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特許7180037セラミック焼結体の製造方法、及び切断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-18
(45)【発行日】2022-11-29
(54)【発明の名称】セラミック焼結体の製造方法、及び切断装置
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/14 20060101AFI20221121BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20221121BHJP
   B26D 1/02 20060101ALI20221121BHJP
   B26D 3/16 20060101ALI20221121BHJP
   B26D 1/15 20060101ALI20221121BHJP
   B26D 11/00 20060101ALI20221121BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B28B11/14
B28B11/24
B26D1/02 C
B26D3/16 E
B26D1/15
B26D11/00
C04B35/622
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022539071
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2021029841
(87)【国際公開番号】W WO2022044859
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020141695
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】山縣 利貴
(72)【発明者】
【氏名】森 和久
(72)【発明者】
【氏名】小宮 勝博
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-045160(JP,A)
【文献】特開平01-304906(JP,A)
【文献】特開昭61-189907(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050884(WO,A1)
【文献】特開平07-024725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/14
B28B 11/24
B26D 1/02
B26D 3/16
B26D 1/15
B26D 11/00
C04B 35/622
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セラミックグリーンシートが巻かれた第1ロールの外周面から前記第1ロールを回転可能に支持する軸体に向かってカッターで切り込みを入れて前記第1ロールを切断し、前記第1ロールよりも短い第2ロールを得る第1切断工程と、
少なくとも一つの前記第2ロールから前記カッターで切断された第1セラミックグリーンシートを巻き出して、巻き出し方向と直交する方向に沿って切断し、第2セラミックグリーンシートを得る第2切断工程と、
前記第2セラミックグリーンシートを焼成してセラミック焼結体を得る焼成工程と、を有する、セラミック焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記カッターは両刃状であり、
前記第1切断工程では、前記第1ロールに対し前記軸体の軸方向に沿って相対的に移動する前記カッターを用いて前記第1ロールに複数の切断面を形成し、3つ以上の前記第2ロールを得る、請求項1に記載のセラミック焼結体の製造方法。
【請求項3】
前記第1切断工程では、前記カッターを回転させずに前記第1ロールを回転させながら前記第1ロールを切断する、請求項1又は2に記載のセラミック焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記第1切断工程では、前記カッターと前記第1ロールとをともに回転させながら前記第1ロールを切断し、側方からみたときの前記カッターと前記第1ロールの回転方向が同じである、請求項1又は2に記載のセラミック焼結体の製造方法。
【請求項5】
第1セラミックグリーンシートが巻かれた第1ロールを回転可能に支持する軸体と、
前記第1ロールの外周面から前記軸体に向かって切り込みを入れて前記第1ロールを切断し、前記第1ロールよりも短い第2ロールを得るカッターと、
前記軸体と前記カッターとの間隔を調節する調節部と、を備える切断装置。
【請求項6】
前記カッターは両刃状であり、
前記カッターを、前記軸体の軸方向に沿って前記第1ロールに対し相対的に移動する移動機構を備える、請求項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミック焼結体及びその製造方法、並びに切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム、磁気テープ、紙、金属箔、薄板等のシート材を切断する切断装置として、シート材を上刃と下刃で切断するスリッターが知られている(例えば、特許文献1,2)。このような切断装置では、上刃と下刃を相互に反対方向に回転させ、上刃と下刃の間に向かって連続的にシート材を進入させてシート材を切断する。切断されたシート材はロール状に巻き取られて、次工程で利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-72900号公報
