IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭サナック株式会社の特許一覧

<図1>
  • 特許-圧造機 図1
  • 特許-圧造機 図2
  • 特許-圧造機 図3
  • 特許-圧造機 図4
  • 特許-圧造機 図5
  • 特許-圧造機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】圧造機
(51)【国際特許分類】
   B21J 13/14 20060101AFI20221122BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20221122BHJP
   B21K 27/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B21J13/14 B
B30B15/00 B
B21K27/00 Z
B21K27/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018217760
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020082113
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】峯 賢義
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013974(JP,A)
【文献】特許第4600110(JP,B2)
【文献】特開平10-296379(JP,A)
【文献】米国特許第04395899(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 13/14
B30B 15/00
B21K 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに設けられるダイスと、
主駆動源から駆動され、前記フレームに対して往復動作するラムと、
前記ラムに設けられて前記ラムとともに往復動作し、前記ダイスとの間でワークを圧造加工するパンチと、
圧造加工された前記ワークに当接して前記ダイスから突き出すキックアウトピンと、
前記キックアウトピンと別体であって、前記ワークおよび前記ダイスの少なくとも一方に作用する作用部材と、
互いに同じ構造を有し同期して動作し、共同して前記作用部材を動作させる複数の副駆動源と、
を備える圧造機。
【請求項2】
複数の前記副駆動源の各々は、作動液が流入出するシリンダ、および前記シリンダ内を動作するピストンを含む液圧駆動源であり、
前記キックアウトピンは、前記主駆動源からカム機構を介して駆動される、請求項に記載の圧造機。
【請求項3】
フレームに設けられるダイスと、
主駆動源から駆動され、前記フレームに対して往復動作するラムと、
前記ラムに設けられて前記ラムとともに往復動作し、前記ダイスとの間でワークを圧造加工するパンチと、
圧造加工された前記ワークに当接して前記ダイスから突き出すキックアウトピンと、
前記キックアウトピンと別体であって、前記ワークおよび前記ダイスの少なくとも一方に作用する作用部材と、
互いに同期して動作し、共同して前記作用部材を動作させる複数の副駆動源と、を備え、
複数の前記副駆動源の各々は、作動液が流入出するシリンダ、および前記シリンダ内を動作するピストンを含む液圧駆動源であり、
前記キックアウトピンは、前記主駆動源からカム機構を介して駆動され、
複数の前記液圧駆動源の各前記ピストンを結合しつつ、前記作用部材に結合される結合プレートと、
前記結合プレートの動作位置を検出するプレート位置検出部と、
前記結合プレートの前記動作位置に基づいて、前記作動液の流入出を制御する作動液制御部と、
をさらに備える圧造機。
【請求項4】
前記作動液を蓄積する液源容器と複数の前記副駆動源の各前記シリンダを連通させる複数の液路が互いに等長かつ等断面積である、請求項に記載の圧造機。
【請求項5】
前記ダイスおよび前記パンチを含む圧造工程を複数有する多工程の圧造機であって、
一部または全部の前記圧造工程ごとに、それぞれ前記作用部材および複数の前記副駆動源を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧造機。
【請求項6】
複数の前記副駆動源は、水平方向に動作する前記作用部材の上側および下側に1個ずつ配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の圧造機。
【請求項7】
