(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】後側ドア用車両ラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 79/00 20140101AFI20221122BHJP
E05C 9/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
E05B79/00
E05C9/00 A
(21)【出願番号】P 2019152412
(22)【出願日】2019-08-22
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】松田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】高山 達也
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141361(JP,A)
【文献】特開平6-239137(JP,A)
【文献】特開2001-105861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 79/00-79/22,85/02
E05C 9/00-9/24
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(10)に対して前端側を前側ヒンジ(11A)で支持される前側ドア(11)に対して係脱可能で、前記車体(10)に対して後端側を後側ヒンジ(12A)で支持されると共に、金属インナーパネル(22)と前記金属インナーパネル(22)にクリップ留めされるトリム体(58)とを有する後側ドア(12)の車両ラッチ装置において;
前記車両ラッチ装置は、前記車体(10)の上部に設けられる上部ストライカ(13)と係合する上部ラッチユニット(14)と、前記車体(10)の下部に設けられる下部ストライカ(15)と係合する下部ラッチユニット(16)と、前記上部ラッチユニット(14)および前記下部ラッチユニット(16)に操作的に連結され開扉操作されると前記上部ラッチユニット(14)および前記下部ラッチユニット(16)をアンラッチさせるハンドルユニット(19)とを備え;
前記上部ラッチユニット(14)は、前記車体(10)の前後方向に伸びるラッチ軸(52A)に回転可能に枢支され前記上部ストライカ(13)と係合するラッチ(52)と、前記車体(10)の前後方向に伸びるラチェット軸(53A)に回転可能に枢支され前記ラッチ(52)と係合するラチェット(53)と、前記ラッチ軸(52A)および前記ラチェット軸(53A)の各前端側を支持するメインプレート(50)と、前記ラッチ軸(52A)および前記ラチェット軸(53A)の各後端側を支持するサブプレート(51)とを備え;
前記メインプレート(50)は、前記ラッチ軸(52A)および前記ラチェット軸(53A)の各前端側を支持する支持面(50A)から前方に屈曲して前記ラッチ(52)および前記ラチェット(53)より前側で前記金属インナーパネル(22)に締め具(54A)により固定される第1締結面(50B)を備え;
前記サブプレート(51)は、前記ラッチ軸(52A)および前記ラチェット軸(53A)の各後端側を支持する支持面(51A)から後方に屈曲して前記ラッチ(52)および前記ラチェット(53)より後側で前記金属インナーパネル(22)に締め具(54B)により固定される第2締結面(51B)と、前記支持面(51A)から前方に屈曲して前記ラッチ(52)および前記ラチェット(53)より前側で前記金属インナーパネル(22)に締め具(54C)により固定される第3締結面(51C)とを備え;
前記トリム体(58)は前記上部ラッチユニット(14)の一部を外部に露出させるラッチ開口部(58A)を備え;
前記サブプレート(51)の室内側面と前記トリム体(58)の室外側面とを面テープ(64)により切離可能に連結させた車両ラッチ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記サブプレート(51)は、前記第2締結面(51B)から後方に延在し前記面テープ(64)の一方側テープ(64A)が貼着される貼着面(51D)を備えた車両ラッチ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記トリム体(58)の室外側面には、前記面テープ(64)の他方側テープ(64B)が貼着される貼着面(65A)を設けた車両ラッチ装置。