【文献】特開2010-228023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のようなスリッターでセラミックグリーンシートを切断すると、切断に伴って切屑が飛散し、切断後のセラミックグリーンシートの表面に切屑が付着する場合がある。このような切屑は、セラミックグリーンシートを焼成して得られるセラミック焼結体の品質に影響を及ぼすことが懸念される。一方で、切屑が付着したセラミックグリーンシートをロール状に巻き取ると、切屑がロールの内部に巻き込まれる。このように、一旦ロールの内部に巻き込まれると、付着した切屑を取り除くのは困難である。このため、切屑が付着したセラミックグリーンシート及びセラミック焼結体を検査で排除する必要があり、歩留まり低下の要因となる。
【0005】
そこで、本開示は、切屑の付着を抑制することによって、品質のばらつきを抑制し、セラミック焼結体の歩留まりを向上することが可能なセラミック焼結体の製造方法を提供する。また、本開示は、品質のばらつきが抑制されたセラミック焼結体を提供する。また、本開示は、セラミック焼結体の品質のばらつきを抑制し、セラミック焼結体の歩留まりを向上することが可能な切断装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一つの側面において、第1セラミックグリーンシートが巻かれた第1ロールの外周面から第1ロールを回転可能に支持する軸体に向かってカッターで切り込みを入れて第1ロールを切断し、第1ロールよりも短い第2ロールを得る第1切断工程と、少なくとも一つの第2ロールからカッターで切断された第1セラミックグリーンシートを巻き出して、巻き出し方向と直交する方向に沿って切断し、第2セラミックグリーンシートを得る第2切断工程と、第2セラミックグリーンシートを焼成してセラミック焼結体を得る焼成工程と、を有する、セラミック焼結体の製造方法を提供する。
【0007】
上記製造方法では、第1切断工程において、第1セラミックグリーンシートが巻かれた第1ロールをカッターで切断して第2ロールを得ている。このように第1セラミックグリーンシートを第1ロールの状態で切断していることから、切断に伴って生じる切屑が切断後の第2ロールの内部に巻き込まれることを防止できる。このため、第2セラミックグリーンシートへの切屑の付着が抑制できる。したがって、第2切断工程及び焼成工程を経て得られるセラミック焼結体の品質のばらつきを抑制し、セラミック焼結体の歩留まりを向上することができる。
【0008】
上記製造方法では、カッターは両刃状であってよい。また、第1切断工程では、第1ロールに対し軸体の軸方向に沿って相対的に移動するカッターを用いて第1ロールに複数の切断面を形成し、3つ以上の第2ロールを得てもよい。両刃状のカッターを用いることによって、切断によって生じる側面の形状を高い精度で揃えることができる。例えば、複数の切断面を形成して3つ以上の第2ロールを作製した場合に、少なくとも一つの第2ロールの両側面における形状を高い精度で揃えることができる。このため、一対の側面の形状が高い精度で互いに揃ったセラミック焼結体を向上することができる。
【0009】
上記第1切断工程では、カッターを回転させずに第1ロールを回転させながら第1ロールを切断してもよい。これによって、切断面の形状の均一性を一層向上することができる。
【0010】
上記第1切断工程では、カッターと第1ロールとをともに回転させながら第1ロールを切断してよい。このとき、側方からみたときのカッターと第1ロールの回転方向が同じであってよい。これによって、第1セラミックグリーンシートの切屑が飛び散ることを十分に抑制することができる。
【0011】
本開示は、互いに平行な第1側面と第2側面とを有し、第1側面と第2側面の算術平均粗さ(Ra)が1~9μmであり、第1側面と第2側面の算術平均粗さ(Ra)の差の絶対値が、5μm未満である、セラミック焼結体を提供する。このようなセラミック焼結体は、セラミック焼結体及びこれを用いた製品の品質のばらつきを抑制することができる。
【0012】
本開示は、一つの側面において、第1セラミックグリーンシートが巻かれた第1ロールを回転可能に支持する軸体と、第1ロールの外周面から軸体に向かって切り込みを入れて第1ロールを切断し、第1ロールよりも短い第2ロールを得るカッターと、軸体とカッターとの間隔を調節する調節部と、を備える切断装置を提供する。
【0013】
上記切断装置は、第1セラミックグリーンシートが巻かれた第1ロールを切断するカッターと、軸体とカッターとの間隔を調節する調節部と、を備える。この切断装置は、第1セラミックグリーンシートを第1ロールの状態で切断する。このため、切断に伴って生じる切屑が切断後の第2ロールの内部に巻き込まれることを防止できる。したがって、切屑の付着に伴って生じるセラミック焼結体の品質のばらつきを抑制し、セラミック焼結体の歩留まりを向上することができる。
【0014】
