟性及びピール強度を維持できなくなる。
導電性接着剤層の厚さが100μmを超えると、シールド層が見えにくくなるが電磁波シールドフィルムの薄型化がしにくくなる。
【0051】
電磁波シールドフィルム10では、顔料の重量と、金属粒子の重量との比が、[顔料の重量]/[金属粒子の重量]=0.05以上であることが好ましく、0.07以上であることがより好ましく、0.09以上であることがさらに好ましい。
また、[顔料の重量]/[金属粒子の重量]=1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。
顔料の重量と、金属粒子の重量との比が、上記範囲内であると、電磁波シールドフィルムを導電性接着剤層側から見た際のシールド層の隠蔽性が高くなる。また、導電性接着剤層のピール強度も高くなる。
[顔料の重量]/[金属粒子の重量]が、0.05未満であると、電磁波シールドフィルムを導電性接着剤層側から見た際にシールド層の色が見えやすくなる。
[顔料の重量]/[金属粒子の重量]が、1.0を超えると、顔料の量が多すぎるので、導電性接着剤層のピール強度が低下しやすくなる。
【0052】
電磁波シールドフィルム10では、導電性接着剤層40は、異方導電性を有することが好ましい。
導電性接着剤層40が異方導電性を有すると、電磁波シールドフィルム10が配置されたプリント配線板において、高周波信号の送電特性が良好になる。
【0053】
電磁波シールドフィルム10では、保護層20とシールド層30との間にアンカーコート層が形成されていてもよい。
アンカーコート層の材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0054】
次に、本発明の電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線板について説明する。
図2は、本発明の電磁波シールドフィルムが用いられたシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
【0055】
図2に示すシールドプリント配線板60は、電磁波シールドフィルム10と、電磁波シールドフィルム10が配置されたプリント配線板50とからなる。
【0056】
プリント配線板50は、ベースフィルム51、ベースフィルム51の上に配置されたプリント回路52、グランド回路52a、プリント回路52を覆うように配置されたカバーレイ53を備える。
【0057】
プリント配線板50では、カバーレイ53にはグランド回路52aを露出する開口部53aが形成されている。
【0058】
ベースフィルム51及びカバーレイ53の材料は、特に限定されないが、エンジニアリングプラスチックからなることが好ましい。
このようなエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が挙げられる。
また、これらのエンジニアリングプラスチックの内、難燃性が要求される場合には、ポリフェニレンサルファイドフィルムが望ましく、耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが望ましい。なお、ベースフィルム51の厚みは、10~40μmであることが好ましい。また、カバーレイ53の厚みは、10~30μmであることが好ましい。
【0059】
プリント回路52及びグランド回路52aは、特に限定されないが、導電材料をエッチング処理すること等により形成することができる。
導電材料としては、銅、ニッケル、銀、金等が挙げられる。
【0060】
シールドプリント配線板60では、プリント配線板50のカバーレイ53に、電磁波シールドフィルム10の導電性接着剤層40が接するように、電磁波シールドフィルム10が、プリント配線板50に配置されている。
【0061】
電磁波シールドフィルム10を、プリント配線板50に配置する方法としては、例えば、電磁波シールドフィルム10を、プリント配線板50に熱圧着する方法が挙げられる。
熱圧着の条件としては、特に限定されないが、例えば、150~200℃、2~5MPa、1~10minの条件が挙げられる。
【0062】
上記熱圧着を行うことにより、導電性接着剤層40が、開口部53aを埋めることになる。
その結果、プリント配線板50のグランド回路52aと、電磁波シールドフィルム10のシールド層30とが電気的に接続される。これにより、電磁波シールド効果が向上する。
【0063】