【請求項4】
請求項3において、前記貼着面(65A)は前記トリム体(58)の室外側面に固定した中継台座(65)に形成した車両ラッチ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項において、前記面テープ(64)は頭部が膨出した無数のキノコ状ステムを備えた車両ラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後側ドア用車両ラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のサイドドアを、前側サイドドアと後側サイドドアとで観音開き構成としたものがある。この構成では、前側ドアは車体に対してその前端側を前側ヒンジで軸支させるのに対して、後側ドアは車体に対してその後端側を後側ヒンジで軸支させるとともに、閉扉状態では、前側ドアの後端側は、車体ではなく後側ドアの前側端に係合させる構成としている(特許文献1~6)。
【0003】
後側ドア用の車両ラッチ装置は、車体の上部ストライカと係脱する上部ラッチユニットと、車体の下部ストライカと係脱する下部ラッチユニットと、上部ラッチユニットに上部ワイヤーケーブル、下部ラッチユニットに下部ワイヤーケーブルを介して操作的に連結されるハンドルユニットとを有している。上部ラッチユニットは後側ドアの上部に、下部ラッチユニットは後側ドアの下部にそれぞれ配設され、ハンドルユニットは後側ドアの上下の略中間に配設され、ハンドルユニットのハンドルレバーの開扉操作で両ラッチユニットがアンラッチされるように構成されている。
【0004】
上部ラッチユニットは、特許文献6の
図2のように、後側ドアの金属インナーパネルと化粧面となるトリム体との間に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-308183号公報
【文献】特開2003-025846号公報
【文献】特開2002-225562号公報
【文献】特開2002-266524号公報
【文献】特開2005-240454号公報
【文献】WO/2016/088222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トリム体は、トリムクリップのような周知の止具により、金属インナーパネルにクリップ留められるが、トリム体の頭頂部近辺は、金属インナーパネルとの接合部分との関係でかなり複雑な湾曲形状を呈しており、加えて、上部ラッチユニットがトリム体の頭頂部近辺に配設されるため、上部ラッチユニットが邪魔物になって、トリム体の頭頂部近辺にトリムクリップを新設することが難しく、このため、トリム体の頭頂部を金属インナーパネルに容易な作業により所定の強さで固定することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって、本発明は、車体10に対して前端側を前側ヒンジ11Aで支持される前側ドア11に対して係脱可能で、前記車体10に対して後端側を後側ヒンジ12Aで支持されると共に、金属インナーパネル22と前記金属インナーパネル22にクリップ留めされるトリム体58とを有する後側ドア12の車両ラッチ装置において;前記車両ラッチ装置は、前記車体10の上部に設けられる上部ストライカ13と係合する上部ラッチユニット14と、前記車体10の下部に設けられる下部ストライカ15と係合する下部ラッチユニット16と、前記上部ラッチユニット14および前記下部ラッチユニット16に操作的に連結され開扉操作されると前記上部ラッチユニット14および前記下部ラッチユニット16をアンラッチさせるハンドルユニット19とを備え;前記上部ラッチユニット14は、前記車体10の前後方向に伸びるラッチ軸52Aに回転可能に枢支され前記上部ストライカ13と係合するラッチ52と、前記車体10の前後方向に伸びるラチェット軸53Aに回転可能に枢支され前記ラッチ52と係合するラチェット53と、前記ラッチ軸52Aおよび前記ラチェット軸53Aの各前端側を支