上記カッターは両刃状であってよい。また、上記切断装置は、カッターを、軸体の軸方向に沿って第1ロールに対し相対的に移動する移動機構を備えてよい。両刃状のカッターを用いることによって、切断によって生じる側面の形状を高い精度で揃えることができる。また、移動機構を備えることによって、切断面の形状が揃った第2ロールを効率よく得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示は、切屑の付着を抑制することによって、品質のばらつきを抑制し、セラミック焼結体の歩留まりを向上することが可能なセラミック焼結体の製造方法を提供することができる。また、本開示は、品質のばらつきが抑制されたセラミック焼結体を提供することができる。また、本開示は、セラミック焼結体の品質のばらつきを抑制し、セラミック焼結体の歩留まりを向上することが可能な切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る切断装置の斜視図である。
図2図2は、カッターの平面図である。
図3図3は、図2のIII-III線断面図である。
図4図4は、カッターの刃の先端を拡大して示す断面図である。
図5図5は、第1ロールと、これを切断中のカッターを示す図である。
図6図6は、第1ロールを切断して得られる複数の第2ロールを示す斜視図である。
図7図7は、第2ロールから巻き出される第1セラミックグリーンシートの切断を説明するための図である。
図8図8は、一実施形態に係るセラミック焼結体の斜視図である。
図9図9は、比較例1の切断方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、説明に使用される上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
【0018】
図1は、一実施形態に係る切断装置の斜視図である。図1の切断装置100は、第1セラミックグリーンシート12がロール状に巻かれた第1ロール10を回転可能に支持する軸体20と、第1ロール10の外周面16から軸体20に向かって切り込みを入れて第1ロール10を切断し、複数の第2ロールを得るカッター30と、軸体20とカッター30との間隔を調節する調節部40と、カッター30を、軸体20の軸方向に沿って第1ロール10に対し相対的に移動する移動機構50を備える。
【0019】
軸体20の一端側は、棒状の支持体22に回転可能に支持され、軸体20の他端側は軸受け部23に回転可能に支持されている。軸受け部23は本体部24に取り付けられている。本体部24の内部には、図示しないモータ等の回転機が内蔵されていてよい。回転機は、軸体20を軸心回りに回転駆動してよい。
【0020】
円筒状の外形を有する第1ロール10は、所謂原反ロールであり、中心部に中空状の中芯14を有している。中芯14に巻かれている第1セラミックグリーンシート12の巻き付け長さに特に制限はなく、例えば1~200mであってよく、10~100mであってもよい。第1セラミックグリーンシート12の幅(=中芯14の軸方向に沿う第1ロール10の長さ)にも特に制限はなく、例えば0.1~5mであってよく、0.3~2mであってもよい。中芯14の中空部には軸体20が挿通されている。軸体20が軸心回りに回転すると、軸体20とともに第1ロール10も軸心回りに回転する。このとき、第1セラミックグリーンシート12は巻き出されないように、その先端は第1ロール10の周面において固定されていてよい。
【0021】
図2は、カッター30の平面図であり、図3は、図2のIII-III線断面図である。図4は、カッター30の刃の先端34aを拡大して示す断面図である。カッター30は、中央部に回転軸が挿入される貫通孔32を有する回転丸刃である。カッター30は、回転軸の回転に伴って回転する。カッター30は、回転しながら第1ロール10の外周面16に切り込みを入れて第1ロール10を切断してもよい。或いは、カッター30は、回転せずに第1ロール10のみを回転させて第1ロール10の外周面16に切り込みを入れて第1ロール10を切断してもよい。第1ロール10の外径に対するカッター30の外径の比は、0.5~3であってよく、1~2であってよい。当該比が大きくなり過ぎると、第1ロール10の中心付近における切断の円滑性が損なわれる場合がある。一方、当該比が小さくなり過ぎると、カッター30の移動距離が大きくなり、最終的に得られるセラミック焼結体の側面の算術平均粗さ(Ra)が大きくなる傾向がある。
【0022】
カッター30の刃先34は、両刃状に加工されている。このように両刃状のカッター30を用いることによって、第1ロール10を切断することによって生じる2つの切断面の形状を高い精度で揃えることができる。なお、両刃状のカッター30を用いることは必須ではなく、片刃状であってもよい。カッター30の先端における角度θ(図4,刃物角θ)は、カッター30の耐久性を維持しつつ第1セラミックグリーンシート12の側面(切断面)を十分に滑らかにする観点から、10~20°であってよい。カッター30は、高速度鋼等の鋼製であってもよいし、炭化物(WC等)と金属(Co,Ni等)を含む超硬合金製であってもよい。
【0023】
刃先34、又はカッター30の表面全体は、ダイヤモンド砥石及び研磨機等を用いて研磨する表面処理が施されていてもよい。このような表面処理を行うことによって、刃先34又はカッター30の表面全体における凸部を切り欠くことができる。これによって、切断時の切屑の飛散を抑制することができる。このようにカッター30が研磨面を有することによって、表面が平滑になり、適度な回転数で第1ロール10を円滑に切断することができる。研磨の程度は切断対象の大きさ及び材質に応じて変更してもよい。カッター30による第1ロール10の切断面に由来するセラミック焼結体の側面の算術平均粗さ(Ra)を確認しながら研磨の程度を調整してもよい。具体的には、セラミック焼結体の側面の算術平均粗さ(Ra)が大き過ぎる場合には、カッター30の表面をより平滑となるように研磨すればよい。これによって、セラミック焼結体の側面の算術平均粗さ(Ra)を適度な範囲に調整することができる。
