(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】セラミック複合体シート及びコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
H01G4/32 511H
H01G4/32 511L
(21)【出願番号】P 2019506042
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2018009710
(87)【国際公開番号】W WO2018168845
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2017048301
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 将之
(72)【発明者】
【氏名】酒谷 卓
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-017689(JP,A)
【文献】特開昭50-061435(JP,A)
【文献】特表2010-539285(JP,A)
【文献】特開昭49-103154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、
前記金属箔上に積層され、有機樹脂と誘電性セラミック粉末とを含む誘電体層と、
前記誘電体層上に積層され
、平板状の粒子形状を有する導電性材料が含まれる導電性層と、
を備
え、
前記平板状は、短辺長が0.5以上10μm以下、長辺長が0.5以上10μm以下であり、厚さが0.5以上2μm以下であること、
を特徴とするセラミック複合体シート。
【請求項2】
前記導電性層には、更に球形粒子形状を有する導電性材料が含まれること、
を特徴とする請求項
1記載のセラミック複合体シート。
【請求項3】
前記誘電体層中の前記誘電性セラミック粉末の含有量は、
前記有機樹脂の含有量に対して70wt%以上97.5wt%以下であること、
を特徴とする請求項
1又は2記載のセラミック複合体シート。
【請求項4】
前記有機樹脂は、ポリアミドイミド樹脂であり、
前記誘電性セラミック粉末は、チタン酸バリウム粉末であること、
を特徴とする請求項
1乃至3の何れかに記載のセラミック複合体シート。
【請求項5】
前記導電性層は、平板状の粒子形状を有する黒鉛と球形粒子形状を有するカーボンブラックを含むこと、
を特徴とする
請求項2記載のセラミック複合体シート。
【請求項6】
請求項
1乃至5の何れかに記載の複数のセラミック複合体シートを備えること、
を特徴とするコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機樹脂と誘電性セラミック粉末とを含む誘電体層を金属箔に積層したセラミック複合体シートとこれを備えるコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックコンデンサは、チタン酸バリウム粒子等の誘電性セラミック粉末を主成分とした誘電体層とニッケル等の金属からなる内部電極層とを積層して成る。セラミックコンデンサは、誘電率が高く、また耐熱性も高い。しかしながら、セラミックコンデンサは、誘電体層の靭性が低く、電歪変形して壊れ易い。
【0003】
金属化フィルムコンデンサは、ポリアミドイミド樹脂等の有機樹脂から成る誘電体フィルムの表面にアルミニウム等の金属を蒸着して成る。金属化フィルムコンデンサは、誘電体層の電位傾度が高く、やわらかくて靭性が高い。しかしながら、金属化フィルムコンデンサは、容量密度が低く、耐熱性が低い。
【0004】
セラミックコンデンサと金属化フィルムコンデンサの短所を補い合い、互いの長所を引き出すべく、誘電性セラミック粉末と有機樹脂とを含む誘電体層を備えたシート状セラミック複合体コンデンサが開発されている。例えば、誘電性セラミック粉末の分散液と有機樹脂の分散液を混合し、アルミニウム箔等の金属箔に塗布し、熱処理によって溶媒を乾燥させることで、誘電性セラミック粉末と有機樹脂を含む誘電体層を金属箔上に形成し、誘電体層に更に金属箔を重ね合わせて熱及び圧力を加えて密着することで、このシート状セラミック複合体コンデンサは製造される。
【0005】
シート状セラミック複合体コンデンサには、誘電体層と金属箔とが剥離し易いという問題があった。その理由は、誘電体層の表面に十分な量の有機樹脂が存在せず、且つ単に有機樹脂の熱可塑性を利用した熱圧着では密着力が不十分であったからである。この問題に対し、一方の金属箔に誘電体層を形成し、他方の金属箔に有機樹脂のスラリーを塗布して有機樹脂膜を形成し、誘電体層と有機樹脂膜を向かい合わせて熱及び圧力を加える方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。スラリー状の有機樹脂膜が介在することで、有機樹脂が金属箔に密着して有機樹脂の内部に空気層がなくなり、また有機樹脂同士を熱圧着するため、密着力が大きくなるものである。