持するメインプレート50と、前記ラッチ軸52Aおよび前記ラチェット軸53Aの各後端側を支持するサブプレート51とを備え;前記メインプレート50は、前記ラッチ軸52Aおよび前記ラチェット軸53Aの各前端側を支持する支持面50Aから前方に屈曲して前記ラッチ52および前記ラチェット53より前側で前記金属インナーパネル22に締め具54Aにより固定される第1締結面50Bを備え;前記サブプレート51は、前記ラッチ軸52Aおよび前記ラチェット軸53Aの各後端側を支持する支持面51Aから後方に屈曲して前記ラッチ52および前記ラチェット53より後側で前記金属インナーパネル22に締め具54Bにより固定される第2締結面51Bと、前記支持面51Aから前方に屈曲して前記ラッチ52および前記ラチェット53より前側で前記金属インナーパネル22に締め具54Cにより固定される第3締結面51Cとを備え;前記トリム体58は前記上部ラッチユニット14の一部を外部に露出させるラッチ開口部58Aを備え;前記サブプレート51の室内側面と前記トリム体58の室外側面とを面テープ64により切離可能に連結させた車両ラッチ装置としたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、従来、連結作業の邪魔物であった上部ラッチユニット14を、連結用の中継部材として使用するため、従来の課題をよく克服して、容易な作業で確実な連結を行うことができる。
請求項2に係る発明では、一方側テープ64Aが貼着される貼着面51Dを上部ラッチユニット14のサブプレート51に設けているため、上部ラッチユニット14を連結用中継部材として使用でき、その強度も充分である。
請求項3に係る発明では、トリム体58の室外側面に面テープ64の他方側テープ64Bを貼着すればよいので、作業性に優れる。
請求項4に係る発明では、トリム体58の室外側に貼着面65Aを備えた中継台座65を取り付けることで、トリム体58の複雑な湾曲形状の影響を排除でき、他方側テープ64Bを中継台座65を介して良好にトリム体58の室外側に貼着できる。
請求項5に係る発明では、面テープ64を頭部が膨出した無数のキノコ状ステムを植設した一対の面テープとしたため、接着強度に優れ、充分な接着力・連結力を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車体と前側ドアと後側ドアの室外側側面図である。
【
図2】前側ドアと後側ドアの閉扉状態と開扉状態を示した説明図である。
【
図3】後側ドアの金属インナーパネルの前側部分と本発明による後側ドア用車両ラッチ装置を示す室内側側面図である。
【
図4】車両ラッチ装置のハンドルユニットの拡大斜視図である。
【
図6】ハンドルユニットのブラケットの室内側を示す側面図である。
【
図7】ハンドルユニットのブラケットを車体前方から見た正面図である。
【
図8】ハンドルユニットのブラケットの平面図である。
【
図9】ハンドルユニットのブラケットの室内側から見た斜視図である。
【
図10】ハンドルユニットのブラケットの室外側から見た斜視図である。
【
図11】ハンドルユニットのブラケットを
図6のX-X線で切断した一部断面斜視図である。
【
図12】後側ドアの金属インナーパネルの3箇所の止着孔と1箇所の差込孔を示した斜視図である。
【
図13】後側ドアの金属インナーパネルにハンドルユニットのブラケットを単体で取り付けた状態を示す参考斜視図である。
【
図14】金属インナーパネルと上部ラッチユニットを示す室内側側面図である。
【
図15】金属インナーパネルと上部ラッチユニットを示す室外側側面図である。
【
図16】上部ラッチユニットのラッチ/ラチェット機構を示す正面図である。
【
図18】金属インナーパネルに上部ラッチユニットとトリム体を取付けた状態を示す室内側側面図である。
【
図21】枠体に支持された中綿部材の斜視図である。
【
図25】中継台座とサブプレートの室外側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例を説明する。
図1は、車体10と、前側ドア11と、後側ドア12の側面を示しており、後側ドア12には本発明による後側ドア用の車両ラッチ装置Rが設けられている。
【0011】