【0024】
図5は、第1ロール10と、これを切断しているカッター30を、第1ロール10の側方からみたときの図である。カッター30は、図5に示すように、反時計回り(C1方向)に回転しながら調節部40(図1)によってC2方向に徐々に移動する。調節部40は例えばアクチュエータで構成されていてもよい。第1ロール10は、カッター30と同じように反時計回り(R1方向)に回転している。第1ロール10とカッター30の回転方向を同じにすることによって、第1セラミックグリーンシート12の切屑が飛び散ることを十分に抑制することができる。
【0025】
カッター30と第1ロール10の軸体20との間隔はカッター30のC2方向への移動に伴って小さくなり、カッター30、及び、カッター30による切り込み17が徐々に中芯14に近づく。中芯14は例えば紙製又は樹脂製であってよい。カッター30は、ロール状の第1セラミックグリーンシート12を切断した後、中芯14を切断してもよいし、切断しなくてもよい。
【0026】
調節部40によるカッター30のC2方向への移動速度は、0.1~10mm/秒であってよく、0.3~5mm/秒であってよく、0.6~3mm/秒であってもよい。移動速度が大きくなり過ぎると、第1ロール10が変形し、第1セラミックグリーンシート12に皺が発生し易くなる傾向にある。一方、移動速度が小さくなり過ぎると、第1ロール10の切断に時間を要し、第2ロールの生産効率が低下する傾向にある。
【0027】
第1ロール10の外径は、例えば、50~500mmであってよい。カッター30の回転数は、例えば300rpm以下であってよい。幾つかの例では、カッター30は、回転していなくてもよい。このようにカッター30が回転していなくても、第1ロール10がR1方向に回転し、カッター30が調節部40によってC2方向に移動していることから、カッター30の刃先34及び切り込み17は徐々に第1ロール10の中心に向かって進行する。カッター30を回転させずに第1ロール10を切断することによって、第1セラミックグリーンシート12の切屑が飛び散ることを十分に抑制することができる。
【0028】
第1ロール10を切断する際の第1ロール10の回転数は、例えば、100~1000rpmであってよく、310~700rpmであってよい。第1ロール10の回転数が小さくなり過ぎると、粗大な切屑及び切屑の塊が発生し易くなる傾向がある。一方、第1ロール10の回転数が大きくなり過ぎると第1セラミックグリーンシート12の切断面にバリが発生し易くなる傾向がある。第1ロール10の回転数の方が、カッター30の回転数よりも大きくてよい。これによって、カッター30による第1ロール10の切断をスムーズに進行することができる。
【0029】
カッター30の先端34aが中芯14まで進入したら、調節部40によるカッター30のC2方向への移動を一旦停止してよい。中芯14はカッター30によって切断してもよいし、切断しなくてもよい。その後、カッター30をC2方向とは逆向きに移動して、カッター30を切り込み17から抜く。このようにして、第1ロール10が径方向に沿って切断され、第1ロール10よりも短い第2ロールが得られる。カッター30が第1ロール10から離れたら、図1に示す移動機構50によって、カッター30を軸体20の軸方向に沿って移動する。図1でいうと、カッター30を本体部24側に移動する。
【0030】
移動機構50は、ガイドレール54とガイドレール54に沿って移動する台座部52とを有する。台座部52にはカッター30が固定されている。台座部52がガイドレール54に沿って動くことで、カッター30が軸体20の軸方向に沿って移動する。台座部52は、例えばアクチュエータ等によって移動してよい。
【0031】
カッター30を、移動機構50によって軸体20の軸方向に沿って本体部24側に所定距離させた後、再び、第1ロール10の外周面16から軸体20に向かって切り込みを入れる。その後、最初の切断と同様にして第1ロール10を切断する。第1ロール10の回転数、カッター30の回転数、C2方向への移動速度及び回転の向き、並びに第1ロール10の回転数及び回転の向き等の切断条件は、最初の切断時と同じであってもよいし、異なっていてもよい。切断の際の切断条件を同じにすれば、切断面の形状を揃えることができる。特に、カッター30が両刃状であるため、最初の切断と2回目の切断で両側面が形成される第2ロールは、高い精度で両側面の互いの形状を揃えることができる。第1ロール10の切断を複数回行うことによって、所望の数の第2ロールを得ることができる。
【0032】
図6は、第1ロールを切断して得られる複数の第2ロールを示す斜視図である。図6では、第1ロール10を4箇所で切断することによって、5本の第2ロールが得られている。5本の第2ロールのうち、両端部にある第2ロール60a,60eを除く3本の第2ロール60(第2ロール60b,60c,60d)の側面62とその反対側の側面は、いずれもカッター30による切断によって形成されている。このため、第2ロール60b,60c,60dのそれぞれにおける側面62とその反対側の側面の形状は高い精度で互いに揃っている。このような第2ロール60b,60c,60dから第1セラミックグリーンシート12を帯状に巻き出して所定の長さで巻き出し方向とは直交する方向に沿って切断し、焼成すれば、一対の側面の形状が高い精度で揃ったセラミック焼結体を製造することができる。両端部にある第2ロール60a,60eは、第2ロール60b,60c,60dと同様に、セラミック焼結体の製造に用いてもよいし、リサイクルしてもよい。