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コンデンサは、定格電圧を超える異常電圧が印加されるような過酷な条件下であっても、ショートを起こさぬよう、高い耐電圧を有することが望ましい。そのため、誘電体層の耐電圧を高めるべく、誘電体層に含まれる粒子はある程度の大きさ以上となることが望ましい。誘電体層と金属箔とを密着するためのバインダとして有機樹脂膜を選択した場合、この有機樹脂膜は、コンデンサにおいて誘電体層として機能することになるため、耐電圧向上を望めば、有機樹脂膜に含有させる粒子も誘電体層としてある程度の大きさ以上に規制されることになる。
【0008】
即ち十分な耐電圧を望めば、有機樹脂膜の表面は、有機樹脂膜内の大きな粒子の存在故、高度に滑らかにすることができず、有機樹脂膜と金属箔との密着性が低下してしまう。そのため、一方の金属箔に誘電体層を形成し、他方の金属箔に有機樹脂のスラリーを塗布して有機樹脂膜を形成し、誘電体層と有機樹脂膜を向かい合わせて熱及び圧力を加える方法では、耐電圧を向上させつつ、有機樹脂膜と金属箔との密着力を十分に高めることはできず、金属箔の剥離を確実に防止できなかった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するため、耐電圧を向上させつつ、金属箔上に誘電体層を積層したセラミック複合体シート同士の剥離をより確実に防止できるセラミック複合体シート、及び当該セラミック複合体シートを備えるコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るセラミック複合体シートは、金属箔と、前記金属箔上に積層され、有機樹脂と誘電性セラミック粉末とを含む誘電体層と、前記誘電体層上に積層される導電性層と、を備えること、を特徴とする。導電性層は、耐電圧性を必要とする有機樹脂膜のような規制を受けず、金属箔との密着性に重きを置いて設計でき、金属箔の剥離をより確実に防止できる。
【0011】
例えば、前記導電性層には、平板状の粒子形状を有する導電性材料が含まれるようにしてもよい。平板状の導電性材料は、金属箔と面接触するため、金属箔との接触面積が球形粒子と比べて大きく、この平板状の導電性材料を含む導電性層は金属箔と強く密着する。
【0012】
また、前記導電性層には、更に球形粒子形状を有する導電性材料が含まれるようにしてもよい。金属箔との密着性を維持しつつ、球形粒子形状を有する導電性材料を介することで、平板状の粒子形状を有する導電性材料同士の間に介在し、導電性が高まる。
【0013】
前記誘電体層中の前記誘電性セラミック粉末の含有量は、前記有機樹脂の含有量に対して70wt%以上97.5wt%以下であるようにしてもよい。この下限を下回ると、空隙を多く含む誘電体層となって耐電圧が低下する。一方、この上限を上回ると、ひび割れや空隙を多く含む誘電体層となって耐電圧が低下するどころか、最悪の場合には誘電体層として利用し難くなる。
【0014】
前記有機樹脂は、ポリアミドイミド樹脂であり、前記誘電性セラミック粉末は、チタン酸バリウム粉末であるようにしてもよい。また、前記導電性層は、黒鉛とカーボンブラックを含むようにしてもよい。
【0015】
このセラミック複合体シートを備えるコンデンサも本発明の一態様であり、本発明のコンデンサは、この複数のセラミック複合体シートを備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極として扱われる導電性層を介して積層できるセラミック複合体シートであるので、セラミック複合体シートの密着力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態のセラミック複合体シートを示し、(a)は上面図であり、(b)は断面図である。
【
図2】本実施形態のセラミック複合体シートを備えるコンデンサの断面模式図である。
【
図3】第1の例の巻回型コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図4】第2の例の巻回型コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図5】第1の例のチップ型コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図6】第2の例のチップ型コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図8】各種の誘電体層の比誘電率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るセラミック複合体シート及びこれを備える各種コンデンサの実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(セラミック複合体シート)