前記作用部材は、前記ワークに背圧を付与し、または前記ワークの方向を転換し、または突き出された前記ワークの落下を防止し、あるいは複数に分割された前記ダイスを操作するものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の圧造機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイスおよびパンチを用いてワークを圧造加工する圧造機に関する。より詳細には、圧造加工されたワークをダイスから突き出すキックアウトピンに加えて、ワークおよびダイスの少なくとも一方に作用する作用部材を備えた圧造機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な圧造機では、ダイスおよびパンチによりワークを打圧し、塑性変形を発生させて所定形状に圧造加工する。圧造加工されたワークをダイスから突き出すために、キックアウトピンが設けられる。キックアウトピンの駆動源として、パンチを駆動する主駆動源が兼用されることが多い。また、ワークの複雑な形状に対応するため、ワークに背圧を付与して塑性変形を制御する構成や、ダイスを分割型にしてワークの突き出しを容易にする構成が知られている。ワークに背圧を付与する作用部材や、分割型ダイスの操作を行う作用部材は、主駆動源とは別の副駆動源によって駆動されることが多い。副駆動源を備える圧造機に関連した一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された鍛造用金型は、上金型および下金型に加えて背圧付与用金型を備える。さらに、背圧付与用金型に背圧を付与する副駆動源として、ガスクッションが用いられる。これによれば、ワークの塑性流動性を維持して、塑性流動を均一化でき、生産性を向上することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-42451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作用部材に必要とされる背圧などの荷重の大きさに対応した副駆動源を設けることで、圧造機が大形化するという問題点が発生する。特に、ダイスおよびパンチを複数組備える多工程の圧造機では、工程間が狭隘であるため、副駆動源を設ける十分なスペースを確保することが難しい。このため、スペースに余裕のある最下流の工程だけに作用部材および副駆動源を設けるか、あるいは、途中の工程の工程間距離を従来よりも拡げる対応が必要となっていた。逆に言えば、従来の工程間距離を維持できる範囲内で副駆動源を設けても、十分な荷重が得られない場合があった。
【0006】
本発明は、上述した背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、機器の大形化を抑制しつつ、ワークおよびダイスの少なくとも一方に作用する作用部材が大きな荷重を発揮できる圧造機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧造機は、フレームに設けられるダイスと、主駆動源から駆動され、前記フレームに対して往復動作するラムと、前記ラムに設けられて前記ラムとともに往復動作し、前記ダイスとの間でワークを圧造加工するパンチと、圧造加工された前記ワークに当接して前記ダイスから突き出すキックアウトピンと、前記キックアウトピンと別体であって、前記ワークおよび前記ダイスの少なくとも一方に作用する作用部材と、互いに同じ構造を有し同期して動作し、共同して前記作用部材を動作させる複数の副駆動源と、を備える。
また、圧造機は、フレームに設けられるダイスと、主駆動源から駆動され、前記フレームに対して往復動作するラムと、前記ラムに設けられて前記ラムとともに往復動作し、前記ダイスとの間でワークを圧造加工するパンチと、圧造加工された前記ワークに当接して前記ダイスから突き出すキックアウトピンと、前記キックアウトピンと別体であって、前記ワークおよび前記ダイスの少なくとも一方に作用する作用部材と、互いに同期して動作し、共同して前記作用部材を動作させる複数の副駆動源と、を備え、複数の前記副駆動源の各々は、作動液が流入出するシリンダ、および前記シリンダ内を動作するピストンを含む液圧駆動源であり、前記キックアウトピンは、前記主駆動源からカム機構を介して駆動され、複数の前記液圧駆動源の各前記ピストンを結合しつつ、前記作用部材に結合される結合プレートと、前記結合プレートの動作位置を検出するプレート位置検出部と、前記結合プレートの前記動作位置に基づいて、前記作動液の流入出を制御する作動液制御部と、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圧造機において、複数の副駆動源は、共同して作用部材を動作させ、作用部材は、ワークおよびダイスの少なくとも一方に作用する。これによれば、複数の副駆動源から出力される荷重が加算されるため、作用部材は、大きな荷重を発揮できる。また、複数の副駆動源の各々は、大形品である必要は無い。したがって、複数の副駆動源の配置を合理化することにより、圧造機の大形化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の圧造機の全体構成を模式的に示す平面図である。