【0033】
なお、上記実施形態の切断装置100では、カッター30が調節部40によって軸体20に向かって移動するように構成されていたが、これに限定されない。幾つかの変形例では、カッター30は軸体20に向かって移動せず、軸体20がカッター30の刃先に向かって移動するように構成されていてもよいし、カッター30及び軸体20の双方が動くことによって両者の間隔が調節されるように構成されていてもよい。また、上記実施形態の切断装置100では、カッター30が移動機構50によって軸方向に沿って移動するように構成されていたが、これに限定されない。幾つかの別の変形例では、カッター30は軸体20の軸方向に沿って移動せず、軸体20及び第1ロール10が軸方向に沿って移動するように構成されていてもよいし、カッター30及び軸体20(第1ロール10)の双方が動くことによって両者の位置関係が調節されるように構成されていてもよい。
【0034】
一実施形態に係るセラミック焼結体の製造方法は、第1セラミックグリーンシート12が巻かれた第1ロール10の外周面から第1ロール10を回転可能に支持する軸体20に向かってカッター30で切り込みを入れて第1ロール10を切断し、第1ロール10よりも長さが短い第2ロール60を得る第1切断工程と、少なくとも一つの第2ロール60からカッター30で切断された第1セラミックグリーンシート12を巻き出して、巻き出し方向と直交する方向に沿って切断し、個片化された第2セラミックグリーンシートを得る第2切断工程と、第2セラミックグリーンシートを焼成してセラミック焼結体を得る焼成工程と、を有する。この製造方法は、上述の切断装置100を用いて行ってもよいし、その変形例を用いて行ってもよい。
【0035】
第1セラミックグリーンシート12は、例えば以下の手順で作製することができる。第1セラミックグリーンシート12の原料として、例えば、セラミック粉末、焼結助剤、及び、必要に応じて添加剤を準備する。添加剤としては、バインダ、可塑剤、分散媒、及び離型剤等が挙げられる。バインダとしては、例えば、可塑性又は界面活性効果を有するメチルセルロース系のもの、熱分解性に優れたアクリル酸エステル系のものが挙げられる。可塑剤としては、例えばグリセリンが挙げられる。分散媒としては、イオン交換水及びエタノール等が挙げられる。セラミック粉末としては、例えば、窒化アルミニウム粉末、窒化ケイ素粉末、又は酸化アルミニウム粉末等を用いることができる。セラミック粉末の平均粒径(メジアン径)は、0.1~6μmであってよく、0.5~4μmであってもよい。
【0036】
焼結助剤としては、希土類元素、希土類元素とは異なる遷移元素、アルカリ土類金属元素、及びアルミニウム元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を構成元素とする酸化物を用いることができる。例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、及び酸化セリウム等が挙げられる。これらの酸化物の少なくとも2つは複合酸化物となって液相を形成して焼結を促進してもよい。これによって、セラミック焼結体を十分に緻密化することができる。複数の酸化物を用いる場合は、各酸化物の配合割合を変えて、セラミック焼結体における酸化物粒子の組成を調整してもよい。焼結助剤の平均粒径(メジアン径)は、0.05~5μmであってよく、0.1~3μmであってもよい。
【0037】
セラミック粉末、焼結助剤、バインダ及び必要に応じて添加される添加剤を配合して混合し、成形原料を得る。成形原料を、ドクターブレード法、カレンダー法、又は押し出し法等によって基材フィルム上に所定の厚みで塗布して乾燥し、積層シートを得る。基材フィルムは、例えば、ポリエステル(例:PET)等の樹脂フィルムであってよい。その後、積層シートから基材フィルムを取り除き、第1セラミックグリーンシート12を得る。この第1セラミックグリーンシート12を中芯14に巻き取って、第1ロール10が得られる。
【0038】
第1ロール10を、切断装置100又はその変形例を用いて径方向に沿って複数に切断する。第1切断工程は、切断装置100及びその変形例において説明した内容と同様にして行うことができる。第1切断工程によって第1ロール10が複数に分割され、図6に示すような複数の第2ロール60が得られる。
【0039】
第2切断工程では、図7に示すように、第2ロール60から、第1セラミックグリーンシート12を巻き出して、巻き出し方向P(第1セラミックグリーンシート12の長手方向)に直交する切断線D1,D2に沿って切断し、所定のサイズの第2セラミックグリーンシート12Aを得る。切断は、例えばシャー刃を用いて行ってもよい。このとき、第2ロール60の側面62とその反対側の側面は、切り落とさないにする。このようにして、個片化された第2セラミックグリーンシート12Aが得られる。このようにして得られる第2セラミックグリーンシート12Aの4つの側面のうち、カッター30で切断して得られる2つの側面の算術平均粗さ(Ra)は、シャー刃等の金型で切断して得られる側面の算術平均粗さ(Ra)よりも十分に小さい。
【0040】
焼成工程で、第2セラミックグリーンシート12Aを焼成する前に、第2セラミックグリーンシート12Aの脱脂を行ってもよい。脱脂方法は特に限定されず、例えば、第2セラミックグリーンシート12Aを空気中又は窒素等の非酸化雰囲気中で300~700℃に加熱して行ってよい。加熱時間は、例えば1~10時間であってよい。