前側ドア11は車体10に対してその前端側を前側ヒンジ11Aで軸支させるのに対して、後側ドア12は車体10に対してその後端側を後側ヒンジ12Aで軸支させており、前側ドア11と後側ドア12とは
図2のように観音開きする構成になっている。
【0012】
車両ラッチ装置Rは、車体10の上部(ルーフ部)に固定される上部ストライカ13と係脱する上部ラッチユニット14と、車体10の下部(床部)に固定される下部ストライカ15と係脱する下部ラッチユニット16と、上部ラッチユニット14に上部ワイヤーケーブル17、下部ラッチユニット16に下部ワイヤーケーブル18を介して操作的に連結される後側ハンドルユニット19とを有している。ラッチユニット14、16は周知のラッチ/ラチェット機構を備えたものである。
【0013】
上部ラッチユニット14は後側ドア12の上部に、下部ラッチユニット16は後側ドア12の下部にそれぞれ配設される。後側ハンドルユニット19は後側ドア12の前側寄りで上下の略中間に配設され、後側ハンドルユニット19の開扉操作でワイヤーケーブル17、18を介してラッチユニット14、16がアンラッチされるように構成されている。
【0014】
前側ドア11の後端側には周知のラッチ/ラチェット機構を備えた前側ラッチユニット20を取付ける。前側ラッチユニット20は、後側ドア12の前端側に設けた前側ドア用ストライカ21と係脱する。前側ドア11は前側ラッチユニット20が前側ドア用ストライカ21に係合することで閉扉状態に保たれる。後側ドア12は、前側ドア11が開扉状態のときのみ開扉可能な構成で、一般例としては、後側ドア12の後側ハンドルユニット19の開扉操作を、前側ドア11が閉扉状態にあるときは、前側ドア11との物理的に干渉により規制させ、前側ドア11が開扉状態になると、規制が解除される構成にする(特許文献1参照)。
【0015】
図3は、後側ドア12の金属インナーパネル22の前側部分と、金属インナーパネル22に組み付けられる車両ラッチ装置Rを示している。車両ラッチ装置Rの後側ハンドルユニット19は、後側ドア12の室内側に露出する樹脂製のハンドルカバー23と、搭乗者が開扉操作するハンドルレバー24を備えている。ハンドルカバー23の前側寄りには凹部23Aを設け、凹部23Aにハンドルレバー24の操作グリップ24Aを収納させる。
【0016】
ハンドルレバー24には上下一対の支持アーム24Bを一体的に形成する。支持アーム24Bはハンドルカバー23の連通口を介してハンドルカバー23の裏面側に(ドア内部側に)ほぼ水平に突出させる。支持アーム24Bの基部24Cは後側ハンドルユニット19の金属製のブラケット25に縦のハンドル軸26で軸止させる。
【0017】
ブラケット25は、ボルトや螺子などの複数の締め具27(
図13参照)により金属インナーパネル22に組み付けられる。本発明はこの組み付け手順に特徴があり、手順については後述する。
【0018】
ブラケット25には、単一部材のワイヤーレバー28を支持軸29で軸止する。ワイヤーレバー28には支持軸29を挟んで互いに反対側に伸びる上部アーム28Aと下部アーム28Bとを設ける。上部アーム28Aには上部ワイヤーケーブル17のインナーケーブル17Aの下端のケーブルエンド17Bを連結させる。下部アーム28Bには下部ワイヤーケーブル18のインナーケーブル18Aの上端のケーブルエンド18Bを連結させる。上部ワイヤーケーブル17のアウター17Cの下端は、ブラケット25の上部係止部25Aに係止させ、下部ワイヤーケーブル18のアウター18Cの上端は、ブラケット25の下部係止部25Bに係止させる。
【0019】
実施例においては、上下一対の支持アーム24Bのうち、上部側の支持アーム24Bの先端には、基部24Cを越えて伸長させた押圧部24Dを形成する。押圧部24Dはハンドルレバー24が開扉操作されると、ワイヤーレバー28の当接アーム28Cに当接し、ワイヤーレバー28を回転させて、ワイヤーケーブル17、18を介してラッチユニット14、16をアンラッチさせる。
【0020】
ワイヤーレバー28は、ハンドル軸26周りに配設した復帰バネ30により、初期位置に向けて付勢させる。ハンドルレバー24はワイヤーレバー28との当接を介して復帰バネ30の弾力で初期位置に向けて付勢される。ハンドルレバー24は、下部側の支持アーム24Bの先端に形成した当接部24Eがブラケット25に当接することで、初期位置に弾力的に保持される。