図1に示すように、セラミック複合体シート1は、金属箔2と誘電体層3と導電性層4を積層して成る。金属箔2の片面に誘電体層3が形成され、誘電体層3に導電性層4が形成される。このセラミック複合体シート1の導電性層4と、他のセラミック複合体シート1の金属箔2の面、若しくは誘電体層3や導電性層4を形成しない金属箔2とを向かい合わせにして重ね合わせ、巻回型や積層チップ型等のコンデンサが作製される。
【0020】
金属箔2は、例えば5μm以上50μm以下の厚みを有する。この金属箔2は、導電材料を主たる材質とする。導電性材料は、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、又はクロム(Cr)等の貴金属及び卑金属から選ばれる一種、若しくはこれらの合金である。金属箔2の表面には、アンカー効果による誘電体層3との密着性向上のため、エッチング等の粗面化処理が施されることが望ましい。
【0021】
誘電体層3は、例えば10以上30μm以下の厚みを有する。この誘電体層3は、有機樹脂と誘電性セラミック粉末を主たる成分として分散させて含有する。誘電体層3に誘電性セラミック粉末を含有させるので、セラミック複合体シート1の誘電率を高めることができる。また、誘電体層3に有機樹脂を含有しているので、セラミック複合体シート1の誘電傾度を高めることができ、靱性も高めることができる。有機樹脂と誘電性セラミック粉体は、コンデンサの耐電圧向上の観点から、平均粒径0.1μm超が望ましい。
【0022】
有機樹脂は、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン等から選ばれる一種又は二種以上の混合である。
【0023】
誘電性セラミック粉末は、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミックのほか、Baの一部をCaやSrで置換するとともにTiの一部をZrで置換した(Ba,Ca,Sr)(Ti,Zr)O3系セラミック等から選ばれる一種又は二種以上の混合であり、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(PCZT)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)系、酸化チタン(TiO2)系が挙げられる。
【0024】
この誘電体層3の製造工程を例示する。例えばチタン酸バリウムに分散溶媒としてN-メチル-2-ポロリドン(NMP)を重量部で1:1の割合で混合した混合液を調製する。また、ポリアミドイミドに分散溶媒としてNMPを重量部1:4の割合でNMPを多く混合した混合液を調製する。両混合液の分散溶媒は、誘電性セラミック粉末の凝集抑制を考慮して選択でき、同種のものが望ましい。この両混合液を重量部1:0.1以上1.0以下の割合で混合する。
【0025】
そして、このチタン酸バリウムとポリアミドイミドの混合液を、粗面化処理を施したアルミニウム箔等の金属箔2に10μm以上30μm以下の厚さで塗布する。但し、金属箔2の一辺に帯状の未塗工部分2aを残しておく。塗布の方法としては、グラビア塗工、ダイ塗工、スクリーン印刷等の各種公知の手法を用いることができる。塗工終了の後、摂氏100度以上120度以下で熱処理を行い、溶媒を乾燥させる。なお、溶媒を乾燥させた後、プレス処理を施し、誘電体層3の密度を上げてもよい。
【0026】
ここで、誘電体層3中の誘電性セラミック粉末の含有量は、有機樹脂の含有量に対して70wt%以上97.5wt%以下であることが望ましい。70wt%未満となると、有機樹脂に誘電性セラミック粉末を含ませて誘電率を高める効果が低くなる。また、誘電体層3は空隙を多く含み、この空隙に起因して耐電圧が低下する。そのため、誘電性セラミック粉末の含有量を、有機樹脂の含有量に対して70wt%未満の誘電体層3を作製しようとすると、空隙を除去する工程を追加するか、空隙がない部分のみを用いる必要が生じ、歩留まりが悪化する。一方、97.5wt%超となると、誘電体層3が多数のひび割れや空隙が生じる所謂ボロボロな状態となり、耐電圧が低下するどころか、最悪の場合には塗工すらできず誘電体層3として利用し難くなる。
【0027】
推測であり、このメカニズムに限定されるものではないが、誘電性セラミック粉末の含有量に空隙やひび割れの観点で下限及び上限が存在することとなったのは次の理由によるものと考えられる。
