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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】伸縮性導電体および高電圧構成
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/06 20060101AFI20221121BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20221121BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
H01B7/06
H01B5/00 Z
H02G11/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022523532
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019078535
(87)【国際公開番号】W WO2021078354
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンディン,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】サンディン,ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】アンデルソン,ウーロブ
(72)【発明者】
【氏名】ブカーン,ネベン
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-506431(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第1354604(GB,A)
【文献】欧州特許出願公開第2555358(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/06
H01B 5/00
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性導電体(16)であって、
-長手方向軸(24)を有する導電性の第1のチューブ(20)と、
-前記第1のチューブ(20)の内側に少なくとも部分的に受容されつつ、前記長手方向軸(24)に沿って前記第1のチューブ(20)に対して移動可能である導電性の第2のチューブ(22)と、
-前記第1のチューブ(20)の内側に配置される導電性の自己支持である可撓性要素(40)とを含み、前記可撓性要素(40)は、前記第1のチューブ(20)および前記第2のチューブ(22)に機械的および電気的に接続され、前記可撓性要素(40)は、前記長手方向軸(24)に沿って弾性的に変形するように配置され、
前記可撓性要素(40)は、波形のいくつかの周期を含む波形形状を有し、前記可撓性要素(40)は、複数のセクション(48)を含み、各セクション(48)は、前記波形の半周期の形状を有し、前記セクション(48)同士は、ともに溶接される、伸縮性導電体(16)。
【請求項2】
前記可撓性要素(40)は、前記長手方向軸(24)に沿って実質的に均一に弾性的に変形するように配置される、請求項1に記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項3】
前記波形形状は、前記長手方向軸(24)を実質的に中心とする、請求項1または2に記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項4】
前記可撓性要素(40)は、積層されたシートメタルを含む、請求項1~3のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項5】
前記可撓性要素(40)は、前記第2のチューブ(22)の外側に配置される、請求項1~4のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項6】
中立状態にある前記可撓性要素(40)の長さは、前記第1のチューブ(20)の長さの少なくとも20%である、請求項1~5のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項7】
前記伸縮性導電体(16)は、少なくとも500アンペアの電流容量を有する、請求項1~6のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項8】
前記第1のチューブ(20)に対して固定される第1の支持構造(42)をさらに含み、前記可撓性要素(40)は、前記第1の支持構造(42)に接続される、請求項1~7のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項9】