【0021】
ブラケット25は、上部取付部31Aと下部取付部31Bとを有している。上部取付部31Aおよび下部取付部31Bは、ブラケット25の上下両側にそれぞれ配置される。上部取付部31Aおよび下部取付部31Bは、それぞれ基端32Aおよび基端32B側から後方に互いに平行に伸長させる。上部取付部31Aの基端32Aと下部取付部31Bの基端32Bとはブラケット25の縦の連結プレート33で連結させている。
【0022】
上部取付部31Aの基端32Aおよび下部取付部31Bの基端32Bは、実質的に金属インナーパネル22と平行であり、基端32A、32Bには、締め具27が挿通される基端側挿通孔34A、34Bをそれぞれ形成する。
【0023】
上部取付部31Aおよび下部取付部31Bの後方に伸びた後側部35Aおよび後側部35Bは、金属インナーパネル22側に、一度、直角に屈曲させてから、金属インナーパネル22に対して平行に戻るように再度直角に屈曲させ、後側部35Aの先端に金属インナーパネル22と平行の先端係止部36Aを、後側部35Bの先端に金属インナーパネル22と平行の先端締結面36Bをそれぞれ形成する。上部取付部31Aの先端係止部36Aの根元は、短径のネック部37に形成する。下部取付部31Bの先端締結面36Bには、締め具27が挿通される先端側挿通孔34Cを形成する。
【0024】
金属インナーパネル22には、ブラケット25の3箇所の挿通孔34A、34B、34Cに対応する3箇所の止着孔38A、38B、38C(
図12参照)を形成すると共に、上部取付部31Aの先端係止部36Aが挿入可能の差込孔39を形成する。3箇所の止着孔38A、38B、38Cと、1箇所の差込孔39とは、四角形の各頂点に配置することが望ましい。
【0025】
上部ラッチユニット14は、上部ワイヤーケーブル17の上端を予め係止させた状態で、後側ドア12の上部に組み付けられ、同様に、下部ラッチユニット16は、下部ワイヤーケーブル18の下端を予め係止させた状態で、後側ドア12の下部に組み付けられる。
【0026】
後側ハンドルユニット19は、ブラケット25にハンドルレバー24、ワイヤーレバー28および復帰バネ30を取り付けた半製品として組み立てられる。
【0027】
半製品の後側ハンドルユニット19のワイヤーレバー28の上部アーム28Aには、上部ラッチユニット14から垂下する上部ワイヤーケーブル17のインナーケーブル17Aの下端のケーブルエンド17Bを連結させ、また、上部ワイヤーケーブル17のアウター17Cの下端をブラケット25の上部係止部25Aに係止させる。これで、上部ワイヤーケーブル17と後側ハンドルユニット19との連結は終了する。
【0028】
上部ワイヤーケーブル17と後側ハンドルユニット19の連結後、上部ワイヤーケーブル17の中間部分は、
図3のように、トリムクリップのような止具40で金属インナーパネル22にクリップ留めする。
【0029】
上部ワイヤーケーブル17が連結された半製品の後側ハンドルユニット19は、そのブラケット25の上部取付部31Aの先端係止部36Aを、金属インナーパネル22の差込孔39に差し込み、仮止め状態にする。仮止め状態では、後側ハンドルユニット19から手を離しても、先端係止部36Aの根元のネック部37が差込孔39に係合するため、後側ハンドルユニット19が金属インナーパネル22から抜け落ちることは防止され、仮止め状態は維持される。
【0030】
仮止め状態の後側ハンドルユニット19のワイヤーレバー28の下部アーム28Bには、下部ラッチユニット16から伸びる下部ワイヤーケーブル18のインナーケーブル18Aの上端のケーブルエンド18Bを連結させ、また、下部ワイヤーケーブル18のアウター18Cの上端をブラケット25の下部係止部25Bに係止させる。これで、後側ハンドルユニット19と下部ワイヤーケーブル18との連結は終了する。
【0031】
下部ワイヤーケーブル18と後側ハンドルユニット19の連結後、下部ワイヤーケーブル18の中間部分は、
図3のように、トリムクリップのような止具41で金属インナーパネル22にクリップ留めする。
【0032】