【0028】
まず有機樹脂は両混合液の混合過程で吸着剤及び結合剤となる。即ち、有機樹脂は、誘電性セラミック粉末の粒子表面を覆い、溶媒との親和性を高める。また、誘電性セラミック粉末の粒子表面を覆った有機樹脂は、有機樹脂同士を媒介として、誘電性セラミック粉末同士を結合させる。また、両混合液の混合過程において、誘電性セラミック粉末の量が少ないと、換言すると有機樹脂の量が多いと、結合剤としての機能により、誘電性セラミック粉末の粒子間に多くの有機樹脂が存在し、混合過程で有機樹脂が泡立ってしまった。そのため、混合液を乾燥させた後には、空隙が多く存在する誘電体層3が作製されてしまったものと考えられる。
【0029】
一方、両混合液の混合過程において、誘電性セラミック粉末の量が多いと、換言すると有機樹脂の量が少ないと、有機樹脂は吸着剤としての機能は発揮して誘電性セラミック粉末の粒子表面を覆うが、有機樹脂は結合剤としての機能を十分に発揮することができず、そのため、混合液を乾燥させた後の誘電体層3はボロボロになり、ひび割れや空隙が多く存在することとなってしまったと考えられる。
【0030】
導電性層4は、例えば0.5μm以上5μm以下の厚みを有する。この導電性層4は、導電性材料を主たる成分とする。導電性材料としては、天然又は人造の黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、ケッチェンブラック、アセチレンブラックから選ばれる一種又は二種以上の混合である。導電性材料の粒径は、平均15μm以下が望ましく、また導電性層4には平板状の粒子形状の導電性材料が含まれていることが望ましい。平板状の粒子形状の導電性材料は、平板面と金属箔2の表面とが平行した状態で、導電性層4の表面に配置される。したがって、平板状の粒子形状の導電性材料は、金属層2と面接触するので、金属箔2との接触面積が広くなり、大きな密着力を得られる。更に望ましくは、平板状の粒子形状の導電性材料に加えて、球形粒子形状の導電性材料が含まれる。平板状の粒子形状の導電性材料間に球形粒子形状の導電性材料が介在し、平板状の粒子形状の導電性材料同士の導電性が高まる。
【0031】
尚、平板とは、平面状の平板面を有しており、この平板面の短辺長が0.5以上10μm以下、長辺長が0.5以上10μm以下であり、厚さが0.5以上2μm以下の形状をいい、球形には、真球、楕円体、多面体、又はこれらが重複して接続し合って形作られた形状が含まれる。
【0032】
この導電性層4は、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等のエラストマーを結合剤として導電性材料を層内に固定化する。例えば、純水を分散溶媒として平板状の黒鉛と球形状のカーボンブラックを重量部10:1の割合で混合し、スチレン・ブタジエンゴムを結合剤として1の割合で添加したスラリーを作製し、誘電体層3上に0.5以上5μm以下の厚さで塗布する。塗工を終了すると、熱処理を行い、溶媒を乾燥させる。
【0033】
(コンデンサ)
以上のセラミック複合体シート1を、
図2に示すように、導電性層4と金属箔2とが接触するように向き合わせて複数枚を積み重ね、セラミック複合体シート1の積層体に、熱及び圧力をかけることで、導電性層4と金属箔2とが密着し、コンデンサが作製される。
【0034】
(第1の巻回型コンデンサ例)
例えば、
図3の(a)に示すように、帯状に長い一対のセラミック複合体シート1を、長手方向及び短手方向を揃え、但し未塗工部分2aの向きを逆にして重ね合わせる。即ち、誘電体層3及び導電性層4を塗工していない未塗工部分2aが重ならないようにする。また、一方のセラミック複合体シート1の導電性層4に他方のセラミック複合体シート1の金属箔2が載るように重ね合わせる。
【0035】
図3の(b)に示すように、積層した一対のセラミック複合体シート1を誘電体層3側を巻き込むように巻回する。これにより、一対のセラミック複合体シート1が巻回された円筒状のコンデンサ素子61が形成される。
【0036】
図3の(c)に示すように、この円筒体の両端部に露出した未塗工部分2aの端面にメタリコンによって電極金属を蒸着させ、一方の素子端面には正極側電極部5-1、他方の素子端面には負極側電極部5-2を形成する。このように各素子端面は異なる電極で構成されている。この場合、電極金属としては、半田付けなど、接続の容易性から半田付け可能な金属を用いればよい。この半田付け可能な金属にはたとえば、亜鉛、錫合金などの金属を用いればよい。その他、半田付け可能な金属にはたとえば、アルミニウムと亜鉛の合金、アルミニウムと錫合金、亜鉛と錫合金などを用いてもよい。
【0037】