前記第1の支持構造(42)はプレートである、請求項に記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項10】
前記第2のチューブ(22)に対して固定される第2の支持構造(44)をさらに含み、前記可撓性要素(40)は、前記第2の支持構造(44)に接続される、請求項1~9のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項11】
前記第2の支持構造(44)は、前記第2のチューブ(22)の端面である、請求項10に記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項12】
少なくとも1つの接続構成(32,34)をさらに含み、前記接続構成(32,34)は、前記伸縮性導電体(16)を外部構造(18)に機械的に接続するための機械的接続デバイス(54)と、前記伸縮性導電体(16)を前記外部構造(18)に電気的に接続するための電気的接続デバイス(56)とを含む、請求項1~11のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項13】
前記機械的接続デバイス(54)は、前記長手方向軸(24)に垂直な2つの軸の周りの相対回転を可能にするジョイント(58)を含む、請求項12に記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項14】
前記機械的接続デバイス(54)は、前記外部構造(18)を前記第1のチューブ(20)および/または前記第2のチューブ(22)からガルバニックに分離するように構成される、請求項12または13に記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項15】
前記電気的接続デバイス(56)は、可撓性導電体(60)を含む、請求項1214のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項16】
前記可撓性導電体(60)は、シートメタルを含む、請求項15に記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項17】
前記第1のチューブ(20)と前記第2のチューブ(22)との間の相対運動を支持するように配置される少なくとも1つの軸受(50,52)をさらに含む、請求項1~16のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項18】
前記少なくとも1つの軸受(50,52)は、摺動プラスチック軸受である、請求項17に記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項19】
前記第1のチューブ(20)は、前記可撓性要素(40)が収容される、前記第1のチューブ(20)の内側の空間(46)を換気するための少なくとも1つの開口部(26)を含む、請求項1~18のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載の伸縮性導電体(16)を含む、高電圧構成(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は一般的に、伸縮性導電体に関する。特に、伸縮性導電体と、伸縮性導電体を含む高電圧構成とが提供される。
【背景技術】
【0002】
背景
高電圧構成は、電気回路を形成するために互いに接続されるさまざまな電気装置を含み得る。このような接続はしばしばアルミニウムワイヤによってなされる。しかしながら、ワイヤの幾何学形状は、電気装置が互いに対して移動する際に制御するのが困難である。ワイヤは、制御されない形状を採用し得、これにより、電気的クリアランスを脅かし得る。ワイヤはさらに、狭い半径に起因してコロナ放電を作り出し得る。アルミニウムワイヤのこの挙動は、より高い電界および/またはコンパクトな構成にとって特に望ましくない。
【0003】
EP 2555358 A1は、第1の導電部材および第2の導電部材を有する伸縮性バスバーデバイスを開示しており、当該第1の導電部材および第2の導電部材は、伸縮性バスバーの長さを調整するために、第2の導電部材が第1の導電部材の端部から軸方向に沿って可逆的に延在し得るように伸縮可能に組み立てられる。伸縮性バスバーはさらに、伸縮性バスバーの拡張運動、振動運動の減衰、および、サージ保護などの機能と統合されてもよい。統合された径方向の減衰機能により伸縮性バスバーを接続点に接続するための可撓性コネクタも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概要
本開示の1つの目的は、寸法的に安定した伸縮性導電体を提供することである。
【0005】
本開示のさらなる目的は、コロナ放電についてのリスクを低減する伸縮性導電体を提供することである。