【0041】
セラミック焼結体は、第2セラミックグリーンシート12Aを焼成して得ることができる。セラミック焼結体として窒化アルミニウム焼結体を製造する場合、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で、例えば1760~1840℃に昇温する。1760~1840℃の温度範囲における保持時間は、例えば1~10時間であってよい。焼成は大気圧下で行ってよい。セラミック焼結体として窒化ケイ素焼結体を製造する場合、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中、例えば1860~2100℃に昇温する。1860~2100℃の温度範囲における保持時間は、例えば6~20時間であってよい。焼成は大気圧下で行ってよい。焼成時の圧力は、0.7~0.9MPaであってよい。窒化アルミニウム焼結体及び窒化ケイ素以外のセラミック焼結体(例えば、酸化アルミニウム焼結体等)を製造する場合、焼結体の緻密化が十分に進行するような焼結条件を適宜設定すればよい。
【0042】
図8は、一実施形態に係るセラミック焼結体の斜視図である。セラミック焼結体は、上述の製造方法又はその変形例によって製造することができる。平板形状(直方体形状)を有するセラミック焼結体70は、互いに平行である一対の側面13と、互いに平行である一対の側面15と、を有する。このうち、一対の側面15(第1側面、第2側面)は、図6及び図7に示す第2ロール60における側面62とその反対側の側面に由来する。したがって、一対の側面15の形状は高い精度で互いに揃っており、形状の均一性に優れる。
【0043】
一対の側面15における中央線L1,L2は仮想線であり、主面と平行に延びている。中央線L1,L2は、一対の側面15をセラミック焼結体70の厚さ方向(主面に直交する方向)に二分している。セラミック焼結体70の中央線L1,L2に沿って測定される算術平均粗さ(Ra)が1~9μmである。この算術平均粗さ(Ra)の上限は、8μmであってよく、7μmであってもよい。側面の算術平均粗さ(Ra)が小さいセラミック焼結体70は、第1セラミックグリーンシート12を切断する際に発生する切屑を低減することができる。この算術平均粗さ(Ra)の下限は、2μmであってよく、3μmであってもよい。
【0044】
中央線L1に沿って測定される算術平均粗さ(Ra)と中央線L2に沿って測定される算術平均粗さ(Ra)の差の絶対値は5μm未満である。このように、対向する側面15の形状が高い水準で揃っているため、セラミック焼結体を部材として用いる製品の品質のばらつきを十分に低減することができる。上記差の絶対値(△Ra)は、4μm未満であってよく、3μm未満であってもよい。上記差の絶対値(△Ra)の下限は1μmであってよい。
【0045】
中央線L1,L2に沿って測定される最大高さ粗さ(Rz)は、10~35μmであってよく、15~30μmであってもよい。中央線L1に沿って測定される算術平均粗さ(Ra)と中央線L2に沿って測定される最大高さ粗さ(Rz)の差の絶対値は30μm未満であってよい。これによって、セラミック焼結体を部材として用いる製品の品質のばらつきを一層低減することができる。当該差の絶対値(△Rz)は、20μm未満であってよく、15μm未満であってもよい。上記差の絶対値(△Rz)の下限は10μmであってよい。
【0046】
本開示における最大高さ粗さ(Rz)及び算術平均粗さ(Ra)は、それぞれ、JIS B 0601:2013に準拠して測定される値である。また、セラミック焼結体の側面に焼結後に加工された部分がある場合には、焼結後に加工されていない部分で評価するものとする。
【0047】
一対の側面13及び一対の側面15、すなわち四方の側面の全てにおいて、中央線L1,L2に沿って測定される算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)が上述の範囲であってよい。この場合、各側面で測定されるRa及びRzの最大値と最小値の差が上述の範囲であってもよい。このようなセラミック焼結体は、第2ロールから繰り出された帯状のセラミックグリーンシートをカッター30で切断することによって得ることができる。
【0048】
セラミック焼結体70は、主成分としてセラミック粒子と、副成分として主成分中に分散し、セラミック粒子とは異なる酸化物粒子と、を含む。主成分であるセラミック粒子は、窒化物、炭化物、硼化物、酸化物及び珪化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。窒化物としては、窒化アルミニウム(AlN)及び窒化ケイ素(Si)が挙げられる。酸化物としては、酸化アルミニウム(Al)等が挙げられる。
【0049】
副成分として、上述の主成分中に分散する酸化物粒子は、セラミック粒子に含まれるセラミックとは異なる酸化物を含有する。酸化物粒子は、例えば、希土類元素、希土類元素とは異なる遷移元素、アルカリ土類金属元素、及びアルミニウム元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を構成元素とする酸化物を含んでいてよい。このような酸化物は、焼結助剤として用いられたときに、セラミック粒子の焼結を促進する作用を有する。このように、酸化物粒子は、焼結助剤に由来する酸化物を含んでよい。酸化物粒子に含まれる酸化物は複合酸化物であってよい。一例として、セラミック焼結体は、主成分として窒化アルミニウム粒子又は窒化ケイ素粒子を含んでいてよい。