図2】実施形態の圧造機のひとつの圧造工程のダイス側の構成を示す側面断面図である。
図3図2中のA方向矢視図である。
図4図2中のB方向矢視図である。
図5図2中のC方向矢視図である。
図6】実施形態の圧造機の動作事例を説明するタイムチャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、実施形態の圧造機1の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態の圧造機1の全体構成を模式的に示す平面図である。圧造機1は、横型の多工程の圧造機である。圧造機1は、フレーム2、ラム3、5組のパンチ41およびダイス44、ワーク搬送部49、ならびに駆動部9などで構成される。圧造機1は、5組のパンチ41およびダイス44により構成された第1~第5圧造工程で、ワークに順次圧造加工を施す。図1において、第1~第5圧造工程は、上側から下側へと並んでいる。さらに、少なくともひとつの圧造工程は、作用部材6および複数の液圧駆動源72を備える(図2参照)。なお、圧造機1の圧造工程数は、5工程に限定されず、1~8工程程度の範囲とされる。
【0011】
フレーム2は、各部を配設するための筐体であり、鉄製で堅牢に形成されている。5個のダイスホルダ21は、フレーム2の幅方向に並んで設けられる。5組のダイス44は、各ダイスホルダ21の前側(図1の左側)に交換可能に取り付けられる。各ダイス44の前側に、所定の加工型が形成されている。
【0012】
ラム3は、平面視で概ね矩形であり、フレーム2を基準とする前後方向、すなわち図1の左右方向に往復動作する。5個のパンチホルダ31は、ラム3の前側(図中の右側)の幅方向に並んで設けられる。5個のパンチ41は、各パンチホルダ31の前側に交換可能に取り付けられ、それぞれダイス44に対向配置される。各パンチ41の前側に、所定の加工型が形成されている。各パンチ41は、ラム3とともに往復動作する。
【0013】
圧造機1は、図略の切断機構部を備える。切断機構部は、環形の可動カッタ、線材送り機構、およびプッシャ機構を有する。可動カッタは、線材送り機構によって環形の内部に挿入された長尺線材を切断し、所定寸法の円柱状のワークを作成する。プッシャ機構は、可動カッタからワークをプッシュアウトする。線材およびワークの材質として、アルミや鉄、各種の合金などを例示できる。
【0014】
ワーク搬送部49は、ダイスホルダ21の上方からダイス44の前方にかけて配設される。ワーク搬送部49は、トランスファ装置と呼称されることもある。ワーク搬送部49は、ワークを把持する6対のフィンガ対を有する。最上流の第1のフィンガ対は、切断機構部でワークを把持して、第1圧造工程まで搬送する。第2~第5のフィンガ対は、上流側の圧造工程でワークを把持して、下流側の圧造工程まで搬送する。最下流の第6のフィンガ対は、第5圧造工程でワークを把持して、図略の搬出部まで搬送する。
【0015】
ラム3を往復駆動するために駆動部9が設けられる。駆動部9は、主駆動源91と各種の伝達機構およびカム機構などで構成される。主駆動源91は、例えば、三相交流電源で動作する誘導モータまたは同期モータとすることができる。駆動部9は、ワーク搬送部49および切断機構部を併せて駆動する。主駆動源91の駆動力は、フライホイール92、ディスクブレーキ93、および減速機構94を介して、ラム3を駆動するクランク軸95に入力される。さらに、クランク軸95から分岐歯車対96を介してサイド軸97へと、駆動力が分岐伝達される。
【0016】
サイド軸97は、駆動力を上方に分岐伝達する。上方に分岐された駆動力は、トランスファカム98を回転駆動する。トランスファカム98は、ワーク搬送部49を駆動する。また、サイド軸97からトランスファドライブ99を経由した先に、6個のオープンクローズカム9Aが回転駆動されるように連結されている。オープンクローズカム9Aは、幅方向に等間隔で配置されている。オープンクローズカム9Aは、それぞれフィンガ対を開閉駆動する。
【0017】
さらに、サイド軸97には、カッタカム9Bが設けられるとともに、プッシャカム9C、フィードカム9D、線材送り装置9E、および5個のキックアウトカム9Fが連結されている。カッタカム9B、プッシャカム9C、フィードカム9D、および線材送り装置9Eは、切断機構部を駆動する。キックアウトカム9Fは、幅方向に等間隔で配置されており、第1~第5圧造工程の位置にそれぞれ対応する。キックアウトカム9Fは、後述するキックアウトピン5を駆動する。