【0006】
本開示のさらに別の目的は、積極的な誘電体設計を可能にする伸縮性導電体を提供することである。
【0007】
本開示のさらに別の目的は、コンパクトな設計を可能にする伸縮性導電体を提供することである。
【0008】
本開示のさらに別の目的は、多数の応力周期に耐え得る伸縮性導電体を提供することである。
【0009】
本開示のさらに別の目的は、費用対効果の高い設計を有する伸縮性導電体を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、シンプルな設計を有する伸縮性導電体を提供することである。
【0011】
本開示のさらに別の目的は、前述の目的のいくつかまたはすべてを組み合わせて解決する伸縮性導電体を提供することである。
【0012】
本開示のさらに別の目的は、伸縮性導電体を含む高電圧構成を提供することであり、当該高電圧構成は、前述の目的のうちの1つ、いくつか、またはすべてを解決する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの局面によれば、伸縮性導電体が提供され、当該伸縮性導電体は、長手方向軸を有する導電性の第1のチューブと、第1のチューブの内側に少なくとも部分的に受容されつつ、長手方向軸に沿って第1のチューブに対して移動可能である導電性の第2のチューブと、第1のチューブの内側に配置される導電性の可撓性要素とを含み、可撓性要素は、第1のチューブおよび第2のチューブに機械的および電気的に接続され、可撓性要素は、長手方向軸に沿って弾性的に変形するように配置される。
【0014】
第2のチューブが第1のチューブに対して移動すると、伸縮性導電体の長さが変動する。第2のチューブは、可撓性要素の弾性変形に抗して第1のチューブに対して自由に移動し得る。可撓性要素は、第1のチューブの内側に配置されるので、可撓性要素は、内部可撓と称され得る。伸縮性導電体は伸縮性バスバーであってもよい。
【0015】
本開示に係る伸縮性導電体は、物理的に安定している。すなわち、少なくとも可撓性要素の弾性変形の間、伸縮性導電体は、特に、狭い半径および無定形に関連付けられる先行技術のワイヤ導電体とは対照的に、良好に規定された幾何学形状のみを採用している。したがって、伸縮性導電体は、高い寸法制御を有する。これにより、本開示に係る伸縮性導電体は、エアクリアランス要件を下回るリスクを伴わずに、相対的に小さい空間内の絶縁環境において設置されることが可能になる。
【0016】
さらに、可撓性要素は、第1のチューブおよび第2のチューブの各々に機械的に接続されるとともに電気的に接続されるので、摺動接触が回避され得る。一変形例によれば、伸縮性導電体は、摺動接点を含まない。
【0017】
本開示に係る伸縮性導電体は、伸縮性導電体全体を通るガルバニック接続された導電経路を含んでもよい。たとえば、固体金属が、伸縮性導電体の導電経路に沿って設けられてもよい。代替的または付加的には、伸縮性導電体は、伸縮性導電体全体に沿って、少なくとも500mmの断面積を有する連続的な導電経路を提供してもよい。
【0018】
可撓性要素はさらに、長手方向軸に沿って、すなわち、弾性変形の範囲を超えて塑性変形するように配置されてもよい。可撓性要素を塑性変形させることによって、伸縮性導電体に減衰機能が導入される。可撓性要素が塑性変形すると、長手方向軸に沿った第1のチューブと第2のチューブとの間の相対運動が減衰され得る。これは、地震の間に有用である。
【0019】
可撓性要素の弾性変形によって、たとえば設置公差について何らかの可撓性を提供するよう、第2のチューブは、第1のチューブに対して移動され得る。伸縮性導電体は、たとえば、可撓性要素の弾性変形のみにより、第1のチューブと第2のチューブとの間の少なくとも100mmの相対運動を可能にし得る。たとえば地震中に第2のチューブが第1のチューブに対して大きく変位すると、可撓性要素は塑性変形する。
【0020】
第1のチューブ、第2のチューブおよび可撓性要素の各々は、アルミニウムから形成され得るか、または、少なくとも95%、たとえば少なくとも99%のアルミニウムを含むアルミニウム合金から形成され得る。代替的または付加的には、第1のチューブおよび第2のチューブは、円形の外側プロファイルを有してもよい。さらに、伸縮性導電体の全体または実質的に全体は、円筒形状を有してもよい。円筒形状は、コロナ放電についてのリスクを低減する。伸縮性導電体の円筒形状は誘電的に好ましい。これにより、伸縮性導電体は、部分放電またはフラッシュオーバについてのリスクがないかまたはリスクが限られた高電界を有する環境に設置され得る。
【0021】