【0050】
本開示におけるセラミック焼結体の主成分とは、セラミック焼結体に含まれる成分のうち、最も含有量が多い成分をいう。本開示における副成分とは、セラミック焼結体に含まれる成分のうち、主成分よりも含有量が少ない成分をいう。副成分は、主成分とは異なる成分であり、主成分中に分散している。例えば、主成分である複数のセラミック粒子の粒界に含まれていてよい。セラミック焼結体における主成分の含有量は、主成分の有する特性を十分に発揮させる観点から、90質量%以上であってよく、93質量%以上であってよく、95質量%以上であってもよい。セラミック焼結体における副成分(セラミック粒子とは異なる酸化物粒子)の含有量は、焼結を促進して密度を十分に高くする観点から、0.5質量%以上であってよく、1質量%以上であってよく、2質量%以上であってもよい。
【0051】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、図1に示す切断装置100では、回転可能なカッター30を用いていたが、回転しないカッターを用いてもよい。この場合、第1ロール10を軸体20の軸心回りに回転することで第1ロール10を切断して第2ロールを得ることができる。第1ロールを切断して得られる第2ロールの個数は特に限定されない。例えば、第2ロールの個数は2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【実施例
【0052】
以下に実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
窒化ケイ素粉末と焼結助剤(酸化マグネシウム粉末、酸化イットリウム粉末及び二酸化ケイ素粉末)を含む原料スラリーを、PETフィルム上に塗布して乾燥し、PETフィルム上に第1セラミックグリーンシート(厚み:0.40mm)を成形して積層体を得た。この積層体からPETフィルムを除去した後、第1セラミックグリーンシートを塩化ビニル製の芯材(内径:80mm、外径:100mm、長さ:1000mm)に巻き付けて第1ロールを得た。第1ロールの外径は117.2mmであり、第1ロールの長さは1000mmであった。
【0054】
作製した第1ロールを、図1に示すような切断装置の軸体に取り付けた。カッターとしては、市販の回転丸刃(株式会社信和機刃製の丸ナイフ、高速度鋼(SKH51)製)の表面全体を研磨したものを用いた。このカッターは両刃状であり、外径は250mm、刃物角θは14°であった。
【0055】
軸体に取り付けられた第1ロールの外周面から当該軸体に向かって、このカッターで切り込みを入れて第1ロールを切断した。切断は、第1ロールを軸体の軸心回りに415rpmの回転数で回転させながら、カッターを1mm/秒の速度で軸体に向かって移動させることによって行った。なお、カッターは回転させることなく切断を行った。
【0056】
第1ロールの切断を4箇所で行って、図6に示すような5本の第2ロールを得た。このうち、両端を除く3本の第2ロールから、第1セラミックグリーンシートを巻き出して金型で幅方向に沿って切断した。このようにして、直方体形状(縦×横×厚さ=250mm×200mm×0.40mm)の第2セラミックグリーンシートを得た。
【0057】
得られた第2セラミックグリーンシートを、空気中において570℃で5時間加熱して脱脂した。次に、脱脂した積層体を加熱炉に入れて、窒素ガス雰囲気中(大気圧)、1800℃まで昇温した。その後、積層体を1800℃で4時間加熱した後、加熱炉内で放冷した。このようにして、直方体形状のセラミック焼結体を得た。
【0058】
側面の表面形状の測定には、株式会社キーエンス製のワンショット3D形状測定機(装置名:VR-3050)を用いた。図8の中央線L1,L2のように側面を二分する中央線に沿って、JIS B 0601:2013に準拠して、セラミック焼結体の各側面(第1側面~第4側面)における算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)を求めた。その結果は、表1に示すとおりであった。表1中、セラミック焼結体の第1側面と第2側面は、互いに平行であり、カッターで切断して得られた切断面(図6の側面62とその反対側の側面)に由来する。セラミック焼結体の第3側面と第4側面も互いに平行であり、金型で切断して得られた切断面に由来する。表1には、第1側面と第2側面の算術平均粗さ(Ra)の差の絶対値を△Raとして示した。また、第1側面と第2側面の算術平均粗さ(Ra)の差の絶対値を、△Rzとして示した。
【0059】
同様の手順で作製した第2セラミックグリーンシートを同様の条件で焼成して、合計で100枚のセラミック焼結体を製造した。目視にてセラミック焼結体の表面検査を行い、切屑の付着の有無を調べた。切屑が付着していたセラミック焼結体の個数割合(%)は、表1に示すとおりであった。
【0060】
(実施例2)
第1ロールの回転数を350rpmにしたこと以外は、実施例1と同様にして、第1セラミックグリーンシート、第2セラミックグリーンシート及びセラミック焼結体を作製した。そして、実施例1と同じ手順でセラミック焼結体の各側面における算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)を求めた。また、実施例1と同じ手順で、切屑が付着していたセラミック焼結体の個数割合(%)を求めた。これらの結果は、表1に示すとおりであった。