【0018】
次に、圧造工程のダイス44側に作用部材6および複数の液圧駆動源72を備えた構成の詳細について説明する。図2は、実施形態の圧造機1のひとつの圧造工程のダイス44側の構成を示す側面断面図である。ダイス44の前側に対応する図2の左側を前側とし、図2の右側を後側とする。図3図2中のA方向矢視図、図4図2中のB方向矢視図、図5図2中のC方向矢視図である。図3図4、および図5には、2工程分が示されている。
【0019】
図2に示されるように、圧造工程のダイス44側の構成は、ダイス44およびダイスホルダ21に加え、キックアウトピン5、作用部材6、作用部材駆動部7、および作動液制御部8を含む。図2において、キックアウトピン5および作用部材6は、後側の後退位置に位置している。なお、第1~第5圧造工程のそれぞれは、図2に示された構成である必要はない。つまり、いくつかの圧造工程は、作用部材6、作用部材駆動部7、および作動液制御部8を含まない構成であってもよい。
【0020】
ダイスホルダ21は、ホルダ部材211、バックプレート212、およびダイスフレーム213が前側から後側へと連結されて構成される。これら3部材は、前後方向に延びる円柱状の内部空間を有する。そして、ホルダ部材211の内部空間に、ダイス44が保持される。本実施形態において、ダイス44の形状やワークWの形状は、様々に変更可能であるので、具体的な形状の図示および説明は省略する。ダイスフレーム213の内側の前部に、円筒状の前側規制部材214が付設される。
【0021】
キックアウトピン5は、圧造加工されたワークWをダイス44から突き出す突き出し動作を行う。キックアウトピン5は、ダイスホルダ21の中心に配置されて、前後方向に延在する。キックアウトピン5は、やや後側寄りに大径の鍔部52を有するとともに、数箇所で直径のサイズが変化する段差付き円柱状に形成されている。キックアウトピン5の先端51は、ダイス44の後部に入り込んでいる。キックアウトピン5の後端53は、キックアウトカム9Fから駆動される。
【0022】
パンチ41がダイス44に接近して圧造加工が進捗する間、キックアウトピン5は、図2に示された後退位置を維持する。圧造加工が終了してパンチ41が遠ざかるにつれて、キックアウトピン5は、キックアウトカム9Fによって前進位置まで駆動され、ワークWをダイス44の前側まで突き出す。この後、キックアウトピン5は、キックアウトカム9Fおよび後述する付勢バネ54の作用により後退位置に戻される。
【0023】
作用部材6は、キックアウトピン5の外周側に配設される。作用部材6は、円筒状の作用ピン61および円筒状の駆動ピン65が前後に並んで構成される。作用ピン61の先端は、ダイス44の可動部分またはワークWに当接する。作用ピン61の後部寄りに、拡径された鍔部62が設けられる。鍔部62は、図2に示される後退位置と、ダイスホルダ21の前側規制部材214に当接する前進位置との間で、ストローク長SLだけ動作する。したがって、作用部材6の全体も、ストローク長SLだけ前後に動作する。
【0024】
また、作用ピン61の後端と、キックアウトピン5の鍔部52の間に、コイル形状の付勢バネ54が挿入される。付勢バネ54は、キックアウトピン5を後側に向けて付勢している。付勢バネ54の外周側に、駆動ピン65が配設される。駆動ピン65の先端は、作用ピン61の鍔部62に結合される。駆動ピン65の後端は、後述する結合プレート78に結合される。
【0025】
本実施形態において、作用部材6は、ダイス44の可動部分を介して、または直接的にワークWに背圧を付与する。これに限定されず、作用部材6は、ワークWの方向を転換してもよいし、突き出されたワークWを支持して落下を防止してもよいし、複数に分割されたダイス44を操作してもよい。
【0026】
作用部材駆動部7は、ダイスホルダ21のダイスフレーム213の後側に配置される。作用部材駆動部7は、共通の枠部71、2個の液圧駆動源72、2組の前側液路75および後側液路76、液源容器77、ならびに結合プレート78で構成される。ここで、1個の液圧駆動源72では所望する背圧の大きさが得られないので、2個の液圧駆動源72が用いられる。枠部71は、中空の枠形状の部材であり、ダイスフレーム213の後側に接して配置される。
【0027】
2個の液圧駆動源72は、枠部71の後側に設けられる。かつ、2個の液圧駆動源72は、作用部材6から見て上下対称の位置に離隔して配置される。2個の液圧駆動源72の間に、円筒形の首下調整ねじ55が配置される。キックアウトピン5の後部は、首下調整ねじ55の内部に収容される。キックアウトピン5は、鍔部52が首下調整ねじ55に当接することによって後端位置が定められる。