これまで説明してきた電磁波シールドフィルム10は、保護層20と、シールド層30と、導電性接着剤層40とが順に積層された電磁波シールドフィルムであったが、本発明の電磁波シールドフィルムは、導電性接着剤層40に変えて、金属粒子を含まない接着剤層(すなわち、絶縁性接着剤層)であってもよい。
この場合、シールド層を凹凸形状とし、シールド層の凸部をグランド回路をと接触させることで、シールド層とグランド回路とを電気的に接続させることができる。
シールド層を凹凸形状とする方法は特に限定されず、例えば、平坦なシールド層を作製した後、シールド層を変形させて凹凸形状としてもよく、シールド層が配置される側の保護層の表面に凹凸形状を設け、その上に、金属めっき等を行うことによってシールド層を形成することによりシールド層を凹凸形状としても良い。
【0064】
また、シールド層と、グランド回路とを導電性突起や、導電性フィラー等の導電部材で接続することによっても、シールド層とグランド回路とを電気的に接続させることができる。
【実施例
【0065】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
転写フィルムにエポキシ樹脂を塗工し、電気オーブンを用い、100℃で2分間加熱し、厚さ5μmの保護層を作製した。
【0067】
次に、保護層の上に、厚さ2μmの圧延銅からなるシールド層を貼り合わせた。
【0068】
次に、接着性樹脂組成物(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:DIC社製「エピクロン N-655-EXP」)、銀コート銅粉及びカーボンブラックを準備し、表1に記載の配合量になるようにこれらを混合し、導電性樹脂組成物を作製した。
【0069】
次に、シールド層の上に導電性樹脂組成物を塗布し、厚さ15μmの導電性接着剤層を形成し、実施例1に係る電磁波シールドフィルムを製造した。
【0070】
(実施例2~7)及び(比較例1~5)
接着性樹脂組成物、銀コート銅粉及びカーボンブラックの含有量及び導電性接着剤層の厚さを、表1に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして実施例2~7及び比較例1~5に係る電磁波シールドフィルムを製造した。
【0071】
【表1】
【0072】
(導電性接着剤層の色の測定)
光源としてF2光源を用い、ポータブル積分球分光測色計(X-Rite社製、Ci64)により、各実施例及び各比較例に係る電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層側からみた、導電性接着剤層の表面のL値、a値及びb値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0073】
(ピール強度の測定)
厚さ25μmのポリイミド樹脂板を準備し、導電性接着剤層が当該ポリイミド樹脂板と接するように、各実施例及び各比較例に係る電磁波シールドフィルムを配置した。
次に、150℃、2MPa、30minの条件で加熱加圧し、各実施例及び各比較例に係る電磁波シールドフィルムをポリイミド樹脂板に貼付した。
その後、電磁波シールドフィルムをポリイミド樹脂版から剥離する際のピール強度を卓上形精密万能試験機(型番:AUTOGRAPH-AGS-X-50N、製造会社:島津製作所製)を用い、50mm/minの負荷速度で測定した。結果を表1に示す。
【0074】
(隠蔽性の観察)
5000ルクスの室内で、各実施例及び各比較例に係る電磁波シールドフィルムを導電性接着剤層側の正面から目視で観察し、隠蔽性を評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
◎:導電性接着剤越しにシールド層の色を確認できなかった。
〇:導電性接着剤越しにシールド層の色を確認できなかったが、80ルーメンのLEDライトを導電性接着剤の表面から30cm離れた位置から照射光を当てた場合、シールド層の色を確認できた。
×:導電性接着剤越しにシールド層の色を確認できた。
【0075】
表1に示すように、a値が、それぞれ、1.77、1.71、1.96、1.54、0.74、2.10、0.59である実施例1~7に係る電磁波シールドフィルムでは、隠蔽性の観察の評価が良好であった。
【符号の説明】
【0076】
10 電磁波シールドフィルム
20 保護層
30 シールド層
40 導電性接着剤層
50 プリント配線板
51 ベースフィルム
52 プリント回路
52a グランド回路
53 カバーレイ
53a 開口部
60 シールドプリント配線板
図1
図2