上下のワイヤーケーブル17、18を接続した仮止め状態の後側ハンドルユニット19は、簡単な位置調整で、ブラケット25の3箇所の挿通孔34A、34B、34Cを金属インナーパネル22の3箇所の止着孔38A、38B、38Cに合致させることができ、合致させた挿通孔34A、34B、34Cと止着孔38A、38B、38Cにボルトや螺子などの複数の締め具27を挿通後、ブラケット25を金属インナーパネル22に締結固定する。
【0033】
なお、後側ハンドルユニット19と下部ワイヤーケーブル18との連結は、ブラケット25を金属インナーパネル22に締め具27で固定した後に行っても良い。
【0034】
ブラケット25は、金属板のプレス加工で形成する。実施例のブラケット25は、金属板から単一部材としてプレス加工で形成できる展開形状を備えている。ブラケット25の上部取付部31Aおよび下部取付部31Bは、基準となる連結プレート33に対して、上方および下方に平板状に展開でき、曲げ加工によりプレス形成できる。ワイヤーレバー28が軸止されるレバープレート42は、連結プレート33から側方に連設させることで、上部取付部31Aおよび下部取付部31Bと干渉することなく連結プレート33に対して展開させることができる。また、レバープレート42の上下に曲げ加工で形成される上部係止部25Aおよび下部係止部25Bも、展開時、上部取付部31Aおよび下部取付部31Bとは干渉しない間隔に収めることができる。
【0035】
ブラケット25を単一部材としてプレス成形すると、ブラケット25に軸止後のハンドルレバー24とワイヤーレバー28との相対位置は、許容誤差内で一定に保たれるから、ガタツキや異音の発生は抑制され、また、ハンドルレバー24の開扉操作力は、支持アーム24Bの押圧部24Dを介してワイヤーレバー28の当接アーム28Cに良好に伝達される。
【0036】
図14および
図15は金属インナーパネル22の上部に固定される上部ラッチユニット14の概略を示している。上部ラッチユニット14は、金属製のメインプレート50と、金属製のサブプレート51を有している。メインプレート50の支持面50Aとサブプレート51の支持面51Aは互いに平行で、金属インナーパネル22に対して直交するように車体10の幅方向の面を備えている。
【0037】
支持面50Aと支持面51Aとの間には、ラッチ/ラチェット機構が設けられる。ラッチ/ラチェット機構は、
図16のように、上部ストライカ13と係脱するラッチ52と、ラッチ52と係脱するラチェット53とを有する。ラッチ52はラッチ軸52Aにより支持面50A、51Aに軸止され、ラチェット53はラチェット軸53Aにより支持面50A、51Aに軸止される。
【0038】
メインプレート50には、支持面50Aから屈曲させた締結面50Bを形成する。締結面50Bは金属インナーパネル22と平行であり、金属インナーパネル22にボルトや螺子などの締め具54A(
図17)で固定される。締め具54Aは、締結面50Bに形成した挿通孔55Aと、金属インナーパネル22の止着孔56A(
図15)に挿通される。挿通孔55A(締め具54A)は、ラッチ52およびラチェット53より前方に位置する。
【0039】
サブプレート51には、支持面51Aから屈曲させた締結面51Bをおよび締結面51Cを形成する。締結面51Bは支持面51Aの上部から後方に金属インナーパネル22と平行に伸長させる。締結面51Bはラッチ52およびラチェット53より後方に位置し、挿通孔55Bを形成する。挿通孔55Bは金属インナーパネル22の止着孔56Bに合致させた後、ボルトや螺子などの締め具54Bを挿通し、締結面51Bと金属インナーパネル22を締結固定する。
【0040】
サブプレート51の締結面51Cは、支持面51Aの下部側からラッチ52およびラチェット53を越えて前方に伸長させる。締結面51Cは金属インナーパネル22と平行であり、締結面51Cにはラッチ52およびラチェット53より前方に位置する挿通孔55Cを形成し、挿通孔55Cは金属インナーパネル22の止着孔56Cに合致させた後、ボルトや螺子などの締め具54Cを挿通し、締結面51Cと金属インナーパネル22を締結固定する。挿通孔55A~55Cは、
図17のように、上下(縦)に長い調節孔を呈している。
【0041】
このように、上部ラッチユニット14は、ラッチ/ラチェット機構を囲むように配置した三箇所の締結面50B、締結面51B、締結面51Cにより金属インナーパネル22に締め具54A~54Cにより良好に確実に固定される。