【0028】
それぞれの液圧駆動源72は、シリンダ73およびピストン74を有する。シリンダ73は、前側に開口する有底円筒状に形成されている。ピストン74は、シリンダ73の内部に配設され、前側に突出している。ピストン74は、前側の小径部および後側の大径部からなる棒状の部材である。大径部の外周には、液密用の溝およびOリング(符号略)が設けられる。これにより、シリンダ73とピストン74の間の液密構造が構成される。
【0029】
ピストン74の小径部の外面とシリンダ73の内面で区画された空間は、前側液室731となっている。ピストン74の大径部の後面とシリンダ73の内底面で区画された空間は、後側液室732となっている。さらに、シリンダ73の側面を貫いて前側液室731に連通する前側連通口733が設けられる。同様に、シリンダ73の側面を貫いて後側液室732に連通する後側連通口734が設けられる。
【0030】
前側連通口733は、前側液路75および液路操作部81を経由して、液源容器77に連通される。後側連通口734は、後側液路76および液路操作部81を経由して、液源容器77に連通される。2個の液圧駆動源72の前側液路75および後側液路76、換言すると4つの液路は、互いに等長かつ等断面積とされている。これにより、2個の液圧駆動源72が同期して動作するときの動作特性が良く一致する。前側液路75および後側液路76には、樹脂製チューブや金属製パイプなどが用いられる。また、液圧駆動源72に用いる作動液として作動油を例示でき、これに限定されない。
【0031】
図2において、前側液室731が最大容積で、後側液室732が最小容積となっている。このとき、ピストン74は、後退位置に位置する。作動液制御部8からの制御により、前側液室731から作動液が流出し、後側液室732に作動液が流入する。すると、ピストン74は、作動液の流入出量に対応する移動量だけ前進動作する。逆に、後側液室732から作動液が流出し、前側液室731に作動液が流入すると、ピストン74は、後退動作する。
【0032】
結合プレート78は、図2および図5に示されるように、ボルト781を用いて2個のピストン74の前側に結合された部材である。結合プレート78は、上下に長く形成されている。結合プレート78の中央に設けられた孔に、首下調整ねじ55が遊嵌している。結合プレート78の前側に、作用部材6を構成する駆動ピン65の後端が結合される。したがって、2個のピストン74、結合プレート78、および作用部材6は、一体的に前後に動作する。
【0033】
図2において、結合プレート78は、後退位置に位置している。結合プレート78および作用部材6の後退位置は、作動液制御部8からの位置制御により、ストローク長SLの範囲内で任意に設定される。結合プレート78は、2個のピストン74が出力する荷重を加算して、作用部材6を前進させたり後退させたりする。これにより、作用部材6は、後退位置SRから前進位置SF(図6参照)までの間で動作するとともに、ワークWに背圧を付与する。
【0034】
液圧駆動源72は、主駆動源91から独立して動作可能な副駆動源である。そして、2個の液圧駆動源72は、作動液制御部8からの制御にしたがい互いに同期して動作し、共同して結合プレート78を動作させる。液圧駆動源72は、大形品である必要はなく、従来品の圧造機の工程間距離の範囲内に設けることができる。したがって、2個の液圧駆動源72を上下に配置することにより、従来の工程間距離を拡げなくて済む。
【0035】
なお、仮に片方の液圧駆動源72で作動液の流入出が先行した場合、結合プレート78に出力される荷重が瞬間的に片方だけとなる。このとき、作用部材6は、動作しないか、または動作できても低速動作となる。すると、短時間のうちに他方の液圧駆動源72における作動液の流入出が追いついて、両方の液圧駆動源72から結合プレート78に荷重が出力されるようになる。この後、2個の液圧駆動源72は、同期して動作する。したがって、2個の液圧駆動源72から出力される荷重が加算され、作用部材6は、大きな荷重を発揮できる。
【0036】
結合プレート78の動作位置を検出する目的で、プレート位置検出部85が設けられる。プレート位置検出部85は、エンコーダ86およびリニアゲージ87で構成される。リニアゲージ87は、結合プレート78の上部に設けられ、結合プレート78とともに前後に動作する。リニアゲージ87には、前後方向に所定ピッチで刻まれた目盛りが設けられている。エンコーダ86は、枠部71に固定取り付けされて、リニアゲージ87に対向配置される。エンコーダ86は、リニアゲージ87の目盛りを読み取ってコード化し、作動液制御部8に出力する。プレート位置検出部85として、例えば磁気検出方式のセンサを用いることができる。
【0037】