可撓性要素は、長手方向軸に沿って実質的に均一にまたは均一に弾性的に変形するように配置されてもよい。したがって、弾性変形は、可撓性要素の実質的に全体または全体にわたって分散され得る。言い換えれば、弾性変形は、長手方向軸に沿って、可撓性要素の実質的に全体または全体の長さにわたって分散される可撓性要素の1つまたはいくつかの領域において生じ得る。これにより、可撓性要素の単位長さ当たりの弾性変形は比較的小さくなる。これにより、可撓性要素における疲労に対する耐性の改善が可能になり、伸縮性導電体は、結果として、より多数の応力周期に耐え得る。したがって、可撓性要素の応力振幅が最小化され、可撓性要素の疲労耐性が最大化される。
【0022】
可撓性要素は、波形形状を含んでもよい。可撓性要素の波形形状は、幾何学的安定性をさらに改善する。これにより、可撓性要素のための如何なる専用の支持構成も回避され得る。したがって、可撓性要素は、第1のチューブの一部分および第2のチューブの一部分のみに接続されてもよい。波形形状は、正弦波形状であってもよく、または、たとえば180°の角度長さを有する複数の接続された円形セグメントを含んでもよい。波形形状が正弦波である場合、可撓性要素の長さは、少なくとも1つ、たとえば少なくとも3つ、たとえば少なくとも5つの正弦波周期を含んでもよい。
【0023】
波形形状は、長手方向軸を実質的に中心にしてもよく、または中心にしてもよい。代替的または付加的には、可撓性要素は、複数のセクションを含んでもよい。この場合、各セクションは、波形形状の半周期の形状を有してもよい。セクション同士は、ともに溶接されてもよい。
【0024】
可撓性要素は、積層されたアルミニウムシートのような積層されたシートメタルを含んでもよい。各メタルシートは、1mm未満の厚さを有してもよい。シートメタルの各積層体は、少なくとも10枚のメタルシートを含んでもよい。
【0025】
可撓性要素は、自己支持であってもよい。すなわち、伸縮性導電体における設置の前に、可撓性要素の重量が可撓性要素の如何なる実質的な変形または如何なる変形も引き起こすことなく、可撓性要素は単一の支持点にて支持され得る。
【0026】
可撓性要素は、第2のチューブの外側に配置されてもよい。
中立状態における可撓性要素の長さは、第1のチューブの長さの少なくとも20%であってもよく、たとえば少なくとも40%であってもよい。
【0027】
伸縮性導電体は、少なくとも500アンペアの電流容量を有してもよく、たとえば少なくとも1000アンペアの電流容量を有してもよい。したがって、伸縮性導電体は、高電流導電体であってもよい。
【0028】
伸縮性導電体はさらに、第1のチューブに対して固定される第1の支持構造を含んでもよい。この場合、可撓性要素は、第1の支持構造に接続されてもよい。第1の支持構造はプレートであってもよい。
【0029】
伸縮性導電体はさらに、第2のチューブに対して固定される第2の支持構造を含んでもよい。この場合、可撓性要素は、第2の支持構造に接続されてもよい。第2の支持構造は、第2のチューブの端面であってもよい。
【0030】
伸縮性導電体は、少なくとも1つの接続構成をさらに含んでもよい。接続構成は、伸縮性導電体を外部構造に機械的に接続するための機械的接続デバイスと、伸縮性導電体を外部構造に電気的に接続するための電気的接続デバイスとを含んでもよい。
【0031】
各接続構成は、端子部材をさらに含んでもよい。この場合、端子部材は、機械的かつ電気的に外部構造に接続されてもよい。したがって、各端子部材は、外部構造に機械的支持および電流接続を提供するように構成されてもよい。
【0032】
さらに、機械的接続デバイスは、端子部材に機械的に接続されてもよく、電気的接続デバイスは、端子部材に電気的に接続されてもよい。一変形例によれば、伸縮性導電体は、第1のチューブを第1の外部構造に電気的および機械的に接続するための第1の接続構成と、第2のチューブを第2の外部構造に電気的および機械的に接続するための第2の接続構成とを含む。
【0033】
機械的接続デバイスは、長手方向軸に垂直な2つの軸の周りの相対回転を可能にするジョイントを含んでもよい。ジョイントは、たとえば、ユニバーサルジョイントまたはボールジョイントであってもよい。ジョイントによって、伸縮性導電体は、外部構造に対して角度的に自由に移動する。ジョイントは、端子部材と伸縮性導電体の残部との間に(長手方向軸に沿った)軸方向の剛性および角度方向の可撓性を提供し得る。
【0034】
機械的接続デバイスは、外部構造を第1のチューブおよび/または第2のチューブからガルバニックに分離するように構成されてもよい。これにより、主要な電流経路が電気的接続デバイスを通ることが保証され得る。
【0035】
電気的接続デバイスは、可撓性導電体を含んでもよい。これにより、外部構造に固定される端子部材と伸縮性導電体の残部との間の可撓性が保証される。可撓性導電体は、シートメタルを含んでもよい。
【0036】