【0042】
サブプレート51には、締結面51Bから後方に伸張させた貼着面51Dを形成する。
【0043】
なお、
図17のように、メインプレート50とサブプレート51との間に、別部材の金属製カバープレート57を設け、カバープレート57に上部ワイヤーケーブル17のアウター17Cの上端を係止させる係止部57Aを形成することがある。
【0044】
金属インナーパネル22の室内側の上部には、
図18のように、トリム体58が設けられる。実施例のトリム体58は、上中下に3分割されたうちの上部のトリム体である。本発明におけるトリム体58は、上部(頭頂部)に上部ラッチユニット14の一部を露出させるラッチ開口部58Aを形成しており、ラッチ開口部58Aを有するトリム体58が分割形成の如何に拘わらず本発明が対象とするトリム体となる。
【0045】
トリム体58の上部に露呈した上部ラッチユニット14は、後側ドア12の閉扉により車体10に固定の上部ストライカ13と係合可能となる。分割形成したトリム体58の下部には、中央側のトリム体(図示なし)との連結用の複数のクリップ孔59が設けられている。
【0046】
トリム体58の室外側(裏面)には、
図19のように、トリムクリップなどの突起状の止具60が少なくとも一対設けられる。止具60は金属インナーパネル22の少なくとも一対の係止孔61(
図15)に差し込まれて、トリム体58は金属インナーパネル22に止着される。2個以上の止具60を2箇所以上の係止孔61にクリップ留めすることで、トリム体58は金属インナーパネル22に対して所定の精度を以て組み立てられる。
【0047】
本実施例では、止具60は、トリム体58の一部として一体的に樹脂射出成形する。トリム体58には吸音断熱性に優れた中綿部材63を取り付ける。
【0048】
トリム体58のラッチ開口部58Aは、
図22のように、前後両側の凹陥部58Bにより区画され、このため、トリム体58の上部室外側は、複雑な湾曲形状を呈することになり、金属インナーパネル22に対して全体的に傾斜面になっている。このため、止具60に相当する部材を、上部ラッチユニット14と干渉することなく、トリム体58の上部に射出成形することは難しく、また、金属インナーパネル22にも、上部ラッチユニット14と重ならないように、係止孔を追加形成することも困難となる。つまり、従来においては、上部ラッチユニット14が邪魔になって、トリム体58の上部を金属インナーパネル22に簡単に良好に固定する手段がなかった。
【0049】
このため、本発明では、トリム体58の上部を、従来邪魔物になっていた上部ラッチユニット14を介して金属インナーパネル22に固定する構成を採用している。実施例においては、トリム体58の上部を面テープ64で上部ラッチユニット14に強力に切離可能に連結している。
【0050】
面テープ64は、一般的なループ/フック式面テープよりも、接着強度に優れたステム状面テープが好ましい。ステム状面テープは、頭部が膨出した無数のキノコ状ステムを植設した一対の面テープである。面テープ64の一方側テープ64Aは、サブプレート51の貼着面51Dにステムが室内側を向くように貼着する。
【0051】
面テープ64の他方側テープ64Bは、トリム体58の室外側面にステムが室外側を向くように貼着する。このとき、トリム体58の複雑な湾曲形状により、良好な貼着面を確保できないときは、トリム体58の室外側に平坦面を備えた中継台座65を取付け、中継台座65の平坦面を貼着面65Aとして、他方側テープ64Bを貼着させてもよい。樹脂製の中継台座65は、止具60と同様に射出形成でき、トリム体58の室外側にモールドさせて埋設固定させる。
【0052】
トリム体58は、中継台座65の貼着面65Aに貼着した他方側テープ64Bを、サブプレート51の貼着面51Dに貼着した一方側テープ64Aに圧着することで、上部ラッチユニット14のサブプレート51に強力に切離可能に連結される。サブプレート51は締め具54Bおよび締め具54Cにより金属インナーパネル22に強固に切離可能に固定されているため、トリム体58の上部を金属インナーパネル22に所定の連結強度を以て固定でき、その作業は極めて容易である。このように、従来、連結作業の邪魔物であった上部ラッチユニット14を、本発明では、連結用の中継部材として使用するため、従来の課題をよく克服して、容易な作業で確実な連結を行うことができる。