電極部5-1、5-2は、端子板67に設けられた正極側外部端子64-1、負極側外部端子64-2とリード線63により接続されている。すなわち、正極側電極部5-1と正極側外部端子64-1、負極側電極部5-2と負極側外部端子64-2は、リード線63を用いて半田により接続されている。このとき、
図3の(d)に示すように、負極側外部電極64-2に接続したリード線63は、コンデンサ素子61の中空部を通って、負極側外部端子64-2が配置される面に引き出され、負極側外部端子64-2と接続される。
【0038】
図3の(d)に示すように、リード線63を正極側外部端子64-1、負極側外部端子64-2と接続した後、コンデンサ素子61をケース65に収納し、ケース65内に絶縁性樹脂66を充填して硬化処理を施して巻回型コンデンサが作製される。
【0039】
(第2の巻回型コンデンサ例)
図4の(a)に示すように、帯状に長い一対のセラミック複合体シート1の未塗工部分2aを所定の間隔で切り除いて、長手方向にタブ2bを形成する。この一対のセラミック複合体シート1を長手方向及び短手方向を揃え、またタブ2bの方向を揃えて重ね合わせる。また、一方のセラミック複合体シート1の導電性層4に他方のセラミック複合体シート1の金属箔2が載るように重ね合わせる。
【0040】
図4の(b)に示すように、積層した一対のセラミック複合体シート1を導電性層4側を巻き込むように巻回し、円筒状のコンデンサ素子を形成する。このコンデンサ素子の一方端部には、一方のセラミック複合体シート1のタブ2b-1によって、コンデンサ素子の端面から突出した正極側電極部5-1が作られ、また他方のセラミック複合体シート1のタブ2b-2によって、コンデンサ素子の端面から突出した負極側電極部5-2が作られ、電極部5-1、5-2は互いに対向するように形成する。
【0041】
このコンデンサ素子の電極部5-1、5-2と、封口板に設けられた外部端子と接続した後、ケースに収容し、封止樹脂を充填して硬化処理を施して、巻回型コンデンサが作製される。
【0042】
(第1のチップ型コンデンサ例)
図5の(a)に示すように、未塗工部分2aが交互に逆に向き、誘電体層3と導電性層4が積み重ねるように、矩形状のセラミック複合体シート1を複数枚重ね合わせる。
図5の(b)に示すように、導電性層4と金属箔2とが空気層を挟むことなく密着し、上下のセラミック複合体シート1同士が強固に積層される。
【0043】
図5の(c)に示すように、一方に突き出た未塗工部分2aが露出するように積層体を樹脂でモールドする。積層体の未塗工部分2aの露出面に、銅などの金属を塗布し、外部電極68a、68bを形成する。外部電極68a,68bは、セラミック複合体シート1の積層体の対向する2つ面に形成されたことになる。これにより、複数枚のセラミック複合体シート1が積層された積層チップ型コンデンサが作成される。
【0044】
(第2のチップ型コンデンサ例)
図6の(a)及び(b)に示すように、セラミック複合体シート1の導電性層4側にアルミニウム箔等の金属箔6を重ね合わせる。金属箔6は、セラミック複合体シート1のように誘電体層3や導電性層4は形成されていない。セラミック複合体シート1の未塗工部分2aとは反対側に金属箔6がはみ出るように、セラミック複合体シート1と金属箔6を重ね合わせる。そして、セラミック複合体シート1と金属箔6の積層体に熱及び圧力を加えると、導電性層4と金属箔6とが空気層を挟むことなく積層される。
【0045】
図6の(c)に示すように、一方に突き出た金属箔6の一端および未塗工部分2aが露出するように樹脂で積層体をモールドする。積層体の未塗工部分2aの露出面に、銅などの金属を塗布し、外部電極68a、68bを形成する。セラミック複合体シート1の積層体の対向する2つ面に形成されたことになる。これにより、一枚のセラミック複合体シート1と一枚の金属箔6とを接続して成るチップ型コンデンサが作成される。
【0046】
(作用効果)
以上のように、このセラミック複合体シート1は、金属箔2上に有機樹脂と誘電性セラミック粉末とを含む誘電体層3を積層し、誘電体層3上に導電性層4を積層するようにした。
【0047】
導電性層4は、コンデンサにおいて電極として扱われるため、導電性層4の含有粒子を誘電体層3のように耐電圧を考慮して大きく規制する必要がない。そのため、導電性層4と金属箔2、6との密着性を高めることができ、高い耐電圧と剥離抑制とを両立できる。
【0048】
特に、平板状の粒子形状を有する導電性材料が導電性層4に含まれるようにすればよい。平板状の導電性材料は金属箔2、6と面接触するため、金属箔2、6との接触面積が球形粒子と比べて大きく、この平板状の導電性材料を含む導電性層4は金属箔2、6と強く密着する。
【0049】