作動液制御部8は、液路操作部81および制御実行部82で構成される。液路操作部81は、図略のポンプや弁類の組み合わせによって構成され、作動液の流れを操作する。制御実行部82は、コンピュータ装置を用いて構成される。制御実行部82は、プレート位置検出部85のエンコーダ86の出力を受け取るとともに、主駆動源91(パンチ41)の動作状況を受け取る。制御実行部82は、受け取った情報に基づいて、液路操作部81を制御する。
【0038】
次に、実施形態の圧造機1の動作事例について、図6を参考にして説明する。図6は、実施形態の圧造機1の動作事例を説明するタイムチャートの図である。図6の横軸は、共通の時間軸tである。3つのグラフは、上から順番にパンチ41のストローク特性、キックアウトピン5の動作特性、および作用部材6の動作特性を示している。図6には、パンチ41が後死点PRから前死点PFまで動作して後死点PRまで戻る1周期の動作が描かれている。
【0039】
図6の時刻t0において、パンチ41は後死点PRに位置する。このとき、キックアウトピン5は、前進位置KFに位置する。同時に、作用部材6は、後退位置SRに位置する。パンチ41は、時刻t0以降の時間経過に伴い、正弦波状のストローク特性で動作する。すなわち、パンチ41は、時刻t0以降に前進することにより、当該の圧造工程に搬入されたワークWを打圧する。パンチ41は、時刻t6に前死点PFに到達して、圧造加工を終了する。その後、パンチ41は、後退して、時刻t9に後死点PRに戻る。
【0040】
キックアウトピン5は、時刻t0以降に後退動作し、時刻t6以前の時刻t4に後退位置KRに戻る。したがって、キックアウトピン5は、パンチ41の圧造加工の動作を阻害しない。また、キックアウトピン5は、時刻t6以降の時刻t7に前進し始めて、圧造加工が終了したワークWの突き出し動作を開始する。キックアウトピン5は、時刻t8に前進位置KFに到達して、突き出し動作を終了する。この後、ワークWは、ワーク搬送部49によって当該の圧造工程から搬出される。
【0041】
また、作用部材6は、時刻t0以降の時刻t1から時刻t2までの間に、後退位置SRから前進位置SFまで前進動作してダイス44の可動部分またはワークWに当接する。作用部材6は、時刻t2から時刻t3までの間、前進位置SFを維持して、大きな背圧をワークWに付与する。また、作用部材6は、時刻t3から時刻t5までの間(t3<t4<t5)、後退動作しながらワークWに背圧を付与する。このとき、背圧の大きさが可変に調整され、ワークWの塑性変形が良好となるように制御される。作用部材6は、時刻t6以前の時刻t5に、後退位置SRまで戻る。
【0042】
以上説明したように、作用部材6は、キックアウトピン5の突き出し動作から独立した動作タイミング、動作ストローク長、および動作荷重で動作することができる。また、制御実行部82の制御ロジックを変更するだけで、作用部材6の動作特性を自在に変更することができる。一方、キックアウトピン5の動作特性の変更には、キックアウトカム9Fの新規製作および交換作業を要する。したがって、作用部材6の動作特性の変更は、キックアウトピン5と比較して容易である。
【0043】
実施形態の圧造機1において、2個の液圧駆動源72は、共同して作用部材6を動作させ、作用部材6は、ワークに背圧を付与する。これによれば、2個の液圧駆動源72から出力される荷重が加算されるため、作用部材6は、大きな荷重を発揮できる。また、2個の液圧駆動源72の各々は、大形品である必要は無い。したがって、2個の液圧駆動源72を作用部材6の上下に配置することにより、多工程の圧造機1の工程間距離を従来構成と同等にして、大形化を抑制できる。
【0044】
なお、同期して動作する3個または4個以上の液圧駆動源72を用いて、ひとつの作用部材6を駆動するようにしてもよい。この場合、3個の液圧駆動源72を上下方向に並べて配置したり、作用部材6の左右に配置したりできる。また、液圧駆動源72に代え、モータなどを副駆動源に用いてもよい。本発明は、その他にも様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:圧造機 2:フレーム 21:ダイスホルダ 3:ラム
41:パンチ 44:ダイス 49:ワーク搬送部
5:キックアウトピン 54:付勢バネ
6:作用部材 61:作用ピン 65:駆動ピン
7:作用部材駆動部 71:枠部 72:液圧駆動源(副駆動源)
73:シリンダ 74:ピストン 75:前側液路 76:後側液路
77:液源容器 78:結合プレート
8:作動液制御部 81:液路操作部 82:制御実行部
85:プレート位置検出部 9:駆動部 91:主駆動源
W:ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6