伸縮性導電体は、第1のチューブと第2のチューブとの間の相対運動を支持するように配置される少なくとも1つの軸受をさらに含んでもよい。少なくとも1つの軸受は、第1の軸受と、長手方向軸に沿って第1の軸受から離れた第2の軸受とを含んでもよい。これにより、伸縮性導電体の伸張および収縮中、第2のチューブは、第1のチューブに対して同心に維持され得る。第1の軸受と第2の軸受との間の距離は、第2のチューブの長さの少なくとも5%であってもよく、たとえば、少なくとも10%であってもよい。
【0037】
少なくとも1つの軸受の各々は、ポリマー軸受などの摺動プラスチック軸受であってもよい。摺動プラスチック軸受は、第1のチューブと第2のチューブとの間に複数のプラスチック突出部を含んでもよい。プラスチック突出部は、第1のチューブまたは第2のチューブのいずれかに取り付けられ得る。
【0038】
第1のチューブは、可撓性要素が収容される、第1のチューブの内側の空間を換気するための少なくとも1つの開口部を含んでもよい。開口部によって、冷却空気は可撓性要素に到達し得、それによって可撓性要素はより効率的に冷却され得る。さらに、開口部は、可撓性要素の目視検査を可能にする。
【0039】
さらなる局面によれば、本開示に係る伸縮性導電体を含む高電圧構成が提供される。高電圧構成は、高電圧ユニットをさらに含んでもよい。本開示に係る高電圧ユニットは、たとえば、高電圧直流(HVDC: high voltage direct current)半導体バルブによって構成されてもよい。高電圧ユニットのさらなる例は、キャパシタおよびブレーカである。本開示における高電圧は、少なくとも100kVの電圧であってもよい。したがって、本開示に係る高電圧構成は、少なくとも100kVのシステム電圧を有してもよい。したがって、本開示に係る伸縮性導電体は、本開示に係る高電圧構成における使用に好適であり得る。
【0040】
本開示のさらなる詳細、利点および局面は、図面と併せて解釈される以下の実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】2つの高電圧ユニットと伸縮性導電体とを含む高電圧構成を概略的に表す図である。
図2】伸縮性導電体の斜視図を概略的に表す図である。
図3】伸縮性導電体の斜視断面図を概略的に表す図である。
図4】伸縮性導電体の部分拡大図を概略的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
以下、伸縮性導電体と、伸縮性導電体を含む高電圧構成とについて説明する。同じまたは同様の参照番号は、同じまたは同様の構造的特徴を示すために使用される。
【0043】
図1は、高電圧構成10を概略的に示す。この例の高電圧構成10は、第1の高電圧ユニット12と、第2の高電圧ユニット14と、伸縮性導電体16とを含む。各高電圧ユニット12,14は、ここではHVDC半導体バルブとして例示されている。高電圧構成10は、少なくとも100kVのシステム電圧を有する。
【0044】
伸縮性導電体16は、高電圧ユニット12,14を電気的に接続する。この目的のために、伸縮性導電体16は、高電圧ユニット12,14の各々上において外部構造18に固定される。したがって、外部構造18は、伸縮性導電体16の外部の構造である。伸縮性導電体16は、電気的接続を維持しながら高電圧ユニット12,14間の何らかの相対運動を可能にする。地震の間などにおける高電圧ユニット12,14間のより大きな相対運動は、伸縮性導電体16によって減衰され得る。
【0045】
図2は、伸縮性導電体16の斜視図を概略的に表す。伸縮性導電体16は、第1のチューブ20および第2のチューブ22を含む。伸縮性導電体16は細長く、長手方向軸24を含む。第2のチューブ22は、長手方向軸24に沿って第1のチューブ20に対して移動可能である。第1のチューブ20および第2のチューブ22の両方は、長手方向軸24に対して同心である。
【0046】
第1のチューブ20には4つの開口部26が設けられている(図2では1つのみが見える)。各開口部26は、長手方向軸24と平行な方向に細長い。
【0047】
第1のチューブ20および第2のチューブ22の各々は、導電性材料から形成されており、たとえば、少なくとも99%のアルミニウムを含むアルミニウム合金から形成されている。この例では、第1のチューブ20および第2のチューブ22の各々は、円筒状である。これにより、伸縮性導電体16は、誘電的に良好な略円筒形状を有する。
【0048】
図2に示すように、第2のチューブ22は、第1のチューブ20に部分的に受容されている。第2のチューブ22は、多かれ少なかれ第1のチューブ20内に受容されつつ、第1のチューブ20に対して移動し得る。第2のチューブ22が第1のチューブ20に対して移動すると、伸縮性導電体16の長さが変動する。
【0049】
第1のチューブ20は第1の端構造28を含み、第2のチューブ22は第2の端構造30を含む。第1の端構造28および第2の端構造30は、伸縮性導電体16の対向する端に設けられる。第1の端構造28および第2の端構造30の各々は、ここでは、それぞれ第1のチューブ20および第2のチューブ22の一端を閉鎖するエンドプレートとして例示される。第1の端構造28および第2の端構造30は、導電性材料から形成され、たとえば少なくとも99%のアルミニウムを含むアルミニウム合金から形成される。