【0053】
図26は、上部ラッチユニット14の取付治具66を示している。治具66は位置決めピン66A、66B、66Cを有し、位置決めピン66A、66Bは金属インナーパネル22に形成した位置決め孔22A、22Bに差し込まれ、位置決めピン66Cは、上部ラッチユニット14のサブプレート51に形成した位置決め孔51Eに差し込まれる。位置決め孔51Eはラッチ52およびラチェット53より前方に位置し、好適には締結面51Cに形成する。
【0054】
治具66は、上部ラッチユニット14を金属インナーパネル22に取り付けるときの、位置決めに使用され、治具66の位置決めピン66A、66Bを金属インナーパネル22の位置決め孔22A、22Bに差し込み、ついで、上部ラッチユニット14のサブプレート51に形成した位置決め孔51Eを治具66の残りの位置決めピン66Cに差し込めば、上部ラッチユニット14は、金属インナーパネル22に対して所定の精度で保持され、その後、締め具54A、締め具54B、締め具54Cにより上部ラッチユニット14を金属インナーパネル22に締結する作業は簡易に正確に行える。
【0055】
後側ドア12は、車両ラッチ装置Rおよびその他の装備品の組付完了後、車体10に取り付けられる。上部ラッチユニット14と上部ストライカ13との噛み合い位置の微調整は、メインプレート50およびサブプレート51の上下に長い挿通孔55A~55Cを利用して行う。
【0056】
治具66は位置決めピン66A、66B、66Cに加えて、好適には、上部ラッチユニット14の回転防止部(図示なし)を設ける。回転防止部は、治具66は位置決めピン66Cに上部ラッチユニット14の位置決め孔51Eを差し込んだとき、位置決めピン66Cを中心に上部ラッチユニット14が回転しないように規制するものであり、突起状部材や、ピン状部材や、当接片状部材など、自由に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
R…車両ラッチ装置、10…車体、11…前側ドア、11A…前側ヒンジ、12…後側ドア、12A…後側ヒンジ、13…上部ストライカ、14…上部ラッチユニット、15…下部ストライカ、16…下部ラッチユニット、17…上部ワイヤーケーブル、17A…インナーケーブル、17B…ケーブルエンド、17C…アウター、18…下部ワイヤーケーブル、18A…インナーケーブル、18B…ケーブルエンド、18C…アウター、19…後側ハンドルユニット、20…前側ラッチユニット、21…前側ドア用ストライカ、22…金属インナーパネル、22A…位置決め孔、22B…位置決め孔、23…ハンドルカバー、23A…凹部、24…ハンドルレバー、24A…操作グリップ、24B…支持アーム、24C…基部、24D…押圧部、24E…当接部、25…ブラケット、25A…上部係止部、25B…下部係止部、26…ハンドル軸、27…締め具、28…ワイヤーレバー、28A…上部アーム、28B…下部アーム、28C…当接アーム、29…支持軸、30…復帰バネ、31A…上部取付部、31B…下部取付部、32A…基端、32B…基端、33…連結プレート、34A…基端側挿通孔、34B…基端側挿通孔、34C…先端側挿通孔、35A…後側部、35B…後側部、36A…先端係止部、36B…先端締結面、37…ネック部、38A…止着孔、38B…止着孔、38C…止着孔、39…差込孔、40…止具、41…止具、42…レバープレート。50…メインプレート、50A…支持面、50B…締結面、51…サブプレート、51A…支持面、51B…締結面、51C…締結面、51D…貼着面、51E…位置決め孔、52…ラッチ、52A…ラッチ軸、53…ラチェット、53A…ラチェット軸、54A…締め具、54B…締め具、54C…締め具、55A…挿通孔、55B…挿通孔、55C…挿通孔、56A…止着孔、56B…止着孔、56C…止着孔、57…カバープレート、57A…係止部、58…トリム体、58A…ラッチ開口部、58B…凹陥部、59…クリップ孔、60…止具、61…係止孔、63…中綿部材、64…面テープ、64A…一方側テープ、64B…他方側テープ、65…中継台座、65A…貼着面、66…治具、66A…位置決めピン、66B…位置決めピン、66C…位置決めピン。