また、導電性層4には、更に球形粒子形状を有する導電性材料が含まれるようにすればよい。金属箔との密着性を維持しつつ、球形粒子形状を有する導電性材料を介することで、平板状の粒子形状を有する導電性材料同士の導電性が高まり、金属箔2、6と導電性層4との導電性が高まる。
【0050】
また、誘電体層に誘電性セラミック粉末を含有しているので、誘電率が高いコンデンサを作製することができる。さらに、誘電体層に有機樹脂を含有しているので、誘電傾度が高く、また、靱性が高いコンデンサを作製することができる。
【0051】
尚、本実施形態では、有機樹脂は、ポリアミドイミド樹脂であり、誘電性セラミック粉末は、チタン酸バリウム粉末であり、導電性層4は、黒鉛とカーボンブラックを含むようにしたが、これに限られない。
【0052】
また、本実施形態では、セラミック複合体シート1の導電性層4に他方のセラミック複合体シート1のアルミニウム箔2が載るように重ね合わせて一対のセラミック複合体シート1を作成したが、密着性をさらに高めるために、一対のセラミック複合体シート1を重ね合わせた状態で、熱及び圧力を加えて一体化させてもよく、セラミック複合体シート1同士の間に銀ペーストを介在させてもよい。
【0053】
また、誘電性セラミック粉末と有機樹脂の重量比率を変えた各種の誘電体層3を実際に作製し、誘電体層3の誘電率を計測するとともに、誘電体層3の状態を観察した。誘電体層3の作製に際し、誘電性セラミック粉末としてチタン酸バリウムを用い、チタン酸バリウムに分散溶媒としてN-メチル-2-ポロリドン(NMP)を重量部で1:1の割合で混合した混合液を調製した。また、有機樹脂としてポリアミドイミドを用い、ポリアミドイミドに分散溶媒としてNMPを重量部1:4の割合でNMPを多く混合した混合液を調製した。
【0054】
そして、この両混合液を次の重量比率となるように混合して、各種の混合液を得た。即ち、ポリアミドイミドに対してチタン酸バリウムが65wt%となる第1の混合液、ポリアミドイミドに対してチタン酸バリウムが70wt%となる第2の混合液、ポリアミドイミドに対してチタン酸バリウムが80wt%となる第3の混合液、ポリアミドイミドに対してチタン酸バリウムが90wt%となる第4の混合液、ポリアミドイミドに対してチタン酸バリウムが97.5wt%となる第5の混合液、及びポリアミドイミドに対してチタン酸バリウムが98.0wt%となる第6の混合液を得た。
【0055】
これら第1乃至第6の混合液を、アルミニウム箔にドクターブレード方法にて塗布し、摂氏90度で30分間熱処理を行って溶媒を乾燥させ、各誘電体層3を得て、状態を写真撮影するとともに、比誘電率を測定した。この結果を
図7及び
図8に示す。
図7は、第1及び第6の混合液で得られた誘電体層3を撮影した写真である。
図8は、各混合液で得られた誘電体層3の比誘電率を示すグラフである。
【0056】
図7(a)に示すように、ポリアミドイミドに対してチタン酸バリウムが65wt%となる第1の混合液を由来とする誘電体層3は、多くの空隙Vが存在している。尚、この第1の混合液の混合過程では泡立ちが見られた。
図7(b)に示すように、ポリアミドイミドに対してチタン酸バリウムが98.0wt%となる第6の混合液を由来とする誘電体層3は、ひび割れCが生じ、所謂ボロボロの状態であった。一方、ポリアミドイミドに対してチタン酸バリウムが70以上97.5wt%以下に収まる第2乃至第5の混合液を由来とする誘電体層3には空隙が見られなかった。
【0057】
この状態観察の結果より、誘電体層3中の誘電性セラミック粉末の含有量は、有機樹脂の含有量に対して70wt%以上97.5wt%以下とすることが望ましく、これにより更に高い耐電圧を得ることができる。
【0058】
また、
図8に示すように、比誘電率は、誘電体層3中の誘電性セラミック粉末の含有量が、有機樹脂の含有量に対して70wt%以上97.5wt%以下であれば、70wt%のときの比誘電率(ε
s)が平均34.5となり、80wt%のときの比誘電率が平均43.1となり、90wt%のときの比誘電率が平均52.2となり、97.5wt%のときの比誘電率が平均60.3となり、誘電性セラミック粉末の増加に比例して増加する。一方、この70wt%以上97.5wt%以下の範囲を逸脱すると、比誘電率は、急激に減少してしまう。
【0059】
この結果により、誘電体層3中の誘電性セラミック粉末の含有量は、有機樹脂の含有量に対して70wt%以上97.5wt%以下とすることが望ましく、これにより、より高容量のコンデンサが得られる。
【符号の説明】
【0060】
1 セラミック複合体シート
2 金属箔
2a 未塗工部分
2b タブ
3 誘電体層
4 導電性層
5-1 正極側電極部
5-2 負極側電極部
6 金属箔
61 コンデンサ素子
63 リード線
64-1 正極側外部端子
64-2 負極側外部端子
65 ケース
66 封止樹脂
67 端子板
68a 外部電極
68b 外部電極