【0061】
(実施例3)
第1ロールの回転数を124rpmにしたこと、及び、カッターを第1ロールと同じ回転方向に300rpmの回転数で回転しながら第1ロールを切断したこと以外は、実施例1と同様にして第1セラミックグリーンシート、第2セラミックグリーンシート及びセラミック焼結体を作製した。そして、実施例1と同じ手順でセラミック焼結体の各側面における算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)を求めた。また、実施例1と同じ手順で、切屑が付着していたセラミック焼結体の個数割合(%)を求めた。これらの結果は、表1に示すとおりであった。
【0062】
(実施例4)
カッターとして、市販の回転丸刃(株式会社信和機刃製の丸ナイフ、高速度鋼(SKH51)製)の表面全体を研磨したものを用いた。このカッターは片刃状であり、外径は250mm、刃物角θは14°であった。このカッターを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、第1セラミックグリーンシート、第2セラミックグリーンシート及びセラミック焼結体を作製した。そして、実施例1と同じ手順でセラミック焼結体の各側面における算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)を求めた。また、実施例1と同じ手順で、切屑が付着していたセラミック焼結体の個数割合(%)を求めた。これらの結果は、表1に示すとおりであった。
【0063】
(比較例1)
実施例1と同様の第1ロールを準備した。図9に示すようなスリッター200を用いて、この第1ロールから巻き出された第1セラミックグリーンシート112を、以下の要領で切断した。比較例1のスリッター200は、ゲーベル刃と称される上刃110と下刃120を備えていた。上刃110と下刃120は、図9に示すように対をなして設けられていた。
【0064】
上刃110は、回転軸114を回転中心として時計回りに回転し、下刃120は、回転軸124を回転中心として反時計回りに回転するように構成されていた。このように、上刃110と下刃120は互いに逆方向(反対回り)に回転しながら、第1セラミックグリーンシート112を切断した。回転軸114,124は、図示しないモータ等の回転機によって回転駆動させた。
【0065】
上刃110と下刃120の重なり部分で切断して得られたセラミックグリーンシート112aは、押さえローラ134,136の間を通過した後、巻き付けローラ137を通過して、回転軸116によって回転する中芯115に巻き取られた。このようにして、6つの第2ロール160を得た。中央寄りの2本の第2ロールから、セラミックグリーンシート112aを巻き出して金型で幅方向に沿って切断した。このようにして、直方体形状(縦×横×厚さ=250mm×200mm×0.40mm)の第2セラミックグリーンシートを得た。
【0066】
実施例1と同様にして、第2セラミックグリーンシートの脱脂及び焼成を行って直方体形状のセラミック焼結体を得た。そして、実施例1と同じ手順でセラミック焼結体の各側面における算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)を求めた。また、実施例1と同じ手順で、切屑が付着していたセラミック焼結体の個数割合(%)を求めた。これらの結果は、表1に示すとおりであった。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すとおり、同じカッターを用いて切り取られたセラミックグリーンシートを焼成して得られるセラミック焼結体では、第1側面と第2側面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)の差を十分に小さくできることが確認された。
【0069】
第1ロールをロール状のまま切断した実施例1~4では、セラミック焼結体の表面における切屑の付着が十分に低減されていた。このように、実施例1~4の切断方法であれば品質のばらつきを抑制し、歩留まりを向上できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示によれば、切屑の付着を抑制することによって、品質のばらつきを抑制し、セラミック焼結体の歩留まりを向上することが可能なセラミック焼結体の製造方法が提供される。また、本開示は、品質のばらつきが抑制されたセラミック焼結体が提供される。また、本開示は、セラミック焼結体の品質のばらつきを抑制し、セラミック焼結体の歩留まりを向上することが可能な切断装置が提供される。
【符号の説明】
【0071】
10…第1ロール、12…第1セラミックグリーンシート、12A…第2セラミックグリーンシート、13,15…側面、14…中芯、16…外周面、17…切り込み、20…軸体、22…支持体、23…軸受け部、24…本体部、30…カッター、32…貫通孔、34…刃先、34a…先端、40…調節部、50…移動機構、52…台座部、54…ガイドレール、60,60a,60b,60c,60d,60e、160…第2ロール、62…側面、70…セラミック焼結体、100…切断装置、110…上刃、112…第1セラミックグリーンシート、112a…セラミックグリーンシート、114,116,124…回転軸、115…中芯、120…下刃、134,136…押さえローラ、137…巻き付けローラ、200…スリッター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9