【0050】
伸縮性導電体16は、第1の接続構成32および第2の接続構成34をさらに含む。第1の接続構成32は第1の端子部材36を含み、第2の接続構成34は第2の端子部材38を含む。第1の端子部材36は、第1の高電圧ユニット12の外部構造18に固定され得、第2の端子部材38は、第2の高電圧ユニット14の外部構造18に固定され得る。これにより、各端子部材36,38は、それぞれの外部構造18に機械的かつ電気的に接続される。両方の端子部材36,38は、導電性材料から形成され、たとえば少なくとも99%のアルミニウムを含むアルミニウム合金から形成される。
【0051】
図3は、伸縮性導電体16の斜視断面図を概略的に表す。図3に示すように、伸縮性導電体16は、導電性の可撓性要素40をさらに含む。可撓性要素40は、第1のチューブ20の内側に配置される。
【0052】
第1のチューブ20は、ここではプレートとして例示される第1の支持構造42を含む。第1の支持構造42は、第1のチューブ20に堅固に接続される。図3に示すように、第1の端構造28と第1の支持構造42との間の距離は、長手方向軸24に沿った第1のチューブ20の長さの約50%~60%である。
【0053】
第2のチューブ22は、ここでは第2のチューブ22のエンドプレートとして例示される第2の支持構造44を含む。第2の支持構造44は、第2のチューブ22に堅固に接続される。第1の支持構造42および第2の支持構造44の各々は、導電性材料から形成され、たとえば少なくとも99%のアルミニウムを含むアルミニウム合金から形成される。
【0054】
可撓性要素40の第1の端は、第1の支持構造42に固定的かつ電気的に接続される。可撓性要素40の第2の端は、第2の支持構造44に固定的かつ電気的に接続される。したがって、この例の可撓性要素40は、第2のチューブ22の外側に配置される。可撓性要素40は、たとえば溶接によって第1の支持構造42および第2の支持構造44に接続されてもよい。
【0055】
図2では、可撓性要素40は、中立または無負荷状態にある。可撓性要素40は、第1のチューブ20において空間46の内側に収容される。空間46は、第1の支持構造42と第2の支持構造44との間の第1のチューブ20の内側に規定される。
【0056】
図3では、第1のチューブ20における第2の開口部26も見ることができる。開口部26は、空間46を換気して可撓性要素40を冷却するように配置される。可撓性要素40はさらに、開口部26を通じて視覚的に検査され得る。
【0057】
可撓性要素40は、長手方向軸24に沿って弾性的に変形するように配置される。可撓性要素40は波形形状を有する。この例では、波形形状は正弦波形状であり、ここでは7周期を含む。図3に示すように、可撓性要素40は細長く、その正弦波形状は長手方向軸24を中心とする。図3における可撓性要素40の中立状態では、長手方向軸24に沿った可撓性要素40の長さは、長手方向軸24に沿った第1のチューブ20の長さの約30%である。
【0058】
この例の可撓性要素40は、少なくとも99%のアルミニウムを含むアルミニウム合金などの積層されたシートメタルから形成される。可撓性要素40は、複数のセクション48を含む。各セクション48は、正弦波形状の半周期を形成する。セクション48同士は、ともに溶接される。
【0059】
例として、各メタルシートは0.5mmの厚さを有してもよく、40枚のメタルシートが、可撓性要素40の厚さが20mmになるように積層されてもよい。これにより、可撓性要素40は、自己支持となり、比較的堅くなる。結果として、可撓性要素40を正確に位置決めした状態に保つための如何なる専用の支持構成も不要になり得る。
【0060】
伸縮性導電体16は、第1の軸受50および第2の軸受52をさらに含む。軸受50,52は、第1のチューブ20と第2のチューブ22との間の相対運動を支持するように配置される。図3に示すように、第2の軸受52は、第1のチューブ20の長さの約5%だけ第1の軸受50から離れている。
【0061】
この例では、軸受50,52は、摺動ポリマー軸受である。各軸受50,52は、第1のチューブ20に設けられるとともに第1のチューブ20の周縁の周りに均等に分散される複数の突出部によって構成され、ここでは12個の突出部によって構成される。
【0062】
図4は、伸縮性導電体16の部分拡大図を概略的に表す。図4では、第1の接続構成32がより詳細に見られ得る。第1のチューブ20および第1の端子部材36に関連する第1の接続構成32の以下の記載は、第2のチューブ22および第2の端子部材38に関連する第2の接続構成34に等しく適用可能である。
【0063】
第1の接続構成32は、機械的接続デバイス54と電気的接続デバイス56とを含む。機械的接続デバイス54は、第1のチューブ20と第1の端子部材36との間の機械的接続を提供する。この例の機械的接続デバイス54は、ボールジョイント58を含む。ボールジョイント58は、第1の端子部材36と第1のチューブ20との間の自由な相対的な回転を可能にする。ボールジョイント58はさらに、長手方向軸24に沿って軸方向剛性を提供する。
【0064】
電気的接続デバイス56は、第1のチューブ20と第1端子部材36との間の電気的な接続を提供する。図4に示すように、電気的接続デバイス56は可撓性導電体60を含む。可撓性導電体60は、この例では、第1のチューブ20の第1の端構造28に接続される。この例の可撓性導電体60は、少なくとも99%のアルミニウムを含むアルミニウム合金などのシートメタルから形成される。可撓性導電体60は、第1端子部材36および第1のチューブ20に電気的に接続されたままで曲がることが可能である。
【0065】
機械的接続デバイス54は、第1の端子部材36と第1のチューブ20とをガルバニックに分離する。これにより、少なくとも99%といった事実上すべての電流が可撓性導電体60を通過する。
【0066】
したがって、伸縮性導電体16は、第1の端子部材36から第2の端子部材38までのすべてにおいて固体金属を通る電気経路を提供する。電気経路は、500mmより小さい断面積を通過し得ない。この例では、電気経路は、第1の端子部材36から、第1の接続構成32の可撓性導電体60を通り、第1の端構造28を通り、第1のチューブ20に沿って、第1の支持構造42を通り、可撓性要素40を通り、第2の支持構造44を通り、第2のチューブ22を通り、第2の端構造30を通り、第2の接続構成34の可撓性導電体60を通り、第2の端子部材38に至る。この例の伸縮性導電体16は、少なくとも1000アンペアの電流容量を有する。電気経路は、伸縮性導電体16の伸張および収縮に起因して変化しない。
【0067】
伸縮性導電体16が引き込まれると、可撓性要素40は、長手方向軸24と整列された状態が維持されつつ圧縮される。軸受50,52によって、第2のチューブ22は、第1のチューブ20と同心に維持される。したがって、伸縮性導電体16は常に既知の形状を有する。これは、高電圧構成10のエアクリアランス要件を満たすために望ましい。さらなる利点として、高電圧構成10のよりコンパクトな設計が可能になる。
【0068】
初期圧縮中、可撓性要素40は弾性変形を受ける。可撓性要素40の設計により、可撓性要素40の弾性変形は、可撓性要素40の長さに沿って実質的に均等に分散される。したがって、可撓性要素40の単位長さ当たりの弾性変形は相対的に小さい。これにより、疲労に耐える能力が向上し、それによって、非常に多数の周期的負荷に耐える伸縮性導電体16の能力が向上する。伸縮性導電体16は、可撓性要素40の弾性変形のみにより、第1のチューブ20と第2のチューブ22との間の数百ミリメートルの相対運動を可能にし得る。
【0069】
可撓性要素40の圧縮中、可撓性要素40は、第1の支持構造42および第2の支持構造44と電気的に接続したままに維持される。したがって、摺動接点についての如何なる必要性も回避され得る。さらに、第1のチューブ20および第2のチューブ22は、厳密に長手方向軸24に沿って互いに対して移動する。これにより、たとえば高電圧構成10および/または伸縮性導電体16のより積極的な誘電体設計を可能にする高寸法制御が提供される。
【0070】
たとえば地震の場合に高電圧ユニット12,14間の大きな相対運動に起因して可撓性要素40がより大きな程度まで圧縮される場合、可撓性要素40は塑性変形を受ける。可撓性要素40の塑性変形は、高電圧ユニット12,14間の相対運動を減衰する。
【0071】
本開示は、例示的な実施形態を参照して記載されているが、本発明は、上で記載されたものに限定されないことが理解されるであろう。たとえば、部分の寸法は必要に応じて変更されてもよいことが理解されるであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付される請求の範囲によってのみ限定され得ることが意図される。
【要約】
伸縮性導電体(16)は、長手方向軸(24)を有する導電性の第1のチューブ(20)と、第1のチューブ(20)の内側に少なくとも部分的に受容されつつ、長手方向軸(24)に沿って第1のチューブ(20)に対して移動可能である導電性の第2のチューブ(22)と、第1のチューブ(20)の内側に配置される導電性可撓性要素(40)とを含み、可撓性要素(40)は、第1のチューブ(20)および第2のチューブ(22)に機械的および電気的に接続され、可撓性要素(40)は、長手方向軸(24)に沿って弾性的に変形するように配置される。伸縮性導電体(16)を含む高電圧構成(10)も提供される。
図1
図2
図3
図4